説明

建造物外壁面の親水性防汚処理方法及び建造物

【解決課題】建造物の外壁面に存在する旧塗膜の上に、大気中の塵芥や油性物質の吸着による塗膜表面の汚染が少なく、降雨後の雨筋跡が残り難い耐汚染性が長期に亘り良好で、かつ耐水性に優れた低汚染性塗膜を形成することができる建造物外壁面の親水性防汚処理方法を提供する。
【解決手段】建造物の外壁面に存在する旧塗膜の上に下塗塗料を塗布して下塗塗膜を形成した後、この下塗塗膜の上に親水性防汚塗料を塗布し、塗膜厚が10〜40μmであって、塗膜表面の水接触角が50°以下である親水性防汚塗膜を形成する建造物外壁面の親水性防汚処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、家屋、塀等の建築物、高速道路の防音壁、橋梁、公園等に設置される鉄製、コンクリート製等の種々の構造物等、各種の建造物の外壁面に親水性防汚塗膜を形成する方法に係り、更に詳しくは、建造物の外壁面に、耐汚染性、耐候性、耐水性等に優れ、長期に亘って外観及び密着性を維持できるほか、自己洗浄能力を有する親水性防汚塗膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の建造物における外装建材等の外壁面においては、様々な原因で傷つきや剥れが生じ、補修を余儀なくされる。その主なものには、下地層との付着性不良による剥がれや、トップコート層の経年劣化によるワレ、水廻りによるふくれ、太陽熱を原因とするふくれ、ストレスによるワレ等がある。また、環境中の水性及び油性の汚染物質が外装建材等の外壁面に付着し、この外壁面に施された塗膜には経年劣化が生じると共に変色等の問題が生じる。また、昨今では、建造物の外壁面において、雨の流れに沿って筋状に汚染物質が付着する雨筋汚染が生じ、景観の悪化等の理由によりこの雨筋汚染が問題視されている。
【0003】
これら汚染物質は、例えば、高圧水洗浄、カセイソーダ等を用いたアルカリ洗浄、無機酸又は有機酸を用いた酸性洗浄、又は、ケレン等による補修洗浄等の手段により除去されており、また、変色した塗膜は、補修塗装によりほぼ初期状態に近いものとなるが、再び汚染物質の付着や塗膜の変色が発生し、長期間に亘る汚染防止ができないのが現状である。
【0004】
ところで、建造物の外壁面に存在する旧塗膜上の汚染物質を除去した後、シリケート及び/又はオルガノシランの部分加水分解縮合物を含有する補修塗料を塗布することにより、その塗膜形成過程においてシリケート及び/又はオルガノシランの部分加水分解縮合物が旧塗膜の表面に移行し、そこで相分離した塗膜を形成させることにより、建造物外壁面に耐汚染性のある補修塗膜を形成することは知られている。しかしながら、当技術では塗膜表面へのシリケート及び/又はオルガノシランの部分加水分解縮合物の旧塗膜表面への移行が十分でなく、市場が要求する十分な耐汚染性に優れた塗膜を形成するには至っていない。
【0005】
また、建造物の外壁面の旧塗膜上にポリイソシアネート化合物を含有する補修剤を塗布し、旧塗膜を再溶解した後、再び硬化させることによって下地層を形成し、この下地層の上にトップコート層を形成する外壁塗装の補修方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法においては、補修後の塗膜について、汚染防止の効果はさほど期待することができない。
【0006】
更に、建造物の外壁面の旧塗膜がフッ素樹脂系塗膜である場合に、その補修方法として、シランカップリング剤含有アクリル系塗料を旧塗膜上に塗装後、フッ素樹脂系塗料を塗装する補修塗装方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法においても、フッ素樹脂系の旧塗膜への密着性や補修後のフッ素樹脂系塗膜の耐候性については期待し得るが、汚染防止効果については期待し得ない。
【0007】
更にまた、建造物の外壁面の旧塗膜上に水分散型コロイダルシリカを主成分とする補修剤を塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法においては、汚染防止に対する効果は高いが、その粘性により塗布ムラが目立ち易く、塗装には高度な技術が必要であり、また、薄膜(1〜2μ)であることから、本補修剤塗布による長期に亘る耐候性は期待できない。
【0008】
更には、従来から有機溶剤希釈型塗料が多く用いられてきたが、シックハウス症候群や大気中への有機溶媒の放散等の環境問題等が提起され、近年は、有機溶剤希釈型塗料から水性塗料への転換が加速度的に進行している。また一方で、消費者ニーズは、これらの商品について、形成される塗膜の長期耐久性や高機能化への期待感も高まりを見せている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-207,652号公報
【特許文献2】特開平10-298,486号公報
【特許文献3】特開2010-138,358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、各種の建造物の外壁面に耐汚染性、耐候性、耐水性等に優れ、長期に亘って外観及び密着性を維持でき、しかも、自己洗浄能力を有する防汚塗膜を形成することについて鋭意検討した結果、建造物外壁面の旧塗膜に下塗塗膜を形成した後、所定の膜厚で所定の水接触角を有する親水性防汚塗膜を形成せしめることにより、目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
従って、本発明の目的は、建造物の外壁面に存在する旧塗膜の上に、大気中の塵芥や油性物質の吸着による塗膜表面の汚染が少なく、降雨後の雨筋跡が残り難い耐汚染性が長期に亘り良好で、かつ耐水性に優れた低汚染性塗膜を形成することができる建造物外壁面の親水性防汚処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、建造物の外壁面に存在する旧塗膜の上に下塗塗料を塗布して下塗塗膜を形成した後、この下塗塗膜の上に親水性防汚塗料を塗布し、塗膜厚が10〜40μmであって、塗膜表面の水接触角が50°以下である親水性防汚塗膜を形成することを特徴とする建造物外壁面の親水性防汚処理方法である。
【0013】
本発明において、本発明方法が適用される建造物の外壁面については、ビル、家屋、塀等の建築物、高速道路の防音壁、橋梁、公園等に設置される鉄製、コンクリート製等の種々の構造物等、各種の建造物の外壁面を例示することができ、この外壁面を構成するものとしては、一般的な外壁材であり、例えば、窯業系サイディングボード、モルタル、コンクリート、スレートなどの無機系外装材や、鉄、アルミニウム、金属サイディング等の金属系外装材や、天然木、合板等の木質系外装材等を挙げることができ、特に表面に旧塗膜が設けられている建造物外壁面である。ここで、建造物外壁面に存在する旧塗膜としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系等の樹脂系で構成された塗膜を例示することができる。
【0014】
<下塗塗料>
このような建造物の外壁面に存在する旧塗膜の上に塗布され、下塗塗膜を形成するための下塗塗料としては、従来から公知の弱溶剤系塗料や各種の水系塗料を用いることができる。ここで、弱溶剤系塗料とは、主溶剤として、弱溶剤と呼ばれるミネラルスピリットや脂肪族系炭化水素を使用するものであり、常温で塗膜を形成し、幅広い下地への密着性を有するといった特徴がある。樹脂系としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等からなる1種又は2種以上の塗料を挙げることができる。また、水系塗料については、樹脂系として、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等からなる1種又は2種以上の塗料を挙げることができる。更に、必要に応じて添加される付着性付与剤として、シランカップリング剤等を例示することができる。
【0015】
また、上記の下塗塗料には、必要に応じて、旧塗膜との密着性向上のため、各種カップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノプロピル)メチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0016】
なお、旧塗膜上に下塗塗料を塗布する場合、密着性向上の為に旧塗膜を予め水洗等で汚れや付着物を除去した方がよい。また、必要に応じて、旧塗膜上にアクリルエマルジョン樹脂系及び弱溶剤系エポキシ樹脂系等のプライマーを塗装後、下塗塗料を塗布してもよい。
【0017】
<親水性防汚塗料>
また、本発明において、上記の下塗塗料を塗布して形成された下塗塗膜の上に塗布され、親水性防汚塗膜を形成するための親水性防汚塗料については、それが塗膜厚10μm以上40μm以下、好ましくは15μm以上30μm以下、及び塗膜表面の水接触角50°以下、好ましくは30°以下を達成できるものであればよく、好適には、コロイダルシリカを含有し、かつ、不揮発分10質量%以上50質量%以下、好ましくは25質量%以上45質量%以下、及び塗装粘度(20℃)50KU以上100KU以下、好ましくは60KU以上90KU以下の水性塗料である。
【0018】
ここで、親水性防汚塗料の不揮発分については、10質量%未満であると、必要な塗膜厚を得るのに塗装回数が増え、作業性が悪くなり、また、親水性機能発現成分が表層に効率よく配向しないため耐汚染性が発現しなくなる傾向にあり、反対に、不揮発分が50質量%を超える場合は、艶消し材等を多く配合する必要があるが、耐候性が低下するという問題がある。また、親水性防汚塗料の塗装粘度(20℃)については、50KU未満の場合、垂直面に塗装すると塗膜が乾燥する間に塗料がずり落ちる、いわゆる“タレ”という不具合が生じ易くなり、反対に、100KUを越えると、レベリング性が悪くなり、塗膜の塗り肌が悪くなる。
【0019】
〔コロイダルシリカ〕
本発明の親水性防汚塗料に用いるコロイダルシリカについては、その形状が、球状、鎖状、棒状、パールスライク状等のものや、異形状のものが挙げられ、また、その平均粒子径については、特に限定されるものではないが、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは60nm以下である。これらコロイダルシリカの形状や平均粒子径は、電子顕微鏡による観察で確認することができる。ここで、コロイダルシリカの平均粒子径が100nmより大きくなると、沈降し易くなるので、親水性防汚塗料の貯蔵安定性が低下する傾向にある。また、コロイダルシリカのpHは8.4〜11.5であることが好ましい。コロイダルシリカのpHが8.4未満の場合、アルカリ性の塗料組成物では系が不安定になり易く、反対に、pHが11.5を超えると、塗料組成物中の水分散コロイダルシリカの分散安定性が劣る。
【0020】
コロイダルシリカの具体例としては、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスST−20、ST−O、ST−C、ST−S、ST−N、ST−20L、ST−AK、ST−UP、ST−ZLや、(株)ADEKA製のアデライトAT−20、AT−30、AT−20N、AT−30N、AT−20A、AT−20S、AT−20Q、AT−30A、AT−30S、AT−40、AT−50、AT−300や、触媒化成工業(株)製のカタロイドS−20H、カタロイドS−30、カタロイドS−30H、カタロイドSI−500、カタロイドSN、カタロイドSAや、日本化学工業(株)製のシリカドール30、シリカドール20、シリカドール20A、シリカドール20Bや、クラリアントジャパン(株)製のクレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50、デュポン社製のルドックスHS−40、ルドックスHS−30、ルドックスLS、ルドックスSM−30、ルドックスAS、ルドックスAM等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上のコロイダルシリカを併用しても構わない。
【0021】
コロイダルシリカを含む割合は、後述する親水性防汚塗料の水性樹脂分散体に対して固形分基準で、好ましくは0.5重量%以上20重量%以下、特に好ましくは3重量%以上15重量%以下である。水性樹脂分散体に対して固形分基準で0.5重量%未満である場合は耐汚染性の効果が劣り、反対に、水性樹脂分散体に対して固形分基準で20重量%超過の場合には、塗膜が硬く脆くなり、更に塗膜内がポーラスになり易く、耐水性が劣る傾向がある。
【0022】
〔水性樹脂分散体〕
本発明の親水性防汚塗料に用いる水性樹脂分散体としては、水を媒体とし、α,β-エチレン性不飽和単量体を重合してなる樹脂組成物であればよく、好ましくは下記の(1)均一構造を有するエマルション、多段階乳化重合法によって得られる異相構造を有するエマルションの一方又は両方を含む水性樹脂分散体、(2)有機溶剤媒体で重合及び/又は縮合されたアクリルやアルキド、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等を水にて相転換及び強制乳化により得られる水性樹脂組成物、が挙げられる。
【0023】
均一構造を有するエマルションは、緻密な塗膜形成が可能となり耐透水性やクリアー性に優れた塗膜を得ることができ、異相構造エマルションは異なるガラス転移温度の単量体を組み合わせること等により成膜性に優れ不粘着性等に優れた塗膜を得ることができる等、これらのエマルションを用いることにより、形成される塗膜特性の幅を広げることができる。
【0024】
有機溶剤媒体で重合及び又は縮合されたアクリルやアルキド、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン樹脂等を水にて相転換及び強制乳化により得られた水性樹脂組成物は、被塗物に対する密着性や強靱性に優れた塗膜を形成することが可能となる。
【0025】
水性樹脂分散体に利用可能なα,β-エチレン性不飽和単量体としては、以下のような単量体が挙げられる。メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリレート系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、及びクロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;2-アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、及び3-(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体;その他、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等が代表的なものとして挙げられる。
【0026】
更に、得られる塗膜の機能を向上させるために、架橋構造を導入することも可能である。一般的に架橋構造は、“粒子内部架橋構造”と“粒子間架橋構造”の2種に大別される。この“粒子内架橋構造”や“粒子間架橋構造”をエマルション粒子に組み込むことで、塗膜とした時の強靱性、耐ブロッキング性、不粘着性、耐溶剤性等の塗膜性能を大幅に向上させ得ることができる。
【0027】
粒子内・間架橋構造を得るための単量体の例を列挙すると、以下のようになる。
粒子内架橋:分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体である。
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等を使用する方法や;乳化重合反応時に温度にて相互に反応する官能基を持つ単量体を組み合わせて、例えば、カルボキシル基とグリシジル基や、水酸基とイソシアネート基等の組み合わせの官能基を持つエチレン性不飽和単量体を選択含有させた単量体混合物を使用する方法;加水分解縮合反応する、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等、加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体を含有させた単量体混合物を使用する方法等の方法により製造させることができる。
【0028】
粒子間架橋:カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合させた後、分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物を混合する方法が最も代表的な例として挙げられる。
カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクロレインや、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチレン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート-アセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレート-アセチルアクリレート、ビニルエチルケトン、及びビニルイソブチルケトン等が挙げられる。特に、アクロレインや、ジアセトンアクリルアミド及びビニルメチルケトンが好ましい。
【0029】
上記カルボニル基の対となる、分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物としては、例えば、カルボヒドラジドや、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン2酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリヒドラジド、及びチオカルボジヒドラジド等が挙げられる。これらの中でも、エマルションへの分散性や耐水性のバランスからカルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド及びコハク酸ジヒドラジドが好ましい。
【0030】
また、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩又は、それらの共重合体を含む水溶性樹脂を用いることで、塗装作業性に優れた塗料の設計や、より親水性の高い塗膜の形成により耐汚染性に優れた塗膜を得ることができる。それらの水溶性樹脂の重量平均分子量は5,000〜100,000であることが好ましく、その重量平均分子量が5,000未満の時は塗膜の強靱性、耐候性が劣り易くなる。また、重量平均分子量が100,000を超える場合には高粘度になるために塗装作業性が悪くなり好ましくない。
【0031】
また、(A)α,β-エチレン性不飽和単量体を重合してなる水性樹脂分散体の他にウレタンディスパージョン等の水性樹脂分散体を用いることで、塗膜の耐水性、ブロッキング性を向上させることができる。これによって塗膜形成後の耐汚染性の維持性がより良好になる。
【0032】
更に、得られる塗膜の耐候性・耐光性を向上させるために、重合性光安定性単量体や重合性紫外線吸収性単量体を組み込むことも可能である。
重合性光安定性単量体は、具体的に例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ−4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、及び1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0033】
重合性紫外線吸収性単量体としては、具体的に例えば、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-t-ブチル-3'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-t-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-ニトロ-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0034】
もちろん、非反応型の光安定剤や紫外線吸収剤を重合時に併用することも可能である。
【0035】
本発明の組成物において上記α,β−エチレン性不飽和単量体を重合する際に用いられる重合開始剤としては、従来から一般的にラジカル重合に使用されているものが使用可能である。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2'-アゾビス(2-アミノジプロパン)ハイドロクロライドや、4,4'-アゾビス-シアノバレリックアシッド、2,2'-アゾビス(2-メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物;過酸化水素水、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。更に、L-アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤と、硫酸第一鉄等を組み合わせたレドックス系も使用できる。
【0036】
また、ラウリルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタンや、チオグリコール酸-2-エチルヘキシル、2-メチル-t-ブチルチオフェノール、四臭化炭素、及びα-メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を使用することもできる。これらを適宜使用することによって、塗膜の光沢や、成膜性、不粘着性を制御することができる。
【0037】
水性樹脂分散体が乳化重合で得られる場合には、一般的に乳化重合で使用される界面活性剤を乳化剤として使用することができる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩や、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドグリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルや、ポリエチレンオキサイドノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレンオキサイド脂肪酸エステル、又は前述の骨格と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩や、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0038】
pH調整剤としては、従来から中和剤として公知の各種含窒素塩基性化合物が特に制限なく利用できる。具体的には、例えば、トリメチルアミンや、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、エチルプロパノールアミン等のアルコールアミン類、モルホリン、アンモニア等の揮発性含窒素塩基性化合物が代表的なものとして挙げられる。これらのうち1種又は2種以上のpH調整剤を併用しても構わない。
【0039】
また、3-アミノプロピルトリメトキシシランや、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-シクロへキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシランも中和剤の一部として併用可能である。
【0040】
〔その他の配合物〕
本発明の親水性防汚塗料には、必要によりその他の配合物を配合してもよく、例えば、一般的に使用される増粘剤や、分散剤、沈降防止剤や、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜添加してもよい。また、艶消しの塗膜外観を得るために、例えば無水珪酸や樹脂粒子等の艶消し材を配合してもよい。更に、親水性防汚塗料の透明性を失わない程度に、顔料等の着色材を使用することができる。それら着色材としては、ベンガラ、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の着色顔料や、炭酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土等の体質顔料、更には、光触媒活性を有する酸化チタン、シミ止め・吸着機能を有するフライポンタイト、活性亜鉛華、珪酸マグネシウム等の機能性顔料が挙げられる。
【0041】
<塗布方法>
本発明において、上記の下塗塗料や親水性防汚塗料の塗布方法としては、建築外装材への塗装方法として公知であるハケ、ローラー、又はスプレー等を用いる方法等を例示することができる。
【0042】
本発明の親水性防汚塗料を前記下塗塗膜の上に塗布して得られる乾燥後の親水性防汚塗膜の塗膜厚については、通常10μm以上40μm以下、好ましくは15μm以上30μm以下であるのがよく、この乾燥後の塗膜厚が10μm未満では汚染性の効果が発現し難く、40μmを越えると経時で塗膜にクラック等のワレが発生するので好ましくない。
【0043】
また、本発明の親水性防汚塗料を用いて形成される親水性防汚塗膜については、その純水との接触角が50°以下、好ましくは30°以下であるのがよく、これによって、親水性防汚塗膜に優れた耐汚染性が発現する。この水接触角の測定は、例えば、親水性防汚塗料をガラス基板上に塗装し、温度0〜80℃で60分〜10日間乾燥させて親水性防汚塗膜を調製し、この親水性防汚塗膜について静的表面接触角計CA−X型(協和界面科学社製)等を用いて測定することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の親水性防汚処理方法によれば、既設の建造物の外壁に、耐汚染性、耐候性、及び耐水性(外観、密着性)に優れ、かつ自己洗浄能力を有する親水性防汚塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の親水性防汚処理方法を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特に断らない限り質量基準で示す。
【実施例】
【0046】
〔水性樹脂分散体(a1)の製造例〕
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水250部と、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(商品名:ニューコール707SF、非反応性アニオン乳化剤、日本乳化剤(株)製)10部とをそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた。
【0047】
次いで、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.2部を加え、更に、メタクリル酸メチル180部、アクリル酸ブチル120部、メタクリル酸シクロヘキシル92部、メタクリル酸8部、ニューコール707SF16部、及び水300部をディスパーで乳化攪拌して得られた乳化混合液を、4時間かけて滴下した。
【0048】
滴下終了後、80℃で1時間攪拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、50%ジメチルエタノールアミンにてpH9.0に調整し、均一構造を有するエマルション粒子が分散した固形分42%の水性樹脂分散体(a1)を得た。
【0049】
〔水性樹脂分散体(a2)の製造例〕
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水250部、ニューコール707SF10部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温させた。
【0050】
次いで、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.2部を加え、更に、メタクリル酸メチル172部、アクリル酸2-エチルヘキシル20部、メタクリル酸8部、ニューコール707SF10部、及び水140部からなる乳化混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後に、更に、メタクリル酸メチル50部、アクリル酸2-エチルヘキシル90部、メタクリル酸シクロヘキシル50部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学(株)製)10部、ニューコール707SF10部、及び脱イオン水140部からなる乳化混合液を、2時間かけて滴下した。
【0051】
滴下終了後、80℃で2時間攪拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、50%ジメチルエタノールアミンにてpH9.0に調整し、多段階乳化重合法による異相構造エマルション粒子が分散した固形分43%の水性樹脂分散体(a2)を得た。
【0052】
以上のようにして調製された水性樹脂分散体(a1)及び(a2)を用いて、表1に示す配合で親水性防汚塗料A〜Eを作成した。
また、これらの親水性防汚塗料A〜Eについて、その不揮発分及び塗装粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
〔下塗塗料A:弱溶剤系シリコーン樹脂塗料の製造例〕
シリコーン樹脂{商品名:ヒタロイドTPS4M-F、日立化成(株)製}80部、添加剤としてオルソ酢酸メチル{商品名:MOA、日宝化学(株)製}4部、消泡剤{商品名:BYK080,ビックケミージャパン(株)製}1部、及びミネラルスピリット15部を添加し混合して作製した。
【0054】
〔下塗塗料B:アクリル樹脂エマルション塗料の製造例〕
脱イオン水を14部、顔料として酸化チタン{商品名:タイペークCR-90,石原産業(株)製}を20部、添加剤としてノニオン性界面活性剤{商品名:Disperbyk-190、ビックケミージャパン(株)製}を0.5部、アクリル樹脂エマルション(商品名:アクロナールYJ-2818D、独BASF社製)を60部、ウレタン系増粘剤{商品名:プライマルRM-8W、ローム・アンド・ハース(株)製}を2部、シリコーン系消泡剤{商品名:SNデフォーマー1312,サンノプコ(株)製}を0.5部、成膜助剤{商品名:CS-12,チッソ(株)製}を3部それぞれ添加し混合して作製した。
【0055】
〔下塗塗料C:アクリル樹脂エマルション塗料の製造例〕
アクリル樹脂エマルション(商品名:アクロナールYJ-2818D、独BASF社製)を80部、ウレタン系増粘剤{商品名:プライマルRM-8W、ローム・アンド・ハース(株)製}を3部、シリコーン系消泡剤{商品名:SNデフォーマー1312,サンノプコ(株)製}を0.5部、付着性付与剤{商品名:A-174,日本ユニカー(株)製}を3部、成膜助剤{商品名:CS-12,チッソ(株)製}を4部、及び脱イオン水を9.5部それぞれ添加し混合して作製した。
【0056】
〔水系クリヤー塗料の製造例〕
アクリル樹脂エマルション(商品名:アクロナールYJ-2818D、独BASF社製)を80部、ウレタン系増粘剤{商品名:プライマルRM-8W、ローム・アンド・ハース(株)製}を3部、シリコーン系消泡剤{商品名:SNデフォーマー1312,サンノプコ(株)製}を0.5部、成膜助剤{商品名:CS-12,チッソ(株)製}を4部、及び脱イオン水を12.5部それぞれ添加し混合して作製した。
【0057】
〔実施例1〕
旧塗膜としてウレタン樹脂クリヤー塗膜が健常な状態で存在する窯業系建材上に、下塗塗料として弱溶剤系シリコーン樹脂塗料(下塗塗料A)を刷毛塗りにて、塗膜厚25μmとなるように塗装した。
この下塗塗料を23℃で16時間乾燥した後に、表1に示す親水性防汚塗料Aを塗膜厚が25μmとなるように、刷毛塗りにて塗装し、23℃で7日間乾燥した。
【0058】
〔実施例2〕
下塗塗料をアクリル樹脂エマルション塗料(下塗塗料B)とした以外は、実施例1と同様に実施した。
【0059】
〔実施例3〕
親水性防汚塗料Aの塗膜厚を10μmとした以外は、実施例2と同様に実施した。
【0060】
〔実施例4〕
親水性防汚塗料Aの塗膜厚を40μmとした以外は、実施例2と同様に実施した。
【0061】
〔実施例5〕
親水性防汚塗料Bを使用した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0062】
〔実施例6〕
親水性防汚塗料Cを使用した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0063】
〔実施例7〕
親水性防汚塗料Dを使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0064】
〔実施例8〕
親水性防汚塗料Eを使用した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0065】
〔実施例9〕
下塗塗料をアクリル樹脂エマルション塗料(下塗塗料C)とした以外は、実施例1と同様に実施した。
【0066】
〔比較例1〕
親水性防汚塗料Aの塗膜厚を5μmとした以外は、実施例2と同様に実施した。
【0067】
〔比較例2〕
親水性防汚塗料Aの塗膜厚を50μmとした以外は、実施例2と同様に実施した。
【0068】
〔比較例3〕
親水性防汚塗料Aの代わりに水系クリヤー塗料を使用した以外は、実施例2と同様に実施した。
【0069】
<接触角の測定方法>
実施例1〜9、及び比較例1〜3の各外装材を室温23℃に維持された恒温室にて1週間十分に乾燥させた後に、純水滴下60秒後の静的接触角を協和界面科学製FACE接触角計CA−X型を使用して測定した。
実施例1〜9の結果を表2に、また、比較例1〜3の結果を表3に、それぞれ示す。
【0070】
<耐雨筋汚染性>
実施例1〜9、及び比較例1〜3の各外装材を1週間23℃の恒温室で養生した後に、水平面に対して10度に傾斜し、かつ長さ30cmで深さ3mmの溝が3mmピッチで刻まれた屋根を有する架台に、屋根に降った雨が塗膜の表面に筋状に流れ落ちるように南向きに垂直に取り付け、その状態で6ヶ月暴露した後、塗膜の外観を未試験の塗膜と比較して汚染状態を目視観察し、下記の評価基準で評価した。
実施例1〜9の結果を表2に、また、比較例1〜3の結果を表3に、それぞれ示す。
【0071】
〔評価基準〕
◎:汚れが全く付着しておらず、試験開始時と同等の状態を維持している。
○:わずかな汚れはあるが、雨筋はほとんど確認されない。
△:局所的な汚れがあり、雨筋がうっすらと確認される。
×:全面にかなりの汚れがあり、雨筋がしっかりと確認される。
【0072】
<耐水性>
実施例1〜9、及び比較例1〜3の各外装材を1週間養生した後に、試験板を23℃の脱イオン水に1週間浸し、乾燥後の塗膜の白化度合いを目視で判定し、下記の評価基準で評価した。上記以外の試験方法はJIS K 5600-6-1の7.〔方法1(浸せき法)〕に準拠する。
実施例1〜9の結果を表2に、また、比較例1〜3の結果を表3に、それぞれ示す。
【0073】
〔評価基準〕
◎:塗膜の変色が全くない。
○:塗膜の変色がほとんどない、若しくは、やや青みがかった透明である。
△:塗膜が局所的に白化している。
×:塗膜が全体に白化している。
【0074】
<耐候性>
実施例1〜9、及び比較例1〜3の各外装材を1週間養生した後に、水平面に対し45度に傾斜した架台に取り付け、その状態で60ヶ月暴露した後、塗膜の外観を未試験の塗膜と比較して、塗膜の状態を目視観測し、下記の評価基準で評価した。上記以外の試験方法はJIS K 5600-7-6に準拠する。
実施例1〜9の結果を表2に、また、比較例1〜3の結果を表3に、それぞれ示す。
【0075】
〔評価基準〕
◎:塗膜にワレ、クラック、ハガレが全くない。
○:塗膜にワレ、クラック、ハガレがほとんどない。
△:塗膜が局所的にワレ、クラック、ハガレがある。
×:塗膜が全体にワレ、クラック、ハガレがある。
【0076】
<付着性>
実施例1〜9、及び比較例1〜3の各外装材を1週間養生した後に、塗膜を2mm間隔で格子状にカットする。カットした面にテープを付着させ、しっかりと付着させた後、テープを引き剥がした後の塗膜のカット部を目視で判定し、下記の評価基準で評価した。上記以外の試験方法はJIS K 5600-5-6に準拠する。
実施例1〜9の結果を表2に、また、比較例1〜3の結果を表3に、それぞれ示す。
【0077】
〔評価基準〕
◎:塗膜のはがれが全くない。
○:塗膜のはがれが15%以下である。
△:塗膜のはがれが65%以下である。
×:塗膜が全体にはがれてる。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の建造物外壁面の親水性防汚処理方法は、旧塗膜表面に、耐汚染性や、耐候性、耐水性に優れた塗膜を形成する建造物の外壁面に存在する旧塗膜の補修方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の外壁面に存在する旧塗膜の上に下塗塗料を塗布して下塗塗膜を形成した後、この下塗塗膜の上に親水性防汚塗料を塗布し、塗膜厚が10〜40μmであって、塗膜表面の水接触角が50°以下である親水性防汚塗膜を形成することを特徴とする建造物外壁面の親水性防汚処理方法。
【請求項2】
下塗塗料は、アクリル樹脂系弱溶剤塗料、ウレタン樹脂系弱溶剤塗料、シリコーン樹脂系弱溶剤塗料、フッ素樹脂系弱溶剤塗料料、及び水系塗料から選ばれる請求項1に記載の建造物外壁面の親水性防汚処理方法。
【請求項3】
下塗塗料の水系塗料は、付着性付与剤及びエマルジョン樹脂を含有する請求項2に記載の建造物外壁面の親水性防汚処理方法。
【請求項4】
親水性防汚塗料は、コロイダルシリカを含有し、かつ、不揮発分10〜50質量%及び塗装粘度50〜100KU(20℃)の水性塗料である請求項1〜3のいずれかに記載の建造物外壁面の親水性防汚処理方法。
【請求項5】
建造物外壁面は、窯業系基板、木質基板、金属基板、モルタル基板、及びコンクリート基板からなる群から選ばれた1種又は2種以上からなる請求項1〜4のいずれかに記載の建造物外壁面の親水性防汚処理方法。
【請求項6】
親水性防汚塗料は、ハケ、ローラー、又はスプレーの手段で建造物外壁面上に形成された下塗塗膜上に塗布される請求項1〜5のいずれかに記載の建造物外壁面の親水性防汚処理方法。
【請求項7】
外壁面に請求項1〜6のいずれかに記載の親水性防汚処理方法によって形成された親水性防汚塗膜を有する建造物。

【公開番号】特開2012−210605(P2012−210605A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78464(P2011−78464)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】