説明

弦楽器用ストラップ

【課題】演奏中にギターが落下破損することを防止しつつ、ギターを演奏者の負担にならないように支持することができ、動きに対する拘束も少なく、着衣の下にも好適に隠してステージ上の見栄えも向上させ得るようにした新規有用な弦楽器用ストラップを提供する。
【解決手段】ギターGのボディ前部に付帯するストラップピンに対して脱着可能なストラップピン接続部22aを有する前ストラップ部22と、ギターGのボディ後部に付帯するエンドピンに対して脱着可能なエンドピン接続部23bを有する後ストラップ部23と、演奏者の首に掛ける首掛け部21aを有するネックストラップ部21とを備え、このネックストラップ部21が、首掛け部21aの下方に一対のストラップラインを束ねる絞り部21bを備え、この絞り部21bの下方に前ストラップ部22を連設し、後ストラップ部23をウェスト回りに支持させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器の演奏に特に適した使用状態を与える弦楽器用ストラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のギターやベースのストラップは、ボディ前部に付帯する前ストラップピンとボディ後部に付帯する後ストラップピンとにストラップを脱着可能に掛け渡して取り付けるようにしているのが通例である。すなわち、演奏姿勢では片肩から背中にかけてたすき状にストラップが掛かった状態をなしている。これは特許文献を引用するまでもなく周知であり、また特に引用すべき特許文献も見当たらないが、強いて挙げるならば下記の非特許文献1〜3が参考となる。
【非特許文献1】GibsonGearホームページ、[online]、平成18年5月10日、[平成18年5月18日検索]、インターネット<URL:http://www.gibson.com/Products/Accessories/Gear/Accessories/Straps/>
【非特許文献2】Fenderホームページ、[online]、平成18年4月26日、[平成18年5月18日検索]、インターネット<URL:http://www.fender.jp/catalogue/sa/straps.php/>
【非特許文献3】ARIAホームページ、[online]、平成18年1月17日、[平成18年5月18日検索]、インターネット<URL:http://www.ariaguitars.com/jp/02prod/03acce/strap00.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように片肩から背中にかけてたすき状にストラップが掛かっていると、ライブ、コンサート等の演奏時にストラップが片肩から外れたときに、ギターが落下破損し、さらにはライブ、コンサート等の中断を招く場合があった。また、ストラップラインが露出してステージ上の見栄えが悪く、肩への疲労も大きくなるという問題があった。特に、ストラップが掛かる位置には左右に僧帽筋という筋肉が位置しており、一方の僧帽筋のみに負荷が掛かると、いわゆる肩こりと呼ばれる症状が起こることが知られており、まさにストラップのたすき掛けは肩こりを助長する支持構造であると言うことができる。
【0004】
さらに、演奏でのパフォーマンス時に、たすき状に掛かったストラップで演奏者の体やステージ衣装の片肩、背中部分を傷めてしまうという問題や、スポットライト等による発汗により、体と密着しているストラップ部分が蒸れてしまい、汗染み等によるステージ衣装の痛み、ダメージ、皮膚への悪影響が大きくなるという問題等もあった。
【0005】
さらに、従来のストラップは、前ストラップピン及び後ストラップピンに対してストラップの長さをそれぞれ独立して調整する事ができないため、ギターの種類や演奏者の体格等に応じたベストポジションを獲得する事が難しいという問題があった。
【0006】
さらにまた、ストラップが大きなループ状をなしているため、演奏終了後にストラップをつけたままで楽器を壁やスタンドなどに立てかけている最中に、ストラップに足等を引っ掛けて楽器を倒し破損に至る事故が多かった。
【0007】
本発明は、大切なギター・ベースに穴を開けてストラップピンを移動する加工等を要することなく、ほとんどのエレクトリックギター・ベース等に使用する事ができて、これらの課題を有効に解決することのできる画期的な弦楽器用ストラップを新たに提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明の弦楽器用ストラップは、前ストラップピン及び後ストラップピンを有する弦楽器に適用可能なものであって、弦楽器のボディ前部に付帯する前ストラップピンに対して脱着可能な前ストラップピン接続部を有する前ストラップ部と、弦楽器のボディ後部に付帯する後ストラップピンに対して脱着可能な後ストラップピン接続部を有する後ストラップ部と、演奏者の首に掛ける首掛け部を有するネックストラップ部とを具備し、このネックストラップ部の下方に前記前ストラップ部を連設するようにしたものであることを特徴とする。
【0010】
このように構成すると、ライブ、コンサート等の演奏時にネックストラップ部が不慮に外れるおそれがないため、ギターの落下破損、更にはライブ、コンサート等の中断を招く不都合を解消することができる。また、弦楽器の荷重が主として首の左右の付け根に掛かり片肩の僧帽筋への集中負担となることがないため、肩を痛めたり、肩に疲労が蓄積することも解消することができる。さらに、体に対する拘束が少ないため、動き易く演奏に適した状態を確保することができる。
【0011】
或いは、本発明は、前ストラップピン及び後ストラップピンを有する弦楽器に適用可能なものであって、弦楽器のボディ前部に付帯する前ストラップピンに対して脱着可能な前ストラップピン接続部を有する前ストラップ部と、弦楽器のボディ後部に付帯する後ストラップピンに対して脱着可能な後ストラップピン接続部を有する後ストラップ部と、演奏者の首に掛ける首掛け部を有するネックストラップ部とを具備し、このネックストラップ部が、前記首掛け部の下方に一対のストラップラインを束ねる絞り部を備え、この絞り部の下方に少なくとも前記前ストラップ部を連設するようにしたものであることを特徴とする。
【0012】
このように構成すると、上記の作用効果に加えて、首から回り込んだ一対のストラップラインは首掛け部の下方に設けた絞り部において体の中心付近に束ねられるため、ストラップラインを着衣の下或いはネクタイの下などに隠すことが容易となり、見栄えを格段に向上させることができる。
【0013】
後ストラップ部については、上方にウェスト回りに係合可能な係合部を有し下方に後ストラップピン接続部を有するものとすることで、弦楽器の荷重が首の左右の付け根と腰の3点に分散されるので、首への負担を軽減することができる。しかも、後ストラップ部はウェスト回りに係合させるので、着衣の下にストラップラインをほぼ隠すことができ、ネックストラップ部と相まって全体として弦楽器を浮いたような状態で支持することが可能となる。
【0014】
この場合、後ストラップ部の係合部が、ウェスト回りに位置変更可能であると、後ストラップ部の係合部の位置を腰のサイドから後方に回り込ませることによって、エンドピンが後方に引かれてギターのボディがウェスト回りに移動し、その際にボディの下半部が大腿部に乗り上げる形になるので、第6弦の背後に第5弦〜第1弦が重なった状態から第1弦目までが目視できる方向にギターが起き上がる作用が生じるので、フレットも同時に目視できるようになる事と相まって、通常姿勢でも指押さえがし易い状態となる。このため、演奏状態を改善する効果も見込めるものとなる。
【0015】
或いは、後ストラップ部は、前ストラップ部とともに絞り部の下方に二股に分岐する形で連設されたものであってもよい。このようにすると、絞り部から分岐部分までのストラップラインはほぼ真っ直ぐ降りるので、着衣やネクタイの下に隠し易く見栄えの向上という点では上記に準じ、また、絞り部の近傍にバックル等による脱着部を設ければ、全体の取り外しがここのみにおいてワンタッチで行え、ステージ上での弦楽器の持ち替え等をより迅速に行えるようになる。
【0016】
これらにおいて、演奏者の背部において首掛け部から下方の背中部分にストラップラインが存在しないようにしておけば、背中がストラップから完全に解放されるので、背中を痛めることがなくなり、見栄えも格段に向上するだけでなく、発汗等によるストラップ部分の蒸れやそれに起因する種々の不具合も解消することができる。
【0017】
ただし、演奏者の背部においてネックストラップ部を構成する首掛け部を背ストラップ部を介してウェスト回りに接続する構成は有効である。このようにすると、ネックストラップ部に掛かる負荷の一部を背ストラップ部が分担するため、首掛け部から首に掛かる負担を軽減することができる。また、ストラップラインは背中に掛かるものの、たすき状をなす従来のものほど広範囲に強く密着することはないため、動き難さや背中を痛めるおそれも軽減することができる。
【0018】
上記において、少なくともネックストラップ部又は前ストラップ部の一部に長さ調整部を設けておけば、少なくともヘッドの高さを調整して弦楽器の傾きを変えることができるので、べストポジションをとり易くなる。
【0019】
更に進んで、後ストラップ部にも長さ調整部を設け、前後の調節部を独立して長さ調節可能としておけば、ボディー全体の高さ位置や傾きを体格や好みに応じて個別に調整することができ、より的確なベストポジションをとることができるようになる。
【0020】
本発明の他の構成としては、前ストラップピン及び後ストラップピンを有する弦楽器に適用可能なものであって、弦楽器のボディ前部に付帯する前ストラップピンに対して脱着可能な前ストラップピン接続部を有する前ストラップ部と、弦楽器のボディ後部に付帯する後ストラップピンに対して脱着可能な後ストラップピン接続部を有する後ストラップ部と、演奏者のウェストに巻かれるウェストストラップ部とを具備し、このウェストストラップ部の一部に少なくとも前記前ストラップ部の上部を取り付けるようにしたものが挙げられる。
【0021】
このように構成すると、演奏でのパフォーマンス時にウェストラップ部が不慮に外れるおそれがないため、ギターの破損や、コンサート・ライブでの演奏の中断を招く不都合を解消することができる。また、弦楽器の荷重がウェストに掛かり肩への負担とならないため、肩を痛めたり、肩に疲労が蓄積することも解消することができる。しかも、ウェストストラップ部は着衣の中にほぼ完全に隠すことができ、前ストラップ部も大半は着衣の下に隠すことができるので、見栄えを格段に向上させることが可能となる。また、ストラップがたすきのように大きく肩に掛かることがなく、拘束が少ないため、動き易く演奏に適した状態を確保することができる。
【0022】
この場合も、後ストラップ部が、上方にウェスト回りに係合可能な係合部を有し下方に後ストラップピン接続部を設けた態様等が有効である。
【0023】
また、ウェストストラップ部に肩紐を接続して演奏者の肩に掛けることができるようにしておけば、肩紐によってウェストストラップ部を適正に支持することができ、肩紐の一部に長さ調節部を設ければウェストストラップ部の高さ位置も適切に調節することが可能となる。また、このような肩紐を用いることによって肩への負担は掛かるものの、ウェストストラップ部を介して腰が楽器の荷重を一部負担し、且つ両肩で支持するため、動き難さや背中を痛めるおそれも軽減することができる。
【0024】
なお、サックスストラップ等の先端のフックに接続されるように前ストラップ部を構成すれば、この前ストラップ部および後ストラップ部を新たに設けるのみで本発明を実施することも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上説明した構成であるから、弦楽器を首や腰で支持してストラップの不慮の脱落を防止するとともに、演奏者の負担にならないようにすることができ、動きに対する拘束も少なく、着衣の下にも好適に隠してステージ上の見栄えも向上させ得るようにした新規有用なストラップを提供することが可能となる。勿論、このようなストラップを従来のストラップと併用し、従来のストラップにより肩に掛けたり、本発明のストラップにより首に吊るし或いはウェストに支持させたりすることで、体への負担をより有効に分散する利用形態も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の幾つかの実施形態を、前ストラップピン及び後ストラップピンを有する弦楽器としてギターを採り上げつつ、図面を参照して説明する。なお、以下において、後ストラップピンをエンドピンと称し、前ストラップピンを単にストラップピンと称する。
【0027】
この実施形態で例示するエレクトリックギター・ベース(以下、単に「ギターG」と称する)は、図1(a)に示すように、ボディ1の前部(ボディ上部とも通称される)1aにストラップピン11が付帯し、ボディ1の後部(ボディ下部とも通称される)1bにエンドピン12が付帯する通常のものである。大抵のギターGは、ボディ前部1aがネックジョイント部13からネック14の幅方向に広がっており、そのうちピックガード1cの反対側に位置する部位の端面にストラップピン11が立っている。ただし、いわゆるフライングV等々の変形ギターと称されるギターG、又はその他一部の種類のギターGは、図1(b)に示すように、ボディ背面のネックジョイント部付近にストラップピン11が演奏者側に立っており、本発明はこのような態様にも適用できるものである。エンドピン12はボディ後部1bの端面に立っている。
【0028】
そして、従来のストラップは、ストラップピンとエンドピンの間に大きなループをなすように掛け渡し、これを片肩から背にかけてたすき状に掛けて利用するものであったが、本実施形態のストラップは、以下に述べるように異なる構造及び使用状態を実現しているものである。
(第1実施形態)
【0029】
この実施形態のストラップ2は、図2〜図5に示すように、ネックストラップ部21、前ストラップ部22及び後ストラップ部23から構成されている。
【0030】
ネックストラップ部21は、演奏者の首に掛けるループ状の首掛け部21aを有し、この首掛け部21aの下方に一対のストラップラインを束ねる絞り部21bをリュックカン等により構成して、その下方に回転カン21cを配置している。首掛け部21aのうち首に直接接触する部分にはやや厚肉で柔らかい素材からなるネックガード21a1が設けてある。ストラップラインは絞り部21bの上方において2重、絞り部21bから回転カン21cまでの間において4重をなしており、絞り部21bの位置を調節することによって4重となる領域の長さ(したがって2重となる領域の長さ)を変えてネックストラップ部21全体の長さ調節が行えるようにしている。すなわち、この絞り部21bは長さ調節部を兼ねている。回転カン21cは軸部を介して上部Dカン21c1と下部Dカン21c2とを相対回転可能に接続した通常のもので、ストラップ2のねじれ防止の役割を果たしており、その下部Dカン21c2にバックル式の脱着部22xを構成する上脱着要素21dを取り付けている。
【0031】
前ストラップ部22は、下端側にストラップピン11(図1参照)に対して脱着可能なストラップピン接続部22aを有し、上端側に前記上脱着要素21dと対になってバックル式の脱着部22xを構成する下脱着要素22bを有したもので、ストラップピン接続部22aにはストラップピン11にワンタッチで脱着できるロックピンや、単にストラップピン11を挿通して引掛ける構造の挿通穴等が採用される。
【0032】
後ストラップ部23は、図3に示すように、ウェスト回りに係合可能な係合部23aを有し、下方にエンドピン12に対して脱着可能なエンドピン接続部23bを有したもので、この実施形態で係合部23aはベルト通し(図示省略)に引っ掛けるフック23a1と、ベルトBに巻き掛けて止めることのできるジャンパーホック23a2の両方を備えている。エンドピン接続部23bはエンドピン12にワンタッチで脱着できるロックピンのほか、単にストラップピンを挿通して引掛ける構造の挿通穴等であってもよい。係合部23aとエンドピン接続部23bとの間は、この実施形態では回転カン23c、リュックカンを用いた長さ調節部23d、及び脱着要素23e1、23e2を用いたバックル式の脱着部23eが設けてある。
【0033】
演奏者がこのストラップを使用する際は、首にネックストラップ部21の首掛け部21aを掛け、上脱着要素21dを前ストラップ部22の下脱着要素22bに接続するとともに、後ストラップ部23を右利きであれば右サイド、左利きであれば左サイドのウェスト回りに取り付けて、この後ストラップ部23の脱着部23eを接続することにより、ギターGを演奏可能な状態に保持することができる。演奏後は、上記脱着要素21d、22bの間を解除し、脱着部23eを解離することによって、ネックストラップ部21や後ストラップ部23からギターGを取り外すことができる。
【0034】
このように構成すると、演奏でのパフォーマンス時にネックストラップ部21が不慮に外れるおそれがないため、ギターの破損や、ライブ、コンサート等の中断を招く不都合を解消することができる。また、ギターGの荷重が主として首に掛かり肩への大きな負担とならないため、肩を痛めたり、肩に疲労が蓄積することも有効に解消することができる。しかも、首掛け部21aの下方に絞り部21bが設けてあり、首から回り込んだ一対のストラップラインはこの絞り部21bにおいて体の中心付近に束ねられるため、図4に示すようにスーツ等のステージ衣装にてライブ、コンサート等の演奏を行う際に、ストラップラインをネクタイNの下などに隠すことが容易となり、且つ背中にストラップラインがなくなるためステージ上のプレイヤーの見栄えを格段に向上させることができる。勿論ステージ衣装が図5に示すようなシャツやTシャツ、或いはジャケット、もしくは図2に示すように衣類を身にまとわず上半身を露出させてライブ、コンサート等の演奏を行う場合等であっても、プレイヤーのステージ上の見栄えを向上させることができる。また、これらの図に明らかなように、体に対する拘束が少ないため、動き易く演奏に適した状態も確保することが可能である。
【0035】
特に、本実施形態では、ギターGの荷重の一部が前ストラップ部22及びネックストラップ部21を介して首に掛かり、残りが後ストラップ部23を介して腰に掛かるようにしてあり、首と腰で荷重が分散されるので、首への負担を有効に軽減することができる。しかも、後ストラップ部23はズボンZを利用してウェスト回りに掛け止めるものであるので、図2→図4のようにスーツやジャケット等を着ればこの後ストラップ部23のストラップラインも着衣の下にほぼ隠すことができ、ネックストラップ部21と相まって全体としてギターGを浮いたような状態で支持することが可能となる。
【0036】
この場合、後ストラップ部23の係合部23aは、ベルトBに沿ってウェスト回りにスライド可能であるため、後ストラップ部23の係合部23aの位置を、例えば図3に矢印Y1で示すように腰サイドから後方に回り込ませることによって、エンドピン12が矢印Y2のように後方に引かれてギターGのボディ1がウェスト回りに移動し、その際にボディの裏面下側が下腹部の位置から大腿部に乗り上げる形になるので、演奏者の目線から見て第6弦の背後に第5弦〜第1弦が重なった調整前状態から、図4に想像線及び矢印Y3に示すように第1弦目まで目視できる方向にギターが起き上がる作用が生じる。このときフレットも同時に目視できるようになり、また、ベグが設けられているネックの先端(ヘッド)がネックストラップ部21及び前ストラップ部22による規制の中で演奏者の前上方に起立する方向に移動してボディ1が若干立つような形になるので、これらが相まって、通常姿勢でも指押さえのし易い演奏状態が得られ、ギターの保持状態を改善する効果も見込めるものとなる。
【0037】
さらに、図5に示すように演奏者の背部において首掛け部21aから下方の背中部分にストラップラインが存在せず、背中がストラップから完全に解放されるので、背中を痛めることがなくなるだけでなく、発汗等によるストラップ部分の蒸れやそれに起因する種々の不具合も解消することができる。
【0038】
さらにまた、ネックストラップ部21及び後ストラップ部23の双方に長さ調整部21b、23dを設けており、それらを独立して調節することができるため、ボディー1の高さ位置や傾きを体格や好みに応じて個別に調整することができ、より的確なベストポジションを獲得することができるようになる。
【0039】
加えて、脱着部22x、23eを外せばストラップ2が前ストラップ部22と後ストラップ部23に分断された状態になり、大きなループ状をなすことがないため、演奏終了後にストラップ2の一部をつけたままでギターGを壁やスタンドなどに立てかけている状態でストラップ2の一部に足等を引っ掛けてギターGを倒し破損に至る事故なども解消することができる。
【0040】
なお、ネックストラップ部21のみ、或いは前ストラップ部22のみに調整部を設けても、少なくともヘッドの高さを調整してギターGの傾きを変えることができるので、ベストポジションをとり易くなる点で依然として有効である。また、上記実施形態ではネックストラップ部21と前ストラップ部22の間に脱着部22xが設けてあるが、ネックストラップ部と前ストラップ部は不離一体に、つまりネックストラップ部の先端が前ストラップ部をなすように構成しても構わない。さらに、回転カン21cはストラップのねじれを防止するために設けているものではあるが、ねじれがさほど問題にならない場合にはこれを省略することができる。ネックガード21a1もシャツの上からストラップを首に掛ける場合等には必ずしも必要なものではない。さらにまた、長さ調節部を全く有しない態様によっても、本発明の基本的な作用効果は奏することができる。
(第2実施形態)
【0041】
この実施形態は、上記第1実施形態のストラップ2に、更に図6に示すように、演奏者の背部においてネックストラップ部21を構成する首掛け部21aとウェスト回りとの間を接続する背ストラップ部24を設けたものである。
【0042】
この実施形態におけるネックストラップ部21には、演奏者の背部に位置する部位に三角カン、Dカン等の接続カン21pが介在させてあり、この接続カン21pの下方に背ストラップ部24を連設している。背ストラップ部24は、上記接続カン21pの下方に接続カン21qを介して接続されたもので、接続カン21qからストラップラインが二股に分岐させてあり、その各々にリュックカン等の長さ調節部24bを介してジャンパーホック等の止着部24cを設けたものである。
【0043】
演奏時には、ネックストラップ部21の首掛け部21aを首に通し、背面に垂れ下がった止着部24cをズボンZのベルトBに巻き付けて止めるなどすれば、この背ストラップ部24のセットを完了することができる。
【0044】
このようにすると、ネックストラップ部21から首周辺に掛かる負荷の一部を背ストラップ部24で分担することができるので、肩はもとより首周辺の疲労軽減等を図る上で有効となる。ストラップラインは背中に逆V字状に掛かるため、負荷が左右ほぼ均等に分散され、また背中のうち大きく動く肩甲骨あたりにストラップが位置しないため、たすき状に背中に大きく掛かる従来のものほど体への密着度や拘束度は高くならず、動き難さや背中を痛めるおそれも軽減することができる。また、背面からの見栄えは多少犠牲になるものの、正面からの見栄えは上記第1実施形態と全く同様であり、更にこの上から背広等を着用すれば外観は正面、背面ともに上記第1実施形態と全く同様となる。
【0045】
なお、上記接続カン21p、21qを用いるかわりに、図7に示すような集束カン25を用いて同様の機能を実現することもできる。この集束カン25は、平面視矩形状をなし、対向辺にそれぞれ対をなすスリット25s1、25s2を開口させたもので、一対のストラップ紐20a、20bをクロスさせて指し通すようにしている。これにより、各ストラップ紐20a、20bは集束カン25の上方においてネックストラップ部21を構成し、集束カン25の下方において背ストラップ部24を構成することになって、接続カン21p、21qを2つ用いる場合に比べて部品点数の削減を図ることができる。
(第3実施形態)
【0046】
図8に示す本実施形態のストラップ102は、前記第1実施形態のネックストラップ部21とほぼ同様(回転カン21cをとったもの)のネックストラップ部121を用い、その脱着部122xを構成する下脱着要素に三角カン、Dカン等の接続カン120を接続するとともに、この接続カン120に前ストラップ部122及び後ストラップ部123を二股に分岐させて連設したものである。
【0047】
前ストラップ部122及び後ストラップ部123には、それぞれリュックカン等を用いた長さ調節部122b、123dを介してストラップピン接続部122a及びエンドピン接続部123bが連設してあり、これらをストラップピン11及びエンドピン12に脱着可能に取り付けるようにしている。121bは絞り部であり、構造は絞り部21bと同様である。
【0048】
このように構成すると、絞り部121bから分岐部分までのストラップラインはほぼ真っ直ぐ降りて着衣やネクタイの下にさらに隠れ易く、前ストラップ部122及び後ストラップ部123も着衣の下に隠し易くなるので、見栄えの向上に資する点で第1実施形態等と同様となる。また、脱着部122xのみにおいてギターGの取り外しがワンタッチで行えるため、ステージ上での弦楽器の持ち替え等をより迅速に行えるようになる。
【0049】
さらに、前後のストラップ部122、123の調節部122b、123dが独立して調節可能であり、ネックストラップ部121にも調節部121bが設けてあるため、調節の自由度は更に高いものとなる。
【0050】
さらにまた、前後のストラップ部122、123がなすループは従来に比して遥かに小さいものであるため、上記実施形態と同様、不使用時に立て掛けた状態で足等を引っ掛けて楽器を倒し破損に至る事故等も有効に防止することができる。
【0051】
なお、このストラップ102に図6に示す背ストラップ部24を併用しても、上記第2実施形態と同様の効果が奏される。その際、このストラップ102は、首から吊り下げているだけで前後の振れに対して拘束がないため、主にエレクトリックベース(アコースティックベース、セミアコースティックベース)を指引きする際に最も適していると言い得る。もちろん、ピックを使用して演奏する場合やエレクトリックギターにも適した弦楽器用ストラップであることに変わりはない。
【0052】
但し、前後の振れを効果的に抑止したい場合には、必要に応じて図9に示すように前ストラップ部122及び後ストラップ部123をウェスト背面から巻き回した補助ストラップ部125によって連結するようにしてもよい。補助ストラップ部125はバックル等の脱着部によってウェスト回りに固定し、リュックカンやバックル等の長さ調節部によってウェスト部分の長さを調整できるものである。このようにすると、ネックストラップ部121が体から大きく離れることがなくなるため、演奏中に激しく動いても適正な演奏状態を確保することができる。
【0053】
また、この実施形態においても、必要であればネックストラップ部に回転カンを用いるなど、種々の変形を加えることが可能である。
(第4実施形態)
【0054】
この実施形態のストラップは、図10に示すように、演奏者のウェストに巻かれるウェストストラップ部3を備え、このウェストストラップ部3に前ストラップ部222の上部を取り付けるとともに、後ストラップ部223をウェスト回りに係合させるようにしたものである。
【0055】
ウェストストラップ部3は、演奏者のウェストに巻き付けてリュックカン等の長さ調節を兼ねる止着部31において適宜の締め付け状態を確保するようにしたもので、着用状態でこのウェストストラップ部3の一方のサイド(右利きであれば左サイド、左利きであれば右サイド)に前ストラップ部222の上部を取り付けている。取付部分にはウェスト回りにスライド可能なスライドカン222aが採用してあり、適宜の位置に前ストラップ部222を調節できるようにしている。この前ストラップ部222は、長さ調節部222bを介してストラップピン接続部222cへと連なっている。
【0056】
一方、後ストラップ部223は、前記第1実施形態(図3参照)における後ストラップ部23と同様の構成からなり、取り付け方や使い方等も既に述べた通りである。
【0057】
このように構成すると、演奏でのパフォーマンス時にウェストストラップ部3が不慮に外れるおそれがないため、ギターの破損や、ライブ、コンサート等の中断を招く不都合を解消することができる。また、ギターGの荷重が腰に掛かり肩への負担とならないため、肩を痛めたり、肩に疲労が蓄積することも解消することができる。しかも、ウェストストラップ部3は着衣の中にほぼ完全に隠すことができ、前ストラップ部222も大半は着衣の下に隠すことができるので、見栄えを格段に向上させることが可能となる。特に、このストラップが適用されているギターGは、第1実施形態〜第3実施形態のストラトキャスター等の通常のギターとは異なり、図1(b)にも示すフライングVと称される変形ギターGである。この種の変形ギターGや、SG、エクスプローラ等のボディ背面ネックジョイント部付近にストラップピンを有する構造のギターG等の場合、ストラップピン11がボディの背面から演奏者の方向に突出しており、このようなギターGに本実施形態のストラップを適用すると、前ストラップ部222がウェストへの取付位置からねじれることなく真っ直ぐ下りるので、服の盛り上がりが起こらない点で特に有効となる。また、前ストラップ部222をウェスト回りに支持させると、前ストラップ部222のストラップピン接続部222c自体が図示のように低い位置にくるので、そのストラップピン接続部222cに図1(a)のストラトキャスター等のようにネックジョイント部から離れた位置にストラップピン11を有するギターGを支持させるとボディ前部1aが下り過ぎることとなるが、ネックジョイント部の背面にストラップピン11が位置する図1(b)や図10の変形ギターG等においては、ストラップピン11の高さ位置が適切であるため、ボディ前部1aの位置も適正化される。このため、上記見栄えの観点とも併せて、このストラップは変形ギター等のようにボディ背面ネックジョイント部付近にストラップピンを有する構造のギターG等の支持に特段有効なものとなる。
【0058】
後ストラップ部223の係合部をスライドさせることによる演奏状態改善の効果も既に述べたものと同様である。
【0059】
さらに、ストラップラインが上半身になく、体への拘束がないため、より動き易く演奏に適した状態を確保することができる。不使用時の事故が防げる点も然りである。
(第5実施形態)
【0060】
図11に示すものは、上記ウェストストラップ3の変形として、コルセット状のウェストストラップ103を用い、両サイドにそれぞれスライドカン322a、323aを用いて前ストラップ部322及び後ストラップ部323の上部を位置調節可能に取り付けたものである。
【0061】
ウェストストラップ103は面ファスナー等を利用してウェスト回りに適宜の締め付け状態で装着できるようになっている。
【0062】
前ストラップ部322には、リュックカン等の長さ調節部322b及び回転カン322cを介してストラップピン接続部322dが設けてあり、後ストラップ部323には、リュックカン等の長さ調節部323bを介してエンドピン接続部323cが設けてある。
【0063】
これによると、ウェストストラップ103の装着状態が安定する上に、前ストラップ部322及び後ストラップ部323から掛かる荷重によってウェストストラップ103の一部が垂れ下がる等の不都合も回避することができるので、支持状態を確実にし、着衣の盛り上がりを的確に防いでより良好な見栄えを確保することができる。
そして、このストラップも上記第4実施形態と同様、変形ギター等のようにボディ背面ネックジョイント部付近にストラップピンを有する構造のギターGの支持に特段有効なものとなる。
【0064】
また、後ストラップ部323のスライドカン323aは本発明の係合部をなし、この後ストラップ部323もウェスト回りに取付位置をスライド移動させることができるので、上述した演奏状態改善の効果も奏されるものとなる。
(第6実施形態)
【0065】
図12に示すものは、図10のウェストストラップ3に、更に肩紐4を接続して演奏者の肩に掛けることができるようにしたものである。
【0066】
肩紐4は、ウェストストラップ部3の前回し部の一部にスライドカン41を設け、このスライドカン41に左右の肩紐4の前下端を左右スライド可能に取り付けるとともに、それらの中間部にリュックカン等を用いて長さ調節部42を設けたものであり、後下端をウェストストラップ部3の後回し部に接続している。肩から背に回り込んだ肩紐はそのまま平行に下ろしても交叉させても構わない。ウェストストラップ部3の後回し部はバックル等、適宜の手段によって固定されている。
【0067】
このようにすると、肩紐4によってウェストストラップ部3を適正に支持することができ、肩紐4の一部に設けた長さ調節部42によってウェストストラップ部3の高さ位置も自在に調節可能となる。また、このような肩紐4を用いることによって肩への負担は多少は掛かるものの、肩紐4が対をなしている上にウェストストラップ部3がその一部を負担するため、従来のストラップに比して動き難さや背中を痛めるおそれは確実に軽減することができる。
そして、このストラップも上記第4実施形態と同様、変形ギター等のようにボディ背面ネックジョイント部付近にストラップピンを有する構造のギターGの支持に特段有効なものとなる。
(第7実施形態)
【0068】
図13に示すストラップ402は、先端が前ストラップ部422を兼ねるネックストラップ部421と、後ストラップ部423とから構成される。
【0069】
前ストラップ部422は、演奏者の首に掛ける首掛け部421aを有したもので、左右2本のストラップラインはそのまま前ストラップ部422へと連続しており、この前ストラップ部422の先端が束ねられてロックピンや挿通穴などのストラップピン接続部422aが設けてある。一方、後ストラップ部423は、図3の後ストラップ部23等と同様、ベルトやベルト通しを利用してウェスト回りに係合可能な係合部423aを有したもので、先端にロックピンや挿通穴などのエンドピン接続部423bを有している。
【0070】
このように構成した場合、第1実施形態と比較して絞り部が存在しない点、途中に脱着部が存在しない点で異なるものであるが、ギターGをストラップ402で支持した状態では、首元から左右のストラップラインが次第に相寄りながら略直線状に垂れ下がって前ストラップ部422へと連続することになる。このため、ネクタイ等の下には隠し難いものの、従来のたすき状に掛かるストラップほど見栄えを大きく損なうものとはならず、構造がシンプルである上に、ネックストラップ部402を通して首の付け根に荷重が掛かり肩への負担がなくなる点、首とウェストで負荷を分散できる点などにおいては上記第1実施形態と全く同様の効果を奏するものとなる。
(第8実施形態)
【0071】
図14に示すストラップ502は、前記第1実施形態と同様、ネックストラップ部521に絞り部521bを有するものの、この絞り部521bは三角カン、Dカン等により構成されていて図2の絞り部21bのようには長さ調節機能を備えておらず、絞り部の下方に別個にリュックカン等による長さ調節部521eを設けている。そして、この絞り部521eの下方に前ストラップ部522を連設している。ネックストラップ部521の首掛け部521aは、上記絞り部521bによって首元で閉じられており、この絞り部521bが丁度ネクタイの結び目の下に位置するようにして、絞り部521bの下方のストラップラインが略完全にネクタイの幅寸法内に隠れ、図2及び図4のものよりも更に見栄えが向上するようにしている。後ストラップ部523は、図3の後ストラップ部23等と同様、ベルトやベルト通しを利用してウェスト回りに係合可能な係合部523aを有したもので、先端にロックピンや挿通穴などのエンドピン接続部523bを有している。
【0072】
加えて、このネックストラップ部521には、背後に図15に示す背ストラップ部524が連設してある。この背ストラップ部524は、図7に示す集束カン25を用いて一対のストラップラインを束ねているもので、各ストラップ紐20a、20bは集束カン25の上方においてネックストラップ部521を構成し、集束カン25の下方において背ストラップ部524を構成している。そして、ネックストラップ部521を構成するストラップ紐20bにバックル等による脱着部521xを設け、この脱着部521xを通じて首掛け部521aの開閉を行い得るようにしている。
【0073】
このようにすることで、図14に示すネックストラップ部521の脱着を簡易かつ適切に行うことを担保し、また背ストラップ部524を設けることによって図6及び図7に関して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0074】
なお、この背ストラップ部524を採用することなく、図14のネックストラップ部521の首掛け部521aの背面側に左右から回り込むストラップラインを接続する位置に脱着部を設けるようにしても勿論構わない。このようにしても、脱着部の脱着操作を通じて首掛け部521aの開閉を有効に行うことができる。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明の効果を再度まとめると以下のようになる。
【0076】
従来のギターストラップでは、片肩から背中にかけてたすき状にストラップがかかっているため、ライブ、コンサート等での演奏時にステージ上でパフォーマンスする際、ストラップが肩からはずれてギターが落下破損し、更には演奏が中断する事故も少なくなかったが、本発明によるとこのような事故を有効に回避することが可能となる。
【0077】
従来のギターストラップは片肩から背中にかけてストラップがかかっているため、演奏時にステージ上でパフォーマンスする際、ステージ衣装の片肩、背中部分を傷めてしまう事があったが、本発明のネックストラップ部やウェストストラップ部を用いてギターを固定すると、上記の不具合が有効に改善される。
【0078】
従来のギターストラップは片肩から背中にかけてストラップがたすき状にかかっているため、ライブハウス、コンサートホール、野外等の演奏場でライブ、コンサートを行う際、スポットライト等による発汗によりストラップ部分が蒸れてしまい、不衛生の原因となるほか、汗染み等によるステージ衣装のダメージ、ストラップの脱色、皮膚への悪影響があったが、本発明によるとこれらを有効に改善する事ができる。
【0079】
従来のギターストラップは片肩から背中にかけてストラップがたすき状にかかっているため、全国ツアー等で頻繁にライブ、コンサート等の演奏を行う者や、ギター演奏を職業とする者等にとって、結構な重量があるギターその他の弦楽器を従来のストラップで支持すれば片肩の僧帽筋への過大な負担となって、肩こりなどの疲労や肩を痛めるケースが多い事は周知であったが、本発明によるとこれらを有効に改善することができる。
【0080】
従来のギターストラップではほとんどの者が演奏終了後ギターにストラップを付けたまま壁等に立てかけたり、ギタースタンドを利用するので、ストラップに足等をひっかけてギターを倒し破損する事故が多かったが、本発明はバックル等の脱着部を採用し、演奏終了後ワンタッチでギターとストラップの一部を分離する事ができるので、上記の様な事故を防止することができる。
【0081】
ギターはボディー部分にストラップを取り付けるストラップピン(ボディー前部)とエンドピン(ボディー後部)2箇所を有し構成されている。従来のギターストラップは片肩から背中にかけて1本のストラップが、ストラップピンとエンドピンにたすき状にかかっているため、ストラップピンとエンドピンに対してストラップの長さをそれぞれ独立して調整する事ができなかったが、本発明のうち例えばネックストラップ部と腰サイドに取り付けるストラップの2つの要素から構成されるもの等では、ストラップピンとエンドピンに対してそれぞれ独立して個々のストラップの長さを調整することが可能となる。これにより、一層細やかなボディー位置上下の調整が可能となり、それぞれ異なるギタープレイヤーに応じたベストポジションを獲得する事が可能となる。
【0082】
従来のギターストラップでは片肩から背中にかけてたすき状にストラップがかかっているため、ストラップが露出していたが、本発明は着衣の中でストラップを用いてギターを固定することができるので、ストラップをストラップピン(ボディー上部)とエンドピン(ボディー下部)に取り付ける迄のストラップラインの露出が殆どなく、ストラップのラインを隠し、ステージ上の見栄えの向上に資するものとなる。特にステージ衣装の背中部分がデザインされたものや、装飾品又は飾りを有する衣装を使用する場合には非常に有効となものとなる。
【0083】
本発明は、既存のストラップピン及びエンドピンにそのまま適用することができるので、ヴィンテージギター等の大切で高価なギターに穴開加工を施しストラップピンを移動させる等といった手法を要することなくほとんどのギターに使用する事ができる。そして、何れのストラップ構成要素もシンプルであり、ストラップ紐を初め、絞り部や長さ調節部、脱着部などに既存部品を使用することができるので、量産性を損なわず、このストラップを廉価にて大量に供給することが可能となる。
【0084】
ライブ、コンサート等では各演奏曲の変わり目に時間がとれない場合が多いが、従来のストラップでは、背中付近に長さ調節部があり長さ調整に時間がかかるので、ライブ、コンサート等の演奏中、曲目に応じてボディーの位置を変更したいというプレイヤーの希望が叶い難かった。これに対して、本発明は数秒で長さ調節が可能となり、且つストラップピン、エンドピンを支持するストラップ部分をそれぞれ独立して長さ調節することができる。これらから、曲目に応じてストラップの長さを調節しボディーのポジションを変更したいプレイヤーには非常に有効なものとなる。具体的には、この曲は始まりから終わりまでほとんどがコードで構成されているのでボディーを下のポジションに調整しライブアクションを強調したい、この曲はソロがあるので高めのポジションに調節したい等々、これまでには実現されなかったプレイヤーの要望に迅速且つ簡易的に応える事ができる。
【0085】
さらに、従来のギターストラップは片肩から背中にかけてストラップがたすき状にかかっているため、演奏者の目線から見て第6弦の背後に第5弦〜第1弦が隠れ、意図的にギターを6弦全てが見える方向に起こさなければ弾き難い状態にあったが、本発明の後ストラップ部が位置変更可能(必ずしもスライドするものに限られない)であるものは、後ストラップ部をウェストの後方に移動させることによって第1弦までを自然な姿勢で視認できるようにギターを起こすことができ、弾き易さを格段に向上させることができる。
【0086】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0087】
例えば、上記第2実施形態では、図2に示すストラップを構成するネックストラップ部21の背面側に図6に示す背ストラップ部24を設ける場合を例示したが、その変形として、図8に示すストラップを構成するネックストラップ部102の背面側に図6に示す背ストラップ部24を設ける態様も可能である。或いは、上記第5実施形態では、図11に示すようにコルセット状のウェストストラップ部103に前ストラップ部322及び後ストラップ部323を取り付けるようにしたが、この後ストラップ部323に替えて図3の後ストラップ部23を用いる態様も勿論可能である。
【0088】
また、ストラップの素材にはナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成繊維を初めとして、布や皮、合成皮革など種々のものを用いることができ、接続カンや回転カン、脱着部、集束カンも、樹脂や金属など種々のものを用いることができる。
【0089】
また、本発明は、ギターとして、コントラバス等のウッドベースやアップライトベース以外の弦楽器、例えば代表的なエレクトリックベースであるジャズベースタイプやプレシジョンベースタイプ、他には、アコースティックベース、セミアコースティックベース、フォークギター、前ストラップピン及び後ストラップピンを加工して取り付けたクラシックギター、アコースティックギター、エレクトリックアコースティックギター(エレアコ)、フルアコースティックギター、セミアコースティックギター、または、エレクトリックギターの代表的なボディー構造の種類として、ストラトキャスタータイプ、レスポールタイプ、テレキャスタータイプ、ジャズマスタータイプ、ジャガータイプ、ムスタングタイプ、SGタイプ、フライングVタイプ、エクスプローラータイプ、ファイヤーバードタイプ、その他、サイレントギター、スピーカー・アンプ内臓エレクトリックギターなど、あらゆるギター・ベースに対応することが可能である。
【0090】
その場合、大切なギター・ベースに穴を開けてストラップピンを移動する加工等を要することなく、ほとんどのエレクトリックギター・ベース等に使用する事ができるのは上述した通りであるが、もちろん頻繁に行われる、ストラップピンを移動させる加工を施せば、全てのギターに使用することが可能となる。
【0091】
また、ギター・ベース以外にも、前ストラップピン及び後ストラップピンを有する弦楽器(例えばバンジョーなど)に適用した場合には、上記と同様の作用効果が奏される。
【0092】
その他の構成も、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、例えば、ネックストラップ部にピックホルダーを設けたり、ウェストストラップ部にトランスミッターを取り付けるなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明が適用されるギターの一般的構成を示す図。
【図2】本発明の第1実施形態を使用状態において示す図。
【図3】同実施形態の後ストラップ部を拡大して示す図。
【図4】同実施形態を着衣状態で示す図。
【図5】同実施形態の背面図。
【図6】本発明の第2実施形態を使用状態において示す背面図。
【図7】第2実施形態の変形例を示す図。
【図8】本発明の第3実施形態を使用状態において示す図。
【図9】第3実施形態の変形例を示す図。
【図10】本発明の第4実施形態を使用状態において示す図。
【図11】本発明の第5実施形態を使用状態において示す図。
【図12】本発明の第6実施形態を使用状態において示す図。
【図13】本発明の第7実施形態を使用状態において示す図。
【図14】本発明の第8実施形態を使用状態において示す図。
【図15】図14の背面図。
【符号の説明】
【0094】
G…弦楽器(ギター)
1a…ボディ前部
1b…ボディ後部
1c…ボディ
2、102…ストラップ
3、103…ウェストストラップ部
4…肩紐
11…ストラップピン
12…エンドピン
21、121…ネックストラップ部
21a…首掛け部
21b、121b…絞り部、長さ調節部
22、122、222…前ストラップ部
23、123、223…後ストラップ部
23a…係合部
22a、122a、222c…ストラップピン接続部
23b、123b…エンドピン接続部
23d、122b、123d、222b…長さ調節部
24…背ストラップ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前ストラップピン及び後ストラップピンを有する弦楽器に適用可能なものであって、弦楽器のボディ前部に付帯する前ストラップピンに対して脱着可能な前ストラップピン接続部を有する前ストラップ部と、弦楽器のボディ後部に付帯する後ストラップピンに対して脱着可能な後ストラップピン接続部を有する後ストラップ部と、演奏者の首に掛ける首掛け部を有するネックストラップ部とを具備し、このネックストラップ部の下方に前記前ストラップ部を連設するようにしたものであることを特徴とする弦楽器用ストラップ。
【請求項2】
前ストラップピン及び後ストラップピンを有する弦楽器に適用可能なものであって、弦楽器のボディ前部に付帯する前ストラップピンに対して脱着可能な前ストラップピン接続部を有する前ストラップ部と、弦楽器のボディ後部に付帯する後ストラップピンに対して脱着可能な後ストラップピン接続部を有する後ストラップ部と、演奏者の首に掛ける首掛け部を有するネックストラップ部とを具備し、このネックストラップ部が、前記首掛け部の下方に一対のストラップラインを束ねる絞り部を備え、この絞り部の下方に少なくとも前記前ストラップ部を連設するようにしたものであることを特徴とする弦楽器用ストラップ。
【請求項3】
後ストラップ部が、上方にウェスト回りに係合可能な係合部を有し下方に後ストラップピン接続部を有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の弦楽器用ストラップ。
【請求項4】
後ストラップ部の係合部が、ウェスト回りに位置変更可能とされていることを特徴とする請求項3記載の弦楽器用ストラップ。
【請求項5】
後ストラップ部が、前ストラップ部とともに絞り部の下方に二股に分岐する形で連設されたものであることを特徴とする請求項3記載の弦楽器用ストラップ。
【請求項6】
演奏者の背部において首掛け部から下方の背中部分にストラップラインが存在しないことを特徴とする請求項1〜5記載の弦楽器用ストラップ。
【請求項7】
演奏者の背部においてネックストラップ部を構成する首掛け部を背ストラップ部を介してウェスト回りに接続していることを特徴とする請求項1〜5記載の弦楽器用ストラップ。
【請求項8】
少なくともネックストラップ部又は前ストラップ部の一部に長さ調整部を設けていることを特徴とする請求項1〜7記載の弦楽器用ストラップ。
【請求項9】
後ストラップ部にも長さ調整部を設け、前後の調節部を独立して長さ調節可能としていることを特徴とする請求項8記載の弦楽器用ストラップ。
【請求項10】
前ストラップピン及び後ストラップピンを有する弦楽器に適用可能なものであって、弦楽器のボディ前部に付帯する前ストラップピンに対して脱着可能な前ストラップピン接続部を有する前ストラップ部と、弦楽器のボディ後部に付帯する後ストラップピンに対して脱着可能な後ストラップピン接続部を有する後ストラップ部と、演奏者のウェストに巻かれるウェストストラップ部とを具備し、このウェストストラップ部の一部に少なくとも前記前ストラップ部の上部を取り付けるようにしたものであることを特徴とする弦楽器用ストラップ。
【請求項11】
後ストラップ部が、上方にウェスト回りに係合可能な係合部を有し下方に後ストラップピン接続部を設けたものであることを特徴とする請求項10記載の弦楽器用ストラップ。
【請求項12】
ウェストストラップ部に肩紐を接続して演奏者の肩に掛けることができるようにしていることを特徴とする請求項10又は11記載の弦楽器用ストラップ。
【請求項13】
請求項2記載の弦楽器用ストラップを構成する前ストラップ部及び後ストラップ部。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−316151(P2007−316151A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143032(P2006−143032)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(506175655)
【Fターム(参考)】