説明

建設機械

【課題】カバー取り付けの際に集積公差が発生しても、確実にカバーと車体フレームとを固定することができる建設機械を提供する。
【解決手段】車体フレーム4及びカバー材30を固定するための支持材6と、固定ユニット24とを有する建設機械において、固定ユニット24は、カバー材30に設けられた第1のボルト孔17及び支持材6に設けられた第2のボルト孔9にそれぞれ挿通されるボルト25と、ボルト25が螺合されるナット26とからなり、第1のボルト孔17の孔径はボルト25の外径と略同一であり、第2のボルト孔9は第1のボルト孔25より大径であり、支持材6は、第1のボルト孔17と同径の第3のボルト孔16が形成された取付けプレート10を有し、且つ支持材6における内側にて少なくとも第3のボルト孔16が第2のボルト孔9の範囲内で露出するように取付けプレート10を移動可能に保持する保持爪15を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関するものであり、より詳しくは、エンジンや燃料タンク等を収容するための空間を車体フレームとカバーにて形成している建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設機械のカバー構造が特許文献1に記載されている。このカバー構造は、カバー及びその関係部品を一体構造にして、カバー取り付けの際の作業性の向上を図るものである。
【0003】
特許文献1に代表されるような建設機械は、車体を形成する車体フレームに、エンジンや燃料タンク等の収容物を配置し、カバーで覆ってこれらを収容している。このカバーは、車体フレームに形成された取付部に対してボルト等の固定手段を用いて固定される。カバーは、車体に対して1枚ではなく、分割して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−8499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分割されたそれぞれのカバーを順番に取付けていった場合に、集積公差により、カバーと車体フレームとの取付位置がずれることがある。
具体的には、カバーと車体フレームをボルト締めする場合、カバーに設けられたボルト孔と、車体フレームに設けられたボルト孔との位置がずれてしまうため、ボルトを挿通できず、両者を固定できないことがある。
【0006】
このため、従来ではボルト孔をボルトの径に対して大きくし、ボルトの挿通を確保していたが、ボルト孔を大きくするとカバーとフレームとの固定信頼性に問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、カバー取り付けの際に集積公差が発生しても、確実にカバーと車体フレームとを固定することができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、車体フレームと、該車体フレームを覆う複数のカバー材からなるカバーと、前記車体フレームに設けられ、前記カバー材がそれぞれ外側に固定される支持材と、該支持材と前記カバー材とを互いに固定するための固定ユニットとを備えた建設機械において、前記固定ユニットは、前記カバー材に設けられた第1のボルト孔及び前記支持材に設けられた第2のボルト孔にそれぞれ挿通されるボルトと、該ボルトが螺合されるナットとからなり、前記第1のボルト孔の孔径は前記ボルトの外径と略同一であり、前記第2のボルト孔は前記第1のボルト孔より大径であり、前記支持材は、前記第1のボルト孔と同径の第3のボルト孔が形成された取付けプレートを有し、且つ前記支持材における内側にて少なくとも前記第3のボルト孔が前記第2のボルト孔の範囲内で露出するように前記取付けプレートを移動可能に保持する保持爪を有することを特徴とする建設機械を提供する。
【0009】
好ましくは、前記ナットは、前記第3のボルト孔と連通して前記取付けプレートに溶接固定された溶接ナットである。
【0010】
好ましくは、前記支持材は、前記第2のボルト孔が形成された板形状の固定部と、該固定部の一方の側縁から略垂直に立ち上がる壁部とを有する断面略L字状であり、前記保持爪は、前記固定部に沿って前記壁部に対して垂直方向に延びて一対のみ形成され、前記取付けプレートは、前記一対の保持爪に沿って前記壁部に向けてスライド可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のカバー材を順番に車体フレームに取付けて、建設機械を製造している過程において、集積公差が発生してカバー材の第1のボルト孔と車体フレームの第2のボルト孔の位置がずれたとしても、第2のボルト孔は第1のボルト孔より大径であるので、ボルトを第1及び第2のボルト孔に挿通することができる。これに加えて、車体フレームに設けられた支持材が第3のボルト孔を有する取付けプレートを有し、この取付けプレートが、第3のボルト孔が第2のボルト孔の範囲内で露出するように移動できるので、ボルトはこのボルトの外径と略同径の第1及び第3のボルト孔に挿通される。したがって、車体に対するカバー取り付けの際に集積公差が発生しても、確実にカバーと車体フレームとを固定することができる。
【0012】
また、ナットを取付けプレートに溶接固定すれば、部品点数が減少し、ボルトを挿通するとともに螺合させることができ、作業性が向上する。
【0013】
また、支持材を板形状の固定部と壁部とを用いて断面略L字状とすることで、壁部を利用して取付けプレートの移動を制限することができる。このため、取付けプレートの移動範囲の制限のための保持爪の数を低減でき、したがって保持爪を形成するための加工工数が低減し、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る建設機械の概略側面図である。
【図2】本発明に係る建設機械の概略平面図である。
【図3】支持材の概略斜視図である。
【図4】支持材の概略断面図である。
【図5】支持材の概略平面図である。
【図6】支持材にカバー材を取付ける工程を順番に示す概略図である。
【図7】支持材にカバー材を取付ける工程を順番に示す概略図である。
【図8】支持材にカバー材を取付ける工程を順番に示す概略図である。
【図9】支持材にカバー材を取付ける工程を順番に示す概略図である。
【図10】溶接ナットを用いた支持材の概略断面図である。
【図11】保持爪の数を変更した別の支持材の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明に係る建設機械5は、下部走行体1と、上部旋回体2とを備えている。図のようなショベルタイプの場合、下部走行体1はクローラ式の走行体である。上部旋回体2は、この下部走行体1に旋回輪8を介して搭載されている。したがって、上部旋回体2は下部走行体1に対して旋回可能である。上部旋回体には、ブーム、アーム、バケットからなる作業装置3が設けられている。また、上部旋回体2の前方左側には運転席となるキャブ11が備わっている。また、上部旋回体2の後方には、車体全体として作業装置3とのバランスを取るためのカウンタウエイト12が設けられている。
【0016】
上部旋回体2は、車体フレーム4とこの車体フレーム4を覆うカバー20とを備えている。カバー20は、車体フレーム4に載置されたエンジン13や油圧ポンプ14、あるいは燃料タンクや作動油タンク等の各種タンク(不図示)等の収容物を覆っている。カバー20は、複数のカバー材で構成されている。カバー材としては、エンジン13を覆うエンジンカバー材21、作動油タンクを覆う作動油タンクカバー材18、燃料タンクを覆う燃料タンクカバー材19、車体フレーム4の上面略中央部分を覆う上面カバー材30、キャブ11の後方を覆う補助カバー材31、車体フレーム4の左右両側を覆う右サイドカバー材23及び左サイドカバー材22等がある。
【0017】
図3〜図5に示すように、車体フレーム4には支持材6が一体あるいは別体として設けられている。この支持材6は、上述したカバー材が固定される部位に設けられている。図の例では、支持材6は、板形状の固定部7とこの固定部7の一方の側縁から略垂直に立ち上がる壁部8からなる断面略L字形状である。固定部7には、カバー材を固定するためのボルトが挿通される第2のボルト孔9が設けられている。また、固定部7の内側(図4の下側)には、取付けプレート10が取付けられている。固定部7は、一部が切り込まれて内側に折り込まれ、さらに折り返されて取付けプレート10を受けるための保持爪15が形成されている。複数の保持爪15で形成される取付けプレート10の収容領域は、取付けプレート10の面積よりも大きいため、取付けプレート10は保持爪15で保持された状態で移動(スライド)可能である。具体的には、保持爪15で形成される保持領域の外縁から取付けプレート10の外縁までの長さE(図4参照)は、公差代を考慮して定められるが、取付けプレート10の外縁からそれぞれ5mm程度である。また、取付けプレート10には、第3のボルト孔16が形成されている。
【0018】
このような支持材6が車体フレーム4に設けられている状態で、上述した各種カバー材が取付けられる。まず、図6に示すように、支持材6の外側(図6の上側)から、例えば上面カバー材30を被せる(図6の矢印A方向)。このとき、上面カバー材30には第1のボルト孔17が形成されているので、この第1のボルト孔17と支持材6に形成された第2のボルト孔9とが略一致するように位置決めする。具体的には、第2のボルト孔9は第1のボルト孔17よりも大径であるため、第2のボルト孔9の範囲内に収まる位置に第1のボルト孔17を合わせて上面カバー材30を被せる。
【0019】
このように位置合わせされた上面カバー材30は、図7に示すように、支持材6上に載置される。しかしながら、上述したように、建設機械5の製造に際しては分割された複数のカバー材を順番に取付けていくため、上面カバー材30のような後半に取付けられるカバー材については、集積公差が発生して、第1のボルト孔17の位置が規定位置よりずれてしまうことがある。図7はこのような集積公差が発生した状態で上面カバー材30を載置した例を示している。しかしながら、第2のボルト孔9は第1のボルト孔17より大径であるため、集積公差により上面カバー材30の位置が多少ずれたとしても、第1のボルト孔17の範囲内に第2のボルト孔9を合わせることができる。
【0020】
この後、取付けプレート10を移動させて(図7の矢印B方向)、第3のボルト孔16と第1のボルト孔17との位置を合わせる。第3のボルト孔16は予め第2のボルト孔9の範囲内で露出するようにセットされているため、第1のボルト孔17から指などを第2及び第3のボルト孔9、16に通して、取付けプレート10を移動させることができる。そして、このように第3のボルト孔16と第1のボルト孔17との位置が合った状態で、固定ユニット24で上面カバー材30と支持材6とを固定する。すなわち、図8に示すように、固定ユニット24を構成するボルト25とナット26とを用意し、第1〜第3のボルト孔9、16、17に対してボルト25を上側から挿通する(図8の矢印C方向)。そして、ナット26を下側から移動させ(図8の矢印D方向)、ボルト25をナット26に螺合させる。これにより、図9に示すように、上面カバー材30と支持材6とが互いに固定される。
【0021】
このとき、第1のボルト孔17の孔径はボルト25の外径と略同一である。さらに、第3のボルト孔16は、第1のボルト孔17の孔径と同径である。また、上面カバー材30は他の位置で支持材6を用いずに車体フレーム4に固定されている。したがって、支持材6を用いて固定した位置であっても、ボルト25の挿通を確実なものとでき、さらにボルト25の位置が上面カバー材30を取付けた後であってもずれることはない。
【0022】
以上により、複数のカバー材を順番に車体フレーム4に取付けて建設機械5を製造している過程において、集積公差が発生して上面カバー材30の第1のボルト孔17と車体フレーム4の第2のボルト孔9の位置がずれたとしても、第2のボルト孔9は第1のボルト孔17より大径であるので、ボルト25を第1及び第2のボルト孔17、9に挿通することができる。これに加えて、車体フレーム4に設けられた支持材6が第3のボルト孔16を有する取付けプレート10を有し、この取付けプレート10が、第3のボルト孔16が第2のボルト孔9の範囲内で露出するように移動できるので、ボルト25はこのボルト25の外径と略同径の第1及び第3のボルト孔17、16に挿通される。したがって、車体に対するカバー取り付けの際に集積公差が発生しても、確実に上面カバー30と車体フレーム4(支持材6)とを固定することができる。
【0023】
他の実施例として、図10に示すように、上述したナット26を取付けプレート10に溶接した溶接ナット27としてもよい。このように、溶接ナット27とすれば、部品点数が減少し、ボルト25の挿通とともに溶接ナット27への螺合も行うことができるので、作業が簡略化し、作業性が向上する。
【0024】
また、支持材6を上述したような断面略L字状のものを用いた場合、保持爪15は、固定部7に沿って壁部8に対して垂直方向に延びて一対のみ形成すればよい。このように、支持材6の長手方向への移動を保持爪15にて規制し、これと垂直方向への移動の規制は、壁部8にて行ってもよい。なお、取付けプレート10は、保持爪15に両側を保持された状態で壁部8に向けてスライドさせて装着される。これにより、支持材6を板形状の固定部7と壁部8とを用いて断面略L字状とすることで、壁部8を利用して取付けプレート10の移動を制限することができる。このため、取付けプレート10の移動範囲の制限のための保持爪15の数を低減でき、したがって保持爪15を形成するための加工工数が低減し、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0025】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 作業装置
4 車体フレーム
5 建設機械
6 支持材
7 固定部
8 壁部
9 第2のボルト孔
10 取付けプレート
11 キャブ
12 カウンタウエイト
13 エンジン
14 油圧ポンプ
15 保持爪
16 第3のボルト孔
17 第1のボルト孔
18 作動油タンクカバー材
19 燃料タンクカバー材
20 カバー
21 エンジンカバー材
22 左サイドカバー材
23 右サイドカバー材
24 固定ユニット
25 ボルト
26 ナット
27 溶接ナット
30 上面カバー材
31 補助カバー材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
該車体フレームを覆う複数のカバー材からなるカバーと、
前記車体フレームに設けられ、前記カバー材がそれぞれ外側に固定される支持材と、
該支持材と前記カバー材とを互いに固定するための固定ユニットと
を備えた建設機械において、
前記固定ユニットは、前記カバー材に設けられた第1のボルト孔及び前記支持材に設けられた第2のボルト孔にそれぞれ挿通されるボルトと、該ボルトが螺合されるナットとからなり、
前記第1のボルト孔の孔径は前記ボルトの外径と略同一であり、
前記第2のボルト孔は前記第1のボルト孔より大径であり、
前記支持材は、前記第1のボルト孔と同径の第3のボルト孔が形成された取付けプレートを有し、且つ前記支持材における内側にて少なくとも前記第3のボルト孔が前記第2のボルト孔の範囲内で露出するように前記取付けプレートを移動可能に保持する保持爪を有することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記ナットは、前記第3のボルト孔と連通して前記取付けプレートに溶接固定された溶接ナットであることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記支持材は、前記第2のボルト孔が形成された板形状の固定部と、該固定部の一方の側縁から略垂直に立ち上がる壁部とを有する断面略L字状であり、
前記保持爪は、前記固定部に沿って前記壁部に対して垂直方向に延びて一対のみ形成され、
前記取付けプレートは、前記一対の保持爪に沿って前記壁部に向けてスライド可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−104224(P2013−104224A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248690(P2011−248690)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】