説明

弁の動作開始判定方法

【課題】弁の動作開始点を正確に判定できる弁の動作開始判定方法を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る弁の動作開始判定方法は、圧力ユニットにおける弁の動作開始点を判定する方法であって、前記圧力ユニットに圧力源を充填する工程と、前記圧力ユニットの弁に電流を印加する工程と、前記圧力ユニット内の圧力を測定する工程と、前記測定した圧力に基づいて、第1の単位時間当たりの第1の圧力変化量と第2の圧力変化量とを算出する工程と、前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分を算出する工程と、前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が閾値以上か否かを判定する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁の動作開始判定方法に関し、例えば油圧式アクチュエータ等の圧力ユニットに設けられる弁の動作開始判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式アクチュエータ等の圧力ユニットを出荷する際に、当該圧力ユニットに設けられている弁の動作特性を検査、保証することは重要なことである。
【0003】
例えば油圧式アクチュエータは、製品に組み込む際に真空充填により油詰めを行う為、完全ドライの状態(即ち、内部に何も充填されていない状態)で出荷される。そのため、油圧式アクチュエータの出荷時の単体試験では、例えば特許文献1に開示されているように、内部に空気を充填して弁の動作特性を検査する。
【0004】
このとき、例えば弁の開弁ポイントを判定する手法としては、以下の二つの手法が考えられる。
【0005】
先ず第1の手法は、圧力ユニットに空気を充填した後に、弁に電流を印加して圧力ユニット内の圧力を計測し、図4に示すように、圧力ユニット内の圧力が初期圧力からΔP(Mpa)変化したポイントを開弁ポイントと判定する。
【0006】
そして第2の手法は、圧力ユニットに空気を充填した後に、弁に電流を印加して圧力ユニット内の圧力を計測し、図5に示すように、単位時間当たりの圧力の変化量が閾値以上となったポイントを開弁ポイントと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−347593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
圧力ユニットに空気を充填して検査を実施する場合、圧力ユニットの弁のシール特性(気密性)が少しでも低いと、弁から空気が漏れ出す。
【0009】
そのため、第1の手法は、図6に示すように、弁からの空気の漏れによって初期圧力からΔP(Mpa)変化したポイントを開弁ポイントであると、誤判定する可能性がある。
【0010】
また、第2の手法は、図5の破線で示すように、弁からの空気の漏れが多く、単位時間当たりの圧力の変化量が大きいと、開弁ポイントを正確に判定することができない。
【0011】
さらに、第2の手法は、閾値の設定が難しく、閾値の設定を誤ると、図7に示すように、本来の開弁ポイントでない変曲点を開弁ポイントであると、誤判定する可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、弁の動作開始点を正確に判定できる弁の動作開始判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一形態に係る弁の動作開始判定方法は、圧力ユニットにおける弁の動作開始点を判定する方法であって、前記圧力ユニットに圧力源を充填する工程と、前記圧力ユニットの弁に電流を印加する工程と、前記圧力ユニット内の圧力を測定する工程と、前記測定した圧力に基づいて、第1の単位時間当たりの第1の圧力変化量と第2の圧力変化量とを算出する工程と、前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分を算出する工程と、前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が閾値以上か否かを判定する工程と、を備える。
【0014】
上記弁の動作開始判定方法において、前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が閾値以上か否かを判定する工程は、前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が第1の閾値以上か否かを判定する工程と、前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が第1の閾値以上であると、前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が第2の閾値以上となった時点を前記弁の動作開始点であると判定する工程と、を備えること、が好ましい。
【0015】
上記弁の動作開始判定方法において、前記第1の圧力変化量及び前記第2の圧力変化量は、第2の単位時間当たりの前記圧力ユニットの平均圧力に基づいて算出すること、が好ましい。
【0016】
上記弁の動作開始判定方法において、前記圧力源として空気を前記圧力ユニットに充填すること、が好ましい。
【0017】
上記弁の動作開始判定方法において、前記圧力ユニットは油圧式アクチュエータであること、が好ましい。
【0018】
上記弁の動作開始判定方法において、前記弁の動作開始点における前記弁に印加する電流値を測定すること、が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明によると、弁の動作開始点を正確に判定できる弁の動作開始判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る弁の動作開始判定方法に用いる、検査システムを概略的に示すブロック図である。
【図2】(a)は、本発明の実施の形態に係る弁の動作開始判定方法における、時間と圧力、時間と電流値、時間と圧力変化量の差分との関係を示す図である。(b)は、時間と圧力との関係を拡大して示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る弁の動作開始判定方法のフローチャート図である。
【図4】従来の弁の動作開始判定方法における時間と圧力との関係を示す図である。
【図5】従来の弁の動作開始判定方法における時間と圧力との関係を示す図である。
【図6】従来の弁の動作開始判定方法における時間と圧力との関係を示す図である。
【図7】従来の弁の動作開始判定方法における時間と圧力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。本実施の形態の弁の動作開始判定方法は、例えば油圧式アクチュエータに設けられたリニア弁が動作開始する電流値を判定する際に好適に実施される。
【0022】
本実施の形態の弁の動作開示判定方法は、例えば以下に示す検査ユニットを用いて実施することができる。検査ユニット1は、図1に示すように、ポンプ2、電源装置3、圧力センサ4、電流センサ5、制御部6等を備えている。
【0023】
ポンプ2は、制御部6によって制御され、油圧式アクチュエータ7内の圧力が予め設定された初期圧力となるように空気を充填する。電源装置3は、制御部6によって制御され、油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aに電流を印加する。このとき、電流は、図2に示すように、例えば比例して増加するように油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aに印加される。
【0024】
圧力センサ4は、油圧式アクチュエータ7内の圧力を測定し、測定結果を制御部6に出力する。電流センサ5は、油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aに印加されている電流値を測定し、測定結果を制御部6に出力する。
【0025】
制御部6は、後述するように、入力される油圧式アクチュエータ7内の圧力の測定結果、及び油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aに印加されている電流値の測定結果に基づいて、油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aが動作を開始した時点を判定する。
【0026】
以下に、油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aが動作を開始した時点を判定する方法を、図3に基づいて説明する。
【0027】
先ず、制御部6の制御によってポンプ2を稼働させる。ポンプ2は、油圧式アクチュエータ7内の圧力が予め設定された初期圧力となるように、油圧式アクチュエータ7に空気を充填する(S1)。
【0028】
次に、制御部6の制御によって電源装置3を稼働させる。電源装置3は、比例して増加するように油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aに電流を印加する(S2)。
【0029】
このとき、断続的又は間欠的に圧力センサ4が油圧式アクチュエータ7内の圧力を測定し、測定結果を制御部6に出力する(S3)。同時に、断続的又は間欠的に電流センサ5が油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aに印加されている電流値を測定し、測定結果を制御部6に出力する(S3)。
【0030】
次に、制御部6は、入力された油圧式アクチュエータ7内の圧力に基づいて、第1の単位時間当たりの平均圧力を時間の経過順に算出する(S4)。本実施の形態では、図2(b)に示すように、最小サンプリングデータとして油圧式アクチュエータ7内の圧力を1msec毎に測定し(図2(b)の白抜き点)、Tmsec(例えば2msec)間の平均圧力Pa1、Pa2、・・・を算出する(図2(b)のハッチングの点)。そして、図2(b)のハッチングの点を時間の経過順に並べたものを、図2(a)に示している。このように、第1の単位時間当たりの平均圧力を算出するので、ノイズ等による測定結果のばらつきを均すことができる。
【0031】
次に、制御部6は、第1の単位時間当たりの平均圧力Pa1、Pa2、・・・に基づいて、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量を時間の経過順に算出する(S5)。つまり、図2(a)に示すように、Tmsec間の平均圧力の変化量Pd1、Pd2、Pd3、・・・を算出する。
【0032】
次に、制御部6は、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量Pd1、Pd2、Pd3、・・・に基づいて、時間的に隣接する当該変化量の差分(圧力勾配の変化)を算出する(S6)。つまり、差分a=Pd2−Pd1、a=Pd3−Pd2、・・・を算出する。
【0033】
次に、制御部6は、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分を時間の経過順に第1の閾値以上か否かを判定する(S7)。制御部6は、当該差分が第1の閾値以上となった時点で、油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aが開弁状態であると判定する(S7のYES)。
【0034】
一方、制御部6は、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分が第1の閾値より小さいと、未だに油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aが閉弁状態であると判定し、当該差分が第1の閾値以上か否かを判定するステップに戻る(S7のNO)。
【0035】
このように、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分に基づいて、油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aが開弁状態か否かを判定する。そのため、リニア弁7aから空気が漏れていても、リニア弁7aからの空気の漏れが断続的である以上、当該差分は第1の閾値より小さくなるので、誤ってリニア弁7aが開弁状態であると判定することを防ぐことができる。しかも、リニア弁7aからの空気の漏れ量の多少に関わりなく、リニア弁7aが開弁状態か否かを正確に判定することができる。
【0036】
次に、制御部6は、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分が第1の閾値以上であると(S7のYES)、当該差分が第2の閾値の時の電流値を当該リニア弁7aが開弁状態となる電流値であると判定する(S8)。ここで、第2の閾値としては、第1の閾値より小さな値が設定される。
【0037】
ここで、第2の閾値としては、以下のように設定することが好ましい。例えば予め実験等によってリニア弁7aが閉弁状態(図2(a)では期間T)での第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分の平均値を算出する。リニア弁7aが閉弁状態での当該平均値に対する、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分のばらつきの平均値を算出する。そして、第2の単位時間当たりの変化量の差分の平均値に、当該平均値に対する第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分のばらつきの平均値に所定の係数を掛けた値を加えることで、第2の閾値を設定する。このように、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分の平均値に対する、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分のばらつきを考慮して第2の閾値を設定するので、より正確にリニア弁7aが開弁状態となった時点を判定することができる。
【0038】
このような弁の動作開始判定方法は、上述のように単位時間当たりのリニア弁7aの圧力値の変化量の差分に基づいて、リニア弁7aが開弁状態か否かを判定する。そのため、リニア弁7aから空気が漏れていても、リニア弁7aからの空気の漏れが断続的である以上、当該差分は第1の閾値より小さくなるので、誤ってリニア弁7aが開弁状態であると判定することを防ぐことができる。しかも、リニア弁7aからの空気の漏れ量に関わりなく、リニア弁7aが開弁状態か否かを正確に判定することができる。
【0039】
しかも、単位時間当たりのリニア弁7aの圧力値の変化量の差分が第2の閾値以上となった時点を、リニア弁7aが開弁状態となった時点であると判定する。そのため、リニア弁7aが開弁状態となった時点を正確に判定することができる。
【0040】
以上、本発明に係る弁の動作開始判定方法の実施の形態を説明したが、上記に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態では、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分が第1の閾値以上か否かを判定した後に、当該差分が第2の閾値以上となった時点を、リニア弁7aが開弁状態となった時点であると判定しているが、この限りでない。つまり、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量の差分が第2の閾値以上か否かを判定し、当該差分が第2の閾値以上であると、当該差分が第2の閾値以上となった時点をリニア弁7aが開弁状態となった時点であると判定しても良い。
【0041】
例えば、上記実施の形態では、油圧式アクチュエータ7のリニア弁7aが開弁状態となる時点を判定したが、この限りでない。本願発明は、弁を有する圧力ユニットであれば適用することができる。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、弁が開弁状態となった時点を判定しているが、この限りでない。つまり、本願発明は、弁が閉弁状態となった時点を判定する等の他の動作においても応用することができる。
【0043】
例えば、上記実施の形態では、第1の単位時間当たりの平均圧力に基づいて、第2の単位時間当たりの平均圧力の変化量を算出しているが、この限りでない。つまり、第1の単位時間当たりの平均圧力を算出することなく、第2の単位時間当たりの圧力変化量を算出しても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 検査ユニット
2 ポンプ
3 電源装置
4 圧力センサ
5 電流センサ
6 制御部
7 油圧式アクチュエータ、7a リニア弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力ユニットにおける弁の動作開始点を判定する方法であって、
前記圧力ユニットに圧力源を充填する工程と、
前記圧力ユニットの弁に電流を印加する工程と、
前記圧力ユニット内の圧力を測定する工程と、
前記測定した圧力に基づいて、第1の単位時間当たりの第1の圧力変化量と第2の圧力変化量とを算出する工程と、
前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分を算出する工程と、
前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が閾値以上か否かを判定する工程と、
を備える弁の動作開始判定方法。
【請求項2】
前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が閾値以上か否かを判定する工程は、
前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が第1の閾値以上か否かを判定する工程と、
前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が第1の閾値以上であると、前記第1の圧力変化量と前記第2の圧力変化量との差分が第2の閾値以上となった時点を前記弁の動作開始点であると判定する工程と、
を備える請求項1に記載の弁の動作開始判定方法。
【請求項3】
前記第1の圧力変化量及び前記第2の圧力変化量は、第2の単位時間当たりの前記圧力ユニットの平均圧力に基づいて算出する請求項1又は2に記載の弁の動作開始判定方法。
【請求項4】
前記圧力源として空気を前記圧力ユニットに充填する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の弁の動作開始判定方法。
【請求項5】
前記圧力ユニットは油圧式アクチュエータである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の弁の動作開始判定方法。
【請求項6】
前記弁の動作開始点における前記弁に印加する電流値を測定する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の弁の動作開始判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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