説明

建設機械

【課題】キャブの後方にエンジン室が配置されている建設機械において、キャブ下からキャブ内へ伝播する振動・騒音をともに低減することができるキャブの構造を提供すること。
【解決手段】下部走行体の上に上部旋回体1が搭載されてなる建設機械である。上部旋回体1は、前部に設けられたキャブ2と、キャブ2の後方に設けられたエンジン室3と、キャブ2の下に設けられ内部に空間を有するデッキ4と、を具備してなる。C形の断面を有するC形部材5をキャブ2の床板2aの下面に固定して、デッキ4の内部空間にC形部材5を配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンなどの建設機械に関し、特に、建設機械のキャブ(運転室)の振動およびキャブ内の騒音を低減するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関しては、例えば特許文献1〜3に記載されたものがある。特許文献1には、キャブの床板の下面全体に遮音材を取り付けるとともに、車体フレームの底面に多孔のアンダーカバーを取り付けた建設機械が記載されている。また、特許文献2に記載された建設機械では、キャブ下側のスペースをエンジン室に冷却風を導入するための通路として使用し、その通路の内面に吸音材を取り付けたり、通路に枝菅を取り付けてサイドブランチ型共鳴を利用したりして、エンジン室からの騒音を低減させている。また、特許文献3では、遮音材を取り付けた遮音室をキャブの周囲に設けて、キャブ内へ直接騒音が侵入することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平3−55654号公報
【特許文献2】特開2008−155790号公報
【特許文献3】特開2000−355955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に記載された技術には、それぞれ下記のような問題点がある。特許文献1に記載された技術では、キャブ下からキャブ内への騒音の伝播を、キャブ床板の下面全体に取り付けた遮音材で抑制している。一方、建設機械の操作用配管などの開口や空調用の開口がキャブ床板に設けられている場合がある。この場合、キャブ床板の下面に遮音材を取り付けていたとしても、これらの開口からキャブ内へ騒音が侵入してくる。また、特許文献1に記載された遮音材には、コインシデンス効果によって遮音効果が低下する周波数帯域があり、加振力の周波数がその周波数帯域と重なる場合、キャブ内での騒音が低下しない可能性がある。
【0005】
また、特許文献2に記載されているような吸音材は、低周波数帯域の騒音に対しては吸音効果が小さい。サイドブランチ型の共鳴菅は、対象とする周波数の音以外には基本的に消音効果が小さい。複数の周波数の音を低減しなければならない場合、複数の共鳴菅を設けなければならず、この場合、共鳴菅の設置場所を確保しにくい。また、特許文献2に記載された技術では、エンジン室などから伝播してくる振動によるキャブの振動を低減することはできない。
【0006】
特許文献3に記載されているようなキャブの周囲に設けた遮音室では、高圧の油圧配管などがキャブ後方からキャブ下まで伸ばされ、その配管が遮音室の内部を通る場合、油圧配管の支持部を遮音室内に設ける必要性がでてくる。特許文献3では、遮音室およびキャブ自体に特別な振動低減対策が施されていないため、油圧配管を伝わってきた振動が配管支持部からキャブ床下の部材へ伝わり、キャブ床下の部材を振動させることによる振動・騒音が発生することとなる。また、キャブ背後やキャブ下側から冷却風を導入してエンジン室内の冷却を行う場合、遮音室を設けることで冷却風の通路面積が小さくなるため冷却風の風量不足となる可能性もある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、キャブの後方にエンジン室が配置されている建設機械において、キャブ下からキャブ内へ伝播する振動・騒音をともに低減することができるキャブの構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下部走行体の上に上部旋回体が搭載されてなる建設機械において、前記上部旋回体は、前部に設けられたキャブと、当該キャブの背後に設けられたエンジン室と、当該キャブと当該エンジン室とを搭載する内部に空間を有するデッキと、を有し、C形または四角形の断面を有する角形部材が前記キャブの床板の下面に固定されて、前記デッキの内部空間に当該角形部材が左右方向に配置されていることを特徴とする建設機械である。
【0009】
この構成によると、C形または四角形の断面を有する角形部材がキャブの床板の下面に固定されることで、キャブの床板の剛性が高まり、その結果、当該床板が振動しにくくなる。また、キャブの床板の下面に固定された角形部材とデッキの底板との間の上下方向の空間は、キャブの床板とデッキの底板との間の上下方向の空間よりも狭くなる。すなわち、角形部材がある場所とない場所とで、デッキ内部の容積が変化し、デッキ内部で膨張型消音器構造が形成されることによる減音効果が得られる。
【0010】
すなわち、C形または四角形の断面を有する角形部材をキャブの床板の下面に固定することで、キャブ床板の剛性向上および膨張型の減音効果が得られ、キャブ下からキャブ内へ伝播する振動・騒音をともに低減することができる。その結果、キャブの振動およびキャブ内の騒音は低減する。なお、デッキ内部で膨張型の減音効果が得られることで、キャブ下から建設機械の周囲に放射される騒音も低減する。
【0011】
また本発明において、複数の前記角形部材が前記床板の下面に前記デッキの前後方向に間隔をあけて固定されており、隣り合う前記角形部材の間隔が、すべて異なる間隔とされるとともに、それぞれの間隔の比が倍数比とならないようにされていることが好ましい。
【0012】
膨張型の減音は、膨張部の長さで減音される周波数が決まる。この構成によると、複数の周波数の音を低減することができる。換言すれば、減音効果が低下する周波数帯域を減らすことができ、その結果、騒音がより低減する。
【0013】
さらに本発明において、前記角形部材は、C形の断面を有するC形部材であって、前記デッキの前方向または後方向に開口が向けられた状態で、前記デッキの前後方向に間隔をあけて、複数の前記C形部材が前記床板の下面に固定されており、一方の前記C形部材の背面板部から、隣り合う他方の前記C形部材の開口の内部まで、前記デッキの前後方向に沿って板部材が延在されており、前記C形部材の背面板部の上下方向中間位置よりも下側に前記板部材が配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によると、上記した板部材が遮音板となり、キャブ下(デッキ内)に侵入してきた騒音が、キャブの床下から直接、キャブ内へと侵入することを防止できる。また、C形部材の背面板部の上下方向中間位置よりも下側に板部材を配置することで、キャブ内へ伝わる騒音をより効果的に低減することができる。
【0015】
さらに本発明において、前記角形部材は、C形の断面を有するC形部材であって、前記C形部材の開口を形成する部分の端に鍔板が設けられており、上方向に開口が向けられた状態で、前記C形部材が前記床板の下面に鍔板を介して固定されていることが好ましい。
【0016】
この構成によると、キャブの床板の剛性をさらに高めることができ、結果として、キャブの振動はより低減する。
【0017】
さらに本発明において、前記角形部材の下方であって前記デッキの底板の上面に、C形または四角形の断面を有する第2角形部材が、前記デッキの前後方向については前記角形部材の位置に合わせて固定されて、前記角形部材とともに当該第2角形部材が前記デッキの内部空間に配置されていることが好ましい。
【0018】
この構成によると、第2角形部材によりデッキの底板の剛性が高まり、当該底板が振動しにくくなるとともに、デッキ内部の容積変化が大きくなり、膨張型の減音効果も向上する。その結果、キャブ内へ伝わる騒音およびキャブ下から建設機械の周囲に放射される騒音がより低減する。
【0019】
さらに本発明において、前記第2角形部材は、C形の断面を有する第2C形部材であって、前記デッキの前方向または後方向に開口が向けられた状態で、複数の前記第2C形部材が前記デッキの底板の上面に固定されており、一方の前記第2C形部材の背面板部から、隣り合う他方の前記第2C形部材の開口の内部まで、前記デッキの前後方向に沿って第2板部材が延在されており、前記第2C形部材の背面板部の上下方向中間位置よりも上側に前記第2板部材が配置されていることが好ましい。
【0020】
この構成によると、第2板部材が遮音板となり、キャブ下(デッキ内)に侵入してきた騒音が、デッキ外部へ漏れることを防止できる。また、第2C形部材の背面板部の上下方向中間位置よりも上側に第2板部材を配置することで、デッキ外部へ漏れる騒音をより効果的に低減することができる。その結果、キャブ下から建設機械の周囲に放射される騒音がより低減する。
【0021】
さらに本発明において、前記第2角形部材は、C形の断面を有する第2C形部材であって、前記第2C形部材の開口を形成する部分の端に鍔板が設けられており、下方向に開口が向けられた状態で、前記第2C形部材が前記デッキの底板の上面に鍔板を介して固定されていることが好ましい。
【0022】
この構成によると、第2C形部材によりデッキの底板の剛性がより高まり、当該底板がより振動しにくくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、本発明の構成要件、特に、C形または四角形の断面を有する角形部材をキャブの床板の下面に固定することで、キャブ下からキャブ内へ伝播する振動・騒音をともに低減することができる。その結果、キャブの振動およびキャブ内の騒音は低減する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械のキャブ下の構造を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る建設機械のキャブ下の構造を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る建設機械のキャブ下の構造を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る建設機械のキャブ下の構造を示す図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る建設機械のキャブ下の構造を示す図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る建設機械のキャブ下の構造を示す図である。
【図7】C形部材がある場合とない場合とでキャブ床板の振動レベルを比較した結果を示すグラフである。
【図8】キャブの床下空間からキャブ床板へ伝わる騒音レベルを比較した結果を示すグラフである。
【図9】C形部材の背面板部に固定する板部材の位置を変化させた場合の、キャブの床下空間からキャブ床板へ伝わる騒音レベルを比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明に係るキャブ下の構造は、クレーンを含め様々な建設機械に適用することができるものである。
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る建設機械のキャブ下の構造について、図1を参照しつつ説明する。図1には、建設機械の下部走行体の上に搭載される上部旋回体1の一部を示している。なお、下部走行体とは、建設機械を走行させるためのものであって、クローラ式、ホイール式などの走行体がある。図1(a)は、側面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。
【0027】
ここで、上部旋回体1は、その前部に設けられ座席7を収容するキャブ2と、キャブ2の後方に設けられたエンジン室3と、を具備してなり、キャブ2の下には、操作系ロッド11、油圧配管21、バルブ22(油圧配管用)などを収容するデッキ4が設けられる。図示を省略するが、例えば、上部旋回体1には、ブームが起伏自在に取り付けられる。
【0028】
操作系ロッド11は、エンジン室3からデッキ4内を経由して、キャブ2内へ通される。キャブ2の床板2aには配管カバー11aが取り付けられている。例えば、この部分から、デッキ4内からキャブ2内へ操作系ロッド11が立ち上げられる。ここで、デッキ4内に収容されているバルブ22および油圧配管21の支持部から油圧による振動が床板2aに伝わる。また、エンジン室3内のエンジン10の振動が床板2aに伝わり、床板2aが振動する。
【0029】
キャブ2の床板2aには開口部2bが設けられている。この開口部2bは、例えばケーブルなどを通すためのものである。エンジン10の騒音、油圧配管の騒音などが、開口部2bからキャブ2内へ侵入してくる。
【0030】
キャブ2の後方に設けられたエンジン室3には、エンジン10およびラジエータ9が収容されている。エンジン10冷却用の空気は、キャブ2の背後側面に設けられた吸気口8から導入される。なお、後述するデッキ4の前面板4cにスリットなどの孔(開口)を設けて、この前面板4cからエンジン10冷却用の空気をデッキ4内を通してエンジン室3に導入してもよい。
【0031】
デッキ4は、底板4b、側面板4a、前面板4c、および背面板(不図示)からなる。デッキ4とキャブ2とは、キャブ2の床板2aで区画されている。前面板4cは、鉛直方向に対して傾斜しているが、これに限られることはない。
【0032】
(C形部材)
ここで、キャブ2の床板2aの下面には、金属製の複数のC形部材5が固定されて、デッキ4の内部空間にC形部材5が配置されている。C形部材5は、長尺の部材であって、背面板部5cと、背面板部5cの両側の側面板部5a・5bとからなるコ字状の部材である。C形部材5の材料としては、炭素鋼、ステンレス鋼などが挙げられる。3枚の板材を溶接などで結合させてC形部材5としてもよいし、チャンネル(溝形鋼)をC形部材5として用いることもできる。(後述する第2C形部材6についても同様)
【0033】
C形部材5は、その長手方向をデッキ4の幅方向に対して平行となるようにして床板2aの下面に固定されている。デッキ4の前側から数えて2列目・3列目のC形部材5の長手方向の両端は、それぞれ、デッキ4の側面板4aに当接されて固定されている。1列目のC形部材5の長さは、配管カバー11aの位置を避けるために、2列目・3列目のC形部材5の長さよりも短くされている。C形部材5の開口Sは、いずれもデッキ4の前方向に向けられている。なお、C形部材5の開口Sをデッキ4の後方向に向けてもよい。
【0034】
本実施形態では、デッキ4の前後方向に間隔をあけて3つのC形部材5がキャブ2の床板2aの下面に固定されている。隣り合うC形部材5同士の間隔を、デッキ4の前側から順に、L1、L2とすると、L1=L2とされている。
【0035】
(第2C形部材)
また、キャブ2の下方に位置する部分のデッキ4の底板4bの上面には、金属製の複数の第2C形部材6が固定されて、複数のC形部材5とともに複数の第2C形部材6がデッキ4の内部空間に配置されている。第2C形部材6は、長尺の部材であって、背面板部6cと、背面板部6cの両側の側面板部6a・6bとからなるコ字状の部材である。第2C形部材6の材料としては、炭素鋼、ステンレス鋼などが挙げられる。
【0036】
第2C形部材6は、その長手方向をデッキ4の幅方向に対して平行となるようにして底板4bの上面に固定されている。第2C形部材6の長手方向の両端は、それぞれ、デッキ4の側面板4aに当接されて固定されている。また、デッキ4の前後方向における位置に関しては、上方のC形部材5の位置に合わせて第2C形部材6は配置されている。第2C形部材6の開口Sは、デッキ4の前方向に向けられている。なお、第2C形部材6の開口Sをデッキ4の後方向に向けてもよい。本実施形態では、デッキ4の前後方向に間隔をあけて3つの第2C形部材6がデッキ4の底板4bの上面に固定されている。
【0037】
また、上下に配置されたC形部材5と第2C形部材6とは、1列目のC形部材5を除いて、同じ形状・寸法の部材とされている。なお、上下において対となっているC形部材5の寸法と第2C形部材6の寸法とが異なっていてもよい。例えば、第2C形部材6よりもC形部材5を大きくしてもよい。また、C形部材5および第2C形部材6の断面形状は、いずれもC形であるが、これら部材のうち少なくともいずれかの断面形状が四角形であってもよい。また、第2C形部材6は、必ずしも必要な部材ではなく、C形部材5のみが設けられていてもよい。さらには、C形部材5は1つのみであってもよい。
【0038】
(作用・効果)
本発明によると、C形部材5がキャブ2の床板2aの下面に固定されていることで、キャブ2の床板2aの剛性が高まり、その結果、床板2aが振動しにくくなる。また、デッキ4内部におけるC形部材5と第2C形部材6との間の上下方向の空間は、キャブの床板2aとデッキ4の底板4bとの間の上下方向の空間よりも狭くなる。すなわち、C形部材5および第2C形部材6がある場所とない場所とで、デッキ4内部の容積が変化し、デッキ4内部で膨張型の減音効果が得られる。
【0039】
このように、C形部材5をキャブ2の床板2aの下面に固定することで、キャブ床板2aの剛性向上および膨張型の減音効果が得られ、油圧配管21・バルブ22やエンジン10などの振動が床板2aに伝わって床板2aが振動することを抑えることができるとともに、油圧配管21・バルブ22やエンジン10などのキャブ下からの騒音を膨張型の減音効果により低減することができる。その結果、キャブ2の振動およびキャブ2内の騒音は低減する。
【0040】
なお、C形部材5と第2C形部材6との間の上下方向の間隔(第2C形部材6を設けない場合には、C形部材5と底板4bとの間の上下方向の間隔)に対する、床板2aと底板4bとの間の上下方向の間隔の比(膨張比)は、2.5以上であることが好ましい。
【0041】
また、第2C形部材6によりデッキ4の底板4bの剛性が高まり、底板4bが振動しにくくなる。加えて、C形部材5および第2C形部材6によりデッキ内部で膨張型の減音効果が得られることで、キャブ下から建設機械の周囲に放射される騒音も低減する。
【0042】
(第2実施形態)
次に、図2を参照しつつ、第2実施形態に係るキャブ下の構造について説明する。図2は、第2実施形態に係る上部旋回体102の一部を示す側面図である。第1実施形態との相違点について以下説明する。
【0043】
デッキ4の前後方向に間隔をあけて複数のC形部材5および第2C形部材6が、それぞれ、キャブ2の床板2aの下面およびデッキ4の底板4bの上面に固定されている点は、第1実施形態と第2実施形態とで共通する。第2実施形態では、隣り合うC形部材5同士の間隔および隣り合う第2C形部材6同士の間隔を、デッキ4の前側から順に、L1、L2とすると、L1>L2とされ、かつ、L1とL2との比が倍数比とならないようにされている。なお、倍数比とならない比でL1<L2としてもよい。
【0044】
ここで、膨張型の減音は、膨張部の長さ(L1、L2)で減音される周波数が決まる。本実施形態によると、複数の周波数の音を低減することができる。換言すれば、減音効果が低下する周波数帯域を減らすことができ、その結果、騒音をより低減させることができる。なお、L1、L2を、それぞれ、騒音低減対象であるエンジン10・油圧ポンプ・油圧配管などの音の1/4波長の長さとすることで、減音効果をより向上させることができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、図3を参照しつつ、第3実施形態に係るキャブ下の構造について説明する。図3は、第3実施形態に係る上部旋回体103の一部を示す側面図である。第1実施形態との相違点について以下説明する。
【0046】
本実施形態では、隣り合うC形部材の間に板部材(12、13)を配置している。具体的には、1列目のC形部材5の背面板部5cから、隣り合う2列目のC形部材5の開口の内部まで、板部材12を延在させている。この板部材12は、水平方向においては、キャブ2の床板2aに対して平行とされ、上下方向においては、C形部材5の背面板部5cの上下方向中間位置よりも下側に配置されている。2列目のC形部材5と3列目のC形部材5との間の板部材12についても同様である。
【0047】
同様に、1列目の第2C形部材6の背面板部6cから、隣り合う2列目の第2C形部材6の開口の内部まで、第2板部材13を延在させている。この第2板部材13は、水平方向においては、デッキ4の底板4bに対して平行とされ、上下方向においては、第2C形部材6の背面板部6cの上下方向中間位置よりも上側に配置されている。2列目の第2C形部材6と3列目の第2C形部材6との間の第2板部材13についても同様である。
【0048】
本実施形態によると、板部材12が遮音板となり、エンジン室3などからキャブ下(デッキ4内)に侵入してきた騒音が、キャブ2の床下から直接、キャブ内へと侵入することを防止できる。また、C形部材5の背面板部5cの上下方向中間位置よりも下側に板部材12を配置することで、キャブ内へ伝わる騒音をより効果的に低減することができる。
【0049】
また、板部材12と同様に第2板部材13も遮音板となり、この第2板部材13は、キャブ下(デッキ4内)に侵入してきた騒音が、デッキ外部へ漏れることを防止する。第2C形部材6の背面板部6cの上下方向中間位置よりも上側に第2板部材13を配置することで、デッキ外部へ漏れる騒音をより効果的に低減することができる。
【0050】
なお、一方のC形部材5の背面板部5cに板部材12を取り付け、隣り合う他方のC形部材5には板部材12を接触させていないのは、隣り合うC形部材5間の振動伝達を回避するためである(第2板部材13についても同様)。
【0051】
(第4実施形態)
次に、図4を参照しつつ、第4実施形態に係るキャブ下の構造について説明する。図4は、第4実施形態に係る上部旋回体104の一部を示す側面図である。第1実施形態との相違点について以下説明する。
【0052】
本実施形態では、C形部材5の開口Sを形成する部分の端に鍔板14を取り付けて、キャブ2の床板2aの下面に固定する部材を、ハット形の部材としている。具体的には、C形部材5を構成する側面板部5a・5bの開口S側の端に鍔板14を取り付けて、C形部材5と2つの鍔板14とで全体としてハット形の部材としている。そしてこのハット形の部材を、その開口Sを上方向に向けて床板2aの下面に鍔板14を介して固定している。
【0053】
第2C形部材6についても同様であり、第2C形部材6の開口を形成する部分の端に鍔板を取り付けて、その開口Sを下方向に向けてデッキ4の底板4bの上面に当該第2C形部材6を鍔板を介して固定している。
【0054】
本実施形態によると、第1実施形態におけるC形部材5(第2C形部材6)の配置(開口Sがデッキ4の前後方向に向いている)に比べて、キャブ2の床板2a(デッキ4の底板4b)の剛性をさらに高めることができ、キャブ2(デッキ4)の振動をより低減することができる。なお、膨張型の減音効果も同時に得られる。
【0055】
(第5実施形態)
次に、図5を参照しつつ、第5実施形態に係るキャブ下の構造について説明する。図5は、第5実施形態に係る上部旋回体105の一部を示す側面図である。第1実施形態との相違点について以下説明する。
【0056】
本実施形態では、C形部材5を構成する一方の側面板部5bの開口側の端に補強板15を取り付けている。そして、C形部材5の開口を下方向に向けてC形部材5を床板2aの下面に固定し、C形部材5を構成する他方の側面板部5aと、隣り合うC形部材5との間に緩衝材16を入れている。なお、側面板部5bと補強板15とを一体形成してもよい。すなわち、板材を曲げ加工することにより補強板15部(曲げ部分)を設けてもよい。緩衝材16は、例えばウレタン製のゴムマットである。なお、図5に示したように、第2C形部材6についても同様の補強がなされているともに、緩衝材16が設けられている。
【0057】
本実施形態によると、C形部材5の側面板部5bに補強板15を取り付けることで(または、C形部材5の側面板部5bの端に曲げ部分を設けることで)、C形部材5、ひいてはキャブ2の床板2aの剛性をさらに高めることができ、キャブ2の振動をより低減することができる。また、床板2aの剛性を高めるために、デッキ4の前後方向におけるC形部材5の長さを長くしたとき、隣接するC形部材5の間に緩衝材16を入れることで、C形部材5間の振動伝達を低減することができ、その結果、キャブ2の振動をより低減することができる。
【0058】
なお、第2C形部材6の一方の側面板部に補強板を取り付けるともに、第2C形部材6の他方の側面板部と、隣り合う第2C形部材6のとの間に緩衝材を入れることによる効果も、上記と同様である。
【0059】
(第6実施形態)
次に、図6を参照しつつ、第6実施形態に係るキャブ下の構造について説明する。図6は、第6実施形態に係る上部旋回体106の一部を示す側面図である。第5実施形態との相違点について以下説明する。
【0060】
本実施形態では、補強板15の端から背面板部5cに向けて、さらなる補強板17を取り付けている。補強板17と背面板部5cとは、補強板17の端に設けた鍔板18を介して固定されている。なお、側面板部5b、補強板15、補強板17、および鍔板18を一体形成してもよい。すなわち、板材を曲げ加工することにより、補強板15部、補強板17部、および鍔板18部を設けてもよい。なお、図6に示したように、第2C形部材6についても同様の補強がなされている
【0061】
本実施形態によると、キャブ2の床板2aおよびデッキ4の底板4bの剛性をさらに高めることができる。
【0062】
(効果検証結果)
図7は、キャブ2の床板2aの下面にC形部材5を設けた場合と、設けなかった場合とで、床板2aの振動レベルを数値解析により比較した結果を示すグラフである。図7からわかるように、キャブ2の床板2aの下面にC形部材5を設けた場合、設けなかった場合と比較して、床板2aの振動レベルが全体的に小さくなっている。また、振動レベルのほとんどのピーク値が小さくなっている。
【0063】
図8は、キャブ2の床下空間(デッキ4内)からキャブ床板2aへ伝わる騒音レベルを数値解析により比較した結果を示すグラフである。Case1は、C形部材を設けなかった場合である。Case2は、3つのC形部材5および第2C形部材6を、それぞれ等間隔に設けた場合である。Case3は、3つのC形部材5および第2C形部材6を、それぞれ不等間隔に設けた場合である。図8からわかるように、Case2およびCase3では、Case1に比べて、騒音レベルが8dB程度、低下している。Case2とCase3とでは、Case3のほうが騒音レベル低下量は大である。
【0064】
図9は、C形部材5の背面板部5cに固定する板部材12の位置を上下方向に変化させた場合の、キャブ2の床下空間(デッキ4内)からキャブ床板2aへ伝わる騒音レベルを数値解析により比較した結果を示すグラフである。図9からわかるように、C形部材5の背面板部5cの上下方向中間位置よりも下側に板部材12を配置したほうが、騒音レベルが10dB程度、低下している。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【符号の説明】
【0066】
1:上部旋回体
2:キャブ
2a:床板
3:エンジン室
4:デッキ
5:C形部材
6:第2C形部材
7:座席
8:吸気口
9:ラジエータ
10:エンジン
11:操作系ロッド
11a:配管カバー
21:油圧配管
22:バルブ
2b:開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上に上部旋回体が搭載されてなる建設機械において、
前記上部旋回体は、前部に設けられたキャブと、当該キャブの後方に設けられたエンジン室と、当該キャブと当該エンジン室とを搭載する内部に空間を有するデッキと、を有し、
C形または四角形の断面を有する角形部材が前記キャブの床板の下面に固定されて、前記デッキの内部空間に当該角形部材が左右方向に配置されていることを特徴とする、建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
複数の前記角形部材が前記床板の下面に前記デッキの前後方向に間隔をあけて固定されており、
隣り合う前記角形部材の間隔が、すべて異なる間隔とされるとともに、それぞれの間隔の比が倍数比とならないようにされていることを特徴とする、建設機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記角形部材は、C形の断面を有するC形部材であって、
前記デッキの前方向または後方向に開口が向けられた状態で、前記デッキの前後方向に間隔をあけて、複数の前記C形部材が前記床板の下面に固定されており、
一方の前記C形部材の背面板部から、隣り合う他方の前記C形部材の開口の内部まで、前記デッキの前後方向に沿って板部材が延在されており、
前記C形部材の背面板部の上下方向中間位置よりも下側に前記板部材が配置されていることを特徴とする、建設機械。
【請求項4】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記角形部材は、C形の断面を有するC形部材であって、
前記C形部材の開口を形成する部分の端に鍔板が設けられており、
上方向に開口が向けられた状態で、前記C形部材が前記床板の下面に鍔板を介して固定されていることを特徴とする、建設機械。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の建設機械において、
前記角形部材の下方であって前記デッキの底板の上面に、C形または四角形の断面を有する第2角形部材が、前記デッキの前後方向については前記角形部材の位置に合わせて固定されて、前記角形部材とともに当該第2角形部材が前記デッキの内部空間に配置されていることを特徴とする、建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械において、
前記第2角形部材は、C形の断面を有する第2C形部材であって、
前記デッキの前方向または後方向に開口が向けられた状態で、複数の前記第2C形部材が前記デッキの底板の上面に固定されており、
一方の前記第2C形部材の背面板部から、隣り合う他方の前記第2C形部材の開口の内部まで、前記デッキの前後方向に沿って第2板部材が延在されており、
前記第2C形部材の背面板部の上下方向中間位置よりも上側に前記第2板部材が配置されていることを特徴とする、建設機械。
【請求項7】
請求項5に記載の建設機械において、
前記第2角形部材は、C形の断面を有する第2C形部材であって、
前記第2C形部材の開口を形成する部分の端に鍔板が設けられており、
下方向に開口が向けられた状態で、前記第2C形部材が前記デッキの底板の上面に鍔板を介して固定されていることを特徴とする、建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−107435(P2012−107435A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257669(P2010−257669)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】