説明

引戸連動装置

【課題】メンテナンスを省いて長期間使用できる引戸連動装置を提供する。
【解決手段】2枚の引戸A,Bを連動して開閉可能とした引戸連動装置に於て、上枠に開閉移動自在に吊り下げた引戸A,Bの各々に固着したラック2A,2Bと、ラック2A,2Bに噛合して引戸A,Bの走行代を差動しつつ連動させると共に上枠側の所定固定位置に回転自在に設けられた歯車群10と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸連動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤを用いた引戸連動装置を備える2連式連動引戸が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−233597公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の引戸連動装置は、ワイヤが弛んで離脱する虞れがあり、故障が頻発するという欠点があった。また、故障を防止するために定期的にワイヤの張りを調整するメンテナンスが必要であった。このようなメンテナンスは、厄介な作業であり、多大な手間と時間を浪費していた。
【0005】
そこで、本発明は、メンテナンスを省いて長期間使用できる引戸連動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2枚の引戸を連動して開閉可能とした引戸連動装置に於て、上枠に開閉移動自在に吊り下げた引戸の各々に固着したラックと、該ラックに噛合して上記引戸の走行代を差動しつつ連動させると共に上記上枠側の所定固定位置に回転自在に設けられた歯車群と、を具備するものである。
【0007】
また、2枚の引戸を連動して開閉可能とした引戸連動装置に於て、上枠に開閉移動自在に吊り下げた引戸の各々に固着したラックと、該ラックに噛合して上記引戸の走行代を差動しつつ連動させると共に上記上枠側の所定固定位置に回転自在に設けられた歯車群と、を具備し、該歯車群は、一のラックに噛合する平歯車と、該平歯車の1/2倍の歯数を有すると共に該平歯車に噛合する小ギヤ部と該平歯車と同じ歯数を有する大ギヤ部とを備える2段ギヤと、該大ギヤ部及び上記平歯車と同じ歯数を有するスペア歯車と、上記2段ギヤと上記スペア歯車とを連動軸を介して連動させる複数のベベルギヤ部材と、を備え、上記大ギヤ部と上記スペア歯車のうち少なくとも一方が他のラックと常時噛合状態を保持するように配設したものである。
また、歯車群は、ユニット化して上記上枠に取着可能としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の引戸連動装置によれば、ラックと歯車群が確実に噛合して引戸を連動させるため、故障耐久性を向上できる。よって、面倒なメンテナンスを省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の引戸連動装置の使用状態を示した簡略平面図である。
【図2】引戸連動装置の使用状態を示した簡略平面図である。
【図3】引戸連動装置の使用状態を示した簡略平面図である。
【図4】本発明の実施の一形態を示した要部断面平面図である。
【図5】引戸連動装置を示した要部断面正面図である。
【図6】引戸連動装置を示した要部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1〜図3に於て、本発明の引戸連動装置を用いて2枚の引戸A,Bを連動して開閉可能な連動引戸1を示している。連動引戸1は、住宅、ビル、倉庫、物置等の出入口Gに設置され、戸袋に収納された引戸Aを引出す方向に移動させると、引戸Bが連動して引き出されるように構成されている。引戸Aには、開閉操作を行なうためのハンドルEが設けられている。引戸Aの幅寸法W及び引戸Bの幅寸法Wは、出入口Gの幅寸法Wの約1/2倍の寸法に設定されており、出入口Gの幅寸法Wに対して引戸A,Bを収納する戸袋の幅寸法が約半分程度に小さく済むという利点がある。
本発明の引戸連動装置は、出入口Gの天井側に開閉移動自在に吊り下げた引戸A,Bの各々に固着したラック2A,2Bと、ラック2A,2Bに噛合して引戸A,Bの走行代を差動しつつ連動させると共に天井側の所定固定位置に回転自在に設けられた歯車群10と、を具備している。
【0011】
具体的には、図4〜図6に示すように、歯車群10は、引戸Bのラック2Bに噛合する平歯車12と、平歯車12に噛合する小ギヤ部16と引戸Aのラック2Aに噛合可能な大ギヤ部17とを備える2段ギヤ11と、2段ギヤ11とは離れた所定位置に配設され大ギヤ部17とは別の部位で引戸Aのラック2Aに噛合可能なスペア歯車13と、2段ギヤ11とスペア歯車13とを連動軸18を介して連動させる複数のベベルギヤ部材14,15と、を天井側の上枠Fに回転自在に設けている。2段ギヤ11の大ギヤ部17とスペア歯車13のうち少なくとも一方が、引戸Aのラック2Aと常時噛合状態を保持するように配設している。
2段ギヤ11は、小ギヤ部16を平歯車12の1/2倍の歯数に設定し、大ギヤ部17を平歯車12と同じ歯数(小ギヤ部16の2倍の歯数)に設定している。2段ギヤ11は、所定固定位置にて第1鉛直軸心V廻りに回転自在に枢着されている。
平歯車12は、所定固定位置にて第2鉛直軸心V廻りに回転自在に枢着され、ラック2Bと2段ギヤ11の小ギヤ部16と常時噛合している。
つまり、2段ギヤ11の回転数Nに対して、平歯車12の回転数Nが1/2倍になるように減速している。従って、引戸A及び引戸Bは、ラック2Aの移動寸法Dに対して、ラック2Bの移動寸法Dが1/2倍として走行代を差動しつつ連動している。
【0012】
スペア歯車13は、大ギヤ部17及び平歯車12と同じ歯数を有し、第1鉛直軸心Vから長さ寸法Lをもって離れた所定固定位置に配設される第3鉛直軸心V廻りに回転自在に枢着されている。長さ寸法Lは、引戸Aの幅寸法Wよりも小さく設定している。ラック2Aの移動寸法Dに対するスペア歯車13の回転数Nは、2段ギヤ11の回転数Nと同一となっている。
ベベルギヤ部材14,15は、互いに直交する2つの軸心廻りに回転する一対のかさ歯車から構成されている。一方のベベルギヤ部材14は、2段ギヤ11と同軸状に軸着され第1鉛直軸心V廻りに回転するかさ歯車14aと、連動軸18に枢着され水平軸心H廻りに回転自在のかさ歯車14bとを、有している。他方のベベルギヤ部材15は、スペア歯車13と同軸状に軸着され第3鉛直軸心V廻りに回転するかさ歯車15aと、連動軸18に枢着され水平軸心H廻りに回転自在のかさ歯車15bとを、有している。連動軸18にて同軸連結されるかさ歯車14b,15bは、2つのベベルギヤ部材14,15を連動している。
つまり、2段ギヤ11とスペア歯車13は、同期的に連動して回転するように構成している。
【0013】
また、歯車群10は、ユニット化して上枠Fに取着可能として構成されている。具体的には、横長のケーシング20の下方に、平歯車12と、2段ギヤ11と、スペア歯車13とが、突出するように枢着し、ケーシング20内に、ベベルギヤ部材14,15を内設している。歯車群10は、ケーシング20により連結一体状のユニットとして上枠Fにボルト・ナットで固定されている。
上枠Fには、引戸A,Bの開閉移動方向に沿ってガイドレール3,3が固着されている。ガイドレール3,3は、吊下部材4,4を介して引戸A,Bを吊り下げている。ラック2A,2Bは、引戸A,Bを支持する各々の吊下部材4,4の内側に固着され、スペーサーS,Sにて底上げして平歯車12、2段ギヤ11及びスペア歯車13に噛合するように配設されている。なお、上枠F及び吊下部材4,4が外部から見えないように、カバーCを設けるも好ましい。
【0014】
上述した本発明の引戸連動装置の使用方法(作用)について説明する。
図1に示すように、出入口Gが開放され引戸A,Bが戸袋に収納されている全開状態に於て、引戸Aのラック2Aと2段ギヤ11の大ギヤ部17とが噛合する。ハンドルEを持って引戸Aを引き出していくと、ラック2Aが2段ギヤ11に回転力を付与し、2段ギヤ11の回転数Nを1/2倍の回転数Nに減速しつつ小ギヤ部16から平歯車12に回転力を伝えて、平歯車12に噛合するラック2Bに移動力を付与し、引戸Bが連動して引き出される。
図2に示すように、引戸A,Bが出入口Gの幅寸法Wの途中まで引き出された半開状態に於て、引戸Aが移動寸法Dまで引き出されると、引戸Bは、引戸Aの移動寸法Dの1/2倍の移動寸法Dだけ引き出される。言い換えると、引戸Aと引戸Bは、2段ギヤ11及び平歯車12により2対1の走行代をもって差動しつつ連動して開閉する。この際、ラック2Aは、大ギヤ部17に噛合しつつスペア歯車13に到達して噛合する。つまり、ラック2Aは、2段ギヤ11の大ギヤ部17及びスペア歯車13の両方に噛合した状態となる。
【0015】
さらに、図3に示すように、引戸A及び引戸Bが出入口Gの幅寸法Wにわたって引き出された閉鎖状態に於て、引戸Aのラック2Aは、大ギヤ部17との噛合を解除し、スペア歯車13との噛合状態を保持する。スペア歯車13は、ベベルギヤ部材14,15を介して2段ギヤ11に回転力を伝達し、平歯車12を回転させて引戸Bのラック2Bに移動力を付与し続ける。
このようにして、連動引戸1は、全開状態から閉鎖状態に至るまで、引戸Aの移動寸法Dと、引戸Bの移動寸法Dとを、2対1の関係に保持する。その後、閉鎖状態から全開状態とする際も同様である。
また、歯車群10とラック2A,2Bとの間には、遊びが発生せず、引戸A,Bは安定してスムーズに連動し、メンテナンスを必要とすることなく長期間の使用に耐え得る。
【0016】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、歯車群10の配列や配設位置等を設計変更するも自由である。
【0017】
以上のように、本発明は、2枚の引戸A,Bを連動して開閉可能とした引戸連動装置に於て、上枠Fに開閉移動自在に吊り下げた引戸A,Bの各々に固着したラック2A,2Bと、ラック2A,2Bに噛合して引戸A,Bの走行代を差動しつつ連動させると共に上枠F側の所定固定位置に回転自在に設けられた歯車群10と、を具備するので、ラック2A,2Bと歯車群10が確実に噛合して引戸A,Bを連動させるため、故障耐久性を向上できる。よって、面倒なメンテナンスを省略できる。
【0018】
また、2枚の引戸A,Bを連動して開閉可能とした引戸連動装置に於て、上枠Fに開閉移動自在に吊り下げた引戸A,Bの各々に固着したラック2A,2Bと、ラック2A,2Bに噛合して引戸A,Bの走行代を差動しつつ連動させると共に上枠F側の所定固定位置に回転自在に設けられた歯車群10と、を具備し、歯車群10は、一のラック2Bに噛合する平歯車12と、平歯車12の1/2倍の歯数を有すると共に平歯車12に噛合する小ギヤ部16と平歯車12と同じ歯数を有する大ギヤ部17とを備える2段ギヤ11と、大ギヤ部17及び平歯車12と同じ歯数を有するスペア歯車13と、2段ギヤ11とスペア歯車13とを連動軸18を介して連動させる複数のベベルギヤ部材14,15と、を備え、大ギヤ部17とスペア歯車13のうち少なくとも一方が他のラック2Aと常時噛合状態を保持するように配設したので、ラック2A,2Bと歯車群10が確実に噛合して引戸A,Bを連動させるため、故障耐久性を向上できる。また、全開状態から閉鎖状態に至るまで、引戸Aの移動寸法Dと、引戸Bの移動寸法Dとを、2対1の関係に保持できる。さらに、歯車群10とラック2A,2Bとの間に遊びを発生させず、引戸A,Bを安定してスムーズに連動でき、メンテナンスを省略して長期間使用できる。
【0019】
また、歯車群10は、ユニット化して上枠Fに取着可能としたので、取付が容易であり、かつ、故障耐久性をより一層向上できる。
【符号の説明】
【0020】
F 上枠
A,B 引戸
2A,2B ラック
10 歯車群
11 2段ギヤ
12 平歯車
13 スペア歯車
14 ベベルギヤ部材
15 ベベルギヤ部材
16 小ギヤ部
17 大ギヤ部
18 連動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の引戸(A)(B)を連動して開閉可能とした引戸連動装置に於て、
上枠(F)に開閉移動自在に吊り下げた引戸(A)(B)の各々に固着したラック(2A)(2B)と、該ラック(2A)(2B)に噛合して上記引戸(A)(B)の走行代を差動しつつ連動させると共に上記上枠(F)側の所定固定位置に回転自在に設けられた歯車群(10)と、を具備することを特徴とする引戸連動装置。
【請求項2】
2枚の引戸(A)(B)を連動して開閉可能とした引戸連動装置に於て、
上枠(F)に開閉移動自在に吊り下げた引戸(A)(B)の各々に固着したラック(2A)(2B)と、該ラック(2A)(2B)に噛合して上記引戸(A)(B)の走行代を差動しつつ連動させると共に上記上枠(F)側の所定固定位置に回転自在に設けられた歯車群(10)と、を具備し、
該歯車群(10)は、一のラック(2B)に噛合する平歯車(12)と、該平歯車(12)の1/2倍の歯数を有すると共に該平歯車(12)に噛合する小ギヤ部(16)と該平歯車(12)と同じ歯数を有する大ギヤ部(17)とを備える2段ギヤ(11)と、該大ギヤ部(17)及び上記平歯車(12)と同じ歯数を有するスペア歯車(13)と、上記2段ギヤ(11)と上記スペア歯車(13)とを連動軸(18)を介して連動させる複数のベベルギヤ部材(14)(15)と、を備え、上記大ギヤ部(17)と上記スペア歯車(13)のうち少なくとも一方が他のラック(2A)と常時噛合状態を保持するように配設したことを特徴とする引戸連動装置。
【請求項3】
上記歯車群(10)は、ユニット化して上記上枠(F)に取着可能とした請求項1又は2記載の引戸連動装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−236694(P2011−236694A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110968(P2010−110968)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(504374849)株式会社泉陽商会 (16)