説明

建設機械

【課題】建設機械のボディに部材を溶接したりする際にECUのアース側回路の配線を容易に着脱することができる構造を備えた建設機械を提供する。
【解決手段】駆動源となるエンジンを制御するエンジンコントロールユニット23と電源となるバッテリ26とを備えた建設機械において、エンジンコントロールユニットのアース側回路の配線を延長してバッテリの近傍に配線先端を配置するとともに、配線先端をボディ又は前記バッテリのアース側端子に対してコネクタ27により着脱可能な状態で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、エンジンコントロールユニット(ECU)で制御されるエンジンによって発電機や油圧ポンプを駆動して各種作業を行う建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機やクレーンなどの建設機械は、搭載したエンジンによって発電機や油圧ポンプなどを駆動し、発電機からの電力や油圧ポンプからの油圧によって各種作業機を作動させている。前記エンジンの制御は、各種センサからの情報に基づいて燃料噴射量などを制御するエンジンコントロールユニットにより行われており、建設機械の場合、エンジンコントロールユニットは、比較的クリーンな状態の運転室内に設置されるのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。また、一般的な建設機械における電気系統は、マイナス側をボディアースとして使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−95858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大型の建設機械の場合、製造会社からユーザに引き渡された後、ユーザが使い勝手を向上させるために梯子や手摺などの部材を追加したり、ボディなどを補修したりすることが多く行われている。部材の追加や補修は、溶接により行うのが一般的であるが、建設機械のボディに部材を溶接する場合、ボディアースをとっている各種機器に溶接時の大電流がボディを通して流れると、精密機器、特に、ECUに使用されている各種電子部品が破損するおそれがある。このため、溶接を行う際には、バッテリのアース側端子から配線を取り外すとともに、破損するおそれがある部品のアース側配線も取り外して電子部品などを大電流から保護するようにしている。
【0005】
しかし、運転室内に設置されたECUは、通常の作業では操作する必要がないため、運転室のスペース効率を考慮して、座席の背面側や奥側に設けられている操作盤の裏側などに配置されていることが多い。このため、溶接の前にECUのアース側配線を取り外す際には、座席を取り外し、ECUを収納している部分のパネルを取り外す作業が必要であり、さらに、狭い場所で複数の配線接続用コネクタを取り外す必要があった。また、溶接終了後には、これらの作業を逆に行って元通りに戻す必要があり、溶接を行うための前後の作業に多大な手間を要していた。
【0006】
そこで本発明は、建設機械のボディに部材を溶接したりする際にECUのアース側配線を容易に着脱することができる構造を備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、駆動源となるエンジンを制御するエンジンコントロールユニットと電源となるバッテリとを備えた建設機械において、前記エンジンコントロールユニットのアース側回路の配線を延長して前記バッテリの近傍に配線先端を配置するとともに、該配線先端をボディ又は前記バッテリのアース側端子に対して着脱可能な状態で接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建設機械によれば、延長した配線先端を取り外すだけで溶接時の大電流からエンジンコントロールユニットを保護することができる。また、配線先端をバッテリの近傍に配置したので、溶接時にバッテリの端子から配線を取り外す際に同時に行うことができ、エンジンコントロールユニットのアース側回路の配線の着脱を容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の建設機械の第1形態例を示す概略回路図である。
【図2】建設機械の一例を示す平面図である。
【図3】同じく正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図2及び図3に示すように、本形態例に示す建設機械11は、下部走行体12の上に上部旋回体13を旋回可能に設けたものであって、上部旋回体13の前部中央に設けられたフロントブラケット14にオーガなどの作業機を昇降可能に装着したリーダが起伏可能に取り付けられる。上部旋回体13の右側には、前部に運転室15が、後部に電源となるバッテリ16を収納したバッテリ収納室17が、中央部にコントロールバルブなどを収納した機器室18がそれぞれ設けられている。また、上部旋回体13の左側には、前部から順に、燃料タンクを収納した燃料タンク収納部19、駆動源となるエンジンを収納したエンジンルーム20及び前記オーガなどの作業機を作動させるための油圧ポンプなどを収納した油圧ユニット収納部21がそれぞれ設けられている。なお、上部旋回体13の幅方向中央部には、前後方向に複数のウインチドラムが設置される。
【0011】
運転室13の内部には、中央後部側に座席が設けれ、座席の前方に操作レバーや操作ペダル、各種メータやランプ類が設けられるとともに、座席左側の壁に沿って各種スイッチなどを備えたサイドスタンド22が設けられており、このサイドスタンド22の内部に前記エンジンを制御するためのエンジンコントロールユニット(ECU)23(図1参照)が収納されている。
【0012】
図1に示すように、ECU23は、電源回路の一方、通常はプラス側回路が電源線24を介してバッテリ16のプラス端子16aに接続され、電源回路の他方、通常はECU23のマイナス側回路が、ECU23に制御される複数の機器25のプラス側回路にそれぞれ接続され、各機器25のマイナス側回路が上部旋回体13のボディにアースされることにより、ボディを介してバッテリ16のマイナス端子16bに接続されて各機器25を制御するECU23の電源回路が形成される。各機器25を介してボディアースされるECU23のマイナス側回路は、各アース側配線26,26を纏めた状態で従来より延長し、バッテリ16の近傍、すなわち、前記バッテリ収納室17内に配線先端を引き込み、配線26の先端にコネクタ27を接続し、着脱可能なコネクタ27を介してボディアースするようにしている。
【0013】
このように、溶接時に取り外す必要があるECU23のマイナス側回路のアース側配線26をバッテリ収納室17内に引き込み、コネクタ27を使用して着脱可能な状態でボディアースすることにより、建設機械11に部材を溶接したり、ボディなどの補修を溶接で行う際に、バッテリ収納室17に設けられている点検扉を開いてバッテリ16のマイナス端子16bからアース用の配線を取り外すのと同時に、コネクタ27を取り外してECU23のマイナス側回路をボディから切り離すことができる。
【0014】
したがって、従来のように運転室15内の狭いスペースで座席を取り外し、サイドスタンド22のパネルを取り外した後、ECU23のマイナス側回路の各コネクタを一つずつ取り外す作業に比べ、アース側回路を切り離す際の作業性を大幅に向上させることができ、作業時間の短縮が図れるとともに、複数の配線26を一つのコネクタ27に纏めて接続しておくことにより、全てのアース側配線26を確実に取り外すことができる。また、元の状態に戻す作業も極めて容易なものとなる。
【0015】
なお、本形態例では、ECU23のマイナス側回路のアース側配線26をコネクタ27によって着脱可能としたが、バッテリ収納室17内にアース用のターミナルを設けてアース側配線26をボルトなどで着脱可能に形成したり、バッテリ16のマイナス端子16bからの配線に対となるコネクタやターミナルを設けることもでき、遮断器のようなものを使用することもできる。さらに、ECU23以外の機器のアース側回路を含めることも可能である。また、本形態例では、杭打機を例示したが、クレーンやショベルなどの建設機械にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0016】
11…建設機械、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…フロントブラケット、15…運転室、16…バッテリ、16a…プラス端子、16b…マイナス端子、17…バッテリ収納室、18…機器室、19…燃料タンク収納部、20…エンジンルーム、21…油圧ユニット収納部、22…サイドスタンド、23…エンジンコントロールユニット(ECU)、24…電源線、25…ECUに制御される機器、26…アース側配線、27…コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源となるエンジンを制御するエンジンコントロールユニットと電源となるバッテリとを備えた建設機械において、前記エンジンコントロールユニットのアース側回路の配線を延長して前記バッテリの近傍に配線先端を配置するとともに、該配線先端をボディ又は前記バッテリのアース側端子に対して着脱可能な状態で接続したことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−67512(P2012−67512A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213189(P2010−213189)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)