説明

引戸用幕板の取付構造

【課題】引戸に制動力が作用した場合に、この制動力に伴う引戸の跳ね上げを簡単かつ効果的に抑制することができる引戸の跳ね上げ抑制装置を提供する。
【解決手段】ガイドレール3と、ガイドレール3と引戸1との間の隙間Sを前方から覆う幕板5とを備える。ガイドレール3は、レール本体31と、レール本体31から前方に突出するとともにこの突出部分において上方に開口する係合溝部32aが設けられた係合突条部32とを有する。幕板5は、幕板本体51と、この幕板本体51から後方に突出する幕板突出部52と、この幕板突出部52先端から下方に突出する差込突片部53とを有しする。幕板5をガイドレール3に取り付けた状態で、幕板5の上端とその上方の戸枠上部21までの高さは、差込突片部53の係合溝部32aに対する差込長さよりも短く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や家具などの構造物の開口部を開閉する引戸とこの引戸の上部を案内するレール部材との間の隙間を前後少なくともいずれか一方から覆う幕板の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物などの開口部を開閉する引戸において、上記開口部の上辺部である上部戸枠に沿って配置されたレール部材と、ガイドローラを含み引戸上部に取り付けられたガイド体とを備え、ガイド体のガイドローラをレール部材に沿って案内することによって、引戸上部を案内する引戸ガイド装置が多く見受けられるようになっている。
【0003】
このような引戸ガイド装置においては、引戸とレール部材との間に隙間を生じることがあり、このような隙間は外観体裁の悪化をもたらすばかりでなく、この隙間を通じた光漏れが生じることから、このような隙間を前方ないしは後方から覆う幕板が設けられることが多い。
【0004】
このような幕板は、例えば特許文献1に示されるような構造でレール部材に取り付けられる。すなわち、従来の幕板の取付構造においては、レール部材の上板部の上面に前方へ開口した凹所を形成し、該レール部材の上板部を取付天面に取着し、同レール部材の前方に配設される幕板の後側に水平片を突設し、該水平片を前記凹所に前後方向スライド自在に挿入し、同レール部材の上板部の凹所部分に下方より挿通される螺子体を取付天面にねじ込んで、前記凹所内の水平片を同取付天面とレール部材の上板部との間に挟持固定してなるものが知られている。
【0005】
この幕板の取付構造においては、レール部材の取付箇所に応じてレール部材に対する幕板の脱着を判断することができ、このため幕板がレール部材と一体化されているものと比べて、現場状況に応じて対応し易いという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−217182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の幕板の取付構造においては、レール部材と幕板との相互位置を調節した上で螺子体をねじ込まなければならず、現場における作業が面倒であり、作業効率の面で問題があった。
【0008】
この場合、例えば幕板の背面に長手方向に沿った横溝が設けられ、この横溝がレール部材に設けられた突条に横方向から嵌合されることにより簡易に取り付けられるものなども想定されるが、引戸の開閉に伴う振動等により嵌合状態が解除されて脱落することも考えられる。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、引戸とレール部材との間の隙間を前後一方から覆う幕板について、簡易に取り付けることができ、しかも取り付けた後には確実に脱落を防止することができる引戸用幕板の取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明に係る引戸用幕板の取付構造において、開口部の上辺に沿って配置され、引戸の上部に取り付けられたガイド体を案内するレール部材と、このレール部材と上記引戸との間の隙間を少なくとも前後一方から覆う幕板とを備えた引戸用幕板の取付構造において、上記レール部材は、上記開口部上辺に取り付けられるレール本体と、上記レール本体から上記幕板側に突出するとともにこの突出部分において上方に開口する係合溝部が長手方向に沿って設けられた係合突出部とを有し、上記幕板は、幕板本体と、この幕板本体から上記レール部材側に突出する幕板突出部と、この幕板突出部から下方に突出して少なくとも先端部が上記係合溝部に係脱することにより上記幕板を上記レール部材に着脱自在に取り付ける差込突出部とを有し、上記幕板をレール部材に取り付けた状態で、上記幕板の上端とその上方の上記開口部上辺までの高さは、上記差込突出部の係合溝部に対する差込長さよりも短く設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、レール部材における上方に開口する係合溝部に、幕板における下方に突出する差込突出部が係脱することにより、上記幕板を上記レール部材に着脱自在に取り付けることができるため、取付現場に応じて幕板の有無を判断してレール部材に幕板を脱着することができる。しかも、差込突出部を係合溝部に差し込むだけで幕板をレール部材に取り付けることができるため、比較的容易に幕板をレール部材に取り付けることができる。
【0012】
また、上記幕板をレール部材に取り付けた状態で、上記幕板の上端とその上方の上記開口部上辺までの高さは、上記差込突出部の係合溝部に対する差込長さよりも短く設定されているので、開口部上辺にレール部材が取り付けられた状態においては、幕板をレール部材から取り外そうとしても幕板上端がその上方の開口部上辺に干渉することにより、幕板の取り外しが阻害される。言い換えれば、幕板取付状態のレール部材が開口部上辺に取り付けられれば、レール部材からの幕板の脱落を確実に防止することができる。
【0013】
すなわち、この発明によれば、レール部材に幕板を容易に取り付けることができ、幕板取付状態のレール部材を開口部上辺に取り付けた後は、この幕板のレール部材からの脱落を確実に防止することができる。
【0014】
この発明において、上記係合突出部は、上記レール本体の前後いずれか一方の側面に設けられているものであってもよいが、上記係合突出部は、上記レール本体の前後両側面にそれぞれ設けられているのが好ましく、この場合、上記幕板はいずれかの上記係合突出部に取り付けられる。
【0015】
上記係合突出部がレール本体の前後いずれか一方の側面に設けられている場合には、幕板配置方向に応じて垂直軸を中心にレール本体を旋回させることにより幕板の配設位置を調整することができるものの、上記のように構成すれば、上記のような旋回も不要となり、現場における作業性をさらに改善することができる。
【0016】
この発明において、上記幕板突出部及び差込突出部は、上記レール部材の長手方向に沿って散点的、或いは所定箇所に設けられるものであってもよいが、これらの幕板突出部及び差込突出部は、上記レール部材の長手方向に沿って連続して設けられているのが好ましい。
【0017】
このように構成すれば、レール部材の長手方向に沿って連続して設けられたこれらの突出部のうちの幕板突出部が係合溝部に差し込まれることにより、幕板のレール部材に対する取付安定性が更に向上する。
【0018】
この発明において、上記幕板はその差込突出部がレール部材の係合突出部に差し込まれることのみによって、レール部材に係合されるものであってもよいが、幕板とレール部材との係合は差込突出部と係合突出部との係合だけに限定されるものではない。例えば上記幕板は、上記幕板突出部の下方において上記レール部材側に突出して上記係合突出部の側面に当接する幕板係合補助部を更に有し、この幕板係合補助部が係合突出部の側面に当接することによっても幕板とレール部材とが係合しているものであってもよい。
【0019】
このように構成すれば、幕板係合補助部が係合突出部の側面に当接することにより、幕板がレール部材において2点において当接支持され、これにより幕板のレール部材の取付安定性をさらに向上させることができる。
【0020】
なお、この発明において、例えば以下のように構成することによっても、所定の作用効果を得ることができる。
【0021】
この発明において、上記係合溝部は無底溝として構成されている(係合突出部を上下に貫通して構成されている)ものであってもよく、差込突出部を差込可能に構成されていればその具体的構成は特に限定されるものではなく、また上記差込突出部の係合溝部に対する差込の程度も特に限定されるものではないが、上記係合溝部は有底溝として構成され、上記差込突出部はこの係合溝部の下部にまで差し込まれるのが好ましい。
【0022】
このように構成すれば、係合溝部が有底溝として構成されているので下方からの見栄えが良好になるばかりでなく、差込突出部が係合溝部の下部にまで差し込まれることによりこの差込突出部と係合突出部とを十分に係合させることができ、幕板の取付安定性を向上させることができる。
【0023】
幕板係合補助部を設ける場合、幕板係合補助部の下面の位置は特に限定されるものではないが、上記幕板係合補助部の下面は、上記幕板をレール部材に取り付けた状態で、上記係合突出部の下面と面一になるように構成されているのが好ましい。なお、ここでいう「面一」とは、完全に面一になっている場合の他、略面一になっている場合も含まれる。
【0024】
このように構成すれば、幕板係合補助部の下面と係合突出部の下面とが面一に構成されるので、下方から見た場合に両者の間に段差が生じることがなく、見栄えがさらに良好になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る引戸用幕板の取付構造によれば、レール部材に幕板を容易に取り付けることができ、幕板取付状態のレール部材を開口部上辺に取り付けた後は、この幕板のレール部材からの脱落を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る引戸用幕板の取付構造を示す断面図である。
【図2】同取付構造を一部断面で示す正面図である。
【図3】同取付構造が適用される引戸とそのガイドユニットとを一部分解した状態で示す斜視図である。
【図4】同取付構造に用いられるレール部材と幕板とを取付前の状態で示す斜視図である。
【図5】同取付構造におけるレール部材を示す側面図である。
【図6】同取付構造における幕板を示す側面図である。
【図7】同取付構造における変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の引戸用幕板の取付構造は、上端部がガイドレールに案内される、戸車付き下支え形式の引戸について適用したものであるが、下戸車なしの非吊下式引戸や、吊下式引戸等、その他引戸にも当然に適用することができる。また、本実施形態に記載の引戸上部を案内するガイド部材は、引戸の開閉動作の少なくともいずれか一方の動作をアシストするスライドアシスト装置を兼用するものであるが、単に引戸上部をガイドするだけのものであっても良く、また引戸と戸枠の衝突を緩和させるための引戸のスライド終期に引戸に制動力を付与する引戸緩衝装置を兼用するものであってもよい。なお、このスライドアシスト装置は、引戸に対し閉止方向についてスライドアシスト力を付与するものとなされているが、開放方向についてアシスト力を付与するものであってもよい。もちろん、開閉各方向についてスライドアシスト力を付与するスライドアシスト装置をともに引戸に設けるものであってもよい。
【0028】
図1は、本実施形態の引戸用幕板の取付構造を示す断面図である。図2は、同取付構造を一部断面で示す正面図である。
【0029】
まず、本実施形態の引戸用幕板の取付構造が適用される引戸の構造について簡単に説明する。引戸の構造は、建物の開口部を開閉する引戸1と、この引戸1が内側でスライド移動する戸枠2とを備える。
【0030】
引戸1は、パネル状の戸本体11と、戸本体11の下部に取り付けられた左右一対の下戸車(不図示)とを備える。なお、この下戸車には高さ調節機構が設けられ、例えば経年によって戸枠(特に側部内面)との間に隙間が生じた場合でも下戸車の高さ調節機構を調節することにより戸本体を傾きを変えて閉め残しを解消することができるものとなされている。
【0031】
この引戸1の頂部には、図2及び図3に示すように、第1及び第2ガイドユニット12,13が上方に突出する態様で取り付けられている。これらの第1及び第2ガイドユニット12,13は、引戸1の頂部に埋設された引戸固定体12a,13aと、この引戸固定体12a,13aから上方に延びる取付ボス部12b,13bと、この取付ボス部12b,13bの上端部に螺子などで取り付けられたガイド本体12c,13cとを有する。これらの第1及び第2ガイドユニット12,13は、ガイド本体12c,13cに左右に複数設けられた前後一対のガイドローラ12d,13dが、後述するガイドレール3内を転動することにより、ガイドレール3に沿って引戸1の上部を開閉動作に伴って案内するものとなされている。
【0032】
なお、第1ガイドユニット12は、引戸1のスライドアシスト機能を有するものである。具体的には、第1ガイドユニット12は、ガイドレール3の天面に下方に突出して設けられた受け部材4と協働することにより、ガイド本体12c内の弾性部材(不図示)の付勢力を蓄積または解放可能に構成され、引戸1の閉止速度が速い場合などは付勢力が解放される際にガイド本体12cに受け部材4が係合してガイド本体12cに制動力が作用するようになされているとともに、上記解放された付勢力をスライドアシスト力として引戸1に対して付与されるようになっている。
【0033】
一方、戸枠2は、構造物の開口部を構成するものである。この戸枠上部21の下面によって、開口部の上辺が構成されている。この戸枠上部21には、開口部上辺に沿って下方に開口する埋設溝22が延設されている。この埋設溝22には、ガイドレール3(レール部材に相当)がその上側を嵌合されることにより、戸枠上部21から下方に突出した状態で設置されている。従って、ガイドレール3は、開口部上辺に沿って配置されている。埋設溝22の深さは、このガイドレール3と後述する幕板5との取付構造に応じて適宜設定される。この点については、後に詳述する。
【0034】
本実施形態の引戸用幕板の取付構造は、この戸枠上部21と、戸枠上部21の埋設溝22に設置されたガイドレール3と、このガイドレール3に取り付けられる幕板5とを含んで構成され、ガイドレール3に対する幕板5の取付、及びこの幕板5が取り付けられたガイドレール3の戸枠上部21に対する取り付けを工夫することにより、幕板5のガイドレール3に対する取り付けを容易にするとともに、ガイドレール3の設置後の幕板5の脱落を確実に防止するものとなされている。以下、この引戸用幕板の取付構造について、詳細に説明する。
【0035】
まず、ガイドレール3について、図1及び図2に加え、図4及び図5を用いて説明する。図4はガイドレールと幕板とを両者取付前の状態で示した斜視図であり、図5はレール部材を示す側面図である。
【0036】
ガイドレール3は、戸枠上部21に沿って延びる長尺部材であり、該戸枠上部21の長さにあわせて寸法設定されている。このガイドレール3は、アルミなどの金属によって構成されていてもよいが、本実施形態では、引戸1の重量を支持する必要がないことから、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene:アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)等の合成樹脂によって構成されている。
【0037】
ガイドレール3は、図4及び図5に明示するように、戸枠上部21の埋設溝22に上部が嵌入された状態で配置されるレール本体31と、レール本体31の前後各側面壁に外方に向かって突出する係合突条部32(係合突出部に相当)とを備え、これらがABS樹脂等の合成樹脂成形品として一体に構成されている。
【0038】
レール本体31は、天板部35と、天板部35の前後両端縁から垂下された前後側面壁部36と、この前後側面壁部36の下端から互いに内側に延出するガイドフランジ部37とを備え、各ガイドフランジ部37の先端が所定の間隔を隔てて配置されることにより、これらの先端間に引戸1の開閉操作に伴って第1及び第2ガイドユニット12,13の取付ボス部12b,13bが挿通されるガイド溝38が構成されている。
【0039】
天板部35は、天板本体35aと、この天板本体35aの前後幅方向中央部が上方に膨出して構成された重合取付部35bと、天板本体35aの前後両端縁において上方に突設された突出リブ部35cとを備え、ガイドレール3が戸枠上部21に取り付けられた状態においては重合取付部35bの上面と突出リブ部35cの上端とが戸枠上部21の埋設溝22の底面に当接するものとなされている。なお、天板部35の重合取付部35bには、長手方向に沿った適宜箇所にねじ挿通孔35eが設けられ、このねじ挿通孔35eを通じてねじが戸枠上部21(具体的には埋設溝22の底部)にねじ込まれることにより、ガイドレール3が戸枠上部21に固定される。
【0040】
ガイドフランジ部37は、下方に突出する湾曲状に構成され、先端部が斜め上方に指向するように設定されている。このガイドフランジ部37は、その上面に引戸1の開閉操作に伴って、ガイドユニット12,13のガイドローラ12d,13dが転動するものとなされている。
【0041】
一方、係合突条部32(係合突出部に相当)は、上述したように、レール本体31の前後両側面壁部36に設けられているが、これは前後対称であるので、ここでは前側(図4で手前側、図5で右側)のものについて説明する。
【0042】
係合突条部32は、幕板5と係合して該幕板5を取り付けるものであり、レール本体31の前側面壁部36の下端部外面にレール本体31の長手方向に沿って連続して設けられている。この係合突条部32は、上方に開口する係合溝部32aが長手方向に沿って連続して設けられ、この係合溝部32aに幕板5の後述する差込突片部53が挿入されることにより幕板5がガイドレール3に取り付けられる。
【0043】
係合溝部32aは、無底溝であってもよいが、本実施形態では有底溝として構成されている。このため、下方からガイドレール3を観察してもこの係合溝部32aの存在を認識することができず、無底溝として下方から溝の存在を確認できる場合に比べて、外観体裁を良好に保つことができる。
【0044】
この係合溝部32aが設けられる前後方向の具体的箇所は、特に限定されるものではなく、幕板5の差込突片部53が係合可能であれば特に限定されるものではない。本実施形態では、係合溝部32aは、係合突条部32の上面におけるレール本体31側の端部に凹設され、レール本体31の前側面壁部36の外面とともに溝部が構成されている。
【0045】
また、係合突条部32は、その係合溝部32aの外側(前側)の開口端部内面にレール本体31側に突出するレール側クリック突条32bが突設されている。このレール側クリック突条32bは、段面視略半円状に構成され、差込突片部53の後述する幕板側クリック突条53aが乗り越えることによりクリック感を得られるとともにガイドレール3と幕板5との係合解除の防止機能を果たしている。
【0046】
次に、幕板5について、図1及び図2に加え、図4及び図6を用いて説明する。図6は、幕板を示す側面図である。本実施形態では、幕板5はガイドレール3の前後いずれの係合突条部32に対しても取り付けることが可能であり、もちろん前後両方の係合突条部32に対しても取り付けることも可能であるが、ここでは前側の係合突条部32に対して取り付ける場合を前提に説明する。なお、後側の係合突条部32に幕板5を取り付ける場合も、前後反転させるだけである。
【0047】
幕板5は、図1及び図2に示すように、ガイドレール3と引戸1の上端部との間の隙間Sを前方から覆って、外観体裁を向上させるとともにこの隙間Sを通じた光漏れを防止するものとなされている。この幕板5は、ガイドレール3に沿って延びる長尺部材であり、ガイドレール3の長さにあわせて寸法設定されている。また、幕板5は、アルミなどの金属によって構成されていてもよいが、本実施形態では、ガイドレール3と同様に、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene:アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)等の合成樹脂によって構成されている。
【0048】
幕板5は、図4及び図6に明示するように、ガイドレール3に沿って延びる長尺板状の幕板本体51と、この幕板本体51の上端からガイドレール3側(図4では後側)に突出する幕板突出部52と、この幕板突出部52から下方に突出してこの突出部分が係合突条部32の係合溝部32aに抜き差しされる差込突片部53(差込突出部に相当)と、幕板突出部52の下方においてガイドレール3側に突出して係合突条部32の側面に当接する幕板係合補助片54(幕板係合補助部に相当)とを備え、これらがABS樹脂等の合成樹脂成形品として一体に構成されている。
【0049】
幕板本体51は、上記のようにガイドレール3に沿って延びる長尺板状体であり、上下方向の長さがガイドレール3と引戸1の上端部との間の隙間Sを前方から覆うのに十分な長さに設定される。ここでは、幕板本体51の下端部が引戸1の上端部側面に位置するように設定されている。
【0050】
幕板突出部52は、本実施形態では幕板本体51の上端から該本体51に対して垂直後方に向かって延出した舌状部である。この幕板突出部52は、ガイドレール3の長手方向に沿って部分的に設けられるものであってもよいが、本実施形態ではガイドレール3の長手方向に連続して設けられている。
【0051】
また、この幕板突出部52の突出量は、ガイドレール3の係合溝部32aを考慮して適宜定められる。本実施形態では、幕板突出部52の突出量は、幕板本体51がガイドレール3の係合突条部32の側面(前側面)から離間するように調整されている。
【0052】
一方、差込突片部53は、ガイドレール3の係合突条部32に設けられた係合溝部32aに係脱可能に差し込まれるものであり、これにより幕板5をガイドレール3に着脱自在に取り付けるものである。この差込突片部53は、幕板突出部52の先端から垂直下方に垂下して延在し、ガイドレール3の長手方向に連続して設けられている。
【0053】
差込突片部53の一側面(図6では前側面)には、幕板本体51側(図1では前側)に突出する幕板側クリック突条53aが突設されている。この幕板側クリック突条53aは、段面視略半円状に構成され、ガイドレール3の係合突条部32におけるレール側クリック突条32bを乗り越えることによりクリック感を得られるとともにガイドレール3と幕板5との係合解除の防止機能を果たしている。
【0054】
また、差込突片部53の突出量は、ガイドレール3の係合突条部32における係合溝部32aの深さに応じて設定される。本実施形態では、差込突片部53の突出量は、幕板5をガイドレール3に取り付けた状態で、差込突片部53の先端部が係合溝部32aの底部に位置するように調整されている。なお、この差込突片部53の突出量は、ガイドレール3を戸枠上部21に取り付ける場合に、幕板5の上端とその上方の戸枠上部21までの高さを設定する場合の基準になる。本実施形態では、幕板5の上端とその上方の戸枠上部21までの高さが僅かに(略ゼロに)、言い換えると幕板5の上端が戸枠上部21に略当接した状態に設定されている。
【0055】
幕板係合補助片54は、差込突片部53が係合溝部32aに差し込まれた状態で、先端面54aがガイドレール3の一側面、本実施形態では係合突条部32の前面に当接することにより幕板本体51の姿勢維持を補助するものである。この幕板係合補助片54は、幕板本体51の中間部分から該本体51に対して垂直後方に向かって延出した舌状部であり、このため幕板突出部52と略平行に延在している。この幕板係合補助片54は、ガイドレール3の長手方向に沿って部分的に設けられるものであってもよいが、本実施形態ではガイドレール3の長手方向に連続して設けられている。
【0056】
また、幕板係合補助片54が突設される幕板本体51における高さ位置は、特に限定されるものではないが、図6に示すように、差込突片部53の先端に対応(略対応も含む)して設けられている。特に、本実施形態では、幕板5をガイドレール3に取り付けた状態で、幕板係合補助片54の下面が、ガイドレール3の係合突条部32の下面に面一(略面一も含む)になるように構成されている。このため、幕板5のガイドレール3に対する取付剛性が向上するとともに、外観体裁の悪化を防止することができる。
【0057】
また、この幕板係合補助片54は、先端部に上方に突設された補助リブ54bを含み、この補助リブ54bにより幕板係合補助片54の剛性を向上させるとともに補助片54の先端面における係合突条部32に対する当接面を増加させて幕板本体51の姿勢をより確実に保持させている。
【0058】
次に、ガイドレール3と幕板5との取り付け、この幕板5付きガイドレール3の戸枠上部21に対する取り付け、およびこれらの位置関係について説明する。
【0059】
まず、図1,図4に基づいて、幕板5のガイドレール3に対する取り付けについて説明する。この幕板5のガイドレール3に対する取り付けは、ガイドレール3を戸枠上部21の埋設溝22に取り付ける前に行われる。
【0060】
ガイドレール3及び幕板5は、ともに長尺の連続した部材であるため、幕板5の差込突片部53をガイドレール3の係合突条部32における係合溝部32aに差し込むには、長手方向の一端部から他端部にかけて順次差し込むことにより行われる。具体的には、ガイドレール3及び幕板5の長手方向の位置を揃えた上で、幕板5の一端部から差込突片部53を係合溝部32aに順次差し込んでいく。この差し込みにあたっては、差込突片部53の差込に伴い、幕板側クリック突条53aとレール側クリック突条32bとが干渉し、係合突条部32の外側壁が弾性変形して幕板側クリック突条53aがレール側クリック突条32bを乗り越えることによりクリック感を得ることができる。
【0061】
次に、この幕板5付きガイドレール3を戸枠上部21に取り付ける。この戸枠上部21には、上述したように開口部の上辺に沿って延びる埋設溝22が設けられている。この埋設溝22の深さは、図1に示すように、幕板5付きガイドレール3のレール本体31を埋設溝22内に設置した状態で、幕板5の上端部と戸枠上部21の下面との間の間隔H1が所定の間隔(図1では略ゼロ)となるように寸法設定されている。本実施形態では、ガイドレール3を埋設溝22に設置した状態で、レール本体31の係合突条部32の上面と戸枠上部21との上面との間隔が幕板突出部52の厚みと上記間隔H1との和に略等しくなるように設定されている。
【0062】
そして、この間隔H1については、幕板5における差込突片部53の係合溝部32aに対する差込量H2よりも小さく設定され、好ましくは差込量H2の半分以下に設定されている。更に好ましくは、本実施形態のように、上記間隔H1はゼロないしは略ゼロに設定されるのが好ましい。
【0063】
このような戸枠上部21の埋設溝22に対して、幕板5付きガイドレール3を上部から嵌め込み、ねじ挿通孔35eを通してねじを埋設溝22の底面にねじ込むことにより、該ガイドレール3を戸枠上部21に取り付ける。
【0064】
この取付け状態では、図1及び図2に明示するように、幕板5が引戸1とガイドレール3との隙間Sを前方から覆うことができ、この隙間Sが露出している場合に比べて外観体裁を良好にすることができ、またこの隙間Sを通じた光漏れを効果的に防止することができる。
【0065】
また、この幕板5付きガイドレール3を戸枠上部21に取り付けた状態では、幕板5の上端とその上方の戸枠上部21の下面までの高さ(間隔H1)は、幕板5の差込突片部53の係合溝部32aに対する差込長さ(差込量H2)よりも短くなっている。このため、この取付け状態においては、幕板5をガイドレール3から取り外すために幕板5を上方に移動させようとしても、幕板5の上端がその上方の戸枠上部21に干渉することになり、幕板5の差込突片部53をガイドレール3の係合突条部32における係合溝部32aから抜出させることができず、幕板5の取り外しが阻害される。すなわち、幕板5のガイドレール3からの脱落を確実に防止することができる。
【0066】
さらに、本実施形態の引戸用幕板の取付け構造によれば、ガイドレール3を戸枠上部21に取り付ける前においては、ガイドレール3の係合溝部32aに、幕板5の差込突片部53を抜き差しすることにより、幕板5をガイドレール3に脱着することができ、取付現場に応じて幕板5の有無を判断してガイドレール3に幕板5を取り付けることができる。すなわち、ガイドレール3を取り付ける箇所によっては、ガイドレール3と引戸1との間の隙間Sが例えば溝内に収容されて外観上表出しない場合もあり、このような場合には幕板5の取付けを省略することができ、また上記隙間Sが外観上表出する場合には該幕板5を非常に簡単に取り付けることができ、その取扱いの利便性を向上させることができる。加えて、本実施形態では、幕板5を前後いずれの係合突条部32に対しても取り付けることができるので、いずれの方向に引き開きされる引戸に対しても適切に幕板を配置することができ、より一層、取り扱いの利便性を向上させることができる。また、幕板5をレール本体31に対して後付することができるので、レール本体31に受け部材4用の取付孔を予め穿設してても、ガイドレール3の取付の際に問題となることもなく、この点においても取り扱いの利便性を向上させることができる。
【0067】
すなわち、本実施形態の引戸用幕板の取付構造によれば、ガイドレール3に幕板5を容易に取り付けることができ、幕板5を取り付けた状態のガイドレール3を戸枠上部21(より具体的には埋設溝22)に取り付けた後は、この幕板5のガイドレール3からの脱落を確実に防止することができる。
【0068】
また、この幕板5の取付構造において、幕板突出部52及び差込突片部53がともにガイドレール3の長手方向に沿って連続して設けられているので、これらの各部52,53の剛性を向上させることができるとともに、外観も長手方向に均一にすることができて見た目も良好に維持することができ、加えて幕板5はガイドレール3に対して長手方向に連続して係合させることができるので、取付安定性をさらに向上させることができる。
【0069】
さらに、幕板5は、ガイドレール3に対して、差込突片部53による係合溝部32aの係合に加え、幕板係合補助片54によっても係合突条部32の側面に係合しているので、幕板5がガイドレール3に対して2点において当接支持され、これにより幕板5のガイドレールの取付安定性をさらに向上させることができる。
【0070】
なお、以上に説明した引戸用幕板の取付構造は、本発明の引戸用幕板の取付構造の一実施形態であり、その具体的構成等についてはその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、本実施形態の変形例について説明する。
【0071】
(1)上記実施形態のガイドローラ12d,13dは、前後一対設けられたものを用いているが、前後いずれか一方に設けられたものであっても良い。この場合には、ガイドレール3は、本実施形態のようにガイドローラ12d,13dを支持するガイドフランジ部37が前後一対設けられたものではなく、前後いずれか一方に設けるだけで足りる。
【0072】
また、上記実施形態では、第1および第2のガイドユニット12,13について、ガイドローラ12d,13dが設けられたものについて説明しているが、このガイドローラ12d,13に代えて、ガイドレール3内をスライドする滑り部材を設けてもよい。要するにガイドユニット12,13は、引戸1の上部をガイドレール3に沿って案内できるものであれば、その具体的構成は特に限定されるものではない。
【0073】
(2)上記実施形態では、戸枠上部21に埋設溝22が設けられ、この埋設溝22内にガイドレール3が設置されたものについて説明したが、図7に示すように、埋設溝が設けられておらず、戸枠上部の下面に設置されるものであってもよい。
【0074】
図7は、他の実施形態における引戸用幕板の取付構造を示す。この幕板の取付構造においては、戸枠上部21の下面に配置されたガイドレール103と、このガイドレール103と引戸との隙間を前方から覆う幕板105とを備える。ガイドレール103は、レール本体131と、レール本体131の高さ方向略中央部から前方に向かって突設された係合突条部132とが設けられている。
【0075】
一方、幕板105は、レール本体131の高さよりも上下に長い幕板本体151と、幕板本体151の中間部分において後方に突出する幕板突出部152と、幕板突出部152の先端から下方に突設された差込突片部153とを備え、この差込突片部153が上記係合突条部132の係合溝部132aに抜脱されることにより幕板105をガイドレール103に係脱できるものとなされている。
【0076】
そして、幕板105付きガイドレール103を戸枠上部21に取り付けた状態においては、幕板105の上端が戸枠上部21の下面に当接して差込突片部153の抜出方向である上方への移動が阻害されるため、上記実施形態と同様に、幕板105の取付容易性と、ガイドレール3の設置後における幕板105の脱落回避を両立することができる。
【0077】
なお、この他の実施形態における取付構造では、幕板105の上端が戸枠上部21の下面に当接するものとなされているが、差込突片部153の差込量よりも短ければ、幕板105の上端と戸枠上部21の下面との間に隙間を設けるものであってもよい。この点は、先に説明した上記実施形態でも同様であることは言うまでもない。
【0078】
また、上記実施形態では、ガイドレール3の係合突条部32は、前後両側に設けられるものについて説明したが、この他の実施形態のようにガイドレール103の前面(または後面)に係合突条部132を設けるものとしてもよい。
【0079】
ただし、ガイドレールの前後両側に設けた場合には、幕板の設置箇所に応じてガイドレール等を旋回させる必要がないので、現場における作業性を改善することができる。
【0080】
さらに、上記実施形態およびこの他の実施形態においては、幕板5,105の幕板係合補助片54,154は、ガイドレール3,103の係合突条部32,132の側面に当接するものとなされているが、ガイドレール3に対する当接箇所は係合突条部32に限定されるものではない。例えば、図7に示す他の実施形態において、幕板係合補助片を、図7に示す位置よりも下方に設定して、該幕板補助片の先端面がレール本体131の前側面と当接するようにしてもよい。
【0081】
(3)上記実施形態では、引戸固定体12a,13aが引戸1の頂部に埋設されたものとなされているが、この固定体12a,13aの引戸1に対する固定位置は本実施形態におけるものに限定されるものではなく、例えば引戸の正面(又は背面)等であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
S 隙間
1 引戸
2 戸枠
3 ガイドレール(レール部材に相当)
5 幕板
12、13 第1及び第2ガイドユニット(ガイド体に相当)
21 戸枠上部(開口部上辺に相当)
31 レール本体
32 係合突条部(係合突出部に相当)
32a 係合溝部
51 幕板本体
52 幕板突出部
53 差込突片部(差込突出部に相当)
54 幕板係合補助片(幕板係合補助部に相当)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の上辺に沿って配置され、引戸の上部に取り付けられたガイド体を案内するレール部材と、このレール部材と上記引戸との間の隙間を少なくとも前後一方から覆う幕板とを備えた引戸用幕板の取付構造において、
上記レール部材は、上記開口部上辺に取り付けられるレール本体と、上記レール本体から上記幕板側に突出するとともにこの突出部分において上方に開口する係合溝部が長手方向に沿って設けられた係合突出部とを有し、
上記幕板は、幕板本体と、この幕板本体から上記レール部材側に突出する幕板突出部と、この幕板突出部から下方に突出して少なくとも先端部が上記係合溝部に係脱することにより上記幕板を上記レール部材に着脱自在に取り付ける差込突出部とを有し、
上記幕板をレール部材に取り付けた状態で、上記幕板の上端とその上方の上記開口部上辺までの高さは、上記差込突出部の係合溝部に対する差込長さよりも短く設定されていることを特徴とする引戸用幕板の取付構造。
【請求項2】
上記係合突出部は上記レール本体の前後両側面にそれぞれ設けられ、上記幕板はいずれかの上記係合突出部に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の引戸用幕板の取付構造。
【請求項3】
上記幕板突出部及び差込突出部は、上記レール部材の長手方向に沿って連続して設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の引戸用幕板の取付構造。
【請求項4】
上記幕板は、上記幕板突出部の下方において上記レール部材側に突出して上記係合突出部の側面に当接する幕板係合補助部を更に有していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の引戸用幕板の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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