説明

弱毒ペスチウイルスを含むワクチン

【課題】本発明は弱毒ペスチウイルス、特に弱毒BVDVに関する。
【解決手段】前記ウイルスでは、少なくとも1つの変異が糖タンパク質Ernsのコード配列に、さらに少なくとももう1つの変異がNproのコード配列に存在し、前記は、好ましくは、Nproに存在する(仮説の)免疫調節活性の不活化に加えて糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性の複合的不活化をもたらす。本発明はまた、ペスチウイルス(例えばBVDV)を弱毒化する方法、前記ペスチウイルス(特にBVDV)をコードする核酸、前記弱毒ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)を含む組成物及びワクチンにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の衛生分野、具体的には弱毒ペスチウイルス、例えばウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)に関する。
【背景技術】
【0002】
ペスチウイルスは、世界中の多くの国々で経済的に重要な動物の疾病の原因因子である。現在知られているウイルス単離体は4つの別個の種に分類され、これらは一緒になって以下のようにフラビウイルス科の1つの属を構成する。
I/II:ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)1型(BVDV-1)及び2型(BVDV-2)はウシウイルス性下痢(BVD)及びウシ粘膜病(MD)を引き起こす(Baker, 1987;Moenning and Plagemann, 1992;Thiel et al. 1996)。BVDVを2つの種に分割するのは、ゲノム配列レベルの顕著な相違による(以下で要約されている:Heinz et al. 2000)。前記相違はまた限定的な交差中和抗体反応からも明白である(Ridpath et al. 1994)。
III:古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)(かつては豚コレラウイルスと称されていた)は、古典的ブタ熱(CSF)又は豚コレラ(HC)の原因である(Moenning and Plagemann, 1992;Thiel et al. 1996)。
IV:ボーダー病ウイルス(BDV)は典型的にはヒツジで見出され、ボーダー病(BD)を引き起こす。BDVがヒツジの子宮内に感染した後、持続感染羊が生まれ、前記は虚弱で種々の異常を示し、とりわけ“へアリーシェーカー(hairy shaker)”症候群はもっともよく知られている(Moenning and Plagemann, 1992;Thiel et al. 1996)。
【0003】
ペスチウイルスはエンベロープをもつ小型のウイルスであり、5'キャップ及び3'ポリ(A)配列の両者を欠くプラス極性の一本鎖RANゲノムを有する。前記ウイルスゲノムは、約4000アミノ酸のポリプロテインをコードし、前記ポリプロテインは、細胞性プロテアーゼ及びウイルス性プロテアーゼを必要とする翻訳時プロセッシング及び翻訳後プロセッシングによって最終的な切断生成物を生じる。前記ウイルスタンパク質はポリプロテイン中で以下の順序で整列されている:NH2-Npro-C-Erns-E1-E2-p7-NS2-NS3-NS4A-NS4B-NS5A-NS5B-COOH(Lindenbach and Rice, 2001)。CSFVについて示されたように(Thiel et al. 1991)、タンパク質C(=コアタンパク質又はキャプシドタンパク質)及び糖タンパク質Erns、E1及びE2はペスチウイルスビリオンの構造成分である。前記はまたBVDVについてもそのとおりである。E2及びより低い程度でErnsは抗体中和反応の標的であることが見出された(Donis et al. 1988;Paton et al. 1992;van Rijn et al. 1993;Weiland et al. 1990, 1992)。Ernsは典型的な膜アンカーを欠き、感染細胞から甚だしい量で分泌される。このタンパク質はRNase活性を示すことが報告された(Hulst et al. 1994;Schneider et al. 1993;Windisch et al. 1996)。ウイルスのライフサイクルに対するこの酵素活性の機能は現在のところ不明である。前記酵素活性は、ペスチウイルスErnsと植物及び菌類起源の別個の既知RNaseとの間で保存されている2つのアミノ酸ストレッチが存在するか否かにかかっている。これら保存配列は両方ともヒスチジン残基を含んでいる(Schneider et al. 1993)。これら残基の各々をCSFVワクチン株のErnsタンパク質でリジンと交換することによって、RNase活性の破壊がもたらされた(Hulst et al. 1998)。これらの変異のCSFVワクチン株ゲノムへの導入は、ウイルスの生存活性又は増殖特性に影響を与えなかったが、細胞病原性表現型を示すウイルスを生じた(Hulst et al. 1998)。同様に、Meyersらは、毒性CSFV株Alfort/TeubingenのRNase陰性変種は完全な生存活性を有することを示した。しかしながら対応するウイルス変種は細胞病原性表現型を示さなかった(Meyers et al. 1999)。
【0004】
Nproは、ペスチウイルスRNA中の長いオープンリーディングフレームによってコードされる第一番目のタンパク質を表す。Nproはプロテアーゼ活性を有する非構造性タンパク質を表し、出来たばかりのポリプロテインそれ自体を、おそらくは既に翻訳中に切断する(Stark et al. 1993;Wiskerchen et al. 1991)。Nproは、システインプロテアーゼであり(Reumenapf et al. 1998)、前記はウイルス複製に必須ではない(Trantschin et al., 1998)。最近、Nproは細胞の抗ウイルス防御をいくらか妨害することが示され、その結果、感染宿主内で免疫系を調節すると仮説を立てることができる(Reuggli et al. 2003)。Mayerと共同研究者らは、Npro遺伝子の欠落の結果によるCSFV弱毒化の証拠を提示した(Mayer et al., 2004)。
BVDV感染の予防及び治療のための現在のBVDVワクチンはなお欠点を有している(Oirschot et al. 1999)。古典的なBVDV-1に対するワクチンはBVDV-2感染に対し部分的防御しか提供せず、ワクチン接種された母獣は毒性BVDV-2に持続感染した仔牛を出産しうる(Bolin et al. 1991;Ridpath et al. 1994)。この問題は、おそらくは1型と2型株間の大きな抗原多様性のためであり、前記多様性は、糖タンパク質E2(ウイルス中和反応のための主要な抗原)でもっとも著しい(Tijessen et al. 1996)。1型株に対するモノクローナル抗体のほとんどは2型ウイルスと結合することができない(Ridpath et al. 1994)。
弱毒若しくは死菌ウイルス又は異種発現系で発現させたウイルスタンパク質を含むワクチンがCSFV及びBVDVのために作成され、現在用いられている。死菌ワクチン(不活化させた完全ウイルス)又はサブユニットワクチン(通常精製又は異種発現ウイルスタンパク質)は、完全な防御免疫応答を生じるその有効性ではたとえアジュバントが存在していたとしても非常にしばしば生ワクチンに劣る。
【0005】
生涯ワクチンとして用いられるBVDVの弱毒化の構造的基準は不明である。これらのワクチンは、弱毒化されているが非常にしばしば安全性の問題を伴う。ワクチンウイルスは妊娠動物(例えば雌牛)の胎盤を通過し、胎児に症状をもたらすか、及び/又は持続感染仔牛を誘発する。したがって、前記は妊娠雌牛を含む授乳動物に用いることはできない。妊娠雌牛は胎児を保護するためにワクチン接種牛から隔離する必要があり、さらに妊娠雌牛自体にはワクチン接種を実施してはならない。さらにまた、弱毒生BVDVのリバータントは動物にとって重大な脅威となる。弱毒化が通常のマルチ継代によって達成される通常的に誘導される弱毒ウイルスの場合、弱毒化の遺伝的安定性と同様にその分子的起源は不明であり、毒性野生株への復帰は予想することができない。
ペスチウイルス感染の有効で安全であるとともに検出可能な予防及び治療の重要性のために、免疫誘導に対して高い潜在能力とともに範囲が明確な弱毒化の基準(前記はまた病原性ペスチウイルス、例えばBVDVとの区別を可能にする)をもつ改善された弱毒ペスチウイルス(例えばBVDV)が、前記弱毒ペスチウイルス(例えばBVDV)を含む組成物及びワクチンと同様に強く希求されている。
したがって、本発明の根幹である技術的課題は、改善された弱毒ペスチウイルス、すなわち弱毒生ワクチンとして使用される弱毒BVDVを提供することができる。そのような改善された弱毒ペスチウイルス、好ましくはBVDVは特に、(i)胎盤そのものを通過せず、さらに(ii)胎盤を通過するウイルスの伝達を防止する免疫を誘導し、それによって胎児の流産又は持続感染宿主(例えばBVDV感染の事例では仔牛)の誕生のような妊娠に関する問題を予防するはずである。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明は弱毒ペスチウイルス、好ましくは弱毒BVDVに関する。前記ウイルスでは、少なくとも1つの変異が糖タンパク質Ernsのコード配列に存在し、さらに少なくとももう1つの変異がNproのコード配列に存在し、これは好ましくは、Nproに存在する(と仮定される)免疫調節活性の不活化に加えて、糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性の複合された不活化をもたらす。本発明はまた、上記に記載したように、ペスチウイルスの弱毒化が弱毒ペスチウイルス、好ましくは弱毒BVDVをもたらすようにペスチウイルスを弱毒化する方法に関する。本発明はさらに、本明細書に開示するように、前記弱毒ペスチウイルスをコードする、好ましくは弱毒BVDVをコードする核酸分子、前記弱毒ペスチウイルス(好ましくはBVDV)を含む組成物及びワクチンに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】NY93/C(BVDV II型)に対する血清中和反応である。
【図2】KE9(BVDV I型)に対する血清中和アッセイである。
【図3】NY93/C(BVDV II型)に対する血清中和アッセイである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
[本明細書で使用される用語の定義]
本発明を例示する前に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるとおり、単数形“a”、“an”及び“the”は、文脈が明らかに別の意味を表示していないかぎり、複数のものを含むことに留意されねばならない。したがって、例えば、“a BVDV”という表示は複数のそのようなBVDVを含み、“cell”という表示は1つ又は2つ以上の細胞及び当業者に知られているその等価物を含む、等である。別に規定されないかぎり、本明細書で用いられる全ての技術的及び学術的用語は、本発明が属する技術分野の業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と類似するか又はそれらと等価のいずれの方法及び材料も本発明の実施及び試験で用いてもよいが、好ましい方法、装置及び材料をこれから述べていく。本明細書に引用する全ての刊行物は、本発明に関連して用いることができる細胞株、ベクター及び方法論を説明及び開示する目的で参照により本明細書に含まれる。これらはいずれも、先発明を理由に本発明がそのような開示に先行する権利をもたないと認容するものと解釈されるべきではない。
本明細書で用いられる“ペスチウイルス”という用語は、フラビウイルス科の中のペスチウイルス属の全てのメンバーを指し、BVDV、CSFV及びBDVを含む。
本明細書で用いられる“CSFV”という用語は、フラビウイルス科の中のペスチウイルス属の古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)の種に属する全てのウイルスを指す。
本明細書で用いられる“BVDV”という用語は、フラビウイルス科の中のペスチウイルス属の種、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)1型(BVDV-1)及びBVDV2型(BVDV-2)に属する全てのウイルスを指す(Heinz et al. 2000)。より古典的なBVDV1型株及びそれより後で認識されたBVDV2型株は、いくつかの限定的ではあるが特有な相違をヌクレオチド及びアミノ酸配列に提示している。
【0009】
本明細書で理解されるように“Npro”という用語は、ウイルスのオープンリーディングフレームによってコードされる第一番目のタンパク質を指し、前記タンパク質は合成されたポリプロテインの残りから自分自身を切断する(Stark et al. 1993, J. Virol. 67:7088-7093;Wiskerchen et al. 1991, Virol. 65:4508-4514)。前記用語はまた、文脈に応じて、コードヌクレオチド配列の変異後に存続する“Npro”アミノ酸又は前記タンパク質自体のコードヌクレオチド配列を指すことができる。“Nproに存在するプロテアーゼ活性”とは、前記“Npro”のポリペプチド切断活性を指す。
本明細書で用いられる“Erns”は、ペスチウイルスビリオンの構造的成分である糖タンパク質Ernsを指す。Ernsは、典型的な膜アンカーを欠き、感染細胞から相当な量で分泌される。このタンパク質はRNase活性を示すことが報告された(Hulst et al. 1994;Schneider et al. 1993;Windisch et al. 1996)。糖タンパク質E0は刊行物では糖タンパク質Ernsとしばしば同義語として用いられることに留意されるべきである。前記用語はまた、文脈に応じて、コードヌクレオチド配列の変異後の変異“Erns”タンパク質又は前記タンパク質自体のコードヌクレオチド配列を指すことができる。“糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性”は、前記糖タンパク質のRNA切断活性、すなわち糖タンパク質ErnsのRNA加水分解能力を指す。“糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性の不活化”は、前記糖タンパク質Ernsの未改変野生型と比較して、改変糖タンパク質ErnsのRNA加水分解する能力の不能又は前記能力の低下を指す。
【0010】
弱毒化:本明細書で用いられる“弱毒ペスチウイルス又はBVDV粒子”は、本発明の弱毒ペスチウイルス又はBVDV粒子(前記弱毒ウイルス粒子は本明細書に記載の方法によって弱毒化されている)と、前記弱毒ペスチウイルス又はBVDV粒子が由来する野生型ペスチウイルス又はBVDV単離株との毒性の間に、主要な臨床的パラメーターについて(BVDVの場合には同じ用量、好ましくは6x106TCID50で感染させた動物における下痢、発熱及び致死性について)統計的に有意な相違が存在することを意味する。したがって、前記弱毒BVDV粒子は下痢、発熱及び致死性を引き起こさず、したがってワクチンとして用いることができる。
本明細書で用いられる場合にErnsの不活化とは、Meyersら(1999)が記載したRNaseアッセイにおいて感染していない対照細胞で測定されるレベルを有意には超えないRNase活性を指す。“Meyersら(1999)が記載したRNaseアッセイにおいて感染していない対照細胞で測定されるレベルを有意には超えない”とは、例えば前記RNase活性が、感染していない対照細胞と比較して150%未満であることを意味する。
本明細書で用いられるNproの不活化は、予想される免疫調節活性が変異によって阻止されること又は顕著に低下することを意味する。好ましい実施態様では、この変異は、Reuggliら(2003)が記載したように、感染細胞によるインターフェロン応答の誘導によりNproの干渉を阻止するか又は顕著に低下させる。この事例では、Nproの不活化は細胞に正常なインターフェロン応答を起こさせるであろう。
【0011】
本明細書で用いられる“プロセッシングシグナル”は、ペスチウイルス、好ましくはBVDVのCタンパク質の機能的N末端の生成を担保する物質、特にユビキチン、LC3、SUMO-1、NEDD8、GATE-16及びGABA(A)RAPから成る群から選択される物質を指す。さらにまた、インテイン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2A及びウサギ出血疾患ウイルス(rabbit hemorrhagic disease virus)のp15から選択されるプロテアーゼが、本明細書で用いられる“プロセッシングシグナル”と理解される。Cタンパク質の機能的N-末端の生成を担保する、当業者に公知の他の類似するいずれのプロセッシングシグナルもまた、“プロセッシングシグナル”の用語に含まれるであろう。
本明細書で用いられる“タンパク質C”又は“Cタンパク質”又は“C-タンパク質”は、ペスチウイルスビリオンの構造的成分を指す(Thiel et al. 1991)。“タンパク質C”はペスチウイルスのキャプシド又はコアタンパク質である。前記用語はまた、文脈に応じて、コードヌクレオチド配列の変異から生じる、1つ又はいくつかのアミノ酸交換をもつ“タンパク質C”を指す。
本発明のフラグメントは、本発明のポリヌクレオチド分子の任意のサブユニット、すなわち任意のサブセットである。DNAの場合、前記フラグメントは、完全長のウイルスゲノムを含むDNAより短いことを特徴とする。
【0012】
本発明のヌクレオチド分子の“機能的変種”は、本発明のヌクレオチド分子と実質的に類似の生物学的活性(機能的又は構造的のいずれか)を有するヌクレオチド分子である。“機能的変種”という用語はまた、“フラグメント”、“機能的変種”、“縮退核酸コードに基づく変種”又は“化学的誘導体”を含む。そのような“機能的変種”は、例えば1つ又はいくつかのヌクレオチド交換、欠失又は挿入をもつことができる。前記機能的変種は、少なくとも部分的にその生物学的活性、例えば感染性クローン又はワクチン株としての機能を保持し、場合によって改善された生物学的活性すら示す。“実質的に類似の生物学的活性を有する”とは、本明細書で提供されるペスチウイルスに関しては、例えば前記ペスチウイルスが本明細書に記載された態様で弱毒化され、弱毒生ウイルスの生産に適した非病原性ウイルス(前記ウイルスは胎盤を通過する能力を失うが、ワクチン接種後の免疫応答を仲介する)を生じることを意味する。
“遺伝コードの縮退性に基づく変種”とは、ある種のアミノ酸はいくつかの異なるヌクレオチドトリプレットによってコードされうるという事実に基づく変種である。前記変種は、少なくとも部分的にその生物学的活性を保持し、場合によって改善された生物学的活性すら示す。
ある分子と別の分子の両分子が実質的に類似のヌクレオチド配列又は生物学的活性を有するならば、ある分子は前記別の分子と“実質的に類似”している。したがって、2つの分子が類似の活性を保有することを条件として、それらは、そのヌクレオチド配列が同一でない場合、変種という用語が本明細書で用いられるように変種と考えられ、さらに類似のヌクレオチド配列を有する2つの分子は、たとえそれらの生物学的活性が同一でなくても、前記用語が本明細書で用いられるように変種と考えられる。
【0013】
本明細書で用いられる変異は、本発明のタンパク質/アミノ酸をコードする核酸分子中の改変を指す。前記変異は、置換(1つ又はいくつかのヌクレオチド/塩基対の置き換え)、欠失(1つ又はいくつかのヌクレオチド/塩基対の除去)及び/又は挿入(1つ又はいくつかのヌクレオチド/塩基対の付加)を指すが、ただしこれらに限定されない。本明細書で用いられるように、変異はただ1つの変異であってもいくつかの変異であってもよい。したがって、“変異”という用語はしばしば用いられ、単一変異及び複数変異の両者を指す。前記変異には、点変異(ただ一つのヌクレオチド変異)又はコード核酸分子の部分が欠失、置換されるか、及び/又は付加コード核酸が挿入されるより大きな変異が含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記変異は、コード配列における変化のために発現ポリペプチドの改変を生じうる。そのような改変ポリペプチドが以下に本発明の開示で示されるように所望される。
【0014】
本明細書で用いられる“ワクチン”という用語は、動物で免疫学的応答を誘導する少なくとも1つの免疫学的に活性な成分と、前記成分の免疫学的活性を強化する1つ又は2つ以上の追加成分(必ずしも必須でないができる限り含まれる)とを含む医薬組成物を指す。ワクチンはさらに、医薬的組成物に典型的な追加成分を含むことができる。ワクチンの免疫学的に活性な成分は、完全なウイルス粒子を前記の本来の形態で、又は弱毒粒子としていわゆる改変生ワクチン(MLV)の形態で、又は適切な方法により不活化された粒子としていわゆる死菌ワクチン(KV)の形態で含むことができる。また別の形態では、ワクチンの免疫学的に活性な成分は前記生物の適切な成分を含むことができる(サブユニットワクチン)。これらの成分は、完全粒子又はそのような粒子を含む増殖培養を破壊することによって生成されるか(さらに場合によってその後の精製工程で所望の構造物を得る)、又は合成プロセスによって生成されるか(前記合成プロセスは、例えば細菌、昆虫、哺乳動物又は他の種による適切な系の使用による適切な操作、場合によってその後の単離及び精製プロセスを含む)、又は適切な医薬組成物(ポリヌクレオチドワクチン)を用いて遺伝物質を直接取り込ませることによりワクチンを必要とする動物で前記合成プロセスを誘導することによって生成される。ワクチンは1つ又は同時に2つ以上の上記成分を含むことができる。本明細書で理解されるように“ワクチン”という用語は、抗原性物質を含む獣医使用ワクチンであり、ペスチウイルス感染、好ましくはBVDV感染によって惹起される疾患に対する特異的で活性な免疫を誘導するために投与される。本明細書で開示される弱毒ペスチウイルス、特に弱毒BVDVは、前記ワクチンに含まれる免疫原及び時にはまた抗原的に関連を有する生物に対する母体の抗体により受動的に伝達されうる活性な免疫を付与する。本発明のワクチンは上記に定義されるワクチンを指し、ここで1つの免疫学的に活性な成分は、BVDVであるか、又はペスチウイルス起源のものであるか、又は公知のいずれかのペスチウイルス配列(センス又はアンチセンス配列)と70%を超える相同性を有するヌクレオチド配列由来である。
【0015】
“生ワクチン”という用語は、生きている、特に生きているウイルスの活性成分を含むワクチンを指す。
免疫応答を強化する追加の成分は“アジュバント”と一般に称される成分であり、例えば水酸化アルミニウム、鉱物若しくは他の油、又はワクチンに添加される補助分子、又はそのような追加的成分による各誘導の後で身体によって生成される補助分子(インターフェロン、インターロイキン又は増殖因子のようなものであるが、ただしこれらに限定されない)のようなものである。
“医薬組成物”は本質的には、前記組成物を投与される生物、又は前記生物内若しくは生物上で生きている生物の生理学的(例えば免疫学的)機能を改変することができる1つ又は2つ以上の成分から成る。前記用語には、抗生物質又は抗寄生虫薬とともに他のある種の目的[例えばプロセッシング、無菌性、安定性、前記組成物の腸内又は非経口経路(例えば経口、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内又は他の適切な経路)による投与の容易さ、投与後の耐性、制御放出特性を含むが、ただしこれらに限定されない]を達成するために一般的に用いられる他の構成物質が含まれるが、ただしこれらに限定されない。そのような医薬組成物の非限定的な一例は、もっぱら例示のために提示すれば、以下のように調製されうる:感染細胞培養の細胞培養上清を安定剤(例えばスペルミジン及び/又はBSA(ウシ血清アルブミン))と混合し、前記混合物を続いて凍結乾燥するか、又は他の方法で脱水する。ワクチン接種の前に、前記混合物を水溶液(例えば食塩水、PBS(リン酸緩衝食塩水))又は非水性溶液(例えば油性乳濁液、アルブミン基剤アジュバント)中で再水和させる。
【0016】
[発明の詳細な説明]
上記の技術的問題の解決は、特許請求の範囲に示した特徴を有する記述及び実施態様によって達成される。
驚くべきことに、ペスチウイルス(特にBVDVは)、糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異を導入し、且つNproのコード配列に少なくとももう1つの変異を導入することによって、より効果的に弱毒化されることが見出された。前記変異は好ましくは、Nproに存在する免疫調節活性の不活化に加えて糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性の複合的不活化をもたらす。免疫調節作用の1つの特徴は、Reuggliら(2003)によって例示的態様で示されたあるペスチウイルスの提示機能であるが、ただし前記に限定されない。
本発明にしたがって弱毒化されたペスチウイルス(特にBVDV)はワクチンとして有利に用いることができる。前記弱毒ペスチウイルス(特に前記弱毒BVDV)は今や高い免疫原性を有する生ワクチンを提供する。さらにまた驚くべきことに、本発明のペスチウイルス(特にBVDV)は、胎盤を通過しないので妊娠動物での使用で安全である。これは、実施例3において非制限的態様でBVDVについて具体的に示されている。
さらにまた、弱毒化の基準として範囲が規定された変異をもつ生ワクチンは、目下のワクチン作出の欠点、例えばより病原性のある株へ復帰するリスクの回避を可能にするであろう。前記弱毒化変異の更なる利点は、前記弱毒化変異を弱毒ペスチウイルス(特にBVDV)のための特有の標識として使用し、前記弱毒化分子を野外由来のペスチウイルス(特にBVDV)から識別することを可能にする前記弱毒化変異分子の固有さに存在する。したがってある特徴では、本発明は、糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異、及びNproのコード配列に少なくとももう1つの変異を有する弱毒ペスチウイルス(特に弱毒BVDV)を提供する。好ましくは、そのような弱毒ペスチウイルス(好ましくは弱毒BVDV)では、糖タンパク質Ernsのコード配列中の前記変異はErnsに存在するRNase活性の不活化をもたらし、及び/又はNproのコード配列中の前記変異は前記Nproの不活化をもたらす。前記不活化は、Erns及びNproコード配列における当業者に公知の任意の変異によって導くことができ、この場合、前記変異は、“定義”の項で規定したように任意の変異、例えば欠失、挿入変異及び/又は置換変異である。野生型への復帰の可能性は欠失がもっとも低いので、前記変異はもっとも好ましくは欠失である。
【0017】
糖タンパク質Ernsは約97kDのジスルフィド結合したホモダイマーを構成することが示された。この場合、各モノマーは227アミノ酸から成り、前記はReumenapfら(1993)が記載したCSFVのアミノ酸268から494に対応する。CSFVのAlfort/Teubingen株のゲノム配列は、アクセッション番号J04358によりGenBank/EMBLデータライブラリーで入手できる。また別には、BVDVのCP7株のアミノ酸配列は、GenBank/EMBLデータライブラリーでアクセスできる(アクセッション番号U63479)。BVDV CP7ポリプロテインでは、Ernsタンパク質は残基271から479に対応する。2つのアミノ酸領域が糖タンパク質Ernsにおいて、いくつかの植物及び菌類のRNase活性タンパク質と同様に高度に保存されている(Schneider et al. 1993)。これら2つの領域はRNase酵素活性にとって特に重要である。Meyersら(1999)の報告でCSFVのAlfort株について例証されたように、第一の領域はアミノ酸295から307位(BVDV cp7株については298位から310位)の領域から成り、第二の領域はアミノ酸338から357位(BVDV cp7株については341位から360位)の領域から成る(番号付与は公表されたCSFVのAlfort/Teubingen株の推定アミノ酸配列にしたがう(Meyers et al. 1989))。上記で述べたRNase活性にとって特に重要なアミノ酸は、CSFVのAlfort/Teubingen株について規定された正確な位置に限定されるわけではなく、他の株の当該位置又は当該位置に相当する位置に存在する好ましいアミノ酸、例えばBVDV、BDV及び一般的なペスチウイルスで見出されるものを単に例示的に表示するために用いられる。なぜならば、それらは高度に保存されているからである。CSFVのAlfort/Teubingen株以外のペスチウイルスについては、好ましいアミノ酸の位置の番号付与は異なる可能性があるが、ペスチウイルスの分子生物学分野の専門家は、このアミノ酸配列及び配列内のこれらモチーフの位置の高度な保存性によってこれら好ましいアミノ酸を容易に特定しえよう。ある具体的な非限定的な例として、CSFV Alfort/Teubingenの346位はBVDV cp7株の349位と同一である。
【0018】
結果として、本発明は好ましくは、糖タンパク質Ernsのコード配列中の前記変異が、298位から310位及び/又は341位から360位のアミノ酸に対応するコードヌクレオチド配列中に位置する本発明のBVDVに関する。そのような変異は好ましくは下記のとおりである(アミノ酸は一文字記号で表され、位置番号の前のアミノ酸は置換されるべきアミノ酸を示し、位置番号の後ろのアミノ酸は置換するアミノ酸を示す。delは欠失を示す。例えばH300Lは、ヒスチジン300がロイシンによって置換されることを意味する)。
糖タンパク質Ernsの適切な改変は例えば単一置換/欠失である:S298G、H300K、H300L、H300R、H300del、W303G、P304del、E305A、C308G、R343G、E345del、W346G、K348A、H349K、H349L、H349del、H349Q、H349SV(変異H349S及びVの挿入)、K348R、W351P、W351G、W351L、W351K、W351H;二重置換/欠失:H300L/H349L、K348del/H349del、H349del/G350del、E345del/H349del、W303G/E305A、H300K/H349K、H300K/H349L;及び三重欠失:L299del/H300del/G300del、K348del/H349del/G350del。番号付与は、上記に挙げた全ての変異体について、BVDV CP7の公表されたアミノ酸配列にしたがった(提示された番号マイナス3がCSFV Alfort/Teubingenのアミノ酸配列の等価の残基に対応するであろう)。上記に挙げた全ての変異体は少なくとも、Npro領域の変異をもたないそれぞれCSFV又はBVDV変異体として検査された。ペスチウイルス糖タンパク質Ernsの適切な変異体は、例えばWO99/64604によって提供される(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。しかしながら、本発明にしたがえば、以下でさらに詳細に開示されるように、Npro領域の少なくとも1つの追加の変異が存在する必要があることは留意されねばならない。
特に346位(CSFV)又は349位(BVDV)のヒスチジン残基の欠失又は置換はErnsの効果的な不活化をもたらし、したがって有用なペスチウイルス生ワクチンを生じることが見出された。本発明は、ウイルスポリプロテインの346位(CSFVのAlfort/Teubingenの公表された配列による番号付与(Meyers et al. 1989))又はペスチウイルスがBVDVであるならば349位(BVDV CP7の公表された配列による番号付与(Meyers et al. 1996b))のヒスチジン残基(前記はErnsのRNaseの仮説的活性部位の保存された残基の1つである)を欠失させた場合に、ペスチウイルスは生存能力があり且つRNase活性の無いErnsタンパク質をコードすることを提示する。したがって好ましくは、本発明はまた、糖タンパク質Ernsのコード配列中の前記変異が欠失又は349位のヒスチジン残基の置換である本発明のBVDVに関する。さらにより具体的には、RNaseの仮説的活性部位は、保存されたErns配列、SLHGIWPEKICTG及び/又はLQRHEWNKHGWCNWFHIEPWによって表される(本明細書で例示的に提供されるBVDV-2 New York'93タンパク質の配列;マイナーな変化がおそらく他のペスチウイルス配列でも見出されうるが、モチーフの同一性は常に当分野の専門家には明瞭である。例として、BVDV-1 CP7の対応するアミノ酸配列はSLHGIWPEKICTG及び/又はLQRHEWNKHGWCNWYNIEPWであり、CSFV Alfort/TeubingenのそれはSLHGIWPEKICKG及び/又はLQRHEWNKHGWCNWYNIDPWであろう)。したがって好ましくは、本発明はさらに、糖タンパク質Ernsのコード配列中の前記変異が、保存Erns配列SLHGIWPEKICTG及び/又はLQRHEWNKHGWCNWFHIEPWをコードするヌクレオチド配列に位置する本発明のBVDVに関する。これらの配列は、RNaseの仮説的活性部位を表している。仮説的Erns活性部位の配列SLHGIWPEKIC及びRHEWNKHGWCNWはペスチウイルス全体でさらにいっそう保存されている。したがって好ましくは、本発明はまた、ペスチウイルス、特にNproタンパク質及び糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異を有するBVDVに関し、ここで、糖タンパク質Ernsのコード配列の前記変異は、保存Erns配列SLHGIWPEKIC及び/又はRHEWNKHGWCNWをコードするヌクレオチド配列に位置する。好ましくは、前記変異は、前記配列の一方のみに位置する。したがって本発明はまた、ペスチウイルス、特にNproタンパク質及び糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異を有するBVDVに関し、ここで、糖タンパク質Ernsのコード配列の前記変異は、前記保存Erns配列SLHGIWPEKIC又はRHEWNKHGWCNWをコードするヌクレオチド配列に位置する。好ましくは、そのような変異は2つの別個のアミノ酸に関係し、すなわち前記変異は二重変異である。したがって、前記変異は、2つのアミノ酸をコードする2つの別個のトリプレットの1つから3つのヌクレオチドの変異でありうる。したがって本発明はまた、ペスチウイルス、特にNproタンパク質及び糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異を有するBVDVに関し、ここで、糖タンパク質Ernsのコード配列の前記変異は、前記保存Erns配列SLHGIWPEKIC及び/又は RHEWNKHGWCNWをコードするヌクレオチド配列に位置する2つの変異である。好ましくは、そのような変異はただ1つのアミノ酸に関係する。したがって、前記変異は、1つのアミノ酸をコードする1つのトリプレットの1つから3つのヌクレオチドの変異でありうる。したがって本発明はまた、ペスチウイルス、特にNproタンパク質及び糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異を有するBVDVに関し、ここで、ただ1つの変異は、前記保存Erns配列SLHGIWPEKIC又は RHEWNKHGWCNWに位置している。
【0019】
上記で述べたように、本発明によって提供される弱毒ペスチウイルスは、糖タンパク質Ernsのコード配列及びNproのコード配列に少なくとも1つの変異を有し、前記変異は好ましくは、糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性及びNproに存在する免疫調節活性の不活化をもたらす。Nproの不活化は、ペスチウイルス、特に下記でより詳細に開示される指定の公式を有するBVDVで達成される。この場合、Nproの0から全てのアミノ酸が存在し;ユビキチン又はLC3又はプロセッシングシグナルとして機能するまた別の配列(例えばSUMO-1、NEDD8、GATE-16、 GABA(A)RAP、又は例えばインテイン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2A又はウサギ出血疾患ウイルスのp15のようなプロテアーゼ)が存在するか、又は存在しない。プロセッシングシグナルが存在する事例では、プロセッシングシグナルのコード配列はNproタンパク質(の残留部分)のC-末端又はC-末端近くに挿入される。プロッセシングシグナルが存在する事例でのみ、Nproをコードするアミノ酸(=Nproアミノ酸)が任意の数で存在しうる。プロセッシングシグナル配列が挿入されていない事例では、Nproの最大12のアミノ酸、好ましくはアミノ末端のアミノ酸が存在することができるが、残りのアミノ酸は欠失していなければならない。さらにまた、上記に開示したようにErns変異以外(そのうちの少なくとも1つはペスチウイルス、特に本発明のBVDVに存在していなければならない)、ペスチウイルス(特にBVDV)の残りの配列は未変化のままであることができる(すなわち変異していない)か、又はC-タンパク質のN-末端近くに変異を有することができる。下記に開示されるより具体的な多数の実施態様で前記の記載が例証される。
【0020】
したがって、本発明は、Nproのコード配列の前記変異が、式:[Npro]x-[PS]y-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、ペスチウイルス、特に本発明のBVDVに関する:
式中、
[Npro]は前記ポリプロテインのNpro部分を示し、ここで“x”は前記ポリプロテインに存在するNproのアミノ酸の数を表わす。
[PS]は、ユビキチン、LC3、SUMO-1、NEDD8、GATE-16若しくはGABA(A)RAP、又は例えばインテイン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2A又はウサギ出血疾患ウイルスのp15のようなプロテアーゼ、又は当業者に公知の任意のプロセッシングシグナルから成る群から選択される、C-タンパク質の機能的N-末端の生成を担保するプロセッシングシグナルを示す。“Y”は0でもよく、これはプロセッシングシグナルが存在しないことを意味し(=PSは存在しない)、又は“Y”は1でもよく、これは1つのプロセッシングシグナルが存在することを意味する。
[C-term]は、Nproを除くが、キャプシド(C)-タンパク質及びカルボキシ末端NS5Bを含むペスチウイルスポリプロテイン、特にBVDVポリプロテイン中に存在する他の任意のタンパク質を含む完全なペスチウイルス、特に完全なBVDVポリプロテインを示す。好ましくは、糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性を不活化することができるように、前記[C-term]中の糖タンパク質Ernsは変異させられる。“ペスチウイルスポリプロテイン/BVDVポリプロテインに存在する任意の他のタンパク質”という用語は、Erns、E1、E2、p7、NS2、NS3、NS4A、NS4B、又はNS5Aを示し、この場合、好ましくは本明細書に開示したように(上記参照)、糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性が不活化されるように糖タンパク質Ernsは変異させられる。好ましくは、ペスチウイルス、特に本発明のBVDVは、2位のアミノ酸(前記はDからNに変化している)を除いて変異していないC-タンパク質を有する。したがって、[C-term*]は、C-タンパク質の2位の変異(Dの代わりにN)以外は[C-term]と同じである。
もし“y”が0([PS]が存在しないことを意味する)であるならば、“x”は0から12であり(これは、Npro特異的アミノ酸は存在しないか、又はNpro(好ましくはNproのN-末端)の1つから12のアミノ酸が存在することを意味する);
もし“y”が1([PS]が存在することを意味する)であるならば、“x”は0から168である(これは、Npro特異的アミノ酸は存在しないか、又はNpro(好ましくはNproのN-末端)の1から168全てのアミノ酸が存在することを意味する)。
【0021】
さらにより好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:[Npro]1-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、ペスチウイルス、特に本発明のBVDVに関する(式中、定義は上記に規定したとおりである)。
その具体的な例は下記に開示されるが、この場合、N-末端メチオニンの後ろには、C-タンパク質及びポリプロテイン中に存在するカルボキシ末端NS5Bを含む他の任意の他のタンパク質が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:M[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、ペスチウイルス、特に本発明のBVDVに関する(式中、定義は上記に規定したとおりである)。
さらにより好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:[Npro]3-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、ペスチウイルス、特に本発明のBVDVに関する(式中、定義は上記に規定したとおりである)。
BVDVの具体的な例は下記に開示されるが、この場合、N-末端メチオニンの後ろには、Npro配列EL及びC-タンパク質及びポリプロテイン中に存在するカルボキシ末端NS5Bを含む他の任意の他のタンパク質が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:MEL-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、本発明のBVDVに関する(式中、定義は上記に規定したとおりである)。
【0022】
さらにより好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:[Npro]4-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、ペスチウイルス、特に本発明のBVDVに関する(式中、定義は上記に規定したとおりである)。
BVDVの具体的な例は下記に開示されるが、この場合、N-末端メチオニンの後ろには、Npro配列ELF及びC-タンパク質及びポリプロテイン中に存在するカルボキシ末端NS5Bを含む他の任意の他のタンパク質が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:MELF-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、本発明のBVDVに関する(式中、定義は上記に規定したとおりである)。
さらにより好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:[Npro]6-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、ペスチウイルス、特に本発明のBVDVに関する(式中、定義は上記に規定したとおりである)。
BVDVの具体的な例は下記に開示されるが、この場合、N-末端メチオニンの後ろには、Npro配列ELFSN及びC-タンパク質及びポリプロテイン中に存在するカルボキシ末端NS5Bを含む他の任意の他のタンパク質が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:MELFSN-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、本発明のBVDVに関する(式中、定義は上記に規定したとおりである)。
【0023】
さらにより好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:[Npro]4-[PS]0-[C-term*]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、ペスチウイルス、特に本発明のBVDVに関する(式中、C-タンパク質のアミノ末端部分が変化していることを除き、定義は上記に規定したとおりである)。
BVDVの具体的な例は下記に開示されるが、この場合、N-末端メチオニンの後ろにはNpro配列ELFが続き、且つC-タンパク質配列内では2位のアミノ酸がDからNに変化している。したがって、アミノ末端のC-タンパク質配列は、SDEGSKの代わりにSNEGSK...である。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:MELF-[C-term*]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、本発明のBVDVに関する(式中、C-タンパク質では2位のアミノ酸がDからNに変化し、定義は上記に規定したとおりである)。
さらにより好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:[Npro]x-[PS]1-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、ペスチウイルス、特に本発明のBVDVに関する(式中、定義は上記に規定したとおりで、さらにPSは上記に開示したPSのいずれかであり、好ましくはユビキチン又はLC3の群から選択される)。
BVDVの具体的な例は下記に開示されるが、この場合、N-末端メチオニンの後ろには21又は28の任意のNproアミノ酸、ユビキチン又はLC3、及びC-タンパク質が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、式:[Npro]22-[PS]1-[C-term](式中、PSは好ましくはユビキチン又はLC3である)又は式:[Npro]29-[PS]1-[C-term](式中、PSは好ましくはユビキチン又はLC3である)によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、本発明のBVDVに関する。
【0024】
ユビキチンは76個のアミノ酸をもつ高度に保存された周知の細胞性タンパク質である。他の機能物の中でとりわけ、ユビキチンはタンパク質異化作用の重要なプレーヤーである。なぜならばユビキチンとの結合によって、プロテアソームによる分解のためにタンパク質に目印を付することができるからである。カルボキシ末端のグリシンを介して他のタンパク質と結合又は融合したユビキチンは、細胞性のユビキチン特異的プロテアーゼによって切断されうる。したがって、ユビキチンのカルボキシ末端へのタンパク質の融合は、細胞内で発現された場合には通常、規定された範囲での融合タンパク質のその成分へのタンパク質切断を生じるであろう。
LC3(微小管結合タンパク質の軽鎖3)は、多様な機能を果たす125アミノ酸(この長さはウシLC3のものである)をもつ細胞性タンパク質である。最近、前記タンパク質の自家融解における基本的な役割が定義された。このプロセスの進行中に、LC3はカルボキシ末端の切断によって活性化される。それによって、グリシンから成る新しいカルボキシ末端が生じる。続いてLC3は、前記のカルボキシ末端グリシンを介して、自家融解小胞の膜に存在するホスファチジルエタノールアミンと結合する。このプロセスのために、LC3のカルボキシ末端と融合したタンパク質は、規定された位置で細胞性プロテアーゼによって切り離されるであろう。
【0025】
さらにより好ましくは、本発明は、Nproのコード配列中の前記変異が、下記から成る群から選択される式によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、ペスチウイルス、好ましくは本発明のBVDVに関する:
[Npro]2-[PS]y-[C-term]及び好ましくはME-[PS]y-[C-term]
[Npro]5-[PS]y-[C-term]及び好ましくはMELFS-[PS]y[C-term];
[Npro]7-[PS]y-[C-term]及び好ましくはMELFSNE-[PS]y-[C-term];
[Npro]8-[PS]y-[C-term]及び好ましくはMELFSNEL-[PS]y-[C-term];
[Npro]9-[PS]y-[C-term]及び好ましくはMELFSNELL-[PS]y-[C-term];
[Npro]10-[PS]y-[C-term]及び好ましくはMELFSNELLY-[PS]y-[C-term];
[Npro]11-[PS]y-[C-term]及び好ましくはMELFSNELLYK-[PS]y-[C-term];
[Npro]12-[PS]y-[C-term]及び好ましくはMELFSNELLYKT-[PS]y-[C-term];
式中、定義は上記に規定したとおりである。前記の開示された好ましい態様はBVDVについてである。yはもっとも好ましくは0である(PSは存在しない)。
【0026】
さらにより好ましくは、前記本発明のBVDVは上記に記載したように、BVDV1型である。もっとも好ましくは、前記本発明のBVDVは上記に記載したようにBVDV2型である。BVDV-1及びBVDV-2は、それらのゲノム配列の特徴にしたがって区別される(Heinz etal. 2000及びその中の参考文献)。本明細書で開示されるようにBVDV-1は、飼育牛群において、妊娠雌牛において及び妊娠雌牛のBVDV1型感染に対する胎児保護の誘導においてBVDV1型感染の予防及び/又は治療で使用される組成物の製造に用いることができる。驚くべきことに、本明細書で開示されるようにBVDV-2は、飼育牛群のBVDV1型感染の予防及び/又は治療で使用される組成物の製造に用いることができる。特に、本発明は、妊娠雌牛のBVDV1型感染の予防及び/又は治療で使用される組成物の製造における本発明のBVDV2型の使用に関する。好ましくは、本発明のBVDV2型は、妊娠雌牛のBVDV1型感染に対する胎児保護の誘導で使用される組成物の製造において用いることができる。驚くべきことにはまた、本明細書で開示されるようにBVDV-1は、飼育牛群のBVDV2型感染の予防及び/又は治療で使用される組成物の製造において用いることができる。特に、本発明は、妊娠雌牛のBVDV2型感染の予防及び/又は治療で使用される組成物の製造における本発明のBVDV1型の使用に関する。好ましくは、本発明のBVDV1型は、妊娠雌牛のBVDV2型感染に対する胎児保護の誘導で使用される組成物の製造において用いることができる。もっとも好ましいものは、飼育牛群において、妊娠雌牛において、及び妊娠雌牛のBVDV1型及び/又は2型感染に対する胎児保護の誘導において、BVDV1型及び/又は2型感染の予防及び/又は治療で使用される組成物の製造を目的とする、BVDV1型及び2型の併用使用である。
【0027】
もっとも好ましくは、本明細書に開示されるように変異を導入されるべき本発明の野生型BVDVは、配列番号5(XIKE Aと称される)のアミノ酸配列を有するか、又はその機能的変種である。もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは本発明のNpro変異を有し、配列番号6(XIKE-A-NdNと称される)のアミノ酸配列を有するか、又はその機能的変種である。好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも65%相同性である。アミノ酸レベルでは、相同性は、非常に大雑把に;BVDV-1/-BVDV-1:93%;BVDV-1/-BVDV-2:84%;BVDV-2/-BVDV-2:98%である。したがって、より好ましいそのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%又は90%相同性である。より好ましくはまた、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%相同性である。もっとも好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも99%又は99.9%相同性である。
【0028】
もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは、ヒスチジン349をコードするコドンの欠失を有する本発明のErns変異を有し、前記BVDVは配列番号7(XIKE-Bと称される)のアミノ酸配列を有するか、又はその機能的変種である。もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは本発明のErns変異及びNpro変異の両変異を有する。前記変異では、Ernsのヒスチジン349をコードするコドンが欠失し、さらにコドン1〜4を除く完全なNproコード領域もまた欠失している(したがってNproのアミノ酸MELFは残留する)。前記変異体は配列番号8(XIKE-B-NdNと称される)のアミノ酸配列を有するか、又はその機能的変種である。好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも65%相同性である。より好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%又は90%相同性である。より好ましくはまた、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%相同性である。もっとも好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも99%又は99.9%相同性である。
【0029】
もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは、ヒスチジン300をコードするコドンのロイシンをコードするコドンによる置換を有する本発明のErns変異を有し、配列番号9(XIKE-Cと称される)のアミノ酸配列を有するか、又はその機能的変種である。もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは本発明のErns変異及びNpro変異の両変異を有する。前記変異では、ヒスチジン300をコードするコドンはロイシンをコードするコドンによって置換され、さらにコドン1〜4を除く完全なNproコード領域もまた欠失している(したがってNproのアミノ酸MELFは残留する)。前記変異体は配列番号10(XIKE-C-NdNと称される)のアミノ酸配列を有するか、又はその機能的変種である。好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも65%相同性である。より好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%又は90%相同性である。より好ましくはまた、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%相同性である。もっとも好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示されるアミノ酸配列と少なくとも99%又は99.9%相同性である。
【0030】
本明細書に記載されるまた別の重要な実施態様は、ペスチウイルス、特に本発明のBVDV及び溶液を含む組成物である。当業者には、前記組成物に混合することができる追加の成分は公知である(以下をまた参照されたい:Remington's Pharmaceutical Sciences (1990) 18th ed. Mack Publ., Easton)。専門家は公知の注射可能な、生理学的に許容できる無菌的容液を用いることができる。非経口的注射又は輸液のための即席溶液を調製するために、等張の水性溶液、例えば食塩水又は対応する血漿タンパク質溶液が容易に入手できる。前記医薬組成物は、(例えば複数の部分で構成されるキットとして)無菌条件下で公知の注射可能溶液を用いて直接再構成することができる凍結乾燥物又は乾燥調製物として存在しうる。
本発明の最終調製物は、例えば注射のために前記ペスチウイルス(好ましくは本発明のBVDV)を無菌的な生理学的に許容できる溶液(前記は公知の担体物質及び/又は添加物(例えば血清アルブミン、デキストロース、重亜硫酸ナトリウム、EDTAで補充されうる))と混合することによって調製される。前記溶液は、生理学的に許容できる溶媒、例えばpH7から8の間の水溶液を基剤にすることができる。pHは医薬的に許容できる緩衝液によって安定化させることができる。前記溶液はまた、トゥイーン20のような界面活性剤、血清アルブミン(例えばBSA(ウシ血清アルブミン))、アスコルビン酸及び/又はスペルミジンのような更なる安定剤を含むことができる。前記組成物はまた、アジュバント、例えば水酸化アルミニウム、鉱物若しくは他の油、又はワクチンに添加される補助分子、又はそのような追加的成分による対応する誘導の後で身体によって生成される補助分子(例えばインターフェロン、インターロイキン又は増殖因子、ただしこれらに限定されない)を含むことができる。
【0031】
例えば、本発明の組成物では、ペスチウイルス(特にBVDV)を以下に溶解させることができる:
ペスチウイルス(好ましくはBVDV) 102−108TCID50
SGS* 25%v/v
細胞培養液 適量加えて1投与量とする

*SGS 2mL当たりの組成物
シュクロース 75mg
ゼラチン 20mg
水酸化カリウム 0.274mg
L-グルタミン酸 0.72mg
リン酸二水素カリウム 0.516mg
リン酸二カリウム 1.254mg
注射用の水 適量加えて2mLとする
【0032】
組成物が最初に凍結乾燥されるか又は他の方法によって脱水される場合は、ワクチン接種の前に、前記組成物は水溶液(例えば食塩水、PBS(リン酸緩衝食塩水))又は非水性溶液(例えば油性乳濁液(鉱物油又は植物/代謝性油系/単一乳濁液又は二重乳濁液系)、アルミニウム系、カルボマー系アジュバント)で再水和される。
好ましくは、本発明の組成物は免疫学的応答を動物で誘導する。より好ましくは、本発明の組成物はワクチンである。本明細書で理解されるワクチンは、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)を含み、上記(“定義”の項)で定義されている。
もっとも好ましい本発明の組成物は、医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含む。いくつかの担体又は賦形剤が上記で開示されている。注射又は輸液を目的とする場合、前記組成物は、等張溶液を調製するための物質、保存料(例えばp-ヒドロキシベンゾエート)、安定剤(例えばエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩)を含むことができ、さらにおそらく乳化剤及び/又は分散剤も含む。
本発明の組成物は皮内に、気管内に、又は膣内に適用することができる。前記組成物は好ましくは、筋肉内又は鼻内に適用することができる。動物の体では、上記に記載した前記医薬組成物を静脈内注射により又は標的組織への直接注射によって適用することが有利であると立証することができる。全身的適用のためには、静脈内、血管内、筋肉内、鼻内、動脈内、腹腔内、経口又は脊髄内経路が好ましい。より局所的な適用は、皮下、皮内、真皮内、心臓内、乳腺葉内(intralobally)、骨髄内、肺内に、又は治療されるべき組織(結合組織、骨組織、筋肉組織、神経組織、上皮組織)に又は組織近くに直接的に実施することができる。所望される治療期間又は治療の有効性に応じて、本発明の組成物は1回又は数回、さらにまたは間欠的に、例えば数日、数週間又は数ヶ月間、種々の投与量で、日にちベースで投与することができる。
【0033】
本発明はまた、ペスチウイルス感染、特に本発明のBVDV感染の予防及び治療を目的とするワクチンの製造におけるペスチウイルス(特に本発明のBVDV)の使用に関する。
本発明のまた別の重要な部分は、ペスチウイルス、特に本発明のBVDV、又はそのフラグメント、機能的変種、縮退核酸コードに基づく変種、融合分子若しくは化学的誘導体をコードする核酸を含むポリヌクレオチド分子である。前記ポリヌクレオチド分子は好ましくはDNAである。さらにまた好ましくは、前記ポリヌクレオチド分子はRNAである。より好ましい実施態様では、前記ポリヌクレオチド分子はまた、ペスチウイルス(特にBVDV)の機能的5'-及び/又は3'-非翻訳領域のヌクレオチド配列を含む。
当業界で公知のいくつかのヌクレオチド配列が存在し、前記は、本発明にしたがって弱毒化されるペスチウイルスをコードするポリヌクレオチド分子の製造のための基準となる。前記弱毒ペスチウイルスは、Nproのコード配列に少なくとも1つの変異を有し、且つ糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異を有し、ここで前記変異は、糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性及びNproに存在する免疫調製活性の複合的不活化をもたらす。ペスチウイルスのいくつかのメンバーの野生型配列の核酸配列の例は以下に列挙する。
【0034】
ボーダー病ウイルス
株BD31 NCBI GenBankアクセッション番号[U70263]
株X818 NCBI GenBankアクセッション番号[AF037405]
ウシウイルス性下痢ウイルス1
株NADL NCBI GenBankアクセッション番号[M31182]
株Osloss NCBI GenBankアクセッション番号[M96687]
株SD-1 NCBI GenBankアクセッション番号[M96751]
株CP7 NCBI GenBankアクセッション番号[U63479]
ウシウイルス性下痢ウイルス2
株890 NCBI GenBankアクセッション番号[U18059]
株C413 NCBI GenBankアクセッション番号[AF002227]
古典的ブタ熱ウイルス
株Alfort/187 NCBI GenBankアクセッション番号[X87939]
株Alfort-Teubingen NCBI GenBankアクセッション番号[J04358]
株Brescia NCBI GenBankアクセッション番号[M31768]
株C株 NCBI GenBankアクセッション番号[Z46258]
【0035】
Npro及びErnsのコード配列に関連する本発明の変異/改変はより詳細に上記に記載されている。この情報によって、当業者は、本発明のペスチウイルスをコードするいずれのポリヌクレオチド/ポリ核酸の製造も理解することができる。さらにまた、当業者は本発明の弱毒ペスチウイルスを製造することができる。ポリヌクレオチド配列に変異を導入し、前記変異ポリヌクレオチドをクローニングしさらに増幅するための分子的方法は例えば以下に提供されている:Sambrook et al. 1989;Ausubel et al. 1994。
もっとも好ましくは、本発明の野生型BVDV(前記は本明細書に開示されたように変異を導入される)は、配列番号1(XIKE Aと称される)の核酸配列又はその機能的変種によってコードされる。もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは本発明のNpro変異を有し、配列番号2(XIKE-A-NdNと称される)の核酸配列又はその機能的変種によってコードされる。好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも65%相同性である。核酸レベルでは、相同性は、非常に大雑把に;BVDV-1/-BVDV-1:80%;BVDV-1/-BVDV-2:70%;BVDV-2/-BVDV-2:96%である。したがって、より好ましいそのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%又は90%相同性である。より好ましくはまた、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%相同性である。もっとも好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも99%又は99.9%相同性である。
【0036】
もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは、コドンH349の欠失を有する本発明のErns変異を有し、さらに配列番号7(XIKE-Bと称される)の核酸配列又はその機能的変種によってコードされる。もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは、本発明のErns変異及びNpro変異の両変異を有し、ここで、Ernsのヒスチジン349をコードするコドンが欠失し、さらにコドン1〜4を除く完全なNproコード領域もまた欠失している(したがってNproのアミノ酸MELFは残留する)。前記変異体は配列番号8(XIKE-B-NdNと称される)の核酸配列又はその機能的変種によってコードされる。好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも65%相同性である。より好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%又は90%相同性である。より好ましくはまた、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%相同性である。もっとも好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも99%又は99.9%相同性である。
【0037】
もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは、コドン“H300”のロイシンコドンによる置換である本発明のErns変異を有し、さらに配列番号11(XIKE-Cと称される)の核酸又はその機能的変種によってコードされる。もっとも好ましくはまた、本発明のBVDVは本発明のErns変異及びNpro変異の両変異を有し、ここで、ヒスチジン300をコードするコドンはロイシンをコードするコドンによって置換され、さらにコドン1〜4を除く完全なNproコード領域もまた欠失している(したがってNproのアミノ酸MELFは残留する)。前記変異体は配列番号12(XIKE-C-NdNと称される)の核酸配列又はその機能的変種によってコードされる。好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも65%相同性である。より好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%又は90%相同性である。より好ましくはまた、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%相同性である。もっとも好ましくは、そのような機能的変種は、本明細書に開示される核酸配列と少なくとも99%又は99.9%相同性である。
【0038】
本発明のまた別の重要な特徴はペスチウイルスを弱毒化する方法であって、前記は、糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異とNproのコード配列に少なくとももう1つの変異とがペスチウイルスゲノムに作出されることを特徴とする。好ましい実施態様にしたがえば、前記ペスチウイルスはBVDVである。
より好ましい実施態様にしたがえば、前記方法は以下の工程を含む:
a)野生型ペスチウイルスのヌクレオチド配列をcDNAに逆転写する工程;
b)前記cDNAをクローニングする工程;
c)欠失、挿入変異及び/又は置換変異の群から選択される変異を前記cDNAに挿入する工程、ここで前記変異は糖タンパク質Ernsをコードするコード配列とプロテアーゼNproをコードするコード配列とに位置し;
d)in vitroで又は適切な細胞の感染に際してペスチウイルスcDNAのRNAへの転写を指令することができるプラスミド又はDNAウイルスに、前記cDNAを組込む工程。
本発明のBVDVを弱毒化する方法に関して、前記好ましい方法は以下の工程を含む:
a)野生型BVDVのヌクレオチド配列をcDNAに逆転写する工程;
b)前記cDNAをクローニングする工程;
c)欠失、挿入変異及び/又は置換変異の群から選択される変異を前記cDNAに挿入する工程、ここで前記変異は糖タンパク質Ernsをコードするコード配列とプロテアーゼNproをコードするコード配列とに位置し;
d)in vitroで又は適切な細胞の感染に際してペスチウイルスcDNAのRNAへの転写を指令することができるプラスミド又はDNAウイルスに、前記cDNAを組込む工程。
本発明のさらに別の重要な実施態様はペスチウイルスによって引き起こされる疾患の治療方法であり、前記方法では、本発明のペスチウイルス又は本発明の組成物が治療の必要がある動物に当業者に公知の適切な用量で投与され、前記ペスチウイルス感染の症状の軽減がモニターされる。
本発明のさらに別の重要な実施態様はBVDVによって惹起される疾患の治療方法であり、前記方法では、本発明のBVDV又は本発明の組成物が治療の必要がある動物に当業者に公知の適切な用量で投与され、BVDV感染の症状、例えばウイルス血症及び白血球減少症及び/又は発熱及び/又は下痢の軽減がモニターされる。
以下の実施例は本発明をさらに説明するために供されるが、前記は本明細書に開示される本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0039】
(実施例1:BVDV XIKE-B:妊娠未経産牛における胎児病原性の評価)
BVDV XIKE-B(病原性の強いBVDV 2型単離株NewYork'93/CのRNase陰性変異体)を感染性cDNAクローンpKANE40Bから回収した。前記は、組織培養で野生型様(wt-様)増殖特性を示した。動物実験では、前記変異体は、顕著に弱毒化されそれにより弱毒生ワクチンウイルスの開発のための有望な候補物であることが判明した(Meyer et al. 2002)。この弱毒ウイルスがなお胎盤を通過し、胎児に感染しうるか否かを調べるために、妊娠した未経産牛をXIKE-Bに感染させた。対照として、cDNAクローンpKANE40Aから回収した野生型BVDVを用いた。XIKE-Aと称される対応ウイルスは感染細胞で活性なErns RNaseを発現する。
本実験は、妊娠動物におけるXIKE-A及びXIKE-Bの安全性を評価することを目的とする。
実験設計
10頭の妊娠未経産牛をBVDV陰性群から選別した。以下の5頭の未経産牛のグループが実験に含まれた:

接種前の8日間未経産牛を実験施設に移した。実験施設に移した後、妊娠状態を確認した。未経産牛は、接種日に妊娠60日から90日であった。全ての動物で接種は1回実施した。
前記観察期間の間、流産を含むBVDV感染の臨床的徴候の存在について未経産牛をモニターした。血清学的検査、抗原検出及び白血球計算のために、前記動物から血液サンプルを採集した。実験は感染後9週間で終了した。非流産牛を屠殺し、子宮を調べ採集した。通常の剖検の間に胎児の器官サンプルを採集し、BVDV感染について調べた。
胎児感染の存在は主要な評価パラメーターであり、終了時のBVDV関連のウシの死亡数、BVDV関連の流産数及びBVDV陽性胎児数を含む。前記主要パラメーターの他に、曝露後のBVDV感染に特徴的な臨床的徴候、ウイルス血症及びウシの白血球数及び直腸温が評価された。
【0040】
動物
未経産牛はBVDV非汚染農場から購入した。以下の実験使用基準を満たす動物のみを用いた。
実験使用基準
−BVD抗体が存在しないこと;移送前および実験の開始時に(動物検査施設で)各個体は血清抗体検査で調べられるであろう。
−BVDV非感染であること;各個体の血漿及び/又はバッフィーコート調製物が適切な検査で調べられるであろう。
−実験開始時の身体検査に際して臨床的に健康であると判定されること。動物の健康診断は、従来の一般的に許容されている獣医師の検査にしたがって実施された。
−接種前に身体検査により妊娠が確認されること。妊娠は接種時に60日から90日であった。前記は人工授精記録によって立証された。
【0041】
テスト株A:

【0042】
テスト株B:

【0043】
妊娠管理
妊娠は接種直前に確認した。
未経産牛の接種
接種は実験の0日目である。
各鼻孔に、3mLのテスト材料を注射針の無い注射筒で経鼻的に投与した。その都度、新しい無菌的注射筒を用いた。投与は吸気相の間に実施し、呼気による材料液の損失を最小限に抑えた。
接種後の観察
血液サンプルの採集及び試験
血液は、標準的な無菌的方法(採血部位の消毒)にしたがって採集した。新しい無菌的注射筒及び針を各動物について用いた。
血清調製のための血液採集
接種直前に、続いて感染後毎週及び実験終了時に少なくとも10mLの血液を前記未経産牛から採集した。血清は-20℃で必要になるまで保存した。
白血球数及びバッフィーコート調製のための血液採集
白血球計算のために、3mLの血液を採集後直ちに適切な無菌容器(Venoject, Terumo Europe N.V., Leuven, Belgium)(前記には事前に0.06mLのEDTA(0.235M)が満たされてある)に移した。
バッフィーコート調製のためには、少なくとも15mLの血液を採集後直ちに適切な無菌容器に移した。前記容器には事前に0.1mLのヘパリン溶液(注射用ヘパリンナトリウム、5000IU/mL、ロットA7B163A、実験日付11/2000:Gedeon Richter RT, Budapest, Hungary)が満たされてあり、少なくとも前記血液サンプルで20IUヘパリン/mL血液が得られる。その後内容物を注意深く混合した。
バッフィーコートの調製及び白血球計算のために、血液を前記未経産牛から以下のように採集した:
−感染後0日目から14日目まで毎日;
−15日目から40日目まで1日おきに、又はサンプリング時点で3回連続してウイルス単離について動物が陰性を示すまで。
血清の調製
血清を室温で凝固させ、遠心によって分離した。各血清サンプルを各々少なくとも2mLの2つのアリコットに分割した。一方のアリコットをBVDV特異的抗体についてELISAでアッセイした。前記血清の残りを凍結し、必要になるまで-20℃で保存した。
白血球数
白血球数は、主張されている正確度が0.1x109/L, 100/μLであるコールターカウンター半自動電子装置(Diatron Minicell-16; Messtechnik GmbH, Wien, Austria)を用いて決定した。前記装置は製造元の推奨(ゼロ点補正及び白血球計算)にしたがって用いた。
バッフィーコートの調製
ヘパリン血液サンプルは可能なかぎり迅速に研究室に輸送した。バッフィーコート調製手順は、標準的な実験室手順にしたがい無菌的条件下(無菌ピペット、操作、クリーンベンチなど)で実施した。
得られたバッフィーコートを小容積(2mL)のRPMI1640に再懸濁し、0.5mLの2つのアリコットとして-70℃で凍結した。残りの1mLのバッフィーコートは、許容細胞培養での同時培養によって血液細胞付随BVDVの決定のために直ちに用いた。
BVD血清抗体ELISAテスト
適切な実証済みのELISAテスト(Svanovir(商標)BVDV抗体テストCat#10-2200-10)を用いて、各血清サンプルをBVDV抗体の存在について検査した。製造元の推奨に従ってテストの有効性を実証し、テストを実施した。陽性サンプルは、log2スケールにしたがって稀釈し、BVDV抗体力価を決定した。
BVD抗原アッセイ
各バッフィーコートサンプルを、感受性細胞又は細胞株とともに新しく調製したバッフィーコートを同時培養することによってBVDVの存在についてアッセイした。同時培養前に凍結することは許容されない。
各サンプルから血漿を採集し、Man-Geneに提供した。
臨床観察
未経産牛の観察
動物は、0日目から接種後42日目まで毎日、十分に訓練を受けた獣医師によって臨床的徴候の存在について調べられた。
全ての臨床的徴候は記録され、その性状、粘度/手触り、重篤度(軽度、中等度又は重度)、位置、患部のサイズが記載され、それらは容認された標準的な規定にしたがってスコアとして表されるであろう。特別な注意が、呼吸に関する徴候(呼吸、呼吸数;鼻及び目の流出液;結膜炎、くしゃみ、咳など)及び下痢に向けられた。
直腸温
直腸温は、各未経産牛について接種前5日から接種後21日まで毎日、同じ時間(好ましくは午前中)に測定した。
直腸温の毎日の測定は、各動物が連続して少なくとも3日間39度以下の直腸温を有するまで継続した。
妊娠中断の検出
妊娠を確認し、流産又は胎児の吸収は直腸検査によって確認した。十分に訓練された獣医師が、接種時、接種後1ヶ月及び2ヶ月で全ての動物を検査した。検査は、一般的に許容されている獣医師の慣行に従って実施された。
未経産牛は、実験終了まで(曝露後8−12週)毎日全ての流産の徴候について検査された。
実験の終了
実験は未経産牛を屠殺し、胎児を取り出すことによって終了した。胎児及び胎児性物質を、前記ウシの番号及び日付/時間を記した閉鎖輸送容器に移した。前記容器を選択した剖検室に輸送した。
未経産牛の剖検は必要ではない。剖検は胎児について実施され、発見は記録され、サンプルのパネルは下記に記載するように採集される。
死後検査
実験動物の詳細な剖検を各死亡例で実施した。
死後検査は、経験豊富な外科獣医師によって実施され、適切なデータシートにデータが記録された。臨床的徴候及び観察された病巣にしたがって、更なる実験室検査が実施された。剖検の診断が微生物により惹起された疾患を示唆した場合は、前記診断は適切な検査(その微生物に特異的な検査)によって実証された。
各組織サンプルを、少なくとも2つの別々の標識した容器に採集し、液体窒素で瞬間凍結した。サンプルは必要になるまで-70℃で保存した。
流産胎児及び実験の終了
少なくとも以下の組織サンプルを胎児から採集した:
−もし有れば、腹腔又は胸郭の滲出物、
−腸間膜リンパ節、
−脾臓、
−胸腺、
−小脳、
−腎臓、
−胸骨の骨髄、
−もし入手できれば胎盤のサンプル。
死亡又は屠殺未経産牛
少なくとも以下の組織サンプルを採集した:
−もし入手できれば、バッフィーコート用血液、
−もし入手できれば、血清用血液、
−パイアー斑
−腸間膜リンパ節、
−脾臓、
−腎臓、
−もし入手できれば、胎盤のサンプルを含む子宮。
サンプルの保存及び輸送

サンプルはスポンサーの要求にしたがって、研究室での分析のために移送された。サンプルの選択及び輸送のタイミングについては、実験調整者又はプロジェクトマネージャーの同意を得た。基本的な問題として、流産による材料又は出産された仔牛から得られたサンプルは可能なかぎり迅速に調査された。
【0044】
結果
死亡率
未経産牛No.626(群1)は接種後(PI)13日目に死亡した。以下の表は、観察された臨床徴候及び剖検時に明らかになった病巣の要旨である:
未経産牛No.626

これらの臨床的及び肉眼的病変の所見はBVDV誘発病巣と一致し、したがって死因はBVDV感染であると結論することができる。
【0045】
感染後の流産
各群で1頭の未経産牛が臨床的に流産を示した。未経産牛No.615(群1)は38DPIで流産し、未経産牛No.469(群2)は39DPIで流産した。両方の胎児が自己融解の徴候を示し、流産の少なくとも3−7日前に死亡していたと概算された(ほぼ32−35DPI)。
群1では、終了時の屠殺調査において未経産牛No.526の胎児は観察されなかった。子宮の肉眼的病変は以下のとおりであった:
−右の子宮角はかすかに肥大し、
−自己融解が進行した残余の胎盤は子宮腔内に保持されていた。
未経産牛No.526の子宮についての所見は、“サイレント”流産(BVDV感染によるもっとも有りうる形態)に一致する。
未経産牛の臨床的観察
前記の群の臨床観察データ及び臨床徴候の期間は下記に提示される。
【0046】
臨床徴候及び前記が観察された時の接種後日数(DPI)
群1(XIKE-A)

*未経産牛No.626は13DPIで死亡した。

【0047】
XIKE-Aに感染した群1の全ての動物が広域の臨床的徴候を示した。呼吸系の徴候は、初めに食欲低下と一緒に現れ、数日後に未経産牛はNo.526の未経産牛を除き下痢を発した。一頭の未経産牛が死亡し、別の1頭が感染後に流産した(上記参照)。これら全ての徴候が毒性BVDV株感染後の予想される症状と一致している。
XIKE-Bに感染した群2の動物の全てが臨床徴候を示さなかった。同じ時期に1頭の未経産牛が観察期間中に流産した。
直腸温
異常な温度変化は動物の感染前には検出されなかった。群2では、感染後0日目から21日目まで全ての温度数値は生理学的範囲内にあった。
群1の全ての動物が感染後に直腸温の上昇を示し、前記は接種後7から11日目に検出された。
実験終了時の所見
実験が終了したとき、胎児を屠殺時に調べた。
未経産牛No.526からは胎児は回収されなかった(項目10.2の“感染後の流産”を参照されたい)。
以下の所見は胎児の剖検に際して観察された:

前記所見は、群1の2頭の動物(未経産牛No.598及びNo.618)及び群2の1頭の動物(未経産牛No.619)は摘出の数週間前に死亡したことを示唆し、したがってそれらは流産であったと考えられる。
【0048】
死後所見によって修正される流産
死後検査後、未経産牛の幾頭かはなぜ流産しなかったのかは明らかではなかった。死亡胎児は流産と考えられるべきであり、したがって実験の終了後に臨床像は以下のように修正された:
群1:

群2:

【0049】
血液サンプルの調査
白血球数
WBCの計測は、26DPIの時点で全ての動物がウイルス単離について陰性となったので中断された。0DPIの数値は比較のための個体の基準値と考えられた。群2では、白血球数は、観察期間の終了時点(26DPI)まで決して基準値の40%以下にはならなかった。群1では、1頭の動物(未経産牛598)が1日だけ基準値の40%を下回るWBC数を示した。
血清学的検査
感染前には選別された動物のいずれもその血清中にBVDV特異的抗体をもたなかった。感染後、群1の生存未経産牛の全てがBVDV特異的抗体を生じ、前記は接種後3週間から検出され、全ての実験動物で観察期間の終了時点まで持続した。群2では、5頭の未経産牛のうち4頭がBVDV特異的抗体を有し、前記は接種後4週間から検出された。測定可能な抗体応答は、観察期間の終了時点まで3頭の動物でのみ持続した。力価は群1よりも群2で低かった。
同時培養によるウイルスの検出
バッフィーコート
BVDVは両群で検出された。ウイルスが検出された期間を下記に要約する。全てのサンプルは採集後直ちに(すなわち凍結することなく)同時培養した。

組織サンプル
死亡未経産牛及び胎児のBVDウイルスの存在は以下に要約される:
未経産牛:

胎児:

“#”の印を付されたもの(前記からは凍結サンプルしか入手できなかった)を除いて、サンプルは採集後直ちに(すなわち凍結することなく)同時培養した。
BVD関連臨床データ及び検査データの要旨
群1:

NT:テストせず。
群2:

*胎児はサンプリングの時点で自己融解していた。
【0050】
結論
本実験は、XIKE-A及びXIKE-Bの妊娠動物における安全性を評価することを目的とした。妊娠した未経産牛はBVDV陰性家畜から選別された。5頭の未経産牛を含む2つの群がこの試験に含められた:一方の群はXIKE-Aを接種され、他方はXIKE-Bウイルス株を接種された。未経産牛は接種日に妊娠60から90日であった。未経産牛は、流産を含むBVDV感染の臨床的徴候の有無について観察期間中モニターされた。血液サンプルを血清学的検査、抗原検出及び白血球計算のために前記動物から採集した。実験は感染後9週間で終了した。流産しなかった雌牛を屠殺し、子宮を調べ採集した。胎児の器官サンプルを日常的な剖検の間に採集し、BVDV感染について調べた。
胎児の感染の存在は主要な評価パラメーターであった。前記は、終了時点でのBVDV関連のウシの死亡数、BVDV関連の流産数及びBVDV陽性胎児数から構成される。前記主要なパラメーターの他に、ウシのBVDV感染に特徴的な臨床的徴候、ウイルス血漿及び白血球数及び曝露後の直腸温が含まれる。
XIKE-BウイルスはXIKE-Aよりも病原性が低いことが証明されたが、それにもかかわらず、BVDV関連流産及び胎児の感染がXIKE-B群でもまた観察された。したがって、Erns RNaseの不活化は胎児の感染を防御しないと結論することができる。
【実施例2】
【0051】
(実施例2:BVDV XIKE-A-NdN:妊娠未経産牛における胎児病原性の評価)
Npro遺伝子はCSFVの組織培養での増殖に必須ではないことが示された(Tratschin et al. 1998)。たとえNpro欠失の結果がBVD弱毒化であるとの証明が欠けているとしても、ウイルスと宿主との相互作用におけるこのタンパク質の可能と思われる役割は、CSFVについての最近の実験によって実際に示された(Mayer et al. 2004;Reuggli et al. 2003)。したがって、我々は、Nproコード配列の主要部分の欠失がもはや妊娠未経産牛で胎児に感染しないウイルスを生じるか否かを解明しようとした。5'末端の4コドンを除くNpro遺伝子を、完全長cDNAクローンpKANE40Aから標準的な方法にしたがって欠失させた。得られた変異完全長クローンをin vitro転写の鋳型として用い、生成されたcRNAをMDBK細胞に文献(Meyer et al. 2002)に記載されたようにトランスフェクトした。回収されたウイルスを組織培養で増幅し、続いて下記に記載する動物実験で用いた。BVDV XIKE-Bは、前記は胎盤を通過することができることが以前に示されたので(実施例1)、対照として供された。
【0052】
本実験の対象/目的
本実験は、Nproコード領域の大半が遺伝的に欠失した弱毒生BVDVの妊娠動物における安全性を評価することを目的とする。
使用した材料及び方法は実施例に記載されている。
実験の設計
8頭の妊娠未経産牛を2つの群にランダムに振り分けた。前記を下記のスケジュールにしたがって処置し観察した。

【0053】
結果
実験の開始時には全ての未経産牛は健康であり妊娠していた。実験の開始前には、全ての動物がBVDVに感染しておらず、さらにBVDV抗体を持たないことが証明された。
感染に用いられるウイルスの調製と管理
サンプルは稀釈工程の間ずっと採集され、調製のその日に(すなわち凍結されること無く)、適切な組織培養の同時培養によってアッセイされた。ウイルスの力価測定の結果は以下の表に示されている。

【0054】
BVDV感染の臨床症状
下記の表は、観察期間中に臨床的徴候を示した動物についての要旨である。
臨床的徴候と、それらが観察された接種後の日数(DPI)

各群の動物の数頭において単なる軽度で一過性の臨床的徴候が観察された。群1では、5頭の未経産牛のうち1頭が接種後8日目に食欲低下を示した。群2では、3頭の動物のうち2頭が臨床的徴候を示した。両未経産牛は接種後21日目頃に咳を生じ、前記は1頭の動物で食欲の低下を伴った。
【0055】
直腸温
異常な温度変化は動物に接種する前には検出されなかった。接種後に測定された温度上昇のいくつかの事例が下記の表に要約されている。

各群で1頭の動物がかすかに高い温度を示し、さらに1頭が各群で発熱を示した。発熱は接種後8又は9日目に検出された。温度の数値は常に次の日に正常値に戻った。
白血球数
ある程度の白血球減少症が全ての群で接種後3−8日目に観察された。白血球数の少なくとも40%減少を示した動物の数は以下のとおりであった:

血清学的検査(BVDV抗体)
本実験プロトコルにしたがって、全ての未経産牛はワクチン接種前にはBVDV抗体をもたなかった。群1(XIKE-A NdNを接種)及び群2(XIKE-Bを接種)では、完全な血清変換が実験の終了時(接種後2ヶ月)にのみ検出された。
【0056】
バッフィーコートからBVDウイルスの単離
ウイルス血症は検出されなかった。
胎児組織サンプルからBVDウイルスの単離

結論
Npro欠失は、高度に病原性であることが示された親ウイルスXIKE-A(Meyer et al. 2002)と比較してBVDVの顕著な弱毒化をもたらした。しかしながら、Npro欠失のみでは妊娠雌牛への接種後、NY93系ウイルス組換体の胎児への伝播は防御されない。
【実施例3】
【0057】
(実施例3:BVDV XIKE-B-NdN:妊娠未経産牛における胎児病原性の評価)
BVDV弱毒化及び胎児への伝播に関するRNase不活化と組み合わされたNpro欠失の潜在能力をテストすることができるように、Nproコード領域内に欠失を有する種々のBVDV-2変異体を感染性cDNAクローンpKANE40B(コドン349の欠失を含む、pKANE40AのRNase陰性変異体)を基にして樹立した。所望の変異が存在すること、導入された変化にフランキングする領域に第二の部位変異が存在しないこと、及び組織培養におけるそれらの増殖の特徴について、回収したウイルスを分析した。XIKE-B-NdN(V-pK88C)(前記はコドン349のRNase不活化欠失に加えて、コドン1から4を除く完全なNproコード領域の欠失を含む)を動物実験に選択した。なぜならば、前記は許容できる増殖の特徴とともに所望の変異を併せ持っていたからである。本実験の目的は、弱毒生BVDV単離株の妊娠動物における安全性を評価することであった。
5頭のBVDV陰性妊娠未経産牛に、105TCID50/動物の感染量のXIKE-B-NdN(バックタイトレーションのデータは表3.1に示されている)を経鼻的に接種した。臨床データは毎日記録した。血液サンプルを白血球計算、バッフィーコート調製及び血清学的検査のために採集した。実験終了後にウイルスの単離のために胎児の組織を採集した。
材料と方法
実施例1で詳細に説明したとおりである。
【0058】
結果
臨床的変化は観察されなかった(データは示されていない)。白血球数は、No.1015の未経産牛で1日だけ(接種後6日目)基準値(0日目)より40%下がるという顕著な低下を除いて(データは示されていない)実質的に変化がなかった。
バッフィーコート調製物の分析
ほぼ106の白血球をMDBK細胞とともに24ウェルの組織培養プレートで二連で5日間培養した。サンプルは2回凍結融解した。新しく播種した24ウェルの組織培養プレートに融解したサンプルの100μLアリコットを接種し、間接免疫蛍光染色(mAbコード4、非構造タンパク質NS3の保存エピトープに対して誘導されたもの)によってウイルスについて検査した。BVDVは、#921、1013、1015及び1075の動物のバッフィーコート調製物からは単離できなかったが(表3.2)、陽性対照はこの検査が正しく実施されたことを示した。
【0059】

【0060】
b)胎児組織の死後検査
実験の終了後、以下の胎児組織をウイルスの単離のために採集した:脾臓、腎臓、胸腺、胸骨、小脳、胎盤、腸及び腹水。簡単に記せば、滅菌海砂及びCa2+とMg2+を含まない氷冷PBSを用いて乳鉢中で組織懸濁物を作成した。乳鉢をCa2+とMg2+を含まない1mLの氷冷PBSで洗い、懸濁物を2000xgで10分(4℃)遠心した。上清を最初に使い捨ての0.45μmフィルターホルダーに通し、続いて第二のフィルター(ポアサイズ0.2μm)に通した。ウイルスの単離(400μLの胎児組織懸濁液又は100μLの胎児腹水)は、二連で、24ウェルの組織培養プレートのMDBK細胞の単層培養上で実施した(37℃、7%CO2)。組織サンプルは細胞障害作用又は細菌汚染について毎日管理し、5日間のインキュベーションの後で、プレートを2回凍結融解した。100μLのサンプルを新しく播種したMDBK細胞に継代した。ウイルスは間接免疫蛍光染色(mAbコード4)によって検出した。BVDVは組織サンプル又は胎児腹水で検出することができなかった(表3.3)。
【0061】

【0062】
c)血清学的所見
血清中和力価は、接種前、接種後1ヶ月及び実験終了時に測定した。全ての動物の血清をNY93/Cに対する中和抗体について三連で検査し、稀釈終末点は間接免疫蛍光染色によって判定した。結果は稀釈終末点として表した(前記はほぼ100TCID50を中和しケーバー(Kaerber)の方法で計算された)。1:16までの稀釈では血清はMBDK細胞に対して毒性をもつので、0日目並びに感染後1及び2ヵ月後については明瞭なデータは得ることができず、より高い稀釈では中和は検出できなかった。ワクチン接種後第三週目から、全ての動物が相同なBVDV-2ウイルスNY'93/Cに対する中和抗体を生じ、実験終了まで持続させた(表3.4及び図1)。
【0063】

【0064】
d)結論
前記動物実験で得られたデータは、BVDV XIKE-B-NdNは高度に弱毒化されたウイルスであることを明瞭に示している。野生型ウイルス又は単一変異体XIKE-B若しくはXIKE-A-NdN(前記は妊娠未経産牛で高率に胎児への伝播を示す)とは対照的に、二重変異体は弱毒生ワクチンとしての使用に極めて適切である。
実験番号:B01 BIVI020及びB01 BIVI1022
表3.1:ウイルスのバックタイトレーション

【0065】
有効性及び交差防御実験
弱毒ウイルス変異体BVDV XIKE-B又はBVDV-B-NdNによるワクチン接種に関して2つの可能な問題に向き合わなければならない。第一に、BVDV-1及びBVDV-2との間の交差防御に関する一般的な問題が存在する。少なくとも不活化BVDV-1ワクチンによるワクチン接種は、妊娠動物でBVDV-2の胎児への伝播を防御しなかった。胎児感染に対する防御はBVDVワクチン接種の主要な目的であるので、前記のようなワクチンは広範囲に防御免疫を誘導するとみなすことはできない。したがって、問題は、弱毒生BVDV-2は胎児へのウイルス伝播を防御することができるか否かということであった。第二に、BVDV XIKE-B-NdNの増殖速度の低下によって低レベルの防御が生じるだけで、妊娠未経産牛における胎盤通過胎児感染を防御できない可能性がある。これらの問題に注目して、動物実験を開始した。動物(各群10頭の2群)にBVDV XIKE-B又はXIKE-B-NdN(意図した接種量:105TCID50のウイルスを含む上清1mL;バックタイトレーションは表3.5に示されている)。1日だけ軽度の咳を示した1頭の非ワクチン接種対照群の動物を除いて、いずれの動物もワクチン接種後顕著な臨床的徴候を示さなかった。1頭の非ワクチン接種対照群の動物(39.1℃であった)を除いて、直腸温の数値は39℃を下回っていた。ワクチン接種後調製したバッフィーコートサンプルを上記に記載したようにウイルスの存在について分析した。前記分析実験によって、20頭の動物のうち5頭のみが、感染後4から8日に1から2日間血中にウイルスを含んでいた(表3.6)。
表3.5:ワクチン接種に用いたウイルスのバックタイトレーション

【0066】



【0067】
ワクチン接種後4週間して、動物に人工授精を実施した。曝露感染は60から90日後に以下のいずれかを用いて実施した:BVDV-1株(BVDV KE-9;異種曝露、動物はXIKE-Bでワクチン接種された)又は異種BVDV-2株(BVDV KE-13;相同曝露、動物はXIKE-B-NdNでワクチン接種された)(意図した接種量:6mL中に105TCID50;バックタイトレーションは表3.7に示されている)。ワクチン接種した動物の各群から5頭の妊娠未経産牛を曝露感染のために任意に選別した。BVDV XIKE-Bでワクチン接種した動物をBVDV-1の株KE-9で曝露し、一方、BVDV XIKE-B/NdNでワクチン接種した未経産牛はBVDV-2 KE-13で曝露した。さらにまた、2頭の非ワクチン接種対照動物に各曝露ウイルスを感染させた。
実験番号/Id.:B01 BIVI020/BVDV To XIKE-B-NdN;胎児防御実験
表3.7:曝露ウイルスのバックタイトレーション

サンプル1:接種物のストック
サンプル2:牛舎から戻された接種物のストック
サンプル3:余剰の接種物
*KE9の第二の接種、サンプル2は細胞が死滅したために解釈不能となった。
**KE9、サンプル3は細胞の死滅又は細菌汚染のために解釈不能となった。
***KE13の第一の接種、サンプル3は細菌汚染のために解釈不能となった。
ワクチン接種動物は、曝露感染に際してウイルス血症又は臨床症状を示さなかった。曝露は、全ての非ワクチン接種対照がBVDV陽性であったので成功であった(表3.8)。わずかに軽度の疾患徴候が対照群で観察された。白血球数はほぼ正常であった(データは示されていない)。
【0068】



【0069】
血清中和力価は、接種前、接種後1ヶ月、曝露前、曝露後1ヶ月及び実験の終了時に測定した。全ての動物から得た血液を、KE9及びNY93/C(1456Nase)に対する中和抗体について三連で検査し、稀釈終末点は間接免疫蛍光染色によって判定した。結果は稀釈終末点として表した(前記はほぼ100TCID50を中和しケーバーの方法で計算された)。いくつかのより高い抗体力価をもつもので、使用した終末点希釈は十分に高くはなかった。KE9に対しては、XIKE-Bでワクチン接種をした動物のみが約4週目から低い抗体力価を生じた。曝露では、全ての動物が抗体力価を示し、前記力価は曝露後4週目頃から顕著に増加し始めた。XIKE-Bワクチン接種動物は、XIKE-B-NdNでワクチン接種された動物よりも高い抗体を生じた。全ての動物が、ワクチン接種後4週間でNY93/Cに対してほぼ同じ中和力価を生じたが、XIKE-B-NdNワクチン接種動物でわずかに力価は低かった。曝露後全ての動物が高い抗体力価を示した。図2は、KE9(BVDV-1)に対する血清中和アッセイを示し、図3は、NY93/C(BVDV-2)に対する血清中和アッセイを示す。
実験の終了後に胎児から得た組織サンプルの分析によって、ワクチン接種動物から得た材料は陰性の結果を提示したが、4頭の対照動物の全てで伝播が生じたことが明らかになった(表3.9)。したがって、樹立されたBVDV-2変異体は有効な交差防御ワクチンウイルスとして十分に適切であることが明らかである。
【0070】



【0071】
結論
曝露は、全ての非ワクチン接種対照がBVDVウイルス血症であり、全ての非ワクチン接種対照の胎児がBVDV陽性であったので成功であった。
両単離体が、本検査条件及びアッセイ条件下で完全な防御を提供した。単離体XIKE-B(ただ1つの遺伝マーカーをもつ)は、曝露後のBVDVウイルス血症及び胎児への伝播に関して1型のBVDV曝露に対し交差防御できることが示された。単離体XIKE-B-NdN(二重遺伝マーカーをもつ)もまた、曝露後のBVDVウイルス血症及び胎児への伝播に関して、異種の2型のBVDV曝露に対し完全に防御できることが示された。
1.単離体XIKE-B(2型単離株)は、曝露後のBVDVウイルス血症及び胎児への伝播に関して、本検査条件及びアッセイ条件下(n=4)で1型のBVDV曝露に対し交差防御できることが示された。
2.単離体XIKE-B-NdN(2型単離株)は、曝露後のBVDVウイルス血症及び胎児への伝播に関して、本検査条件及びアッセイ条件下(n=5)で異種の2型のBVDV曝露に対し完全に防御した。
【実施例4】
【0072】
(実施例4:Npro変異体の樹立)
Npro欠失をもつBVDV-2変異体をさらに分析した。ゲノムのNproコード領域に欠失をもつ種々の変異体を樹立した。先ず初めに、ただ1つの正確な欠失又は点変異による欠失を導入した。
A:[Npro]1-[C-term];
B:[Npro]3-[C-term];
C:[Npro]4-[C-term];
D:[Npro]6-[C-term];
E:[Npro]4-[C-term*];
前記の式では、[Npro]xは、変異したポリプロテインアミノ酸の左に存在するNproのアミノ末端残基数を表し、[C-term]はNproを除く完全なポリプロテイン(Cタンパク質で始まりNS5Bで終わる)であり、[C-term*]は、[C-term]と同じであるがCタンパク質の2位に変異を有する(Dの代わりにNをもつ)。
回収されたウイルスの増殖速度は、野生型XIKE-A又はRNase陰性変異体XIKE-Bのものよりも顕著に遅かった。この発見については2つの可能な説明が存在する:(i)ウイルス株によっては、長さが変動可能なNproコード領域の配列が効率的な翻訳開始に必要である(Myers et al. 2001;Tautz et al. 1999)及び(ii)キャプシドタンパク質のアミノ末端への追加配列の融合がキャプシドタンパク質の機能を妨害する。
より良好に増殖するNpro欠失変異体を得るために、ウシユビキチン遺伝子又はウシLC-3コード配列のどちらかを用いてNpro遺伝子の主要部分を置き換えて、第二の変異体セットを作成した。これらの構築物は効率的な翻訳を可能にし、正確なアミノ末端をもつキャプシドタンパク質を生成する。
[Npro]22-[PS]-[C-term];
式中、PSはユビキチン又はLCSであり、C-termは、Nproを除く完全なポリプロテイン(Cタンパク質で始まりNS5Bで終わる)である。
【0073】
これらの変異体の増殖速度はXIKE-Aについて決定された増殖速度により類似した。V-pK87F及びV-pK87Gと名付けられた、式[Npro]22-[PS]-[C-term]の2つのRNase陽性ウイルスは、顕著な増殖遅延は全く示さないようですらあったが、一方、RNase陰性の相方V-pK88Gはまたもいくぶん増殖が妨害された。しかしながら、その程度は以前に記載した変異体よりも小さかった。
Npro欠失変異体の更なる例は下記でありうる:
(ME)SDEGSK...
(MELFS)SDEGSK...
(MELFSNE)SDEGSK...
(MELFSNEL)SDEGSK...
(MELFSNELL)SDEGSK...
(MELFSNELLY)SDEGSK...
(MELFSNELLYK)SDEGSK...
(MELFSNELLYKT)SDEGSK...
(MELFSNELLYKT)は、BVDV単離株NewYork93/CのNproのアミノ末端配列を表す。
1つ又はいくつかの変異をもつこの配列の変種を用いることもまた可能であろう。特に、他のペスチウイルスで見出される自然に発生する変種が機能を有すると期待できる。したがって、Nproの種々のアミノ末端部分をもつ検査される又は提唱される変種の完全なリストはアミノ酸交換を有する等価物セットによってさらに拡大されうる。下記には対応する典型的な配列例がいくつかのペスチウイルスについて提供されるが、可能な変種はこれらの例に限定されない。
BVDV NewYprk93/C: (MELFSNELLYKT)
BVDV CP13: (MELISNELLYKT)
BVDV SD1: (MELITNELLYKT)_
CSFVブレシア: (MELNHFELLYKT)
BDV X818: (MELNKFELLYKT)
【0074】
したがって例示のためのこれらの変種は以下を含むことができる:
(MELI)-[PS]0-[C-term];
(MELIS)-[PS]0-[C-term];
(MELISN)-[PS]0-[C-term];
(MELISNE)-[PS]0-[C-term];
(MELISNEL)-[PS]0-[C-term];
(MELISNELL)-[PS]0-[C-term];
(MELISNELLY)-[PS]0-[C-term];
(MELISNELLYK)-[PS]0-[C-term];
(MELISNELLYKT)-[PS]0-[C-term];
(MELIT)-[PS]0-[C-term];
(MELITN)-[PS]0-[C-term];
(MELITNE)-[PS]0-[C-term];
(MELITNEL)-[PS]0-[C-term];
(MELITNELL)-[PS]0-[C-term];
(MELITNELLY)-[PS]0-[C-term];
(MELITNELLYK)-[PS]0-[C-term];
(MELITNELLYKT)-[PS]0-[C-term]。
これらの式はまた[PS]1を有することができる。すなわちPSは本明細書で定義したPSの1つであることができる。Nproタンパク質に属する配列は()内に示される。BVDV NewYork93/Cの配列に関するアミノ酸交換は太字で示されている。
更なる例示は、例えば文献(Becher et al. 2003)に提示されているGenBankアクセッション番号を用いるか、又は標準的な配列データ検索によって見つけることができる。
【0075】
更なる可能性は、(残余の)Npro配列とキャプシドタンパク質のアミノ末端との間に挿入されたプロセッシングシグナル(PS)の使用であろう。PSは機能的キャプシドタンパク質を生じる切断をもたらす。そのような構築物の構造は以下のとおりであろう:
[Npro]22-PS[C-term]。
PSはプロセッシングシグナルである。前記は、プロテアーゼの標的(例えば本明細書に定義されたようにユビキチン、LCS)又はプロテアーゼ若しくはそれ自身のカルボキシ末端でのプロセッシングをもたらす不安定なペプチド(例えばインテリン(Chong et al. 1998及びその中の引用文献)又はピコルナウイルスの3C、カルディオウイルス若しくはアプトウイルスの2A、ウサギの出血疾患ウイルスのp15、又は他のカリシウイルスの対応するプロテアーゼ(Proter 1993及びその中の参考文献;Meyers et al. 2000及びその中の参考文献)のようなもの)でありうる。PSを用いるときは、PSはキャプシドタンパク質Cの正確なアミノ末端の生成を担保するので、数多くの種々の変種が可能である。したがって、PS構築物を用いるときは、Npro配列の全種類の欠失又は変種が生存可能な変異体を生じると期待される(ただし、そのリーディングフレームがシフトせず、フレームの終止コドンによって翻訳が停止しないことを条件とする)。例として、我々は、式[Npro]29-PS[C-term]にしたがって生存活性を有するCSFV Npro欠失変異体を樹立した。
特に興味深いものは、前記タンパク質のタンパク分解活性をブロックするNpro変異体であろう。Reumenapfら(1998)は、CSFVのAlfort Teubingenのプロテアーゼ活性部位残基の特定を報告した。対応するアミノ酸(22位のグルタミン酸、49位のヒスチジン及び69位のシステイン)は他のペスチウイルスについて保存されている。したがって、69位のシステインをセリン又はスレオニン以外の任意のアミノ酸で交換することによってプロテアーゼ活性の破壊がもたらされるであろう。同様に、22位のグルタミン酸の交換は、新しいアミノ酸がアスパラギン酸でなければ多分にプロテアーゼの不活化をもたらすであろう。同様に49位の交換は、全てでないとしてもほとんどが不活性なプロテアーゼをもたらすであろう。
【0076】
以下の配列の全てはダッシュ記号(-)で表示した欠失領域を示し、前記にはまた番号が付されているが、一方、本明細書に添付の配列表は、欠失領域又はアミノ酸コドンを含まないで連続した番号が付されている。
配列番号1 XIKE-A-cDNA配列
配列番号2 XIKE-A-NdN-cDNA配列
配列番号3 XIKE-B-cDNA配列
配列番号4 XIKE-B-NdN-cDNA
配列番号5 XIKE-A-アミノ酸配列
配列番号6 XIKE-A-NdNアミノ酸配列
配列番号7 XIKE-Bアミノ酸配列
配列番号8 XIKE-B-NdNアミノ酸配列
配列番号9 XIKE-C-NdNアミノ酸配列
配列番号10 XIKE-C-NdN-cDNA配列
配列番号11 XIKE-C-cDNA配列
配列番号12 XIKE-Cアミノ酸配列
【0077】
(参考文献)

【0078】

【0079】

【0080】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異を有し、且つNproのコード配列に少なくとももう1つの変異を有する、弱毒ペスチウイルス。
【請求項2】
糖タンパク質Ernsのコード配列中の変異がErnsに存在するRNase活性の不活化をもたらし、及び/又はNproのコード配列中の変異が前記Nproの不活化をもたらす、請求項1に記載のウイルス。
【請求項3】
変異が、欠失、挿入変異及び/又は置換変異の群から選択される、請求項1又は2に記載のウイルス。
【請求項4】
変異が欠失である、請求項1から3のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項5】
ペスチウイルスがウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)である、請求項1から4のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項6】
糖タンパク質Ernsのコード配列中の変異が、298〜310位及び/又は341〜360位のアミノ酸に対応するコードヌクレオチド配列中に位置する、請求項5に記載のウイルス。
【請求項7】
糖タンパク質Ernsのコード配列中の変異が349位のヒスチジンの欠失又は置換である、請求項5又は6に記載のウイルス。
【請求項8】
糖タンパク質Ernsのコード配列中の変異が、保存Erns配列SLHGIWPEKICTG及び/又はLQRHEWNKHGWCNWFHIEPWをコードするヌクレオチド配列中に位置する、請求項1から7のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項9】
糖タンパク質Ernsのコード配列中の変異が、保存Erns配列SLHGIWPEKIC及び/又はRHEWNKHGWCNWをコードするヌクレオチド配列中に位置する、請求項1から8のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項10】
糖タンパク質Ernsのコード配列中の変異が、保存Erns配列SLHGIWPEKIC及び/又はRHEWNKHGWCNWをコードするヌクレオチド配列中に位置する2つの変異である、請求項1から9のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項11】
糖タンパク質Ernsのコード配列中の変異が、保存Erns配列SLHGIWPEKIC及び/又はRHEWNKHGWCNWに位置するただ1つの変異である、請求項1から10のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項12】
Nproのコード配列中の変異が、式:[Npro]x-[PS]y-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項1から11のいずれか1項に記載のウイルスであって、
前記式中、
[Npro]は前記ポリプロテインのNpro部分を示し、“x”は前記ポリプロテインに存在するNproのアミノ酸の数を表し;
[PS]は、ユビキチン、LC3、SUMO-1、NEDD8、GATE-16又はGABA(A)RAP、インテイン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2A又はウサギ出血疾患ウイルスのp15から成る群から選択されるプロセッシングシグナルを示し;
“y”は0でもよく(これはプロセッシングシグナルが存在しないことを意味し)、又は“y”は1でもよく(これは1つのプロセッシングシグナルが存在することを意味し);
[C-term]は、Nproを除くが、キャプシド(C)-タンパク質とカルボキシ末端NS5Bを含むウイルスポリプロテイン中に存在する他の任意のタンパク質とを含む完全なウイルスポリプロテインを示し;
もし“y”が0であるならば、“x”は0から12であり(これは、Npro特異的アミノ酸は存在しないか、又はNproの1アミノ酸〜12アミノ酸が存在することを意味し);さらに
もし“y”が1であるならば、“x”は0から168である(これは、Npro特異的アミノ酸は存在しないか、又はNproの1アミノ酸〜全168アミノ酸が存在することを意味する)前記ウイルス。
【請求項13】
Nproのコード配列中の変異が、式:[Npro]1-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルス。
【請求項14】
Nproのコード配列中の変異が、式:[Npro]3-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルスであって、
前記式中の定義は請求項11で規定されたとおりである、前記ウイルス。
【請求項15】
Nproのコード配列中の変異が、式:[Npro]4-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルス。
【請求項16】
Nproのコード配列中の変異が、式:[Npro]6-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルス。
【請求項17】
Nproのコード配列中の変異が、式:[Npro]4-[PS]0-[C-term*]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルスであって、
前記式中、[C-term]*は、C-タンパク質において2位のアミノ酸がDからNに変化した[C-term]と同一である前記ウイルス。
【請求項18】
Nproのコード配列中の変異が、式:[Npro]x-[PS]1-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルスであって、
前記式中、[PS]は、ユビキチン又はLC3の群から選択される前記ウイルス。
【請求項19】
ウイルスがBVDVであり、且つNproのコード配列中の変異が、下記の式から成る群から選択される式によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルス:
M-[PS]0-[C-term];
MEL-[PS]0-[C-term];
MELF-[PS]0-[C-term];
MELFS-[PS]0-[C-term];
MELFSN-[PS]0-[C-term];
MELFSNE-[PS]0-[C-term];
MELFSNEL-[PS]0-[C-term];
MELFSNELL-[PS]0-[C-term];
MELFSNELLY-[PS]0-[C-term];
MELFSNELLYK-[PS]0-[C-term];
MELFSNELLYKT-[PS]0-[C-term]。
【請求項20】
ウイルスがBVDVであり、且つNproのコード配列中の変異が、下記の式から成る群から選択される式によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルス:
MELI-[PS]0-[C-term];
MELIS-[PS]0-[C-term];
MELISN-[PS]0-[C-term];
MELISNE-[PS]0-[C-term];
MELISNEL-[PS]0-[C-term];
MELISNELL-[PS]0-[C-term];
MELISNELLY-[PS]0-[C-term];
MELISNELLYK-[PS]0-[C-term];
MELISNELLYKT-[PS]0-[C-term]。
【請求項21】
ウイルスがBVDVであり、且つNproのコード配列中の変異が、下記の式から成る群から選択される式によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルス:
MELIT-[PS]0-[C-term];
MELITN-[PS]0-[C-term];
MELITNE-[PS]0-[C-term];
MELITNEL-[PS]0-[C-term];
MELITNELL-[PS]0-[C-term];
MELITNELLY-[PS]0-[C-term];
MELITNELLYK-[PS]0-[C-term];
MELITNELLYKT-[PS]0-[C-term]。
【請求項22】
ウイルスがBVDVであり、且つNproのコード配列中の変異が、下記の式から成る群から選択される式によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルスであって、
[Npro]x-[PS]0-MELF-[C-term*]
前記式中、[C-term]*は、C-タンパク質において2位のアミノ酸がDからNに変化した[C-term]と同一である前記ウイルス。
【請求項23】
Nproのコード配列中の変異が、下記の式から成る群から選択される式によって特徴付けられるコードされたポリプロテインを生じる、請求項12に記載のウイルスであって:
[Npro]22-[PS]1-[C-term]
前記式中、PSはユビキチン又はLC3である前記ウイルス。
【請求項24】
[PS]0が[PS]1によって置き換えられ、PSが、ユビキチン、LC3、SUMO-1、NEDD8、GATE-16、GABA(A)RAP、インテイン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2A及びウサギ出血疾患ウイルスから成る群から選択される、請求項19から22のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項25】
BVDVがBVDV1型又はBVDV2型の群から選択される、請求項5から24のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項26】
BVDVが配列番号8又はその機能的変種である、請求項5から25のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか1項に記載のウイルスと、溶液とを含む、組成物。
【請求項28】
動物で免疫学的応答を誘導する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ワクチンである、請求項27又は28に記載の組成物。
【請求項30】
組成物が医薬的に許容できる担体又は賦形剤をさらに含む、請求項27から29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
ペスチウイルス感染の予防用及び治療用ワクチンの製造における、請求項1から26のいずれか1項に記載のウイルスの使用。
【請求項32】
BVDV感染の予防用及び治療用ワクチンの製造における、請求項5から26のいずれか1項に記載のBVDVの使用。
【請求項33】
請求項5から26のいずれか1項に記載の弱毒生BVDV、そのフラグメント、機能的変種、縮退核酸コードによる変種、融合分子又は化学的誘導体をコードする核酸を含む、核酸分子。
【請求項34】
ヌクレオチド分子がDNAである、請求項33に記載の核酸分子。
【請求項35】
ヌクレオチド分子がRNAである、請求項34に記載の核酸分子。
【請求項36】
ペスチウイルスにおいて、糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異と、Nproのコード配列に少なくとももう1つの変異とを作出することを特徴とする、ペスチウイルスを弱毒化する方法。
【請求項37】
以下の工程を含む、請求項36記載の方法:
a)野生型ペスチウイルスのヌクレオチド配列をcDNAに逆転写する工程;
b)前記cDNAをクローニングする工程;
c)欠失、挿入変異及び/又は置換変異の群から選択される変異を前記cDNAに導入する工程、ここで前記変異は糖タンパク質Ernsをコードするコード配列とプロテアーゼNproをコードするコード配列とに位置し;
d)in vitroで又は適切な細胞の感染に際してペスチウイルスcDNAのRNAへの転写を指令することができるプラスミド又はDNAウイルスに、前記cDNAを組込む工程。
【請求項38】
ペスチウイルスがBVDVである、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
BVDVによって引き起こされる疾患を治療する方法であって、
請求項4から26のいずれか1項に記載のBVDV又は請求項27から30に記載の組成物が、治療を必要とする動物へ当業者に公知の適切な用量で投与されて、ウイルス血症及び白血球減少症及び/又は発熱及び/又は下痢のようなBVDV感染症状の減少がモニターされる、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−61001(P2012−61001A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247652(P2011−247652)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【分割の表示】特願2007−517077(P2007−517077)の分割
【原出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(504225895)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (34)
【Fターム(参考)】