説明

弦楽器のトレーニング器。

【課題】
弦楽器の弓の毛は、複数の毛束(馬の尾)からなり、弦を弓に張られた毛束で擦り音を出す。しかし弓で弦をこする時に、意図しない方向に力の挿入してしまう事がよくあり、その事により、毛束部分の配列が崩れ、音色が一定でなくなる。本発明は、腕や、手、指に力の挿入方向を覚え込ませ、毛束部分の配列が崩をできるだけ少なくするトレーニング器を提供するものである。
【解決手段】
バイオリンを模った本体に、本体側案内体3を設け、前記本体側案内体3に弓体4を接着
する。さらに前記弓体4に把持部材14を設け、縦方向には本体側案内体3で手を案内し、横方向には把持部材14で手を案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弦楽器演奏のトレーニングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今まで、ボーイングの矯正方向は目視できる範囲で2次元的に考えられてきた。つまり、弦と弓が直角に交わり、弓を直線運動させるテクニックの習得が目的であった。この訓練を助けるための道具として先行技術文献特開2008―90291号公報は、バイオリンを模った本体上の弓案内体にガイドされバイオリンの表板の面にそって弓を移動させることにより運弓の練習を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008―90291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の運弓練習具では、弓を本体の表板と平行方向にガイドによって移動させることで、2次元的に弓をコントロールする事が目的であった。本発明はさらに踏み込んで3次元的に、弓でバイオリンをこする時の力の挿入角度の矯正を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の弦楽器のトレーニング器は、弦楽器を模った本体の表板の面に対して垂直軸方向に設けられ前記弓体をガイドする本体側案内体と、前記弓体の端部に設けられた弓案内体とを備え前記本体側案内体に前記弓案内体を摺動可能にし、トレーニングできる。又は、弦楽器を模った本体と2つ以上に分割された弓体と前記弓体の端部に設けられた縦方向案内体と前記本体上に設けられ弓体を案内する弓道を有する弓案内体と前記弓体の一方を前記弓道に案内し前記弓体の他方を前記縦方向案内体を介して摺動できる。
【発明の効果】
【0006】
本体1a・1bの表板1c・1dに対して垂直軸方向に本体側案内体3を設けて前記本体側案内体3に弓体4を接着し前記弓体4を摺動させてトレーニングすることにより、力の挿入方向が一定で安定する演奏方法が習得でき、実際のバイオリン等弦楽器の演奏時に音色が安定した演奏が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例を示す弦楽器のトレーニング器の構成図
【図2】同トレーニング器を横から見た図
【図3】同トレーニング器を裏から見た図
【図4】図1に示すトレーニング器の本体1a又は1bの支持体挿入部側から見た図
【図5】本体側案内体3と弓体4の関係を上から見た図
【図6】同弦楽器のトレーニング器の使用状況を示す図
【図7】図1のA−A断面図
【図8】弓毛の弦上での配列状態を示す図
【図9】弦に対する理想的な力の挿入方向を示す図
【図10】把持部材を示す
【図11】把持部材を使用したトレーニングを示す図
【図12】本発明の第2の実施例を示す斜図
【図13】図12の実施例のトレーニングを示す図
【図14】本発明の第3の実施例を上から見た図
【図15】図14のB−B断面図
【図16】本発明の第4の実施例を上から見た図
【図17】第3、第4の実施例に使用する弓体
【図18】本発明の第3の実施例のトレーニングを示す図
【図19】本発明の第5の実施例のトレーニングを示す図
【図20】第5の実施例に使用する弓体
【図21】第5の実施例に使用する弓体
【図22】第5の実施例に使用する弓体の斜図
【図23】第5の実施例に使用する弓体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例を図に基づいて説明すると、図1に示すようにバイオリンを模った本体1を分割し、バイオリンを首にあてる部分の本体1aと他方の本体1bで挟持された案内体取付具2が本体1a・1bそれぞれに取り付けられている。2分割された案内体取付具2a・2bの間に本体側案内体3が取り付けられている。本体側案内体3が本体1a・1bの表板1c・1dに対して垂直軸方向に設けられている。本体側案内体3は本体1a・1bの間に設けられており、その位置はバイオリンを演奏する時に弦と弓が当接する部分に相当する。この本体側案内体3に接して摺動可能なように弓案内体11が設けられており、この弓案内体11には、弓体4が接続されている。本体側案内体3と弓案内体11に図3に示すように1対のスライドレールで構成されておりスライドレールの溝で摺動案内されている。弓体4は弦楽器を演奏する時の弓の形状を模っている。弓体4を垂直軸方向(上下方向)に動作されると、弓体4と一体の弓案内体11が、本体側案内体3と摺動しながら移動する。5はバイオリンのネックを示し本体1bに一体に固定されており、トレーニング時には左手で支持する。図5は、本体側案内体3と弓体4との関係を上方向から表した平面図である。案内体取付具2a,2bは支持体9a,9bが図7に示すように本体1a,1bに設けられた支持体挿入部10a,10bに挿入され、本体1a,1bにそれぞれ取り付けられている。
【0009】
図4に示すように、本体1aと本体1bにはナット8が固定されている。固定具7で支持体9を固定したり開放したりすることができる。
【0010】
次に動作について説明する。トレーニング時は図1又は図6に示すように本体1aの表板1cとを首と顎で挟みこみ左手でネック5を持ってバイオリンを固定する。この状態で弓体4の右側の部分を右手で持ち表板1c,1d弓に対して垂直軸方向すなわち上下方向に弓体4を動作させる。この時、弓体4の移動は弓案内体11と本体側案内体3のガイドによって1方向にのみ移動する。弓案内体11と本体側案内体3の間には滑らかな移動をさせるために摩擦力が小さい材料を選定する事が望ましい。また図1の前後左右方向に弓体4が移動しないように弓案内体案内11と本体側案内体3を構成して、弓体4が上下方向のみ動くようにすることが望ましい。
【0011】
トレーニング者は弓案内体11の角度決めをした後、固定具7でロック状態にしてトレーニングを行う事も、また固定具7をアンロック状態にしてフリーの状態で弓体4の角度を変えながら行う。このトレーニングにより弓とバイオリンの角度が安定させ弓毛の配置を最低限の変化で演奏するトレーニングができ音が安定する。
【0012】
きれいな音で演奏するためには2次元的に弓が弦と直角に交わりながら演奏するだけでは不十分である。3次元的に、力の挿入方向も弦とほぼ垂直軸方向にして圧力をかける事も大切である。
【0013】
さらに図11に示すように、把持部材14を弓体4の外周に自在に摺動するように設ける。
【0014】
図11に示すように、把持部材14を保持して自在に弓体に沿って摺動させて、弓の動きに見立てた方向には把持部材14で摺動させ、垂直軸方向には、本体側案内体3で摺動させてトレーニングを行う事ができる。
【0015】
又、弓体と把持部材14の断面形状は真円以外の形状で多角形などの、把持部14の回動を規制する形状にする事もできる。
【0016】
把持部材14か弓体4の少なくともどちらか一方をスライド機能を持ったレールなどで構成し、スライドさせながらトレーニングを行う事もできる。
【0017】
バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの弓の毛は、複数の毛束(馬の尾)からなる。弦を弓に張られた毛束で擦り音を出す。しかし弓で弦をこする時に、意図しない方向に力の挿入してしまう事がよくあり、その事により、毛束部分の配列が崩れ、音色が一定でなくなる。したがって、バイオリンできれいな音を出すためには、弓でバイオリンの弦をこする時の、力の挿入方向をバイオリンの表板に対して、垂直軸方向に常に一定にする事が望ましい。本発明は、腕や、手、指に力の挿入方向を覚え込ませるものである。また、案内体取付具2の支持軸9を軸回転可能に保持されるようにしたので、力の挿入角度をバイオリンの表板に対して直角を保ったまま、スライドレールなどの案内体を弦方向の軸を中心に、軸回転でき、全ての弦の練習に対応できる。
【0018】
図12は第2の実施例である。分割可能な分割体15a,15bがある。前記分割体には分割体開口部16a,16bが設けられている。前記分割体開口部16a,16bに軸芯A17を貫通させる。面ファスナー23や、磁気などの互いに接触する素材を前記分割体15a,15bが向かい合う側の面にそれぞれ接着してもよい。
【0019】
前記軸心17を、軸芯挿入孔18に挿入し固定具7で固定する。
【0020】
次に動作について説明する。図13に示すように、分割体15aと分割体15bの間に玩具の包丁当を差し入れて分割することにより、バイオリンを演奏する時の正しい力の挿入方向を手に覚え込ませる事ができる。また、幼児用には果物や野菜等の玩具に模した分割体15に面ファスナーを取り付けて使用してもよい。
【0021】
図14は、第3の実施例である。バイオリンを模った本体Bがある。本体Bをバイオリンの弓がバイオリンを横切る位置に長孔22設ける。前記長孔22内に軸芯Bをバイオリンの弦の方向に設ける。
【0022】
図15は、図14のB−B断面図である。
【0023】
次に動作について説明する。図18に示すように凹部を設けた弓体B21の凹部をで、軸芯B20差し入れ垂直軸方向に手をガイドする。
【0024】
バイオリンは使用者の身長や手の大きさによって使用するサイズが異なり、7つのサイズがある。16図に示すように長孔22を複数個設ける事により長い期間トレーニング器を使用できる。
【0025】
図19は、本発明の第5の実施例を示す図である。弓体C24は、前述の本体に設けられた弓道27に挿入する弓体C先部25と弓体C把持部26からなる。弓体C先部25と弓体C把持部はスライドレールなどの縦方向案内体25aと26aを介して接している。次に動作について説明する。前記縦方向案内体25aと26aを、本体の表面に対して縦方向になるように角度決めする。弓体C先部25を弓道27に差し込む。そして、弓体C把持部26を持ち、縦方向案内体25aと26aを互いに摺動させながら往復運動してトレーニングする。弓体C24は実施例では2分割したが、3分割以上にしてもよい。
【0026】
図20は、弓体Cを横から見た図である。
【0027】
図21は、弓体Cの動作方向を示す図である。矢印方向に弓体C把持部26が摺動する。弓体C把持部26を持ち、手に往復運動させる事で弦に圧力をかける正しい方向を覚え込ませる事が可能である。
【0028】
図22は、弓体Cの斜視図である。
【0029】
図23は、図20のC−C断面図であり、凹凸部分で案内しながら摺動させることができる。

【符号の説明】
【0030】
1、 本体
2、 案内体取付具
3、 本体側案内体
4、 弓体
7、 固定具
9、 支持体
10、支持体挿入部
11、弓案内体
14、把持部材
15、分割体
16、分割体開口部
17、軸芯
18、軸芯挿入孔
19、本体B
20、軸芯B
21、弓体B
22、長孔
23、面ファスナー
24、弓体C
25、弓体C先部
26、弓体C把持部
27、弓道



【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器を模った本体及び弓体と、前記本体上に前記本体の表板の面に対して垂直軸方向に設けられ前記弓体をガイドする本体側案内体と、前記弓体の端部に設けられた弓案内体とを備え前記本体側案内体に前記弓案内体を摺動可能にした事を特徴とする弦楽器のトレーニング器。
【請求項2】
本体側案内体は、本体に設けられた案内取付具に取り付けられた事を特徴とする請求項1記載の弦楽器のトレーニング器。
【請求項3】
案内体取付具は弦方向の軸を中心にして回転可能な請求項2記載の弦楽器のトレーニング器。
【請求項4】
弓体に装着されて、前記弓体の軸方向に摺動する把持部材を設けた事を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の弦楽器のトレーニング器。
【請求項5】
弦楽器を模った本体と2つ以上に分割された弓体と前記弓体の端部に設けられた縦方向案内体と前記本体上に設けられ弓体を案内する弓道を有する弓案内体と前記弓体の一方を前記弓道に案内し前記弓体の他方を前記縦方向案内体を介して摺動させる事を特徴とする弦楽器のトレーニング器。


【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−247768(P2012−247768A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227867(P2011−227867)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(505090562)
【Fターム(参考)】