説明

弁装置

【課題】弁頭部における隙間形成部を無くし、かつ、軸受とこれにより支持される部分との間の隙間を遮蔽することができる弁装置を提供する。
【解決手段】弁体10は、弁頭部11と、軸受6と軸部材5との摺接部分を内部流体通路3から区画するように端部が固定され、軸部材5のスライドに伴って変形する筒状シール部12とを有し、シール部12は、弁頭部11の背面側に回り込んでいる回り込み部分と、弁頭部11より小径の途中部分と、該途中部分から連続して拡径する弁枠体側シール部分とを有し、回り込み部分の径が拡大しながら弁頭部11から離れるとともに、弁枠体側シール部分の径が拡大しながら軸受6から離れて、弁体10が開弁状態から閉弁状態に移動可能となっているとともに、軸部材5のスライドに伴う回り込み部分および前記弁枠体側シール部分の径の拡大程度が、途中部分での径の拡大程度よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば清浄性が要求される食品、薬品等の流体を対象とした通路の連結に好適に用いられる弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した弁装置として、例えばサニタリー用継手が知られている。この継手は、図12(a)及び(b)に示すように、内部流体通路102を有する雌継手101と、内部流体通路112を有する雄継手111とが用いられ、内部流体通路102および112はそれぞれ別の流体通路に接続される。雌継手101は、その上端に突き合わせ面101aを有し、雄継手111はその下端に突き合わせ面111aを有し、これら両突き合わせ面101a、111aは互いに同一軸線上で突き合わされる。突き合わせ後、雌継手101に設けた弁体103を弁座104から離れるようにスライドさせるとともに、雄継手111に設けた弁体113を弁座114から離れるようにスライドさせ、これによりそれぞれの内部流体通路102、112が連通する接続状態(図12(b)の状態)になる。逆に、弁体103を弁座104に、弁体113を弁座114にそれぞれ接触させることで遮断され、かつ両突き合わせ面101a、111aを互いに離すことで、内部流体通路102、112がそれぞれ切離された状態(図12(a)の状態)になる。
【0003】
前記弁体103および113は、それぞれに設けられた軸部105および115と、これら軸部105および115をそれぞれ支持する軸受106および116とによりスライド可能に支持されており、軸部105の途中に設けたフランジ107と軸受106との間が可撓性膜108にて覆われ、かつ軸部115の途中に設けたフランジ117と軸受116との間が可撓性膜118にて覆われている。前記可撓性膜108および118は、内部流体通路102、112が連通する接続状態のとき、軸部105、115と軸受106、116との摺動部分である隙間に、移送される流体が入って残るのを防止するために設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した可撓性膜118は、図12および図13(雄継手111側を示す)に示すように、軸部115を2分割した一方の分割軸部115aとフランジ117との間に、他方の分割軸部115bにて押圧した状態で挟み込まれて設けられており、もう一方の可撓性膜108も同様にして設けられている。この構成を採用するのは、可撓性膜108等の端部を軸部に直接固着することが困難である故に、軸部を分割してその間を固着部として用いるためである。
【0005】
したがって、従来の継手による場合には、分割軸部115a等とフランジ117等との接合部Xが内部流体通路112等に露出しているため、その接合部Xに、移送される流体が入り込んで残る虞があり、改善の余地があった。
【0006】
また、弁体103、113は、先端の弁頭部103a、113aの周囲に、弁座104、114に当接するリング状の当接部材103b、113bが別部材により取付けられているため、弁頭部103a、113aに当接部材103b、113bとの間で生じる隙間形成部が存在し、その隙間形成部でも移送される流体が入り込んで残る虞があり、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、弁頭部における隙間形成部を無くし、かつ、軸受とこれにより支持される部分との間の隙間を簡潔な構造で遮蔽することができる弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る弁装置は、内部流体通路の一端に第1接続口が、その他端に第2接続口がそれぞれ設けられた弁枠体と、該弁枠体の内部に、該第1接続口に対して接離する方向へスライド可能に設けられた軸部材と、該軸部材の先端部に取付けられる弁体と、該軸部材の途中をスライド自在に支持する軸受と、該軸部材をスライドさせるスライド機構とを備え、上記弁体は、軸部材の第1接続口への接近スライドにより該第1接続口の周縁部に当接して第1接続口を閉弁状態にする弁頭部と、該弁頭部から軸受側に延出されて該軸受と該軸部材との摺接する部分を内部流体通路から区画するように端部が固定されかつ軸部材のスライドに伴って変形する筒状シール部とを有し、該シール部と該弁頭部の少なくとも表層部とが合成樹脂で一体に形成されており、前記シール部は、前記弁頭部の背面側に回り込んでいる回り込み部分と、弁頭部より小径の途中部分と、該途中部分から連続して拡径する弁枠体側シール部分とを有し、前記回り込み部分の径が拡大しながら前記弁頭部から離れるとともに、前記弁枠体側シール部分の径が拡大しながら前記軸受から離れて、弁体が開弁状態から閉弁状態に移動可能となっているとともに、軸部材のスライドに伴う回り込み部分および前記弁枠体側シール部分の径の拡大程度が、途中部分での径の拡大程度よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係る弁装置は、請求項1に記載の弁装置において、回り込み部分と途中部分との境界部分、および弁枠体側シール部分と途中部分との境界部分が、軸部材のスライドに伴って変形する変形部として機能するようになっている。
【0010】
請求項3の発明に係る弁装置は、請求項2に記載の弁装置において、シール部における弁枠体に固定された端部に最も近い位置に形成される内側湾曲部から該端部までが、連続して軸受側寄りに位置するとともに、該端部が第2接続口の軸受側部分よりも第1接続口側に位置するように、シール部を規制する弁枠体側ガイドが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1及び2に係る弁装置による場合には、弁頭部の表層部から軸受側に延出されて端部が固定された筒状シール部までが一体形成されているので、弁頭部における隙間形成部を無くすことが可能となる。また、筒状シール部が該軸受と該軸部材との摺接する部分を内部流体通路から区画するので、軸受とこれにより支持される部分との摺接する部分が遮蔽される。更に、弁体は、その外側全体が隙間の無い一体構造となっていて、袋状に形成されているので、筒状シール部の開口端部のみを固定すればよく、固定箇所を少なくすることが可能な簡潔な構造となる。そして、更に、弁体が開弁状態から閉弁状態へ移動することに伴い、シール部の回り込み部分が弁頭部から離れるとともに、弁枠体側シール部分が軸受から離れるので、シール部の途中部分よりも端側の両端部が、軸部材のスライドに伴って傾きが変化し、シール部の変形部として機能する場合には、シール部の変形部を両端に分散させることができ、結果としてシール部の径を小径に抑えることができ、これによりシール部の小型化が図れる。また、シール部の変形部を両端に分散させることにより、軸部材のスライド量も大きく設計することが可能となる。
【0012】
請求項3に係る弁装置による場合には、第2接続口の軸受側部分から、弁枠体に固定されたシール部端部に最も近い位置に形成される内側湾曲部までが、連続的に第1接続口側に位置するので、これにより内部流体通路を流れる内部流体を淀ませるような窪みの形成が無くなる。また、上記窪みの形成が無いため、弁洗浄を行うとき、窪みに伴う洗浄効率の低下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明の弁装置を適用したサニタリー用の継手を示す縦断面図であり、閉弁状態を示す。図2はその継手が開弁状態となっているときを示す縦断面図、図3はその継手の開弁状態(左側)と開弁状態(右側)とを併せて示す縦断面図である。
【0015】
この継手1は、内部流体通路3を有する弁枠体2と、スライド機構4によりスライドされる軸部材5と、その軸部材5の途中を支持し、弁枠体2の一部を構成する軸受6と、軸部材5の先端部に取付けられた弁体10とを備える。
【0016】
弁枠体2には、内部流体通路3の一端(上側)に第1接続口3aが、その他端(右側)に第2接続口3bがそれぞれ設けられている。第1接続口3aは、例えば移送先(または移送元)に繋がった別の継手(図示せず)に、着脱可能な状態で連結され、第2接続口3bは、例えば移送元(または移送先)に繋がったホース等の配管(図示せず)に連結される。
【0017】
上記軸部材5は、弁枠体2の内部に設けられ、基端側に設けられたスライド機構4により第1接続口3aに対して接離する方向へスライド可能となっている。軸部材5の途中は、軸受6によりスライド自在に支持されている。スライド機構4は、例えば空気アクチュエータ、電磁石或いは手動ハンドル等の公知手段が用いられる。
【0018】
軸部材5の外側には、先端(図の上端)よりも少し基端側(図の下側)に寄った位置から軸受6にて支持される部分よりも少し先端側に寄った位置までの間に変形規制部20が軸部材5と一体に設けられている。この変形規制部20は、軸部材5の他の部分よりも半径が長く形成され、先端側から、外周面が軸方向に沿って湾曲した湾曲部21と、追従機構の一部として機能する3つの段差部22、23、24とを有し、各段差部22、23、24の外径はそれぞれ異なる値でスライド方向に沿って一定に設定されている。具体的には、段差部22の外径が最も小さく、段差部24の外径が最も大きく、段差部23の外径は両者の間に設定されている。なお、変形規制部20は、湾曲部21の代わりに、外周面がほぼ同一直径を有する形状、或いは、外周面の先端側が基端側よりも徐々に縮径または拡径した形状、或いは他の任意の外周面形状にすることができる。
【0019】
上記弁体10は、上述したように軸部材5の先端部に取付けられ、表層部11aと取付部11bとを有する弁頭部11と、弁頭部11の表層部11aから軸受6側に延出された円筒状のシール部12とを備える。取付部11bは金属や他の非可撓性材料からなり、この取付部11bには軸部材5の先端部が螺着されていて、表層部11aおよびシール部12の全体は、合成樹脂、例えばテフロン(登録商標)(PTFE:四フッ化エチレン樹脂)により一体成形にて形成されている。弁頭部11は、軸部材5が第1接続口3aへの接近スライドにより、第1接続口3aの周縁部3cに当接する進出限位置に移動すると、第1接続口3aを閉弁状態にし(図1参照)、軸部材5の第1接続口3aからの離隔スライドにより、第1接続口3aの周縁部3cから離隔して第1接続口3aを開弁状態にする(図2参照)。ここで、開弁状態とは、軸部材5が離隔スライドにより後退限位置にまで後退した状態をいう。
【0020】
上記弁頭部11の最大径部11cから軸受6側に、シール部12が延出されて袋状に形成されていて、そのシール部12の基端側は、開口端となっている。その開口端の全周は、複数に分割された弁枠体2の一部と軸受6の境界面2aで挟持することで固定されている。これによりシール部12は、軸受6と軸部材5との摺接する部分を内部流体通路3から区画している。なお、シール部12を固定する弁枠体2の開口面積は、第1接続口3aの開口面積とほぼ同等にすることが好ましい。
【0021】
上記境界面2aには、図4(b)に示す弁枠体側ガイド14の外周部14aも挟持されている。この弁枠体側ガイド14は、後述する弁枠体側シール部分12Bの変形を規制するもので(図3参照)、例えばゴム等の弾性材料からなる円リング状のものであって、断面形状は内周側が概略三角形状、外周側がほぼ厚み一定に形成されている。断面形状が概略三角形状をした内周部14bは、前記段差部22と、弁枠体2の境界面2aより内側に設けた凹状の切欠部6bとの間、つまり変形規制部20と弁枠体2の境界部分の凹部に配置される。また、弁枠体側ガイド14の軸受6側には円リング状をした移動部材15が配されている。
【0022】
この移動部材15は、下端の内周側が切欠かれた、追従機構の一部として機能する段付部15aを有し(図3参照)、軸部材5のスライドにより、そのスライド方向に追従移動する。具体的には、軸部材5が進出限位置にあるときは、移動部材15の段付部15aが、段差部23と24の間の部分と係合し、下端が切欠部6bから浮いた状態となる。軸部材5がその状態から後退していくと、それに伴って移動部材15は下に降下していき、ある位置まで降下すると、移動部材15の下端が切欠部6bと係合(接触)するようになる。その後、更に軸部材25が後退限位置まで離隔スライドしても、移動部材15は切欠部6bに規制されて非移動状態になる。更に、その後退限位置から前側に接近スライドを行って段差部23と24の間の部分が切欠部6bの底面よりも高くなると、移動部材15の段付部15aが、段差部23と24の間の部分と係合するようになり、その後は下端が切欠部6bから浮いた状態となる。このような移動部材15の追従移動は、軸部材5のスライドに伴って同様に繰り返す。
【0023】
そして、この移動部材15の追従移動により、弁枠体側ガイド14が変形可能となる。具体的には、閉弁状態においては、図1および図3の左側に示すように弁枠体側ガイド14の下端側が段差部22と23の間で係合して、弁枠体側ガイド14は弾性により圧縮変形可能であるが形状変形(撓み変形)をしない状態となる。これに対して、開弁状態においては、図2および図3の右側に示すように移動部材15の移動により段差部22と23の間が降下し、弁枠体側ガイド14の下側に隙間が形成されるため、弁枠体側ガイド14は、開弁状態とされることで変形するシール部12の下端部分で下側に押圧されることにより、下側に撓む形状変形が可能となる。
【0024】
弁頭部11の背面側には、図4(a)に示す弁頭部側ガイド13が接着等により取付けられている。この弁頭部側ガイド13は、後述する回り込み部分12Cの変形を規制するもので(図3参照)、例えばゴム等の弾性材料からなる円リング状のものであって、断面形状は内周側が厚く外周側が薄い三角形状となっており、弁頭部側ガイド13の内側には、軸部材5の先端部が挿通している。なお、弁頭部側ガイド13は、非可撓性の取付部11bと一体に形成してもよい。
【0025】
上記シール部12は、軸部材5のスライドに伴って変形する。そのシール部12の変形は、本実施形態では、図3に示すように、軸部材5(または弁体10)が進出限位置(図1に示す位置)にある閉弁状態のときに、途中部分12A(シール部12の回り込み部分12Cと弁枠体側シール部分12Bを除く部分)は変形規制部20の外周面、実質的には湾曲部21と接触し、その変形規制部20の外周面の形状に応じた形状とされ、軸部材5が後退限位置(図2に示す位置)にある開弁状態となっても、つまり開弁・閉弁状態に拘わらず変形規制部20の外周面と接触したままであり、その外周面の形状に応じた形状のままである(但し、変形規制部20との接触位置の変化により若干の形状変化は伴う)。また、シール部12の弁頭部11の背面側に回り込んでいる回り込み部分12Cは、開弁状態のときには、弁頭部側ガイド13に接触し、弁頭部側ガイド13の外周面に応じた形状とされ、この形状変化に伴って、回り込み部分12Cから途中部分12Aまでの全域が変形規制部20と接触し、その変形規制部20の外周面の形状に応じた形状とされる。そして、開弁状態から閉弁状態に軸部材5が移動するに伴って、回り込み部分12Cは軸部材の軸心から離れるように拡径しながら弁頭部側ガイド13から離れていく。よって、シール部12の弁頭部11側は、弁頭部側ガイド13に接触する回り込み部分12Cと、変形規制部20に接触する途中部分12Aとの境界部分12Eが湾曲変形する。また、シール部12の境界面2aにて固定された端部から途中部分12Aまでの弁枠体側シール部分12Bは、軸部材5の後退により移動部材15が降下して形状変形可能となった弁枠体側ガイド14を下側に押し付ける状態となる。つまり、弁枠体側ガイド14の内周面側を下側に押した状態に撓み変形させ、その弁枠体側ガイド14の外周面の一部と接触する。そして、弁枠体側シール部分12Bと途中部分12Aとの境界部分12Fでは、下側に隙間が形成され、かつその隙間のある箇所が湾曲した状態とされる。一方、軸部材5が開弁状態から閉弁状態に移動するに伴って、弁枠体側シール部分12Bは、軸部材の軸心から離れるように拡径しながら軸受6から離れていく。これに伴って、撓み変形していた弁枠体側ガイド14が元の状態に戻る。なお、この段落では、流体からの圧力が作用しない、つまり配管に接続する前の状態におけるシール部12各部が形状変化の状態を説明している。
【0026】
すなわち、本実施形態のシール部12にあっては、途中部分12Aは開弁・閉弁状態に拘わらず変形規制部20に接触してその周面に応じた形状とされるため、ほぼ変形をしない。これに対して、回り込み部分12Cと途中部分12Aとの境界部分12Eが湾曲変形し、回り込み部分12Cの傾きが変化する。同様に、弁枠体側シール部分12Bと途中部分12Aとの境界部分12Fが湾曲変形し、弁枠体側シール部分12Bの傾きが変化する。つまり、シール部12の途中部分12Aよりも端側の両端側、特に回り込み部分12Cと途中部分12Aとの境界部分12E、および弁枠体側シール部分12Bと途中部分12Aとの境界部分12Fが変形部として機能する。なお、弁体10が後退限位置(つまり、開弁状態)にあるとき、シール部12は弁頭部11aと繋がる部分より軸受6側が連続して軸受6側寄りに位置し、弁頭部11a側へ折り返しされることがないような形状状態に設計されており、また、弁枠体側ガイド14は、開弁状態(流体の圧力が作用しないとき)にあるとき、上述したように移動部材15の移動により下側に撓む形状変形を生じても、前記の形状状態とするように設計されている。当然のことながら、内部流体通路3に流体を流した場合でも、前記の形状状態が維持されるようになっている。
【0027】
したがって、第1実施形態の継手1にあっては、弁体10が、弁頭部11から軸受6側に延出されて弁枠体2に固定された筒状シール部12までが一体形成されているので、従来のようにリング状の当接部材(103b、113b)を使用することなく、弁頭部11における隙間形成部を無くすことが可能となる。また、シール部12が軸受6と軸部材5との摺接する部分を内部流体通路3から区画するので、軸受6とこれにより支持される軸部材5との摺接する部分を遮蔽することができる。更に、弁体10は、その外側全体が隙間の無い一体構造となっていて、袋状に形成されているので、シール部12の基端側の開口端部のみを固定すればよく、固定箇所を少なくすることが可能な簡潔な構造にすることができる。
【0028】
また、第1実施形態にあっては、配管に接続して流体が流れるようにした開弁状態、つまり使用状態において、内部流体通路3を流れる内部流体から途中部分12Aに作用する圧力を変形規制部20で受けるようにすることができ、これにより途中部分12Aが受ける圧力を減少させ得、シール部12の耐久性を向上させることが可能となる。更に、シール部12の回り込み部分12Cと弁頭部11aの背面側との間にリング状の弁頭部側ガイド13が設けられ、その弁頭部側ガイド13が、開弁状態においてシール部12の回り込み部分12Cを受けるので、回り込み部分12Cに及ぶ圧力を低減させてシール部12の耐久性を向上させ得る。更に、弁枠体2と軸部材5との境界部分と、それに対応する弁枠体側シール部分12Bとの間にリング状の弁枠体側ガイド14が設けられ、その弁枠体側ガイド14が、開弁状態において弁枠体側シール部分12Bを受けるので、これにより弁枠体側シール部分14に及ぶ圧力を低減させてシール部12の耐久性を向上させ得る。また、弁枠体側ガイド14が、弁枠体2と移動部材15とにより撓み変形可能に支持されているので、弁枠体側シール部分12Bを変形部として利用することができる。
【0029】
また、本実施形態においては、閉弁状態のとき、シール部12の回り込み部分12Cが弁頭部側ガイド13から離れ、開弁状態のとき、弁枠体側シール部分12Bが弁枠体側ガイド14を押圧して撓み変形させるので、換言すれば、回り込み部分12Cの径が拡大しながら弁頭部11から離れるとともに、弁枠体側シール部分12Bの径が拡大しながら軸受6から離れて、弁体10が開弁状態から閉弁状態に移動可能となっているとともに、軸部材5のスライドに伴う回り込み部分12Cおよび弁枠体側シール部分12Bの径の拡大程度が、途中部分12Aでの径の拡大程度よりも大きいので、シール部12の途中部分12Aよりも端側の両端部が、軸部材5のスライドに伴って傾きが変化し、シール部12の変形部として機能するため、これによりシール部12の変形部を両端に分散させることができ、結果としてシール部12の径を小径に抑えることができ、これによりシール部12の小型化が図れる。また、シール部12の変形部を両端に分散させることにより、軸部材5のスライド量も大きく設計することが可能となる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、閉弁状態のとき、シール部12の回り込み部分12Cが弁頭部側ガイド13から離れるようにしているが、本発明はこれに限らず、閉弁状態のとき、シール部12の弁枠体側シール部分12Bが弁枠体側ガイド14から離れるようしたり、或いは、閉弁状態のとき、シール部12の回り込み部分12Cが弁頭部側ガイド13から離れるとともに弁枠体側シール部分12Bが弁枠体側ガイド14から離れるようにしてもよい。更に、閉弁時に回り込み部分12Cが弁頭部側ガイド13に支持可能に、弁枠体側ガイド14と同様に弁頭部側ガイド13を移動可能にしてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、開弁状態(流体の圧力が作用しないとき)とすることで、回り込み部分12Cが弁頭部側ガイド13に接触するようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、軸部材5を種々のスライド位置としたうちで、配管を弁装置に接続せずに開弁状態とした場合には、回り込み部分12Cが弁頭部側ガイド13に接触せずに、配管を弁装置に接続して開弁状態とした場合に、つまり少なくとも内部流体の圧力が作用するときに、回り込み部分12Cが弁頭部側ガイド13に接触するように設計してもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、開弁状態(流体の圧力が作用しないとき)とすることで、弁枠体側シール部分12Bが弁枠体側ガイド14を押圧して撓み変形させるようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、軸部材5を種々のスライド位置としたうちで、配管を弁装置に接続せずに開弁状態とした場合には、弁枠体側シール部分12Bが弁枠体側ガイド14と接触せず、配管を弁装置に接続して開弁状態とした場合に、つまり少なくとも内部流体の圧力が作用するときに、弁枠体側シール部分12Bが弁枠体側ガイド14を押圧して撓み変形させるように設計してもよい。
【0033】
また、上述した実施形態では、開弁・閉弁状態(流体の圧力が作用しないとき)に拘わらず、途中部分12Aが変形規制部20に接触するようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、軸部材5を種々のスライド位置としたうちで、配管を弁装置に接続せずに開弁状態とした場合には、途中部分12Aが変形規制部20に接触せず、配管を弁装置に接続して開弁状態とした場合に、つまり少なくとも内部流体の圧力が作用するときに、途中部分12Aが変形規制部20に接触するように設計してもよい。
【0034】
また、上述した実施形態では、変形規制部20で途中部分12Aを、弁枠体側ガイド14で弁枠体側シール部分12Bを、弁頭部側ガイド13で回り込み部分12Cをそれぞれ規制するようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、変形規制部20に加えて、弁枠体側ガイド14または弁枠体側シール部分12Bの少なくとも一方を有する構成としてもよい。このような構成としても、シール部12は、内部流体通路3を流れる流体による圧力を受けても破れることがないので、内側に補強用の膜を別途設ける必要性がなく、シール部12単体でシールを行うことが可能である。その理由は、弁枠体側ガイド14または弁頭部側ガイド13の一方を省略してもシール部12の大部分を他方のガイドと変形規制部20とで受けることができ、省略したガイドが受ける筈のシール部12の部分の面積が小さく、破断し難いからである。但し、前記面積が大きくなるような弁装置の場合には、変形規制部20に加えて、弁枠体側ガイド14および弁頭部側ガイド13の両方を備えた構成とするのが、シール部12の破断防止を図る上で好ましい。また、シール部12が破断する虞がある場合には、破断の虞がある部分或いはシール部12の全域の内側に補強用の膜を別途設けるようにしてもよい。
【0035】
また、上述した実施形態では変形規制部20を軸部材5とは一体構成としているが、本発明はこれに限らず、変形規制部を軸部材と別構成としてもよい。このようにしても、変形規制部と軸部材との境界は、シール部により内部流体通路3とは区画される。
【0036】
また、本実施形態の場合には、シール部が筒状である故に、例えば特開平10−205628号公報に開示された円錐状をしたダイアフラム弁(公報中の40)を用いる場合、或いは、特開2002−122253号公報に開示された円錐状のダイアフラム部(公報中の2)を有する弁(公報中の1)を用いる場合に比べ、以下のような有利な点がある。即ち、上記テフロン(登録商標)は、伸び率がゴムなどに比べて非常に低い。このような合成樹脂を用い、筒状シール部に代えて、弁頭部11a側から軸受6側に向けて徐々に拡径した概略円錐状のダイアフラムをシール部として形成した場合は、軸部材5のスライド量がダイアフラムの傾き具合によるため、そのスライド量を例えば配管径の25%に相当する寸法となるようにするには、配管径よりも遙かに大きい径のダイアフラムを要する。
【0037】
そこで、本実施形態のように筒状シール部とすると、同径のダイアフラムに比べて伸縮長を長くすることができる。すなわち、筒状シール部を軸方向に伸ばすことで、伸縮する部分の距離が長くなり、テフロン(登録商標)のように伸び率が非常に低い樹脂等を用いても伸縮長が長くなる。よって、ダイアフラムよりも小径に形成することができる。また、図5に示すように途中部分12Aに、内側に湾曲した複数、図示例では2つの鼓状部12Dを有する構成にすると、より伸縮長が長くなる。
【0038】
なお、自然流下のパイプラインを組み替える工場設備の場合には、上述のような弁装置が数十個まとめて同一平面上に設置される。このような工場設備において、本発明のように筒状シール部にすることで、ダイアフラムにする場合よりも小径とすることができるため、工場設備の設置面積を小さくすることが可能となる。
【0039】
更に、シール部を筒状に形成することにより、筒状シール部の径を配管径とほぼ同径寸法にすることが可能となる。なお、ダイアフラムを折り曲げて使用することにより、ダイアフラム径を小さくすることが考えられるが、ダイアフラムの折り曲げ部が凹状になって、その部分に内部流体が残存して好ましくない。
【0040】
第1実施形態の弁装置は、筒状シール部を用いるので、折り曲げた状態にすることなく開弁・閉弁状態にすることができ、前述のようにシール部12の弁頭部11aと繋がる部分より境界面2aで固定された端部(下端部)までは、軸受6側が連続して軸受6側寄りに位置するとともに、図1および図2に示すように前記下端部が第2接続口の軸受側部分よりも第1接続口3a側に位置するため、前記凹状になる部分の発生を抑制して内部流体の残存を防止し、これにより洗浄性能、つまり内部流体を簡単に洗い流す性能および洗浄用流体の残留を減らす性能を向上させ得る。但し、本発明は、弁枠体側ガイドのみを備える構成の場合においては、上述のような利点を有する筒状シール部に限らず、ダイアフラム状のシール部に対しても、適用することができるのは勿論のことである。
【0041】
また、上述した実施形態では筒状のシール部12は、軸部材5の離隔スライドに伴って弁体が第1接続口3aを開弁状態とする後退限位置にあるとき、内側になだらかに湾曲変形するよう設計されているが、本発明はこれに限らない。例えば、シール部12の軸心方向の一部が内側または外側に断面「く」の字状に屈伸変形するように設計してもよい。但し、その場合にあっても、流体が溜まり難くなって残留することを防止でき、また洗浄性に優れるものとなるように、屈伸変形する部分より軸受6側が連続して軸受6側寄りに位置するように設計しておくことが好ましい。
【0042】
また、シール部が断面「く」の字状に屈伸変形する場合、そのシール部は、弁体が第1接続口3aを開弁状態とする後退限位置にあるとき、つまり折れ曲がり部分の内角が最小となるときに、各部寸法を定め、その寸法で金型の設計或いは切削時の寸法を決定し、作製するのが好ましい。このようにすると、シール部の折れ曲がり部分は、弁体が後退限位置にあるときに、内部応力が発生せず、繰り返し変形を受けても応力集中に伴って亀裂或いは破損が発生するのを防止できるからである。
【0043】
或いは、弁体が後退限位置にある、つまり折れ曲がり部分の内角が最小となるときと、弁体が第1接続口3aを閉弁状態とする前進限位置にある、つまり折れ曲がり部分の内角が最大となるときとの間の角度のときに、各部寸法を定め、その寸法で金型の設計或いは切削時の寸法を決定し、シール部を作製するのが好ましい。このようにすると、シール部の折れ曲がり部分は、弁体が後退限位置にあるときに圧縮力が軽減され、しかも弁体が前進限位置にあるときに引っ張り力が軽減されるので、繰り返し変形を受けても応力集中に伴って亀裂或いは破損が発生するのを、より効果的に防止できるからである。なお、この場合において、各部寸法を定める角度は、経験的に決めればよい。
【0044】
更に、上述した実施形態では筒状シール部12として途中部分12Aがなだらかに内側に湾曲するものを使用しているが、本発明はこれに限らない。例えば、図5〜図10に示すように、開弁状態において、途中部分12Aや弁枠体側シール部分12Bに、外側に湾曲した部分を有するシール部、或いは、図11に示すように、開弁状態において、途中部分12Aの弁枠体側シール部分12B側が内側に更に大きく湾曲した部分を有するシール部を使用することもできる。このような図示例の場合には、変形規制部20のみを軸部材5に設けた構成としているので、シール部12としてはテフロン膜25(前記12に相当)の内側に補強用の膜26を別途設けた構成としている。なお、膜26の内部の破線にて示す部分26aは、布等の補強部材である。
【0045】
上述した図5に示すような複数、図示例では2つの鼓状部12Dを有するシール部の場合には、前述したように個々の鼓状部12Dが内側へ湾曲変形して伸縮長が長くなるので、軸部材5のスライド量を著しく大きく設計することが可能となる。また、図6〜図11に示すようなシール部を用いる場合には、少なくともシール部の途中部分が変形規制部20にて規制される故に、シール部の耐久性を向上させ得る。
【0046】
また、上述した実施形態では、弁枠体側ガイドに対し、これを撓み変形させる移動部材および追従機構(段差部22〜24や段付部15aなど)を設けているが、本発明は弁枠体側ガイド側だけでなく、弁頭部側ガイドに対しても同様な移動部材や追従機構を設けるようにしてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態ではシール部と繋がった弁頭部の表層部11aをテフロン(登録商標)で、取付分11bを別材料でそれぞれ形成しているが、本発明はこれに限らず、弁頭部およびシール部の全体をテフロン(登録商標)等の同一材料で形成してもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では弁体の合成樹脂としてテフロン(登録商標)を用いているが、本発明はこれに限らず、可撓性を有する一般の合成樹脂を用いることもできる。特に食品、薬品等の流体である場合には、耐薬品性に優れるテフロン(登録商標)、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)或いはFEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂)などを用いるのが好ましい。
【0049】
また、上述した実施形態ではサニタリー用継手に適用しているが、本発明はこれに限らず、その他の各種継手或いは開閉動作を行わせる弁に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の弁装置を適用したサニタリー用の継手を示す縦断面図であり、閉弁状態を示す。
【図2】図1の継手が開弁状態となっているときを示す縦断面図である。
【図3】図1の継手の閉弁状態(図左側)と開弁状態(図右側)とを示す縦断面図である。
【図4】(a)は図1の継手に設けられた弁頭部側ガイドを示す縦断面図、(b)は同弁枠体側ガイドを示す縦断面図である。
【図5】本発明の弁装置を適用したサニタリー用の他の継手における閉弁状態(図左側)と開弁状態(図右側)とを示す断面図である。
【図6】本発明の弁装置を適用したサニタリー用の更に他の継手における閉弁状態(図左側)と開弁状態(図右側)とを示す断面図である。
【図7】本発明の弁装置を適用したサニタリー用の更に他の継手における閉弁状態(図左側)と開弁状態(図右側)とを示す断面図である。
【図8】本発明の弁装置を適用したサニタリー用の更に他の継手における閉弁状態(図左側)と開弁状態(図右側)とを示す断面図である。
【図9】本発明の弁装置を適用したサニタリー用の更に他の継手における閉弁状態(図左側)と開弁状態(図右側)とを示す断面図である。
【図10】本発明の弁装置を適用したサニタリー用の更に他の継手における閉弁状態(図左側)と開弁状態(図右側)とを示す断面図である。
【図11】本発明の弁装置を適用したサニタリー用の更に他の継手における閉弁状態(図左側)と開弁状態(図右側)とを示す断面図である。
【図12】従来例のサニタリー用継手を示す縦断面図であり、(a)は両継手が離間された状態を示し、(b)は両継手が接続された状態を示す。
【図13】従来例のサニタリー用継手の問題点の説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 継手
2 弁枠体
3 内部流体通路
3a 第1接続口
3b 第2接続口
4 スライド機構
5 軸部材
6 軸受
10 弁体
11 弁頭部
12 シール部
12A 途中部分
12B 弁枠体側シール部分
12C 回り込み部分
13 弁頭部側ガイド
14 弁枠体側ガイド
15 移動部材
15a 段付部(追従機構)
20 変形規制部
22、23、24 段差部(追従機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部流体通路の一端に第1接続口が、その他端に第2接続口がそれぞれ設けられた弁枠体と、該弁枠体の内部に、該第1接続口に対して接離する方向へスライド可能に設けられた軸部材と、該軸部材の先端部に取付けられる弁体と、該軸部材の途中をスライド自在に支持する軸受と、該軸部材をスライドさせるスライド機構とを備え、
上記弁体は、軸部材の第1接続口への接近スライドにより該第1接続口の周縁部に当接して第1接続口を閉弁状態にする弁頭部と、該弁頭部から軸受側に延出されて該軸受と該軸部材との摺接する部分を内部流体通路から区画するように端部が固定されかつ軸部材のスライドに伴って変形する筒状シール部とを有し、該シール部と該弁頭部の少なくとも表層部とが合成樹脂で一体に形成されており、前記シール部は、前記弁頭部の背面側に回り込んでいる回り込み部分と、弁頭部より小径の途中部分と、該途中部分から連続して拡径する弁枠体側シール部分とを有し、
前記回り込み部分の径が拡大しながら前記弁頭部から離れるとともに、前記弁枠体側シール部分の径が拡大しながら前記軸受から離れて、弁体が開弁状態から閉弁状態に移動可能となっているとともに、軸部材のスライドに伴う回り込み部分および前記弁枠体側シール部分の径の拡大程度が、途中部分での径の拡大程度よりも大きいことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
回り込み部分と途中部分との境界部分、および弁枠体側シール部分と途中部分との境界部分が、軸部材のスライドに伴って変形する変形部として機能するようになっていることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載の弁装置において、
シール部における弁枠体に固定された端部に最も近い位置に形成される内側湾曲部から該端部までが、連続して軸受側寄りに位置するとともに、該端部が第2接続口の軸受側部分よりも第1接続口側に位置するように、シール部を規制する弁枠体側ガイドが設けられていることを特徴とする弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−336872(P2006−336872A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258695(P2006−258695)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【分割の表示】特願2002−224065(P2002−224065)の分割
【原出願日】平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【出願人】(598174923)大阪サニタリー金属工業協同組合 (6)
【Fターム(参考)】