説明

弦楽器の奏法補助具および奏法補助具を備えた弦楽器

【課題】楽曲のイメージや曲の展開の変化に応じて、多彩に演奏表現と演奏方法を向上させることができる弦楽器の奏法補助具および奏法補助具を備えた弦楽器を提供する。
【解決手段】弦楽器1のブリッジ12からネック後端部4までの間で、弦3と同方向に伸びている指置き7を、弦楽器1のボディー2に固定する底面固定部6に一体に設け、最低音弦を覆わないピックアップフェンス14を設け、弦楽器の奏法補助具および奏法補助具を備えた弦楽器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弦楽器の演奏を補助する弦楽器の奏法補助具と奏法補助具を備えた弦楽器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
演奏では楽曲のイメージや曲の展開の変化に応じて音の音色を変えることが行われている。音の音色を変えるための方法として、同じ音程の音を異なる弦で演奏すること以外に、ネックの後端部やブリッジの近くで弦を弾く方法もある。それは、ネック後端部に近いところで弾くと軟らかいイメージの音色が得られ、ブリッジに近いところで弾くと硬いイメージの音色が得られることから、演奏者は楽曲にあった音色を工夫して表現している。また、演奏者の音色の好みや演奏のしやすさなどによって弦を弾く位置も様々である。
【0003】
演奏方法の一つとして人差し指・中指などで弦を弾く場合には、弦を弾く手を安定させるために、ピックアップの側面に親指を置いて演奏する奏法を多くの演奏者が行っている。
【0004】
ピックアップの側面以外に弦を弾く手を安定させるための指置きでは、例えば特許文献1のL字形状をした指置きをボルトやネジなどにより弦楽器に取り付けることが提案されている。
【0005】
ピックアップと弦全体を覆うピックアップフェンスを奏法補助具として弦楽器に取り付ける演奏者もいる。そのピックアップフェンスを取り付けることによって、ネック後端部の位置で弦を親指で叩く(サムピッキング)演奏方法を行う演奏者には、掌をピックアップフェンスに打ち付けるなどで弦を叩く力をコントロールしやすくなるなどの利点が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 実用新案登録第3139701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常の弦楽器は、ピックアップの側面とネックの側面以外に親指を置く場所は設けられていない。楽曲のイメージや曲の展開の変化に応じて音の音色を変えるために、ネックの後端部やブリッジの近いところで弦を弾くときには、手を浮かせて、あるいは親指をボディーに沿わせてなどの不安定な状態で弦を弾かなければならない。
【0008】
また、弦を弾く位置にピックアップと弦全体を覆うピックアップフェンスを弦楽器に取り付けることによって、人差し指・中指などで演奏する方法では、ピックアップの側面や弦の上に親指を置いて演奏することが出来ないので、弦から離れた位置で演奏しなければならないことや弦の上を幅広く覆ってしまうことが、ピックアップフェンスを邪魔と感じる演奏者は多い。
本発明は以上の問題点を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
弦楽器のブリッジからネック後端部までの間で弦と同方向に伸びている指置きを弦楽器のボディーに固定する底面固定部に一体に設け、最低音弦を覆わないピックアップフェンスを設ける。
以上の構成よりなる弦楽器の奏法補助具および奏法補助具を備えた弦楽器。
【発明の効果】
【0010】
ネック後端部からブリッジまでの間で弦を弾く手を安定させた状態で、やわらかいイメージから硬いイメージまでの音色を無段階に変えられることから、楽曲のイメージや曲中の展開の変化に対応させて多彩な演奏表現と演奏方法を向上させ、演奏者の音色の好みや演奏のしやすさなどの弦を弾く様々な位置に対応することができる。
【0011】
また、最低音弦を覆わないピックアップフェンスによって、前記親指を置く指置きを使用でき、演奏時に邪魔と感じていた不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の奏法補助具を備えた弦楽器の正面図である。
【図2】本発明の奏法補助具の正面図である。
【図3】図1のB−B´断面図である。
【図4】図1のピックアップ部の矢視A方向の要部側面図である。
【図5】図1のC−C´断面図である。
【図6】従来の弦楽器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1および図2に示す奏法補助具(5)は、弦楽器(1)のボディー(2)に固定する底面固定部(6)に指置き(7)とピックアップフェンス(14)が一体に形成されている。
【0014】
図3に示すように指置き(7)は、底面固定部(6)からリブ(10)が一体に立ち上がり、指置き端部(9)が形成されている。指置き端部(9)は、リブ(10)の両側面において指が弦に当接した感覚と同じように曲率を持つ形状が側面から突出するように形成されている。
【0015】
図1に示すように指置き(7)は、ネック後端部(4)からブリッジ(12)までの間で弦(13)と同方向に伸びており、違和感無く演奏できる位置に設定されている。これは、通常の弦(13)は、ブリッジ(12)に近づくにつれて各弦との間隔は広がるようになっているので、指置き(7)を最低音弦(13−4)に平行に設定するとブリッジ(12)近くでは遠く離れた弦を弾くことから弾きづらくなってしまう。よって、指置き(7)は最低音弦(13−4)に平行ではなく、違和感無く演奏できる位置に弦(13)と同方向に伸びて設定されている。
【0016】
また、違和感無い位置に指置き(7)を設定させるために、ピックアップ(11)と干渉する場合には、図4および図5に示すように指置き(7)のリブ(10)に切り欠き部(10a)を設けることによって、ピックアップ(11)と指置き(7)が干渉しないようにしている。
【0017】
人差し指・中指などで弦を弾く演奏方法から、ネック後端部(4)付近を親指で叩く(サムピング)演奏方法への移行を容易にするために、図1に示すように指置き(7)の指置きネック側(8)がネック後端部(4)に向かって傾斜している。
【0018】
図3に示すように、指置き(7)から離れた1弦(13−1)や2弦(13−2)を人差し指・中指などで弾くときには、弾いていない弦から音が出ないように、指置き(7)から最低音弦(13−4)に親指を移動させて最低音弦(13−4)の上に置く。その逆に最低音弦(13−4)を弾くときは、最低音弦(13−4)から指置き(7)に親指を移動させて演奏する。この親指の移動を容易に無理なく行うために、ボディー(2)の上面から指置き(7)の指置き端部(9)までの高さが、ボディー(2)の上面から最低音弦(13−4)までの高さよりも低く設定している。
【0020】
これは、指置き端部(9)から最低音弦(13−4)に向かって親指を下げるだけで容易に最低音弦(13−4)に移動することができる。最低音弦(13−4)から指置き端部(9)に向かって親指を上げる場合は、身体に近付く方向に手を上げた方が楽に動作できることから、指置き端部(9)は最低音弦(13−4)よりも低く設定している。
【0021】
図5に示すようにピックアップフェンス(14)のピックアップフェンス端部(14a)が、1弦(13−1)から最低音弦(13−4)までの間に位置するように設定している。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、弦楽器(1)のボディー(2)に固定する底面固定部(6)の形状は図1および図2に示す形状に限らず、例えば図6に示すように従来の弦楽器(101)に取り付けられているピックガードと呼ばれる様々な形状の板(106)にしてもよい。
【0024】
また、図5に示すピックアップフェンス(14)が底面固定部(6)に一体に形成されているが、ピックアップフェンス(14)が底面固定部(6)とは別に単独で形成し、弦楽器(1)のボディー(2)にネジやボルトなどで取り付けてもよい。
【0025】
また、図3に示す指置き端部(9)は、リブ(10)の両側面において指が弦に当接した感覚と同じように曲率を持つ形状が側面から突出するように形成されているが、突出する部位が曲率を持つ形状に限ったものではなく、リブ(10)の両側面に突出部位を設けなくてはならないものでもない。
【0026】
また、図1に示す指置き(7)の指置きネック側(8)はネック後端部(4)に向かって傾斜しているが、人差し指・中指などで弦を弾く演奏方法だけであれば傾斜しなくてもよい。
【0027】
使用に際しては、弦楽器(1)のボディー(2)に備えた奏法補助具(5)の指置き(7)に親指を置いて人差し指・中指などで弦を弾いて演奏する。楽曲のイメージや演奏中の展開によって、ネック後端部(4)からブリッジ(12)の間で親指を指置き(7)に当接させた状態で移動させて弦を弾く。また、ネック後端部(4)の弦を親指で叩く(サムピッキング)演奏方法では、ピックアップフェンスの弦を覆う部分に掌を打ち付けるなどで弦を叩く力をコントロールして演奏する。
【符号の説明】
【0028】
1 弦楽器、2 ボディー、3 ネック、4 ネック後端部、5 奏法補助具、6 底面固定部、7 指置き、8 指置きネック側、9 指置き端部、10 リブ、10a 切り欠き部、11 ピックアップ、11a ピックアップ側面、12 ブリッジ、13 弦、13−1 1弦、13−2 2弦、13−3 3弦、13−4 最低音弦、14 ピックアップフェンス、14a ピックアップフェンス端部、101 従来の弦楽器、106 板、114 従来のピックアップフェンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器のブリッジからネック後端部までの間で弦と同方向に伸びている指置きを弦楽器のボディーに固定する底面固定部に一体に設け、最低音弦を覆わないピックアップフェンスを設けたことを特徴とする弦楽器の奏法補助具および奏法補助具を備えた弦楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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