説明

建設機械

【課題】エンジンと油圧ポンプとの間に発電機モータを搭載した建設機械において、メンテナンス時の作業性を向上させることが可能な建設機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル51は、エンジン2と油圧ポンプ4との間に設けられ内部に油溜め部Vが形成された発電機モータ1を搭載している。油圧ショベル51は、発電機モータ1の油溜め部Vに連通する接続部33と、発電機モータ1の上方に配置された検油口31と、を有する検油管30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン、油圧ポンプおよび発電機モータを搭載したハイブリッド型の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと油圧ポンプとの間に発電機モータを搭載した、いわゆるハイブリット型の建設機械が開発されている。
このようなハイブリッド型の建設機械に搭載された発電機モータは、エンジンの出力軸と油圧ポンプの入力軸とに接続されており、エンジンの駆動力によって発電を行う。そして、発電機モータでの発電により生じた電気エネルギーはキャパシタなどの蓄電装置に蓄えられ、建設機械が大きなエンジン出力を要する場合等に、蓄えられた電気エネルギーによって発電機モータが駆動されて、エンジンの出力を補助する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハウジング内に冷却油を貯留する油溜め部を有しており、複数のコイル端部に均一に油を噴射させて効率よく冷却することが可能な発電機モータの構成について開示されている。
また、特許文献2には、エンジンと油圧ポンプとの間に組み込まれた発電機モータの構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−6554号公報(平成19年1月11日公開)
【特許文献2】特開2003−235208号公報(平成15年8月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の建設機械では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記特許文献1に開示された発電機モータは、ハウジング内に設けられた油溜め部に貯留された油の量を点検するために、油溜め部に連通する検油管が設けられている。そして、このような発電機モータを、上記特許文献2のようにエンジンと油圧ポンプとの間に配置した構成では、点検者が地面に居る状態で車両側面に設けられたフードから発電機モータの点検を実施できるように、発電機モータの検油管の検油口が油圧ポンプの上のフード側に設けられている。
【0006】
しかし、このような構成では、車両のメンテナンス時等には、エンジンの点検を車体上面に設けられたエンジンフードを開けて行い、発電機モータの点検を車体側面のフードを開けて行うことになるため、メンテナンス作業時の作業性が悪くなってしまう。
さらに、取付け台座等を介して油圧ポンプに検油口が設けられている場合には、油圧ポンプ着脱時に、油溜め部に貯留された油を抜き取った後で検油管を取り外す必要があり、作業性が非常に悪くなってしまう。
【0007】
具体的には、車体側面のフード側から見て、油圧ポンプは、発電機モータ側の面に、発電機モータのフランジを覆う円形部材の口径を有している。一方、油圧ポンプのフード側は、油圧ポンプ本体分の断面積を有している。このため、油圧ポンプは、フード側に近付くに従って断面積が徐々に小さくなる。このような条件下において検油管を配置した場合には、検油管は、油圧ポンプの形状に沿って設けられるため、フード側に近づくにつれて油圧ポンプの回転軸に近づくように斜めに配置される。このような状態で、クレーン等を用いて油圧ポンプを取り外す際に、検油口だけ取り外して油圧ポンプを取り外そうとすると、発電機モータ側のフランジを覆っている油圧ポンプの円形部材が検油口と干渉し、検油管が破損するおそれがある。よって、油圧ポンプ着脱時に、油溜め部に貯留された油をドレイン経由で抜き取った後で検油管を取り外す必要があり、非常に面倒であった。
【0008】
本発明の課題は、エンジンと油圧ポンプとの間に発電機モータを搭載した建設機械において、メンテナンス時の作業性を向上させることが可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る建設機械は、エンジンと、油圧ポンプと、発電機モータと、検油管と、を備えている。油圧ポンプは、エンジンの駆動力によって駆動される。発電機モータは、エンジンと油圧ポンプとの間に設けられており、エンジンの出力軸および油圧ポンプの入力軸に接続された回転軸と、ハウジング内に形成される収納空間の下部に設けられる油溜め部と、を有する。検油管は、発電機モータの油溜め部に貯留された油の量を点検するために油溜め部に連通する位置に設けられた接続部と、発電機モータの上方に配置された検油口と、を有する。
【0010】
ここでは、エンジンと油圧ポンプとの間に配置された発電機モータを搭載した、いわゆるハイブリッド型の建設機械において、発電機モータのハウジング内に設けられた油溜め部に貯留された油の量を点検するための検油管の検油口を、発電機モータの上方に設けている。
ここで、ハイブリッド型の建設機械の車両点検時には、通常、エンジン、油圧ポンプおよび発電機モータを点検する必要がある。
【0011】
本発明の建設機械では、発電機モータについても、エンジン等の他の点検対象物と同様に、エンジンフードを開けて車両上面から点検できるように、検油口を発電機モータの上方に設けている。
これにより、発電機モータの点検時は、エンジンの点検時と同様に、建設機械の車両上面に設けられた開閉可能なエンジンフードを開けて、検油作業を実施することが可能になる。この結果、ハイブリッド型の建設機械のメンテナンス作業における作業性を従来よりも向上させることができる。
【0012】
第2の発明に係る建設機械は、第1の発明に係る建設機械であって、エンジン、油圧ポンプおよび発電機モータを収納するエンジンルームの上部空間を覆う開閉可能なエンジンフードをさらに備えている。検油管の検油口は、エンジンフードを開けて露出する空間内に設けられている。
これにより、エンジンフードを開けてエンジンの油量を点検する際に、同時に、発電機モータの油量も点検することができる。この結果、点検時における作業性を向上させることができる。
【0013】
第3の発明に係る建設機械は、第1または第2の発明に係る建設機械であって、エンジンの油量を点検するエンジン検油管をさらに備えている。検油管の検油口は、エンジン検油管の検油口と同じ側に設けられている。
これにより、エンジンの油量を点検する際に、同時に、発電機モータの油量も点検することができる。この結果、点検時における作業性を向上させることができる。
【0014】
第4の発明に係る建設機械は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る建設機械であって、ハウジングは、エンジン側に固定された第1ハウジングと、油圧ポンプ側に固定された第2ハウジングと、によって構成されている。接続部は、第1ハウジングに設けられている。
ここでは、エンジンと油圧ポンプとの間に配置された発電機モータの検油管の接続部を、エンジン側に固定された第1ハウジング側に設けている。
【0015】
これにより、メンテナンス作業等において、油圧ポンプを取り外す必要が生じた場合でも、油圧ポンプ側に固定された検油管を取り外すために油溜め部に貯留された油を抜き取る等の面倒な作業を行う必要がない。さらに、発電機モータの分解作業を実施する際に、油圧ポンプを取り外した後で油圧ポンプ側の第2ハウジングを取り外す場合でも、検油管を取り外す必要はない。
この結果、発電機モータや油圧ポンプ周辺のメンテナンス作業を実施する際の作業性を従来よりも向上させることができる。
【0016】
第5の発明に係る建設機械は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る建設機械であって、検油管は、発電機モータに油を給油するための給油管としても使用可能である。
ここでは、上述した検油管を、油溜め部に貯留された油の量を点検することに加えて、油溜め部に油を供給する給油管としても使用する。
【0017】
これにより、例えば、検油管を用いて油溜め部に貯留された油の量を点検した際に油の量が規定量よりも少ないことが分かった場合には、この検油管を介して、油溜め部に油を補給することができる。この結果、発電機モータに検油管と給油管とを別々に設けている従来の構成と比較して、部品点数を削減して構成を簡素化し、エンジンルーム内のスペースを有効に活用することができる。
【0018】
第6の発明に係る建設機械は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る建設機械であって、検油管は、エンジン上にマウントされたマフラーを回避するように屈曲させた屈曲部を有している。
ここでは、検油管の一部に、エンジン上にマウントされているマフラーを回避するための屈曲させた部分(屈曲部)を設けている。
【0019】
ここで、発電機モータは、エンジンに隣接して配置されているため、発電機モータの真上にはエンジンに搭載された発熱量の大きいマフラーが配置されていることがある。
そこで、本発明では、マフラーの熱が検油管に悪影響を及ぼすことがないように、屈曲部を設けている。
これにより、マフラーの熱が検油管に及ぶことを回避するとともに、マフラーの配置されていないスペースに余裕がある側へ検油管を導くことができる。
【0020】
第7の発明に係る建設機械は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る建設機械であって、油圧ショベルである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る建設機械によれば、ハイブリッド型の建設機械のメンテナンス作業における作業性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す全体斜視図。
【図2】図1の油圧ショベルに搭載されたエンジン、発電機モータおよび油圧ポンプの構成を示す斜視図。
【図3】図2に含まれる発電機モータの構成を示す断面図。
【図4】図2に含まれる発電機モータの構成を示す分解斜視図。
【図5】図2に含まれる発電機モータの斜視図。
【図6】図2に含まれる発電機モータの斜視図。
【図7】図1の油圧ショベルのエンジンフードを開けた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係るハイブリッド型の油圧ショベル(建設機械)51について、図1〜図7を用いて説明すれば以下の通りである。
(油圧ショベル51)
本実施形態に係るハイブリッド型の油圧ショベル51は、図1に示すように、下部走行体52と、旋回台53と、作業機54と、カウンタウェイト55と、機器室56と、車体部57と、キャブ58と、を備えている。また、油圧ショベル51は、駆動源として、エンジン2を備えている。エンジン2の出力軸には、発電機モータ1および油圧ポンプ4が直列的に接続され、それぞれエンジン2によって駆動される。
【0024】
下部走行体52は、進行方向における左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル51を前進・後進させる。また、下部走行体52は、旋回台53を上面に搭載している。
旋回台53は、下部走行体52に対して任意の方向に旋回可能である。そして、旋回台53は、上面に作業機54と、カウンタウェイト55と、機器室56と、車体部57と、キャブ58と、を搭載している。また、旋回台53は、発電機モータ1あるいは蓄電器からの電力供給により駆動される旋回用電動モータによって回転する。なお、旋回電動モータは、旋回台53の減速時に回生により発電し、発電で得られた電気エネルギーは、キャパシタに蓄電される。
【0025】
作業機54は、ブーム61と、ブーム61の先端に取り付けられたアーム62と、アーム62の先端に取り付けられたバケット63とを含むように構成されている。そして、作業機54は、図示しない油圧回路に含まれる各油圧シリンダ61a,62a,63a等によって、ブーム61やアーム62、バケット63等を上下に移動させながら、土木工事の現場において土砂や砂礫等の掘削作業を行う。
【0026】
カウンタウェイト55は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回台53の後方に設けられている。
機器室56は、図1に示すように、カウンタウェイト55に隣接する位置に配置されており、内部にエンジン2や発電機モータ1、油圧ポンプ4等(図2参照)を収納するエンジンルーム60を有している。そして、エンジンルーム60は、開閉可能なエンジンフード64によって覆われた点検用の上部開口60a(図7参照)を有している。なお、エンジンルーム60内に設置された発電機モータ1周辺の構成については、後段にて詳述する。機器室56は、図示しない作動油タンク、エンジンルーム60とキャブ58との間に設けられた仕切り部材、車両の左右後部の側面に設けられた開閉カバー、カウンタウェイト55、エンジンフード64等によって囲まれた空間となる。また、機器室56内には、エンジン2、発電機モータ1および油圧ポンプ4が、それぞれカウンタウェイト55に沿って並設されている。
【0027】
車体部57は、作業機54の後方に配置されており、図示しない燃料タンク、作動油タンクおよび操作弁等を収容する。
キャブ58は、油圧ショベル51のオペレータが乗降する室内空間を有しており、作業機54の先端部を見通せるように、旋回台53上における作業機54の側方となる左側前部に配置されている。
【0028】
(発電機モータ1)
本実施形態の発電機モータ1は、図2に示すように、エンジン2、冷却ファン3、油圧ポンプ4およびマフラー5等を備えたハイブリッド型の油圧ショベル51に搭載されている。また、発電機モータ1は、エンジン2と油圧ポンプ4との間に配置されている。さらに、発電機モータ1は、エンジン2の出力軸、油圧ポンプ4の入力軸に対して、回転軸19(図3参照)が直接的あるいは間接的に接続されており、エンジン2の出力軸の回転駆動力によって発電を行う。発電機モータ1は、インバータを介してキャパシタに接続されている。エンジン2の回転数が増加していく(油圧ショベル51が加速していく)場合など、発電機モータ1は、必要に応じてキャパシタに蓄えられた電気エネルギーによって電動機として使用され、エンジン2の回転をアシストする。また、エンジン2がアイドリング状態にある場合には、発電機モータ1はエンジン2の回転駆動力を受けて発電し、発電によって生じた電気エネルギーはキャパシタに蓄えられる。また、本実施形態では、エンジン2、発電機モータ1、および油圧ポンプ4が直列的に配置されており、それぞれの回転軸が一直線上に配置される。
【0029】
発電機モータ1は、3相12極のSR(switched reluctance)モータであって、下部に油溜め部Vを有している。また、発電機モータ1は、図3および図4に示すように、ステータ10と、第1ハウジング11と、フライホイール12と、カップリング13と、ロータ14と、第2ハウジング15と、フランジ(フランジ部)16と、回転軸19と、を備えている。
【0030】
ステータ10は、図3に示すように、発電機モータ1の外郭を構成する第1・第2ハウジング11,15内に形成される収納空間内に設けられている。そして、ステータ10は、円環状のステータコア20やインシュレータ21、コイル23等によって構成されている。
ステータコア20は、円環状のヨーク部分と、周方向に沿って配置されヨーク部から径方向内側に向かって等角度間隔で突出するステータティースの部分とを含む複数の鋼板を積層して構成されている。なお、本実施形態では、3相12極のSRモータを構成するため、合計36本の突起を含むステータコア20が用いられている。
【0031】
複数の突起には、それぞれにインシュレータ21が装着された後、コイル23が巻回される。
第1ハウジング11は、鋳鉄製の部材であって、図3に示すように、第2ハウジング15と接合されて、内部にステータ10やロータ14等を収納する収納空間を形成する。そして、この収納空間の下部には、回転軸19や軸受け部18の潤滑を促すとともに、ステータ10の発熱部(コイル23等)を冷却するための冷却油を貯留する油溜め部Vが形成されている。また、第1ハウジング11の下端部には、図4に示すように、油溜め部Vに貯留された油の量を点検するとともに油溜め部Vに油を補給するための検油管(給油管と兼用)30が接続されている。なお、この検油管30の構成については、後段にて詳述する。
【0032】
ここで、第1・第2ハウジング11,15内の油溜め部Vに貯留される冷却油は、循環用のポンプ(図示せず)によって循環しており、第2ハウジング15の下部に設けられた冷却装置(例えば、オイルクーラ15d(図4参照))を経由して冷却された後、再び第1・第2ハウジング11,15内の空間へと戻される。
フライホイール12は、第1・第2ハウジング11,15内におけるエンジン2の出力軸側に設けられており、カップリング13を介してロータ14と接続され、第1・第2ハウジング11,15内において回転する。
【0033】
カップリング13は、図4に示すように、略円環状の部材であって、フライホイール12に対してボルト固定される。また、カップリング13は、図3に示すように、内径側に形成されたスプラインが回転軸19の外径側に形成された外歯スプライン19aと噛み合っている。これにより、フライホイール12およびカップリング13は、回転軸19を中心にしてロータ14とともに回転する。
【0034】
ロータ14は、図3に示すように、回転軸19を中心に回転する回転側の部材であって、第1・第2ハウジング11,15内の収納空間における円環状のステータ10の内周側の空間に挿入される。また、ロータ14は、外周面にロータヨーク14aが取り付けられるホルダ14bを有している。
ロータヨーク14aは、複数の鋼板(電磁鋼板)を積層した構造体であって、図3に示すように、ホルダ14bの外周面側にボルト固定されており、円環状の本体の外周面側に、周方向において等角度間隔で設けられた複数の誘導子(図示せず)を有している。ロータヨーク14aは、エンジン2側および油圧ポンプ4側にそれぞれ設けられたアルミ製のブレード14c,14cによって挟まれるように保持されている。ブレード14c,14cの外周面には、径方向外側に開口した貫通孔が形成されている。ロータ14の回転時には、この貫通孔から径方向外側に配置されたコイル23に対して冷却油が噴射される。なお、これらのブレード14c,14cについては、ロータヨーク14aが、例えば、ホルダ14bに形成された凹部によって保持可能な場合には設けられていなくてもよい。
【0035】
ホルダ14bは、図3に示すように、中央孔部に回転軸19が挿入された状態で回転軸19の外周部分にボルト固定されている。また、ホルダ14bは、略円筒形状を有する鋼製の部材であって、内側の円筒部と外側の円筒部とを組み合わせた構造となっており、その内側の円筒部の外周面と外側の円筒部の内周面との間に軸受け部18が、外側の円筒部の外周面にロータヨーク14aがそれぞれ取り付けられている。
【0036】
回転軸19は、ロータ14の回転中心となる円筒状の部材であって軸方向における一方の端部から他方の端部まで貫通する貫通孔を有しており、エンジン2側の端部に、カップリング13の内歯と嵌合する外歯スプライン19a、油圧ポンプ4側の端部に、油圧ポンプ4側の入力軸と嵌合する内歯スプライン19bが、それぞれ形成されている。また、回転軸19は、軸方向における油圧ポンプ4側の半分が、フランジ16の内側の円筒部の内周面側に挿入された状態で固定される。
【0037】
第2ハウジング15は、鋳鉄製の部材であって、図3に示すように、発電機モータ1における油圧ポンプ4側に設けられており、第1ハウジング11とともに、フライホイール12、カップリング13、ロータ14、ステータ10および回転軸19を収納するための収納空間を形成する。また、第2ハウジング15は、冷却油を冷やすためのオイルクーラ15dを有している。オイルクーラ15dの出口には、冷却油を第1・第2ハウジング11,15内の上部まで送り込むための冷却油配管15aが接続されている。また、第2ハウジング15の下部には、エンジン2側から冷却水を導く冷却水配管15bが接続されている。さらに、第2ハウジング15の肩部分には、図4に示すように、インシュレータ21を介してステータコア20の突起に巻回されたコイル23の配線等が接続される電気ボックス17が取り付けられる。
【0038】
油溜めVに貯留された冷却油は、図示しない配管を経由して図示しないフィルタ、循環用のポンプ(例えば、電動ポンプ等)を経由し、第2ハウジング15の下部に設けられたオイルクーラ15dの入口に供給される。オイルクーラ15dの出口に接続された冷却油配管15aは、図4に示すように、油溜め部Vから吸い上げた冷却油を、第1・第2ハウジング11,15内に形成された空間の上部に供給するために、2ハウジング15の上部に接続されている。
【0039】
冷却水配管15bは、図2に示すように、エンジン2に接続されており、発電機モータ1の下部に設けられたオイルクーラ15dにおける冷却媒体となる冷却水を、エンジン2からオイルクーラ15dに供給する。
なお、この冷却水は、ラジエータにおいて冷却された後、エンジン2へと供給される。エンジン2内にて分岐された冷却水は、冷却水配管15bを通過してオイルクーラ15dへ供給される。オイルクーラ15dの入口側からオイルクーラ15d内へ供給された冷却水は、冷却油との間で熱交換を行った後、出口側から冷却水戻り配管15cを通過してエンジン2へと戻され、エンジン2内の冷却水と合流した後、再びラジエータへと戻されて空気との間で熱交換を行うことで冷却される。なお、冷却水配管15bおよび冷却水戻り配管15cは、ゴム製の配管である。
【0040】
フランジ16は、図3に示すように、回転軸19と同軸状に配置される円盤状の部材であって、冷却油配管15aを介して第2ハウジング15の上部に送られた冷却油を所望の部分へ誘導する冷却油通路16aが内部に形成されている。フランジ16は、複数のボルトによって第2ハウジング15の油圧ポンプ4側に固定されている。フランジ16は、略円盤状の面から軸方向に突出する略円筒状の軸受け支持部16eを有している。軸受け支持部16eは、略円筒状の外周面側において、軸受け部18を支持している。
【0041】
冷却油通路16aは、第1・第2ハウジング11,15内の上部空間から流れてくる冷却油を、ロータ14や回転軸19と固定側の部材とが接触する軸受け部18やスプライン(係合部)等へ供給する。これにより、軸受け部18やスプライン(係合部)等には、常時、十分な量の潤滑油(冷却油)が供給される。また、このように冷却油通路16aを通じて移動する油は、ロータ14等の回転側部材の回転時に生じる遠心力によって径方向外側へと移動し、油圧ポンプ4側のコイル23に供給され、コイル23を冷却するための冷却油としても機能する。なお、この油は、回転軸19内部の貫通孔を通ってエンジン2側のスプライン部の潤滑、冷却を行う。その後、この油は、ロータ14等の回転側部材の回転時に生じる遠心力によって径方向外側に移動し、エンジン2側に設けられたコイル23の冷却に使用される。
【0042】
(検油管30)
本実施形態のハイブリッド型の油圧ショベル51に搭載された発電機モータ1は、図5に示すように、発電機モータ1の外郭を構成する第1・第2ハウジング11,15のうち、エンジン2側に固定された第1ハウジング11の下部に検油管30が接続されている。
検油管30は、第1・第2ハウジング11,15内に形成された油溜め部V内の油の量を点検するために設けられている。本実施形態では、検油管30を、油溜め部V内に油を供給するための給油管としても用いている。これにより、検油管30と給油管とを別々に設ける場合と比較して、部品点数を削減して発電機モータ1周辺の構成を簡素化することができる。
【0043】
また、検油管30は、図5および図6に示すように、検油口31、本体部32、接続部33を有している。検油管30は、エンジンフード64を開けた際に露出するエンジンルーム60の上部開口60a側に導かれている。
検油口31は、本体部32および接続部33を介して、発電機モータ1の上方に設けられている。また、検油口31は、先端部に挿入された検油棒31aを抜き差しすることで、第1・第2ハウジング11,15内に形成された油溜め部Vに貯留された油が適正な量だけ貯留されているか否かを点検する。さらに、検油口31は、発電機モータ1の上方に設けられているために、図7に示すように、ハイブリッド型の油圧ショベル51の旋回台53の機器室56の上面に設けられたエンジンフード64を開けた状態で容易にアクセス可能な位置に配置されている。これにより、エンジンフード64を開けてエンジン2の油量をエンジン検油管2aによってチェックする際に、同時に検油管30に挿入された検油棒31aによって発電機モータ1内の油量もチェックすることができる。このため、点検時の作業性を向上させることができる。
【0044】
なお、エンジン検油管2aと発電機モータ1の検油口31とは、例えば、車両の前後、左右等に分かれて設置されることなく、本実施形態のように同じ側に設けられていることが好ましい。これにより、エンジン2の油量と発電機モータ1の油量とを点検する際の作業性を向上させることができる。
本体部32は、図5に示すように、鋼管部材であって、接続部33から検油口31までをつないでいる。また、本体部32は、図6に示すように、発電機モータ1の側面視において、検油口31をエンジン2側へと導く方向に曲げた屈曲部32aを有している。屈曲部32aは、本体部32のほぼ中央部付近に設けられており、第1ハウジング11に設けられた支持部材11aを基点にして本体部32をエンジン2側へ屈曲させている。これにより、図2に示すように、検油管30が、発電機モータ1の直上付近に設けられたマフラー5付近に設けられることを回避することができる。この結果、検油管30は、マフラー5の熱の影響を受けることはない。また、検油口31をマフラー5から離間して設けることができ、油の量の点検や、油の補充等の点検作業時に、作業者がマフラー5の熱の影響を受けることがない。
【0045】
接続部33は、発電機モータ1のエンジン2側に固定された第1ハウジング11の下部に取り付けられており、発電機モータ1内に形成された油溜め部Vに連通している。これにより、発電機モータを分解する際等に、最終段階においても第1ハウジング15はエンジン2側に固定されたまま残されるため、検油管30を取り外す必要がない。
【0046】
<特徴>
本実施形態の油圧ショベル51は、図2に示すように、エンジン2と油圧ポンプ4との間に設けられ内部に油溜め部Vが形成された発電機モータ1を搭載しており、発電機モータ1の油溜め部Vに連通する接続部33と発電機モータ1の上方に配置された検油口31とを有する検油管30を備えている。
これにより、図7に示すように、ハイブリッド型の油圧ショベル51の旋回台53の機器室56上面においてエンジンフード64を開けた状態で、エンジン2のメンテナンスとともに、発電機モータ1のメンテナンスも行うことができる。この結果、ハイブリッド型の油圧ショベル51のメンテナンス作業における作業性を従来よりも向上させることができる。
【0047】
さらに、取付け台座等を介して油圧ポンプ側に検油口が設けられた従来の構成と比較して、油圧ポンプ4を取り外す際に、油圧ポンプ4における断面積が大きい側(発電機モータ1側)の部分が検油管30の一部に接触して破損する等の問題が発生することを回避することができる。
【0048】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、検油管30の接続部33が、発電機モータ1のエンジン2側に固定された第1ハウジング11に設けられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、検油管の接続部を油圧ポンプ側の第2ハウジングに設けてもよい。
【0049】
この場合でも、エンジンや発電機モータ等のメンテナンス時に、旋回台の機器室の上面においてエンジンフードを開けた状態で、エンジンおよび発電機モータのメンテナンスを一緒に行うことができ、作業性を向上させることができるという、上記と同様の効果を得ることができる。
ただし、発電機モータを分解する際等に、最終段階においても検油管を取り外す必要がないという点では、上記実施形態のように、検油管の接続部をエンジン側の第1ハウジングに設けることがより好ましい。
【0050】
(B)
上記実施形態では、本発明をハイブリッド型の油圧ショベルに適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ホイールローダやブルドーザ、ダンプトラック等の他のハイブリッド型の建設機械に対しても、同様に本発明の適用は可能である。
【0051】
(C)
上記実施形態では、エンジン2、発電機モータ1および油圧ポンプ4がこの順で直列的に配置されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、PTO(パワーテイクオフ)に対して、発電機モータが直接連結された構成であってもよい。
【0052】
(D)
上記実施形態では、発電機モータ1として、SR(switched reluctance)モータを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、PM(Permanent Magnet)モータ等、他の発電機モータを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の建設機械は、メンテナンス作業における作業性を従来よりも向上させることができるという効果を奏することから、エンジンと油圧ポンプとの間に発電機モータを搭載したハイブリッド型の建設機械に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 発電機モータ
2 エンジン
2a エンジン検油管
3 冷却ファン
4 油圧ポンプ
5 マフラー
10 ステータ
11 第1ハウジング
11a 支持部材
12 フライホイール
13 カップリング
14 ロータ
14a ロータヨーク
14b ホルダ
14c ブレード
15 第2ハウジング
15a 冷却油配管
15b 冷却水配管
15c 冷却水戻り配管
15d オイルクーラ
16 フランジ
16a 冷却油通路
16e 軸受け支持部
17 電気ボックス
18 軸受け部
19 回転軸
19a 外歯スプライン
19b 内歯スプライン
20 ステータコア
21 インシュレータ
23 コイル
30 検油管
31 検油口
31a 検油棒
32 本体部
32a 屈曲部
33 接続部
51 油圧ショベル(建設機械)
52 下部走行体
53 旋回台
54 作業機
55 カウンタウェイト
56 機器室
57 車体部
58 キャブ
60 エンジンルーム
60a 上部開口
61 ブーム
61a 油圧シリンダ
62 アーム
62a 油圧シリンダ
63 バケット
63a 油圧シリンダ
64 エンジンフード
P 履帯
V 油溜め部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの駆動力によって駆動される油圧ポンプと、
前記エンジンと前記油圧ポンプとの間に設けられており、前記エンジンの出力軸および前記油圧ポンプの入力軸に接続された回転軸と、ハウジング内に形成される収納空間の下部に設けられる油溜め部と、を有する発電機モータと、
前記発電機モータの前記油溜め部に貯留された油の量を点検するために前記油溜め部に連通する位置に設けられた接続部と、前記発電機モータの上方に配置された検油口と、を有する検油管と、
を備えている建設機械。
【請求項2】
前記エンジン、前記油圧ポンプおよび前記発電機モータを収納するエンジンルームの上部空間を覆う開閉可能なエンジンフードを、さらに備えており、
前記検油管の検油口は、前記エンジンフードを開けて露出する空間内に設けられている、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記エンジンの油量を点検するエンジン検油管を、さらに備えており、
前記検油管の検油口は、前記エンジン検油管の検油口と同じ側に設けられている、
請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記エンジン側に固定された第1ハウジングと、前記油圧ポンプ側に固定された第2ハウジングと、によって構成されており、
前記接続部は、前記第1ハウジングに設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項5】
前記検油管は、前記発電機モータに油を給油するための給油管としても使用可能である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項6】
前記検油管は、前記エンジン上にマウントされたマフラーを回避するように屈曲させた屈曲部を有している、
請求項1から5のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項7】
油圧ショベルである、
請求項1から6のいずれか1項に記載の建設機械。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−211470(P2012−211470A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77601(P2011−77601)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】