説明

引き戸の開放補助装置

【課題】 引き戸の開放補助装置が引き戸の開閉範囲を制限しないようにする。
【解決手段】 引き戸3を閉位置から開放する際の初期操作を補助する開放補助装置1、100であって、閉位置にある引き戸の戸尻部12と対向するように設けられた支持部材19と、支持部材に変位可能に支持され、引き戸を開放する際に操作者が操作する操作部材32と、支持部材に変位可能に支持され、操作部材の変位に応じて駆動され、初期位置と駆動後位置との間で変位し、戸尻部を引き戸の開方向に押圧する押圧部材33とを有し、押圧部材は、初期位置において、引き戸が開閉する際に引き戸と接触しないように、引き戸から離間して配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の窓や出入口に取り付けられる引き戸の開放補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルやマンション等の建物では環境への影響や使用者の快適性等を考慮して高断熱化や高気密化が進められている。これに伴って、建物の窓や出入口に取り付けられる引き戸は、重量が増すと共に戸枠等への密着性が高まる傾向にあり、特に、開放時の初期操作(すなわち、密接状態にある外枠(縦枠)と戸先框を離間させる操作)には強い操作力を要する場合がある。
【0003】
そこで、そのような引き戸の開放時に操作者の初期操作を補助するための開放補助装置が開発されている。例えば、建物の開口部に形成された方形状の枠体内に引違い式又は片引き式に開閉自在に設けられた引き戸に対し、その開放時の初期操作を軽減補助するべく戸先框に設けられた開閉補助装置であって、戸先框に戸先錠として設けたカマ錠の開錠を開閉補助装置の開放操作と連動させて行うものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−353378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された従来技術では、開放補助装置が引き戸の戸先側(戸先框)に設けられており、操作用のハンドルが引き戸の主面から突出する形で配置されている。そのため、開口部を最大にするべく2枚の引き戸の重なりを大きくする際に、ハンドルを含む開放補助装置が他の引き戸の戸尻(召し合せ框)に突き当たり、2枚の引き戸を完全に重ね合せることができないという問題がある。すなわち、開放補助装置が引き戸の開閉範囲を制限するという問題がある。この問題は、戸袋に対して引き戸を出し入れする形式の場合にも、ハンドルが戸袋の開口端縁に当接することによって発生する。
【0006】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、引き戸の開放補助装置が引き戸の開閉範囲を制限しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、引き戸(3)を閉位置から開放する際の初期操作を補助する開放補助装置(1、100)であって、前記閉位置にある前記引き戸の戸尻部(12)と対向するように設けられた支持部材(19)と、前記支持部材に変位可能に支持され、前記引き戸を開放する際に操作者が操作する操作部材(32)と、前記支持部材に変位可能に支持され、前記操作部材の変位に応じて駆動され、初期位置と駆動後位置との間で変位し、前記戸尻部を前記引き戸の開方向に押圧する押圧部材(33)とを有し、前記押圧部材は、前記初期位置において、前記引き戸が開閉する際に前記引き戸と接触しないように、前記引き戸から離間して配置されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、操作部材及び押圧部材が支持部材に支持され、戸尻部に作用する押圧部材が、初期位置においては開閉移動する引き戸に接触しないため、開閉補助装置が引き戸の開閉範囲を規制することがない。
【0009】
本発明の他の側面は、前記戸尻部は、段部を形成するように前記支持部材側に突出した召し合せ框を備え、前記押圧部材は、前記引き戸の開閉方向に沿った方向から前記召し合せ框を開方向に押圧することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、押圧部材は引き戸に備えられた召し合せ框を押圧する。
【0011】
本発明の他の側面は、前記召し合せ框には、前記押圧部材によって押圧される被押圧部分(53)が前記引き戸の面に沿って閉方向に突設されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、押圧部材が被押圧部分を押圧するストロークを長く確保することができる。
【0013】
本発明の他の側面は、前記押圧部材は、前記初期位置と前記駆動後位置との間で回動可能に前記支持部材に支持されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、初期位置においては引き戸から離間する一方、操作部材に駆動された際には、引き戸の開閉方向に沿った方向から召し合せ框を開方向に押圧する押圧部材を簡素な構造で構成することができる。
【0015】
前記押圧部材は、回動軸の径方向に延在する基部(44)と、前記基部の先端から前記回動軸を中心とした接線方向の一側に突出し、前記召し合せ框を押圧する押圧端部(45)と、前記接線方向の他側に突出し、前記操作部材によって押圧される被押圧端部(46)とを有し、前記被押圧端部の前記基部の先端からの突出長さは、前記押圧端部の前記基部の先端からの突出長さよりも長いことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、操作レバーの引き戸への接近を避けつつ、操作レバーが押圧部材を変位させるストロークを長く確保することができる。
【0017】
本発明の他の側面は、前記戸尻部は、前記引き戸の開閉方向に沿って延在する第1位置と前記引き戸の主面に対して起立した状態に延在する第2位置との間で回動可能に支持された被押圧部材(112)と、前記被押圧部材を前記第2位置へと付勢する付勢部材(119)とを有し、前記被押圧部材は、前記第2位置に位置するときに、前記操作部材によって駆動された前記押圧部材に前記第1位置と相反する側へと押圧され、前記引き戸を開方向へと変位させる一方、前記引き戸が開方向に移動する際に前記支持部材に押圧されて前記第2位置から前記第1位置へと付勢部材の付勢力に抗して変位することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、押圧部材は被押圧部材を押圧することによって引き戸を開方向に移動させるため、押圧部材を引き戸から離間した位置に配置することができる。また、被押圧部材は、支持部材に突き当たった際には第1位置へと逃げるため、被押圧部材が引き戸の開閉範囲を規制することがない。
【0019】
本発明の他の側面は、前記戸尻部は、係止孔(116)が形成されたホルダ(113)を有し、前記支持部材は、前記戸尻部側に突出する突片(122)を有し、前記被押圧部材は、前記第1位置に位置するときに前記係止孔に係止される係止突起(120)と、前記引き戸が開放された状態から前記閉位置へと変化する際に、前記突片に突き当たる係合凸部(118)とを有し、前記係止突起が前記係止孔に係止されることによって前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1位置に保持され、前記引き戸が開放された状態から前記閉位置へと変化する際に前記突片に前記係合凸部が押圧されることによって、前記係止突起と前記係止孔との係止構造を解除しつつ前記第2位置へと回転することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、引き戸が閉位置から開方向に移動する際に被押圧部材が第1位置に保持され、引き戸が閉位置に戻る際に被押圧部材は第1位置から第2位置に復帰する。
【発明の効果】
【0021】
以上の構成によれば、引き戸の開閉範囲を制限することがない引き戸の開放補助装置を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る開放補助装置を備えたサッシ窓の斜視図
【図2】第1実施形態に係る開放補助装置の斜視図
【図3】第1実施形態に係る開放補助装置の分解斜視図
【図4】第1実施形態に係る操作レバーの裏面を示す斜視図
【図5】第1実施形態に受け部材の分解斜視図
【図6】第1実施形態に係る開放補助装置の側面図
【図7】開放補助装置の初期状態を示す、図6のVII−VII断面図
【図8】開放補助装置の駆動後状態を示す断面図
【図9】第2実施形態に係る開放補助装置の分解斜視図
【図10】第2実施形態に係る受け部材及びストライカを示す分解斜視図
【図11】第2実施形態に係る開放補助装置の側面図
【図12】図11のXII−XII断面図
【図13】図11に示す形態から操作レバーを操作した際の途中形態を示す断面図
【図14】図13に示す形態から更に左窓を右方に変位させた際の形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る引き戸の開放補助装置(以下、単に開放補助装置と称する。)について図面を参照しながら説明する。説明にあたり、方向を示す用語については、原則として図1および図2の矢印で示す方向に従うものとする。
【0024】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る開放補助装置1は、引違い式のサッシ窓2に設置され、図示しない操作者がサッシ窓2を開放する際の初期操作を補助するものである。サッシ窓2は、建物等の開口部に設置された四角形の外枠(図示しない)と、外枠に支持された左窓3及び右窓4とから構成されている。左窓3は右窓4に対して前側に偏倚した位置に配置されており、左窓3及び右窓4は互いに独立して外枠に対し、左右方向にスライド移動可能となっている。
【0025】
左窓3は、戸先框11、召し合せ框12、上框13及び下框14からなる四角形の枠体と、この枠体に支持された板ガラス16とを有している。枠体と板ガラス16との間には、パッキン17が介装されている。同様に、右窓4は、戸先框18、召し合せ框19、上框20及び下框21からなる四角形の枠体と、この枠体に支持された板ガラス23と、枠体と板ガラス23との間に介装されたパッキン24とを有している。各板ガラス16、23は、各框11〜14、18〜21よりも厚み(前後方向長さ)が薄く、左窓3の各框11〜14と、右窓4の各框18〜21とは、左窓3及び右窓4が互いにスライド移動する際に互いに接触しないように、前後方向に隙間を有して配置されている。
【0026】
各戸先框11、18が図示しない外枠に近接し、各召し合せ框12、19が前後方向に互いに対向した状態をサッシ窓2の閉状態(図1に示す状態)という。本実施形態では、サッシ窓2を開閉操作する際には、右窓4を外枠に対して固定し、左窓3を外枠に対してスライド移動させるものとする。左窓3の召し合せ框12には、閉状態において右窓4の召し合せ框19との前後方向における隙間を閉塞するための、可撓性を有するウェザーストリップ27が設けられている(図2、12参照)。
【0027】
開放補助装置1は、支持部材としての、右窓4の召し合せ框19に取り付けられている。図2及び3に示すように、開放補助装置1は、召し合せ框19の左端面25に取り付けられるベース部材31と、ベース部材31に変位可能に支持された操作レバー32及び押圧部材33とを主として備える。ベース部材31は、ねじによって召し合せ框19に締結されている。
【0028】
操作レバー32は、その一端に段付きの貫通孔35を備え、貫通孔35には一端に拡頭部を有するシャフト36が回転不能に結合されている。シャフト36の他端はベース部材31に回転可能に支持される。これにより、操作レバー32は、左右方向に延在するシャフト36の軸線Aを回転軸として、ベース部材31に回転可能に支持されている。操作レバー32の右側(ベース部材31側)には、半月状のクレセント37が取り付けられており、クレセント37は操作レバー32と一体に回動する。
【0029】
操作レバー32の他端は、操作者に把持される把持部38となっている。図4に示すように、操作レバー32の長手方向における中間部であって、その下方への回動時に押圧部材33に対向する部分は角部を含んで斜めに切り欠かれており、押圧部材33と係合可能なカム面39を形成している。
【0030】
押圧部材33は、コ字状のハウジング41に支持されたシャフト42に枢支されている。ベース部材31には、その左側部から前側部にかけて連続して開口するハウジング受容部43が形成されており、ハウジング41はハウジング受容部43に嵌め込まれ、固定される。ハウジング41がベース部材31に結合された状態で、シャフト42は上下方向に延在する。以上の構成により、押圧部材33は、シャフト42及びハウジング41を介して、上下方向に延びるシャフト42の軸線Bを回転軸としてベース部材31に回動可能に支持されている。
【0031】
図2及び7に示すように、押圧部材33は、シャフト42に枢支された部分からシャフト42の径方向に延在する基部44を有している。基部44の先端には、シャフト42を中心とした接線方向の一方に突出する押圧端部45と、接線方向の他方に突出する被押圧端部46とが設けられている。すなわち、押圧部材33は、略T字状を呈している。押圧端部45の基部44の先端からの突出長さは、被押圧端部46の基部44の先端からの突出長さよりも長く、本実施形態では約5倍に設定されている。図2に示すように、被押圧端部46の先端部の上部は、滑らかな曲面47に形成されている。曲面47は、球面を含んでもよい。
【0032】
ハウジング41と押圧部材33の基部44との間には、捻りコイルばね48が介装されている。捻りコイルばね48は、被押圧端部46の突出方向を向く回転方向(図7に示すように、下方から見て時計回りの方向)に押圧部材33を付勢している。図7に示すように、捻りコイルばね48に付勢された基部44は、一部がハウジング41に当接することによって回動が所定の位置で規制されている。このときの押圧部材33の位置を初期位置とする。押圧部材33が初期位置にあるときには、基部44は概ね左方へと延在し、押圧端部45の先端が右窓4の召し合せ框19よりも前方に突出しないように配置されている。また、被押圧端部46の先端部は、ベース部材31より左方に突出すると共に、押圧部材33の回転軸であるシャフト42よりも後方に配置されている。
【0033】
図5に示すように、左窓3の召し合せ框12には、ストライカ51が組み合わされた受け部材52が取り付けられている。受け部材52は、上下方向に延在する扁平直方体状の部材であり、前後方向における厚みが左右方向の厚みに対して薄く形成されている。受け部材52の上部には、左端部53から右端部へと貫通する支持孔54が形成されている。ストライカ51は、一端部にクレセント37に係合可能な係合部を有し、他端側から支持孔54に挿入され、係合部が受け部材52に対して左方に突出した形態となっている。受け部材52の右端部には、上下方向に延在する切り欠き55が形成されている。切り欠き55が召し合せ框12の左側壁57及び後側壁58の境界に形成される角部59に係合した状態で、受け部材52及びストライカ51は一体に召し合せ框12に結合されている。受け部材52と召し合せ框12との結合は、ねじ締結や接着等の公知の結合方法を適用してよい。以上の構成により、受け部材52の左端部53は、召し合せ框12の左側壁57よりも左方に延出した状態となる。なお、受け部材52及びストライカ51は、前後方向において薄いため、左窓3及び右窓4が相対移動する際に、右窓4の召し合せ框19や戸先框18、板ガラス23に接触することはない。また、受け部材52は、初期位置にある押圧部材33の押圧端部45に接触することもない。
【0034】
図1及び図2に示すように、クレセント37とストライカ51との係合および解除は、操作レバー32の回動によって選択的に切り替えられる。図2に示すように、操作レバー32の把持部38が操作レバー32の回転軸に対して下方に位置する状態では、クレセント37はストライカ51から離間し、係合は解除されている。この状態を解錠状態という。解錠状態から、図1に示すように、把持部38が操作レバー32の回転軸に対して上方に配置されるように、操作レバー32を回動させると、クレセント37がストライカ51の係合部に進入し、クレセント37とストライカ51とが係合した状態となる。この状態を施錠状態という。施錠状態では、左窓3及び右窓4の相対移動は規制され、サッシ窓2の開放が禁止される。
【0035】
次に、図6〜8を参照して、第1実施形態に係る開放補助装置1の動作について説明する。図6に示すように、クレセント37とストライカ51とが離間した解錠状態から、使用者が把持部38を掴み、操作レバー32を把持部38が操作レバー32の回転軸に対して下方に向かう方向(図6中において時計回りの方向、矢印70)に回動させると、図7に示すように操作レバー32のカム面39が押圧部材33の被押圧端部46の曲面47を前方へと押圧する。これにより、押圧部材33は、捻りコイルばね48の付勢力に抗して初期位置から押圧端部45が前方に突出する回転方向(図7中の反時計回り方向、矢印71)に回動する。カム面39は押圧部材33の曲面47上を摺動しながら、押圧部材33を前方へと回動させる。すなわち、操作レバー32は、押圧部材33を駆動する。
【0036】
操作レバー32の回動(図6の矢印70の回転方向)が進むと、押圧部材33の押圧端部45が受け部材52の左端部53に左方から当接し、押圧端部45が受け部材52を右方へと押圧する。これにより、左窓3が右窓4に対して右方に相対移動する。
【0037】
以上のように構成した開放補助装置1は、操作レバー32を回動操作することによって、押圧部材33を駆動し、押圧部材33によって左窓3の召し合せ框12を押圧し、左窓3を右窓4に対して右方に相対移動させることができる。このときの操作レバー32の回動操作は、クレセント37とストライカ51との係合を解除する操作と同じ方向の回動操作であるため、操作レバー32を回動する1つの操作で、サッシ窓2の解錠に引き続いてサッシ窓2の開放を行うことができる。
【0038】
また、開放補助装置1では、押圧部材33が初期位置において右窓4の召し合せ框19から前方に突出しない(後方に引っ込んだ)構成となっているため、左窓3及び右窓4が相対移動する際に、押圧部材33が左窓3に接触することがなく、左窓3及び右窓4の相対移動に干渉しない。そのため、左窓3と右窓4とは、前後方向において互いに完全に重なる位置や、右窓4が左窓3よりも左方に変位した位置に移動することが可能になる。なお、本実施形態では押圧部材33が初期位置において召し合せ框19から前方に突出しない位置に配置したが、押圧部材33が召し合せ框19から前方に突出していたとしても、押圧部材33の前端部(押圧端部45)が、左窓3の召し合せ框12、受け部材52及び戸先框11よりも後方に配置され、これらとの間に隙間を形成していれば押圧部材33が左窓3の移動を阻害することはない。
【0039】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る開放補助装置100は、第1実施形態の開放補助装置1と比較して、ベース部材31、押圧部材33及び受け部材52の構成が異なる。開放補助装置100について、開放補助装置1と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
図9に示すように、開放補助装置100のベース部材101は、右側部において右窓4の召し合せ框19の左端面25に取り付けられ、左側部から前側部にかけて連続して開口する受容孔102が凹設されている。受容孔102の上縁部及び下縁部には、左方へと突出するガイドレール103が設けられている。各ガイドレール103には、左右方向に延在するガイドスロット104が形成されている。
【0041】
押圧部材106は、左右方向に延在する筒状の基部107を備えている。基部107は、受容孔102に突入可能な大きさに形成されている。基部107の上部及び下部には、ガイド凸部108が突設されており、ガイド凸部108がガイドスロット104に係合することによって、基部107は受容孔102に対して左右方向に沿って所定の範囲で出没可能に支持される。押圧部材106が最も左方にあるときの位置(受容孔102から最も突出した位置)を初期位置、最も右方にあるときの位置(受容孔102に最も没入した位置)を駆動後位置とする。
【0042】
基部107は、左端が閉塞されており、内部に圧縮コイルばね110の一端を受容している。圧縮コイルばね110の他端は、受容孔102の底部に当接している。これにより、押圧部材106は、圧縮コイルばね110によって初期位置へと付勢されている。
【0043】
基部107の左端には、後方へと突出する被押圧端部109が形成されている。被押圧端部109の先端は、滑らかな曲面に形成されている。後述するが、被押圧端部109は、操作レバー32を回動させた際に、操作レバー32のカム面39に押圧される。
【0044】
開放補助装置100では、開放補助装置1のストライカ51が組み合わされた受け部材52の代わりに、図10に示すように、ストライカ111と受け部材112とが互いに分離した状態で、左窓3の召し合せ框12に設けられている。ストライカ111は、ストライカ51と同様の係合部を有し、係合部が召し合せ框12より左方に突出するように、召し合せ框12にボルト締結されている。
【0045】
受け部材112は、ホルダ113を介して召し合せ框12に支持されている。ホルダ113は、左右方向に延在した板状に形成され、右端部が召し合せ框12にボルト締結され、左端部が召し合せ框12よりも左方に延出している。ホルダ113の左端部の上部及び下部には後方へと突出する一対の互いに対向した支持片114が形成されている。両支持片114には、上下方向に貫通する支持孔115が形成されている。また、両支持片114には、支持孔115の左方に上下方向に貫通する係止孔116が形成されている。
【0046】
受け部材112は、板状部材であって、上端面及び下端面の一側(基端側)にそれぞれ突設された軸117を有している。各軸117がホルダ113の支持孔115に回転可能に受容されることによって、受け部材112はホルダ113に回動可能に支持されている。受け部材112は、先端部(遊端部)が左方を向く第1位置と、先端部が後方を向く第2位置との間で回動可能になっている。すなわち、受け部材112は、略90°の回動範囲を有している。第1位置においては、受け部材112の主面がホルダ113に当接することによって回動範囲が規制され、第2位置においては、受け部材112の主面に突設された規制壁118がホルダ113に当接することによって回動範囲が規制されている。
【0047】
受け部材112とホルダ113との間には捻りコイルばね119が介装されており、受け部材112は、捻りコイルばね119によって第1位置から第2位置へ向う回転方向に付勢されている。また、受け部材112の上端面及び下端面には、第1位置においてホルダ113の係止孔116に係止される係止突起120が突設されている。係止突起120が係止孔116に係止されることによって、受け部材112は捻りコイルばね118の付勢力に抗して第1位置に保持される。
【0048】
受け部材112の先端部には、基端側へと延びる切り欠き121が形成されている。この切り欠き121によって、受け部材112の先端部は二股に分岐している。
【0049】
図11及び12に示すように、受け部材112は、第2位置において先端部が右窓4の召し合せ框19の前側面よりも後方に突出している。各窓3、4の召し合せ框12、19が互いに対向したサッシ窓2の閉状態では、受け部材112は左右方向において押圧部材106の基部107とベース部材101との間に配置されている。また、受け部材112の切り欠き121内に圧縮コイルばね110が配置されている。
【0050】
ベース部材101には、前方側へと突出する突片122が形成されている。突片122は、後述するが、受け部材112に当接して位置を変位させるために設けられている。
【0051】
図12〜14を参照して、開放補助装置100の動作を説明する。操作レバー32を回動することによって、クレセント37とストライカ111とが解錠状態と解錠状態との間で選択されるのは開放補助装置100と同様である。操作レバー32を把持部38が操作レバー32の回転軸に対して下方に向かう方向に回動させると、図12に示すように操作レバー32のカム面39が押圧部材106の被押圧端部109を右方へと押圧する。これにより、押圧部材106は、圧縮コイルばね110の付勢力に抗して初期位置から駆動後位置へと右方に変位する。カム面39は被押圧端部109上を摺動しながら、押圧部材106を右方へと変位させる。すなわち、操作レバー32は、押圧部材106を駆動する。
【0052】
このとき、押圧部材106の基部107は、受け部材112を右方へと押圧する。受け部材112は、規制壁118によって回動が規制されているため、受け部材112は押圧部材106に押圧されてもホルダ113に対する姿勢を維持する。これにより、ホルダ113に結合されている左窓3が右窓4に対して右方に変位する。すなわち、左窓3が開放される。
【0053】
図13に示すように、左窓3の右窓4に対する右方への変位が進むと、受け部材112はベース部材101の突片122に当接する。この状態から更に左窓3の右窓4に対する右方への変位が進むと、受け部材112は突片122に押圧され、捻りコイルばね119の付勢力に抗して、第2位置から第1位置へと回転する。これにより、図14に示すように、受け部材112は、突片122や召し合せ框19を避けることができ、左窓3の右窓4に対する右方への変位を阻害することがない。受け部材112が第1位置に到達すると、受け部材112の係止突起120がホルダ113の係止孔116に係止され、受け部材112は第1位置に保持される。
【0054】
図14に示すような左窓3が右窓4に対して右方にある状態(開放状態)から、左窓3を右窓4に対して左方に変位させると、規制壁118が突片122に当接し、受け部材112に係止突起120が係止孔116から離脱するのに十分な荷重が加わる。これにより、係止突起120が係止孔116から離脱し、受け部材112は捻りコイルばね119の付勢力によって第2位置へと変位する。すなわち、図12の状態に戻り、受け部材112は押圧部材106によって押圧可能な位置に復帰する。
【0055】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本実施形態では、受け部材52を召し合せ框12と別部材としたが、他の実施形態では受け部材52を召し合せ框12の一部として構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,100…開放補助装置、3…左窓、4…右窓、12,19…召し合せ框、25…左端面、31、101…ベース部材、32…操作レバー、33、106…押圧部材、37…クレセント、44…基部、45…押圧端部、46…被押圧端部、51,111…ストライカ、52,112…受け部材、53…左端部、102…受容孔、104…ガイドスロット、109…被押圧端部、113…ホルダ、116…係止孔、118…規制壁、120…係止突起、122…突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き戸を閉位置から開放する際の初期操作を補助する開放補助装置であって、
前記閉位置にある前記引き戸の戸尻部と対向するように設けられた支持部材と、
前記支持部材に変位可能に支持され、前記引き戸を開放する際に操作者が操作する操作部材と、
前記支持部材に変位可能に支持され、前記操作部材の変位に応じて駆動され、初期位置と駆動後位置との間で変位し、前記戸尻部を前記引き戸の開方向に押圧する押圧部材と
を有し、
前記押圧部材は、前記初期位置において、前記引き戸が開閉する際に前記引き戸と接触しないように、前記引き戸から離間して配置されていることを特徴とする開放補助装置。
【請求項2】
前記戸尻部は、段部を形成するように前記支持部材側に突出した召し合せ框を備え、
前記押圧部材は、前記引き戸の開閉方向に沿った方向から前記召し合せ框を開方向に押圧することを特徴とする請求項1に記載の開放補助装置。
【請求項3】
前記召し合せ框には、前記押圧部材によって押圧される被押圧部分が前記引き戸の面に沿って閉方向に突設されていることを特徴とする請求項2に記載の開放補助装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記初期位置と前記駆動後位置との間で回動可能に前記支持部材に支持されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の開放補助装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、回動軸の径方向に延在する基部と、前記基部の先端から前記回動軸を中心とした接線方向の一側に突出し、前記召し合せ框を押圧する押圧端部と、前記接線方向の他側に突出し、前記操作部材によって押圧される被押圧端部とを有し、前記被押圧端部の前記基部の先端からの突出長さは、前記押圧端部の前記基部の先端からの突出長さよりも長いことを特徴とする請求項4に記載の開放補助装置。
【請求項6】
前記戸尻部は、前記引き戸の開閉方向に沿って延在する第1位置と前記引き戸の主面に対して起立した状態に延在する第2位置との間で回動可能に支持された被押圧部材と、前記被押圧部材を前記第2位置へと付勢する付勢部材とを有し、
前記被押圧部材は、前記第2位置に位置するときに、前記操作部材によって駆動された前記押圧部材に前記第1位置と相反する側へと押圧され、前記引き戸を開方向へと変位させる一方、前記引き戸が開方向に移動する際に前記支持部材に押圧されて前記第2位置から前記第1位置へと付勢部材の付勢力に抗して変位することを特徴とする請求項1に記載の開放補助装置。
【請求項7】
前記戸尻部は、係止孔が形成されたホルダを有し、
前記支持部材は、前記戸尻部側に突出する突片を有し、
前記被押圧部材は、前記第1位置に位置するときに前記係止孔に係止される係止突起と、前記引き戸が開放された状態から前記閉位置へと変化する際に、前記突片に突き当たる係合凸部とを有し、前記係止突起が前記係止孔に係止されることによって前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1位置に保持され、前記引き戸が開放された状態から前記閉位置へと変化する際に前記突片に前記係合凸部が押圧されることによって、前記係止突起と前記係止孔との係止構造を解除しつつ前記第2位置へと回転することを特徴とする請求項6に記載の開放補助装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate