説明

引掻き試験機および引掻き試験方法

【課題】引掻き試験の試験結果およびフィルム状試料の引掻き傷に対する判定の判定結果の再現性を確保し、判定結果の信頼性を客観的に示す。
【解決手段】引掻き試験機10は、フィルム状試料21を固定可能な載置面11Aを有する載置台11と、該載置面11A上に固定されたフィルム状試料21の表面に接触可能な先端部13aを有する引掻き部材13と、載置面11A上に固定されたフィルム状試料21の表面に引掻き部材13の先端部13aを接触させた状態で引掻き部材13に対して載置台11を引掻き方向に相対移動可能な駆動装置14と、フィルム状試料21の表面のうち、少なくとも引掻き部材13の先端部13aが接触する接触領域および引掻き部材13の先端部13aが接触してきた軌跡領域を含む表面領域を拡大可能に撮像し、撮像結果の画像データを出力する顕微鏡15と、画像データを表示する表示装置16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引掻き試験機および引掻き試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば基板の載置面上に載置されたフィルム状試料上に鉛筆芯を当て付けた状態で基板または鉛筆芯を相対移動させ、フィルム状試料上の鉛筆芯による引掻き傷の有無を目視により判定する引掻き試験方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−44023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る引掻き試験方法においては、フィルム状試料の引掻き傷の有無は目視により判定されるだけであるから、判定結果の信頼性を客観的に確認することが困難であるという問題が生じる。
しかも、例えば樹脂材などから成るフィルム状試料においては、引掻き傷の経時変化が大きい場合があり、引掻き傷の生成後に目視による観察を行なうまでに要する時間にばらつきがあると、判定結果の再現性が損なわれてしまうという問題が生じる。
また、鉛筆芯による引掻き試験において、鉛筆芯を所定形状に研磨する作業が人の手作業により行なわれる場合には、鉛筆芯の研磨状態を均一にすることが困難であって、引掻き試験の試験結果の再現性が損なわれてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、引掻き試験の試験結果およびフィルム状試料の引掻き傷に対する判定の判定結果の再現性を確保し、判定結果の信頼性を客観的に示すことが可能な引掻き試験機および引掻き試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る引掻き試験機は、フィルム状試料(例えば、実施の形態でのフィルム状試料21)を固定可能な載置面(例えば、実施の形態での載置面11A)を有する載置台(例えば、実施の形態での載置台11)と、該載置面上に固定された前記フィルム状試料の表面に接触可能な先端部(例えば、実施の形態での先端部13a)を有する引掻き部材(例えば、実施の形態での引掻き部材13)と、前記載置面上に固定された前記フィルム状試料の表面に前記引掻き部材の先端部を接触させた状態で前記引掻き部材に対して前記載置台を所定の引掻き方向に相対移動可能な駆動装置(例えば、実施の形態での駆動装置14)とを備える引掻き試験機(例えば、実施の形態での引掻き試験機10)であって、前記フィルム状試料の表面のうち、少なくとも前記引掻き部材の先端部が接触する領域および前記引掻き部材の先端部が接触してきた軌跡領域を含む表面領域を拡大可能に撮像し、撮像結果の画像データを出力する撮像装置(例えば、実施の形態での顕微鏡15)と、該撮像装置から出力された前記画像データを表示する表示装置(例えば、実施の形態での表示装置16)とを備える。
【0007】
さらに、本発明の請求項2に係る引掻き試験機では、前記載置台は透光性部材から成り、前記フィルム状試料は透光性を有し、前記撮像手段は、前記載置台の前記載置面に対して裏面側に配置され、前記載置面上に固定された前記フィルム状試料の表面を、前記載置台および前記フィルム状試料を透過して撮像する。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に係る引掻き試験機は、前記引掻き部材の先端部が接触する前記フィルム状試料の表面に作用する垂直方向の押付け力(例えば、実施の形態での押付け力Fn)および水平方向の接線力(例えば、実施の形態での接線力Ft)を検出する検出手段(例えば、実施の形態での検出部33および接線力演算部51および押付け力演算部52)を備える。
【0009】
さらに、本発明の請求項4に係る引掻き試験機では、前記フィルム状試料の表面に接触する前記引掻き部材の先端部の接触面積は、前記先端部の形状に応じた所定接触面積以上である。
【0010】
さらに、本発明の請求項5に係る引掻き試験機では、前記引掻き部材は前記フィルム状試料よりも耐磨耗性が高い材質から成り、鉛筆芯と同一の直径の円柱状に形成された前記引掻き部材の先端部の前記所定接触面積は15000μmである。
【0011】
また、本発明の請求項6に係る引掻き試験方法は、請求項1に記載の引掻き試験機を用いる引掻き試験方法であって、前記画像データに基づき、前記フィルム状試料の表面での前記引掻き部材の先端部による引掻き傷の有無を判定し、該判定の結果に応じて前記フィルム状試料を分類する。
【0012】
さらに、本発明の請求項7に係る引掻き試験方法は、前記引掻き部材の先端部が接触する前記フィルム状試料の表面に作用する垂直方向の押付け力と水平方向の接線力とを検出し、前記押付け力と前記接線力との比によるスクラッチ摩擦係数に応じて前記フィルム状試料の耐引掻き性の優劣を判定し、該判定の結果に応じて前記フィルム状試料を分類する。
【0013】
さらに、本発明の請求項8に係る引掻き試験方法は、前記引掻き部材の先端部が接触する前記フィルム状試料の表面に作用する力に応じた耐荷重CLと、前記引掻き部材の先端部の接触面積Aと、前記フィルム状試料の降伏応力σと、前記引掻き部材の先端部の接触長さLと、前記フィルム状試料の固形量に応じた膜厚Hとによる耐スクラッチ性パラメータFp(=((CL/A)/σ)×(L/H))を演算し、該耐引掻き性パラメータFに応じて前記フィルム状試料の耐引掻き性の優劣を判定し、該判定の結果に応じて前記フィルム状試料を分類する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る引掻き試験機によれば、フィルム状試料の表面のうち、少なくとも引掻き部材の先端部が接触する領域および引掻き部材の先端部が接触してきた軌跡領域を含む表面領域の画像データは、表示装置にリアルタイムに表示可能である。
このため、画像データに基づく所定の判定処理を所定のタイミング(例えば、引掻き部材に対して載置台を相対移動中の逐次のタイミングや、引掻き部材に対する載置台の相対移動が完了した時点など)で実行することができ、所定の判定処理を実行するタイミングにばらつきが生じることに起因して判定結果の再現性が損なわれてしまことを防止することができる。
【0015】
さらに、本発明の請求項2に係る引掻き試験機によれば、引掻き部材の先端部が接触するフィルム状試料の領域を載置台の裏面側から容易に撮像することができ、フィルム状試料の表面に対する引掻き部材の先端部の接触状態を、例えば引掻き部材に対して載置台を相対移動中などのリアルタイムに表示装置に表示することができる。
【0016】
さらに、本発明の請求項3に係る引掻き試験機によれば、引掻き部材の先端部によってフィルム状試料の表面に作用する押付け力および接線力を、例えば引掻き部材に対して載置台を相対移動中などのリアルタイムに自動的に検出することができる。
【0017】
さらに、本発明の請求項4に係る引掻き試験機によれば、引掻き部材の先端部の接触面積を、引掻き部材の先端部の形状に応じた所定接触面積以上に設定することにより、所定の耐引掻き性パラメータによってフィルム状試料の耐引掻き性を判定する所定の判定処理の判定結果が引掻き部材の先端部の接触面積に応じて変動してしまうことを防止し、フィルム状試料の耐引掻き性の定量的評価に対する所望の信頼性および再現性を確保することができる。
【0018】
さらに、本発明の請求項5に係る引掻き試験機によれば、鉛筆芯と同一の直径の円柱状かつフィルム状試料よりも耐磨耗性が高い材質から成る引掻き部材の先端部の接触面積を、15000μm以上に設定することにより、所定の耐引掻き性パラメータによってフィルム状試料の耐引掻き性を判定する所定の判定処理の判定結果が引掻き部材の先端部の接触面積に応じて変動してしまうことを防止し、フィルム状試料の耐引掻き性の定量的評価に対する所望の信頼性および再現性を確保することができる。
しかも、鉛筆芯とは異なり、フィルム状試料よりも耐磨耗性が高い材質から成る引掻き部材の先端部によって、引掻き試験の試験結果の再現性を確保することができる。
【0019】
また、本発明の請求項6に係る引掻き試験方法によれば、フィルム状試料の表面のうち、少なくとも引掻き部材の先端部が接触する領域および引掻き部材の先端部が接触してきた軌跡領域を含む表面領域の画像データは、表示装置にリアルタイムに表示可能である。
このため、画像データに基づき引掻き傷の有無を判定する所定の判定処理を所定のタイミング(例えば、引掻き部材に対して載置台を相対移動中の逐次のタイミングや、引掻き部材に対する載置台の相対移動が完了した時点など)で実行することができ、所定の判定処理を実行するタイミングにばらつきが生じることに起因して判定結果の再現性が損なわれてしまことを防止することができる。
【0020】
さらに、本発明の請求項7に係る引掻き試験機方法によれば、スクラッチ摩擦係数に応じてフィルム状試料の耐引掻き性の優劣を判定することにより、判定結果の所望の信頼性および再現性を確保することができる。
【0021】
さらに、本発明の請求項8に係る引掻き試験機方法によれば、耐引掻き性パラメータFに応じてフィルム状試料の耐引掻き性の優劣を判定することにより、判定結果の所望の信頼性および再現性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るフィルム状試料の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機の一部を拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機の一部を拡大して示す側面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機の一部を拡大して示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機の顕微鏡から出力される画像データの例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機の処理装置の構成図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機を用いた引掻き試験により得られる押付け力Fnとスクラッチ摩擦係数μsとの対応関係の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機の顕微鏡から出力される画像データの例をスクラッチ摩擦係数μsに応じて示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機の顕微鏡から出力される画像データの例を引掻き傷の有無に応じて示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機を用いた引掻き試験により得られる接触面積と負荷荷重との対応関係の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機を用いた引掻き試験により得られる接触面積と異なるフィルム状試料毎の耐荷重との対応関係の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る引掻き試験機を用いた引掻き試験により得られる接触面積と耐スクラッチ性パラメータFpとの対応関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る引掻き試験機および引掻き試験方法について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による引掻き試験機10は、例えば図1に示すように、載置台11と、引掻き部材支持部12と、引掻き部材13と、駆動装置14と、顕微鏡15と、表示装置16と、処理装置17とを備えて構成されている。
【0024】
載置台11は、例えばアクリル樹脂やガラスなどの透光性部材から成り、フィルム状試料21を固定可能な載置面11Aを有している。
載置台11は、この駆動装置14から出力される駆動力によって支持台10aに対して水平方向の所定の引掻き方向に往復移動可能に構成されている。
【0025】
なお、フィルム状試料21は、例えば光学フィルムや透明導電フィルムなどの機能性フィルムであって、例えば図2に示す試験用のフィルム状試料21は、トリアセチルセルロース(TAC)から成るなる基材と、紫外線硬化樹脂を酢酸エチルで希釈して得られる塗液を基材の表面上に所定の塗布方向に塗布して形成されたハードコート層とを備えて構成されている。
【0026】
この試験用のフィルム状試料21では、ハードコート層の厚さ(膜厚)は、紫外線硬化樹脂を酢酸エチルで希釈して得られる塗液のNV値(固形量wt%)に応じた値となっている。
【0027】
引掻き部材支持部12は、例えば図1に示すように、支持台10aに固定されて鉛直方向上方に伸びる支持柱10bに設けられた4節平行リンク機構31と、この4節平行リンク機構31の揺動端部31aに固定された錘支持台32および検出部33および引掻き部材固定部34とを備えて構成されている。
【0028】
4節平行リンク機構31は、例えば、支持台10aに固定されて鉛直方向上方に伸びるように形成された支持柱10bにおいて上下方向に離間した2つの揺動支点31b,31bと、2つの揺動支点31b,31bにより支持された2つの平行なリンクレバー31c,31cと、支持柱10bと同様に鉛直方向に伸びるように形成され、2つのリンクレバー31c,31cの端部同士を接続する揺動端部31aとを備えている。
そして、揺動端部31aは、支持柱10bに平行(つまり鉛直方向に平行)な状態を維持しつつ2つの揺動支点31b,31bに対して揺動可能とされている。
【0029】
また、2つのリンクレバー31c,31cのうち、一方のリンクレバー31cには、揺動支点31bからリンクレバー31cの延在方向の反対方向に伸びるバランスレバー31dが一体に形成され、このバランスレバー31dにはバランス錘31eが連結されている。
【0030】
これらのバランスレバー31dおよびバランス錘31eは、錘支持台32に錘が載置されていない状態かつ引掻き部材固定部34に引掻き部材13が固定された状態で2つのリンクレバー31c,31cを水平に維持するように設定されている。
これにより、錘支持台32に適宜の錘が載置されることによって、引掻き部材13の先端部13aに鉛直方向下方に向かう荷重が作用するようになっている。
【0031】
錘支持台32は、例えば図3および図4に示すように、4節平行リンク機構31の揺動端部31aに固定され、適宜の錘が載置された場合に、この錘による荷重を揺動端部31aおよび検出部33および引掻き部材固定部34を介して引掻き部材13の先端部13aに作用させる。
【0032】
検出部33は、4節平行リンク機構31の揺動端部31aに固定され、第1ひずみ検出部41と、第2ひずみ検出部42とを備えて構成されている。
第1ひずみ検出部41は、例えば、水平方向に平行に所定間隔をおいて配置された2つの第1板ばね41a,41aと、2つの第1板ばね41a,41aの各表面上に配置された2つの第1ひずみゲージ41b,41bとを備えて構成されている。
【0033】
第2ひずみ検出部42は、例えば、鉛直方向に平行に所定間隔をおいて配置された2つの第2板ばね42a,42aと、2つの第2板ばね42a,42aの各表面上に配置された2つの第2ひずみゲージ42b,42bとを備えて構成されている。
そして、各ひずみゲージ41b,42bから出力される検出結果の信号は、処理装置17に入力されている。
【0034】
引掻き部材固定部34は、検出部33を介して4節平行リンク機構31の揺動端部31aに固定され、引掻き部材13を着脱可能に固定する。
【0035】
例えば、引掻き部材固定部34は、引掻き部材13の先端部13aが第2ひずみ検出部42の2つの第2ひずみゲージ42b,42bの鉛直方向下方に位置するように、かつ引掻き部材13の中心軸が鉛直方向に対して所定角度(例えば、45°など)で傾斜するようにして引掻き部材13を固定する。
【0036】
引掻き部材13は、例えば鉛筆や、鉛筆芯と同一の直径の円柱状かつフィルム状試料21よりも耐磨耗性が高い材質(例えば、鋼材など)から成る先端部13aを有する棒状部材などであって、載置台11の載置面11A上に固定されたフィルム状試料21の表面に接触可能な先端部13aを有している。
【0037】
駆動装置14は、例えばモータおよびラックアンドピニオン機構(図示略)などを具備して支持台10a上に配置され、載置台11を支持台10aに対して水平方向の所定の引掻き方向に所定速度で往復移動させる。
これにより、例えば図5に示すように、載置面11A上に固定されたフィルム状試料21の表面に引掻き部材13の先端部13aを接触させた状態で引掻き部材13に対して載置台11が所定の引掻き方向に相対移動する。
【0038】
顕微鏡15は、例えば図1に示すように、載置台11の載置面11Aに対して裏面側に配置され、載置面11A上に固定されたフィルム状試料21の表面を、載置台11およびフィルム状試料21を透過して、拡大可能に撮像し、撮像結果の画像データを出力する。
顕微鏡15は、例えば、フィルム状試料21の表面のうち、少なくとも引掻き部材13の先端部13aが接触する接触領域および載置台11の移動に伴い引掻き部材13の先端部13aが接触しつつ移動してきた軌跡領域を含む表面領域を拡大可能に撮像する。
【0039】
表示装置16は、顕微鏡15および処理装置17に接続され、例えば、顕微鏡15から出力された画像データをリアルタイムに表示したり、例えば処理装置17から出力される各種のデータなどを表示する。
【0040】
なお、顕微鏡15から出力される画像データ(つまり、引掻き試験機10を用いたフィルム状試料21に対する引掻き試験の試験結果)は、例えば図6(A)〜(C)に示すように、引掻き部材13によってフィルム状試料21の表面に生じる引掻き傷の有無、および引掻き傷の程度に応じて分類可能である。
【0041】
例えば図6(A)〜(C)に示す画像データは、引掻き部材13に対する載置台11の相対移動によって引掻き部材(例えば、鉛筆)13の先端部13aがフィルム状試料21の表面上の接触領域まで移動した状態を示す画像データである。
そして、例えば図6(A)に示す画像データは、引掻き部材13の先端部13aが接触しつつ移動してきた軌跡領域に引掻き傷が存在しない場合(傷無の場合)に分類される。
また、例えば図6(B)に示す画像データは、軌跡領域に軽度の引掻き傷が存在する場合(軽度の場合)に分類される。
また、例えば図6(C)に示す画像データは、軌跡領域に重度の引掻き傷が存在する場合(重度の場合)に分類される。
【0042】
処理装置17は、例えば図7に示すように、接線力演算部51と、押付け力演算部52と、スクラッチ摩擦係数演算部53と、耐スクラッチ性判定部54と、記憶部55とを備えて構成されている。
【0043】
接線力演算部51は、例えば図4に示すように、第2ひずみゲージ42bから出力される検出結果の信号に基づき、第2板ばね42aの曲げ歪みΔεを取得する。
そして、第2ひずみゲージ42bの直下に引掻き部材13の先端部13aが配置されていることから、曲げ歪みΔεは接線力(つまり、水平方向の所定の引掻き方向に引掻き部材13の先端部13aに作用する力)Ftのみに依存するとして、接線力Ftによる第2板ばね42aの曲げ歪みΔε2Ftは曲げ歪みΔεに等しいとする。
そして、予め較正により得られた定数Cにより接線力Ft(=C×Δε2Ft)を算出し、この算出結果を出力する。
【0044】
また、接線力演算部51は、予め較正により得られた定数Cにより、接線力Ftによる第1板ばね41aの曲げ歪みΔε1Ft(=C×Δε2Ft)を算出し、この算出結果を押付け力演算部52に出力する。
【0045】
押付け力演算部52は、第1ひずみゲージ41bから出力される検出結果の信号に基づき、第1板ばね41aの曲げ歪みΔεを取得する。
そして、曲げ歪みΔεは接線力Ftおよび押付け力(つまり、鉛直方向下方に引掻き部材13の先端部13aに作用する力)Fnに依存するとして、接線力Ftによる第1板ばね41aの曲げ歪みΔε1Ftと押付け力Fnによる第1板ばね41aの曲げ歪みΔε1Fnの和は曲げ歪みΔεに等しいとする。
【0046】
そして、押付け力演算部52は、接線力演算部51から出力された接線力Ftによる第1板ばね41aの曲げ歪みΔε1Ft(=C×Δε2Ft)を曲げ歪みΔεから減算して、押付け力Fnによる第1板ばね41aの曲げ歪みΔε1Fnを算出する。
そして、予め較正により得られた定数Cにより押付け力Fn(=C×Δε1Fn)を算出し、この算出結果を出力する。
【0047】
スクラッチ摩擦係数演算部53は、例えば図7に示すように、接線力演算部51から出力される接線力Ftと押付け力演算部52から出力される押付け力Fnとの比によってスクラッチ摩擦係数μs(=Ft/Fn)を演算し、この演算結果を出力する。
【0048】
なお、顕微鏡15から出力される画像データ(つまり、引掻き試験機10を用いたフィルム状試料21に対する引掻き試験の試験結果)は、例えば図8に示すように、スクラッチ摩擦係数演算部53から出力されるスクラッチ摩擦係数μsに応じて分類可能である。
【0049】
例えば図8において、フィルム状試料21に対する目視では引掻き傷の存在が認められない場合(傷無および軽度(傷無)の場合)と、フィルム状試料21に対する目視でも引掻き傷の存在が認められる場合(軽度(傷有)および重度の場合)とは、押付け力Fnの大きさに依らずに、スクラッチ摩擦係数μsの所定値(例えば、μs=0.14)によって分類可能である。
これにより、フィルム状試料21に対する目視による引掻き傷の有無に応じた分類結果と、スクラッチ摩擦係数μsの所定値による分類結果とを整合させることができる。
【0050】
なお、例えば図8において、軽度(傷無)の場合は、フィルム状試料21の表面上において引掻き部材13の先端部13aが接触しつつ移動してきた軌跡領域に引掻き傷が存在しない場合である。
また、軽度(傷無)の場合は、画像データにおいては軌跡領域に軽度の引掻き傷の存在が認められるが、フィルム状試料21に対する目視では引掻き傷の存在が認められない場合である。
また、軽度(傷有)の場合は、画像データにおいて軌跡領域に軽度の引掻き傷の存在が認められ、フィルム状試料21に対する目視でも引掻き傷の存在が認められる場合である。
また、重度の場合は、画像データにおいて軌跡領域に重度の引掻き傷の存在が認められ、フィルム状試料21に対する目視でも引掻き傷の存在が認められる場合である。
【0051】
さらに、例えば図9(A)〜(C)に示すように、画像データにおいて軌跡領域に重度の引掻き傷の存在が認められる重度の場合においては、スクラッチ摩擦係数μsの増大に伴い、引掻き傷の程度(例えば、引掻き傷の太さおよび引掻き傷の数など)が増大傾向に変化する。
これにより、引掻き傷の程度に応じたスクラッチ摩擦係数μsによって、顕微鏡15から出力される画像データを分類可能である。
【0052】
耐スクラッチ性判定部54は、少なくとも接線力演算部51から出力される接線力Ftまたは押付け力演算部52から出力される押付け力Fnと、予め記憶部55に記憶している各種のパラメータとに基づき、耐スクラッチ性パラメータFpを演算し、この演算結果を出力する。
【0053】
例えば、耐スクラッチ性判定部54は、引掻き部材13の先端部13aが接触するフィルム状試料21の表面に作用する力(例えば、押付け力Fn)に応じた耐荷重CLと、フィルム状試料21の表面に接触する引掻き部材13の先端部13aの接触面積Aと、フィルム状試料21の降伏応力σと、引掻き部材13の先端部13aの接触長さLと、フィルム状試料21の固形量に応じた膜厚Hとにより、
耐スクラッチ性パラメータFp(=((CL/A)/σ)×(L/H))を演算する。
【0054】
なお、耐荷重CLは、例えば錘支持台32に載置される錘が変更される複数回の引掻き試験毎に演算される押付け力Fnに基づき設定される。
また、接触面積Aは、例えば引掻き試験によって得られる画像データにおいて引掻き部材13の先端部13aが接触しているフィルム状試料21の表面上の接触領域の面積に基づき設定される。
また、降伏応力σは、例えば錘支持台32に載置される錘が変更される複数回の引掻き試験毎に演算される押付け力Fnと、各引掻き試験後のフィルム状試料21に対する断面観察とに基づき設定される。
【0055】
また、接触長さLは、例えば引掻き試験によって得られる画像データにおいて引掻き部材13の先端部13aが接触しているフィルム状試料21の表面上の接触領域の引掻きに垂直な方向の長さに基づき設定される。
また、膜厚Hは、例えば予め既知とされるフィルム状試料21のハードコート層のNV値(固形量wt%)に応じた厚さに基づき設定される。
【0056】
そして、顕微鏡15から出力される画像データ(つまり、引掻き試験機10を用いたフィルム状試料21に対する引掻き試験の試験結果)は、耐スクラッチ性判定部54から出力される耐スクラッチ性パラメータFpに応じて分類可能である。
【0057】
例えば図10(A),(B)に示す画像データは、引掻き部材13を鉛筆芯と同一の直径の円柱状かつフィルム状試料21よりも耐磨耗性が高い材質(例えば、鋼材など)から成る先端部13aを有する棒状部材とした場合において、引掻き部材13に対する載置台11の相対移動によって引掻き部材13の先端部13aがフィルム状試料21の表面上の接触領域まで移動した状態を示す画像データである。
【0058】
そして、例えば図10(A)に示す画像データは、引掻き部材13の先端部13aが接触しつつ移動してきた軌跡領域に引掻き傷が存在する場合(引掻き傷有り)に分類され、例えば図10(B)に示す画像データは、軌跡領域に引掻き傷が存在しない場合(引掻き傷無し)に分類される。
【0059】
これらの引掻き傷の有無は、例えば図11に示すように、例えば押付け力Fnに応じた負荷荷重と接触面積とに応じて変化する。
例えば、負荷荷重の増大に伴い、引掻き傷有りに分類される接触面積の下限値は低下傾向に変化し、接触面積の増大に伴い、引掻き傷有りに分類される負荷荷重の下限値は増大傾向に変化する。
【0060】
また、例えば図12に示すように、引掻き部材13を鉛筆芯と同一の直径の円柱状かつフィルム状試料21よりも耐磨耗性が高い材質(例えば、鋼材など)から成る先端部13aを有する棒状部材とした場合において、膜厚Hが異なる3つのフィルム状試料21(試料a,試料b,試料c)に対して、例えば押付け力Fnに応じた耐荷重は接触面積の増大に伴い線形的に増大傾向に変化する。
【0061】
これらに対して、例えば図13に示すように、引掻き部材13を鉛筆芯と同一の直径の円柱状かつフィルム状試料21よりも耐磨耗性が高い材質(例えば、鋼材など)から成る先端部13aを有する棒状部材とした場合において、耐スクラッチ性パラメータFpは、3つのフィルム状試料21(試料a,試料b,試料c)に依らずに、所定接触面積(例えば、15000μmなど)以上において接触面積に依らずに一定となる。
【0062】
なお、3つのフィルム状試料21(試料a,試料b,試料c)は、例えば、順次、試料aと,試料bと,試料cとにおいて、ハードコート層のNV値(固形量wt%)が増大している。
【0063】
すなわち、例えば図11および図12に示す負荷荷重および耐荷重は接触面積の変化に応じて変化することに対して、例えば図13に示すように、耐スクラッチ性パラメータFpは所定接触面積(例えば、15000μmなど)以上において接触面積の変化に関わらずに一定値となる。
しかも、この所定接触面積(例えば、15000μmなど)は、フィルム状試料21の膜厚Hつまりハードコート層のNV値(固形量wt%)に応じた厚さに関わらずに同一となる。
これにより、接線力Ftまたは押付け力Fnと、予め記憶部55に記憶している各種のパラメータとに基づく耐スクラッチ性パラメータFpによって、顕微鏡15から出力される画像データを分類可能である。
【0064】
なお、引掻き部材13を鉛筆芯と同一の直径の円柱状かつフィルム状試料21よりも耐磨耗性が高い材質(例えば、鋼材など)から成る先端部13aを有する棒状部材とした場合において、所定接触面積を15000μmとしたが、この所定接触面積は引掻き部材13の先端部13aの形状に応じて変更可能である。
【0065】
本実施の形態による引掻き試験機10は上記構成を備えており、次に、この引掻き試験機10を用いた引掻き試験方法について説明する。
【0066】
先ず、載置台11の載置面11A上にフィルム状試料21を固定する。
次に、引掻き部材13の先端部13aが第2ひずみ検出部42の2つの第2ひずみゲージ42b,42bの鉛直方向下方に位置するようにして、引掻き部材固定部34に引掻き部材13を固定する。
【0067】
次に、例えばバランスレバー31dに連結されたバランス錘31eの位置などを調整することによって、錘支持台32に錘が載置されていない状態かつ引掻き部材固定部34に引掻き部材13が固定された状態で2つのリンクレバー31c,31cを水平にする。
次に、錘支持台32に適宜の錘を載置して、載置台11の載置面11A上に固定されたフィルム状試料21の表面に引掻き部材13の先端部13aを接触させる。
【0068】
次に、駆動装置14による載置台11の駆動および顕微鏡15によるフィルム状試料21の表面の撮像および各ひずみゲージ41b,42bによる検出を開始する。
これにより、載置台11は支持台10aおよび引掻き部材13に対して水平方向の所定の引掻き方向に所定速度で相対移動する。
そして、フィルム状試料21の表面のうち、少なくとも引掻き部材13の先端部13aが接触する接触領域および載置台11の移動に伴い引掻き部材13の先端部13aが接触しつつ移動する軌跡領域を含む表面領域を、載置台11およびフィルム状試料21の裏面側から透過して、拡大可能に逐次撮像して得られた画像データが、顕微鏡15から逐次出力される。
そして、各ひずみゲージ41b,42bから検出結果の信号が出力される。
【0069】
次に、顕微鏡15から逐次出力される画像データの表示装置16での表示を開始する。
そして、各ひずみゲージ41b,42bから逐次出力される検出結果の信号に基づき、押付け力Fnおよび接線力Ftを算出し、さらに、少なくともスクラッチ摩擦係数μsまたは耐スクラッチ性パラメータFpを算出する。
【0070】
そして、表示装置16に表示される画像データに基づき、フィルム状試料21の表面での引掻き部材13の先端部13aによる引掻き傷の有無を判定し、この判定の結果に応じてフィルム状試料21を分類する。
また、少なくともスクラッチ摩擦係数μsまたは耐スクラッチ性パラメータFpに応じてフィルム状試料21の耐引掻き性の優劣を判定し、この判定の結果に応じてフィルム状試料21を分類する。
【0071】
なお、耐引掻き性の優劣は、例えば目視により検知可能な引掻き傷の有無や、例えばフィルム状試料21の表面を拡大撮像して得られる画像データ上で検知可能な引掻き傷の有無や、例えば引掻き傷の程度(例えば、引掻き傷の太さおよび引掻き傷の数など)などに関連した優劣である。
【0072】
また、表示装置16に表示される画像データまたは各ひずみゲージ41b,42bから出力される検出結果に基づく各種の判定処理は、例えば、引掻き部材13に対して載置台11を相対移動中の逐次のタイミングや、引掻き部材13に対する載置台11の相対移動が完了した時点などの所定に固定されたタイミングで実行する。
【0073】
上述したように、本実施の形態による引掻き試験機10によれば、フィルム状試料21の表面のうち、少なくとも引掻き部材13の先端部13aが接触する接触領域および引掻き部材13の先端部13aが接触しつつ移動してきた軌跡領域を含む表面領域の画像データは、表示装置16においてリアルタイムに表示可能である。
このため、画像データに基づく各種の判定処理を所定のタイミング(例えば、引掻き部材13に対して載置台11を相対移動中の逐次のタイミングや、引掻き部材13に対する載置台11の相対移動が完了した時点などの所定に固定されたタイミング)で実行することができ、各種の判定処理を実行するタイミングにばらつきが生じることに起因して判定結果の再現性が損なわれてしまことを防止することができる。
【0074】
さらに、引掻き部材13の先端部13aが接触するフィルム状試料21の領域を顕微鏡15によって載置台11の裏面側から容易に撮像することができ、フィルム状試料21の表面に対する引掻き部材13の先端部13aの接触状態を、例えば引掻き部材13に対して載置台11を相対移動中の期間などでリアルタイムに表示装置16に表示することができる。
これにより、引掻き試験機10を用いたフィルム状試料21に対する引掻き試験の試験結果をより詳細に分類することが可能である。
【0075】
さらに、各ひずみゲージ41b,42bから逐次出力される検出結果の信号に基づき、引掻き部材13の先端部13aによってフィルム状試料21の表面に作用する押付け力Fnおよび接線力Ftを、所定のタイミング(例えば、引掻き部材13に対して載置台11を相対移動中の逐次のタイミングや、引掻き部材13に対する載置台11の相対移動が完了した時点などの所定に固定されたタイミング)で検出することができる。
これにより、例えば引掻き部材13に対して載置台11を相対移動中の期間などのリアルタイムに自動的に検出することが可能である。
【0076】
さらに、引掻き部材13の先端部13aの接触面積を、引掻き部材13の先端部13aの形状に応じた所定接触面積以上に設定することにより、所定の耐スクラッチ性パラメータFpによってフィルム状試料21の耐引掻き性を判定する所定の判定処理の判定結果が引掻き部材13の先端部13aの接触面積に応じて変動してしまうことを防止し、フィルム状試料21の耐引掻き性の定量的評価に対する所望の信頼性および再現性を確保することができる。
【0077】
特に、鉛筆芯と同一の直径の円柱状かつフィルム状試料21よりも耐磨耗性が高い材質から成る引掻き部材13の先端部13aの接触面積を、15000μm以上に設定することにより、所定の耐スクラッチ性パラメータFpによってフィルム状試料21の耐引掻き性を判定する所定の判定処理の判定結果が引掻き部材13の先端部13aの接触面積に応じて変動してしまうことを防止し、フィルム状試料21の耐引掻き性の定量的評価に対する所望の信頼性および再現性を確保することができる。
しかも、鉛筆芯とは異なる、かつフィルム状試料21よりも耐磨耗性が高い材質から成る引掻き部材13の先端部13aによって、引掻き試験の試験結果の再現性を確保することができる。
【0078】
また、本実施の形態による引掻き試験方法によれば、画像データに基づき引掻き傷の有無を判定し、該判定の結果に応じてフィルム状試料21を分類する所定の処理を所定のタイミング(例えば、引掻き部材13に対する載置台11の相対移動が完了した時点などの所定に固定されたタイミング)で実行することができ、所定の処理を実行するタイミングにばらつきが生じることに起因して処理結果の再現性が損なわれてしまことを防止することができる。
【0079】
さらに、スクラッチ摩擦係数μsまたは耐スクラッチ性パラメータFpに応じてフィルム状試料21の耐引掻き性の優劣を判定することにより、判定結果の所望の信頼性および再現性を確保することができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態において、処理装置17は、顕微鏡15から出力される画像データに対して自動的に所定の画像処理を行なう画像処理部を備えてもよい。
この画像処理部は、例えば顕微鏡15から逐次出力される画像データに対してリアルタイムに所定の画像処理を実行することにより、例えば引掻き部材13によってフィルム状試料21の表面に生じる引掻き傷の有無の判定や、例えば接触面積Aおよび接触長さLなどの各種のパラメータの算出などを自動的に実行してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 引掻き試験機
11 載置台
11A 載置面
13a 先端部
13 引掻き部材
14 駆動装置
15 顕微鏡(撮像装置)
16 表示装置
21 フィルム状試料
33 検出部(検出手段)
51 接線力演算部(検出手段)
52 押付け力演算部(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状試料を固定可能な載置面を有する載置台と、該載置面上に固定された前記フィルム状試料の表面に接触可能な先端部を有する引掻き部材と、
前記載置面上に固定された前記フィルム状試料の表面に前記引掻き部材の先端部を接触させた状態で前記引掻き部材に対して前記載置台を所定の引掻き方向に相対移動可能な駆動装置とを備える引掻き試験機であって、
前記フィルム状試料の表面のうち、少なくとも前記引掻き部材の先端部が接触する領域および前記引掻き部材の先端部が接触してきた軌跡領域を含む表面領域を拡大可能に撮像し、撮像結果の画像データを出力する撮像装置と、
該撮像装置から出力された前記画像データを表示する表示装置とを備えることを特徴とする引掻き試験機。
【請求項2】
前記載置台は透光性部材から成り、前記フィルム状試料は透光性を有し、
前記撮像手段は、前記載置台の前記載置面に対して裏面側に配置され、前記載置面上に固定された前記フィルム状試料の表面を、前記載置台および前記フィルム状試料を透過して撮像することを特徴とする請求項1に記載の引掻き試験機。
【請求項3】
前記引掻き部材の先端部が接触する前記フィルム状試料の表面に作用する垂直方向の押付け力および水平方向の接線力を検出する検出手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の引掻き試験機。
【請求項4】
前記フィルム状試料の表面に接触する前記引掻き部材の先端部の接触面積は、前記先端部の形状に応じた所定接触面積以上であること特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の引掻き試験機。
【請求項5】
前記引掻き部材は前記フィルム状試料よりも耐磨耗性が高い材質から成り、
鉛筆芯と同一の直径の円柱状に形成された前記引掻き部材の先端部の前記所定接触面積は15000μmであることを特徴とする請求項4に記載の引掻き試験機。
【請求項6】
請求項1に記載の引掻き試験機を用いる引掻き試験方法であって、
前記画像データに基づき、前記フィルム状試料の表面での前記引掻き部材の先端部による引掻き傷の有無を判定し、該判定の結果に応じて前記フィルム状試料を分類することを特徴とする引掻き試験方法。
【請求項7】
前記引掻き部材の先端部が接触する前記フィルム状試料の表面に作用する垂直方向の押付け力と水平方向の接線力とを検出し、
前記押付け力と前記接線力との比によるスクラッチ摩擦係数に応じて前記フィルム状試料の耐引掻き性の優劣を判定し、
該判定の結果に応じて前記フィルム状試料を分類することを特徴とする請求項6に記載の引掻き試験方法。
【請求項8】
前記引掻き部材の先端部が接触する前記フィルム状試料の表面に作用する力に応じた耐荷重CLと、前記引掻き部材の先端部の接触面積Aと、前記フィルム状試料の降伏応力σと、前記引掻き部材の先端部の接触長さLと、前記フィルム状試料の固形量に応じた膜厚Hとによる耐スクラッチ性パラメータFp(=((CL/A)/σ)×(L/H))を演算し、
該耐引掻き性パラメータFに応じて前記フィルム状試料の耐引掻き性の優劣を判定し、
該判定の結果に応じて前記フィルム状試料を分類することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の引掻き試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−168102(P2012−168102A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30853(P2011−30853)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)