説明

引戸ガイド装置

【課題】引戸と床面との間の隙間の大きさに違いがあっても、その隙間の調整や磁石の取り替えなどの必要がない安価な引戸ガイド装置を提供する。
【解決手段】引戸ガイド装置Rは、扉側ガイドG2において、磁着手段29・30の吸着台45を、先端の当接部45bが収納ケース35の昇降口32から所定高さ突出する傾斜角度位置に傾けて保持し、先端の当接部45b上に載った磁石Mが床面f近くの高さまで下がって待機し、引戸10が床面との間に大きく隙間dを開けて吊り込まれていても、磁力により磁性体からなる第3凸状部材25を吸引して入れ子式に床側ガイドG1のガイド突起15を立ち上げ、第3凸状部材25の係合板部25aをガイドレール40の係合リブ40bに係合させて引戸10を案内する構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上吊りした引戸を開閉時に開閉方向に対して横振れしないで直進するように案内する引戸ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の引戸ガイド装置の中には、引戸が移動する軌跡下の床面に取付穴を凹設し、その取付穴に上端に磁石を有したガイドピンを上下動自在に挿設する一方、引戸の下端面に凹設した細長いガイド溝内に磁石を有した磁着体を配設し、開閉時、引戸側の磁着体が床側のガイドピン上に至ると、磁力によりガイドピンを引き上げてガイド溝に係合し、引戸が移動する開閉方向に対して横振れしないで直進するように案内する構造にしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平 8−326402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、引戸は、気密性に配慮した部屋であっても、床面との間に僅かに隙間が開いた状態で吊り込まれ、反対に通気性に配慮した部屋では、床面との間に隙間を大きく開けた状態で吊り込まれるなど、床面との間の隙間の大きさにバラツキがある。従って、上述した従来の引戸ガイド装置では、引戸と床面間の隙間が大きいために、引戸側の磁石と床側のガイドピンとが離れ過ぎると、磁力によりガイドピンを引き上げてガイド溝に係合することができない場合がある。従って、従来、そのような場合は、面倒なことに、わざわざ引戸を取り外して床面との間の隙間を調整する必要があるという課題があった。また、引戸側に備える磁石を大型で強磁性のものに取り替えて対処することも考えられるが、磁石は比較的高価であるため、それではコストが著しく高くなるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、引戸と床面との間の隙間の大きさに違いがあっても、その隙間の調整や磁石の取り替えなどの必要がない安価な引戸ガイド装置を提供することにある。
【0006】
そのため、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、下端面10aの長さ方向にガイド溝12を凹設し、床面fとの間に隙間dを開けた状態で開閉方向に移動自在に吊持した引戸10を、開閉時に横振れしないように案内する引戸ガイド装置Rにおいて、引戸10が移動する軌跡下の床面fに間隔を置いて凹設した複数の取付穴x・y・zに磁性体のガイド突起15を出没自在に挿設した床側ガイドG1と、引戸10の前記ガイド溝12に内設した扉側ガイドG2とからなり、該扉側ガイドG2は、前記ガイド溝12の両端部に嵌め込んで磁力により前記ガイド突起15を吸引して立ち上がらせる一対の磁着手段29・30と、前記ガイド溝12内の前記磁着手段29・30間に敷設し、立ち上がった前記ガイド突起15を係合するガイドレール40とからなり、前記磁着手段29・30は、底部35aに昇降口32を開けた収納ケース35と、該収納ケース35内で基端部を枢支して揺動自在に片持ちした吸着台45と、該吸着台45に付設した磁石Mとを備え、前記吸着台45を、その先端の当接部45bが前記昇降口32から所定高さh突出する傾き角度位置で前記収納ケース35に係止してなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の引戸ガイド装置Rにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記磁着手段29・30は、前記磁石Mを前記吸着台45の上に滑動自在に載置してなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の引戸ガイド装置Rにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記床側ガイドG1は、前記ガイド突起15を、複数の凸状部材23・24・25を入れ子式に重ねて組み入れて構成してなることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の引戸ガイド装置Rにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記ガイド突起15は、最も内側の凸状部材25を細長い磁性板材で形成し、その磁性板材の上端を屈曲させて前記ガイドレール40に係合する係合板部25aを形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、扉側ガイドにおいて磁着手段の吸着台を、先端の当接部が収納ケースの昇降口から所定高さ突出する傾斜角度位置に傾けて保持し、その吸着台に付設した磁石が床面近くまで下がって待機するため、引戸が床面との間に大きな隙間を開けて吊り込まれていても、磁力により十分にガイド突起を吸引して立ち上げ、ガイドレールに確実に係合させることができる。従って、そのように引戸と床面との間の隙間が大きいために引戸側の磁石と床側のガイド突起とが離れ過ぎないように、例えば引戸をわざわざ取り外して床面との間の隙間の大きさを調整する面倒な作業が必要でなくなり、また、磁力が離れたガイド突起まで及ぶように、もともと高価な磁石をより大きな強磁性のものにわざわざ取り替える必要もなくなるため、それだけコストを著しく低減することができる。他方、引戸と床面との間の隙間が小さい場合には、磁着手段の吸着台は、先端の当接部が床面に当接するが、吸着台は、収納ケース内で基端部を枢支して揺動自在に片持ちして自由状態にあるため、開閉時、引戸が移動するときに摩擦抵抗が少なく先端の当接部において床面上をスリップしながら走行し、これにより、引戸と床面との間の隙間が小さい場合でも、引戸の走行の妨げになることなく、引戸を横振れしないように案内することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、磁着手段は、磁石を吸着台の上に滑動自在に載置するため、引戸が開閉方向に移動するとき、磁石がガイド突起を磁力で吸引して引き上げた状態のまま吸着台上を滑り上がる一方、滑り上がりきると、磁石は、自重により吸着台の傾きに従い滑り降りて元の吸着位置に戻って待機し、磁力によるガイド突起の引き上げに備えることができ、その結果、磁石は、吸着台上の全面にわたり形成する必要がなく、それだけ使用する磁石が小型で済む結果、コストを著しく低減することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、床側ガイドは、ガイド突起を、複数の凸状部材を入れ子式に重ねて組み入れて構成するため、引戸が床面との間に大きな隙間を開けて吊り込まれていても、引戸下端のガイドレールに係合する高さまで突出するのに十分なストロークを、必要な剛性も担保して確保することができる一方、ガイド突起を出し入れ自在に挿設する取付穴の深さも浅くて済むため、たとえ床材の厚さの範囲内に収まる浅い取付穴でもガイド突起を容易に設置することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、ガイド突起は、最も内側の凸状部材を細長い磁性板材で形成し、その磁性板材の上端を屈曲させてガイドレールに係合する係合板部を形成することにより、ガイド突起が加工し易くなり機械的強度も上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の引戸ガイド装置を示す斜視図である。
【図2】引戸ガイド装置を備えた引戸構造体を、下部側を一部断面にして引戸の全開状態で示す正面図である。
【図3】床側ガイドを示す分解斜視図である。
【図4】(A)ガイド突起が収納状態の床側ガイドを示す平面図、(B)図4中線X−X断面図、(C)図4中線Y−Y断面図である。
【図5】(A)ガイド突起が引き出されて突出状態の床側ガイドを示す平面図、(B)図5中線X−X断面図、(C)図5中線Y−Y断面図である。
【図6】磁着手段を示す分解組立図である。
【図7】(A)磁着手段を示す平面図、(B)図7中線Z−Z断面図である。
【図8】磁着手段を、対向側板部の一側を破断して示す組立斜視図である。
【図9】(A)引戸と床面間の隙間が大きい場合の吸着台の当接部の突出高さ位置を説明する概要図、(B)引戸と床面間の隙間が小さい場合の吸着台の当接部の突出高さ位置を説明する概要図である。
【図10】扉側ガイドの磁石が床側ガイドのガイド突起に近づいたときの状態を示す引戸ガイド装置の部分縦断面図である。
【図11】引戸を案内する動作を段階的に分けて示す引戸ガイド装置の部分縦断面図である。
【図12】引戸構造体の下部側を、閉止途中の引戸を引戸ガイド装置で案内する状態において示す縦断面図である。
【図13】引戸構造体の下部側を、全閉手前の引戸を引戸ガイド装置で案内する状態において示す縦断面図である。
【図14】引戸構造体の下部側を引戸の全閉状態において示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一例である引戸ガイド装置を示す斜視図、図2は引戸ガイド装置を備えた引戸構造体を引戸の全開状態で示す正面図である。図示例の引戸構造体は、天井側に固定した引戸レールに引戸10を係合して図中左右の開閉方向に移動自在に懸架すると共に、引戸10の下端面10aと床F(床面f)との間に、例えば20mmの隙間dを開けて吊り込み、開閉時、ハンドル11を持って引戸10を開閉方向に移動して床Fと仕切壁Wで囲んだ開口部Sを開閉する構造になっている。そこで、開口部Sを引戸10を移動して開閉するとき、本発明の引戸ガイド装置Rを作動し、開閉方向に走行する引戸10を横振れしないで直進するように案内する。
【0017】
引戸10は、例えば木製パネルで、上下の横框と、左右の縦框と、各框間の縦桟および横桟とで格子状に組んだ枠体を間に挟んで一対の鏡板材を張り合わせて組み立て、下部側の横框には、下端面10aの長さ方向に沿ってガイド溝12を凹設している。
【0018】
引戸ガイド装置Rは、床Fに配設する床側ガイドG1と、引戸10のガイド溝12に内設する扉側ガイドG2とからなる。
【0019】
床側ガイドG1は、複数のガイド体a・b・cからなる。ガイド体a・b・cは、図3、図4および図5に示すように、それぞれ取付ケース14と、取付ケース14に挿設するガイド突起15と、スペーサ16と、抜け止め具17とを備えてなる。取付ケース14は、樹脂製で、上下両端を開口した角筒状のケース本体部14aと、ケース本体部14aの上端に開いた突出口18の周縁から鍔状に延びるフラットな取付板部14bとからなる。ケース本体部14aは、1つの対向側部の内面にガイド凹部14cを設けると共にガイド凹部14cの上端縁に抜け止め段部14dを残して成形してなる。更に、ケース本体部14aは、突出口18と反対の部品挿入口19が開いた下端面に、部品挿入口19を間に挟んだ両側に一対のピン状突起13を突設してなる。
【0020】
ガイド突起15は、それぞれ取付ケース14のケース本体部14aに入れ子状に重ねて組み入れる角筒状の第1凸状部材23と、第1凸状部材23に入れ子状に重ねて組み入れる角筒状の第2凸状部材24と、第2凸状部材24に入れ子状に重ねて組み入れる板片状の第3凸状部材25からなる。
【0021】
第1凸状部材23は、取付ケース14のケース本体部14aに合わせて上下両端を開口した金属製の角筒体で、1つの対向側部の図中下端に鍔状の抜け止め凸部23aを外向きに突設する一方、他の対向側部の内面に第2凸状部材24を摺動自在に嵌入するガイド凹部23bを凹設すると共にガイド凹部23bの上端縁に抜け止め段部23cを残して成形してなる。
【0022】
第2凸状部材24は、第1凸状部材23に合わせて上下両端を開口した金属製の角筒体で、1つの対向側部の図中下端に角状に一対の抜け止め凸部24aを外向きに突設する一方、同じ対向側部の内面に第3凸状部材25を摺動自在に嵌入するガイド凹部24bを凹設すると共にガイド凹部24bの上端縁に抜け止め段部24cを残して成形してなる。
【0023】
第3凸状部材25は、先端がT形をなす細長い金属の磁性板材を用い、その磁性板材の先端を直角に屈曲させて、引戸10側の後述するガイドレール40に係合する係合板部25aを先端に成形してなる。また、基端には、その端面に嵌め込み凹部25bを設けると共に嵌め込み凹部25bを間に挟んだ両側に一対の抜け止め凸部25cを互いに離れる向きに突設してなる。スペーサ16は、樹脂材で略コ形に成形し、矩形なガイド板部16aの上下両端に直角に屈曲した一対の押え凸部16bを突設してなる。抜け止め具17は、支えバー17aの両端に、取付ケース14のピン状突起13を嵌着する小径なリング部17bを設けてなる。
【0024】
そこで、ガイド体a・b・cは、取付ケース14内に部品挿入口19から、ガイド突起15の第1凸状部材23を入れて、抜け止め凸部23aをガイド凹部14cに嵌入し、第1凸状部材23をケース本体部14aに入れ子状に重ねて突出口18から出没自在に取付ケース14に組み入れる。一方、第2凸状部材24内に部品挿入口27から第3凸状部材25を入れて、抜け止め凸部25cをガイド凹部24bに嵌入し、第3凸状部材25を第2凸状部材24に入れ子状に重ねて組み入れ、それから、スペーサ16を同じ部品挿入口27から第2凸状部材24内に入れて、第3凸状部材25と、第3凸状部材25と向き合う第2凸状部材24の片側側部との間に差し込み、その片側側部に押え凸部16bが押し当たるガイド板部16aと、第2凸状部材24のガイド凹部24bとの間で、第3凸状部材25を摺動自在に挟持して突出口31から直立状態で出没可能に位置決め保持する。次いで、そのように第3凸状部材25を保持した第2凸状部材24を、部品挿入口29から第1凸状部材23内に入れて、抜け止め凸部24aをガイド凹部23bに嵌入し、第3凸状部材25が突出口31から出没自在に第2凸状部材24を第1凸状部材23内に入れ子状に重ねて組み入れる。以って、第1、第2、第3の凸状部材23・24・25を入れ子式に重ねて組み入れて、ガイド突起15を組み立てる。
【0025】
それから、取付ケース14には、ピン状突起13に抜け止め具17のリング部17bを係合し、第3凸状部材25の嵌め込み凹部25bと、第1凸状部材23、第2凸状部材24およびスペーサ16の各嵌め込み凹部23d・24d・16cを嵌め込んで受け止めから、ピン状突起13を潰して抜け止め具17を固定する。以って、取付ケース14の部品挿入口19を抜け止め具17で抜け止めし、ケース本体部14a内に第1、第2、第3の凸状部材23・24・25を、3段の入れ子式に重ねて突出口31・28・18から順に出没自在に組み入れ、ガイド体aと・b・cをそれぞれ組み立ててなる。
【0026】
ガイド体a・b・cは、図1および図2に示すように、それぞれ取付ケース14のケース本体部14aを、引戸10が移動する軌跡下の床面fに間隔を置いて予め凹設した取付穴x・y・zに嵌め込み、取付板部14bを床面fにねじ止めして床面fと殆ど段差なく挿設し、以って、戸先側のガイド体aと中間のガイド体bと戸尻側のガイド体cとで床側ガイドG1を構成する。
【0027】
一方、扉側ガイドG2は、ガイド溝12の両端部に内設する一対の磁着手段29・30と、ガイド溝12内で磁着手段29・30間に敷設するガイドレール40とからなる。
【0028】
磁着手段29・30は、収納ケース35と、収納ケース35に収納する吸着台45と、吸着台45に付設する矩形板状の磁石Mを備える。
【0029】
収納ケース35は、ガイド溝12の溝形状に合わせて細長い直方形状の箱体で、図6、図7および図8に示すように、上側に吸着台45の取付ロ34を開けると共に、底部35aに昇降口32を開け、長さ方向一端にねじ止め用のボス部35bを設ける一方、他端側には、対向側板部35cの上側からつの状に一対の連結凸部35dを突設し、下側に互い内向きにL状に屈曲した一対の係合リブ35eを設けてなる。さらに、対向側板部35cの他端側には、その間を横断する向きに軸穴38を設けている。そして、ボス部35bの下端の昇降口32側には、吸着台45の先端を係止する係止段部35fを突設してなる。
【0030】
吸着台45は、素材として樹脂材料を用い、磁石Mを滑動自在に案内するガイド凹部45aを設けて滑り台状に成形し、全体に表面を平滑に仕上げて滑りやすく形成してなる。更に、吸着台45は、基端部に、枢軸50を幅方向に貫挿する軸穴33を設ける一方、先端にショベル状の当接部45bを設け、その当接部45bの上端に軸穴33と平行な係止軸45cを設けてなる。ガイド凹部45aには、幅方向に対向する側壁の上縁に、磁石Mの飛び出しを規制する押えリブ45dを互いに向き合う方向に突設してなる。
【0031】
そこで、磁着手段29・30は、収納ケース35と吸着台45の軸穴38・33に枢軸50を貫挿し、枢軸50で収納ケース35に基端部を枢支して吸着台45を収納ケース35内で揺動自在に片持ちする一方、係止軸45cを係止段部35fに係止して先端の当接部45bが昇降口32から所定高さh(例えば10mm)突出する傾き角度位置に保持する。そして、吸着台45には、ガイド凹部45aの底面37の上に磁石Mを滑動自在に載置して組み立ててなる。
【0032】
ガイドレール40は、図1に示すように、略角パイプ状をなすレール本体40aの下面中央に長さ方向に沿って逃げ溝39を設け、逃げ溝39を挟んだ両側に係合リブ40bを平行に列設する。一方、レール本体40aの上板部40cには、幅方向両側の角縁を磁着手段29・30の連結凸部35dの凸形状に合わせて屈曲させて連結用の係合段部40dを形成している。
【0033】
そこで、扉側ガイドG2は、ガイド溝12の両端部内に互いの連結凸部35dを向き合わせて磁着手段29・30を嵌め込み、ボス部35bを溝底面にねじ止めしてから、磁着手段29・30の連結凸部35dにガイドレール40の係合段部40dを係合し、互いの係合リブ35e・40bを一直線に合わせた状態で、ガイドレール40を磁着手段29・30に連結し、上板部40cを溝底面にねじ止めして組み立ててなる。以って、扉側ガイドG2をガイド溝12に内設する。
【0034】
従って、引戸ガイド装置Rは、図示例のように、引戸10が下端面10aと床F(床面f)との間に大きく20mmの隙間dを開けて吊り込まれている場合は、図9(A)および図10に示すように、扉側ガイドG2において、磁着手段29・30の吸着台45を、先端の当接部45bが昇降口32から高さh=10mm突出した傾斜角度位置に傾けて保持し、磁石Mを、吸着台45の当接部45b上の吸着位置に載せた状態で、床面fの近くまで(例えば床面fまで略10mmの高さまで)下がって待機させてなる。
【0035】
そこで、引戸ガイド装置Rは、引戸10が開閉方向に移動して開口部Sを開閉するとき、扉側ガイドG2において、磁着手段29・30が床側ガイドG1のガイド体(a・b・c)に近づいて、図11(A)に示すように、吸着台45の当接部45bの上に載った磁石Mが床側ガイドG1(ガイドa・b・c)のガイド突起15の上に至ると、磁力が働いて磁性体からなる内側の第3の凸状部材25が第2凸状部材24から引き上がる。第3凸状部材25が引き上がると、抜け止め凸部25cが抜け止め段部24cに係止し[図5(B)・(C)参照]、中間の第2凸状部材24が第1凸状部材23から、図11(B)に示すように立ち上がり、すると、図3に示す抜け止め凸部24aが抜け止め段部23cに係止し、外側の第1凸状部材23が取付ケース14から、図11(C)に示すように入れ子式に立ち上がる。すると、そのとき引戸10が開閉方向に移動するに従い、磁石Mがガイド突起15を吸引し引き上げた状態で吸着台45の底面37を滑り上がり、すると、第3凸状部材25の係合板部25aが磁着手段29(30)の昇降口32を通って係合リブ35eに係合し、さらに図11(D)に示すように、ガイドレール40の係合リブ40bに係合することにより、引戸10が走行する開閉方向に対して横振れしないで直進するように案内する構造になっている。
【0036】
従って、引戸ガイド装置Rでは、床側ガイドG1(ガイド体a・b・c)のガイド突起15を複数の凸状部材23・24・25を入れ子式に重ねて組み入れて構成するから、引戸10が床面fとの間に大きな隙間dを開けて吊り込まれていても、引戸下端のガイドレール40に係合する高さまで突出するのに十分なストロークを、必要な剛性も担保して確保することができる一方、ガイド突起15を出し入れ自在に挿設する取付穴x・y・zの深さも浅くて済むため、たとえ床材の厚さの範囲内に収まる浅い取付穴でも容易にガイド突起15を設置することができる。
【0037】
さて、図示例の引戸構造体では、閉時、図2に示すように開口部Sを全開した引戸10を、ハンドル11を持って矢示する閉方向に引くと、引戸レールの案内で戸車を転動しながら閉方向に引戸10が動き出して開口部Sを閉じ始めるが、この閉止途中、引戸ガイド装置Rは、図12に示すように、床側ガイドG1の中間ガイド体bにおいて、入れ子状に立ち上がったガイド突起15の第3凸状部材25の係合板部25aがガイドレール40の係合リブ40bに係合し、引戸10が走行する閉方向に対して横振れしないで直進するように案内する。
【0038】
それから、引戸10が閉方向にさらに直進し、扉側ガイドG2の戸先側磁着手段29が床側ガイドG1の戸先側ガイド体aに近づいて、図11(A)に示すように、吸着台45の当接部45b上の吸着位置に載った磁石Mがガイド突起15の上に至ると、磁力により第3凸状部材25を吸引して引き上げ、すると順次、図11(B)・(C)に示すように第2凸状部材24と第1凸状部材23が入れ子式に引き上げられ、ガイド突起15が鉛直に立ち上がる。すると、そのとき引戸10が閉方向に移動するに従い、磁石Mはガイド突起15を立ち上げた状態で吸着台45のガイド凹部45a内で底面37上を滑り上がり、図13に示すように、立ち上がった第3凸状部材25の係合板部25aを戸先側磁着手段29の係合リブ35eに係合してからガイドレール40の係合リブ40bに係合する一方、そのとき、ガイドレール40の戸尻側で係合リブ40bに係合した中間ガイド体bの第3凸状部材15は、昇降口32を通って戸尻側磁着手段30の係合リブ35eから外れる。従って、その後、引戸10は、戸先側ガイド体aのガイド突起15の案内で横振れしないように直進し、図14に示すように開口部Sを全閉する。
【0039】
なお、引戸ガイド装置Rでは、引戸10が開閉方向に移動するとき、磁石Mは、ガイド突起15を磁力で吸引して引き上げ状態のまま吸着台45の底面37上を滑り上がるが、滑り上がってガイド凹部45aの上端溝壁に当たると、自重により吸着台45の傾きに従い底面37を滑り降りて元の吸着位置に戻って待機し、再び磁力によるガイド突起15の引き上げに備えることができる。従って、引戸ガイド装置Rでは、吸着台45の底面37の全面にわたり磁石で形成する必要がなく、それだけ使用する磁石が小型で済む結果、コストも著しく低く抑えることができる。
【0040】
ところで、引戸ガイド装置Rでは、引戸10が床面fとの間に大きく20mmの隙間dを開けて吊り込まれていても、図9(A)および図10に示すように、扉側ガイドG2において磁着手段29・30の吸着台45を、先端の当接部45bが収納ケース35の昇降口32から高さh=10mm突出した傾斜角度位置に傾けて保持し、先端の当接部45b上に載った磁石Mが床面fまで残り10mmの高さの床面f近くまで下がって待機するため、磁力を十分に及ぼしめて第3凸状部材25を吸引して入れ子式にガイド突起15を鉛直に立ち上げ、第3凸状部材25の係合板部25aをガイドレール40の係合リブ40bに確実に係合させることができる。従って、たとえ引戸10と床面f間の隙間dが大きいために引戸側の磁石Mと床F側のガイド突起15とが離れ過ぎないように、例えば引戸をわざわざ取り外し、床面fとの間の隙間を調整する作業が必要でなくなり、また、磁力が離れたガイド突起15まで及ぶように、元々高価な磁石Mをより大型な強磁性のものにわざわざ取り替える必要もなくなるため、それだけコストを著しく低減することもできる。
【0041】
他方、引戸ガイド装置Rでは、図9(B)に示すように、引戸10と床面fとの間の隙間dが小さい場合には、磁着手段29・30の吸着台45は、先端の当接部45bが床面fに当接するが、吸着台45は、収納ケース35内で基端部を枢支して揺動自在に片持ちして自由状態にあるため、開閉時、引戸10を移動するときに摩擦抵抗が少なく先端の当接部45aにおいて床面f上をスリップしながら走行し、これにより、引戸10と床面fとの間の隙間dが小さい場合でも、引戸10の走行の妨げになることなく、引戸10を横振れしないように案内することができる。
【符号の説明】
【0042】
F 床
G1 床側ガイド
G2 扉側ガイド
R 引戸ガイド装置
S 開口部
M 磁石
a・b・c ガイド体
x・y・z 取付穴
10 引戸
10a 引戸の下端面
12 ガイド溝
14 取付ケース
15 ガイド突起
23 第1凸状部材
24 第2凸状部材
25 第3凸状部材
29・30 磁着手段
32 昇降口
35 収納ケース
35e 係止段部
40 ガイドレール
40b 係合リブ
45 吸着台
45b 当接部
45c 係止軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端面の長さ方向にガイド溝を凹設し、床面との間に隙間を開けた状態で開閉方向に移動自在に吊持した引戸を、開閉時に横振れしないように案内する引戸ガイド装置において、
引戸が移動する軌跡下の床面に間隔を置いて凹設した複数の取付穴に磁性体のガイド突起を出没自在に挿設した床側ガイドと、前記ガイド溝に内設した扉側ガイドとからなり、
該扉側ガイドは、前記ガイド溝の両端部に嵌め込んで磁力により前記ガイド突起を吸引して立ち上がらせる一対の磁着手段と、前記ガイド溝内の前記磁着手段間に敷設し、立ち上がった前記ガイド突起を係合するガイドレールとからなり、
前記磁着手段は、底部に昇降口を開けた収納ケースと、該収納ケース内で基端部を枢支して揺動自在に片持ちした吸着台と、該吸着台に付設した磁石とを備え、前記吸着台を、その先端の当接部が前記昇降口から所定高さ突出する傾き角度位置で前記収納ケースに係止してなることを特徴とする、引戸ガイド装置。
【請求項2】
前記磁着手段は、前記磁石を前記吸着台の上に滑動自在に載置してなることを特徴とする、請求項1に記載の引戸ガイド装置。
【請求項3】
前記床側ガイドは、前記ガイド突起を、複数の凸状部材を入れ子式に重ねて組み入れて構成してなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の引戸ガイド装置。
【請求項4】
前記ガイド突起は、最も内側の凸状部材を細長い磁性板材で形成し、その磁性板材の上端を屈曲させて前記ガイドレールに係合する係合板部を形成してなることを特徴とする、請求項3に記載の引戸ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−102588(P2012−102588A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253696(P2010−253696)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【特許番号】特許第4708503号(P4708503)
【特許公報発行日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(592114703)株式会社ベスト (69)