説明

引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法

【課題】成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)とその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%でC:0.05〜0.4%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.04%以下、S:0.05%以下、N:0.01%以下、Al:0.01〜2.0%、Si+Al>0.5%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼片を、1200℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下で巻き取り、酸洗、圧下率40〜70%の冷延後、730〜900℃にて焼鈍し,650〜750℃まで0.1〜20℃/秒で一次冷却し、さらに、この温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却して、350〜450℃で120秒以上保持し、冷却、酸洗後、鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去し、Niを0.2〜2g/m2プレめっきし、10℃/秒以上で、(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に加熱し、その後、亜鉛めっき浴中で亜鉛めっきを施し、又は、亜鉛めっき後に470〜600℃で合金化処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度980MPa以上の成形性(延性と穴拡げ性)に優れた溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)に関するものであり、TRIP(Transformation Induced Plasticity:変態誘起塑性)現象を利用した溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体、部品等の軽量化と安全性とを両立させるために、素材である鋼板の高強度化が進められている。一般に、鋼板を高強度化すると、成形性(延性と穴拡げ性)が損なわれる。したがって、自動車用の部材として高強度鋼板を使用するためには、強度と成形性のバランスが必要である。
【0003】
このような要求に対して、これまでに、残留オーステナイトの変態誘起塑性を利用した、いわゆる、TRIP鋼板が提案されている(例えば、特許文献1及び2、参照)。しかし、自動車用高強度鋼板は、適用する部品によっては耐食性が必要とされ、そのような場合には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が適用されている。
【0004】
TRIP鋼においては,延性向上のためにSiが添加されるので、Siが鋼板表面に濃縮して酸化し、溶融亜鉛めっき時に不めっきが発生し易いという問題があった。
【0005】
特許文献3及び4において、Si添加の高強度鋼板につき、Niプレめっきを行い,表層に加工を加えて活性化することで、めっきの濡れ性改善と合金化温度の低減を達成する合金化溶融亜鉛めっき高強度鋼板の製造方法が開示されている。
【0006】
この方法では,原板として、既に材質を造り込んでいる冷延−焼鈍プロセスで製造した冷延鋼板を使用し、一旦、室温以下まで冷却した鋼板を、再加熱して製造する工程をとることが可能であるが、引張強度980MPa以上の高強度と高延性を両立させるものではない。
【0007】
特許文献5には、このNiプレめっきの技術を活用して、高伸び型合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作製する技術が提案されている。これは,鋼成分、焼鈍条件、合金化溶融亜鉛めっき条件などを制御して、通常の冷延−焼鈍プロセスで製造した高伸び型合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供しようとするものである。
【0008】
しかし、組織中に硬質なマルテンサイトと軟質なフェライトを主相としているため、穴拡げ性が高くないと考えられ、さらに、引張強度980MPa以上の高強度を実現できない。以上の技術を用いて、Niプレめっき法による成形性(延性と穴拡げ性)の高い高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−217529号公報
【特許文献2】特開平05−59429号公報
【特許文献3】特許第2526320号公報
【特許文献4】特許第2526322号公報
【特許文献5】特開2006−283071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は,上述したような問題点を解決しようとするものであって,焼鈍済みの冷延鋼板を原板としてNiプレめっき法による合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに当たり、延性及び穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、C、Si、Mnの量を変えた種々の鋼について,実験室で溶解、熱延、冷延、焼鈍、合金化溶融亜鉛めっきを行い,所要の強度、延性、穴拡げ性、めっき性を得るための方法を種々検討した。
【0012】
その結果、成分組成を特定したうえで、冷延−焼鈍後に表面層を0.1μm以上研削した後にNiプレめっきすること、及び溶融亜鉛めっき又は合金化加熱処理温度を560℃以下に低温化することにより、延性やめっき性を劣化させることなく穴拡げ性を向上させることができ,延性及び穴拡げ性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)を製造できることを見出した。
【0013】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は、以下のとおりである。
【0014】
(1)質量%で、
C :0.05〜0.4%、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
P :0.04%以下、
S :0.05%以下、
N :0.01%以下、
Al:0.01〜2.0%、
Si+Al>0.5%
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、体積分率で、主相として、下記の3種のマルテンサイト(1)〜(3)の1種又は2種以上(好ましくは2種以上)とベイナイトを合せて40%以上含有し、オーステナイトを8%以上含有し、残部組織がフェライトからなり、パーライトを10%以下含有してもよい鋼板の表面に、Feを7質量%未満含有し、残部がZn、Al、及び、不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有する
ことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
マルテンサイト(1):C量(CM1)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%未満で、硬さHv1が下記(1)式を満たす。
Hv1/(−982.1×CM12+1676×CM1+189)≦0.50・・・(1)
マルテンサイト(2):C量(CM2)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv2が下記(2)式を満たす。
Hv2/(−982.1×CM22+1676×CM2+189)≦0.50・・・(2)
マルテンサイト(3):C量(CM3)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv3が下記(3)式を満たす。
Hv3/(−982.1×CM32+1676×CM3+189)≦0.80・・・(3)
【0015】
(2)質量%で、
C :0.05〜0.4%、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
P :0.04%以下、
S :0.05%以下、
N :0.01%以下、
Al:0.01〜2.0%、
Si+Al>0.5%
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、体積分率で、主相として、下記の3種のマルテンサイト(1)〜(3)の1種又は2種以上(好ましくは2種以上)とベイナイトを合せて40%以上含有し、オーステナイトを8%以上含有し、残部組織がフェライトからなり、パーライトを10%以下含有してもよい鋼板の表面に、Feを7〜15質量%を含有し、残部がZn、Al、及び、不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を有する
ことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
マルテンサイト(1):C量(CM1)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%未満で、硬さHv1が下記(1)式を満たす。
Hv1/(−982.1×CM12+1676×CM1+189)≦0.50・・・(1)
マルテンサイト(2):C量(CM2)(セメンタイト析出が合った場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv2が下記(2)式を満たす。
Hv2/(−982.1×CM22+1676×CM2+189)≦0.50・・・(2)
マルテンサイト(3):C量(CM3)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv3が下記(3)式を満たす。
Hv3/(−982.1×CM32+1676×CM3+189)≦0.80・・・(3)
【0016】
(3)さらに、鋼中に、質量%で
Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%
の1種又は2種以上を含有する
ことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【0017】
(4)さらに、鋼中に、質量%で、
Nb:0.005〜0.3%、
Ti:0.005〜0.3%、
V:0.01〜0.5%
の1種又は2種以上を含有する
ことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【0018】
(5)さらに、鋼中に、質量%で、
B:0.0001〜0.1%を含有する
ことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【0019】
(6)さらに、鋼中に、質量%で、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0005〜0.01%
の1種又は2種以上を含有する
ことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【0020】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の成分組成の鋼板を、流速10〜50m/minで流動する溶融亜鉛めっき浴に浸漬して、溶融亜鉛めっきを施したことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【0021】
(8)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法において、鋳造スラブを、直接又は一旦冷却した後、1200℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下で巻き取り、酸洗、圧下率40〜70%の冷延後、730〜900℃にて焼鈍し、650〜750℃の温度まで0.1〜50℃/秒で一次冷却し、さらに、この温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却して、350〜450℃で120秒以上保持し、冷却、酸洗の後、鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去し、Niを0.2〜2g/m2プレめっきし、10℃/秒以上で、(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に加熱し、その後、前記(7)に記載の条件で亜鉛めっきを施す
ことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0022】
(9)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法において、鋳造スラブを、直接又は一旦冷却した後、1200℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下で巻き取り、酸洗、圧下率40〜70%の冷延後、730〜900℃にて焼鈍し、650〜750℃の温度まで0.1〜50℃/秒で一次冷却し、さらに、この温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却して、350〜450℃で120秒以上保持し、冷却、酸洗の後、鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去し、Niを0.2〜2g/m2プレめっきし、10℃/秒以上で、(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に加熱し、その後、前記(7)に記載の条件で亜鉛めっきを施し、470〜600℃で10〜40秒の合金化処理を行う
ことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、成形性(延性及び穴拡げ性)に優れた溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明の成形性(延性及び穴拡げ性)に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の成分組成を限定する理由について説明する。なお、以下、成分組成に係る質量%は単に%と記す。
【0025】
C:Cは、鋼の強度を増加させ、延性を向上させる残留オーステナイトを安定化する元素である。0.05%未満では、980MPa以上の引張強度の確保が困難であり、0.40%を超えると、延性、溶接性、靭性などが劣化する。したがって、Cは0.05〜0.4%とした。好ましい範囲は、0.13〜0.3%である。
【0026】
Si:Siは、固溶強化で鋼板の強度を増大させる元素である。また、Siは、セメンタイトの生成を抑制するので,ベイナイト変態時に、オーステナイト中へのCの濃化を促進する効果をもち、焼鈍後に、残留オーステナイトを生成させるのに必須の元素である。
【0027】
0.5%未満では、添加効果が発現せず、3.0%を超えると、熱間圧延で生じるスケールの剥離性や化成処理性が劣化するので、Siは0.5〜3.0%とした。
【0028】
Mn:Mnは、焼入れ性を高めるのに有効な元素である。0.1%未満では、焼入れ性を高める効果が十分に発現せず、3.0%を超えると、靭性が劣化する。したがって、Mnは0.1〜3.0%とした。
【0029】
P:Pは、粒界に偏析して粒界強度を低下させ、靱性を劣化させる不純物元素であり、低減することが望ましい。Pの上限は、現状の精錬技術と製造コストを考慮し、0.04%にした。
【0030】
S:Sは、熱間加工性及び靭性を劣化させる不純物元素であり、低減することが望ましい元素である。したがって、Sの上限を0.05%にした。
【0031】
N:Nは、粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させるので、含有量を抑える必要がある。Nが0.01%を超えると、上記傾向が顕著となるので、Nは0.01%以下とした。加えて、Nは、溶接時のブローホール発生の原因になるので、少ない方がよい。
【0032】
Al:Alは、脱酸剤として働く元素である。また、Siと同様に、フェライトを安定化する元素であり、Siの代替として使用することもできる。0.01%未満では、添加効果が発現せず、2.0%を超えると、靭性が劣化するので、Alは0.01〜2.0%とした。
【0033】
Al+Si:AlとSiは、いずれも、フェライトを安定化し、セメンタイトの生成を抑制する元素である。したがって、AlとSiの合計量が重要となる。合計量が、0.5%以下であると、フェライトを安定化し、セメンタイトの生成を抑制する働きが弱くなるので、0.5%より多く添加することとした。
【0034】
さらに、Cr、Mo、Ni、Cuの1種又は2種以上を添加してもよい。これらの元素は、延性及び靭性を向上させる元素である。しかし、Cr、Mo、Ni、Cuが、1.0%を超えると、強度の上昇によって、靭性が損なわれるので、これらの元素の上限は1.0%とした。延性及び靭性を向上させるには、Crは0.05%以上、Moは0.05%以上、Niは0.05%以上、Cuは0.05%以上が必要であり、これら元素の下限を0.05%とした。
【0035】
さらに、Ti、Nb、Vの1種又は2種以上を添加してもよい。これらの元素は、微細な炭窒化物を形成する元素であり、結晶粒の粗大化を抑制し、強度を確保するとともに、靭性を高めるのに有効である。そのために、Ti、Nbは、0.005%以上の添加、Vは0.01%以上の添加が必要である。しかし、これらの元素を過剰に添加すると析出物が粗大になり、靭性が劣化するので、Nb、Tiは0.3%以下が好ましく、Vは0.5以下が好ましい。
【0036】
B:Bは、粒界に偏析し、P及びSの粒界偏析を抑制する元素である。また、焼入れ性を高めるのに有効な元素でもある。しかし、Bが0.1%を超えると、粒界に粗大な析出物が生じて、熱間加工性や靭性が損なわれことがあるので、Bは0.1%以下とする。粒界の強化により、延性、靭性、及び、熱間加工性を向上させ,焼入れ性を向上させるためには、0.0001%以上のBの添加が好ましい。
【0037】
さらに、Ca、Mg、REMの1種又は2種以上を添加してもよい。これらの元素は、硫化物の形態を制御し、Sによる熱間加工性や靭性の劣化の抑制に有効な元素である。しかし、過剰に添加しても効果が飽和するので、Caは0.01%以下、Mgは0.01%以下、REMは0.01%以下が好ましい。靭性を向上させるには、Caは0.0005%以上、Mgは0.0005%以上、REMは0.0005%以上が好ましい。
【0038】
次に、製造条件を限定する理由について述べる。
【0039】
本発明においては、上記の成分組成からなる鋼を、常法で溶製し、鋳造する。得られた鋳造スラブ片を熱間圧延する。さらに、酸洗、冷間圧延、及び、焼鈍を施した後、Niプレめっきを行い、その後、亜鉛めっき及び合金化加熱処理を行う。
【0040】
鋳造スラブを、直接又は一旦冷却した後、1200℃以上に加熱して、熱間圧延に供し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了する。
【0041】
熱間圧延における巻取り温度が700℃を超えると,熱延板組織が粗大なフェライト・パーライト組織となり、冷間圧延、焼鈍、亜鉛めっき及び合金加熱処理後の最終的な鋼板の組織が不均一となり,良好な穴拡げ性が得られないので、巻取り温度の上限は700℃にした。好ましくは、500℃以下とし、ベイナイト単相とするとよい。
【0042】
巻取り温度の下限は特に規定するものではないが、300℃未満であると、熱延板の強度が高くなり、冷間圧延に支障をきたす場合があるので、300℃以上が望ましい。
【0043】
冷間圧延は、焼鈍後のミクロ組織を微細化するため、圧下率を40%以上とする。圧下率が70%を超えると、加工硬化によって圧延負荷が高くなり、生産性を損なうので、冷間圧延の圧下率は40〜70%とする。
【0044】
冷間圧延後、焼鈍を施す。本発明では、鋼板のミクロ組織を制御するために、焼鈍の加熱温度及び冷却条件が極めて重要である。
【0045】
冷間圧延後の焼鈍温度は、Cが十分に濃化したオーステナイトを確保するために、730〜900℃とした。730℃未満であると、AC1変態点に近いため、必要なオーステナイト量が得られない。900℃を超えると、再結晶が進み、粒径が大きくなって、靭性と延性が低下する。したがって、焼鈍温度は730〜900℃とする。
【0046】
焼鈍後は、600〜750℃まで0.1〜50℃/秒で一次冷却し、さらに、この温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却し、350〜450℃で120秒以上保持する必要がある。これらの条件のいずれかを逸脱すると、ベイナイト変態が十分に進まず、オーステナイト中へのCの濃化が不十分となり、冷却後に、十分な量の残留オーステナイトを得ることができない。
【0047】
なお、亜鉛めっき及び合金化処理後に変態をさせるためには、焼鈍後に、十分な量の残留オーステナイトを確保し、合金化処理の冷却過程で、残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させる必要がある。
【0048】
また、焼鈍時に生成したスケールを除去するために、焼鈍後に酸洗を行ってもよい。また、焼鈍後に、形状矯正及び降伏点伸びの消失のために調質圧延を行ってもよい。伸び率が0.2%未満では、調質圧延効果が十分でなく、伸び率が2%を超えると、降伏比が大幅に増大するとともに伸びが劣化するので、伸び率は0.2〜2%が望ましい。
【0049】
焼鈍後、鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去し、その後、Niをプレめっきを施す必要がある。鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去した後にNiをプレめっきすることにより、亜鉛めっき後の合金化処理時に、合金化が促進され、合金化処理時の加熱温度を下げることができる。
【0050】
これにより、合金化処理時に、残留オーステナイトが分解してセメンタイトが生成し、穴拡げ性が劣化するのを防ぐことができる。合金化が促進されるメカニズムについては明確でないが、研削により鋼板表層部に導入された歪の影響により、表面が活性化すると考えられる。
【0051】
鋼板の表面層を研削除去する方法は、ブラシ研磨、サンドペーパー研磨、機械研磨などの方法を用いればよい。Niプレめっきの方法は、電気めっき、浸漬めっき、スプレーめっきのいずれでもよく、めっき量は0.2〜2g/m2程度が望ましい。
【0052】
鋼板の表面層を研削除去する量が0.1μm未満の場合や、Niプレめっきを行わない場合、又は、プレめっき量が0.2g/m2未満又は2g/m2超の場合には,合金化促進効果が得られず、合金化温度を高くせざるを得ないため、後述するように、穴拡げ性の劣化を防ぐことができない。より合金化促進効果を得るためには、鋼板の表面層を研削除去する量を0.5μm以上とすることが望ましい。
【0053】
Niをプレめっきした後、10〜50m/minで流動する溶融亜鉛めっき浴にむかって、10℃/秒以上の加熱速度で、(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に加熱し、その後、上記溶融亜鉛めっき浴中で亜鉛めっきを行う。なお、めっき浴は、純亜鉛に加え、Fe、Al、Mg、Mn、Si、Crなどを含有しても構わない。
【0054】
本発明者らは、溶融亜鉛めっき浴内において、鋼板に対し、10〜50m/minの噴流を与えると、不めっきの防止と、合金化促進を図れることを見出した。スカムは、ZnやAlの酸化膜であり、めっき浴表面に浮遊している。鋼板表面に、多量の外部酸化膜が存在している場合、鋼板の浴への浸漬時に、スカムが付着し易く、不めっきが発生し易い。加えて、鋼板に付着したスカムは、不めっきのみならず、合金化を遅延させる。
【0055】
この挙動は、SiやMnを多く含む鋼板で特に顕著となる。詳細なメカニズムは不明であるが、鋼板表面に生成するSiやMnの酸化物と、同じく酸化物であるスカムが反応することで、不めっきや合金化遅延が助長されると考えられる。
【0056】
噴流の流速を10〜50m/minとしたのは、10m/min未満では、噴流による不めっき抑制効果が得られず、50m/min超では、不めっき抑制の効果が飽和するばかりでなく、過大な設備投資を招くからである。
【0057】
溶融亜鉛めっき浴前までの加熱速度が10℃/sec未満では,鋼板の表面層を研削除去して導入した歪が緩和されて、合金化促進効果が得られなくなる。加熱温度が(亜鉛めっき浴温度−40)℃未満では、めっき時に不めっきを生じ易く、(亜鉛めっき浴温度+50)℃を超えると、鋼板の表面層を研削除去して導入した歪が緩和されて、合金化促進効果が得られない。
【0058】
この後、470〜600℃で10〜40秒の合金化処理を行ってもよい。合金化熱処理が470℃未満では、合金化が不十分であり、600℃を超えると、残留オーステナイトが分解してセメンタイトが生成して、穴拡げ性が劣化する。
【0059】
合金化時間は,合金化温度とのバランスで決まるが、10〜40秒が適当である。10秒未満では、合金化が進み難く、40秒を超えると、残留オーステナイトが分解してセメンタイトが生じて、穴拡げ性が劣化する。
【0060】
亜鉛めっき及び合金化処理の後は,最終的な形状矯正及び降伏点伸びの消失のために調質圧延を行うことが望ましい。伸び率が0.2%未満では、上記効果が十分でなく、伸び率が1%を超えると、降伏比が大幅に増大するとともに伸びが劣化する。したがって、伸び率は0.2〜1%が望ましい。
【0061】
次に、めっき層について説明する。
【0062】
スポット溶接性や塗装性が望まれる場合には、合金化処理によって、これらの特性を高めることができる。具体的には、鋼板を溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後、合金化処理を施すことで、めっき層中にFeが取り込まれ、塗装性やスポット溶接性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
【0063】
合金化処理後のFeが7質量%未満では、スポット溶接性が不十分となる。Feが15質量%を超えると、めっき層自体の密着性が損なわれ、加工の際、めっき層が破壊・脱落して金型に付着し、成形時の疵の原因となる。したがって、合金化処理を行う場合のめっき層中のFeは7〜15質量%とする。
【0064】
合金化処理を行わない場合、めっき層中のFe量が7質量%以下未満でも、合金化により得られるスポット溶接を除く耐食性、成形性、及び、穴拡げ性は良好である。
【0065】
めっき付着量は、特に制約はないが、耐食性の観点から、片面付着量で5g/m2以上が望ましい。本発明の溶融Znめっき鋼板上に、塗装性、溶接性を改善する目的で、上層めっきを施すことや、各種の処理、例えば、クロメート処理、りん酸塩処理、潤滑性向上処理、溶接性向上処理等を施すことは、本発明を逸脱しない。
【0066】
次に、本発明の鋼板のミクロ組織について説明する。本発明の鋼板のミクロ組織は、ベイナイト、以下に定める3種のマルテンサイト、残留オーステナイト、フェライト、及び、パーライトからなる。
【0067】
3種のマルテンサイトは、硬度とC量で分類される。硬度については、マルテンサイト粒内で、3点以上のビッカース硬度を測り、その平均ビッカース硬度Hvn(n=1〜3)を算出する。C量について、マルテンサイト粒のC量は、正確に分解量が得られる条件で、精度が保証される測定方法であれば、どのような測定方法で測定しても構わない。例えば、FE−SEM付属のEPMAを用いて、0.5μm以下ピッチで、C量を注意深く測定することで、C量を精度よく得ることができる。硬度及びC量の値を用いて、マルテンサイトを、以下のように分類する。
【0068】
マルテンサイト(1):C量(CM1)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%以下で、硬さHv1が下記(1)式を満たす。
Hv1/(−982.1×CM12+1676×CM1+189)≦0.50・・・(1)
マルテンサイト(2):C量(CM2)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv2が下記(2)式を満たす。
Hv2/(−982.1×CM22+1676×CM2+189)≦0.50・・・(2)
マルテンサイト(3):C量(CM3)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv3が下記(3)式を満たす。
Hv3/(−982.1×CM32+1676×CM3+189)≦0.80・・・(3)
【0069】
3種のマルテンサイトを区別するために、マルテンサイト中のC量とビッカース硬さの関係式を用いている。(1)式、(2)式、及び、(3)式の左辺の分母は、フレッシュマルテンサイトの硬さを表している。
【0070】
本発明の鋼板に含まれているマルテンサイトの硬さは、粒内におけるセメンタイトの析出や、焼戻しによって、フレッシュマルテンサイトの硬さより低くなっている。そこで、フレッシュマルテンサイトである場合の硬度(各式の分母)と、鋼板中のマルテンサイトの硬度との比を分類指標として採用して、マルテンサイトを3種に分類した。
【0071】
3種のマルテンサイトとベイナイトは、強度を確保するために有効である。本発明者らは、引張強度が980MPa以上の高強度鋼板において、これらの組織を主相とし、体積分率で、その和を40%以上とすると、強度を確保し、かつ、高い穴拡げ性が得られることを見出した。上記和が40%を下回ると、引張強度が980MPaを下回ってしまうので、体積分率の下限を40%とした。
【0072】
3種のマルテンサイトにおいて、マルテンサイト(1)は、C量が低く、それほど硬質でないマルテンサイト、又は、焼戻しマルテンサイトである。
【0073】
この組織は、さきに定めた製造方法において、(i)焼鈍後の350〜450℃での保持にてベイナイト変態が十分進まなかった残留オーステナイトが、冷却時にマルテンサイトとなり、溶融亜鉛めっき浴への浸漬中、又は、合金化中に焼戻されたマルテンサイト、又は、(ii)焼鈍後の350〜450℃での保持にてベイナイト変態が十分進み、0.8質量%以上のCが農家した残留オーステナイトが、冷却時にマルテンサイトとなり、溶融亜鉛めっき浴への浸漬中又は合金化中に、焼戻しの過程でCが吐き出され、最終的に0.8質量%未満となったマルテンサイトである。この組織は、強度確保に有効であるが、体積分率が60%を超えると、延性が劣化するので、上限を60%とする。
【0074】
マルテンサイト(2)は、C量が高いが、焼戻しによって軟化したマルテンサイトである。この組織は、さきに定めた製造方法において、(i)溶融亜鉛めっき浴への浸漬中、又は、合金化中に残留オーステナイト中にセメンタイトが析出し、セメンタイトを除いた残留オーステナイト中のC量が低下して、最終冷却にてマルテンサイトになったマルテンサイト、又は、(ii)焼鈍後の350〜450℃での保持にてベイナイト変態が進み、Cが濃化した残留オーステナイトが、冷却時にマルテンサイトとなり、溶融亜鉛めっき浴への浸漬中、又は、合金化中に焼戻しのみが起こったマルテンサイトである。
【0075】
この組織は、マルテンサイト(1)と同様に、強度確保に有効であるが、体積分率が40%を超えると、延性が劣化するので、上限を40%とする。
【0076】
マルテンサイト(3)は、C量が高く、焼戻しがないマルテンサイト、又は、焼戻し量が少ないマルテンサイトである。この組織は、さきに定めた製造方法において、合金化溶融亜鉛めっきの場合は、合金化処理後の最終冷却時に変態したマルテンサイト、又は、溶融亜鉛めっきであれば、350〜450℃で120秒以上保持した後の冷却時に変態したマルテンサイトが、溶融亜鉛めっき浴で若干焼戻されたマルテンサイトである。
【0077】
この組織は、かなり硬く、穴拡げ性を劣化させる。強度確保のためには、体積分率が高い方が有利であるが、穴拡げ性の確保のために、上限を10%とする。
【0078】
残留オーステナイトは、変態誘起塑性によって延性、特に、一様伸びを高める組織であり、8%以上が必要である。また、残留オーステナイトは、加工によって、マルテンサイトに変態して、強度の向上に寄与する。
【0079】
フェライトは、残留オーステナイトを安定化させるために、二相焼鈍、又は、焼鈍後の冷却で析出させてもよい。しかし、フェライトの体積分率が高くなると、強度が低下する。析出強化や固溶強化によって、強度の低下を回避することが可能であるので、フェライト体積分率の上限は設けないが、20%以下が好ましい。
【0080】
パーライトは、体積分率が10%を超えると、靭性や延性が低下するので、上限を10%とした。
【実施例】
【0081】
以下,実施例により本発明の効果をさらに具体的に説明する。
【0082】
(実施例)
表1に示す成分組成の鋼を鋳造し、表2に示す条件で、熱間圧延(鋳造スラブを1200℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了)、巻き取り、冷間圧延、焼鈍を行ない、表2に示す条件で、鋼板表面層の研削、Niプレめっき、及び、亜鉛めっき及び合金化加熱処理を行い、その後、調質圧延を0.2%の伸び率で行った。板厚は1.4mmとした。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
得られた溶融亜鉛めっき鋼板の機械的特性、穴拡げ性(λ),めっき外観,合金化度、めっき密着性を評価した。機械的特性は引張試験を、JIS Z 2241に準拠して行って評価した。引張試験の応力−歪曲線より,引張強度(TS)、全伸び(EL)を求めた。加工性の指標であるTSxELとTSxλを求めた。
【0086】
穴拡げ性は、穴拡げ試験を日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001に準拠して行い、穴拡げ率を測定して評価した。TSxELは17000MPa・%以上、TSxλは40000MPa・%以上を成形性が良いと判断する。めっき外観は、目視観察により、不めっきの有無を判定し、○が不めっきなし、×が不めっきありとした。
【0087】
合金化Fe%は、めっき層中のFeの質量%を示している。合金化処理を行った合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、7〜15%で合金化がうまく進んだことを示している。合金化処理を行わない溶融亜鉛めっき鋼板では、7%以下でよい。評価結果を表3に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
組織分率は、フェライト、ベイナイトの分率はナイタ−ル試薬により、マルテンサイトの分率はレペラー試薬により定量化した。残留オ−ステナイト率の測定方法は、供試材板の表層より1/4厚まで化学研磨した面で行い、単色化したMoKα線による、フェライトの(200)及び(211)面積分強度と、オ−ステナイトの(200)、(220)、及び、(311)面積分強度から、残留オ−ステナイトを定量した。
【0090】
マルテンサイトのC量は、FE−SEM付属のEPMAを用いて,0.5μm以下ピッチでC量を注意深く測定して分類した。なお、正確に分解量が得られる条件で,精度が保証される測定方法であればどのような測定方法でも構わない。測定結果を表4に示す。
【0091】
【表4】

【0092】
表2〜4において、実験No.a〜oは発明例であり、いずれの特性も合格となり、目標とする特性の鋼板が得られている。一方,成分組成又は製造方法が本発明の範囲外である実験No.p〜z及びaa〜ajは、いずれかの特性が不合格となっている。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば,成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)を得ることができる。よって、本発明は産業上の利用可能性が高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C :0.05〜0.4%、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
P :0.04%以下、
S :0.05%以下、
N :0.01%以下、
Al:0.01〜2.0%、
Si+Al>0.5%
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、体積分率で、主相として、下記の3種のマルテンサイト(1)〜(3)の1種又は2種以上(好ましくは2種以上)とベイナイトを合せて40%以上含有し、オーステナイトを8%以上含有し、残部組織がフェライトからなり、パーライトを10%以下含有してもよい鋼板の表面に、Feを7質量%未満含有し、残部がZn、Al、及び、不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有する
ことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
マルテンサイト(1):C量(CM1)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%未満で、硬さHv1が下記(1)式を満たす。
Hv1/(−982.1×CM12+1676×CM1+189)≦0.50・・・(1)
マルテンサイト(2):C量(CM2)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv2が下記(2)式を満たす。
Hv2/(−982.1×CM22+1676×CM2+189)≦0.50・・・(2)
マルテンサイト(3):C量(CM3)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv3が下記(3)式を満たす。
Hv3/(−982.1×CM32+1676×CM3+189)≦0.80・・・(3)
【請求項2】
質量%で、
C :0.05〜0.4%、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
P :0.04%以下、
S :0.05%以下、
N :0.01%以下、
Al:0.01〜2.0%、
Si+Al>0.5%
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、体積分率で、主相として、下記の3種のマルテンサイト(1)〜(3)の1種又は2種以上(好ましくは2種以上)とベイナイトを合せて40%以上含有し、オーステナイトを8%以上含有し、残部組織がフェライトからなり、パーライトを10%以下含有してもよい鋼板の表面に、Feを7〜15質量%を含有し、残部がZn、Al、及び、不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を有する
ことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
マルテンサイト(1):C量(CM1)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%未満で、硬さHv1が下記(1)式を満たす。
Hv1/(−982.1×CM12+1676×CM1+189)≦0.50・・・(1)
マルテンサイト(2):C量(CM2)(セメンタイト析出が合った場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv2が下記(2)式を満たす。
Hv2/(−982.1×CM22+1676×CM2+189)≦0.50・・・(2)
マルテンサイト(3):C量(CM3)(セメンタイト析出があった場合は、これも含む)が0.8質量%以上で、硬さHv3が下記(3)式を満たす。
Hv3/(−982.1×CM32+1676×CM3+189)≦0.80・・・(3)
【請求項3】
さらに、鋼中に、質量%で
Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%
の1種又は2種以上を含有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
さらに、鋼中に、質量%で、
Nb:0.005〜0.3%、
Ti:0.005〜0.3%、
V:0.01〜0.5%
の1種又は2種以上を含有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
さらに、鋼中に、質量%で、
B:0.0001〜0.1%を含有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
さらに、鋼中に、質量%で、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0005〜0.01%
の1種又は2種以上を含有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の成分組成の鋼板を、流速10〜50m/minで流動する溶融亜鉛めっき浴に浸漬して、溶融亜鉛めっきを施したことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法において、鋳造スラブを、直接又は一旦冷却した後、1200℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下で巻き取り、酸洗、圧下率40〜70%の冷延後、730〜900℃にて焼鈍し、650〜750℃まで0.1〜50℃/秒で一次冷却し、さらに、この温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却して、350〜450℃で120秒以上保持し、冷却、酸洗の後、鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去し、Niを0.2〜2g/m2プレめっきし、10℃/秒以上で、(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に加熱し、その後、請求項7に記載の条件で亜鉛めっきを施す
ことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法において、鋳造スラブを、直接又は一旦冷却した後、1200℃以上に加熱し、Ar3変態点以上で熱間圧延を完了し、700℃以下で巻き取り、酸洗、圧下率40〜70%の冷延後、730〜900℃にて焼鈍し、650〜750℃まで0.1〜50℃/秒で一次冷却し、さらに、この温度から450℃以下まで20℃/秒以上で冷却して、350〜450℃で120秒以上保持し、冷却、酸洗の後、鋼板の表面層を0.1μm以上研削除去し、Niを0.2〜2g/m2プレめっきし、10℃/秒以上で、(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃に加熱し、その後、請求項7に記載の条件で亜鉛めっきを施し、470〜600℃で10〜40秒の合金化処理を行う
ことを特徴とする引張強度980MPa以上の成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2013−76148(P2013−76148A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217995(P2011−217995)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】