説明

建設機械

【課題】車幅以下の旋回半径を確保できるとともに、運転席に座ったオペレータの良好な視界を確保でき、また、部材点数を少なくすることができる建設機械の提供。
【解決手段】本発明は、乗降口20を形成する開口面16を開閉可能なドア5を有する運転室6を備えたミニショベルにおいて、ドア5が1枚ドアから成り、閉めた状態にあってドア5は、当該ドア5の中央部21よりも前側ピラー15に近い側に屈曲部5bを有し、この屈曲部5bを、ドア5を閉めた状態にあって、前側ピラー15に近づくに従って開口面16に近づくように形成される第1部分5b1と、この第1部分5b1に連設されて第1部分5b1よりも前側ピラー15側に位置し、前側ピラー15に近づくに従って開口面16から遠ざかるように形成される第2部分5b2とを有する形状に形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降口を形成する開口面を開閉可能なドアを有する運転室を備えたミニショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に示された小旋回機を構成する油圧ショベルがある。この油圧ショベルは、走行体と、この走行体上に配置される旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、旋回体上に設けられ、乗降口を形成する開口面を開閉可能なドアを有するキャブ、すなわち運転室とを備えている。運転室は、互いに乗降口を挟むように設けられ、作業装置側に配置される左前ピラーすなわち前側ピラーと、ドアが回動可能に取り付けられるセンタピラーすなわちドア取り付けピラーとを有している。
【0003】
また、小旋回機を構成する油圧ショベルで本来要求される車幅以下の寸法である旋回体の旋回半径の外側に運転室を突出させないために、ドアは複数のヒンジを介して連結される2枚ドアから成っている。複数のヒンジは、2枚ドアから成るドア全体の中央部分において鉛直方向に設けられた各ドアの縁部に取り付けられている。
【0004】
なお、仮にドアを1枚ドアによって形成することに伴って運転室が大きくなると、旋回体の旋回半径が本来要求されている上述した車幅以下の旋回半径よりも大きくなってしまうことになる。このようになると、旋回体の旋回に際して作業環境による制約を受け、当該小旋回機を構成する油圧ショベルの作業装置を介して実施される各種作業に支障を生じかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−21753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される従来技術は、ドア全体を2枚ドアに形成したことによって、本来要求されている車幅以下の旋回半径を確保できるものの、ドア全体の中央部分に2枚のドアを互いに連結する複数のヒンジと、これらのヒンジが取り付けられる各ドアの縁部とを備えていることから、運転室内の運転席に座ったオペレータにとって良好な視界を確保できない。また、ドア全体の中央部分に複数のヒンジを要することから部品数が多くなり、製作コストが高くなりやすい。
【0007】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、車幅以下の旋回半径を確保できるとともに、運転席に座ったオペレータの良好な視界を確保でき、また、部材点数を少なくすることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、走行体と、この走行体上に配置される旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、上記旋回体上に設けられ、乗降口を形成する開口面を開閉可能なドアを有する運転室とを備え、上記運転室は、互いに上記乗降口を挟むように設けられ、上記作業装置側に配置される前側ピラーと、上記ドアが回動可能に取り付けられるドア取り付けピラーとを有する建設機械において、上記ドアが1枚ドアから成り、閉めた状態にあって上記ドアは、当該ドアの中央部よりも上記前側ピラーに近い側に屈曲部を有し、上記屈曲部を、上記ドアを閉めた状態にあって、上記前側ピラーに近づくに従って上記開口面に近づくように形成される第1部分と、上記第1部分に連設されて上記第1部分よりも上記前側ピラー側に位置し、上記前側ピラーに近づくに従って上記開口面から遠ざかるように形成される第2部分とを有する形状に形成したことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、ドアの中央部よりも前側ピラーに近い側に屈曲部を設け、この屈曲部が、ドアを閉めたときに前側ピラーに近づくに従って乗降口を形成する開口面に近づくように形成される第1部分と、この第1部分に連設され、前側ピラーに近づくに従って上述の開口面から遠ざかるように形成される第2部分とを有する形状に形成したことから、運転室の基本的な設計変更を招くことのない形状のドアを設けることができる。すなわち、ドアの設置のために運転室を大きく形成することを要しないことから、車幅以下の旋回半径を確保できる。
【0010】
また、ドアの中央部よりも前側ピラーに近い側に屈曲部を設けたことから、ドアの中央部を屈曲部よりも外側に張り出し形成することができる。これにより、運転室内の空間を大きくしながらドアを運転室内に入り込ませないようにすることができる。
【0011】
また、ドアが1枚ドアから成ることから、ドアの中央部に複数のヒンジ、及びこれらのヒンジが取り付けられる部材を存在させることがない。これにより、運転席に座ったオペレータは良好な視界を確保することができ、また、部品点数を少なくすることができる。
【0012】
さらに、ドアは中央部よりも前側ピラーに近い側に屈曲部を有することから、この屈曲部において高い剛性を確保することができ、これに伴ってドアが閉められた際の気密性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、上記屈曲部を、上記ドアが完全に開いた状態にあって、上記走行体の車幅以下に規定される旋回体の旋回半径の略内側に配置される形状に形成したことを特徴としている。このように構成した本発明は、ドアを完全に開いた状態で作業を実施する場合にあっても、屈曲部を設けた影響を受けることなく良好に旋回体を旋回させて当該作業を実施することができる。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、上記屈曲部を、上記ドアが完全に開いた状態にあって、当該屈曲部の上記第2部分の端部が上記旋回半径上に位置する形状に形成したことを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、上記前側ピラーに、上記ドアを閉めた状態にあって、上記屈曲部の上記第2部分の上記端部を収容させる窪み部を設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、ドアを閉じた際に、前側ピラーの窪み部にドアの屈曲部の第2部分の端部が収容されるので、屈曲部の第2部分の端部が前側ピラーよりも外側に配置されることがなく、車幅以下の旋回半径の維持に貢献する。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、当該建設機械がミニショベルから成り、上記運転室に対する乗降を容易にさせるステップを備え、上記ステップの一部に、上記開口面よりも外側に突出する突出部を設け、上記ドアの一部に、このドアを閉めた状態にあって上記ステップの上記突出部を覆う凸部を設けたことを特徴としている。
【0017】
このように構成した本発明は、運転室の乗降口を形成する開口面よりも外側に突出する突出部をステップの一部のみに設けたことから、運転室の外殻形状を変更させることなくステップに突出部を設けることが可能となる。すなわち、旋回半径を大きくすることなく、ステップの形状寸法を大きくすることができる。また、ドアを閉めた際にドアの一部に設けた凸部によってステップに設けた突出部が覆われるので、突出部を含めたステップ全体を運転室内に位置させることができる。したがって、当該建設機械が積雪を生じる寒冷地に配置された場合でも、ステップにおいて積雪が凍結する事態を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、乗降口を形成する開口面を開閉するドアが1枚ドアから成り、閉めた状態にあってドアは、当該ドアの中央部よりも前側ピラーに近い側に屈曲部を有し、屈曲部を、ドアを閉めた状態にあって、前側ピラーに近づくに従って開口面に近づくように形成される第1部分と、この第1部分に連設されて第1部分よりも前側ピラー側に位置し、前側ピラーに近づくに従って開口面から遠ざかるように形成される第2部分とを有する形状に形成したことから、運転室を大きく形成することなく車幅以下の旋回半径を確保できる。これにより、本発明は、旋回体を旋回させる作業装置を駆動させて支障なく所望の作業を実施させることができる。
【0019】
また、本発明は、ドアの中央部を屈曲部よりも外側に張り出し形成することができる。これによって、運転室内の空間を大きくしながらドアを運転室内に入り込ませないようにすることができ、運転室に座ったオペレータによる良好な操作性の確保に貢献する。
【0020】
また、本発明は、ドアの中央部に複数のヒンジ、及びこれらのヒンジが取り付けられる部材が存在せず、運転席に座ったオペレータの良好な視界を確保でき、オペレータによる操作性を従来よりも向上させることができるとともに、部品点数が少なくなって従来に比べて製作コストを低減させることができる。
【0021】
また、本発明は、屈曲部において高い剛性を確保することができ、これに伴ってドアが閉められた際の気密性を従来に比べて向上させることができ、信頼性の高い運転室のドア構造を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る建設機械の一実施形態を構成するミニショベルを示す側面図である。
【図2】図1に示すミニショベルに備えられる運転室を示す斜視図である。
【図3】図2に示す運転室のドアを閉めた状態の要部を断面して示した平面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】図2に示す運転室のドアを開けた状態を示す要部斜視図である。
【図6】図2に示す運転室のドアを開けた状態の要部を断面して示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係る建設機械の一実施形態を構成するミニショベルを示す側面図、図2は図1に示すミニショベルに備えられる運転室を示す斜視図である。
【0025】
これらの図1,2に示すように、本実施形態に係る建設機械は、小型の建設機械の1つであるミニショベルから構成されている。このミニショベルは、左右一対の履帯1aを有する走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられる作業装置3とを備えている。作業装置3は、旋回体2に取り付けられるブーム3aと、このブーム3aの先端に取り付けられるアーム3bと、このアーム3bの先端に取り付けられるバケット3cとを含んでいる。
【0026】
旋回体2上には、運転席4が収容され後述の乗降口20の開口面16を開閉可能な1枚ドアから成るドア5を有する運転室6を配置してある。また、この旋回体2には、エンジン7、図示しないポンプ等が収容され外側が外装カバー8で覆われた機械室9と、重量バランスを確保するカウンタウエイト10とを配置してある。
【0027】
図3は図2に示す運転室のドアを閉めた状態の要部を断面して示した平面図、図4は図3の要部拡大図、図5は図2に示す運転室のドアを開けた状態を示す要部斜視図、図6は図2に示す運転室のドアを開けた状態の要部を断面して示した平面図である。
【0028】
本実施形態に係るミニショベルは、運転室6に対する昇降を容易にさせるステップの一部に、運転室6の乗降口20を形成する開口面16よりも外側に突出する突出部12aを設けた構成にしてある。
【0029】
すなわち、図3〜6に示すように、運転室6の床11が、上述した運転席4の前側に配置された平坦部11aと、この平坦部11aに連設されてこの平坦部11aよりも低い位置に設けられ、乗降口20側に配置された段差部11bとを含み、運転室6内に、床11の段差部11bと同一平面を形成するフランジ部12を段差部11bに連設させて設け、上述したステップが、床11の段差部11bとフランジ部12から成り、フランジ部12に図4に示す乗降口20を形成する開口面15よりも外側に突出する突出部12aを設けてある。
【0030】
フランジ部12は一対のボルト14によって、運転室6を形成するフレームに着脱可能に固定してある。このフランジ部12に設けた突出部12aの主要部の端面は、例えば水平面内において直線形状に形成してある。
【0031】
運転室6は、図4,6に示すように、互いに乗降口20を挟むように設けられ、作業装置3側に配置される柱、すなわち前側ピラー15と、ドア5がヒンジ18を介して回動可能に取り付けられる柱、すなわちドア取り付けピラー13とを有している。図4に示すように、フランジ部12の突出部12aにおける前側ピラー15側の端部には、前側ピラー15に近づくに従って乗降口20を形成する開口面16に近づくように形成される屈曲部12bを設けてある。
【0032】
図3,4に示すように、ドア5の下端部分の一部には、このドア5を閉めた状態にあってステップを構成するフランジ部12に設けた突出部12aを覆う凸部5aを設けてある。この凸部5aの主要部は、フランジ部12の突出部12aの主要部の端面の直線形状に応じて、平坦面状に形成してある。この凸部5aは、例えばドア5の製作時にプレス加工によって形成してある。
【0033】
また、本実施形態は、図3,4に示すように、閉めた状態にあってドア5は、当該ドア5の中央部21よりも前側ピラー15に近い側に屈曲部5bを有している。
【0034】
この屈曲部5bは、図4に示すように、ドア5を閉めた状態にあって、前側ピラー15に近づくに従って乗降口20の開口面16に近づくように屈曲部5bの中央付近30まで形成される第1部分5b1と、この第1部分5b1に連設されて第1部分5b1よりも前側ピラー15側に位置し、前側ピラー15に近づくに従って開口面16から遠ざかるように形成される第2部分5b2を有する形状に形成してある。
【0035】
また、屈曲部5bは、図5,6に示すようにドア5が完全に開いた状態にあって、走行体1の車幅以下に規定される旋回体2の旋回半径17の略内側に配置される形状に形成してある。例えば図6に示すように、ドア5が完全に開いた状態にあっては、屈曲部5bの第2部分5b2の端部5b3が旋回半径17上に位置するように、屈曲部5bの形状を形成してある。
【0036】
また、図4に示すように、ドア5を閉めた状態にあって、屈曲部5bの第2部分5b2の端部5b3が前側ピラー15に形成した窪み部15aに収容されるように、屈曲部5bの形状を形成してある。さらに、この屈曲部5bは、図6に示すように、ドア5を完全に開いた際に、旋回体2の外装カバー8との干渉を防ぐ逃げ部を形成している。
【0037】
なお、運転室6の基本的な外殻形状は変更されることがなく、これに伴って図4,6に示す旋回半径17は、上述したように従前のミニショベルにおけるのと同等の旋回半径、すなわち走行体1の一対の履帯1aによって規定される車幅以下の寸法を維持するように設定してある。
【0038】
このように構成した本実施形態にあって、オペレータが作業を行うために運転席4に着座する際には、図5,6に示すように、ドア5を開き、床11の段差部11bと、突出部12aを有するフランジ部12とから成るステップに足をかけて、床11の平坦部11aに上り、運転席4に着座すればよい。このように運転席4に着座したオペレータが、運転室6内に配置される操作レバーを操作することにより、例えば図1に示す作業装置3が駆動し、土砂の掘削作業等の所望の作業を実施することができる。なお、ドア5が完全に開かれたときには、図6に示すように、ドア5が旋回体2の外装カバー8に対向するように配置される。作業中にあっては、必要に応じてドア5が閉じられる。
【0039】
また、作業を終了した際にはオペレータは、運転席4から離れ、床11の平坦部11aから段差部11bとフランジ部12とから成るステップに降り、さらに当該ミニショベルの接地面に降りた後、例えば図3,4に示すようにドア5を閉じればよい。これにより、図4に示すように、フランジ部12の突出部12aがドア5の凸部5aによって覆われるとともに、ドア5の屈曲部5bの第2部分5b2の端部5b3が前側ピラー15の窪み部15aに収容される。
【0040】
なお、上記実施形態では、フランジ部12の突出部12aの主要部における端面を水平面内において直線形状に形成し、ドア5の凸部5aの主要部を平坦面状に形成してあるが、フランジ部12の突出部12aの主要部における端面を、例えば水平面内において曲線形状にするとか、凹凸部を有する形状に形成してもよく、また、ドア5の凸部5aを水平面内において曲面を有するように、あるいは鉛直面内において曲面を有するように形成してもよい。これらの突出部12a及び凸部5aは、種々の形状に形成し得る。
【0041】
このように構成した本実施形態は、ドア5の中央部21よりも前側ピラー15に近い側に屈曲部5bを設け、この屈曲部5bが、ドア5を閉めたときに前側ピラー15に近づくに従って乗降口20を形成する開口面16に近づくように形成される第1部分5b1と、この第1部分5b1に連設され、前側ピラー15に近づくに従って上述の開口面16から遠ざかるように形成される第2部分5b2とを有する形状に形成したことから、運転室6の基本的な設計変更を招くことのない形状のドア5を設けることができる。すなわち、ドア5の設置のために運転室6を大きく形成することを要しないことから、車幅以下の旋回半径17を確保できる。これにより、本実施形態は、旋回体2を旋回させる作業装置3を駆動させて支障なく所望の作業を実施することができる。
【0042】
また、ドア5の中央部21よりも前側ピラー15に近い側に屈曲部5bを設けたことから、ドア5の中央部21を屈曲部5bよりも外側に張り出し形成することができる。これにより、運転室6内の空間を大きくしながらドア5を運転室6内に入り込ませないようにすることができる。これにより、運転室6に座ったオペレータによる良好な操作性の確保に貢献する。
【0043】
また、ドア5が1枚ドアから成ることから、ドア5の中央部21に複数のヒンジ18、及びこれらのヒンジ18が取り付けられる部材を存在させることがない。これにより、運転席4に座ったオペレータは良好な視界を確保することができ、また、部品点数を少なくすることができ、製作コストを低減させることができる。
【0044】
さらに、ドア5は中央部21よりも前側ピラー15に近い側に屈曲部5bを有することから、この屈曲部5bにおいて高い剛性を確保することができ、これに伴ってドア5が閉められた際の気密性を向上させることができる。これにより信頼性の高い運転室6のドア構造を実現させることができる。
【0045】
また、屈曲部5bを、ドア5が完全に開いた状態にあって、走行体1の車幅以下に規定される旋回体2の旋回半径17の略内側に配置される形状に形成してあることから、ドア5を完全に開いた状態で作業を実施する場合にあっても、屈曲部5bを設けた影響を受けることなく良好に旋回体2を旋回させて当該作業を実施することができる。
【0046】
また、前側ピラー15に、ドア5を閉めた状態にあって、屈曲部5bの第2部分5b2の端部5b3を収容させる窪み部15aを設けてあることから、ドア5を閉じた際に、前側ピラー15の窪み部15aにドア5に設けた屈曲部5bの第2部分5b2の端部5b3が収容されるので、第2部分5b2の端部5b3が前側ピラー15よりも外側に配置されることがなく、車幅以下の旋回半径17の維持に貢献する。
【0047】
また、本実施形態によれば、図4に示すように運転室6の乗降口20を形成する開口面15よりも外側に突出する突出部12aを、ステップを構成するフランジ部12の一部のみに設けたことから、運転室6の外殻形状を変更させることなくステップに突出部12aを設けることが可能になる。すなわち、旋回半径17を大きくすることなく、ステップの形状寸法を大きくすることができる。これにより、旋回体2を旋回させ作業装置3を駆動させて、支障なく所望の作業を実施させることができるとともに、運転室6に対する乗降を容易に行わせることができる。
【0048】
また、ドア5を閉めた際に、ドア5に設けた凸部5aによってフランジ部12の突出部12aが覆われるので、突出部12aを含めたステップ全体を運転室6内に位置させることができる。したがって、当該ミニショベルが積雪を生じる寒冷地に配置された場合でも、突出部12aを含めたステップにおいて積雪が凍結する事態を防ぐことができる。したがって、凍結した積雪によってドア5が開かなくなる事態を生じることがなく、ドア5の円滑な開閉を実現させることができる。
【0049】
また、突出部12aを有するフランジ部12と、凸部5aを有するドア5との組み合わせに際して、突出部12aの形状の異なるものを、あるいは凸部5aの形状の異なるものを、予め複数組考慮することにより、運転室6の基本構造の設計変更を生じさせずに、選定されたフランジ部12とドア5の組み合わせを有する運転室6を容易に実現させることができる。
【0050】
また、図6に示すように、ドア5の屈曲部5bが旋回体2を形成する外装カバー8との干渉を防ぐ逃げ部を形成しているので、ドア5の開動作に伴うドア5の損傷、及び外装カバー8の損傷を抑制でき、信頼性の高いミニショベルを実現できる。
【0051】
なお、上記実施形態は、ミニショベルから成っているが、本発明に係る建設機械は、ミニショベルよりも大きな油圧ショベルであってもよく、また、走行体上に旋回体を備え、旋回体上に開閉可能なドアを有するものであれば、油圧ショベルとは異なる建設機械であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 走行体
2 旋回体
3 作業装置
4 運転席
5 ドア
5a 凸部
5b 屈曲部
5b1 第1部分
5b2 第2部分
5b3 端部
6 運転室
8 外装カバー
11 床
11a 平坦部
11b 段差部
12 フランジ部
12a 突出部
12b 屈曲部
13 ドア取り付けピラー
15 前側ピラー
15a 窪み部
16 開口面
17 旋回半径
20 乗降口
21 中央部
30 中央付近

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、この走行体上に配置される旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、上記旋回体上に設けられ、乗降口を形成する開口面を開閉可能なドアを有する運転室とを備え、上記運転室は、互いに上記乗降口を挟むように設けられ、上記作業装置側に配置される前側ピラーと、上記ドアが回動可能に取り付けられるドア取り付けピラーとを有する建設機械において、
上記ドアが1枚ドアから成り、閉めた状態にあって上記ドアは、当該ドアの中央部よりも上記前側ピラーに近い側に屈曲部を有し、
上記屈曲部を、上記ドアを閉めた状態にあって、上記前側ピラーに近づくに従って上記開口面に近づくように形成される第1部分と、上記第1部分に連設されて上記第1部分よりも上記前側ピラー側に位置し、上記前側ピラーに近づくに従って上記開口面から遠ざかるように形成される第2部分とを有する形状に形成したことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
上記屈曲部を、上記ドアが完全に開いた状態にあって、上記走行体の車幅以下に規定される旋回体の旋回半径の略内側に配置される形状に形成したことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
上記屈曲部を、上記ドアが完全に開いた状態にあって、当該屈曲部の上記第2部分の端部が上記旋回半径上に位置する形状に形成したことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械において、
上記前側ピラーに、上記ドアを閉めた状態にあって、上記屈曲部の上記第2部分の上記端部を収容させる窪み部を設けたことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械において、
当該建設機械がミニショベルから成り、上記運転室に対する乗降を容易にさせるステップを備え、上記ステップの一部に、上記開口面よりも外側に突出する突出部を設け、上記ドアの一部に、このドアを閉めた状態にあって上記ステップの上記突出部を覆う凸部を設けたことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−256601(P2011−256601A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132054(P2010−132054)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】