説明

引っ込んだ支持特徴部を有するチャッキングシステム

インプリントリソグラフィシステムにおいて、テンプレートチャック上の引っ込んだ支持体が、上部に配置されたテンプレートの形状を変化させ、ナノインプリントリソグラフィプロセスにおいてテンプレートの外縁が早期に下方偏向するのを最小限に抑え、及び/又はこれを排除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2009年7月2日に出願された米国仮特許出願第61/222,794号、及び2010年7月1日に出願された米国特許出願第12/828,498号の優先権を主張するものであり、これらの両出願は引用により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
ナノ加工とは、約100ナノメートル又はそれ以下の極小構造の加工を意味している。ナノ加工がかなりの影響を与えてきた1つの用途に、集積回路の処理におけるものがある。半導体処理産業は、より高い生産収率を追求し続ける一方で、基板上に形成される単位面積当たりの回路を増やしているため、ナノ加工はますます重要になっている。ナノ加工では、より優れたプロセス制御が得られる一方で、形成される構造物の最小特徴部の寸法を継続的に縮小することができる。ナノ加工が利用されてきたその他の開発分野として、バイオテクノロジー、光学技術、機械系などが挙げられる。
【0003】
今日使用されている例示的なナノ加工技術は、一般にインプリントリソグラフィと呼ばれる。例示的なインプリントリソグラフィプロセスが、米国特許出願公開第2004/0065976号、米国特許出願公開第2004/0065252号、及び米国特許第6,936,194号などの数多くの公報に詳細に記載されており、これらは全て引用により本明細書に組み入れられる。
【0004】
上述の米国特許出願公開及び特許の各々に開示されているインプリントリソグラフィ技術は、形成可能な(重合可能な)層内にレリーフパターンを形成すること、及びこのレリーフパターンに対応するパターンを下部の基板に転写することを含む。基板をモーションステージに結合して、パターニング処理を容易にするのに望ましい位置調整を行うことができる。パターニング処理では、基板から間隔を空けたテンプレート、及びテンプレートと基板の間に適用される形成可能な液体を使用する。この形成可能な液体を固化して、形成可能な液体と接するテンプレートの表面形状に従うパターンを有する剛体層を形成する。固化後、テンプレートを剛体層から分離して、テンプレートと基板が間隔を空けるようにする。その後、基板及び固化層は、固化層内のパターンと一致するレリーフ像を基板内に転写するための追加の処理を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0065976号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0065252号明細書
【特許文献3】米国特許第6,936,194号明細書
【特許文献4】米国特許第6,873,087号明細書
【特許文献5】米国特許第7,157,036号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0187339号明細書
【特許文献7】米国特許第6,932,934号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0124566号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0188381号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0211754号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明をより詳細に理解できるように、添付図面に示す実施形態を参照しながら本発明の実施形態について説明する。しかしながら、添付図面は、本発明の代表的な実施形態のみを示すものであり、従って範囲を限定するものであるとみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態によるリソグラフィシステムの簡略化した側面図である。
【図2】上部にパターン層を有する図1に示す基板の簡略化した側面図である。
【図3】外側領域が基板と接するテンプレートチャックの簡略化した側面図である。
【図4】引っ込んだ支持体を有するテンプレートチャック及び引っ込んだ支持体を有する基板チャックの簡略化した側面図である。
【図5A】インプリント処理中の図4のテンプレートチャック及び基板チャックの簡略化した側面図である。
【図5B】インプリント処理中の図4のテンプレートチャック及び基板チャックの簡略化した側面図である。
【図5C】インプリント処理中の図4のテンプレートチャック及び基板チャックの簡略化した側面図である。
【図6】分離処理中の図4のテンプレートチャック及び基板チャックの簡略化した側面図である。
【図7】引っ込んだ支持体を有するテンプレートチャック及び引っ込んだ支持体を有する基板チャックの簡略化した側面図である。
【図8A】インプリント処理中の図7のテンプレートチャック及び基板チャックの簡略化した側面図である。
【図8B】インプリント処理中の図7のテンプレートチャック及び基板チャックの簡略化した側面図である。
【図8C】インプリント処理中の図7のテンプレートチャック及び基板チャックの簡略化した側面図である。
【図9】分離処理中の図7のテンプレートチャック及び基板チャックの簡略化した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図、特に図1には、基板12上にレリーフパターンを形成するために使用するリソグラフィシステム10を示している。基板12は、基板チャック14に結合することができる。図示のように、基板チャック14は真空チャックである。しかしながら、基板チャック14は、以下に限定されるわけではないが、真空型、ピン型、溝型、静電式、電磁型、及び/又は同様のものを含むいずれのチャックであってもよい。例示的なチャックが、米国特許第6,873,087号に記載されており、該特許は引用により本明細書に組み入れられる。
【0009】
基板12及び基板チャック14を、ステージ16によってさらに支持することができる。ステージ16は、x、y、及びz軸に沿った並進移動及び/又は回転移動を行うことができる。ステージ16、基板12、及び基板チャック14を基台(図示せず)上に配置することもできる。
【0010】
基板12から間隔を空けてテンプレート18が存在する。テンプレート18は、テンプレートから基板12へ向かって延びる、上部にパターン面22を有する20で示される部分、すなわちメサを含むことができる。さらに、メサ部分をモールド20と呼ぶこともできる。或いは、メサ部分を使用せずにテンプレート18を形成することもできる。
【0011】
テンプレート18及び/又はモールド20は、以下に限定されるわけではないが、石英ガラス、石英、シリコン、有機ポリマー、シロキサン重合体、ホウケイ酸ガラス、フルオロカーボン重合体、金属、硬化サファイア、及び/又は同様のものを含む材料で形成することができる。図示のように、パターン面22は、複数の間隔を空けた凹部24及び/又は凸部26により定められる特徴部を備えるが、本発明の実施形態はこのような構成に限定されるものではない。パターン面22は、基板12上に形成されるパターンの基礎を形成するあらゆる原パターンを定めることができる。
【0012】
テンプレート18は、チャック28に結合することができる。チャック28は、以下に限定されるわけではないが、真空型、ピン型、溝型、静電型、電磁型、及び/又はその他の同様のチャック型として構成することができる。例示的なチャックが米国特許第6,873,087号にさらに記載されており、該特許は引用により本明細書に組み入れられる。さらに、チャック28をインプリントヘッド30に結合して、チャック28及び/又はインプリントヘッド30を、テンプレート18の動きを容易にするように構成することができる。
【0013】
システム10は、流体分注システム32をさらに備えることができる。流体分注システム32を使用して、基板12上に重合性材料34を堆積させることができる。液滴分注、回転被覆、浸漬被覆、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、薄膜堆積、厚膜堆積、及び/又は同様のものなどの技術を使用して、基板12上に重合性材料34を配置することができる。設計配慮に応じ、モールド20と基板12の間に所望の体積が定められる前及び/又は後に、基板12上に重合性材料34を配置することができる。米国特許第7,157,036号及び米国特許出願公開第2005/0187339号に記載されるように、重合性材料34は単量体混合物を含むことができ、これらの両特許は引用により本明細書に組み入れられる。
【0014】
図1及び図2を参照して分かるように、システム10は、経路42に沿ってエネルギー40を導くように結合されたエネルギー源38をさらに備えることができる。インプリントヘッド30及びステージ16を、テンプレート18及び基板12を経路42と重ねて配置するように構成することができる。システム10は、ステージ16、インプリントヘッド30、流体分注システム32、及び/又はエネルギー源38と通信するプロセッサ54によって調整することができ、またメモリ56に記憶されたコンピュータ可読プログラムで動作することができる。
【0015】
インプリントヘッド30、ステージ16のいずれか又は両方は、モールド20と基板12の間の距離を変化させて、これらの間に、重合性材料34によって満たされる所望の体積を定める。例えば、インプリントヘッド30はテンプレート18に力を印加して、モールド20が重合性材料34と接触するようにすることができる。所望の体積が重合性材料34で満たされた後、エネルギー源38が、紫外放射線などのエネルギー40を生成し、これにより重合性材料34が基板12の表面44及びパターン面22の形状に従って固化及び/又は架橋し、基板12上にパターン層46を定める。パターン層46は、残留層48、及び凸部50及び凹部52として示す複数の特徴部を有することができ、凸部50は厚みt1を有し、残留層は厚みt2を有する。
【0016】
上述のシステム及びプロセスを、米国特許第6,932,934号、米国特許出願公開第2004/0124566号、米国特許出願公開第2004/0188381号、及び米国特許出願公開第2004/0211754号に記載されるインプリントリソグラフィプロセス及びシステムでさらに使用することができ、これらの特許は全て引用により本明細書に組み入れられる。
【0017】
図3を参照して分かるように、一般に、インプリント中には、テンプレート18及び基板12が距離d1まで近接近して、図1及び図2に関連して説明及び図示したようなパターン層46を形成する。例えば、テンプレート18及び基板12が、d1<15μmの中に収まることもある。テンプレート複製処理では、テンプレート18の長さと基板12の長さを実質的に同じにすることができる。従って、テンプレート18と基板12とが距離d1だけ離れている場合、テンプレート18の縁部に生じる下方偏向により、テンプレート18の外縁が基板12に接触する可能性がある。テンプレート18の下方偏向によって生じる、テンプレート18の外縁におけるこの種のテンプレート18と基板12の間の接触は、微粒化及び/又は応力の原因となる恐れがある。また、この接触により、図1及び図2に関連して説明したインプリント中にモールド20と基板12及び/又は重合性材料34との間に必要となる接触が、テンプレート18によって得られなくなる恐れがある。
【0018】
テンプレート18及び/又は基板12の外縁における下方偏向を低減するために、チャックシステムが、テンプレート18及び/又は基板12を支持する引っ込んだ支持特徴部を外縁に含むことができる。ナノインプリントリソグラフィプロセス中に、テンプレート18の引っ込んだ支持特徴部が、テンプレート18の外縁においてテンプレート18を基板12から物理的に離間させることができる。図4に、引っ込んだ支持部64及び保持支持部66を有するテンプレートチャック60を示す。引っ込んだ支持部64は、チャック60の外側境界上に位置するように保持支持部66を取り巻く。
【0019】
引っ込んだ支持部64は、チャック60の外側支持部として配置され、1又はそれ以上の引っ込んだランド65を含むことができる。例えば、図4には、チャック60の外縁に位置する単一のランド65を有する引っ込んだ支持部64を示しているが、1又はそれ以上の追加の引っ込んだランド65をチャック60の外縁に配置して引っ込んだ支持部64を実現することもできる。引っ込んだ支持部64の個々のランド65の寸法を実質的に同様にし、又は最小限の変更に抑えて、本発明によるインプリント及び/又は分離中にテンプレート18の外縁の下方偏向を最小限に抑え及び/又は排除することができる。引っ込んだランドの高さh1は、テンプレート18の外縁が基板12の方向ではなくチャック60の方向に湾曲する偏向形状をテンプレート18にもたらすように構成することができる。
【0020】
引っ込んだ支持部64は、保持支持部66のランド67の長さhxよりも短い長さh1を有する1又はそれ以上のランド65を含むことができる。保持支持部66のランド67は、チャック60の中央部から内側部分に位置することができる。例えば、引っ込んだ支持体64は、チャック60の中央部から内側部分に配置された保持支持部66のランド67の長さhxよりも約40μm短い長さh1のランド65を有することができる。保持支持部66は、1又はそれ以上のランド67を含むことができる。例えば、図4には4つのランド67を有する保持支持部66を示しているが、本発明によればあらゆる数のランドを使用することができる。
【0021】
テンプレートチャック60は、引っ込んだ支持部64と、保持支持部66と、テンプレート18の一部とで形成された複数のチャンバ68を含むこともできる。図4に示すように、引っ込んだ支持体64のランド65と保持支持部66の外側ランド67の間にはチャンバ68aが形成され、テンプレート18の一部を含む。保持支持部66のランド67とテンプレート18の一部の間には、チャンバ68b〜68eが形成される。
【0022】
チャンバ68a〜68eは、テンプレートチャック60の外側屈曲区域Z1、保持区域Z2、及び背圧区域Z3という3つの異なる区域をもたらすことができる。圧力系70は、各区域Z1〜Z3内の圧力を制御するように動作することができる。圧力系70は、チャンバ68a〜68eと流体連通することができる。1つの実施形態では、単一の圧力系70が、各区域Z1〜Z3内の圧力を制御するように動作することができる。或いは、2又はそれ以上の圧力系70が、各区域Z1〜Z3内の圧力を制御するように動作することもできる。圧力は、区域Z1〜Z3内への圧力の印加(すなわち加圧状態)及び/又は区域Z1〜Z3内への真空力の印加(すなわち真空状態)を含むことができる。一般に、加圧状態は、約0kPaから約10kPaの間とすることができ、真空状態は、約0kPaから約−90kPaの間とすることができる。
【0023】
外側屈曲区域Z1は、引っ込んだ支持部64を含む。以下でさらに詳細に説明するように、この引っ込んだ支持部64を、外側屈曲区域Z1内に及び/又はインプリント領域から少し離れた位置に配置することにより、インプリント中にもたらされるテンプレート18の凸形状を増幅させることができる。
【0024】
引っ込んだ支持部64のランド65の高さをランド67よりも低くする(すなわちhx−h1)ことにより、所与の偏向の場合にテンプレート18上に加わる応力を低減することもできる。例えば、最大応力が掛かる位置に近づけて支持を行うことにより、テンプレート18の最大応力を低減することができる。
【0025】
保持区域Z2は、保持支持部66のランド67及びチャンバ68b〜68dを含む。保持支持部66のランド67は、インプリント中にテンプレート18を平らにする役に立つことができる。インプリント中にテンプレート18を平らにすることにより、(図2で説明及び図示した)残留層48の厚みt2のばらつきを低減することができる。例えば、図1、図2、及び図4を参照して分かるように、保持区域Z3の長さを、モールド20のパターン面22を実質的に平面状態(すなわち傾斜していない)にするように構成することにより、インプリント中にモールド20のパターン面22と重合性材料34との接触を実質的に平面的にして、残留層48の厚みのばらつきが最小限に抑えられるようにすることができる。また、以下でさらに説明するように、インプリント中に保持区域Z3のチャンバ68b〜68d内の圧力を制御することにより、残留層48の厚みt2のばらつきの低減を支援することができる。テンプレート18を平らにすることにより、テンプレート18内の位置合わせマークを最小限のばらつきで最適に配置できるので、インプリント中のテンプレート18と基板12の位置合わせを支援することもできる。
【0026】
背圧区域Z3は、基板12上にインプリントされる特徴部と重なる領域を含む。圧力系70は、インプリント中に背圧区域Z3を加圧状態にして、テンプレート18の表面が基板12上に配置された材料と接触するようにすることができる。例えば、図1及び図2に関連して説明及び図示したように、このような圧力により、テンプレート18が重合性材料34に容易に接触できるようになる。
【0027】
テンプレートチャック60は、インプリント及び分離中にテンプレート18の形状を変化させることもできる。例えば、テンプレートチャック60は、テンプレート18と基板12の間に重合性材料34(図1)を充填している間はテンプレート18を第1の形状にして、テンプレート18と重合性材料34(図1)の接触中により速い充填が行えるように湾曲を与えることができ、及び/又はテンプレートチャック60は、分離中にはテンプレート18を第2の形状にして、テンプレート18と基板12を分離するのに必要な離脱力を減少させることができる。
【0028】
図5A〜図5Cに、インプリント処理中のテンプレートチャック60を示す。図5Aを参照して分かるように、インプリントの前には、圧力系70が、テンプレートチャック60の外側屈曲区域Z1を真空状態(例えば、−40kPa〜−80kPa)にして、テンプレート18が第1の形状72a(すなわち凸形状)になるようにする。また、圧力系70は、保持区域Z2及び背圧区域Z3を加圧状態にすることができる。例えば、保持区域Z2を低真空状態(例えば、0kPa〜−40kPa)又は加圧状態(例えば、0kPa〜10kPa)にして、背圧区域Z3を加圧状態(0kPa〜10kPa)にすることができる。インプリント処理中には、基板チャック14が、基板12を実質的に平坦な状態にすることができる。図1に関連して説明したように、テンプレート18と基板12を重ねて配置し、距離d2だけ隔てることができる。
【0029】
図5Bを参照して分かるように、テンプレート18と基板12の間の距離d3を減少させて、テンプレート18を、基板12及び/又は基板12上に堆積された重合性材料34と接触させることができる。テンプレート18が基板12及び/又は重合性材料34と接触している間は、テンプレートチャック60が、テンプレート18の少なくとも一部を、形状72a又は形状72aと実質的に同様の形にすることができる。同時に、引っ込んだ支持部64が、テンプレート18の外縁が基板12に接触するのを防ぐことができる。
【0030】
図1、図2、及び図5Cを参照して分かるように、テンプレート18が重合性材料34にパターンを転写したら、圧力系70が、保持区域Z2を真空状態にすることができる。真空状態は、約−40kPaから約−80kPaの間とすることができる。保持区域Z2を真空状態にすることにより、厚みt2のばらつきを、少なくともパターン層46の縁部において最小限に抑えることができる。引っ込んだ支持部64は、モールド20の縁部に近い側を強固に支持する。このような支持により、テンプレート18の外縁における偏向が低減され、結果として得られる残留層48の厚みt2のばらつきが最小限に抑えられ及び/又は排除される。
【0031】
図6に、テンプレート18を基板12から分離している最中のテンプレートチャック60を示す。一般に、引っ込んだ支持部64は、テンプレート18の外縁と基板12の間に距離を与えるのに役立つことができる。例えば、テンプレートチャック60は、テンプレート18を(凸形状などの)第2の形状72bにすることができる。形状72bにより、テンプレート18と基板12が(約40μm未満などの)距離d3だけ離れる。第2の形状72bは、図5Aに示す第1の形状72aと実質的に同様であってもよく、又は異なってもよい。分離処理中は、基板12を実質的に平坦にすることができる。例えば、基板チャック14を、分離中に基板12を実質的に平坦に保持するピン型チャックとすることができる。
【0032】
分離中、圧力系70は、保持区域Z2を保持状態又は実質的に中立状態(例えば非真空)にし、及び/又は保持区域Z2内の圧力を増加させることができる。これにより、テンプレート18のフリースパン長さw1を、フリースパン長さの増加分をw2とする(w1+w2)に増加させることができる。フリースパン長さw1は、テンプレートチャック60によって支持されていないテンプレート18の長さ(すなわち、チャック60上のテンプレート18を最後に制約する部分と基板上のパターン層46の縁部との間の距離)と定義することができる。一例では、背圧区域Z3の直径を約102mmとし、外側屈曲区域Z1の直径を約115mmとして、フリースパン長さの増加分w2が約6.5mmとなるようにすることができる。
【0033】
フリースパン長さの増加(w2)により、テンプレート18とパターン層46を分離するのに必要な離脱力の大きさを減少させることができる。また、テンプレート18を第2の形状72bにすることで、同じ力を加えた場合に応力中心距離がより大きくなることにより亀裂角度を大きくすることができ、この角度を大きくして、テンプレート18とパターン層46を分離するのに必要な離脱力の大きさをさらに減少させるようにする。
【0034】
図7〜図9には別の実施形態を示しており、ここでは、基板チャック160がテンプレートチャック60の引っ込んだ支持部64と同様の引っ込んだ支持部164を含むことができる。引っ込んだ支持部164は、基板12の外縁を支持するように位置することができる。
【0035】
引っ込んだ支持部164は、チャック160の外縁に位置する1又はそれ以上の引っ込んだランド165を含むことができる。例えば、図7には、チャック160の外縁に位置する単一のランド165を有する引っ込んだ支持部164を示している。ランド165は、寸法をランド65と実質的に同様とすることができ、また本発明によるインプリント及び/又は分離中にテンプレート18の外縁の偏向を最小限に抑え及び/又は排除するように構成することができる。基板チャック160は、テンプレートチャック60の代わりに使用してもよいし、又はこれに加えて使用してもよい。
【0036】
基板チャック160は、保持支持部166を含むこともできる。保持支持部は、ランド67と同様の1又はそれ以上のランド167を有することができる。例えば、図7の基板チャック160の保持支持部166は4つのランド167を含む。
【0037】
基板チャック160は、引っ込んだ支持部164と、保持支持部166と、テンプレート18の一部との間に形成された複数のチャンバ168を含むことができる。例えば、引っ込んだ支持部164のランド165と保持支持部166の外側ランド167との間には、テンプレート18の一部とともにチャンバ168aが形成される。保持支持部166のランド167とテンプレート18の一部との間には、チャンバ168b〜168eが形成される。
【0038】
テンプレートチャック60と同様に、チャンバ168a〜168eは、外側屈曲区域Z1、保持区域Z2、及び背圧区域Z3という3つの異なる区域をもたらすことができる。圧力系70は、各区域Z1〜Z3内の圧力を制御するように動作することができる。或いは、圧力系70とは別のシステムを使用して、各区域Z1〜Z3内の圧力を制御することもできる。
【0039】
図8A〜図8Cに、インプリント処理中の基板チャック160を示している。図8Aを参照すると、インプリントの前には、圧力系70が、テンプレートチャック60及び基板チャック160の外側屈曲区域Z1を真空状態にして、テンプレート18を(チャック60に対して凸形状などの)第1の形状72aにして、基板12を(チャック160に対して凸形状などの)第1の形状74aにすることができる。例えば、基板チャック160は、基板12を形状74aにして、テンプレート18の縁部と基板12の縁部が距離d5だけ間隔を空けるようにすることができる。距離d5は、約100μmから約750μmの間とすることができる。
【0040】
図8Bを参照して分かるように、テンプレート18と基板12の間の距離d6を減少させて、テンプレート18を、基板12及び/又は基板12上に堆積された重合性材料34と接触させることができる(例えば、距離d6を、約80μmから約150μmの間とすることができる)。テンプレート18が基板12及び/又は重合性材料34と接触している間は、テンプレートチャック60が、テンプレート18の少なくとも一部を、形状72a又は形状72aと実質的に同様の状態にすることができ、基板チャック160が、基板12の少なくとも一部を、形状74a又は形状74aと実質的に同様の状態にすることができる。同時に、引っ込んだ支持部64及び164が、テンプレート18の外縁が基板12の外縁に接触するのを防ぐことができる。
【0041】
図1、図2、及び図9Cを参照して分かるように、テンプレート18が重合性材料34にパターンを転写したら、圧力系70が、テンプレートチャック60及び基板チャック160の保持区域Z2を真空状態にすることができる。引っ込んだ支持部64及び164は、モールド20の縁部に近い側を強固に支持する。このような支持により、テンプレート18及び基板12の外縁における偏向が低減され、結果として得られる残留層48の厚みt2のばらつきが最小限に抑えられ及び/又は排除される。
【0042】
図9に、テンプレート18を基板12から分離している最中のテンプレートチャック60及び基板チャック160を示す。一般に、引っ込んだ支持部64及び164は、テンプレート18の外縁と基板12の間に距離を与えるのに役立つことができる。例えば、テンプレートチャック60は、テンプレート18を第2の形状72b(すなわち凸形状)にすることができ、基板チャック160は、基板12を第2の形状74b(すなわち凸形状)にすることができる。形状72b及び74bにより、テンプレート18と基板12が(約80μmから約200μmの間などの)距離d7だけ離れる。
【0043】
分離中、圧力系70は、テンプレートチャック60及び基板チャック160の保持区域Z2を保持状態又は実質的に中立状態(例えば非真空)にし、及び/又は保持区域Z2内の圧力を増加させることができる。これにより、テンプレート18のフリースパン長さw1を(w1+w2)に増加させることができる。フリースパン長さw1は、テンプレートチャック60によって支持されていないテンプレート18の長さ(すなわち、チャック60上のテンプレート18を最後に制約する部分と基板上のパターン層46の縁部との間の距離)と定義することができる。フリースパン長さの増加により、テンプレート18とパターン層46を分離するのに必要な離脱力の大きさを減少させることができる。また、テンプレート18を第2の形状72bにすることで亀裂角度を大きくし、テンプレート18とパターン層46を分離するのに必要な離脱力の大きさをさらに減少させることができる。
【符号の説明】
【0044】
12 基板
18 テンプレート
60 テンプレートチャック
64 引っ込んだ支持部
66 保持支持部
67 ランド
68a〜68e チャンバ
70 圧力系
1 外側屈曲区域
2 保持区域
3 背圧区域
x ランド67の長さ
1 引っ込んだ支持部分64のランドの高さ
160 基板チャック
164 引っ込んだ支持部
165 ランド
166保持支持部
167 ランド
168a〜168d チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高さの複数のランドを有する保持支持部と、
前記保持支持部を取り巻く、前記第1の高さよりも実質的に低い第2の高さの少なくとも1つの引っ込んだランドを有する引っ込んだ支持部と、
を備えることを特徴とするチャッキングシステム。
【請求項2】
前記引っ込んだ支持部の前記引っ込んだランドが、前記チャッキングシステムの外縁上に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のチャッキングシステム。
【請求項3】
前記引っ込んだ支持部の引っ込んだランドと、保持支持部のランドと、前記チャックシステム上に位置するテンプレートの一部との間に形成された複数のチャンバをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチャッキングシステム。
【請求項4】
前記複数のチャンバが、外側屈曲区域、保持区域、及び背圧区域という3つの区域をもたらすように構成される、
ことを特徴とする請求項3に記載のチャッキングシステム。
【請求項5】
個々のチャンバと流体連通する圧力系をさらに備える、
ことを特徴とする請求項4に記載のチャッキングシステム。
【請求項6】
前記引っ込んだランドの高さが、該引っ込んだランド上に位置するテンプレートを、該テンプレートと重なって位置する基板から物理的に離間させるように構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のチャッキングシステム。
【請求項7】
保持支持部のランドの高さと比較した引っ込んだランドの高さが、該引っ込んだランド上に位置するテンプレートの応力を低減するように構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のチャッキングシステム。
【請求項8】
保持支持部のランドの寸法が、該保持支持部のランド上に位置するテンプレートを実質的に平坦化するように構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のチャッキングシステム。
【請求項9】
引っ込んだランドの高さが、該引っ込んだランド上に配置されたテンプレートの外縁を前記チャッキングシステムへ向けて湾曲させるように構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のチャッキングシステム。
【請求項10】
前記引っ込んだ支持部及び前記保持部上に位置するテンプレートをさらに備え、前記引っ込んだ支持部の前記引っ込んだランドが、前記テンプレートの形状を変化させて、前記テンプレートの外縁の下方偏向を実質的に防ぐように構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のチャッキングシステム。
【請求項11】
前記テンプレートの前記変化した形状が、前記テンプレートの外縁を上向きに偏向させる、
ことを特徴とする請求項10に記載のチャッキングシステム。
【請求項12】
少なくとも1つのランドが他の全てのランドよりも低い高さの引っ込んだランドである複数のランドを含む基板チャックに結合された、前記テンプレートと重なって位置する基板をさらに備える、
ことを特徴とする請求項10に記載のチャッキングシステム。
【請求項13】
前記引っ込んだランドが、前記基板チャックの外側境界上に位置する、
ことを特徴とする請求項12に記載のチャッキングシステム。
【請求項14】
前記引っ込んだランドが、前記基板の前記形状を、前記基板の外縁が前記基板チャックへ向かって湾曲するように変化させる、
ことを特徴とする請求項13に記載のチャッキングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−532448(P2012−532448A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517505(P2012−517505)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/001889
【国際公開番号】WO2011/002518
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(503193362)モレキュラー・インプリンツ・インコーポレーテッド (94)
【Fターム(参考)】