弱い外部電場を有するNMRらせんRFプローブコイル対
【課題】NMR試料領域に対して、より低い電場成分を生成できるようにするためのNMRプローブコイルを提供する。
【解決手段】NMRプローブコイル巻き線の電位差により生成されるRF電場は、NMR試料および試料管を貫通して、NMR分光において感度の損失およびノイズを引き起こす場合がある。平面基板の両側または2つの隣接する平面基板に配置された逆巻きらせんコイルは、試料領域に対して電場を最小化する電位を生成し、それによりNMRプローブの感度を増加させる。あるいは、NMR試料を包囲する2つの同軸の円筒面の外面上に互いに隣接して配置された逆巻きらせんコイルが、試料領域に対して電場を最小化する。らせんコイルの電位は、少なくとも1つのコイルの長さを調節することにより、低減される。
【解決手段】NMRプローブコイル巻き線の電位差により生成されるRF電場は、NMR試料および試料管を貫通して、NMR分光において感度の損失およびノイズを引き起こす場合がある。平面基板の両側または2つの隣接する平面基板に配置された逆巻きらせんコイルは、試料領域に対して電場を最小化する電位を生成し、それによりNMRプローブの感度を増加させる。あるいは、NMR試料を包囲する2つの同軸の円筒面の外面上に互いに隣接して配置された逆巻きらせんコイルが、試料領域に対して電場を最小化する。らせんコイルの電位は、少なくとも1つのコイルの長さを調節することにより、低減される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴(NMR)に関し、特に、試料容積にわたって最小のRF電場を有する強いRF磁場を提供するRFプローブコイル形状に関する。
【背景技術】
【0002】
NMRは、分子構造を分析するための効果的な技術である。しかし、構造分析用の他の技術に比べて、感度の低い技術でもある。最大の感度を得るために、NMR磁石および分光計は、高い磁場強度で作動するように設計されており、冷却された常伝導金属の送信/受信コイル、または、好ましくは高温超伝導(HTS)材料で形成された送信/受信コイルを使用した、極低温で作動する、低ノイズのプリアンプおよびRFプローブコイルを使用している。送信/受信コイルは、核を励起して試料からのNMR反応を検知するプローブコイルであり、それゆえに、高感度を提供するために、試料の非常に近くに置かれる。HTSコイルは、最も高い品質係数Qを有しており、最も優れた感度を生み出す。通常、多重巻きらせんコイルが、NMR信号、特に13C、15Nおよび31Pなどの低ガンマ核を検知するために使用されている。試料付近のらせんコイルのターン(巻き)からの電場は試料を貫通し、誘電損失を引き起こし、ノイズを増加させる場合がある。試料を貫通する電場はまた、コイルの離調と、誘電率および試料位置に依存する共鳴周波数とを引き起こす。スピンしている試料では、この離調が、擬似的なスピンの側波帯につながる場合がある。
【0003】
RF電流がNMRプローブコイルの巻き線を通って流れるとき、RF磁場が、試料中で共鳴を励起する試料領域中に発生する。このRF磁場Bは、関連するRF電場Eを有している。このRF電場Eは、マクスウェルの方程式
curl E = -dB/dt
を使用して計算することができる。
【0004】
このRF電場からの損失を最小化するために、NMRプローブは、このRF電場が最小になる、またはゼロを通過する領域に試料が存在するように設計されている。
RFコイルの巻き線の間の電位により発生する電場の別の成分がある。このいわゆる保存電場は、RFコイル巻き線のターンの電位差から生じる。電場のこの成分Ecは、条件
curl Ec = 0
に従う。
【0005】
これは、生成するのに時間導関数を必要としないため、静電場と呼ばれる。電場のこの成分は、試料または試料管を貫通すると、エネルギー損失を引き起こす場合がある。送信中およびスピン分離実験中に、これらの損失は、試料の望ましくない加熱を引き起こす場合がある。受信段階で、NMR信号により誘導された電流もまた、RFプローブコイルのターンの間に電位を生じさせ、試料の容積を貫通する電場を引き起こすため、Qの損失が生じ、感度が低下する。試料は通常、室温またはその近くにあり、プローブコイルは非常な低温であるため、この電場結合を通じて、ノイズ電力もまた、RFプローブコイルに導入される。この損失は、試料とRFプローブコイルとの間の電場結合に比例しており、試料の誘電正接損失または放散係数および試料管の材料およびイオン性の試料の導電率に依存している。
【0006】
プローブに印加される直流電場の強さもしくは方向の小さな変化または他の磁場変動は、らせんコイルの超伝導フィルムの表面に、小さなシールド電流を誘導する。これらのシールド電流は、試料領域で磁場不均一性を引き起こし、ラインの拡大およびNMR感度の損失につながる場合がある。(下記特許文献1)。シールド電流を低減するために、コイルのターンは、RF電流フローに平行な方向にスリットを入れられて、シールド電流ループの寸法が低減されていてもよい。らせんコイルの各ターンは、多数の平行な導体または「フィンガーレット」に、フィンガーレットの間に小さな絶縁性の隙間を設けて、分割されていてもよい。
【0007】
この電場を低減するために、静電シールドが先行技術で使用されてきた。(下記特許文献2)。試料の領域で電場を低減する作業は非常に重要であり、ゆえに、代わりの方法および機器を見つける必要がある。従来の技術は、試料の領域で電場を最小化するために、逆巻きらせんコイルを使用していない。
コイルを小さいままに保ちながら低周波にも同調させることができることが要望される場合に、以前はらせん巻きコイルがMRI測定用の表面コイルとして使用されていた(下記特許文献3)。単一のコイルで達成できるよりも低い共鳴周波数を達成するために、MRI用途向けの、間に容量結合を設けた1対の環状の逆巻きコイルを使用することが提案されていた。この技術の教示は、試料領域に対して電場を低減することを考察または意図するものではなかった。
【0008】
高分解能NMRプローブ用のRFコイルは、調査されている核のNMR共鳴周波数に、正確に同調されなければならない。最大感度について、プローブRFコイルからの電場は、試料領域に最小の電場を発生させねばならない。コイルは、調べられている核種のRF周波数範囲において共鳴するように同調される。プローブは、コイルを巻くのに使用されるワイヤの全コイル長さを調節することにより、同調される。可変キャパシタにより、または共鳴体インダクタンスにわずかに調整可能な変更を与えるワンドにより、微同調が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,565,778号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0150536号明細書
【特許文献3】米国特許第5,276,398号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゆえに、試料の容積に対して実質的に低減されたRF電場を有する強いRF磁場を特徴とする、特定の形状のRFプローブコイルを提供する必要がある。
本発明は、NMR試料領域に対して、より低い電場成分を生成できるようにするためのNMRプローブコイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
NMRプローブは、2セットの逆巻きらせんコイル対を含んでいる。らせんコイルの各対は、誘電層の両側に巻かれており、両方のらせんは、所望の有効試料容積の形状に一致する矩形状または楕円形状を有している。2セットの逆巻きらせんコイルは、試料の両側で1つずつ使用される。各セットの2つのらせんコイルは逆巻きにされている。すなわち、2つのコイルは反対方向に巻かれ、らせんの内側から外側に向かって、一方が時計回りに巻かれ、他方が反時計回りに巻かれる。2セットのコイル対は、共通の連結ループにより駆動される。共鳴の最低モードにおいて、4つのらせんコイル中の電流フローは、所与の瞬間に同一の角度方向となり、コイルに隣接する試料容積中に大きなRF磁場を発生させる。1セットの各コイルの反対の「掌性」の結果として、電位は、一方のらせんの内側において負となり、外側において正となるであろう。それに対し、セットの他方のらせんコイルの電位は、内側で正となり、外側で負となるであろう。らせんコイル対の各コイルの相対的な長さを調節することにより、対の一方のらせんコイルからの電場が、同一でありながら反対の電位の空間分布を発生させることができ、その結果、らせんの間の誘電体が充填された空間に電場が良好に閉じ込められ、試料領域中の電場を最小化することができる。
【0012】
各らせんコイルからの電場の相対的な強さは、コイル長さの影響を受ける。電場は、試料領域中で反対の方向を向いている。ゆえに、らせんコイル対の各コイルの相対的な磁場強度は、各らせんコイルの相対的な長さを変化させることにより調整されて、試料領域中の電場強度を最小化してもよい。らせんコイル対の最低共鳴周波数はまた、2つのらせんコイルの合計長さにも依存している。十分な巻き長さで始めれば、らせんコイルの端は、所望のNMR周波数にコイル対を同時に同調させるために、およびそれと同時に、逆巻きらせんコイル対により生じる試料領域中の外部電場を低減するために、選択的に切断されていてもよい。
【0013】
HTSコイルは通常、切断を行うためにレーザトリマ(切断機)を使用して調節されている。逆巻きらせんコイル対のいくつかの構成において、レーザトリミング(切り取り)により個々のコイルを同調させようとしたときに、コイル端が重なって問題を起こす場合がある。コイルのターンまたはフィンガーレットを切断しようとしたときに、レーザ光線が、基板を貫通して反対側のコイルにまで届き、当該コイルを切断して破壊してしまう場合もある。この問題を克服するために、レーザ光線を吸収または散乱する材料を、逆巻きコイル対の2つのコイルの間に導入する。
【0014】
コイルの巻き長さを調節するためにトリムする(切り取る)とき、コイルターンを横断するフィンガーレットをすべて切断するのが好ましい。フィンガーレットのいくつかが切断され、同じターンの他の隣接するフィンガーレットが切断されずに、より短い端を有している場合、送信電力がコイルに印加されたときに、より短い端のフィンガーレットと近傍のフィンガーレットとの間にアークが発生する場合がある。このような現象を防ぐため、より短い端のフィンガーレット全体を除去してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】誘電体基板に固定された、先行技術のHTS NMRプローブコイルの図である。
【図1B】HTSコイルのフィンガーレットの図である。
【図2A】らせん巻きコイル対の第1のらせんコイルの図である。
【図2B】図2Aの第1のらせんコイルと同じ方向から見たときの、らせん巻きコイル対の第2のらせんコイルの図である。
【図2C】コイル対の端面から見たときの、らせん巻きコイル対の2つのコイルの図であり、2つのコイルの逆巻き特性を示す。
【図3A】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図3B】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図3C】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図3D】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図3E】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図4】2セットの本発明の逆巻きらせんコイル対を使用した極低温冷却NMRプローブを示すブロック図である。
【図5A】円筒誘電部材の外面に固定された、らせん巻きコイル対の第1のらせんコイルの図である。
【図5B】図5Aに示すものと同じ円筒誘電部材の内面に固定された、らせん巻きコイル対の第2のらせんコイルの図である。
【図6】2セットのらせん巻きコイル対の図であり、円筒誘電部材の外面に固定されたらせん巻きコイルのみを示す。
【図7A】2セットの逆巻きらせんコイル対の図であり、各セットの一方のコイルは外側円筒誘電部材の外面に固定されており、各セットの第2のコイルは同軸の内側円筒誘電部材の外面に固定されている。
【図7B】図7Aの2つの円筒が最終位置に固定された図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の上記の局面および利点は、添付の図面とともに以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
本明細書中では、HTSプローブコイル、冷却常伝導金属コイル、および室温NMRプローブコイル用の実施形態を開示している。現在のHTSコイルは、室温でその超伝導特性を失うため、冷却する必要がある。常伝導金属からなるコイルは、冷却してもよく、または室温に近い温度で稼動させてもよい。
【0017】
図1Aは、先行技術のHTS NMRプローブコイルアセンブリ100を示している。これは、試料にRF場を印加して核スピンを励起し、次いで、試料中の核スピンの反応を受信する。通常、コイル巻き線102は、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)などの高温超伝導(HTS)材料で形成されている。HTS材料は、スパッタリング、蒸着または他の方法で、サファイアなどの電気的絶縁平面基板101上に堆積されてもよい。通常、支持基板の厚みは400マイクロメートルとされており、HTS材料の厚みは0.3マイクロメートルとされている。コイルの各ターンは、複数の平行なチャネル、すなわちHTS材料の「フィンガーレット」から形成されている。囲み103で区切った部分を拡大して、図1Bの囲み103’に示している。
【0018】
図1Bは、コイル102の各ターンが、複数の平行な導体、すなわち、フィンガーレット107にどのように分割されているかを示している。隣接するターンの間の空間105は、通常、30〜100マイクロメートルの範囲とされている。フィンガーレットの目的は、いかなる外部磁場も、巻き線中に小さな永久電流ループを生じさせて試料領域にわたって磁場均一性を歪ませることのないようにすることである。フィンガーレット107の間の空間は10マイクロメートルの範囲であってもよく、各フィンガーレットの幅は0〜20マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0019】
NMR用途向けに2つのプローブコイルを、試料管の各側において1つずつ使用する。各コイルを支持している基板は、領域106の熱交換器に取り付けられている(図1A)。熱交換器(図4に示す143)は、プローブコイルアセンブリ100を冷却および温度制御する。連結ループ(図4の154)は、コイル巻き線に誘導可能に結合されており、NMR分光計に電気的に接続されている。これはRFエネルギーをコイルに結合してNMR共鳴を励起し、試料物質からコイルに誘導された反応を受信し、それを処理、記録および表示のために分光計に送信する。
【0020】
HTS NMRプローブにおいて、試料管は通常、円筒管であり、管の長軸は、平面基板101の各面に平行である。試料管は、図1Aの点線枠108により示された領域中において、コイル巻き線102に非常に近いところを通っている。この領域において、互いに隣接した近傍の巻き線との間の電位差により、近傍の試料管およびNMR試料を貫通する電場が生成され、上述したエネルギー損失および感度の低下を引き起こす。
【0021】
図2Aおよび図2Bは、らせん逆巻きコイル対を形成する2つのらせん巻きコイルを示している。作動時に、コイル対の2つのコイルは、誘電体基板111の両側に配置されている。図2Aのらせんコイル112は、誘電体基板111上に形成されており、内側端113から始まり外側端114に向かって、反時計回りに巻かれている。図2Bのらせんコイル122は、誘電体基板121上に形成されており、内側端123から始まり外側端124に向かって、時計回りに巻かれている。
【0022】
図2Cは、2つのらせん逆巻きコイル112および122がターンをぴったりと整列させて互いに隣接配置され、内側端から外側端に向かって、コイル112が反時計回りのらせんを描き、コイル122が時計回りのらせんを描いた状態の、正面図である。2つのコイルは互いに固定または接着されて、一体構造を形成してもよい。コイル112および122はそれぞれ、複数のフィンガーレットを含んでいてもよく、通常は各ターンにつき4〜30個のフィンガーレットを含んでいる。コイルを複数のフィンガーレットに分割することで、外部磁場によりターン中に誘導されるいかなる磁化作用をも低減することができる。
【0023】
好ましい実施形態において、追加のレーザ光遮断材料が、コイル112とコイル122との間に配置されている。一実施形態において、光遮断材料は、図2Cの点線133により輪郭を示す領域に配置されている。光遮断材料は、内側コイル端113および123もしくは外側コイル端114および124または両方が配置された領域を覆わねばならない。これは、図2Cに示すようにコイルの頂部であってもよいし、コイルの底部でもまたは側部でもコイルの端が配置されているところであればどこであってもよい。
【0024】
外部電場またはコイル対の共鳴周波数を調整するためにコイル112をトリミングする(切り取る)場合、領域133の光遮断材料は、レーザトリマ(切断器)からの光が、トリミングされているコイル112の領域のすぐ後に位置するコイル122の部分を切断するのを防ぐ。逆にコイル122をトリミングする場合、光遮断材料は、コイル112の部分が損傷を受けるのを防ぐ。
【0025】
図3A、図3B、図3C、図3Fは、本発明に係る、弱い外部電場を提供する異なるらせんコイルおよび基板構成を示している。これらは、逆巻きらせんコイル対に弱い外部電場を印加する、さまざまなコイルおよび誘電体基板構成に対応している。これらはすべて、図2Cに示すものと同一の投影を有しており、図2CのA-A断面を見たときの異なるコイル/基板構成に対応する。
【0026】
図3Aにおいて、図2Bのコイル122を有する基板121は、図2Aの基板111らせんコイル112の背部に直接、固定または接着されている。これらのらせんコイルは、分離された状態でレーザトリミングされ、次いで、その周波数および外部電場を確認して最終的な構成へと互いに固定されてもよい。これらの対の2つのセットをプローブに取り付けるとき、コイルの向きは、コイルを支持している基板の面が試料に最も近くなるように配置されるものであるのが好ましい。また、試料管に最も近い2つのコイルは、同じ「掌性(左右性)」を有しているのが好ましい。
【0027】
図3BのA-A断面において、らせんコイル122は、図2Aの基板111の第2の側に直接形成されており、らせんコイル112は基板111の第1の側にある。この構成により、非常に起伏が多くかつコンパクトな逆巻きらせんコイル対が得られる。コイルが同一の基板の2つの側に直接接着されているため、適切な誘電体基板材料を選ばねばならない。HTSコイルを使うと、誘電体基板は、コイルを支持し、良好な熱特性を有して適切な冷却を可能にするだけでなく、レーザ光を遮断して反対側のコイルに損傷を与えるのを防ぐこともできるであろう。
【0028】
図3C、図3Dおよび図3Eに示す構成では、2つの同一のらせんコイルが使用されている。反対巻きのらせんコイルが、別個の誘電シートに取り付けられた2つの同一のコイルから組み立てられており、第2のシートはその垂直軸を中心として180度回転されている。第1のコイル112が図2Aに示すように反時計回りに巻かれている場合、第2のコイルは基板を通して見たときに、両方の場合において、中心から時計回りに巻かれることになる。別体の光遮断材料は、逆巻き対の2つのらせんコイルの間で隣に位置しており、レーザ光が一方のらせんコイルをトリミングする間に他方が損傷するのを防ぐ。
【0029】
図3Cにおいて、レーザ光遮断材料の誘電材料131は、レーザ光を吸収または散乱し、図2Cの133によって示される領域において2つのコイル112および112’の間に挿入されている。次いで、図3Cの2つの基板111および111’は、縁から接着剤を導入して、互いに接着される。あるいは、2つの基板111および111’は、互いに固定されてもよい。光を散乱するように働くレーザ光遮断材料131は、0.001〜0.003インチの厚みのテフロン(登録商標)シートである。エポキシは有効な接着剤であることが分かっている。
【0030】
図3Dは、2つの基板111および111’の間の全領域がレーザ光遮断材料132で被覆され、次いで固定または接着された実施形態の図である。
図3Eは、別の代替的な構成を示している。この場合、2つの基板111および111’は、コイルを互いに対向させて、接着または固定されている。これらの間に配置された絶縁層134は、コイル112および112’が接触して短絡するの防ぎ、レーザ光に対する光学バリアを提供する。絶縁層134の材料および厚みを選ぶことで、2つのコイルの間の静電容量を制御してもよく、レーザ光に対する光学バリアを形成してもよい。
【0031】
図3A〜図3Eに係るこれらの実施形態のそれぞれにおいて、図2Cに示すように、らせん巻きコイルアセンブリの正面投影は、らせんコイル112が内側コイル端から外側端に向かって反時計回りに巻かれ、らせんコイル122もしくは112’が内側端から外側端に向かって時計回りに巻かれている状態、またはらせんコイル112が内側コイル端から外側端に向かって時計回りに巻かれ、らせんコイル122もしくは112’が内側端から外側端に向かって反時計回りに巻かれている状態となる。
【0032】
第1のコイルの一方の端が、コイルの左側または右側に位置して(コイルの頂部または底部に対向して)いる場合、逆巻きらせんコイルは、水平軸を中心に180度回転させることにより、形成してもよい。次いで、逆巻きコイルを、第1のコイルに重なるように正しく配置しなければならない。
NMRプローブは、これらの逆巻きコイル対を2セット含んでおり、図4の130および130’により示す、試料領域の各側に1セットずつ配置されている。図3A〜図3Eの構成はそれぞれ、本発明の異なる実施形態である。
【0033】
図4は、試料管141とNMR試料142とを有する極低温冷却プローブ140のブロック図である。プローブ140は、アルミニウムなどの非強磁性材料からなる外殻144と、例えば石英ガラスからなる内側誘電管145とを有している。外殻144および誘電内側管145は、真空気密空間146を形成している。この空間は排気されて、冷却コイル対130および130’ならびに暖かい試料142および試料管141を良好に断熱する。2つの逆巻きらせんコイル対130および130’は同一であって、試料管141の両側に取り付けられており、それぞれが熱交換器143と熱接触している。熱交換器143は内側管154を包囲して、両方のコイル対130および130’を冷却する。らせん巻きコイルの冷却は、冷却ガス源147によって行われる。HTS逆巻きらせんコイル対130および130’は通常、20Kの範囲の温度に冷却される。冷却ガスは、冷却ガス移送管148により、熱交換器143からおよび熱交換器143へと流れる。冷却ガス源147からの冷却ガスを供給する管は、プリアンプおよびT/R(送信/受信)スイッチ149から断熱されている。一方、一部使用されたガスを戻す管は、プリアンプおよびT/Rスイッチ149と熱接触しており、通常80Kの範囲の低温にガスを冷却する。あるいは、2つの冷却ガス連結ループを使用して、一方にらせん巻きコイル130を冷却させ、もう一方にプリアンプおよびT/Rスイッチ149を冷却させてもよい。
【0034】
RFプローブケーブル150が、連結ループ154を介して、らせん巻きコイル130および130’にRF電力を送信し、NMR応答信号を受信し、それらをプリアンプおよびT/Rスイッチ149に送信する。プリアンプおよびT/Rスイッチは、ケーブル153を介して分光計(図示せず)から送信電力を受信し、増幅されたNMR信号をケーブル151により分光計(図示せず)に送る。
【0035】
図5Aは、円筒誘電コイルフォーム161の外面に固定されたらせんコイル162を示している。巻き線は、らせんの内側端163から延び、外側端164に向かって時計回りに巻いている。コイル巻き線は、HTS材料または銅もしくはアルミニウムなどの常伝導金属からなっており、ワイヤまたは好ましくは薄片導体の形状である。この片は、異なる金属の2つ以上の層からなっていて、磁化率がゼロに近い片を形成していてもよい。コイルは、HTSコイル用に低温で作動してもよく、または常伝導金属コイル用に室温もしくは室温未満で作動してもよい。
【0036】
図5Bに示すように、逆巻きコイル172が同一のコイルフォーム161の内面に固定されており、明瞭にするために、らせんコイル162は示していない。この巻き線は、らせん172の内側端173から延びて、外側端174へと反時計回りに巻いている。このコイルは、コイルフォーム161の外面にあるコイル162にぴったりと隣接している。コイル162およびコイル172は、逆巻きらせんコイル対を形成している。
【0037】
逆巻きらせんコイル対の第2のセットは、同一のコイルフォーム上に配置されているが、コイルフォーム161の反対側にある。図6のコイルアセンブリ160は、コイルフォーム161の外面上にある2つのコイル162および162’を示している。コイル162および162’の両方は、コイルフォーム161の内面に、コイル162および162’に直接隣接して2セットの逆巻きらせんコイル対を形成する逆巻きコイル172および172’(図示せず)を有している。
作動中、図6のコイルアセンブリ160は、コイル130および130’により、図4に示す仕方で、分光計に誘導的に結合されている。アセンブリ160のコイルの最終同調は、個々のコイルの端をマシニングするまたは機械的に切断することにより行われ、適切な周波数および電位バランスを実現し、試料および試料管への最小の静電結合を実現する。
【0038】
図7Aは、円筒誘電コイルフォーム181および191に取り付けられた、2セットの逆巻きらせんコイル対の代替的な構成である。各セットの一方のコイル182および182’は、コイルフォーム181の外面に取り付けられている。各セットの第2のコイル192および192’は、第2のコイルフォーム191の外面に取り付けられている。図7Aは、共通の軸185について軸方向に整列された2つの誘電コイルフォームを示している。第2のコイルフォーム191は、巻かれたときに、コイルフォーム181内にぴったりとスライドし、コイル182および192は重なり合って一方の逆巻きらせんコイルセットを形成し、コイル182’および192’は第2の逆巻きらせんコイルセットを形成する。
【0039】
図7Bは、プローブにすぐに取り付けられる状態の、組み立てられたコイルを示している。逆巻きコイル対182、192は、図4の130で示す位置に取り付けられ、逆巻きコイル対182’、192’は、図4の130’で示す位置に取り付けられる。コイルは、試料管141および試料142の領域において、その共鳴周波数および電場について試験されてもよい。トリミングが必要な場合、コイルは除去されてもよく、コイルリードが機械的な切断器、レーザカッターまたはメスにより切断される。次いで、コイルは、さらなる試験またはプローブへの最終取り付けのために、再度組み立てられてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴(NMR)に関し、特に、試料容積にわたって最小のRF電場を有する強いRF磁場を提供するRFプローブコイル形状に関する。
【背景技術】
【0002】
NMRは、分子構造を分析するための効果的な技術である。しかし、構造分析用の他の技術に比べて、感度の低い技術でもある。最大の感度を得るために、NMR磁石および分光計は、高い磁場強度で作動するように設計されており、冷却された常伝導金属の送信/受信コイル、または、好ましくは高温超伝導(HTS)材料で形成された送信/受信コイルを使用した、極低温で作動する、低ノイズのプリアンプおよびRFプローブコイルを使用している。送信/受信コイルは、核を励起して試料からのNMR反応を検知するプローブコイルであり、それゆえに、高感度を提供するために、試料の非常に近くに置かれる。HTSコイルは、最も高い品質係数Qを有しており、最も優れた感度を生み出す。通常、多重巻きらせんコイルが、NMR信号、特に13C、15Nおよび31Pなどの低ガンマ核を検知するために使用されている。試料付近のらせんコイルのターン(巻き)からの電場は試料を貫通し、誘電損失を引き起こし、ノイズを増加させる場合がある。試料を貫通する電場はまた、コイルの離調と、誘電率および試料位置に依存する共鳴周波数とを引き起こす。スピンしている試料では、この離調が、擬似的なスピンの側波帯につながる場合がある。
【0003】
RF電流がNMRプローブコイルの巻き線を通って流れるとき、RF磁場が、試料中で共鳴を励起する試料領域中に発生する。このRF磁場Bは、関連するRF電場Eを有している。このRF電場Eは、マクスウェルの方程式
curl E = -dB/dt
を使用して計算することができる。
【0004】
このRF電場からの損失を最小化するために、NMRプローブは、このRF電場が最小になる、またはゼロを通過する領域に試料が存在するように設計されている。
RFコイルの巻き線の間の電位により発生する電場の別の成分がある。このいわゆる保存電場は、RFコイル巻き線のターンの電位差から生じる。電場のこの成分Ecは、条件
curl Ec = 0
に従う。
【0005】
これは、生成するのに時間導関数を必要としないため、静電場と呼ばれる。電場のこの成分は、試料または試料管を貫通すると、エネルギー損失を引き起こす場合がある。送信中およびスピン分離実験中に、これらの損失は、試料の望ましくない加熱を引き起こす場合がある。受信段階で、NMR信号により誘導された電流もまた、RFプローブコイルのターンの間に電位を生じさせ、試料の容積を貫通する電場を引き起こすため、Qの損失が生じ、感度が低下する。試料は通常、室温またはその近くにあり、プローブコイルは非常な低温であるため、この電場結合を通じて、ノイズ電力もまた、RFプローブコイルに導入される。この損失は、試料とRFプローブコイルとの間の電場結合に比例しており、試料の誘電正接損失または放散係数および試料管の材料およびイオン性の試料の導電率に依存している。
【0006】
プローブに印加される直流電場の強さもしくは方向の小さな変化または他の磁場変動は、らせんコイルの超伝導フィルムの表面に、小さなシールド電流を誘導する。これらのシールド電流は、試料領域で磁場不均一性を引き起こし、ラインの拡大およびNMR感度の損失につながる場合がある。(下記特許文献1)。シールド電流を低減するために、コイルのターンは、RF電流フローに平行な方向にスリットを入れられて、シールド電流ループの寸法が低減されていてもよい。らせんコイルの各ターンは、多数の平行な導体または「フィンガーレット」に、フィンガーレットの間に小さな絶縁性の隙間を設けて、分割されていてもよい。
【0007】
この電場を低減するために、静電シールドが先行技術で使用されてきた。(下記特許文献2)。試料の領域で電場を低減する作業は非常に重要であり、ゆえに、代わりの方法および機器を見つける必要がある。従来の技術は、試料の領域で電場を最小化するために、逆巻きらせんコイルを使用していない。
コイルを小さいままに保ちながら低周波にも同調させることができることが要望される場合に、以前はらせん巻きコイルがMRI測定用の表面コイルとして使用されていた(下記特許文献3)。単一のコイルで達成できるよりも低い共鳴周波数を達成するために、MRI用途向けの、間に容量結合を設けた1対の環状の逆巻きコイルを使用することが提案されていた。この技術の教示は、試料領域に対して電場を低減することを考察または意図するものではなかった。
【0008】
高分解能NMRプローブ用のRFコイルは、調査されている核のNMR共鳴周波数に、正確に同調されなければならない。最大感度について、プローブRFコイルからの電場は、試料領域に最小の電場を発生させねばならない。コイルは、調べられている核種のRF周波数範囲において共鳴するように同調される。プローブは、コイルを巻くのに使用されるワイヤの全コイル長さを調節することにより、同調される。可変キャパシタにより、または共鳴体インダクタンスにわずかに調整可能な変更を与えるワンドにより、微同調が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,565,778号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0150536号明細書
【特許文献3】米国特許第5,276,398号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゆえに、試料の容積に対して実質的に低減されたRF電場を有する強いRF磁場を特徴とする、特定の形状のRFプローブコイルを提供する必要がある。
本発明は、NMR試料領域に対して、より低い電場成分を生成できるようにするためのNMRプローブコイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
NMRプローブは、2セットの逆巻きらせんコイル対を含んでいる。らせんコイルの各対は、誘電層の両側に巻かれており、両方のらせんは、所望の有効試料容積の形状に一致する矩形状または楕円形状を有している。2セットの逆巻きらせんコイルは、試料の両側で1つずつ使用される。各セットの2つのらせんコイルは逆巻きにされている。すなわち、2つのコイルは反対方向に巻かれ、らせんの内側から外側に向かって、一方が時計回りに巻かれ、他方が反時計回りに巻かれる。2セットのコイル対は、共通の連結ループにより駆動される。共鳴の最低モードにおいて、4つのらせんコイル中の電流フローは、所与の瞬間に同一の角度方向となり、コイルに隣接する試料容積中に大きなRF磁場を発生させる。1セットの各コイルの反対の「掌性」の結果として、電位は、一方のらせんの内側において負となり、外側において正となるであろう。それに対し、セットの他方のらせんコイルの電位は、内側で正となり、外側で負となるであろう。らせんコイル対の各コイルの相対的な長さを調節することにより、対の一方のらせんコイルからの電場が、同一でありながら反対の電位の空間分布を発生させることができ、その結果、らせんの間の誘電体が充填された空間に電場が良好に閉じ込められ、試料領域中の電場を最小化することができる。
【0012】
各らせんコイルからの電場の相対的な強さは、コイル長さの影響を受ける。電場は、試料領域中で反対の方向を向いている。ゆえに、らせんコイル対の各コイルの相対的な磁場強度は、各らせんコイルの相対的な長さを変化させることにより調整されて、試料領域中の電場強度を最小化してもよい。らせんコイル対の最低共鳴周波数はまた、2つのらせんコイルの合計長さにも依存している。十分な巻き長さで始めれば、らせんコイルの端は、所望のNMR周波数にコイル対を同時に同調させるために、およびそれと同時に、逆巻きらせんコイル対により生じる試料領域中の外部電場を低減するために、選択的に切断されていてもよい。
【0013】
HTSコイルは通常、切断を行うためにレーザトリマ(切断機)を使用して調節されている。逆巻きらせんコイル対のいくつかの構成において、レーザトリミング(切り取り)により個々のコイルを同調させようとしたときに、コイル端が重なって問題を起こす場合がある。コイルのターンまたはフィンガーレットを切断しようとしたときに、レーザ光線が、基板を貫通して反対側のコイルにまで届き、当該コイルを切断して破壊してしまう場合もある。この問題を克服するために、レーザ光線を吸収または散乱する材料を、逆巻きコイル対の2つのコイルの間に導入する。
【0014】
コイルの巻き長さを調節するためにトリムする(切り取る)とき、コイルターンを横断するフィンガーレットをすべて切断するのが好ましい。フィンガーレットのいくつかが切断され、同じターンの他の隣接するフィンガーレットが切断されずに、より短い端を有している場合、送信電力がコイルに印加されたときに、より短い端のフィンガーレットと近傍のフィンガーレットとの間にアークが発生する場合がある。このような現象を防ぐため、より短い端のフィンガーレット全体を除去してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】誘電体基板に固定された、先行技術のHTS NMRプローブコイルの図である。
【図1B】HTSコイルのフィンガーレットの図である。
【図2A】らせん巻きコイル対の第1のらせんコイルの図である。
【図2B】図2Aの第1のらせんコイルと同じ方向から見たときの、らせん巻きコイル対の第2のらせんコイルの図である。
【図2C】コイル対の端面から見たときの、らせん巻きコイル対の2つのコイルの図であり、2つのコイルの逆巻き特性を示す。
【図3A】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図3B】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図3C】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図3D】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図3E】図2CのA-A断面であり、本発明の異なる局面に係るコイル構成を示す。
【図4】2セットの本発明の逆巻きらせんコイル対を使用した極低温冷却NMRプローブを示すブロック図である。
【図5A】円筒誘電部材の外面に固定された、らせん巻きコイル対の第1のらせんコイルの図である。
【図5B】図5Aに示すものと同じ円筒誘電部材の内面に固定された、らせん巻きコイル対の第2のらせんコイルの図である。
【図6】2セットのらせん巻きコイル対の図であり、円筒誘電部材の外面に固定されたらせん巻きコイルのみを示す。
【図7A】2セットの逆巻きらせんコイル対の図であり、各セットの一方のコイルは外側円筒誘電部材の外面に固定されており、各セットの第2のコイルは同軸の内側円筒誘電部材の外面に固定されている。
【図7B】図7Aの2つの円筒が最終位置に固定された図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の上記の局面および利点は、添付の図面とともに以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
本明細書中では、HTSプローブコイル、冷却常伝導金属コイル、および室温NMRプローブコイル用の実施形態を開示している。現在のHTSコイルは、室温でその超伝導特性を失うため、冷却する必要がある。常伝導金属からなるコイルは、冷却してもよく、または室温に近い温度で稼動させてもよい。
【0017】
図1Aは、先行技術のHTS NMRプローブコイルアセンブリ100を示している。これは、試料にRF場を印加して核スピンを励起し、次いで、試料中の核スピンの反応を受信する。通常、コイル巻き線102は、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)などの高温超伝導(HTS)材料で形成されている。HTS材料は、スパッタリング、蒸着または他の方法で、サファイアなどの電気的絶縁平面基板101上に堆積されてもよい。通常、支持基板の厚みは400マイクロメートルとされており、HTS材料の厚みは0.3マイクロメートルとされている。コイルの各ターンは、複数の平行なチャネル、すなわちHTS材料の「フィンガーレット」から形成されている。囲み103で区切った部分を拡大して、図1Bの囲み103’に示している。
【0018】
図1Bは、コイル102の各ターンが、複数の平行な導体、すなわち、フィンガーレット107にどのように分割されているかを示している。隣接するターンの間の空間105は、通常、30〜100マイクロメートルの範囲とされている。フィンガーレットの目的は、いかなる外部磁場も、巻き線中に小さな永久電流ループを生じさせて試料領域にわたって磁場均一性を歪ませることのないようにすることである。フィンガーレット107の間の空間は10マイクロメートルの範囲であってもよく、各フィンガーレットの幅は0〜20マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0019】
NMR用途向けに2つのプローブコイルを、試料管の各側において1つずつ使用する。各コイルを支持している基板は、領域106の熱交換器に取り付けられている(図1A)。熱交換器(図4に示す143)は、プローブコイルアセンブリ100を冷却および温度制御する。連結ループ(図4の154)は、コイル巻き線に誘導可能に結合されており、NMR分光計に電気的に接続されている。これはRFエネルギーをコイルに結合してNMR共鳴を励起し、試料物質からコイルに誘導された反応を受信し、それを処理、記録および表示のために分光計に送信する。
【0020】
HTS NMRプローブにおいて、試料管は通常、円筒管であり、管の長軸は、平面基板101の各面に平行である。試料管は、図1Aの点線枠108により示された領域中において、コイル巻き線102に非常に近いところを通っている。この領域において、互いに隣接した近傍の巻き線との間の電位差により、近傍の試料管およびNMR試料を貫通する電場が生成され、上述したエネルギー損失および感度の低下を引き起こす。
【0021】
図2Aおよび図2Bは、らせん逆巻きコイル対を形成する2つのらせん巻きコイルを示している。作動時に、コイル対の2つのコイルは、誘電体基板111の両側に配置されている。図2Aのらせんコイル112は、誘電体基板111上に形成されており、内側端113から始まり外側端114に向かって、反時計回りに巻かれている。図2Bのらせんコイル122は、誘電体基板121上に形成されており、内側端123から始まり外側端124に向かって、時計回りに巻かれている。
【0022】
図2Cは、2つのらせん逆巻きコイル112および122がターンをぴったりと整列させて互いに隣接配置され、内側端から外側端に向かって、コイル112が反時計回りのらせんを描き、コイル122が時計回りのらせんを描いた状態の、正面図である。2つのコイルは互いに固定または接着されて、一体構造を形成してもよい。コイル112および122はそれぞれ、複数のフィンガーレットを含んでいてもよく、通常は各ターンにつき4〜30個のフィンガーレットを含んでいる。コイルを複数のフィンガーレットに分割することで、外部磁場によりターン中に誘導されるいかなる磁化作用をも低減することができる。
【0023】
好ましい実施形態において、追加のレーザ光遮断材料が、コイル112とコイル122との間に配置されている。一実施形態において、光遮断材料は、図2Cの点線133により輪郭を示す領域に配置されている。光遮断材料は、内側コイル端113および123もしくは外側コイル端114および124または両方が配置された領域を覆わねばならない。これは、図2Cに示すようにコイルの頂部であってもよいし、コイルの底部でもまたは側部でもコイルの端が配置されているところであればどこであってもよい。
【0024】
外部電場またはコイル対の共鳴周波数を調整するためにコイル112をトリミングする(切り取る)場合、領域133の光遮断材料は、レーザトリマ(切断器)からの光が、トリミングされているコイル112の領域のすぐ後に位置するコイル122の部分を切断するのを防ぐ。逆にコイル122をトリミングする場合、光遮断材料は、コイル112の部分が損傷を受けるのを防ぐ。
【0025】
図3A、図3B、図3C、図3Fは、本発明に係る、弱い外部電場を提供する異なるらせんコイルおよび基板構成を示している。これらは、逆巻きらせんコイル対に弱い外部電場を印加する、さまざまなコイルおよび誘電体基板構成に対応している。これらはすべて、図2Cに示すものと同一の投影を有しており、図2CのA-A断面を見たときの異なるコイル/基板構成に対応する。
【0026】
図3Aにおいて、図2Bのコイル122を有する基板121は、図2Aの基板111らせんコイル112の背部に直接、固定または接着されている。これらのらせんコイルは、分離された状態でレーザトリミングされ、次いで、その周波数および外部電場を確認して最終的な構成へと互いに固定されてもよい。これらの対の2つのセットをプローブに取り付けるとき、コイルの向きは、コイルを支持している基板の面が試料に最も近くなるように配置されるものであるのが好ましい。また、試料管に最も近い2つのコイルは、同じ「掌性(左右性)」を有しているのが好ましい。
【0027】
図3BのA-A断面において、らせんコイル122は、図2Aの基板111の第2の側に直接形成されており、らせんコイル112は基板111の第1の側にある。この構成により、非常に起伏が多くかつコンパクトな逆巻きらせんコイル対が得られる。コイルが同一の基板の2つの側に直接接着されているため、適切な誘電体基板材料を選ばねばならない。HTSコイルを使うと、誘電体基板は、コイルを支持し、良好な熱特性を有して適切な冷却を可能にするだけでなく、レーザ光を遮断して反対側のコイルに損傷を与えるのを防ぐこともできるであろう。
【0028】
図3C、図3Dおよび図3Eに示す構成では、2つの同一のらせんコイルが使用されている。反対巻きのらせんコイルが、別個の誘電シートに取り付けられた2つの同一のコイルから組み立てられており、第2のシートはその垂直軸を中心として180度回転されている。第1のコイル112が図2Aに示すように反時計回りに巻かれている場合、第2のコイルは基板を通して見たときに、両方の場合において、中心から時計回りに巻かれることになる。別体の光遮断材料は、逆巻き対の2つのらせんコイルの間で隣に位置しており、レーザ光が一方のらせんコイルをトリミングする間に他方が損傷するのを防ぐ。
【0029】
図3Cにおいて、レーザ光遮断材料の誘電材料131は、レーザ光を吸収または散乱し、図2Cの133によって示される領域において2つのコイル112および112’の間に挿入されている。次いで、図3Cの2つの基板111および111’は、縁から接着剤を導入して、互いに接着される。あるいは、2つの基板111および111’は、互いに固定されてもよい。光を散乱するように働くレーザ光遮断材料131は、0.001〜0.003インチの厚みのテフロン(登録商標)シートである。エポキシは有効な接着剤であることが分かっている。
【0030】
図3Dは、2つの基板111および111’の間の全領域がレーザ光遮断材料132で被覆され、次いで固定または接着された実施形態の図である。
図3Eは、別の代替的な構成を示している。この場合、2つの基板111および111’は、コイルを互いに対向させて、接着または固定されている。これらの間に配置された絶縁層134は、コイル112および112’が接触して短絡するの防ぎ、レーザ光に対する光学バリアを提供する。絶縁層134の材料および厚みを選ぶことで、2つのコイルの間の静電容量を制御してもよく、レーザ光に対する光学バリアを形成してもよい。
【0031】
図3A〜図3Eに係るこれらの実施形態のそれぞれにおいて、図2Cに示すように、らせん巻きコイルアセンブリの正面投影は、らせんコイル112が内側コイル端から外側端に向かって反時計回りに巻かれ、らせんコイル122もしくは112’が内側端から外側端に向かって時計回りに巻かれている状態、またはらせんコイル112が内側コイル端から外側端に向かって時計回りに巻かれ、らせんコイル122もしくは112’が内側端から外側端に向かって反時計回りに巻かれている状態となる。
【0032】
第1のコイルの一方の端が、コイルの左側または右側に位置して(コイルの頂部または底部に対向して)いる場合、逆巻きらせんコイルは、水平軸を中心に180度回転させることにより、形成してもよい。次いで、逆巻きコイルを、第1のコイルに重なるように正しく配置しなければならない。
NMRプローブは、これらの逆巻きコイル対を2セット含んでおり、図4の130および130’により示す、試料領域の各側に1セットずつ配置されている。図3A〜図3Eの構成はそれぞれ、本発明の異なる実施形態である。
【0033】
図4は、試料管141とNMR試料142とを有する極低温冷却プローブ140のブロック図である。プローブ140は、アルミニウムなどの非強磁性材料からなる外殻144と、例えば石英ガラスからなる内側誘電管145とを有している。外殻144および誘電内側管145は、真空気密空間146を形成している。この空間は排気されて、冷却コイル対130および130’ならびに暖かい試料142および試料管141を良好に断熱する。2つの逆巻きらせんコイル対130および130’は同一であって、試料管141の両側に取り付けられており、それぞれが熱交換器143と熱接触している。熱交換器143は内側管154を包囲して、両方のコイル対130および130’を冷却する。らせん巻きコイルの冷却は、冷却ガス源147によって行われる。HTS逆巻きらせんコイル対130および130’は通常、20Kの範囲の温度に冷却される。冷却ガスは、冷却ガス移送管148により、熱交換器143からおよび熱交換器143へと流れる。冷却ガス源147からの冷却ガスを供給する管は、プリアンプおよびT/R(送信/受信)スイッチ149から断熱されている。一方、一部使用されたガスを戻す管は、プリアンプおよびT/Rスイッチ149と熱接触しており、通常80Kの範囲の低温にガスを冷却する。あるいは、2つの冷却ガス連結ループを使用して、一方にらせん巻きコイル130を冷却させ、もう一方にプリアンプおよびT/Rスイッチ149を冷却させてもよい。
【0034】
RFプローブケーブル150が、連結ループ154を介して、らせん巻きコイル130および130’にRF電力を送信し、NMR応答信号を受信し、それらをプリアンプおよびT/Rスイッチ149に送信する。プリアンプおよびT/Rスイッチは、ケーブル153を介して分光計(図示せず)から送信電力を受信し、増幅されたNMR信号をケーブル151により分光計(図示せず)に送る。
【0035】
図5Aは、円筒誘電コイルフォーム161の外面に固定されたらせんコイル162を示している。巻き線は、らせんの内側端163から延び、外側端164に向かって時計回りに巻いている。コイル巻き線は、HTS材料または銅もしくはアルミニウムなどの常伝導金属からなっており、ワイヤまたは好ましくは薄片導体の形状である。この片は、異なる金属の2つ以上の層からなっていて、磁化率がゼロに近い片を形成していてもよい。コイルは、HTSコイル用に低温で作動してもよく、または常伝導金属コイル用に室温もしくは室温未満で作動してもよい。
【0036】
図5Bに示すように、逆巻きコイル172が同一のコイルフォーム161の内面に固定されており、明瞭にするために、らせんコイル162は示していない。この巻き線は、らせん172の内側端173から延びて、外側端174へと反時計回りに巻いている。このコイルは、コイルフォーム161の外面にあるコイル162にぴったりと隣接している。コイル162およびコイル172は、逆巻きらせんコイル対を形成している。
【0037】
逆巻きらせんコイル対の第2のセットは、同一のコイルフォーム上に配置されているが、コイルフォーム161の反対側にある。図6のコイルアセンブリ160は、コイルフォーム161の外面上にある2つのコイル162および162’を示している。コイル162および162’の両方は、コイルフォーム161の内面に、コイル162および162’に直接隣接して2セットの逆巻きらせんコイル対を形成する逆巻きコイル172および172’(図示せず)を有している。
作動中、図6のコイルアセンブリ160は、コイル130および130’により、図4に示す仕方で、分光計に誘導的に結合されている。アセンブリ160のコイルの最終同調は、個々のコイルの端をマシニングするまたは機械的に切断することにより行われ、適切な周波数および電位バランスを実現し、試料および試料管への最小の静電結合を実現する。
【0038】
図7Aは、円筒誘電コイルフォーム181および191に取り付けられた、2セットの逆巻きらせんコイル対の代替的な構成である。各セットの一方のコイル182および182’は、コイルフォーム181の外面に取り付けられている。各セットの第2のコイル192および192’は、第2のコイルフォーム191の外面に取り付けられている。図7Aは、共通の軸185について軸方向に整列された2つの誘電コイルフォームを示している。第2のコイルフォーム191は、巻かれたときに、コイルフォーム181内にぴったりとスライドし、コイル182および192は重なり合って一方の逆巻きらせんコイルセットを形成し、コイル182’および192’は第2の逆巻きらせんコイルセットを形成する。
【0039】
図7Bは、プローブにすぐに取り付けられる状態の、組み立てられたコイルを示している。逆巻きコイル対182、192は、図4の130で示す位置に取り付けられ、逆巻きコイル対182’、192’は、図4の130’で示す位置に取り付けられる。コイルは、試料管141および試料142の領域において、その共鳴周波数および電場について試験されてもよい。トリミングが必要な場合、コイルは除去されてもよく、コイルリードが機械的な切断器、レーザカッターまたはメスにより切断される。次いで、コイルは、さらなる試験またはプローブへの最終取り付けのために、再度組み立てられてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2セットの逆巻きRFらせんコイルを含むNMRプローブであって、前記2セットの逆巻きRFらせんコイルは、それらの間に位置する試料を励起し、当該試料からのNMR信号を検知するためのものであり、前記逆巻きRFらせんコイルの各セットは、
1対のらせんコイルであって、各らせんコイルが各らせんの内側からその外側に向かって、互いに反対の角度方向に巻かれている、1対のらせんコイルと、
前記らせんコイルを分離している誘電部材とを備え、
前記らせんコイルの電位により試料領域内に誘導された電場が、前記らせんコイルの少なくとも一方の長さを調節することにより低減される、NMRプローブ。
【請求項2】
前記誘電部材が、平面基板である、請求項1に記載のNMRプローブ。
【請求項3】
前記対の一方のらせんコイルが前記平面基板の一方の側に配置され、他方のらせんコイルが他方の側に配置されている、請求項2に記載のNMRプローブ。
【請求項4】
前記対の前記らせんコイルがそれぞれ、HTS材料から形成されている、請求項3に記載のNMRプローブ。
【請求項5】
前記平面基板がレーザ光遮断材料を含む、請求項4に記載のNMRプローブ。
【請求項6】
各対の前記らせんコイルがそれぞれ、常伝導金属から形成されている、請求項3に記載のNMRプローブ。
【請求項7】
前記誘電部材が、前記らせんコイルの対が配置された円筒部材を備えている、請求項1に記載のNMRプローブ。
【請求項8】
前記らせんコイルが常伝導金属から形成されている、請求項7に記載のNMRプローブ。
【請求項9】
前記らせんコイルがHTS材料から形成されている、請求項7に記載のNMRプローブ。
【請求項10】
前記対のそれぞれの一方のらせんコイルが、前記円筒部材の外面に配置されており、前記対のそれぞれの他方のらせんコイルが、前記円筒部材の内面に配置されている、請求項7に記載のNMRプローブ。
【請求項11】
前記誘電部材は、前記らせんコイルの対が配置されている外側同軸円筒部材および内側同軸円筒部材を備えている、請求項1に記載のNMRプローブ。
【請求項12】
前記対のそれぞれの一方のらせんコイルが、前記外側円筒部材の外面に配置されており、前記対のそれぞれの他方のらせんコイルが、前記内側円筒部材の外面に配置されていて、前記コイル対が前記試料領域を挟んでいる、請求項7に記載のNMRプローブ。
【請求項13】
NMRプローブのらせんRFコイル対の電場を低減し、それらをNMR試料の共鳴周波数に同調させる方法であって、
2対の逆巻きRFらせんコイルを提供するステップであって、各対のらせんコイルは、それぞれのらせんの内側からその外側に向かって互いに反対の角度方向に巻いているとともに、誘電部材上に堆積されているステップと、
前記逆巻きらせんコイルの対を、前記試料を挟むように試料領域内に配置するステップと、
前記試料領域内の前記電場を測定するステップと、
少なくとも1つのらせんコイルの長さを調節することにより、前記電場を低減するステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記逆巻きRFらせんコイルをHTS材料から製造するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記誘電部材が、レーザ光遮断材料を含む平面基板であり、前記逆巻きコイルの対の各コイルが、前記平面基板の両側に設けられている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
レーザトリマを使用して前記らせんを切断することにより、少なくとも1つの前記らせんコイルの長さを調節するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記らせんコイルを常伝導金属から製造するステップと、
メスまたは機械的切断器またはレーザトリマを使用して前記らせんを切断することにより、少なくとも1つの前記らせんコイルの長さを調節するステップとをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記誘電部材が円筒部材であって、この円筒部材の外面に前記対のそれぞれの一方のらせんコイルが配置されており、この円筒部材の内面に前記対のそれぞれの他方のらせんコイルが配置されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記誘電部材が、外側同軸円筒部材および内側同軸円筒部材を備え、前記外側円筒部材の外面に前記対のそれぞれの一方のらせんコイルが配置されており、前記内側円筒部材の外面に前記対のそれぞれの他方のらせんコイルが配置されていて、前記コイル対が前記試料領域を挟んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項1】
2セットの逆巻きRFらせんコイルを含むNMRプローブであって、前記2セットの逆巻きRFらせんコイルは、それらの間に位置する試料を励起し、当該試料からのNMR信号を検知するためのものであり、前記逆巻きRFらせんコイルの各セットは、
1対のらせんコイルであって、各らせんコイルが各らせんの内側からその外側に向かって、互いに反対の角度方向に巻かれている、1対のらせんコイルと、
前記らせんコイルを分離している誘電部材とを備え、
前記らせんコイルの電位により試料領域内に誘導された電場が、前記らせんコイルの少なくとも一方の長さを調節することにより低減される、NMRプローブ。
【請求項2】
前記誘電部材が、平面基板である、請求項1に記載のNMRプローブ。
【請求項3】
前記対の一方のらせんコイルが前記平面基板の一方の側に配置され、他方のらせんコイルが他方の側に配置されている、請求項2に記載のNMRプローブ。
【請求項4】
前記対の前記らせんコイルがそれぞれ、HTS材料から形成されている、請求項3に記載のNMRプローブ。
【請求項5】
前記平面基板がレーザ光遮断材料を含む、請求項4に記載のNMRプローブ。
【請求項6】
各対の前記らせんコイルがそれぞれ、常伝導金属から形成されている、請求項3に記載のNMRプローブ。
【請求項7】
前記誘電部材が、前記らせんコイルの対が配置された円筒部材を備えている、請求項1に記載のNMRプローブ。
【請求項8】
前記らせんコイルが常伝導金属から形成されている、請求項7に記載のNMRプローブ。
【請求項9】
前記らせんコイルがHTS材料から形成されている、請求項7に記載のNMRプローブ。
【請求項10】
前記対のそれぞれの一方のらせんコイルが、前記円筒部材の外面に配置されており、前記対のそれぞれの他方のらせんコイルが、前記円筒部材の内面に配置されている、請求項7に記載のNMRプローブ。
【請求項11】
前記誘電部材は、前記らせんコイルの対が配置されている外側同軸円筒部材および内側同軸円筒部材を備えている、請求項1に記載のNMRプローブ。
【請求項12】
前記対のそれぞれの一方のらせんコイルが、前記外側円筒部材の外面に配置されており、前記対のそれぞれの他方のらせんコイルが、前記内側円筒部材の外面に配置されていて、前記コイル対が前記試料領域を挟んでいる、請求項7に記載のNMRプローブ。
【請求項13】
NMRプローブのらせんRFコイル対の電場を低減し、それらをNMR試料の共鳴周波数に同調させる方法であって、
2対の逆巻きRFらせんコイルを提供するステップであって、各対のらせんコイルは、それぞれのらせんの内側からその外側に向かって互いに反対の角度方向に巻いているとともに、誘電部材上に堆積されているステップと、
前記逆巻きらせんコイルの対を、前記試料を挟むように試料領域内に配置するステップと、
前記試料領域内の前記電場を測定するステップと、
少なくとも1つのらせんコイルの長さを調節することにより、前記電場を低減するステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記逆巻きRFらせんコイルをHTS材料から製造するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記誘電部材が、レーザ光遮断材料を含む平面基板であり、前記逆巻きコイルの対の各コイルが、前記平面基板の両側に設けられている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
レーザトリマを使用して前記らせんを切断することにより、少なくとも1つの前記らせんコイルの長さを調節するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記らせんコイルを常伝導金属から製造するステップと、
メスまたは機械的切断器またはレーザトリマを使用して前記らせんを切断することにより、少なくとも1つの前記らせんコイルの長さを調節するステップとをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記誘電部材が円筒部材であって、この円筒部材の外面に前記対のそれぞれの一方のらせんコイルが配置されており、この円筒部材の内面に前記対のそれぞれの他方のらせんコイルが配置されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記誘電部材が、外側同軸円筒部材および内側同軸円筒部材を備え、前記外側円筒部材の外面に前記対のそれぞれの一方のらせんコイルが配置されており、前記内側円筒部材の外面に前記対のそれぞれの他方のらせんコイルが配置されていて、前記コイル対が前記試料領域を挟んでいる、請求項17に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【公開番号】特開2010−38922(P2010−38922A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−184522(P2009−184522)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184522(P2009−184522)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
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