説明

引き裂き可能な特性を有するグミキャンディ様菓子の製造方法

【課題】グミキャンディのような弾力性と粘着性を有しながら、好みの大きさに引き裂くことができるという楽しさと、引き裂いた菓子片それぞれの味の出方や食感のバラエティを楽しむことができるグミキャンディ様菓子を、品質を維持しながら、効率よく製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】固形分として、糖質を35〜80重量%、食用油脂を5〜40重量%、並びにゼラチン、ペクチン、カラギーナン及びプルランから選ばれる少なくとも一種以上を含み、弾力性が5.0×105〜2.0×106kg/m2・sec、粘着性1.5×105〜8.0×105kg/m2・secである引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法であって、前記原料を加熱混合する工程、得られる混合物を厚さ0.2〜5mmのシート状の生地に成形する工程、前記シート状の生地の表面に細い麺線状の切り込みを入れる工程、前記シート状の生地を前記麺線の方向に対して略垂直の方向に切断する工程を有することを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き裂き可能な特性を有するグミキャンディ様菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、嗜好の多様性に伴い、食感や味及びその形状においてバリエーションに富んだ菓子が提案されてきた。特に、グミキャンディは、菓子の中でも幅広い人々に認知されており、食感と味付け、また種々な形状に成型され、見た目にも楽しい菓子として親しまれている。例えば、グミキャンディにおいて一般的なゼラチンを使用しながらも、空気を巻き込ませることによって、特有の粘弾性をもつもの(特許文献1)や、均質なゲル中に、不均一なゲルを分散させることによる、果実のようなザクザクとした新食感のグミキャンディ等が提案されている(特許文献2)。本発明者らも、ある特定の範囲内のDE値をもつ水飴及び、220ブルーム以上の豚骨ゼラチンを使用することによって、従来よりチューイング性に優れ、且つハードな食感を持つグミキャンディを提案している(特許文献3)。また、グミキャンディの形状においても、ハードキャンディ及びソフトキャンディを組み合わせることによって、食感差とときめきのある立体的な構造をもつグミキャンディ(特許文献4)や、ペクチン、ナトリウム塩、及び酸を添加し、様々な形状の型に流し込むことによって得られる複雑な所望の形状のグミキャンディが提案されている。また市場においても、果物やドリンクのボトル型、ハート型、キャラクターをかたどったもの等がヒット商品となっている。
【0003】
また、近年、果汁感向上による風味の充実化、及び食感の革新的な改良によってグミキャンディの市場は幅広い年齢層に拡大しており、市場を伸ばしている。このような状況下で、消費者の関心はよりいっそうのおいしさ及び新しさへ集中してきており、お菓子としての味や食感のおいしさと、ときめきのある楽しさを併せもつグミキャンディが求められている。
【0004】
従来から、広い世代に幅広く親しまれている物性を有する食品の中でも、蟹や貝柱やスルメイカ等のいわゆる指で引き裂けるという特性を有する食品に対する人気は、きわめて高いものがある。また、魚肉を主とした練り製品を原料として、上記のような蟹や貝柱など実際の形状や味や食感、引き裂ける繊維感を模した食品が種々販売されており、その製造方法も種々提案されている。例えば、かまぼこを麺状に細断して、それを集束させた食品などが知られている。その他、加熱前のすり身成型物を細断して集束し、さらに加熱することによって繊維同士の結着性を向上させる方法(特許文献5)や、練り製品をシート状に成型し、これに切断されない程度の深さに溝条を刻設し、これを捲き込んで棒状成型品とする方法(特許文献6)が提案されている。
【0005】
また、引き裂き可能な特性を有する食品としては、チーズを主原料とし、例えば、チーズを熱水中で軟化後圧力を加えて繊維化する方法(特許文献7、8)、脱脂乳,濃縮乳からの製造法としてはカルシウムのような金属多価イオンとpHの調節により牛乳中のカゼインをゲル化させ、このゲルに応力を加えて繊維化する方法(特許文献9)等、その製造法が種々検討されてきた。
【0006】
また、菓子においても、溶融したチョコレート生地を、ゼラチン等のゲル化剤水溶液に加えて混合し、可塑状態で延伸させることによってつくることができる引き裂き可能なチョコレートが提案されている(特許文献10)。これは、繊維状の引き裂き可能な構造を有しかつチョコレート特有の口どけのよい食感をもつものであり、グミキャンディのように食感や風味のバリエーションを持たせられるものではない。
【0007】
グミキャンディなどのキャンディ菓子においては、本発明者らが、結晶性糖類及びある一定量の食用油脂を含み、また一定の条件で熱処理したゼラチン溶液を配合させ、さらに一定方向に引き飴にすることで、あたかもグミキャンディのような瑞々しさと弾力に富んだ食感を持ちながら、引き裂くことができるグミキャンディ様菓子を提案している(特許文献11、12)。しかしながら、特許文献11及び12に記載されているグミキャンディ様菓子は、引き裂くことができ、新しい食感や味を楽しむことができる一方で、結晶性の糖質を多く含むために製造段階で経時的に糖の結晶化が進み、グミキャンディ様菓子の食感のコントロールが難しいことと、引き裂き性はあるものの、生地が部分的に千切れやすくなるなど、品質が不安定なる傾向があり、食感や物性のコントロールが難しいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−206512号公報
【特許文献2】特開2008−67638号公報
【特許文献3】特開2009−213368号公報
【特許文献4】特開2004−321140号公報
【特許文献5】特公昭61−09022号公報
【特許文献6】特公昭58−029065号公報
【特許文献7】特公昭58−48145号公報
【特許文献8】特公昭58−31173号公報
【特許文献9】特公昭55−30822号公報
【特許文献10】特許第3575514号公報
【特許文献11】特開2011−130731号公報
【特許文献12】特願2010−43338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、グミキャンディのような弾力性と粘着性を有しながら、好みの大きさに引き裂くことができるという楽しさと、引き裂いた菓子片それぞれの味の出方や食感のバラエティを楽しむことができるグミキャンディ様菓子を、品質を維持しながら、効率よく製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕固形分として、糖質を35〜80重量%、食用油脂を5〜40重量%、並びに
ゼラチン、ペクチン、カラギーナン及びプルランから選ばれる少なくとも一種以上を含み、弾力性が5.0×105kg/m2・sec〜2.0×106kg/m2・sec、粘着性1.5×105kg/m2・sec〜8.0×105kg/m2・secである引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とする引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法、
(1)前記原料を加熱混合する工程、
(2)得られる混合物を厚さ0.2〜5mmのシート状の生地に成形する工程、
(3)前記シート状の生地の表面に細い麺線状の切り込みを入れる工程、
(4)前記シート状の生地を前記麺線の方向に対して略垂直の方向に切断する工程、
〔2〕前記ゼラチンが、280ブルーム以上で粘度が4.0mPa・s以上のゼラチンである、前記〔1〕に記載の引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法、
〔3〕前記(1)工程で得られる混合物のBrixが80〜92である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、グミキャンディのような弾力性と粘着性を有しながら、引き裂き可能なグミキャンディ様菓子を、安定した品質で、かつ大量に製造することができる。本発明により得られるグミキャンディ様菓子は、好みの大きさに引き裂きながら食することができるという楽しさと、引き裂いた菓子片それぞれの味の出方や食感のバラエティを楽しむことができるという従来のグミキャンディにないときめきを消費者に与えることができる、新規な菓子である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明は、固形分として、糖質を35〜80重量%、食用油脂を5〜40重量%、並びに、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン及びプルランから選ばれる少なくとも一種以上を含み、弾力性が5.0×105kg/m2・sec〜2.0×106kg/m2・sec、粘着性1.5×105kg/m2・sec〜8.0×105kg/m2・secである引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法であって、以下の工程(1)〜(4):
(1)前記原料を加熱混合する工程
(2)得られる混合物を厚さ0.2〜5mmのシート状の生地に成形する工程
(3)前記シート状の生地の表面に細い麺線状の切り込みを入れる工程
(4)前記シート状の生地を前記麺線の方向に対して略垂直の方向に切断する工程
を有することを特徴とする。
【0014】
かかる特徴を有することで、グミキャンディのような瑞々しさと弾力に富んだ食感をもちながら、引き裂くことができるというグミキャンディにない特性を有する菓子を安定した品質で、かつ大量に製造することができる。
【0015】
グミキャンディとは、一般に噛み応えのある弾力に富んだ食感を特徴とする菓子であり、その主な製法として、砂糖や水飴等の糖質を溶解させ、加熱して炊き上げた糖液に、ゲル化剤として主にゼラチンを用いて固化させるものが多い。
一方、本発明でいうグミキャンディ様菓子は、前記のような一般的なグミキャンディに加え、糖質と、食用油脂と、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン及びプルランから選ばれる少なくとも一種以上とを原料とし、特定の弾力性と粘着性を有することで、あたかもグミキャンディと同様の弾力のある食感を有する菓子である。
【0016】
前記糖質とは、主にグミキャンディ様菓子のボディを形成するものであり、また菓子としての甘さ、果汁感を出すために使用される。例えば、砂糖、水飴、果糖ブドウ糖液糖、糖アルコール、還元水飴、粉糖、フォンダン等を使用することができる。
前記グミキャンディ様菓子の固形分中の糖質の含有量は、35〜80重量%が好ましい。
前記糖質の含有量が35重量%未満であればグミキャンディのような弾力性のある食感を出すことが難しく、甘さや果汁感に欠け菓子としてのおいしさを出すことが困難となる。前記糖質の含有量が80重量%を超えると弾力性がありすぎて硬い食感となり、またべたつきが生じて機械、装置に付着するなど作業性がよくないものとなる。
【0017】
前記食用油脂とは、常温で固体である食用の固形脂であれば良く、融点が35℃以上であることが好ましい。
前記グミキャンディ様菓子の固形分中の食用油脂の含有量は、5〜40重量%である。食用油脂の含有量が5重量%未満であると、グミキャンディ様菓子においてグミ特有の弾力はあるが、結着性が強くなり、引き裂き可能な特性は得がたい。また、食用油脂の含有量が40重量%を超えると、乳化状態を安定させることが困難であり、グミキャンディ様菓子において油脂の染み出しが起こりやすい。また、食用油脂はグミキャンディ様菓子の味に対する影響が大きく、食用油脂の含有量が多いほど瑞々しさ(果汁感)が出にくくなり、グミキャンディ様菓子としてのおいしさが損なわれる。前記食用油脂の含有量は、10〜30重量%がより好ましい。
【0018】
本発明において、グミキャンディ様菓子の生地のまとまりや柔軟性をもたせるために、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、プルランなどを用いる。中でも、生地の弾力ある食感や作業性からゼラチンを用いることが最も好ましい。
【0019】
前記ゼラチンとしては、豚皮ゼラチン、豚骨ゼラチン、牛皮ゼラチン、牛骨ゼラチン、フィッシュゼラチン等が挙げられるが、特に限定はない。また、原料のゼラチンには、加熱処理前に酸処理やアルカリ処理などの別の処理が施されたものでもよい。原料のゼラチンのブルーム値は、市販の150〜300のものを用いることができるが、食感や引き裂き性を考慮した場合に、280〜300ブルームで粘度が4.0mPa・s以上であることが好ましい。
なお、前記ブルーム値とは、ゼリー強度を示すもので、ゼラチンの6.67重量%水溶液を規定のカップに入れ10±0.1℃の恒温槽で16〜18時間冷却ゼリー化して、ブルーム式ゼリー強度計のプランジャー(直径12.7mm)を4mmだけゼリー中に押し込むのに要する散弾の重さ(g)を測り、この重量をブルーム値として表したものである。
【0020】
前記グミキャンディ様菓子の固形分中のゼラチンの含有量は、所望の効果を奏する観点から、2.5〜10重量%が好ましい。
【0021】
前記ペクチンとは、植物の細胞壁などに含まれる多糖類で、食品おいて、主にゲル化剤や増粘剤として使用されているものであればよい。
前記グミキャンディ様菓子中のペクチンの含有量としては、所望の効果を奏する観点から、0.1〜2重量%が好ましい。
【0022】
前記カラギーナンとは、紅藻類由来の多糖類で食品おいて、主にゲル化剤や増粘剤として使用されているものであればよい。前記グミキャンディ様菓子中のカラギーナンの含有量としては、所望の効果を奏する観点から、0.1〜2重量%が好ましい。
【0023】
前記プルランとは、澱粉由来の多糖類で、増粘性、接着性、付着性、粘着性、造膜性、被膜性などに優れ、可食水溶性の成型物(フィルムやカプセルなど)を作製したり、増粘剤として用いられるものであればよい。前記グミキャンディ様菓子中のプルランの含有量としては、所望の効果を奏する観点から、0.5〜5重量%が好ましい。
【0024】
前記グミキャンディ様菓子は、前記原料の他、風味、食感などの物性をコントロールするために、任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、例えば、澱粉、寒天、ポリデキストロース、グルコマンナン、アラビアガム、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガントガム、グアガム、カラヤガム、タマリンドシードガム、食物繊維、乳タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、果汁、甘味料、酸味料、香料等、穀粉、アミノ酸、増粘多糖類、乳化剤等が挙げられる。これらの任意成分の含有量は、特に限定はない。
【0025】
(1)工程
本発明では、まず、糖質と、食用油脂と、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン及びプルランから選ばれる少なくとも一種以上とに加えて、必要であれば前記任意成分を混合攪拌する。このとき、原料を溶解するために加熱を行う。加熱温度としては、50〜80℃が好ましい。
また、加熱手段は、グミキャンディなどの糖菓子の生地を製造する場合と同様の手段であればよく、特に限定はない。
【0026】
前記加熱混合時には、必要であればさらに水を添加することで得られる混合物の流動性を調整してもよい。ただし、後述の(2)工程において混合物の成形が困難とならない程度に水の量を調整することが好ましく、具体的にはBrix(ブリックス)80〜92の範囲内に調製することがより好ましい。前記Brixの調整方法としては、予め混合物中の水分値について目標値を計算しておき、その目標値にあうように原料の量から水量を算出したり、適当に水を配合した後、煮詰めて水分値を調整したりしてもよく、特に限定はない。
【0027】
(2)工程
次いで、前記(1)工程で得られる混合物を厚さ0.2〜5mmのシート状の生地に成形する。
シート状に成形した生地を得るには、生地の状態によって種々の既存の方法を用いて得られる。例えば、前記混合物を一定のサイズのプレートに流し込み、厚さ0.2〜5mmのシート状に成型する方法、前記混合物に一定の圧力をかけてプレスしシート状に成型する方法、前記混合物を圧延ローラーによって厚さ0.2〜5mmのシートに圧延する方法、ベルトコンベヤ上に前記混合物を流し、0.2〜5mmの厚さですり切る方法などが挙げられる。いずれの方法でも、一定の幅でシートを成形することが好ましい。
【0028】
また、前記シート状の生地の厚みは0.2mm未満になると、本工程でシート状に成形する際に生地が破れやすくなり、また最終的に引き裂く際に千切れやすい物性となる。また、厚みが5mmを超えると、安定してシート状に成形することはできるが、生地の厚みがありすぎて次の(3)の工程において製麺機に通して麺状に成型したり、ロールを通して切断されない程度の深さに溝条を刻設することが困難となる。
【0029】
(3)工程
次いで、前記(2)工程で得られるシート状の生地の表面に細い麺線状の切り込みを入れる。
細い麺線状の切込みを入れる手段としては、製麺機等の、麺線状に成型できる機械を使用することができるが、より好ましくは、蟹肉様かまぼこを製造する際に使用されるような、切断されない程度の深さに溝条を刻設できる一対のロール(以下、細断機)を用いることが望ましい。前記方法によって、バラバラの素麺状の成形物を作らずに、細い麺線状の生地が複数本、並列に接合されたものに相当する、取り扱い易いシート状の生地を作ることができる。
なお、前記麺線の断面形状については略円形であればよいが特に限定はない。また、麺線間の切り込みの深さについては、切り込みを入れたシート状生地が自然に切り離れないような強度が維持される深さであればよい。
【0030】
(4)工程
次いで、前記(3)工程で得られる前記シート状の生地をその麺線方向に対して略垂直の方向に切断する。
切断する手段としては、常法によって行うことができ、例えば、キャラメルカッターなど、シート状の生地を一定のサイズに切断するものであればよい。
【0031】
切断したシート片はそのままグミキャンディ様菓子として用いてもいいし、麺線状の切り込みと平行な方向の左右どちらか一方を芯とし、垂直の方向に丸めてスティック状に成形しても良い。
【0032】
以上のようにして得られるグミキャンディ様菓子は引き裂き可能な特性を有する。本発明において引き裂き特性とは、成人の男女が手で簡単に引き裂くことが可能であることをいうが、具体的には、菓子を引き裂く際にかかる力を、下記の方法でせん断試験を行い測定することで判断できる。
【0033】
測定には、テクスチャーアナライザー(「Texture Analyzer TA.XT.plus」、Stable Micro Systems社製)を使用する。グミキャンディ様菓子を15mm(縦:麺線方向に対して平行)×10mm(横:麺線方向に対して垂直方向)に切断し、試料の中央から縦方向に0.75mm切込みを入れ、切り分けられた片方をプランジャーに、片方を台座に固定して、測定速度1mm/secでプランジャーを引き上げ、完全に引き裂かれるまでにかかった力と時間の積(単位;kg・sec)を、引き裂き力とする。この引き裂き力の値は、菓子の引き裂きやすさの目安とすることができる。引き裂き力の値が低いほど、引き裂けやすく、値が高いほど、引き裂きにくいことを表すことができる。
【0034】
本発明では、前記せん断試験による計算値が1.2kg・sec以下の範囲内にあれば、引き裂き可能であるとする。なお、市販のグミキャンディや澱粉ゼリー菓子では、一般的には、1.5〜3.0kg・secであり、ソフトキャンディでは、3.0〜5.0kg・secである。
【0035】
また、前記グミキャンディ様菓子は、グミキャンディと類似の弾力性や粘着性を有する。
具体的には、上記と同様テクスチャーアナライザーを使用し、貫入距離200%、測定速度1mm/sec、測定温度20℃で直径2mmの円柱プローブを用いて測定を行い、測定値として得られる「弾力性」によりグミキャンディ様菓子の硬さの指標を明らかにすることが可能であり、測定値として得られる「粘着性」により機械、設備等への付着性の指標を示すことが可能である。具体的な測定については測定装置に添付のマニュアルに準じた。
【0036】
前記グミキャンディ様菓子の弾力性としては、5.0×105kg/m2・sec〜2.0×106kg/m2・secである。弾力性が5.0×105kg/m2・sec以下になると、生地が軟らかすぎて機械に付着して、細い麺線状に切れ込みを入れることが困難になる。弾力性が、2.0×106kg/m2・secを超えると、生地が硬すぎて、細い麺線状に切れ込みを入れることが困難になる。
また、前記グミキャンディ様菓子の粘着性としては、1.5×105kg/m2・sec〜8.0×105kg/m2・secである。粘着性が1.5×105kg/m2・sec以下になると、生地がサクくなりすぎて、細い麺線状に切れ込みを入れる工程で生地が千切れやすくなる傾向にある。また、8.0×105kg/m2・sec以上になると、生地の粘度が高すぎて、機械に付着しやすくなり、細い麺線状に切れ込みを入れることが困難になる。
【0037】
また、前記グミキャンディ様菓子は、効率よく製造でき、また、グミキャンディと類似の食感を奏する観点から、水分値が8〜20重量%であることが望ましい。
前記水分値は、減圧乾燥法によって測定される値をいう。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の趣旨はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、%及び部は重量基準の数値を示す。
後述の実施例1〜11、比較例1〜2では、表1の配合率になるように各原料を用いてグミキャンディ様菓子を作製した。
【0039】
【表1】

【0040】
(実施例1)
糖質、食用油脂を混合し、加水して加熱溶解させたのちに煮詰めて混合溶液を作製し、これにゼラチン(280ブルームの豚皮由来の酸処理ゼラチン)の量の1.5倍の水で膨潤させたゼラチン溶液を混合し、さらにクエン酸、着色料、甘味料、グレープ香料を混合し、混合物のBrixを82に調整した。
次いで、得られた混合物をテフロン加工した板に流し込み、冷却して、厚さ2mmのシート状の生地を作製した。
次いで、前記シート状の生地を、蟹肉様かまぼこを製造する際に使用される、切断されない程度の深さに溝条を刻設できる一対のロールが付属された細断機(株式会社ヤナギヤ社製)に通し、表面に細い麺線状の切り込みを入れたシートを作製した。
次いで、得られたシートを、キャラメルカッターを用いて、1cm×5cm片に切断した。
以上のようにして、麺線状の切り込みと平行な方向に引き裂くことができるグミキャンディ様菓子を得た。
このときの弾力性は、7.2×105kg/m2・sec、粘着性は2.3×105kg/m2・secであった。
【0041】
なお、得られたグミキャンディ様菓子のBrixは、製造段階で得られた混合物と実質的に同じであり、グミキャンディ様菓子の水分値は18重量%(=100−82(Brix))であった。以下の実施例2〜11、比較例1〜6で得られたグミキャンディ様菓子の水分値についても実施例1と同様に製造段階で得られる混合物と実質的に同じであった。
【0042】
(実施例2)
表1の組成で実施例1と同様にして原料を溶解混合した。得られた生地溶解液を、テフロン加工したベルトコンベア上に流し、コンベア上で2mmの厚さにすり切って、空冷により生地を冷却し、コンベア上から剥離してシート状の生地を得た。ゼラチンは、280ブルームの豚皮由来の酸処理ゼラチンを用いた。その他、シートに切り込みを入れる工程及びカッティングの工程は、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、1.6×106kg/m2・sec、粘着性は5.4×105kg/m2・secであった。
【0043】
(実施例3)
表1の組成で実施例1と同様にして原料を溶解混合した。得られた生地を圧延ローラーを通して厚さ2mmのシートに成型した。その他、カッティングの工程は、実施例1と同様にして行った。ゼラチンは、250ブルームの豚皮由来の酸処理ゼラチンを用いた。その他、シートに切り込みを入れる工程及びカッティングの工程は、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、1.6×106kg/m2・sec、粘着性は5.4×105kg/m2・secであった。
【0044】
(実施例4)
表1の組成で実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、1.6×106kg/m2・sec、粘着性は5.4×105kg/m2・secであった。
【0045】
(実施例5)
HMペクチン(UNIPECTINSS150、ルスロ社製)、砂糖、水飴(Brix75)を加熱混合した。該溶液にクエン酸、着色料、甘味料、グレープ香料を加え混合し、Brix83に調整した。その他、シート状に成型する工程、シートに切り込みを入れる工程及びカッティングの工程は、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、7.5×105kg/m2・sec、粘着性は3.4×105kg/m2・secであった。
【0046】
(実施例6)
サンカラNo.1572(太陽化学社製)、砂糖、水飴を加熱混合した。該溶液にクエン酸、着色料、甘味料、グレープ香料を加え混合し、Brix83に調整した。その他、シート状に成型する工程、シートに切り込みを入れる工程及びカッティングの工程は、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、7.5×105kg/m2・sec、粘着性は3.4×105kg/m2・secであった。
【0047】
(実施例7)
プルラン(林原商事社製)、砂糖、水飴を加熱混合した。その他の工程は、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、7.5×105kg/m2・sec、粘着性は5.4×105kg/m2・secであった。
【0048】
(実施例8)
HMペクチン(UNIPECTINSS150、ルスロ社製)、砂糖、水飴、食用油脂を加熱溶解した。該糖液にゼラチンの量の1.5倍の水で膨潤させたゼラチン溶液を混合し、その他の工程に関しては、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、1.4×106kg/m2・sec、粘着性は7.0×105kg/m2・secであった。
【0049】
(実施例9)
プルラン、砂糖、水飴、食用油脂を加熱溶解した。該糖液にゼラチンの量の1.5倍の水で膨潤させたゼラチン溶液を混合し、その他の工程に関しては、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、1.4×106kg/m2・sec、粘着性は7.0×105kg/m2・secであった。
【0050】
(実施例10)
表1の配合で、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、このときの硬さは、1.0×106kg/m2・sec、粘着性は5.0×105kg/m2・secであった。
【0051】
(実施例11)
実施例1で作製した生地を用いて、麺線状の切り込みと平行な方向の左右どちらか一方を芯とし、垂直の方向に丸めてスティック状に成型した。
【0052】
(比較例1)
表1の配合率になるように原料を混合し、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、1.0×106kg/m2・sec、粘着性は8.5×105kg/m2・secであった。
【0053】
(比較例2)
表1の配合率になるように原料を混合し、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
このときの弾力性は、2.5×106kg/m2・sec、粘着性は8.5×105kg/m2・secであった。
【0054】
(比較例3)
表1の実施例1の配合率になるように原料を混合し、得られた混合物のBrixを75になるように調整した。その他の工程に関しては、実施例1と同様に行った。
しかし、シート状に成型した後、全てを剥離することができず、また、細断機にかけた後、引き裂くことはできたが、べたつきが大きく、機械に付着して作業性が良くなかった。
このときの弾力性は、4.5×105kg/m2・sec、粘着性は1.4×105kg/m2・secであった。
【0055】
(比較例4)
表1の実施例1の配合率になるように原料を混合し、得られた混合物のBrixを95になるように調整した。その他の工程に関しては、実施例1と同様にしてグミキャンディ様菓子を製造した。
しかし、シート状に成型した後、細断機を通しても生地に麺線状の切り込みをつけることができず、容易に引き裂くことができなかった。
このときの弾力性は、2.2×106kg/m2・sec、粘着性は9.1×105kg/m2・secであった。
【0056】
(比較例5)
表1の実施例1の配合率になるように原料を混合し、得られた混合溶液を、テフロン加工したベルトコンベア上に流し、コンベア上で0.15mmの厚さにすり切って、空冷により生地を冷却し、コンベア上から剥離してシート状の生地を得た。これをテフロン加工した板の上に移動し、冷却して、厚さ0.15mmのシート状のグミキャンディ様菓子を作製した。
【0057】
結果、コンベア上から剥離する際に、生地が一部破れ、厚さが均一なシートを作製することができなかった。また、得られたシートを細断機に通したところ、生地が一部千切れ、求める引き裂き性を得ることができなかった。
【0058】
(比較例6)
表1の実施例1の配合率になるように原料を混合し、得られた混合溶液を、テフロン加工したベルトコンベア上に流し、コンベア上で6mmの厚さにすり切って、空冷により生地を冷却し、コンベア上から剥離してシート状の生地を得た。これをテフロン加工した板の上に移動し、冷却して、厚さ6mmのシート状のグミキャンディ様菓子を作製した。
結果、厚さが6mmの均一なシートを作製することができたが、得られたシートを細断機に通したが、切断されない程度の深さに溝条を刻設することが困難であった。
【0059】
(試験例)
実施例1〜11及び比較例1〜6で得られたグミキャンディ様菓子を、せん断試験に供した。測定は前記のようにしておこなった。
【0060】
実施例1〜11の菓子はいずれも、せん断試験による計算値が0.8kg・sec以下であり、引き裂け易いものであった。
これに対して、比較例1のものは、せん断試験による計算値が0.85kg・secであり、引き裂くことはできたが、グミキャンディに特有の甘さや果汁感が感じられず、菓子としてのおいしさに欠けていた。比較例2のものは、せん断試験による計算値が2.5kg・secであり、引き裂くのに力がかかり、さらに機械装置への付着があり作業性がよくなかった。
また、水分値が25%の比較例3のものは、せん断試験による計算値が1.0kg・secであり、引き裂くことはできたが、べたつきが大きく作業性が良くなかった。また、水分値が5%の比較例4のものは、機械装置からの剥離性は問題なかったが、前記せん断試験による計算値は3.83kg・secであり、容易に引き裂きがたいものであった。また、比較例6は、前記せん断試験による計算値は2.72kg・secであり、容易に引き裂きがたいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分として、糖質を35〜80重量%、食用油脂を5〜40重量%、並びに
ゼラチン、ペクチン、カラギーナン及びプルランから選ばれる少なくとも一種以上を含み、弾力性が5.0×105kg/m2・sec〜2.0×106kg/m2・sec、粘着性1.5×105kg/m2・sec〜8.0×105kg/m2・secである引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とする引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法。
(1)前記原料を加熱混合する工程
(2)得られる混合物を厚さ0.2〜5mmのシート状の生地に成形する工程
(3)前記シート状の生地の表面に細い麺線状の切り込みを入れる工程
(4)前記シート状の生地を前記麺線の方向に対して略垂直の方向に切断する工程
【請求項2】
前記ゼラチンが、280ブルーム以上で粘度が4.0mPa・s以上のゼラチンである、請求項1に記載の引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法。
【請求項3】
前記(1)工程で得られる混合物のBrixが80〜92である、請求項1又は2に記載の引き裂き可能なグミキャンディ様菓子の製造方法。