説明

建造物の外壁開口部断熱構造

【課題】円滑に開閉することができ、使用時には外壁の開口を閉じることができ、不使用時には外壁内に収納できて嵩張らない断熱性を有する遮蔽部材を採用した建造物の外壁開口部断熱構造を提供することである。
【解決手段】建造物の外壁20に形成された開口21の屋外側にガラス戸22,23を設け、該開口21の屋内側にレール又は溝を設け、このレール又は溝に対してスライド移動可能に係合する係合部位7a,7bを有し且つ断熱性を有する断熱扉1を設け、断熱扉1は外壁20に形成された戸袋2内に収納可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の外壁に設置される窓等の開口部の断熱性を向上させる構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今は、全世界的に地球温暖化を阻止する動きが顕著であり、エネルギーロスの低減化が大きな課題となっている。そして、冷暖房設備が設けられた建造物では、外壁に断熱材を設けて、屋外と屋内との間で熱が移動しないように工夫されている。すなわち、建造物の断熱性を向上させることによって、冷暖房の効率が良くなり、省エネルギーに寄与することができる。
【0003】
ところで、外壁は断熱材によって断熱性能を向上させることができるが、外壁に設けられた窓等の開口には、外壁と同様に断熱材を設けることができない。そのため、熱は窓を介して屋内と屋外とを移動するので、外壁の断熱性を向上させるだけでは建造物の断熱対策は不十分である。
【0004】
そこで特許文献1に開示されているような暖房省エネ効果カーテンの施工法の発明が創案されている。特許文献1に開示されている発明では、窓に設置されたカーテンを工夫し、カーテンと天井、及びカーテンと床との間に隙間が生じないようにすることで、屋外と屋内との間の熱の移動を抑制し、断熱性を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−230977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されているカーテンは、窓を遮蔽する場合には威力を発揮するが、窓を開けるか又は採光する場合に束ねると、非常に嵩張ってしまう。すなわち、当該カーテンを拡げた際の面積は、窓枠の面積よりも広く、さらに当該カーテンは天井や床に完全に密着するほどの高さ寸法を有しているので、拡げたカーテンを束ねるのは困難である。特に、カーテンの上端と下端は束ねにくく、屋内において場所をとってしまう。
【0007】
そこで本発明は、円滑に開閉することができ、不使用時には外壁内に収納できて嵩張らない断熱性を有する遮蔽部材を採用した建造物の外壁開口部断熱構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、建造物の外壁に形成された開口の屋外側にガラス戸を設け、該開口の屋内側に断熱性を有する遮蔽部材を開閉可能に設け、前記遮蔽部材は外壁内に収納可能であることを特徴とする建造物の外壁開口部断熱構造である。
【0009】
請求項1の発明の建造物の外壁開口部断熱構造を実施すると、建造物の外壁に形成された開口の断熱性が、遮蔽部材によって向上する。その結果、建造物全体の断熱性が向上する。また、遮蔽部材は外壁内に収納可能であるので、遮蔽部材を外壁内に収納すると、ガラス戸を開けるときや採光するときに邪魔にならない。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、建造物の外壁の熱が逃げ易い開口を遮蔽部材で閉じることができるので、外壁の開口の断熱性を向上させることができる。その結果、建造物全体の断熱性が向上する。さらに、遮蔽部材は外壁内に収納可能であるので、不使用時には、遮蔽部材を外壁内に収納し、ガラス戸を開けたり、採光することができる。また、遮蔽部材をガラス戸よりも屋内側に設けるので、ガラス戸によって風雨を遮断することができ、遮蔽部材の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】建造物の窓の横断平面図であり、(a)は窓枠に断熱扉を取り付ける直前の状態を示しており、(b)は窓枠に取り付けた断熱扉を閉じた状態を示しており、(c)は断熱扉を開いた状態を示しており、(d)は(c)においてガラス戸を開いた状態を示している。
【図2】(a)は本発明の断熱扉を備えた建造物の窓の縦断側面図であり、(b)は(a)に備えた断熱扉とは異なる断熱扉を備えた建造物の窓の縦断側面図である。
【図3】図2(a)に示す断熱扉の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0013】
図1(a)に示すように、ビルや家屋等の建造物の外壁20には、窓用の開口21が設けられている。開口21(窓)の下面には2本の平行なガラス戸用のレール24a,25aが設けてあり、同様に開口21の上面には2本の平行なガラス戸用のレール24b,25bが設けてある。レール24aとレール24bは、上下に対向しており、同様にレール25aとレール25bが、上下に対向している。
【0014】
また、開口21の下面には、レール24a,25aと平行にレール3aが設けてあり、開口21の上面には、レール24b,25bと平行にレール3bが設けてある。レール3aとレール3bは、上下に対向している。レール3aはレール24a,25aよりも屋内側に設置されており、レール3bはレール24b,25bよりも屋内側に設置されている。レール3a,3bは、後述する断熱扉用のレールである。
【0015】
さらに外壁20には、開口21の側面に開口する戸袋2が設けてある。すなわち、開口21の一方の側面には、戸袋2の出入口が形成されており、その出入口の縁として戸袋開口縁2bが形成されている。また、図1(a)に示すように、戸袋2はレール3a,3bの延長上に形成されている。また、断熱扉用のレール3aは、ガラス戸用のレール24a,25aよりも屋内側に配置されている。
【0016】
以上のような構成を備えた建造物の外壁20の開口21には、引き戸式のガラス戸22,23が装着される。すなわち、ガラス戸22の下部にはレール24aに対応する溝22aが形成されており、ガラス戸22の上部にはレール24bに対応する溝22bが形成されている。そして、ガラス戸22の溝22a,22bを、開口21のレール24a,24bに係合させ、ガラス戸22を開口21に装着する。同様に、ガラス戸23には溝23a,23bが設けてあり、これらの溝23a,23bを開口21のレール25a,25bに係合させる。図1は、開口21にガラス戸22,23を装着した状態を示している。
【0017】
次に、断熱扉1は、次のような構成を有している。
【0018】
図3に示すように断熱扉1は、本体5(遮蔽部材)と取っ手6とを有している。本体5は、開口21よりも若干幅方向の寸法が大きく、開口21を閉塞できる大きさの板状体である。また、取っ手6は、断熱扉1の一方の端部に設けられており、本体5に対して起立(すなわち直交)している。さらに取っ手6は当接部6a,6bを有しており、断熱扉1を開口21に設置した際には、取っ手6は屋内側に突出する。
【0019】
すなわち、図1(b)に示すように、当接部6a,6bは、各々取っ手6の両側の面である。そして、当接部6aは戸袋2側の面であり、当接部6bはその反対側の面である。さらに断熱扉1の下部には溝7aが設けてあり、上部には溝7bが設けてある。溝7a,7bは、各々レール3a,3bに係合する溝である。
【0020】
この断熱扉1が、図1(a)に示す状態から図1(b)に示す状態に開口21へ装着される。すなわち、開口21のレール3a,3bに、断熱扉1の溝7a,7bを係合させ、断熱扉1を開口21に装着する。作業者は、開口21に装着された断熱扉1を取っ手6で操作することができる。すなわち、取っ手6の当接部6b側を押すことにより、開口21を閉じた状態の断熱扉1を開く(戸袋2内に収納する)ことができ、逆に、当接部6aを押すことにより、開口21を開いた状態の断熱扉1を閉じる(戸袋2から引き出す)ことができる。
【0021】
図1(b)に示す状態では、断熱扉1は開口21を閉塞しており、断熱効果を奏することができる。また、ガラス戸22,23と断熱扉1の間には空間8が形成される。この空間8に介在する空気も、屋外と屋内の間の断熱に寄与する。すなわち、空間8内の空気が、従来のカーテンと同様の断熱効果を奏する。よって、断熱材を備えた断熱扉1による断熱効果と、空間8内の空気層による断熱効果とを期待することができる。断熱扉1は、例えば、グラスウール等の無機繊維系の素材や、押し出し発泡ポリスチレン等の発泡プラスチック系の素材で形成される。
【0022】
次に、取っ手6の当接部6bを押し、図1(c)に示すように、断熱扉1をレール3a,3bに沿ってスライド移動させると、断熱扉1は戸袋2内に収納される。その際、取っ手6の当接部6aが戸袋開口縁2bに当接し、断熱扉1は停止する。図1(c)に示す状態では、断熱扉1が戸袋2に収納されて、断熱扉1とガラス戸22,23との間の空間8が解放されている。そして、屋内側からガラス戸22,23を開閉操作することができる。図1(d)は、ガラス戸23がレール25a,25bに沿ってスライド移動し、窓が開いている状態を示している。すなわち、図1(d)に示す状態は、窓を介して採光すると共に、換気が可能な状態である。
【0023】
図2(a)に示すように断熱扉1は屋内側に突出する取っ手6を備えているが、この取っ手6を省略することもできる。すなわち断熱扉1の代わりに、図2(b)に示す断熱扉10を開口21に装着してもよい。
【0024】
また、断熱扉10は、断熱扉1のような溝7a,7bが設けられておらず、断熱扉10を装着する開口21の下面及び上面に、各々溝11a,11bが設けられている。そして、図2(b)に示すように溝11a,11bによって断熱扉10の下部及び上部がスライド移動可能に支持される。
【0025】
断熱扉1や断熱扉10を、住宅の台所等のエネルギーの使用量(消費量)が多い部屋の窓に設置して断熱性を向上させると、特に省エネルギー効果が期待できる。また、断熱材が設けられた外壁や床の表面温度の向上や、断熱扉1や断熱扉10が設けられた窓からの冷気の侵入を防止することにより屋内の快適性が向上する。
【0026】
特定の部屋だけを断熱すればよい場合においても、本発明を効果的に実施することができる。すなわち、特定の部屋の外壁にのみ断熱材を施し、当該部屋の窓に本発明を実施すると、建造物全体の断熱性を向上させる必要がなく、経済的である。例えば、住宅の場合、新築時に最もエネルギーを消費する部屋や寝室等の断熱性を向上させておくと、リフォーム時に断熱対策が不要になる。
【0027】
換言すると、建造物全体は法律の基準を満たす断熱性を備えると共に、本発明を実施することによって、特定の部屋の断熱性のみを重点的に更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 断熱扉
2 戸袋(外壁内)
2b 戸袋開口縁
3a、3b 断熱扉用のレール
5 断熱扉の本体(遮蔽部材)
6 取っ手
6a、6b 当接部
7a、7b 断熱扉の下部及び上部に設けた溝
20 建造物の外壁
21 開口
22,23 ガラス戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の外壁に形成された開口の屋外側にガラス戸を設け、該開口の屋内側に断熱性を有する遮蔽部材を開閉可能に設け、前記遮蔽部材は外壁内に収納可能であることを特徴とする建造物の外壁開口部断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−46905(P2012−46905A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187976(P2010−187976)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】