建設機械
【課題】リヤアクスルハウジングを効率的に冷却可能な建設機械を提供する。
【解決手段】ホイールローダー100において、アンダーカバー200は、底板部210と傾斜板部220とを有する。傾斜板部220は、底板部210とリヤアクスルハウジング80との間に配置され、底板部210の後端から斜め上方に延びている。
【解決手段】ホイールローダー100において、アンダーカバー200は、底板部210と傾斜板部220とを有する。傾斜板部220は、底板部210とリヤアクスルハウジング80との間に配置され、底板部210の後端から斜め上方に延びている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカバーを備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ホイールローダーなどの建設機械は、車体フレーム、トランスミッション、プロペラシャフト及びリヤアクスルハウジングなどを備えている。
ここで、トランスミッションやプロペラシャフトなどの駆動音が車両外部に放出されることを抑制するために、車体フレームの下方全域を防音カバーによって覆う手法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再公表WO2008/004651号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手法では、リヤアクスルハウジングの下方も防音カバーによって覆われるので、リヤアクスルハウジングを効率的に冷却できないおそれがある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、リヤアクスルハウジングを効率的に冷却可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に係る建設機械は、車体フレームと、車体フレームに取り付けられるエンジンと、エンジンの回転動力を変速するトランスミッションと、トランスミッションの後方において車体フレームに取り付けられ、ディファレンシャルを内蔵するリヤアクスルハウジングと、トランスミッションの出力軸とディファレンシャルの入力軸とを連結するプロペラシャフトと、リヤアクスルハウジングから左右に突出する一対のアクスルシャフトと、一対のアクスルシャフトそれぞれの外端に支持される一対のリヤタイヤと、トランスミッション及びプロペラシャフトの下方を覆っており、リヤアクスルハウジングよりも下方に配置される底板部と、底板部とリヤアクスルハウジングとの間に配置され、底板部の後端から斜め上方に延びる傾斜板部と、を有するアンダーカバーと、を備える。
本発明の第1の態様に係る建設機械によれば、底板部の底面に沿って前方から流れてくる走行風を、傾斜板部の底面に沿わせてリヤアクスルハウジングに導くことができる。そのため、リヤアクスルハウジングに効率的に走行風を当てることによって、リヤアクスルハウジングを効率的に冷却することができる。
【0006】
本発明の第2の態様に係る建設機械は、第1の態様に係り、リヤアクスルハウジングの前方に配置され、リヤアクスルハウジングを支持するフロントサポーターを備え、アンダーカバーは、傾斜板部の後端から上方に延び、フロントサポーターの下端に沿って形成される切り欠きを含む背板部を有する。
本発明の第2の態様に係る建設機械によれば、背板部に切り欠きを形成することによって、傾斜板部をより上方に傾斜させることができる。そのため、傾斜板部の傾斜角の設定自由度を高めることができる。
【0007】
本発明の第3の態様に係る建設機械は、第12の態様に係り、側面視において、底板部の第1底面から後方に延びる第1基準線と傾斜板部の第2底面とが成す角は、第1底面と第2底面との交点を通り、リヤアクスルハウジングの下端部に接する第2基準線と第1基準線とが成す角よりも大きい。
本発明の第3の態様に係る建設機械によれば、傾斜板部の底面に沿って流れてくる走行風を、より確実にリヤアクスルハウジングに導くことができる。
【0008】
本発明の第4の態様に係る建設機械は、第1の態様に係り、側面視において、底板部の第1底面から後方に延びる第1基準線と傾斜板部の第2底面とが成す角は、第1底面と第2底面との交点を通り、リヤアクスルハウジングの上端部に接する第3基準線と第1基準線とが成す角よりも小さい。
本発明の第4の態様に係る建設機械によれば、走行風が傾斜板部の底面から剥離することによる乱流の発生を抑制できる。その結果、走行風がリヤアクスルハウジングの周囲をスムーズに通り抜けるので、リヤアクスルハウジングをより効率的に冷却することができる。
【0009】
本発明の第5の態様に係る建設機械は、第4の態様に係り、側面視において、第1基準線と第2底面とが成す角は、リヤアクスルハウジングの上下方向中央における前端点と交点とを通る第4基準線と第1基準線とが成す角よりも小さい。
本発明の第5の態様に係る建設機械によれば、走行風をリヤアクスルハウジングにより確実に導きつつ、リヤアクスルハウジング周辺における乱流の発生を抑制することができる。
【0010】
本発明の第6の態様に係る建設機械は、第1乃至5のいずれかの態様に係り、リヤアクスルハウジングの後方に配置され、リヤアクスルハウジングを支持するリヤサポーターを備え、リヤサポーターは、車両外部に露出している。
本発明の第6の態様に係る建設機械によれば、リヤサポーターは、カバーなどによって覆われていない。そのため、リヤアクスルハウジングの周囲を通り抜けた走行風を、リヤサポーターの下方に効率的に排出することができる。その結果、走行風がリヤアクスルハウジングの周囲をスムーズに通り抜けるので、リヤアクスルハウジングをより効率的に冷却することができる。
【0011】
本発明の第7の態様に係る建設機械は、第1乃至6のいずれかの態様に係り、リヤアクスルハウジングは、本体部と、本体部の表面上に配置される複数の凸部と、を有する。
本発明の第7の態様に係る建設機械によれば、リヤアクスルハウジング全体としての表面積を大きくすることができる。そのため、リヤアクスルハウジングの放熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リヤアクスルハウジングを効率的に冷却可能な建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るホイールローダー100の側面図である。
【図2】実施形態に係るホイールローダー100を下方から見た斜視図である。
【図3】実施形態に係るハウジング本体部81の内部構成を示す断面図である。
【図4】実施形態に係るホイールローダー100の内部構成を説明するための拡大側面図である。
【図5】図4の透視図である。
【図6】図4の基準線Aから前方を見た場合における車両内部の模式図である。
【図7】図4の基準線Bから前方を見た場合における車両内部の模式図である。
【図8】実施形態に係るアンダーカバー200の斜視図である。
【図9】実施形態に係るアンダーカバー200とリヤアクスルハウジング80との位置関係を説明するための模式図である。
【図10】本実施形態に係るアンダーカバー200aの斜視図である。
【図11】実施例に係るシミュレーション内容を説明するための模式図である。
【図12】比較例1に係るシミュレーション内容を説明するための模式図である。
【図13】比較例2に係るシミュレーション内容を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
なお、本実施形態では、建設機械の一例としてホイールローダーについて説明する。
【0015】
(ホイールローダー100の全体構成)
実施形態に係るホイールローダー100の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るホイールローダー100の側面図である。
ホイールローダー100は、車体フレーム10、作業機20、一対のフロントタイヤ30、運転室40、エンジンルーム50、及び一対のリヤタイヤ60を備える。
車体フレーム10は、フロントフレーム11とリヤフレーム12と連結部13とを有する。車体フレーム10は、いわゆるアーティキュレート構造を有する。フロントフレーム11は、リヤフレーム12の前方に配置される。連結部13は、フロントフレーム11とリヤフレーム12とを左右方向において揺動可能に連結する。
【0016】
作業機20は、フロントフレーム11に取り付けられる。作業機20は、図示しない油圧ポンプ11から供給される圧油によって駆動する。作業機20は、リフトアーム21と、バケット22とを有する。リフトアーム21は、フロントフレーム11に支持される。バケット22は、リフトアーム21の先端部に取り付けられる。
一対のフロントタイヤ30は、フロントフレーム11に取り付けられる。一対のフロントタイヤ30は、フロントフレーム11を支持する。
運転室40は、リヤフレーム12上に載置される。運転室40は、図示しない座席や操作具などを収容する。
【0017】
エンジンルーム50は、リヤフレーム12上に載置される。エンジンルーム50は、エンジン110(図4参照)などを収容する。
一対のリヤタイヤ60は、リヤフレーム12に取り付けられる。一対のリヤタイヤ60は、リヤフレーム12を支持する。
ここで、図2は、本実施形態に係るホイールローダー100を下方から見た斜視図である。ホイールローダー100は、一対のアクスルシャフト70、リヤアクスルハウジング80及びアンダーカバー200を備える。
【0018】
一対のアクスルシャフト70それぞれの外端は、一対のリヤタイヤ60それぞれに連結される。一対のアクスルシャフト70それぞれの内端は、リヤアクスルハウジング80に連結される。
リヤアクスルハウジング80は、ハウジング本体部81と複数の凸部82とを有する。
ここで、図3は、ハウジング本体部81の内部構成を示す断面図である。ハウジング本体部81は、前方に突出する前突出部81aと、後方に突出する後突出部81bと、を有する。前突出部81aは、中空円筒状に形成されている。
【0019】
また、ハウジング本体部81は、ディファレンシャル83と、一対の多板式ディスクブレーキ84と、ファイナルドライブ85と、を内蔵している。ハウジング本体部81の内部には、潤滑油が密封されている。
ディファレンシャル83は、ベベルギヤやベベルピニオンギヤなどの複数のギヤを組み合わせることによって構成される。ディファレンシャル83は、前突出部81a内に挿通される入力軸83aから入力される動力の伝達方向を直交方向に転換するとともに、一対のリヤタイヤ60の速度差を吸収する。一対の多板式ディスクブレーキ84は、ディファレンシャル83の左右に配置される。本実施形態に係る一対の多板式ディスクブレーキ84は、油圧式湿式多板ディスクブレーキであるが、これに限られるものではない。ファイナルドライブ85は、一対の多板式ディスクブレーキ84に隣接する。ファイナルドライブ85は、後述するトランスミッション130(図5参照)において十分に回転を減速できない場合に、回転をさらに減速させる遊星歯車機構である。ファイナルドライブ85は、一対のリヤタイヤ60の径やトランスミッション130の構造などの条件に応じて設置の要否が決められる。
【0020】
複数の凸部82は、ハウジング本体部81の表面上に配置される。複数の凸部82それぞれは、車幅方向に沿って形成されている。複数の凸部82は、ハウジング本体部81内に密封されている潤滑油の油温を所定の温度以下でサチュレートさせるために、ハウジング本体部81からの放熱を促進させる。本実施形態において、ハウジング本体部81と複数の凸部82とは、一体的に形成されている。
アンダーカバー200は、リヤアクスルハウジング80の前方に配置される。アンダーカバー200は、トランスミッション130及びプロペラシャフト140(図5参照)などの駆動音が車両外部に放出されることを抑制する。アンダーカバー200の構成については後述する。
【0021】
(ホイールローダー100の内部構成)
実施形態に係るホイールローダー100の内部構成について、図面を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係るホイールローダー100の内部構成を説明するための拡大側面図である。図5は、図4の透視図である。図4では、一対のリヤタイヤ60が省略されている。図5では、車体フレーム10及びアンダーカバー200が破線で示されている。
【0022】
ホイールローダー100は、エンジン110、トルクコンバーター120、トランスミッション130、プロペラシャフト140、フロントサポーター150及びリヤサポーター160を備える。
エンジン110は、エンジンルーム50に収容されている。エンジン110は、出力トルクをトルクコンバーター120に出力する。
【0023】
トルクコンバーター120は、エンジン110の出力トルクを変換して、変換トルクをトランスミッション130に出力する。
トランスミッション130は、エンジン110から出力される回転動力を変速する。具体的に、トランスミッション130は、トルクコンバーター120から伝達される変換トルクを、必要とする駆動力、必要とする速度(車速)に応じて変換し、変換トルクをプロペラシャフト140に出力する。トランスミッション130は、プロペラシャフト140と共に、アンダーカバー200の上方に配置される。
【0024】
プロペラシャフト140は、リヤアクスルハウジング80の前方において、前後方向に沿って配置される。プロペラシャフト140は、入力軸83aに接続されている。また、プロペラシャフト140は、アンダーカバー200の上方に配置される。プロペラシャフト140は、リヤアクスルハウジング80に内蔵されるディファレンシャル83(図3参照)に連結されている。プロペラシャフト140は、トランスミッション130から伝達される変換トルクによって回転する。
【0025】
フロントサポーター150は、リヤアクスルハウジング80の前方において、車幅方向に沿って配置される。フロントサポーター150は、アンダーカバー200の後端部上方に配置される。フロントサポーター150は、リヤアクスルハウジング80を支持する。ここで、図6は、図4の基準線Aから前方を見た場合における車両内部の模式図である。図6に示すように、フロントサポーター150は、下垂部151と、挿通孔152とを有する。下垂部151は、アンダーカバー200の後端部に形成される切り欠き部Tに嵌り込むように配置される。挿通孔152は、下垂部151に形成されている。挿通孔152にハウジング本体部81の前突出部81aが係合されることによって、リヤアクスルハウジング80は、フロントサポーター150に支持されている。
【0026】
なお、本実施形態において、フロントサポーター150は、車体フレーム10の一部を構成している。また、図6に示すように、アンダーカバー200は、複数のボルト201によって車体フレーム10に固定されている。
リヤサポーター160は、リヤアクスルハウジング80の後方に配置される。リヤサポーター160の挿通孔161にハウジング本体部81の後突出部81bが係合されることによって、リヤアクスルハウジング80は、リヤサポーター160に支持されている。図5に示すように、リヤサポーター160の下方及び後方には、アンダーカバー200などの他の部材が配置されていない空間Sが設けられている。空間Sには、リヤアクスルハウジング80の周囲を通り抜けた走行風が流れ込む。ここで、図7は、図4の基準線Bから前方を見た場合における車両内部の模式図である。図7に示すように、リヤサポーター160は、リヤアクスルハウジング80の上下方向中央部より上方に配置されている。リヤサポーター160の下方及び後方に空間Sが設けられているので、リヤサポーター160は、車両外部(特に、車体下方)に露出している。
【0027】
(アンダーカバー200の構成)
実施形態に係るアンダーカバー200の構成について、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係るアンダーカバー200の斜視図である。アンダーカバー200は、底板部210、傾斜板部220、一対の側板部230及び背板部240を有する。
底板部210は、平板状に形成される。底板部210は、リヤアクスルハウジング80よりも下方かつ前方に配置される。本実施形態において、底板部210は、トランスミッション130及びプロペラシャフト140の下方において略水平に配置されている(図5参照)。
【0028】
傾斜板部220は、平板状に形成され、底板部210に連なる。傾斜板部220は、底板部210に対して傾斜する。ここで、図9は、本実施形態に係るアンダーカバー200とリヤアクスルハウジング80とのホイールローダー100における位置関係を説明するための模式図である。傾斜板部220は、底板部210とリヤアクスルハウジング80との間に配置される。傾斜板部220は、底板部210の後端から後ろ斜め上方に延びるように配置される。すなわち、傾斜板部220は、前後方向に沿って配置される底板部210に対して、リヤアクスルハウジング80に向かって上方に傾斜している。傾斜板部220は、底板部210の第1底面210Aに連なる第2底面220Aを有する。第2底面220Aは、第1底面210Aから後方に延びる第1基準線Cに対して、傾斜角αを成している。本実施形態において、傾斜角αは、第1基準線Cと第2基準線Dとが成す第1角β1より大きく、第1基準線Cと第3基準線Eとが成す第2角β2より小さい。特に、本実施形態において、傾斜角αは、第1基準線Cと第4基準線Fとが成す第3角β3より小さい。なお、第2基準線Dは、第1底面210Aと第2底面220Aとの交点Xを通り、リヤアクスルハウジング80の下端部に接する。第3基準線Eは、交点Xを通り、リヤアクスルハウジング80の上端部に接する。第4基準線Fは、交点Xと、リヤアクスルハウジング80の上下方向中央における前端点Yとを通る。
【0029】
一対の側板部230は、傾斜板部220の両側端部上に配置される。本実施形態において、一対の側板部230は、傾斜板部220に溶接されている。一対の側板部230は、傾斜板部220と車体フレーム10との隙間を覆うように配置される(図4参照)。
背板部240は、傾斜板部220の後端部上に配置される。本実施形態において、背板部240は、傾斜板部220に溶接されている。背板部240は、傾斜板部220の後端から上方に延びるように配置されており、傾斜板部220とフロントサポーター150との隙間を覆っている(図6参照)。背板部240は、半円状に形成された切り欠き部Tを有する。上述のとおり、切り欠き部Tには、フロントサポーター150の下垂部151が嵌め込まれる。
なお、本実施形態において、背板部240は、間隙Uを介して対称に配置される第1背板240aと第2背板240bとによって構成されている。
【0030】
(作用及び効果)
(1)本実施形態に係るホイールローダー100において、アンダーカバー200は、底板部210と傾斜板部220とを有する。傾斜板部220は、底板部210とリヤアクスルハウジング80との間に配置され、底板部210の後端から斜め上方に延びている。
従って、底板部210の第1底面210Aに沿って前方から流れてくる走行風を、傾斜板部220の第2底面220Aに沿わせてリヤアクスルハウジング80に導くことができる。そのため、リヤアクスルハウジング80に効率的に走行風を当てることによって、リヤアクスルハウジング80を効率的に冷却することができる。
【0031】
(2)本実施形態に係るホイールローダー100において、アンダーカバー200は、傾斜板部220の後端から上方に延びる背板部240を有する。背板部240は、フロントサポーター150の下端に沿って形成される切り欠きTを有する。
このように、背板部240に切り欠きTを形成することによって、傾斜板部220をより上方に傾斜させることができる。そのため、傾斜板部220の傾斜角αの設定自由度を高めることができる。
【0032】
(3)本実施形態に係るホイールローダー100において、傾斜角αは、第1基準線Cと第2基準線Dとが成す第1角β1より大きい。従って、傾斜板部220の第2底面220Aに沿って流れてくる走行風を、より確実にリヤアクスルハウジング80に導くことができる。
【0033】
(4)本実施形態に係るホイールローダー100において、傾斜角αは、第1基準線Cと第3基準線Eとが成す第2角β2より小さい。従って、走行風が傾斜板部220の第2底面220Aから剥離することによる風の流れの乱れを抑制できる。その結果、走行風がリヤアクスルハウジング80の周囲をスムーズに通り抜けるので、リヤアクスルハウジング80をより効率的に冷却することができる。
【0034】
(5)本実施形態に係るホイールローダー100において、傾斜角αは、第1基準線Cと第4基準線Fとが成す第3角β3より小さい。これにより、走行風をリヤアクスルハウジング80により確実に導きつつ、リヤアクスルハウジング80周辺における風の流れの乱れを抑制することができる。
【0035】
(6)本実施形態に係るホイールローダー100において、リヤサポーター160は、車両外部に露出している。
このように、リヤサポーター160は、カバーなどによって覆われていない。そのため、リヤアクスルハウジング80の周囲を通り抜けた走行風を、リヤサポーター160の下方に効率的に排出することができる。その結果、走行風がリヤアクスルハウジング80の周囲をスムーズに通り抜けるので、リヤアクスルハウジング80をより効率的に冷却することができる。
【0036】
(7)本実施形態に係るホイールローダー100において、リヤアクスルハウジング80は、本体部81と、本体部81の表面上に配置される複数の凸部82とを有する。
このように、本体部81の表面上に複数の凸部82を配置することによって、リヤアクスルハウジング80全体としての表面積を大きくすることができる。そのため、リヤアクスルハウジング80の放熱性を向上させることができる。
【0037】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0038】
(A)上記実施形態では、建設機械としてホイールローダー100を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。建設機械としては、ホイールローダーの他、クレーン車などが挙げられる。
【0039】
(B)上記実施形態では、底板部210及び傾斜板部220は、略矩形状に形成されることとしたが、これに限られるものではない。底板部210及び傾斜板部220の形状は矩形状以外の多角形状などであってもよい。
【0040】
(C)上記実施形態では、背板240は、半円形状の切り欠きTを有することとしたが、これに限られるものではない。背板240の形状は、フロントサポーター150の形状に合わせて変更可能である。従って、背板240は、切り欠きTを有していなくてもよい。
【0041】
(D)上記実施形態では、底板部210は、水平方向に沿って配置されることとしたが、これに限られるものではない。底板部210は、水平方向に対して傾斜していてもよい。この場合、傾斜板部220は、水平方向に対して底板部210よりも大きく傾斜していればよい。
【0042】
(E)上記実施形態では、背板部240は、間隙Uを介して対称に配置される第1背板240aと第2背板240bとによって構成されることとしたが、これに限られるものではない。図10に示すように、背板部240は、間隙Uを有していなくてもよい。 このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0043】
以下、本発明に係るアンダーカバーの実施例について具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができるものである。
(実施例)
図11に示すように、実施例に係るアンダーカバー200aは、略水平に配置される底板部210aと、底板部210aの後端からリヤアクスルハウジング80に向かって斜め上方に延びる傾斜板部220aと、を有する。
【0044】
(比較例1)
図12に示すように、比較例に係るアンダーカバー200bは、略水平に配置される底板部210bと、底板部210aの後端に略垂直に立設される垂直板部220bと、を有する。また、比較例1では、リヤアクスルハウジング80の後方には、エンジンカバー110aが配置されている。
【0045】
(比較例2)
図13に示すように、比較例2では、アンダーカバーが外されている。従って、比較例2では、フロントサポーターやプロペラシャフトなどが車体下方に露出されている。
【0046】
(シミュレーション)
実施例、比較例1及び比較例2において、前方から風を流した場合にリヤアクスルハウジング80に当たる風量を解析した。
その結果、実施例に係るアンダーカバー200aによれば、比較例1に係るアンダーカバー200bに比べて、リヤアクスルハウジング80に当たる風量を約15%向上できることが判った。従って、上記実施形態に係るアンダーカバー200によれば、走行風をリヤアクスルハウジング80に向けて流すことによって、リヤアクスルハウジング80を効率的に冷却できることが証明された。
【0047】
また、実施例に係るアンダーカバー200aによれば、アンダーカバーを備えない比較例2に比べて、リヤアクスルハウジング80に当たる風量を約8.5%向上できることが判った。従って、上記実施形態に係るアンダーカバー200によれば、リヤアクスルハウジング80に向けて流れる走行風を整流することによって、リヤアクスルハウジング80を効率的に冷却できることが証明された。
【符号の説明】
【0048】
10…車体フレーム,11…フロントフレーム,12…リヤフレーム,13…連結部,20…作業機,21…リフトアーム,22…バケット,30…フロントタイヤ,40…運転室,50…エンジンルーム,60…リヤタイヤ,70…アクスルシャフト,80…リヤアクスルハウジング,81…本体部,82…凸部,110…エンジン,100…ホイールローダー,120…トルクコンバーター,130…トランスミッション,140…プロペラシャフト,150…フロントサポーター,151…下垂部,152…挿通孔,160…リヤサポーター,200…アンダーカバー,201…ボルト,210…底板部,210a…第1底面,220…傾斜板部,220a…第2底面,230…側板部,240…背板部,240a…第1背板,240b…第2背板,C,D,E,F…基準線
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカバーを備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ホイールローダーなどの建設機械は、車体フレーム、トランスミッション、プロペラシャフト及びリヤアクスルハウジングなどを備えている。
ここで、トランスミッションやプロペラシャフトなどの駆動音が車両外部に放出されることを抑制するために、車体フレームの下方全域を防音カバーによって覆う手法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再公表WO2008/004651号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手法では、リヤアクスルハウジングの下方も防音カバーによって覆われるので、リヤアクスルハウジングを効率的に冷却できないおそれがある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、リヤアクスルハウジングを効率的に冷却可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に係る建設機械は、車体フレームと、車体フレームに取り付けられるエンジンと、エンジンの回転動力を変速するトランスミッションと、トランスミッションの後方において車体フレームに取り付けられ、ディファレンシャルを内蔵するリヤアクスルハウジングと、トランスミッションの出力軸とディファレンシャルの入力軸とを連結するプロペラシャフトと、リヤアクスルハウジングから左右に突出する一対のアクスルシャフトと、一対のアクスルシャフトそれぞれの外端に支持される一対のリヤタイヤと、トランスミッション及びプロペラシャフトの下方を覆っており、リヤアクスルハウジングよりも下方に配置される底板部と、底板部とリヤアクスルハウジングとの間に配置され、底板部の後端から斜め上方に延びる傾斜板部と、を有するアンダーカバーと、を備える。
本発明の第1の態様に係る建設機械によれば、底板部の底面に沿って前方から流れてくる走行風を、傾斜板部の底面に沿わせてリヤアクスルハウジングに導くことができる。そのため、リヤアクスルハウジングに効率的に走行風を当てることによって、リヤアクスルハウジングを効率的に冷却することができる。
【0006】
本発明の第2の態様に係る建設機械は、第1の態様に係り、リヤアクスルハウジングの前方に配置され、リヤアクスルハウジングを支持するフロントサポーターを備え、アンダーカバーは、傾斜板部の後端から上方に延び、フロントサポーターの下端に沿って形成される切り欠きを含む背板部を有する。
本発明の第2の態様に係る建設機械によれば、背板部に切り欠きを形成することによって、傾斜板部をより上方に傾斜させることができる。そのため、傾斜板部の傾斜角の設定自由度を高めることができる。
【0007】
本発明の第3の態様に係る建設機械は、第12の態様に係り、側面視において、底板部の第1底面から後方に延びる第1基準線と傾斜板部の第2底面とが成す角は、第1底面と第2底面との交点を通り、リヤアクスルハウジングの下端部に接する第2基準線と第1基準線とが成す角よりも大きい。
本発明の第3の態様に係る建設機械によれば、傾斜板部の底面に沿って流れてくる走行風を、より確実にリヤアクスルハウジングに導くことができる。
【0008】
本発明の第4の態様に係る建設機械は、第1の態様に係り、側面視において、底板部の第1底面から後方に延びる第1基準線と傾斜板部の第2底面とが成す角は、第1底面と第2底面との交点を通り、リヤアクスルハウジングの上端部に接する第3基準線と第1基準線とが成す角よりも小さい。
本発明の第4の態様に係る建設機械によれば、走行風が傾斜板部の底面から剥離することによる乱流の発生を抑制できる。その結果、走行風がリヤアクスルハウジングの周囲をスムーズに通り抜けるので、リヤアクスルハウジングをより効率的に冷却することができる。
【0009】
本発明の第5の態様に係る建設機械は、第4の態様に係り、側面視において、第1基準線と第2底面とが成す角は、リヤアクスルハウジングの上下方向中央における前端点と交点とを通る第4基準線と第1基準線とが成す角よりも小さい。
本発明の第5の態様に係る建設機械によれば、走行風をリヤアクスルハウジングにより確実に導きつつ、リヤアクスルハウジング周辺における乱流の発生を抑制することができる。
【0010】
本発明の第6の態様に係る建設機械は、第1乃至5のいずれかの態様に係り、リヤアクスルハウジングの後方に配置され、リヤアクスルハウジングを支持するリヤサポーターを備え、リヤサポーターは、車両外部に露出している。
本発明の第6の態様に係る建設機械によれば、リヤサポーターは、カバーなどによって覆われていない。そのため、リヤアクスルハウジングの周囲を通り抜けた走行風を、リヤサポーターの下方に効率的に排出することができる。その結果、走行風がリヤアクスルハウジングの周囲をスムーズに通り抜けるので、リヤアクスルハウジングをより効率的に冷却することができる。
【0011】
本発明の第7の態様に係る建設機械は、第1乃至6のいずれかの態様に係り、リヤアクスルハウジングは、本体部と、本体部の表面上に配置される複数の凸部と、を有する。
本発明の第7の態様に係る建設機械によれば、リヤアクスルハウジング全体としての表面積を大きくすることができる。そのため、リヤアクスルハウジングの放熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リヤアクスルハウジングを効率的に冷却可能な建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るホイールローダー100の側面図である。
【図2】実施形態に係るホイールローダー100を下方から見た斜視図である。
【図3】実施形態に係るハウジング本体部81の内部構成を示す断面図である。
【図4】実施形態に係るホイールローダー100の内部構成を説明するための拡大側面図である。
【図5】図4の透視図である。
【図6】図4の基準線Aから前方を見た場合における車両内部の模式図である。
【図7】図4の基準線Bから前方を見た場合における車両内部の模式図である。
【図8】実施形態に係るアンダーカバー200の斜視図である。
【図9】実施形態に係るアンダーカバー200とリヤアクスルハウジング80との位置関係を説明するための模式図である。
【図10】本実施形態に係るアンダーカバー200aの斜視図である。
【図11】実施例に係るシミュレーション内容を説明するための模式図である。
【図12】比較例1に係るシミュレーション内容を説明するための模式図である。
【図13】比較例2に係るシミュレーション内容を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
なお、本実施形態では、建設機械の一例としてホイールローダーについて説明する。
【0015】
(ホイールローダー100の全体構成)
実施形態に係るホイールローダー100の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るホイールローダー100の側面図である。
ホイールローダー100は、車体フレーム10、作業機20、一対のフロントタイヤ30、運転室40、エンジンルーム50、及び一対のリヤタイヤ60を備える。
車体フレーム10は、フロントフレーム11とリヤフレーム12と連結部13とを有する。車体フレーム10は、いわゆるアーティキュレート構造を有する。フロントフレーム11は、リヤフレーム12の前方に配置される。連結部13は、フロントフレーム11とリヤフレーム12とを左右方向において揺動可能に連結する。
【0016】
作業機20は、フロントフレーム11に取り付けられる。作業機20は、図示しない油圧ポンプ11から供給される圧油によって駆動する。作業機20は、リフトアーム21と、バケット22とを有する。リフトアーム21は、フロントフレーム11に支持される。バケット22は、リフトアーム21の先端部に取り付けられる。
一対のフロントタイヤ30は、フロントフレーム11に取り付けられる。一対のフロントタイヤ30は、フロントフレーム11を支持する。
運転室40は、リヤフレーム12上に載置される。運転室40は、図示しない座席や操作具などを収容する。
【0017】
エンジンルーム50は、リヤフレーム12上に載置される。エンジンルーム50は、エンジン110(図4参照)などを収容する。
一対のリヤタイヤ60は、リヤフレーム12に取り付けられる。一対のリヤタイヤ60は、リヤフレーム12を支持する。
ここで、図2は、本実施形態に係るホイールローダー100を下方から見た斜視図である。ホイールローダー100は、一対のアクスルシャフト70、リヤアクスルハウジング80及びアンダーカバー200を備える。
【0018】
一対のアクスルシャフト70それぞれの外端は、一対のリヤタイヤ60それぞれに連結される。一対のアクスルシャフト70それぞれの内端は、リヤアクスルハウジング80に連結される。
リヤアクスルハウジング80は、ハウジング本体部81と複数の凸部82とを有する。
ここで、図3は、ハウジング本体部81の内部構成を示す断面図である。ハウジング本体部81は、前方に突出する前突出部81aと、後方に突出する後突出部81bと、を有する。前突出部81aは、中空円筒状に形成されている。
【0019】
また、ハウジング本体部81は、ディファレンシャル83と、一対の多板式ディスクブレーキ84と、ファイナルドライブ85と、を内蔵している。ハウジング本体部81の内部には、潤滑油が密封されている。
ディファレンシャル83は、ベベルギヤやベベルピニオンギヤなどの複数のギヤを組み合わせることによって構成される。ディファレンシャル83は、前突出部81a内に挿通される入力軸83aから入力される動力の伝達方向を直交方向に転換するとともに、一対のリヤタイヤ60の速度差を吸収する。一対の多板式ディスクブレーキ84は、ディファレンシャル83の左右に配置される。本実施形態に係る一対の多板式ディスクブレーキ84は、油圧式湿式多板ディスクブレーキであるが、これに限られるものではない。ファイナルドライブ85は、一対の多板式ディスクブレーキ84に隣接する。ファイナルドライブ85は、後述するトランスミッション130(図5参照)において十分に回転を減速できない場合に、回転をさらに減速させる遊星歯車機構である。ファイナルドライブ85は、一対のリヤタイヤ60の径やトランスミッション130の構造などの条件に応じて設置の要否が決められる。
【0020】
複数の凸部82は、ハウジング本体部81の表面上に配置される。複数の凸部82それぞれは、車幅方向に沿って形成されている。複数の凸部82は、ハウジング本体部81内に密封されている潤滑油の油温を所定の温度以下でサチュレートさせるために、ハウジング本体部81からの放熱を促進させる。本実施形態において、ハウジング本体部81と複数の凸部82とは、一体的に形成されている。
アンダーカバー200は、リヤアクスルハウジング80の前方に配置される。アンダーカバー200は、トランスミッション130及びプロペラシャフト140(図5参照)などの駆動音が車両外部に放出されることを抑制する。アンダーカバー200の構成については後述する。
【0021】
(ホイールローダー100の内部構成)
実施形態に係るホイールローダー100の内部構成について、図面を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係るホイールローダー100の内部構成を説明するための拡大側面図である。図5は、図4の透視図である。図4では、一対のリヤタイヤ60が省略されている。図5では、車体フレーム10及びアンダーカバー200が破線で示されている。
【0022】
ホイールローダー100は、エンジン110、トルクコンバーター120、トランスミッション130、プロペラシャフト140、フロントサポーター150及びリヤサポーター160を備える。
エンジン110は、エンジンルーム50に収容されている。エンジン110は、出力トルクをトルクコンバーター120に出力する。
【0023】
トルクコンバーター120は、エンジン110の出力トルクを変換して、変換トルクをトランスミッション130に出力する。
トランスミッション130は、エンジン110から出力される回転動力を変速する。具体的に、トランスミッション130は、トルクコンバーター120から伝達される変換トルクを、必要とする駆動力、必要とする速度(車速)に応じて変換し、変換トルクをプロペラシャフト140に出力する。トランスミッション130は、プロペラシャフト140と共に、アンダーカバー200の上方に配置される。
【0024】
プロペラシャフト140は、リヤアクスルハウジング80の前方において、前後方向に沿って配置される。プロペラシャフト140は、入力軸83aに接続されている。また、プロペラシャフト140は、アンダーカバー200の上方に配置される。プロペラシャフト140は、リヤアクスルハウジング80に内蔵されるディファレンシャル83(図3参照)に連結されている。プロペラシャフト140は、トランスミッション130から伝達される変換トルクによって回転する。
【0025】
フロントサポーター150は、リヤアクスルハウジング80の前方において、車幅方向に沿って配置される。フロントサポーター150は、アンダーカバー200の後端部上方に配置される。フロントサポーター150は、リヤアクスルハウジング80を支持する。ここで、図6は、図4の基準線Aから前方を見た場合における車両内部の模式図である。図6に示すように、フロントサポーター150は、下垂部151と、挿通孔152とを有する。下垂部151は、アンダーカバー200の後端部に形成される切り欠き部Tに嵌り込むように配置される。挿通孔152は、下垂部151に形成されている。挿通孔152にハウジング本体部81の前突出部81aが係合されることによって、リヤアクスルハウジング80は、フロントサポーター150に支持されている。
【0026】
なお、本実施形態において、フロントサポーター150は、車体フレーム10の一部を構成している。また、図6に示すように、アンダーカバー200は、複数のボルト201によって車体フレーム10に固定されている。
リヤサポーター160は、リヤアクスルハウジング80の後方に配置される。リヤサポーター160の挿通孔161にハウジング本体部81の後突出部81bが係合されることによって、リヤアクスルハウジング80は、リヤサポーター160に支持されている。図5に示すように、リヤサポーター160の下方及び後方には、アンダーカバー200などの他の部材が配置されていない空間Sが設けられている。空間Sには、リヤアクスルハウジング80の周囲を通り抜けた走行風が流れ込む。ここで、図7は、図4の基準線Bから前方を見た場合における車両内部の模式図である。図7に示すように、リヤサポーター160は、リヤアクスルハウジング80の上下方向中央部より上方に配置されている。リヤサポーター160の下方及び後方に空間Sが設けられているので、リヤサポーター160は、車両外部(特に、車体下方)に露出している。
【0027】
(アンダーカバー200の構成)
実施形態に係るアンダーカバー200の構成について、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係るアンダーカバー200の斜視図である。アンダーカバー200は、底板部210、傾斜板部220、一対の側板部230及び背板部240を有する。
底板部210は、平板状に形成される。底板部210は、リヤアクスルハウジング80よりも下方かつ前方に配置される。本実施形態において、底板部210は、トランスミッション130及びプロペラシャフト140の下方において略水平に配置されている(図5参照)。
【0028】
傾斜板部220は、平板状に形成され、底板部210に連なる。傾斜板部220は、底板部210に対して傾斜する。ここで、図9は、本実施形態に係るアンダーカバー200とリヤアクスルハウジング80とのホイールローダー100における位置関係を説明するための模式図である。傾斜板部220は、底板部210とリヤアクスルハウジング80との間に配置される。傾斜板部220は、底板部210の後端から後ろ斜め上方に延びるように配置される。すなわち、傾斜板部220は、前後方向に沿って配置される底板部210に対して、リヤアクスルハウジング80に向かって上方に傾斜している。傾斜板部220は、底板部210の第1底面210Aに連なる第2底面220Aを有する。第2底面220Aは、第1底面210Aから後方に延びる第1基準線Cに対して、傾斜角αを成している。本実施形態において、傾斜角αは、第1基準線Cと第2基準線Dとが成す第1角β1より大きく、第1基準線Cと第3基準線Eとが成す第2角β2より小さい。特に、本実施形態において、傾斜角αは、第1基準線Cと第4基準線Fとが成す第3角β3より小さい。なお、第2基準線Dは、第1底面210Aと第2底面220Aとの交点Xを通り、リヤアクスルハウジング80の下端部に接する。第3基準線Eは、交点Xを通り、リヤアクスルハウジング80の上端部に接する。第4基準線Fは、交点Xと、リヤアクスルハウジング80の上下方向中央における前端点Yとを通る。
【0029】
一対の側板部230は、傾斜板部220の両側端部上に配置される。本実施形態において、一対の側板部230は、傾斜板部220に溶接されている。一対の側板部230は、傾斜板部220と車体フレーム10との隙間を覆うように配置される(図4参照)。
背板部240は、傾斜板部220の後端部上に配置される。本実施形態において、背板部240は、傾斜板部220に溶接されている。背板部240は、傾斜板部220の後端から上方に延びるように配置されており、傾斜板部220とフロントサポーター150との隙間を覆っている(図6参照)。背板部240は、半円状に形成された切り欠き部Tを有する。上述のとおり、切り欠き部Tには、フロントサポーター150の下垂部151が嵌め込まれる。
なお、本実施形態において、背板部240は、間隙Uを介して対称に配置される第1背板240aと第2背板240bとによって構成されている。
【0030】
(作用及び効果)
(1)本実施形態に係るホイールローダー100において、アンダーカバー200は、底板部210と傾斜板部220とを有する。傾斜板部220は、底板部210とリヤアクスルハウジング80との間に配置され、底板部210の後端から斜め上方に延びている。
従って、底板部210の第1底面210Aに沿って前方から流れてくる走行風を、傾斜板部220の第2底面220Aに沿わせてリヤアクスルハウジング80に導くことができる。そのため、リヤアクスルハウジング80に効率的に走行風を当てることによって、リヤアクスルハウジング80を効率的に冷却することができる。
【0031】
(2)本実施形態に係るホイールローダー100において、アンダーカバー200は、傾斜板部220の後端から上方に延びる背板部240を有する。背板部240は、フロントサポーター150の下端に沿って形成される切り欠きTを有する。
このように、背板部240に切り欠きTを形成することによって、傾斜板部220をより上方に傾斜させることができる。そのため、傾斜板部220の傾斜角αの設定自由度を高めることができる。
【0032】
(3)本実施形態に係るホイールローダー100において、傾斜角αは、第1基準線Cと第2基準線Dとが成す第1角β1より大きい。従って、傾斜板部220の第2底面220Aに沿って流れてくる走行風を、より確実にリヤアクスルハウジング80に導くことができる。
【0033】
(4)本実施形態に係るホイールローダー100において、傾斜角αは、第1基準線Cと第3基準線Eとが成す第2角β2より小さい。従って、走行風が傾斜板部220の第2底面220Aから剥離することによる風の流れの乱れを抑制できる。その結果、走行風がリヤアクスルハウジング80の周囲をスムーズに通り抜けるので、リヤアクスルハウジング80をより効率的に冷却することができる。
【0034】
(5)本実施形態に係るホイールローダー100において、傾斜角αは、第1基準線Cと第4基準線Fとが成す第3角β3より小さい。これにより、走行風をリヤアクスルハウジング80により確実に導きつつ、リヤアクスルハウジング80周辺における風の流れの乱れを抑制することができる。
【0035】
(6)本実施形態に係るホイールローダー100において、リヤサポーター160は、車両外部に露出している。
このように、リヤサポーター160は、カバーなどによって覆われていない。そのため、リヤアクスルハウジング80の周囲を通り抜けた走行風を、リヤサポーター160の下方に効率的に排出することができる。その結果、走行風がリヤアクスルハウジング80の周囲をスムーズに通り抜けるので、リヤアクスルハウジング80をより効率的に冷却することができる。
【0036】
(7)本実施形態に係るホイールローダー100において、リヤアクスルハウジング80は、本体部81と、本体部81の表面上に配置される複数の凸部82とを有する。
このように、本体部81の表面上に複数の凸部82を配置することによって、リヤアクスルハウジング80全体としての表面積を大きくすることができる。そのため、リヤアクスルハウジング80の放熱性を向上させることができる。
【0037】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0038】
(A)上記実施形態では、建設機械としてホイールローダー100を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。建設機械としては、ホイールローダーの他、クレーン車などが挙げられる。
【0039】
(B)上記実施形態では、底板部210及び傾斜板部220は、略矩形状に形成されることとしたが、これに限られるものではない。底板部210及び傾斜板部220の形状は矩形状以外の多角形状などであってもよい。
【0040】
(C)上記実施形態では、背板240は、半円形状の切り欠きTを有することとしたが、これに限られるものではない。背板240の形状は、フロントサポーター150の形状に合わせて変更可能である。従って、背板240は、切り欠きTを有していなくてもよい。
【0041】
(D)上記実施形態では、底板部210は、水平方向に沿って配置されることとしたが、これに限られるものではない。底板部210は、水平方向に対して傾斜していてもよい。この場合、傾斜板部220は、水平方向に対して底板部210よりも大きく傾斜していればよい。
【0042】
(E)上記実施形態では、背板部240は、間隙Uを介して対称に配置される第1背板240aと第2背板240bとによって構成されることとしたが、これに限られるものではない。図10に示すように、背板部240は、間隙Uを有していなくてもよい。 このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0043】
以下、本発明に係るアンダーカバーの実施例について具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができるものである。
(実施例)
図11に示すように、実施例に係るアンダーカバー200aは、略水平に配置される底板部210aと、底板部210aの後端からリヤアクスルハウジング80に向かって斜め上方に延びる傾斜板部220aと、を有する。
【0044】
(比較例1)
図12に示すように、比較例に係るアンダーカバー200bは、略水平に配置される底板部210bと、底板部210aの後端に略垂直に立設される垂直板部220bと、を有する。また、比較例1では、リヤアクスルハウジング80の後方には、エンジンカバー110aが配置されている。
【0045】
(比較例2)
図13に示すように、比較例2では、アンダーカバーが外されている。従って、比較例2では、フロントサポーターやプロペラシャフトなどが車体下方に露出されている。
【0046】
(シミュレーション)
実施例、比較例1及び比較例2において、前方から風を流した場合にリヤアクスルハウジング80に当たる風量を解析した。
その結果、実施例に係るアンダーカバー200aによれば、比較例1に係るアンダーカバー200bに比べて、リヤアクスルハウジング80に当たる風量を約15%向上できることが判った。従って、上記実施形態に係るアンダーカバー200によれば、走行風をリヤアクスルハウジング80に向けて流すことによって、リヤアクスルハウジング80を効率的に冷却できることが証明された。
【0047】
また、実施例に係るアンダーカバー200aによれば、アンダーカバーを備えない比較例2に比べて、リヤアクスルハウジング80に当たる風量を約8.5%向上できることが判った。従って、上記実施形態に係るアンダーカバー200によれば、リヤアクスルハウジング80に向けて流れる走行風を整流することによって、リヤアクスルハウジング80を効率的に冷却できることが証明された。
【符号の説明】
【0048】
10…車体フレーム,11…フロントフレーム,12…リヤフレーム,13…連結部,20…作業機,21…リフトアーム,22…バケット,30…フロントタイヤ,40…運転室,50…エンジンルーム,60…リヤタイヤ,70…アクスルシャフト,80…リヤアクスルハウジング,81…本体部,82…凸部,110…エンジン,100…ホイールローダー,120…トルクコンバーター,130…トランスミッション,140…プロペラシャフト,150…フロントサポーター,151…下垂部,152…挿通孔,160…リヤサポーター,200…アンダーカバー,201…ボルト,210…底板部,210a…第1底面,220…傾斜板部,220a…第2底面,230…側板部,240…背板部,240a…第1背板,240b…第2背板,C,D,E,F…基準線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに取り付けられるエンジンと、
前記エンジンの回転動力を変速するトランスミッションと、
前記トランスミッションの後方において前記車体フレームに取り付けられ、ディファレンシャルを内蔵するリヤアクスルハウジングと、
前記トランスミッションの出力軸と前記ディファレンシャルの入力軸とを連結するプロペラシャフトと、
前記リヤアクスルハウジングから左右に突出する一対のアクスルシャフトと、
前記一対のアクスルシャフトそれぞれの外端に支持される一対のリヤタイヤと、
前記トランスミッション及び前記プロペラシャフトの下方を覆っており、前記リヤアクスルハウジングよりも下方に配置される底板部と、前記底板部と前記リヤアクスルハウジングとの間に配置され、前記底板部の後端から斜め上方に延びる傾斜板部と、を有するアンダーカバーと、
を備える建設機械。
【請求項2】
前記リヤアクスルハウジングの前方に配置され、前記リヤアクスルハウジングを支持するフロントサポーターを備え、
前記アンダーカバーは、前記傾斜板部の後端から上方に延び、前記フロントサポーターの下端に沿って形成される切り欠きを含む背板部を有する、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
側面視において、前記底板部の第1底面から後方に延びる第1基準線と前記傾斜板部の第2底面とが成す角は、前記第1底面と前記第2底面との交点を通り、前記リヤアクスルハウジングの下端部に接する第2基準線と前記第1基準線とが成す角よりも大きい、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
側面視において、前記底板部の第1底面から後方に延びる第1基準線と前記傾斜板部の第2底面とが成す角は、前記第1底面と前記第2底面との交点を通り、前記リヤアクスルハウジングの上端部に接する第3基準線と前記第1基準線とが成す角よりも小さい、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
側面視において、前記第1基準線と前記第2底面とが成す角は、前記リヤアクスルハウジングの上下方向中央における前端点と前記交点とを通る第4基準線と前記第1基準線とが成す角よりも小さい、
請求項4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記リヤアクスルハウジングの後方に配置され、前記リヤアクスルハウジングを支持するリヤサポーターを備え、
前記リヤサポーターは、車両外部に露出している、
請求項1乃至5のいずれかに記載の建設機械。
【請求項7】
前記リヤアクスルハウジングは、本体部と、前記本体部の表面上に配置される複数の凸部と、を有する、
請求項1乃至6のいずれかに記載の建設機械。
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに取り付けられるエンジンと、
前記エンジンの回転動力を変速するトランスミッションと、
前記トランスミッションの後方において前記車体フレームに取り付けられ、ディファレンシャルを内蔵するリヤアクスルハウジングと、
前記トランスミッションの出力軸と前記ディファレンシャルの入力軸とを連結するプロペラシャフトと、
前記リヤアクスルハウジングから左右に突出する一対のアクスルシャフトと、
前記一対のアクスルシャフトそれぞれの外端に支持される一対のリヤタイヤと、
前記トランスミッション及び前記プロペラシャフトの下方を覆っており、前記リヤアクスルハウジングよりも下方に配置される底板部と、前記底板部と前記リヤアクスルハウジングとの間に配置され、前記底板部の後端から斜め上方に延びる傾斜板部と、を有するアンダーカバーと、
を備える建設機械。
【請求項2】
前記リヤアクスルハウジングの前方に配置され、前記リヤアクスルハウジングを支持するフロントサポーターを備え、
前記アンダーカバーは、前記傾斜板部の後端から上方に延び、前記フロントサポーターの下端に沿って形成される切り欠きを含む背板部を有する、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
側面視において、前記底板部の第1底面から後方に延びる第1基準線と前記傾斜板部の第2底面とが成す角は、前記第1底面と前記第2底面との交点を通り、前記リヤアクスルハウジングの下端部に接する第2基準線と前記第1基準線とが成す角よりも大きい、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
側面視において、前記底板部の第1底面から後方に延びる第1基準線と前記傾斜板部の第2底面とが成す角は、前記第1底面と前記第2底面との交点を通り、前記リヤアクスルハウジングの上端部に接する第3基準線と前記第1基準線とが成す角よりも小さい、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
側面視において、前記第1基準線と前記第2底面とが成す角は、前記リヤアクスルハウジングの上下方向中央における前端点と前記交点とを通る第4基準線と前記第1基準線とが成す角よりも小さい、
請求項4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記リヤアクスルハウジングの後方に配置され、前記リヤアクスルハウジングを支持するリヤサポーターを備え、
前記リヤサポーターは、車両外部に露出している、
請求項1乃至5のいずれかに記載の建設機械。
【請求項7】
前記リヤアクスルハウジングは、本体部と、前記本体部の表面上に配置される複数の凸部と、を有する、
請求項1乃至6のいずれかに記載の建設機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−132289(P2012−132289A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287611(P2010−287611)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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