説明

引戸ガイド装置

【課題】引戸ガイド装置において、戸当りの出っ張りが室内の美的外観を阻害することがなく、引戸周りの見栄えを良好にする。
【解決手段】引戸ガイド装置Gは、ガイド本体20を全閉状態でも引戸11が常に重なる戸袋壁10cの下部に付設する一方、弾性当接材30・31をガイド溝12内の戸先側と戸尻側に固設し、ガイド本体のアングル板35には、ガイド板部の両側縁に戸当り45・50を突設し、開時、ガイド溝に係合したガイドローラ37で引戸の下部側が横振れしないように案内し、全開すると、走行ガイド15は、戸先側の弾性当接材がガイド本体の戸先側戸当りに当たって引戸を停止し、全開位置に位置決めする一方、閉時は、ガイドローラで引戸の下部側が横振れしないように案内し、全閉すると、戸尻側の弾性当接材がガイド本体の戸尻側戸当りに当たって引戸を停止し、全閉位置に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上吊り引戸の下端部に凹設したガイド溝に走行ガイドを係合して引戸の下部が横振れしないように案内する引戸ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、建物内を介護に適した構造にリフォームする場合には、既存の各種扉の中で、回動開閉式の開き戸は取り外し、要介護者に優しいスライド開閉式の引戸に付け替える改造を行うことが多い。
【0003】
従来、このように開き戸を引戸に付け替える場合、引戸は、既存の戸枠の外側に重ねて、開口部と戸袋壁に沿って開閉方向にスライド自在に取り付けている。そのため、引戸が往復移動する軌道の上にあって戸先側と戸尻側に戸当りを戸袋壁や引戸板面に突設し、開口部を全閉した閉位置と全開した開位置において、この戸当りに引戸を当てて停止し、引戸の開閉ストロークを所定長さに制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−322247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のように戸当りを戸袋壁や引戸板面に取り付けると、その出っ張りが目立ち、引戸周りの見栄えが悪化して室内の美的外観を阻害するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記した課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、下端部にガイド溝12を長さ方向に凹設した引戸11を開閉方向にスライド自在に上吊りし、前記ガイド溝12に走行ガイド15を係合して開閉時に引戸11の下部側が横振れしないように案内する引戸ガイド装置Gであって、前記走行ガイド15は、全閉状態でも引戸11が常に重なる戸袋壁10cの下部に付設するガイド本体20と、前記ガイド溝12内の閉方向戸先側と戸尻側のいずれか一方又は双方に固設する弾性当接材30・31とを備え、前記ガイド本体20は、前記戸袋壁10cの下部に固定する取付板部35aと、該取付板部35aの下端縁から直角に突出するガイド板部35bからなるアングル板35と、前記ガイド溝12に係合させるガイドローラ37を先端軸部に回転自在に軸着する一方、基端軸部36aを前記ガイド板部35bに設けた軸受穴29a・29bに嵌着させて前記ガイド板部35b上に立脚するガイド軸40とを有し、前記アングル板35には、前記ガイド板部35bの両側縁のいずれか一方又は双方に戸当り45・50を突設し、開閉時に該戸当り45・50に前記弾性当接材30・31が当って引戸11を停止させてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の引戸ガイド装置Gにおいて、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記アングル板35は、前記ガイド板部35bに複数の前記軸受穴29a・29bを突出方向に連設して互いに連通するアジャスト穴29を形成し、引戸11の戸厚に応じて前記ガイド軸40の立脚位置を開閉方向と直交する向きに移動調整可能としてなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、それぞれ下端部にガイド溝55を長さ方向に凹設した外扉Aと内扉Bからなる連動引戸22を、開閉方向にスライド自在に上吊りすると共に横に重ねて配列する一方、前記ガイド溝に走行ガイドを係合して連動引戸22の下部側が横振れしないように案内し、手前側の外扉Aをスライドさせると、隣接する奥側の内扉Bが遅れて順次連動して開口部Sを開閉する引戸ガイド装置G´であって、外扉Aの前記走行ガイド15は、全閉位置にある外扉Aが重なる内扉Bの戸先側下部に付設するガイド本体20と、外扉Aの前記ガイド溝55内の閉方向戸先側と戸尻側に固設する弾性当接材45・50とを備え、前記ガイド本体20は、内扉Bの戸先側下部に固定する取付板部35aと、該取付板部35aの下端縁から直角に突出するガイド板部35bからなるアングル板35と、前記ガイド溝55に係合させるガイドローラ37を先端軸部に回転自在に軸着する一方、基端軸部36aを前記ガイド板部35bに設けた軸受穴29a・29bに嵌着させて前記ガイド板部35b上に立脚するガイド軸40とを有し、前記アングル板35には、前記ガイド板部35bの両側縁に戸当り30・31を突設し、開閉時に外扉Aをスライドさせると該戸当り30・31に前記弾性当接材45・50が当って外扉Aに内扉Bを連動させてなることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の引戸ガイド装置G´において、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記アングル板35は、前記ガイド板部35bに複数の前記軸受穴29a・29bを突出方向に連設して互いに連通するアジャスト穴29を形成し、外扉Aの扉厚に応じて前記ガイド軸40の立脚位置を開閉方向と直交する向きに移動調整可能としてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、引戸の吊り込み状態において、全閉状態にあっても、走行ガイドのガイド本体が引戸に覆い重なって目隠しされ、弾性当接材はガイド溝内に固設し、結局、戸当りに必要な見栄えの悪い出っ張りがいっさい外部から見えない構成であるため、従来のように戸当りの出っ張りが室内の美的外観を阻害することがなく、引戸周りの見栄えを良好にすることができる。しかも、引戸が常に覆い重なる戸袋壁の下部に取り付けた走行ガイドのガイドローラで引戸の下部側が横振れしないように案内しながら、ガイド本体に突設した戸当りにガイド溝内に固設した弾性当接材を当てて引戸の開閉ストロークを所定長さに制御し、これにより、引戸周りの見栄えを悪化させることなく、戸当り機能をも併せて発揮することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、引戸の戸厚に応じてガイド軸の立脚位置を開閉方向と直交する向きに移動調整することにより、引戸を戸袋壁との間のチリ寸法を所定の適切な範囲に保持して吊り込むことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、連動引戸の吊り込み状態において、連動引戸が全閉状態にあっても、走行ガイドのガイド本体は外扉に覆い重なって目隠しされ、弾性当接材はガイド溝内に固設し、連動機構に必要な見栄えの悪い戸当りの出っ張りがいっさい外部から見えない構成であるため、連動機構の戸当りの出っ張りが室内の美的外観を阻害することがなく、連動式の引戸周りの見栄えを良好にすることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、外扉の扉厚に応じてガイド軸の立脚位置を開閉方向と直交する向き移動調整することにより、外扉を内扉との間のチリ寸法を、常に所定の適切な範囲に保持して吊り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)本発明の一例である引戸ガイド装置を適用した引戸構造体を全開状態で示す正面図、(B)引戸の下部側を拡大して示す正面図である。
【図2】引戸ガイド装置の主要構成部品を示す分解斜視図である。
【図3】走行ガイドのガイド本体を示す側面図である。
【図4】(A)走行ガイドのガイド本体を示す正面図、(B)平面図である。
【図5】(A)走行ガイドのガイド本体を、ガイド軸を第1軸受穴に軸着した状態で示す斜視図、(B)ガイド軸を第2軸受穴に軸着した状態で示す斜視図である。
【図6】(A)走行ガイドのガイド本体を、ガイド軸を第1軸受穴に軸着した状態で示す側面図、(B)ガイド軸を第1軸受穴に軸着した状態で示す平面図である。
【図7】(A)走行ガイドのガイド本体を、ガイド軸を第2軸受穴に軸着した状態で示す側面図、(B)ガイド軸を第2軸受穴に軸着した状態で示す平面図である。
【図8】引戸ガイド装置を適用した引戸構造体を全閉状態で示す正面図である。
【図9】図8の引戸の下部側を拡大して示す部分正面図である。
【図10】(A)本発明の他例である引戸ガイド装置を適用した連動引戸構造体を全開状態で示す正面図、(B)平面図である。
【図11】連動引戸構造体を外扉が閉止途中の状態で示す正面図、(B)平面図である。
【図12】連動引戸構造体を、外扉が内扉を引き連れる状態で示す正面図、(B)平面図である。
【図13】連動引戸構造体を、外扉に内扉を連動して閉止す途中の状態で示す正面図、(B)平面図である。
【図14】連動引戸構造体を外扉と内扉の連動引戸で全閉した状態で示す正面図、(B)平面図である。
【図15】連動引戸構造体を外扉を引いて再び開く状態で示す正面図、(B)平面図である。
【図16】連動引戸構造体を外扉に内扉が押されて連動する状態で示す正面図、(B)平面図である。
【図17】連動引戸構造体を外扉と内扉とが連動して開く途中の状態で示す正面図、(B)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の最良形態について説明する。
【0016】
図1に本発明の一例である引戸ガイド装置を適用した引戸構造体を引戸の全開状態で示し、図2に引戸ガイド装置を示す。図示例の引戸構造体は、床F上に立設した上枠部10aと縦枠部10bと戸袋壁10cからなる壁体10と、壁体10に吊り込んで開口部Sを開閉する引戸11と、壁体10の上部に懸架して引戸11を開閉方向にスライド自在に吊持する引戸レール(図示省略)と、引戸11の下部を横振れしないように案内する本発明の引戸ガイド装置Gを備える。
【0017】
引戸11は、例えば戸厚が30〜35mmの矩形な木製パネルからなり、下端面には、長さ方向にガイド溝12を凹設し、ガイド溝12に、溝形状に合わせて断面コ形をなす細長い補強部材13を嵌着している。図中符号14は、引戸11の引手である。
【0018】
本発明の引戸ガイド装置Gは、この引戸11の下端面に凹設した上記ガイド溝12と、ガイド溝12に係合して引戸11を振れ止めする走行ガイド15とで構成する。走行ガイド15は、ガイド本体20と、弾性当接材30・31とからなる。
【0019】
ガイド本体20は、図2でも示すように、アングル板35と、ガイド軸40と、締着用ビス19とで構成する。
【0020】
アングル板35は、金属板をL状に曲げ成形し、取付板部35aと、取付板部35aの下端縁から直角に突出したガイド板部35bとからなる。ガイド板部35bは、先端縁から基端縁に向けて長さ方向に2本の切り込みを平行に設けて、その切り込み間の中央片21にアジャスト穴29を設け、中央片21を間に挟んだ幅方向両側の側片45・50の双方を直角に曲げ起し、それらを戸当り45・50として突設してなる。アジャスト穴29は、2つの第1軸受穴29aと第2軸受穴29bをガイド板部35bの突出方向に連設し、それら軸受穴29a・29bを互いに連通させて形成する。個々の軸受穴29a・29bは、ガイド軸40の基端軸部36aの形状に合わせて回り止めの◇形の穴からなっている。
【0021】
ガイド軸40は、支柱36と樹脂製のガイドローラ37とからなる。支柱36は、基端側が断面◇形の回り止め形状をなす基端軸部36aと、先端側の枢軸部36bと、両軸部36a・36b間で一段拡径な本体の抜け止め筒部36cとからなる。基端軸部36aには、その端面中心に締着用ビス19をねじ込む雌ねじ穴が螺設されている。そして、ガイド軸40は、枢軸部36bをガイドローラ37に貫挿して軸突端36dをOリングに嵌合させてから、軸突端をカシメてガイドローラ37を回転可能に軸着する。
【0022】
ガイド本体20は、このガイド軸40を立てて、支柱36の基端軸部36aをアングル板35のアジャスト穴29の第1軸受穴29aに嵌挿し、基端軸部36aの雌ねじ穴に締着用ビス19をねじ込み、図3、図4および図5(A)に示すように、ガイド板部35b上にガイド軸40を立脚させて組み立てる。そこで、引戸ガイド装置Gは、走行ガイド15で案内する引戸11が、図6に示すように戸厚30〜35mmのパネルではなく、例えば図7に示すように36〜40mmと一段厚肉なパネルの場合は、ガイド軸40の基端軸部36aをアングル板15のアジャスト穴29の第2軸受穴29bに嵌着し、ガイド板部35b上の取付板部35a寄りでガイド軸40を立脚させて組み立て、引戸11の戸厚に応じてガイド軸40の立脚位置を、ガイド板部35bの突出長さ方向、引戸11の吊り込み状態で云えば、引戸11がスライドする開閉方向と直交する方向に移動調整可能な構造になっている。従って、引戸11の戸厚に応じてガイド軸40の立脚位置を開閉方向と直交する向き移動調整することにより、引戸11を戸袋壁10cとの間のチリ寸法を、例えば4.5〜7mmの適切な範囲に保持して吊り込むことができる。
【0023】
他方、走行ガイドGの弾性当接材30・31は、図2に示すように、それぞれ弾性を有する樹脂製で、引戸11のガイド溝12に嵌め込み可能に溝形状に合わせて略直方形で、中心を細筒穴32が高さ方向に貫通している。そこで、走行ガイド15は、弾性当接材30・31を、引戸11のガイド溝12内の戸先側と戸尻側に固設する。図示例では、ガイド溝12には、図1に示すように、引戸11が全開したガイド本体20の戸当り45に当たる戸先側の戸当り位置に一方の弾性当接材30を固定する一方、図8・図9に示すように、引戸11が全閉したガイド本体20の戸当り50に当たる戸尻側の戸当り位置に他方の弾性当接材31を固定し、互いに引戸11の開閉ストローク分の間隔をあけてガイド溝12内に固設する。そのとき、弾性当接材30・31は、それぞれ図2に示す止めねじ33をねじ挿通管34を介して細筒穴32に通し、ガイド溝12の底面にねじ込んで固着する。
【0024】
さて、上述した構成の引戸ガイド装置Gは、引戸11を吊り込むとき、走行ガイド15のガイド本体20を、図8および図9に示すように、全閉状態でも引戸11が常に重なる戸袋壁10cの下部に取り付ける。そこで、ガイド本体20を戸袋壁10cに取り付けるときは、床Fとの間に所定間隙を開ける引戸11の最下端縁のラインに、アングル板35のガイド板部35bの位置を合わせ、その高さ位置で戸袋壁10cに取付板部35aを縦向きに当接し、止めねじ41をビス穴42(図2参照)に通して戸袋壁10cにねじ込みガイド本体20を固定する。
【0025】
次いで、上記引戸レールに引戸11上に搭載した戸車を係合させて、引戸D11を、開口部Sの奥行方向外側で戸袋壁10cに重ねてスライド自在に上吊りする一方、ガイド溝12に走行ガイド15のガイドローラ37を係合させて吊り込む。従って、引戸ガイド装置Gでは、この引戸11の吊り込み状態において、全閉状態にあっても、走行ガイド15のガイド本体20が引戸11に覆い重なって目隠しされ、弾性当接材30・31はガイド溝12内に固設し、結局、戸当りに必要な見栄えの悪い出っ張りがいっさい外部から見えない構成であるため、従来のように戸当りの出っ張りが室内の美的外観を阻害することがなく、引戸周りの見栄えを良好にすることができる。
【0026】
そこで、引手14に手を掛け、いま全閉状態ある引戸11を開方向Xにスライドさせて開口部Sを開いたとき、走行ガイド15のガイドローラ37がガイド溝12に係合して下部側を横振れさせることなく直進するように案内し、開口部Sを開放して全開すると、図1に示すように、走行ガイド15は、戸先側の弾性当接材30がガイド本体20の戸先側戸当り45に当たって引戸11を停止し、開口部Sが全開した開位置に位置決めする。一方、引戸11を閉方向Yにスライドさせて開口部Sを閉じるときも、走行ガイド15のガイドローラ37がガイド溝12に係合して下部側を横振れさせることなく直進するように案内し、開口部Sを閉止してから全閉すると、図8・図9に示すように、戸尻側の弾性当接材31がガイド本体20の戸尻側戸当り50に当たって引戸11を停止し、開口部Sが全閉した閉位置に位置決めする。
【0027】
従って、引戸ガイド装置Gは、上述のように引戸11が常に覆い重なる戸袋壁10cの下部に取り付けた走行ガイド15のガイドローラ37で引戸11の下部側が横振れしないように案内しながら、ガイド本体20に突設した戸当り45・50にガイド溝12内に固設した弾性当接材30・31に当てて引戸11の開閉ストロークを所定長さに制御し、これにより、引戸周りの見栄えを悪化させることなく、戸当り機能をも併せて発揮することができる。
【0028】
上記図示実施の形態において、走行ガイド15のガイド本体20には、アングル板35のガイド板部35bにおける幅方向両側の双方に戸当り45・50を突設し、これに対応し、弾性当接材30・31を、引戸11のガイド溝12内の戸先側と戸尻側の双方に固設し、開時と閉時のいずれも、戸当り45・50に弾性当接材30・31が当って引戸11を停止させる構成であった。従って、走行ガイド15を、そのようにアングル板35のガイド板部35bにおける幅方向両側の双方に戸当り45・50を突設し、弾性当接材30・31をガイド溝12に固設した構成であるため、扉が図示のように右勝手仕様の引戸(図中右側に引いて開く引戸)であっても、反対に左勝手仕様の引戸であっても、同じ走行ガイド15を、そのまま兼用することができる。しかし、本発明は、これに限らず、ガイド本体には、アングル板のガイド板部の両側縁のいずれか一方に戸当りを突設し、これに対応し、弾性当接材を、引戸のガイド溝内の戸先側と戸尻側のいずれか一方に固設し、開時又は閉時に戸当りに弾性当接材が当って引戸を停止させるようにしてもよい。
【0029】
ところで、本発明の引戸ガイド装置Gは、例えば図10に示すように、連動引戸22の構造体にも適用することができる。図示他の実施の形態では、上記図示実施の形態における構成と同一の構成に同じ符号を付して、以下に説明する。
【0030】
連動引戸構造体は、それぞれ下端部にガイド溝12・55を長さ方向に凹設した外扉Aと内扉Bからなる連動引戸22を、開閉方向にスライド自在に引戸レールに上吊りし、全開時は、戸袋壁10cの横に重ねて配列すると共に、開閉時に外扉Aと内扉Bの下部を横振れしないように案内する引戸ガイド装置G´を備えた構造になっている。
【0031】
図示他例の引戸ガイド装置G´は、連動引戸22の外扉Aと内扉Bの下端面に凹設した上記ガイド溝12・55と、外扉Aのガイド溝12に係合して外扉Aを案内する走行ガイド15と、内扉Bのガイド溝55に係合して内扉Bを案内する振れ止めガイド60を備える。外扉Aの走行ガイド15は、上述のとおり、ガイド本体20と、ガイド溝12内の戸先側と戸尻側に固設する弾性当接材30・31とからなる。ガイド本体20は、全閉位置にある外扉Aが常に重なる内扉Bの戸先側下部に取り付ける。ガイド本体20を内扉Bに取り付けるときは、床Fとの間に所定間隙を開ける内扉Bの最下端縁のラインに、アングル板35のガイド板部35bの位置を合わせて、その高さ位置で内扉Bの外側板面に取付板部35aをねじ止めする。
【0032】
ガイド本体20は、ガイド軸40の基端軸部36aをアングル板35のアジャスト穴29の第1軸受穴29aに嵌着し、ガイド板部35b上にガイド軸40を立脚させて組み立てる。そこで、図示他例の引戸ガイド装置G´は、走行ガイド15で案内する外扉Aが、例えば扉厚30〜35mmのパネルではなく、36〜40mmと一段厚肉なパネルの場合は、ガイド軸40の基端軸部36aをアングル板35のアジャスト穴29の第2軸受穴29bに嵌着し、ガイド板部35b上の取付板部35a寄りでガイド軸40を立脚させて組み立て、外扉Aの扉厚に応じてガイド軸40の立脚位置を、ガイド板部35bの突出長さ方向、引戸の吊り込み状態で云えば、外扉Aがスライドする開閉方向と直交する方向に移動調整可能な構造になっている。従って、外扉Aの扉厚に応じてガイド軸40の立脚位置を開閉方向と直交する向き移動調整することにより、外扉Aを内扉Bとの間のチリ寸法を、例えば4.5〜7mmの適切な範囲に保持して吊り込むことができる。
【0033】
他方、走行ガイドGの弾性当接材30・31は、外扉Aのガイド溝55内の戸先側と戸尻側に固設するが、図示例では、図10に示すように、連動引戸22が全開したときガイド本体20の戸当り45に当たる戸先側の戸当り位置に一方の弾性当接材30を固定する一方、図14に示すように、連動引戸22が全閉したときガイド本体20の戸当り50に当たる戸尻側の戸当り位置に他方の弾性当接材31を固定し、互いに外扉Aの開閉ストローク分の間隔をあけて固設する。
【0034】
内扉Bの振れ止めガイド60は、図13に示すように、取付板51上に立設した支軸52の上端にガイドローラ65を回転自在に軸着し、取付板51を開口部S寄りの床F上にあって内扉Bのスライド軌道上に固設する。
【0035】
図示他例では、図14に示すように、外扉Aと内扉Bにそれぞれ搭載した戸車69を引戸レール70に係合し、外扉Aと内扉Bを戸袋壁10cの横に重ねてスライド自在に上吊りする一方、外扉Aのガイド溝12に走行ガイド15のガイドローラ37を係合し、内扉Bのガイド溝55に振れ止めガイド60のガイドローラ65を係合させて吊設する。
【0036】
そこで、上述した構成の引戸ガイド装置G´は、閉時、外扉Aの引手14に手を掛け、いま全開状態ある連動引戸22の外扉Aを閉方向Yにスライドさせると、図11に示すように、ガイド溝12に係合した走行ガイド15のガイドローラ37で下部側が横振れしないで直進するように案内する。それから、外扉Aが閉方向に直進する途中で、図12に示すように、戸尻側の弾性当接材31がガイド本体20の戸尻側戸当り50に当たり、外扉Aが内扉Bを引き連れて閉方向に共にスライドする。そのとき、内扉Bは、図13に示すように、ガイド溝22に係合した振れ止めガイド60のガイドローラ65で下部側を横振れしないで直進するように案内する。その後、連動引戸22で開口部Sを閉止してから全閉すると、外扉Aは、図14に示すように、戸先側端部が戸先側の縦枠部10bに当って停止すると同時に、内扉Bは、上端面に搭載した戸車69の支持ブラケット59が引戸レール70のレール溝内に固設した戸当り75に当って停止し、連動引戸22を、開口部Sが全閉した閉位置に位置決めする。
【0037】
一方、閉時は、引手14に手を掛け、全閉状態ある連動引戸22の外扉Aを開方向Xにスライドさせると、図15に示すように、ガイド溝12に係合した走行ガイド15のガイドローラ37で下部側が横振れしないで直進するように案内する。それから、外扉Aが開方向に直進する途中で、図16に示すように、戸先側の弾性当接材30がガイド本体20の戸先側の戸当り45に当たり、外扉Aが内扉Bを押しながら開方向へと共にスライドする。そのとき、内扉Bは、図17に示すように、ガイド溝22に係合した振れ止めガイド60のガイドローラ65で下部側を横振れしないで直進するように案内する。その後、連動引戸22で開口部Sを開けて全開させると、図10に示すように、内扉Bは、戸尻側端部が戸尻側の縦枠部10dに当って停止し、外扉Aは、戸先側の弾性当接材30がガイド本体20の戸先側の戸当り45に押し当った状態で停止し、外扉Aと内扉Bを戸袋壁10cの横に重ねて配列し、連動引戸22を開口部Sが全開した開位置に位置決めする。
【0038】
従って、図示他例の引戸ガイド装置G´では、連動引戸22の吊り込み状態において、連動引戸22が全閉状態にあっても、走行ガイド15のガイド本体20は外扉Aに覆い重なって目隠しされ、弾性当接材30・31はガイド溝12内に固設し、連動機構や戸当りに必要な見栄えの悪い出っ張りがいっさい外部から見えない構成であるため、従来のように戸当りの出っ張りが室内の美的外観を阻害することがなく、連動式の引戸周りの見栄えを良好にすることができる。
【符号の説明】
【0039】
A 外扉
B 内扉
F 床
G・G´ 引戸ガイド装置
S 開口部
11 引戸
12・55 ガイド溝
15 走行ガイド
20 ガイド本体
22 連動引戸
29 アジャスト穴
29a・29b 軸受穴
30・31 弾性当接材
35 アングル板
35a 取付板部
35b ガイド板部
37 ガイドローラ
40 ガイド軸
45・50 戸当り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部にガイド溝を長さ方向に凹設した引戸を開閉方向にスライド自在に上吊りし、前記ガイド溝に走行ガイドを係合して開閉時に引戸の下部側が横振れしないように案内する引戸ガイド装置であって、
前記走行ガイドは、全閉状態でも引戸が常に重なる戸袋壁の下部に付設するガイド本体と、前記ガイド溝内の閉方向戸先側と戸尻側のいずれか一方又は双方に固設する弾性当接材とを備え、
前記ガイド本体は、前記戸袋壁の下部に固定する取付板部と、該取付板部の下端縁から直角に突出するガイド板部からなるアングル板と、前記ガイド溝に係合させるガイドローラを先端軸部に回転自在に軸着する一方、基端軸部を前記ガイド板部に設けた軸受穴に嵌着させて前記ガイド板部上に立脚するガイド軸とを有し、
前記アングル板には、前記ガイド板部の両側縁のいずれか一方又は双方に戸当りを突設し、開閉時に該戸当りに前記弾性当接材が当って引戸を停止させてなることを特徴とする引戸ガイド装置。
【請求項2】
前記アングル板は、前記ガイド板部に複数の前記軸受穴を突出方向に連設して互いに連通するアジャスト穴を形成し、引戸の戸厚に応じて前記ガイド軸の立脚位置を開閉方向と直交する向きに移動調整可能としてなることを特徴とする、請求項1に記載の引戸ガイド装置。
【請求項3】
それぞれ下端部にガイド溝を長さ方向に凹設した外扉と内扉からなる連動引戸を、開閉方向にスライド自在に上吊りすると共に横に重ねて配列する一方、前記ガイド溝に走行ガイドを係合して連動引戸の下部側が横振れしないように案内し、手前側の外扉をスライドさせると、隣接する奥側の内扉が遅れて順次連動して開口部を開閉する引戸ガイド装置であって、
外扉を案内する前記走行ガイドは、全閉位置にある外扉が重なる内扉の戸先側下部に付設するガイド本体と、外扉の前記ガイド溝内の閉方向戸先側と戸尻側に固設する弾性当接材とを備え、
前記ガイド本体は、内扉の戸先側下部に固定する取付板部と、該取付板部の下端縁から直角に突出するガイド板部からなるアングル板と、前記ガイド溝に係合させるガイドローラを先端軸部に回転自在に軸着する一方、基端軸部を前記ガイド板部に設けた軸受穴に嵌着させて前記ガイド板部上に立脚するガイド軸とを有し、
前記アングル板には、前記ガイド板部の両側縁に戸当りを突設し、開閉時に外扉をスライドさせると該戸当りに前記弾性当接材が当って外扉に内扉を連動させてなることを特徴とする引戸ガイド装置。
【請求項4】
前記アングル板は、前記ガイド板部に複数の前記軸受穴を突出方向に連設して互いに連通するアジャスト穴を形成し、外扉の扉厚に応じて前記ガイド軸の立脚位置を開閉方向と直交する向きに移動調整可能としてなることを特徴とする、請求項3に記載の引戸ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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