説明

弱毒化ペスチウイルス

本発明は、組換え弱毒化ペスチウイルス、特に組換え弱毒化CSFV、BVDVまたはBDVに関し、前記組換え弱毒化ペスチウイルスはダイマーのErns糖タンパク質を生成しない。本発明はまた、そのようなペスチウイルスを含む免疫原性組成物とともにペスチウイルスを弱毒化する方法に関する。前記方法は、欠失、挿入または置換によってErns糖タンパク質を改変する工程を含み、そのような改変は非ダイマーErns糖タンパク質を生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の保健分野、具体的には弱毒化ペスチウイルス、例えば古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)またはボーダー病ウイルス(BDV)に関する。
【背景技術】
【0002】
ペスチウイルスは、世界の多くの国々で経済的に重要な動物疾患の原因因子である。現在公知のウイルス単離株は4つの別個の種に分類され、これらは一緒になってフラビウイルス科(Flaviviridae)の1つの属を形成する。
I/II ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)1型(BVDV-1)および2型(BVDV-2)は、牛類でウシウイルス性下痢(BVD)および粘膜疾患(MD)を引き起こす(Baker, 1987;Moenning and Plagemann, 1992;Thiel et al., 1996)。BVDVの2つの種への分割は、ゲノム配列レベルにおける顕著な相違に基づき(Heinz et al.(2000)で概括されている)、このことは中和抗体反応の限定的な交差からもまた明らかである(Ridpath et al.(1994))。
III 古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)(以前は豚コレラウイルスと称された)は、古典的ブタ熱(CSF)または豚コレラ(HC)の原因である(Moenning and Plagemann, 1992;Thiel et al., 1996)。
IV ボーダー病ウイルス(BDV)は典型的にはヒツジで見出され、ボーダー病(BD)を引き起こす。仔羊が子宮内でBDVに感染した後で持続感染仔羊が生まれ、それらは脆弱であり、とりわけ‘ヘアリーシェーカー(hairy shaker)’症候群がもっともよく知られている種々の異常を示す(Moenning and Plagemann, 1992;Thiel et al., 1996)。
【0003】
ペスチウイルスは小型でエンベロープをもつウイルスで、5’キャップおよび3’ポリ(A)配列の両方を欠く正の極性をもつ一本鎖RNAゲノムを有する。ウイルスゲノムは約4000アミノ酸のポリプロテインをコードし、前記ポリプロテインは、細胞性およびウイルス性プロテアーゼが関与する翻訳時および翻訳後プロセッシングによって最終的な切断生成物を生じる。ウイルスタンパク質は、以下の順序でポリプロテインとして編成される:NH2-Npro-C-Erns-E1-E2-p7-NS2-NS3-NS4A-NS4B-NS5A-NS5B-COOH(Lindenbach and Rice, 2001)。プロテインC(=コアタンパク質またはキャプシドタンパク質)および糖タンパク質Erns、E1およびE2は、CSFVについて明らかにされたようにペスチウイルス粒子の構造成分である(Thiel et al., 1991)。このことはBVDVについても当てはまる。E2およびErns(E2よりは程度は低いが)は中和抗体の標的であることが見出された(Donis et al., 1988;Paton et al., 1992;van Rijn et al., 1993;Weiland et al., 1990, 1992)。Ernsは典型的な膜アンカーを欠き、相当な量で感染細胞から分泌される。このタンパク質はRNase活性を示すと報告されている(Hulst et al., 1994;Schneider et al., 1993;Windisch et al., 1996)。ウイルスの生活環に対するこの酵素活性の機能は現在のところ不明である。この酵素活性は、ペスチウイルスErnsと植物起源および菌類起源の種々の既知RNaseとの間で保存されている2つのアミノ酸ストレッチの存在に依存する。これらの保存配列の両方がヒスチジン残基を含んでいる(Schneider et al., 1993)。Ernsに存在するRNase活性の不活化は弱毒化された非病原性ペスチウイルスを生じ、前記を改変生ワクチンとして用いることができる(WO99/64604)。
【0004】
ペスチウイルス糖タンパク質Ernsは、ウイルス粒子の表面および感染細胞内でジスルフィド連結ホモダイマーとして発現される。もっともC-末端側のシステイン残基は2つのErnsモノマー間で分子間ジスルフィド結合を形成し、Ernsホモダイマーを生じる(Schneider et al., 1993)。もっともC-末端側のシステインをセリンと置換することによって、生存能力はあるがErnsホモダイマーを形成する能力をまったくもたないCSFVが得られることが最近報告された(van Gennip et al. 2005)。
Nproは、ペスチウイルスRNAの長いオープンリーディングフレームによってコードされる最初のタンパク質である。Nproはプロテアーゼ活性を有する非構造タンパク質であり、発生したばかりのポリプロテインからそれ自身をおそらくは翻訳中に切断する(Stark et al. 1993;Wiskerchen et al. 1991)。Nproはシステインプロテアーゼであり(Rumenapf et al., 1998)、ウイルスの複製に必須ではない(Tratschin et al., 1998)。Nproはともかくも細胞の抗ウイルス防衛を妨げ、したがって感染宿主内で免疫系を調節すると仮定できることが最近示された(Ruggli etal., 2003)。Mayerと共同研究者らは、Npro遺伝子の欠失の結果としてCSFVが弱毒化されることを示唆した(Mayer et al., 2004)。
【0005】
現時点におけるBVDV感染の予防および治療用BVDVワクチンにはなお欠点が存在する(Oirschot et al., 1999)。古典的BVDV-1のためのワクチンはBVDV-2感染に対して部分防御しか提供せず、ワクチンを接種された母獣は、毒性BVDV-2に持続感染した仔牛を出産し得る(Bolin et al., 1991;Ridpath et al., 1994)。この問題は、おそらく1型と2型株間の大きな抗原多様性(ウイルス中和のための主要な抗原である糖タンパク質E2でもっとも顕著である)によるものである(Tijssen et al., 1996)。1型株に対するモノクローナル抗体の大半が2型ウイルスと結合できない(Ridpath et al., 1994)。
弱毒化もしくは死滅ウイルスまたは異種発現系で発現されたウイルスタンパク質を含むワクチンがCSFVおよびBVDVのために作製され、現時点で使用されている。通常のBVDVライフワクチンは、典型的には細胞培養継代(標的種での毒性が弱められたウイルスを生じる)によって作製される。ライフワクチンとして用いられるBVDVの弱毒化の構造的基礎は不明である。したがって、弱毒化プロセスの分子的安定性を判定することは不可能である。これらのワクチンは弱毒化されてはいるが、繁殖動物での使用に関しては極めて頻繁に安全性の問題を伴う。ワクチンウイルスは妊娠動物(例えば乳牛)の胎盤を通過することができ、胎児の臨床症状発現および/または持続感染仔牛の誘発をもたらす。国際特許出願WO2005/111201は、改変生ペスチウイルスワクチンの新規な作製を提供する。前記ワクチンは、糖タンパク質Ernsのコード配列に少なくとも1つの変異およびNproのコード配列に少なくとももう1つの変異を有する多重改変ペスチウイルスを含み、糖タンパク質Ernsのコード配列の前記変異はErnsに存在するRNase活性の不活化、および/またはNproのコード配列の前記変異は前記Nproの不活化をもたらす。
【0006】
しかしながら、ペスチウイルス感染に対して有効で安全であるとともに認識可能な予防および治療の重要性を考えれば、免疫誘導のための高い潜在能力とともに範囲が明らかな弱毒化の土台(これはまた病原性ペスチウイルス(例えばBVDV)との区別の目安になり得る)を有する弱毒化ペスチウイルス(例えばBVDV)、並びに前記弱毒化ペスチウイルス(例えばBVDV)を含む組成物およびワクチンが強く所望される。
したがって、本発明の基礎となる技術的課題は、生弱毒化ワクチンとして使用される新規な弱毒化ペスチウイルス、好ましくは弱毒化BVDVを提供することである。そのような改良された弱毒ペスチウイルス(好ましくはBVDV)は、特に(i)それ自体胎盤を通過せず、さらに(ii)胎盤を通過するウイルス伝達を防止する免疫を誘導し、それによりBVDV感染症例における胎児の流産または感染宿主動物からの持続的な仔牛の誕生のような妊娠における問題を予防するはずである。
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、ペスチウイルスのErns糖タンパク質のコード領域における改変(前記改変はErns糖タンパク質のホモダイマー形成の欠如をもたらす)が弱毒化ペスチウイルスを生じることが見出された。そのような弱毒化ペスチウイルスは、ペスチウイルス感染の予防および/または治療用改変生ワクチンとして用いることができる。したがって、本特許出願のある特徴は組換え弱毒化ペスチウイルスに関し、前記組換え弱毒化ペスチウイルスはErns糖タンパク質ダイマーを生成しない。好ましくは、当該ペスチウイルスは、CSFV、BVDVおよびBDV(これらペスチウイルスのいずれかの任意の亜型を含む)から成る群から選択される。
Nproタンパク質と同様にErns糖タンパク質の改変によって弱毒化されたペスチウイルスは、ワクチンウイルスによる胎児の感染防止に関してより高レベルの安全性を示すことが国際特許出願WO2005/111201から分る。したがって、さらに別の特徴にしたがえば、本発明はまた弱毒化ペスチウイルスに関する。前記弱毒化ペスチウイルスはダイマーのErns糖タンパク質を生成せず、さらにNproタンパク質に少なくとも1つの変異を有し、Nproタンパク質の前記変異は前記Nproタンパク質の不活化をもたらす。好ましくは、当該ペスチウイルスは、CSFV、BVDVおよびBDV(これらペスチウイルスのいずれかの任意の亜型を含む)から成る群から選択される。
【0008】
上記に記載した弱毒化ペスチウイルスのいずれも、ペスチウイルス感染の予防および/または治療用改変生ワクチンを開発するための適切なワクチン候補である。したがって、さらに別の特徴にしたがえば、本発明は弱毒化ペスチウイルスを含む免疫原性組成物に関し、前記弱毒化ペスチウイルスはダイマーのErns糖タンパク質を生成しない。好ましくは、当該ペスチウイルスはNproタンパク質に少なくとも1つのさらに別の変異を有し、Nproタンパク質の前記変異は前記Nproタンパク質の不活化をもたらす。好ましいペスチウイルスは、CSFV、BVDVおよびBDV(これらペスチウイルスのいずれかの任意の亜型を含む)から成る群から選択される。
さらに別の特徴にしたがえば、本発明はまたペスチウイルスを弱毒化させる方法に関し、前記方法は、前記弱毒化ペスチウイルスがダイマーのErns糖タンパク質を生成しないように前記ペスチウイルスのErns糖タンパク質を改変する工程を含む。好ましくは、当該ペスチウイルスは、CSFV、BVDVおよびBDV(これらペスチウイルスのいずれかの任意の亜型を含む)から成る群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ウイルスEP#82(4)、EP#98(1)およびTF#283(1)の増殖曲線である。
【図2】群1/2/3の平均臨床スコアである。
【図3】群1/2/3の平均体温である。
【図4】TF#283(1)に感染した群1の体温である。
【図5】EP#82(4)に感染した群2の体温である。
【図6】TF#1347/TF#230/3に感染した群3の体温である。
【図7】群1のWBC数である。
【図8】群2のWBC数である。
【図9】群3のWBC数である。
【0010】
後続の全ての配列はダッシュ(_d)により欠失領域を表現し、それらはまた番号が付されているが、一方、本明細書に添付した配列表の配列には欠失領域またはアミノ酸コドンを含まずに連続的に番号が付されている。
配列番号:1:(CSFV_wt)CSFV野生型のアミノ酸配列
配列番号:2:(CSFV_d)配列番号:1と比較してアミノ酸438位にシステインの欠失を含むCSFVのアミノ酸配列
配列番号:3:(CSFV_S)配列番号:1と比較してアミノ酸438位にシステイン/セリン置換を含むCSFVのアミノ酸配列
配列番号:4:(BVDV_Ke9_wt)1型BVDV野生型のアミノ酸配列
配列番号:5:(BVDV_Ke9_d)配列番号:4と比較してアミノ酸441位にシステインの欠失を含むBVDV1型のアミノ酸配列
配列番号:6:(BVDV_Ke9_S)配列番号:4と比較してアミノ酸441位にシステイン/セリン置換を含むBVDV1型のアミノ酸配列
配列番号:7:(BVDV_NY_wt)2型BVDV野生型のアミノ酸配列
配列番号:8:(BVDV_NY_d)配列番号:7と比較してアミノ酸441位にシステインの欠失を含むBVDV2型のアミノ酸配列
配列番号:9:(BVDV_NY_S)配列番号:7と比較してアミノ酸441位にシステイン/セリン置換を含むBVDV2型のアミノ酸配列
配列番号:10:(BVDV_x818_wt)BDV野生型のアミノ酸配列
配列番号:11:(BVDV_x818_d)配列番号:10と比較してアミノ酸439位にシステインの欠失を含むBDVのアミノ酸配列
配列番号:12:(BVDV_x818_S)配列番号:10と比較してアミノ酸439位にシステイン/セリン置換を含むBDVのアミノ酸配列
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される用語の定義
本発明を具体的に示す前に以下のことを特記しなければならない。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形は、文脈が明確にそうでないことを示さないかぎり複数の意味を含む。したがって、“BVDV”と言えば、複数のBVDVを含み、“細胞”と言えば、1つ以上の細胞および当業者に公知のその等価物を含み、以下同様である。特段の規定がなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する技術分野の業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載した方法および材料と同様または等価であるいずれの方法および材料も本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法、装置および材料をこれから述べる。本明細書で引用する全ての刊行物は、本発明との関係で用いられる当該刊行物で報告された細胞株、ベクターおよび方法論を説明および開示する目的のために参照により本明細書に含まれる。これらのいずれも、先行発明を理由として本発明がそのような開示に先行する資格がないことを容認したものと解されるべきではない。
【0012】
本明細書で用いられる“ペスチウイルス”という用語は、フラビウイルス科のペスチウイルス属の全てのメンバー(BVDV、CSFVおよびBDVを含む)を指す。
本明細書で用いられる“CSFV”という用語は、フラビウイルス科のペスチウイルス属の古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)の種に属する全てのウイルスを指す。
本明細書で用いられる“BVDV”という用語は、フラビウイルス科ペスチウイルス属の種、1型ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)(BVDV-1)および2型BVDV (BVDV-2)(Heinz et al., 2000)に属する全てのウイルスを指す。より古典的な1型BVDV株およびより最近になって認識された2型BVDV株は、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列である程度限定的であるが明確な相違を示す。
本明細書で用いられる“Npro”という用語は、ウイルスのオープンリーディングフレームによってコードされる最初のタンパク質に関係し、合成されたポリプロテインからそれ自身を切り出す(Stark et al., J. Virol. 67:7088-7093, 1993;Wiskerchen et al., Virol. 65:4508-4514, 1991)。文脈に応じて、前記用語はまたヌクレオチドコード配列の変異後の残存“Npro”アミノ酸または前記タンパク質それ自身のヌクレオチドコード配列にも関係し得る。“Nproに存在するプロテアーゼ活性”は前記“Npro”のポリペプチド切断活性に関係する。
【0013】
本明細書で用いられる“Erns”は、ペスチウイルス粒子の構造成分である糖タンパク質Ernsに関係する(Thiel et al., 1991)。Ernsは典型的な膜固着装置を欠き、相当な量で感染細胞から分泌される。このタンパク質はRNase活性を示すことが報告されている(Hulst et al., 1994;Schneider et al., 1993;Windsch et al., 1996)。糖タンパク質E0は刊行物でしばしば糖タンパク質Ernsと同義語として用いられることは特記されるべきであろう。文脈に応じて、前記用語はまたヌクレオチドコード配列の変異後の変異“Erns”タンパク質または前記タンパク質それ自身のヌクレオチドコード配列にも関係し得る。“糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性”は、前記糖タンパク質のRNA切断活性(すなわち糖タンパク質ErnsのRNAを加水分解する能力)に関係する。“前記糖タンパク質に存在するRNase活性の不活化”という用語は、前記糖タンパク質Ernsの未改変野生型と比較して改変糖タンパク質ErnsのRNA加水分解の不能性または能力低下を指す。
【0014】
弱毒化:本明細書で用いられる“弱毒化ペスチウイルスまたはBVDV粒子”とは、本発明の弱毒化ペスチウイルスまたはBVDV粒子(前記弱毒化ウイルス粒子は本明細書に記載の方法によって弱毒化される)と野生型ペスチウイルスまたはBVDV単離株(これらから前記弱毒化ペスチウイルスまたはBVDV粒子が誘導された)との間で、主要な臨床パラメータについて(BVDVの症例では同じ用量(好ましくは6x106TCID50)で感染させた動物の下痢、発熱および致死性について)統計的に有意な相違があることを意味する。したがって、前記弱毒化BVDV粒子は下痢、発熱、致死性をもたらさず、したがってワクチンとして使用できる。
本明細書で用いられるErnsの不活化は、Meyersら(1999)が記載したRNaseアッセイで非感染コントロールについて測定されるレベルを有意には超えないRNase活性を意味する。“Meyersら(1999)が記載したRNaseアッセイで非感染コントロールについて測定されるレベルを有意には超えない”とは、例えばRNase活性が非感染コントロール細胞と比較して150%未満であることを意味する。
本明細書で用いられるNproの不活化とは、変異によるNproの期待される免疫調節活性の阻害または顕著な低下を意味する。好ましい実施態様では、この変異は、Ruggliら(2003)が記載したように、感染細胞によるインターフェロン応答の誘発のNproによるの妨害を妨げるかまたは顕著に低下させる。この事例では、Nproの不活化は細胞の正常なインターフェロン応答の立ち上げを可能にするであろう。
【0015】
“ダイマーのErns糖タンパク質”は、2つのErns糖タンパク質モノマーのホモダイマーを意味する。ホモダイマーを構築する2つのErns糖タンパク質モノマーは、それらのアミノ酸配列に一定レベルの配列多様性を含むことができることは特記されるべきである。この文脈では、“一定レベルの配列多様性”とは、ホモダイマーを形成するモノマーがErns遺伝子領域のアミノ酸配列に関して少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%、さらに好ましくは98%の配列相同性を示すことを意味する。
“非ダイマー性Erns糖タンパク質”という用語は、第二のErns糖タンパク質と検出可能な量のホモダイマーを形成することができないErns糖タンパク質(ただし前記に限定されない)を意味する。好ましくは“非ダイマー性Erns糖タンパク質”という用語は、第二のErns糖タンパク質といかなるホモダイマーも形成することができないErns糖タンパク質を意味する(ただしこれに限定されない)。
本明細書で用いられる“プロセッシングシグナル”は、ペスチウイルス、好ましくはBVDVのCタンパク質の機能的N-末端の生成を担保する物質、特にユビキチン、LC3、SUMO-1、NEDD8、GATE-16およびGABA(A)RAPの群から選択される物質に関係する。インテイン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2Aおよびウサギ出血病ウイルスのp15の群から選択されるプロテアーゼもまた、本明細書で用いられる“プロセッシングシグナル”と理解される。同様に、翻訳の不連続によって2つの分離したタンパク質の発現を促進するアフトウイルスの2Aタンパク質または関連配列も“プロセッシングシグナル”という用語に含まれる。Cタンパク質の機能的N-末端の生成を担保する、当業者に公知の他の同様ないずれのプロセッシングシグナルもまた“プロセッシングシグナル”という用語に含まれる。
【0016】
本明細書で用いられる“タンパク質C”または“Cタンパク質”または“C-タンパク質”はペスチウイルス粒子の構造成分に関係する(Thiel et al., 1991)。“タンパク質C”はペスチウイルスのキャプシドまたはコアタンパク質である。文脈に応じて、前記用語はまた、ヌクレオチドコード配列の変異を生じる1つまたはいくつかのアミノ酸交換を有する“タンパク質C”に関係し得る。
本発明の“フラグメント”は本発明のポリヌクレオチド分子の任意のサブユニット、すなわちサブセットである。DNAについては、前記フラグメントは完全長のウイルスゲノムを包含するDNAよりも短いという特徴を有する。
本発明のヌクレオチド分子の“機能的変種”は、本発明のヌクレオチド分子と実質的に類似する生物学的活性(機能的または構造的)を保有するヌクレオチド分子である。“機能的変種”という用語はまた、“フラグメント”、“機能的変種”、“縮退核酸コードに基づく変種”または“化学的変種”を含む。そのような“機能的変種”は例えば1つまたはいくつかのヌクレオチド交換、欠失または挿入を保有することができる。前記機能的変種は、少なくとも部分的にその生物学的活性、例えば感染性クローンまたはワクチンとしての機能を維持するか、または改善された生物学的活性すら示す。“実質的に類似する生物学的活性を保有する”とは、本明細書で提供されるペスチウイルスに関しては、例えば前記ペスチウイルスが本明細書に記載の態様で弱毒化され、弱毒生ウイルスの製造に適した非病原性ウイルス(胎盤を通過する能力は喪失するがワクチン接種後の免疫応答は仲介する)を生じることを意味する。
【0017】
“遺伝コードの縮退的性質に基づく変種”は、ある種のアミノ酸はいくつかの別個のヌクレオチドトリプレットによってコードされ得るという事実から生じる。前記変種は少なくとも部分的にその生物学的活性を保持するか、または改善された生物学的活性すら示す。
ある分子は別の分子と、もし両分子が実質的に類似のヌクレオチド配列または生物活性を有するならば、“実質的に類似”する。したがって、2つの分子が類似の活性を保有するという前提条件で、ヌクレオチド配列が同一でない場合に当該用語が本明細書で用いられるときそれらは変種と考えられ、さらに類似のヌクレオチド配列を有する2つの分子は、たとえそれらの生物学的活性が同一でないとしても当該用語が本明細書で用いられるとき変種と考えられる。
本明細書で用いられる変異は、本発明のタンパク質/アミノ酸をコードする核酸分子の改変に関係する。前記変異は、置換(1つまたはいくつかのヌクレオチド/塩基対の置き換え)、欠失(1つまたはいくつかのヌクレオチド/塩基対の除去)、および/または挿入(1つまたはいくつかのヌクレオチド/塩基対の付加)(ただしこれらに限定されない)に関係する。本明細書で用いられるように、変異は単一変異でもまたは複数の変異でもよい。したがってしばしば“mutation(s)”なる用語が用いられ、単一変異および複数変異に関係する。前記変異には点変異(ただ1つのヌクレオチドの変異)またはより大きな変異(例えばコード核酸分子の部分が欠失、置換され、および/または付加コード核酸が挿入される)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記変異は、コード配列における変化のために改変されたポリペプチドの発現をもたらし得る。そのような改変ポリペプチドは、下記に示す本発明の開示で説明するとおり所望される。
【0018】
本明細書で用いられる“ワクチン”という用語は、動物で免疫応答を誘発する少なくとも1つの免疫学的に活性な成分、および前記活性成分の免疫学的活性を強化するおそらく(必ずと言うわけではないが)1つ以上の追加の成分を含む医薬組成物を指す。ワクチンは、医薬組成物にとって典型的なさらに別の成分を含むことができる。ワクチンの免疫学的に活性な成分は、完全なウイルス粒子をそれらの本来の形態で、またはいわゆる改変生ワクチン(MLV)の状態で弱毒化粒子として、または適切な方法で不活化されたいわゆる死菌ワクチン(KV)の状態の粒子として含むことができる。別の形態では、ワクチンの免疫学的に活性な成分は、前記生物の適切な成分を含むことができる(サブユニットワクチン)。これらの成分は、全粒子またはそのような粒子を含む増殖培養を破壊し、場合によってその後の所望の構造物を得る精製工程によって;または例えば細菌、昆虫、哺乳動物または他の種をベースとする適切な系を使用する適切な操作および場合によりその後の単離および精製手順を含む合成プロセスによって;または適切な医薬組成物(ポリヌクレオチドワクチン)を用いて遺伝子材料を直接取り込ませることにより、ワクチンを必要としている動物で前記合成プロセスを誘導することによって生成される。ワクチンは、上記に記載の成分の1つまたは2つ以上を同時に含むことができる。本明細書で理解されるように“ワクチン”という用語は、獣医が使用するための抗原性物質を含むワクチンであり、ペスチウイルス感染、好ましくはBVDV感染によって引き起こされる疾患に対して特異的で能動的な免疫を誘発する目的で投与される。弱毒化ペスチウイルス、特に本明細書に記載の弱毒化BVDVは能動免疫を付与し、前記能動免疫は、前記弱毒ウイルスが含む免疫原および時にはまた抗原的に関連する生物に対する移行抗体により受動的に伝達され得る免疫を付与する。本発明のワクチンは上記に規定したワクチンに該当し、この場合1つの免疫学的に活性な成分は、BVDVであるか、またはペスチウイルス起源であるか、またはいずれかの既知ペスチウイルスの配列(センスまたはアンチセンス)と70%を超える相同性を有するヌクレオチド配列から誘導される。
【0019】
“生ワクチン”という用語は、生の、特に生きたウイルスの活性成分を含むワクチンに該当する。
免疫応答を強化する追加の成分は、例えば水酸化アルミニウム、鉱物または他の油のような一般に“アジュバント”と称される成分、またはワクチンに添加されるか、もしくはそのような追加の成分によるそれぞれの誘発後に生成される補助分子(例えばインターフェロン、インターロイキンまたは増殖因子であるが、ただしこれらに限定されない)である。
“医薬組成物”は、本質的には、前記組成物が投与される生物、または前記生物内でもしくは前記生物上で生きている生物の生理学的(例えば免疫学的)機能を改変することができる1つ以上の成分から成る。前記用語には、抗生物質または抗寄生虫薬とともに他の一定の目的を達成するために一般的に用いられる他の成分が含まれる(ただしこれらに限定されない)。前記他の一定の目的とは、例えば加工性、殺菌性、安定性、組成物の経腸的または非経口的経路(例えば経口、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内または他の適切な経路)で投与する場合の成功性、投与後の耐性、制御放出性であるが、ただしこれらに限定されない。そのような医薬組成物の非限定的な一例は以下のように調製される(あくまで例示のために提供する):感染細胞培養の細胞培養上清を安定化剤(例えばスペルミジンおよび/またはBSA(ウシ血清アルブミン))と混合し、前記混合物を続いて凍結乾燥するか、または他の方法で脱水する。続いてワクチン接種前に前記混合物を水溶液(例えば食塩水、PBS(リン酸緩衝食塩水))または非水性溶液(例えばオイルエマルジョン、アルミニウム系アジュバント)で水和させる。
【0020】
発明の開示
上記の技術的問題の解決は、特許請求の範囲で特徴づけられる記述および実施態様によって達成される。
上記に記載したように、少なくともCSFVについては、Erns糖タンパク質の最後のC-末端システインが、2つのErns糖タンパク質モノマーのホモダイマー形成に関与する。この最後のC-末端システインのセリンによる置換(システイン/セリン置換)は、もはやErns糖タンパク質がホモダイマーを形成できないペスチウイルスを生じる(van Gennip et al. 2005)。驚くべきことに、Erns糖タンパク質のホモダイマー形成能力を欠くペスチウイルスはその宿主に対して非病原性であることも判明した。結果として、Erns糖タンパク質のホモダイマー形成能力を欠くペスチウイルスは良好に弱毒化され、ペスチウイルス感染に対して動物を予防および/または治療するための改変生ワクチンの適切な候補である(詳細については実施例を参照のこと)。したがって、本特許出願のある特徴は弱毒化ペスチウイルスに関し、前記弱毒ペスチウイルスはErns糖タンパク質ダイマーを生成しない。好ましくは、当該ペスチウイルスはCSFV、BVDVおよびBDVから成る群(これらペスチウイルスのいずれかの任意の亜型を含む)から選択される。
【0021】
さらに別の特徴にしたがえば、Erns糖タンパク質のホモダイマー形成能力を欠くペスチウイルスは、組換え体の生物工学的技術によって創出することができる。例えば、(例示的態様で示した配列番号:1によれば)CSFVペスチウイルスの少なくともアミノ酸438位のシステインの欠失または置換は、Ernsホモダイマー形成能力を欠くそのような組換え弱毒化CSFVペスチウイルスを生じる。なぜならば、そのようなErns糖タンパク質はもはやErnsモノマーとの間に分子間ジスルフィド結合を形成することができないからである。BVDVペスチウイルス(1型および/または2型)に関しては、(例示的態様で示した配列番号:4(BVDV-1)または配列番号:7(2型BVDV)によれば)、BVDVペスチウイルスの少なくともアミノ酸441位のシステインの欠失または置換は、Ernsホモダイマー形成能力を欠くそのような組換え弱毒化BVDVペスチウイルスを生じる。BDVに関しては、(例示的態様で示した配列番号:10によれば)、BDVペスチウイルスの少なくともアミノ酸439位のシステインの欠失または置換は、Ernsホモダイマー形成能力を欠くそのような組換え弱毒化BDVペスチウイルスを生じる。しかしながら、Erns糖タンパク質の最後のC-末端システイン(例えばCSFVのCys438、BVDV1型または2型のCys441、BDVのCys439)の他のいずれの置換も本発明に含まれる。
【0022】
本発明の最重要要素は、もはやErns糖タンパク質のホモダイマーを形成することができないペスチウイルスを提供することである。ホモダイマー形成は、上述のようにErns糖タンパク質の最後のC-末端システインの欠失または置換によって阻害することができる。なぜならば、そのようなペスチウイルスはいずれも、2つのErns糖タンパク質モノマー間の分子間ジスルフィド結合をもはや形成することができないからである。Erns糖タンパク質の最後のC-末端システインの欠失または置換の他に、Erns糖タンパク質の2つのモノマー間のホモダイマー形成はまた、Erns糖タンパク質の最後のC-末端システインのアミノ酸環境を改変することによって、例えば、この改変が、分子間ジスルフィド結合がもはや形成され得ない態様で、最後のC-末端システインの直接的環境の荷電および/または立体構造の変化をもたらすならば阻害することができる。例えば、当該最後のC-末端システインに近いプロリンの挿入、欠失または置換は、Erns糖タンパク質の立体構造を、Erns糖タンパク質の最後のC-末端システインが第二のErns糖タンパク質と分子間ジスルフィド結合を形成できるような態様ではもはや露出され得ない状態に変化させることができる。さらにまた、そのような環境の強力な正または負の極性をもたらすシステインの環境の改変(例えば陽性電荷のアミノ酸(例えばアルギニン、リジンおよび/またはヒスチジン)による挿入または置換によって;陰性電荷のアミノ酸(例えばアスパラギンまたはグルタミン)による挿入または置換によって)もまた、2つのErns糖タンパク質間の分子間ジスルフィド結合の形成を阻害しえよう。したがって、本発明は、組換え弱毒化ペスチウイルス(そのようなErns糖タンパク質の最後のC-末端システインは欠失するかまたは非システイン残基によって置換されている)に関するだけでなく、任意の改変弱毒化ペスチウイルス(前記ペスチウイルスのErns糖タンパク質のホモダイマー形成は欠失、挿入または改変によって(一般的に)阻害される)にも関する。好ましくは、そのような改変はErns糖タンパク質の最後のC-末端システイン近くに導入される。好ましくは、そのような改変は、アミノ酸410から470位、好ましくは420から460位の間のアミノ酸に影響を与える。当業者は、当該ペスチウイルスがもはやErns糖タンパク質ダイマーを全く形成することができないように、ペスチウイルスのコード配列を日常的作業によって改変することができる。van Gennipら(2005)の発表論文は、Erns糖タンパク質のダイマー形成をどのように概算できるかを当業者に開示している。
【0023】
したがって、本発明のある特徴は組換え弱毒化ウイルスに関し、前記弱毒化ペスチウイルスはダイマーのErns糖タンパク質を生成しない。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化ペスチウイルスのErns糖タンパク質のカルボキシ末端は欠失、挿入または置換によって改変される。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化ペスチウイルスのErns糖タンパク質の少なくとも最後のC-末端システイン残基は欠失するか、または非Cysアミノ酸残基によって置換される。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化ペスチウイルスのErns糖タンパク質の少なくとももっとも最後のシステイン残基は欠失している。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化ペスチウイルスは、CSFV、BVDV1型および/または2型、およびBDVから成る群から選択される。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化ペスチウイルスはCSFペスチウイルスである。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化CSFVのErns糖タンパク質の配列番号:1の少なくともアミノ酸438位のシステイン残基は欠失するか、または非システイン残基によって置換される。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化ペスチウイルスはBVD1型および/または2型ペスチウイルスである。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化BVDVのErns糖タンパク質の配列番号:4(BVDV 1型)または配列番号:7(BVDV 2型)の少なくともアミノ酸441位のシステイン残基は欠失するか、または非システイン残基によって置換される。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化ペスチウイルスはBDVペスチウイルスである。
さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化BDVのErns糖タンパク質の配列番号:10の少なくともアミノ酸439位のシステイン残基は欠失するか、または非システイン残基によって置換される。
【0024】
WO99/64604には、Ernsに存在するRNase活性の不活化はまた、改変生ワクチンとして用いることができる弱毒化された非病原性ペスチウイルスを生じさせることが記載されている。本発明のさらに別の特徴にしたがえば、弱毒化ペスチウイルスを生じる両改変(Ernsに存在するRNase活性が欠失、挿入または置換によって不活化される場合およびRNase活性がErnsダイマーを全く形成することができない場合)を組み合わせることができる。RNase陰性のErns糖タンパク質を生じる糖タンパク質Ernsの適切な改変は、例えば以下の単置換/欠失(S298G、H300K、H300L、H300R、H300del、W303G、P304del、E305A、C308G、R343G、E345del、W346G、K348A、H349K、H349L、H349del、H349Q、H349SV(変異H349SおよびVの挿入)、K348R、W351P、W351G、W351L、W351K、W351H);二重置換/欠失(H300L/H349L、K348del/H349del、H349del/G350del、E345del/H349del、W303G/E305A、H300K/H349K、H300K/H349L);および三重欠失(L299del/H300del/G300del、K348del/H349del/G350del)である。番号付与は、上記に挙げた全ての変異体について、BVDV CP7の公表アミノ酸配列にしたがう(与えられた番号から3を差し引いたものが、CSFV Alfort/Tubingenのアミノ酸配列の該当する残基に一致する)。上記に挙げた全ての変異体をそれぞれCSFVまたはBVDV変異体として試験した。ペスチウイルス糖タンパク質Ernsの適切な変異体は、例えばWO99/64604(前記文献はその全体が本明細書に含まれる)によって提供される。
【0025】
RNaseの推定活性部位は、保存されたErns配列SLHGIWPEKICTGおよび/またはLQRHEWNKHGWCNWFHIEPWによって表される(前記配列は、例示的態様で本明細書に提供されるBVDV-2 New York’93タンパク質の配列であり、小さな変化がおそらく他のペスチウイルス配列で見出され得るが、このモチーフの同一性は当業者には常に明白であろう。例として、BVDV-1 CP7の対応するアミノ酸配列はSLHGIWPEKICTGおよび/またはLQRHEWNKHGWCNWYNIEPWであり、CSFV Alfort/Tubingenの対応するアミノ酸配列はSLHGIWPEKICKGおよび/またはLQRHEWNKHGWCNWYNIDPWである)。したがって好ましくは、本発明はさらに本発明のBVDVに関し、前記糖タンパク質Ernsのコード配列のRNase陰性変異は、保存Erns配列SLHGIWPEKICTGおよび/またはLQRHEWNKHGWCNWFHIEPWをコードするヌクレオチド配列に存在する。これらの配列はRNaseの推定活性部位を表している。推定Erns活性部位の配列SLHGIWPEKICおよびRHEWNKHGWCNWはペスチウイルス全体を通してさらに強く保存されている。
Nproタンパク質の改変と同様にErns糖タンパク質の改変によって弱毒化されたペスチウイルスは、胎児感染の防止に関してより高い安全性レベルを示すことが国際特許出願WO2005/111201により判明した。したがって、さらに別の特徴によれば、本発明はまた弱毒化ペスチウイルスに関し、前記弱毒化ペスチウイルスはダイマーのERNS糖タンパク質を生成せず、さらにNproタンパク質に変異を有し、前記Nproタンパク質の変異は前記Nproタンパク質の不活化をもたらす。好ましくは、当該ペスチウイルスは、CSFV、BVDVおよびBDV(これらペスチウイルスのいずれかの任意の亜型を含む)から成る群から選択される。
【0026】
Nproの不活化は、ペスチウイルス(特に下記でより詳細に記述する特定の式を有するBVDV)で達成される。このようなペスチウイルスでは、Nproアミノ酸の0から全てが存在し、ユビキチンまたはLC3またはプロセッシングシグナルとして機能する別の配列(例えばSUNO-1、NEDD8、GATE-16、GABA(A)RAP、またはプロテアーゼ(例えばインテリン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2Aまたはウサギ出血病ウイルスのp15のようなもの)、または不連続翻訳をもたらすアフトウイルス2Aのような配列)が存在するかまたは欠落している。プロセッシングシグナルが存在する場合、前記プロセッシングシグナルのコード配列は、Nproタンパク質(の残りの部分)のC-末端に、またはC-末端近くに挿入される。プロセッシングシグナルが存在する場合のみ、任意の数のNproコードアミノ酸(Nproアミノ酸)が存在し得る。プロセッシングシグナル配列が挿入されない場合、Nproの最大12アミノ酸(好ましくはアミノ末端アミノ酸)が存在することができ、残りのアミノ酸は欠失しなければならない。さらにまた、上記に記載のErns変異(それらのうちの少なくとも1つはペスチウイルス、特に本発明のBVDVに存在しなければならない)以外(ペスチウイルス、とくにBVDVの残りの配列)は無変化のままであるか(すなわち変異していない)、またはC-タンパク質のN-末端側の末端近くにもまた変異を有することがある。下記に開示するように、より具体的な多数の実施態様によって前記を例証する。
【0027】
したがって、本発明はペスチウイルス(特に本発明のBVDV)に関し、ここで、前記Nproコード配列の変異は以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす:
[Npro]x-[PS]y-[C-term]
式中、
[Npro]は前記ポリプロテインのNpro部分に関し、“x”はポリプロテインに存在するNproのアミノ酸の数を表し;
[PS]はプロセッシングシグナルに関し、ユビキチン、LC3、SUMO-1、NEDD8、GATE-16もしくはGABA(A)RAP)、または例えばインテリン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2Aもしくはウサギ出血病ウイルスのp15のようなプロテアーゼ、またはC-タンパク質の機能的なN-末端の生成を担保する当業者にとって公知の任意のシグナルペプチドから選択される。
“Y”は0であってもよく、これはプロセッシングシグナルが存在しないことを意味し(=PSは存在しない)、または
“Y”は1であってもよく、これはプロセッシングシグナルが存在することを意味する(=PSは存在する)。
[C-term]は、Nproを除く、キャプシド(C)-タンパク質およびペスチウイルスポリプロテイン(特にBVDVポリプロテイン)に存在する任意の他のタンパク質(カルボキシ末端のNS5Bを含む)を含む完全なペスチウイルスポリプロテイン、特に完全なBVDVポリプロテイン、に関する。好ましくは、前記[C-term]中の糖タンパク質Ernsは、糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性が不活化されるように変異している。“ペスチウイルスポリプロテイン/BVDVポリプロテインに存在する任意の他のタンパク質”という用語は、Erns、E1、E2、p7、NS2、NS3、NS4A、NS4BおよびNS5Aに関し、この場合、糖タンパク質Ernsは、糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性が不活化されるように変異、好ましくは本明細書に開示したように(上記参照)変異している。好ましくは、本ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)は、アミノ酸2位(DからNに変化)を除いて変異していないC-タンパク質を有する。したがって、[C-term*]は[C-term]と同じであるが、C-タンパク質の2位に変異(Dの代わりにN)を有し;
“y”が0ならば([PS]が存在しないことを意味する)、“x”は0から12であり(Npro特異的アミノ酸が0であるか、または(好ましくはNproのN-末端の)1から12のNproのアミノ酸が存在することを意味する);
“y”が1ならば([PS]が存在することを意味する)、“x”は0から168である(Npro特異的アミノ酸が0であるか、または(好ましくはNproのN-末端の)1から168全てのNproのアミノ酸が存在することを意味する)。
【0028】
より好ましくはまた、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)に関する:[Npro]1-[PS]0-[C-term](式中、その定義は上記に規定したとおりである)。
前記の具体例は下記に開示され、この場合、N-末端のメチオニンの後にC-タンパク質およびポリプロテインに存在する任意の他のタンパク質(カルボキシ末端のNS5Bを含む)が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)に関する:M[C-term](式中、その定義は上記に規定したとおりである)。
より好ましくはまた、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)に関する:[Npro]3-[PS]0-[C-term](式中、その定義は上記に規定したとおりである)。
BVDVの具体例は下記に開示され、この場合、N-末端のメチオニンの後にNpro配列EL並びにC-タンパク質およびポリプロテインに存在する任意の他のタンパク質(カルボキシ末端のNS5Bを含む)が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、本発明のBVDVに関する:MEL-[C-term](式中、その定義は上記に規定したとおりである)。
【0029】
より好ましくはまた、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)に関する:[Npro]4-[PS]0-[C-term](式中、その定義は上記に規定したとおりである)。
BVDVの具体例は下記に開示され、この場合、N-末端のメチオニンの後にNpro配列ELF並びにC-タンパク質およびポリプロテインに存在する任意の他のタンパク質(カルボキシ末端のNS5Bを含む)が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、本発明のBVDVに関する:MELF-[C-term](式中、その定義は上記に規定したとおりである)。
より好ましくはまた、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)に関する:[Npro]6-[PS]0-[C-term](式中、その定義は上記に規定したとおりである)。
BVDVの具体例は下記に開示され、この場合、N-末端のメチオニンの後にNpro配列ELFSN並びにC-タンパク質およびポリプロテインに存在する任意の他のタンパク質(カルボキシ末端のNS5Bを含む)が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、本発明のBVDVに関する:MELFSN-[C-term](式中、その定義は上記に規定したとおりである)。
【0030】
より好ましくはまた、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)に関する:
[Npro]4-[PS]0-[C-term*]
式中、その定義は、C-タンパク質のアミノ末端部分が変化しているという事実を除き上記に規定したとおりである。
BVDVの具体例は下記に開示され、この場合、N-末端のメチオニンの後にNpro配列ELFが続き、C-タンパク質配列では2位のアミノ酸がDからNに変化している。したがって、アミノ末端のC-タンパク質はSDEGSKではなくSNEGSK…である。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、本発明のBVDVに関する:
MELF-[C-term*]
式中、C-タンパク質では2位のアミノ酸がDからNに変化し、さらに式中の定義は上記に規定したとおりである。
より好ましくはまた、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)に関する:
[Npro]x-[PS]1-[C-term]
式中、その定義は上記に規定したとおりであり、PSは上記に開示したPSのいずれか、好ましくはユビキチンまたはLC3の群から選択される。
BVDVの具体例は下記に開示され、この場合、N-末端のメチオニンの後に任意の21または28Nproアミノ酸、ユビキチンまたはLC3、およびC-タンパク質が続く。したがって、もっとも好ましくは、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、本発明のBVDVに関する:
[Npro]22-[PS]1-[C-term](式中、好ましくは、PSはユビキチンまたはLC3である)
または
[Npro]29-[PS]1-[C-term](式中、好ましくは、PSはユビキチンまたはLC3である)。
【0031】
ユビキチンは、高度に保存された76アミノ酸の周知の細胞タンパク質である。ユビキチンは、その機能のうちとりわけタンパク質の分解代謝の最重要物質である。なぜならば、ユビキチンとの結合によってプロテアソームを介する分解のための目印がタンパク質に付されるからである。カルボキシ末端のグリシンを介して他のタンパク質と結合または融合したユビキチンは、細胞のユビキチン特異的プロテアーゼによって切断され得る。したがって、ユビキチンのカルボキシ末端とタンパク質との融合は、細胞内で発現されたとき通常は融合タンパク質のその成分への所定のタンパク質分解切断をもたらすであろう。
LC3(微小管結合タンパク質の軽鎖3)は、多様な機能を有する125アミノ酸(ウシLC3の長さである)の細胞タンパク質を表す。最近、このタンパク質の自食作用における基本的役割が定義された。それによって、グリシンから成る新規なカルボキシ末端が生成される。続いてLC3は、自食小胞膜に存在するホスファチジルエタノールアミンとカルボキシ末端のグリシンを介して結合する。このプロセスのために、LC3のカルボキシ末端と融合したタンパク質は、細胞プロテアーゼによって所定の位置で切断されるであろう。
【0032】
より好ましくはまた、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が下記の群から選択される以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(好ましくは本発明のBVDV)に関する:
[Npro]2-[PS]y-[C-term]、好ましくはME-[PS]y-[C-trem];
[Npro]5-[PS]y-[C-term]、好ましくはMELFS-[PS]y-[C-trem];
[Npro]7-[PS]y-[C-term]、好ましくはMELFSNE-[PS]y-[C-trem];
[Npro]8-[PS]y-[C-term]、好ましくはMELFSNEL-[PS]y-[C-trem];
[Npro]9-[PS]y-[C-term]、好ましくはMELFSNELL-[PS]y-[C-trem];
[Npro]10-[PS]y-[C-term]、好ましくはMELFSNELLY-[PS]y-[C-trem];
[Npro]11-[PS]y-[C-term]、好ましくはMELFSNELLYK-[PS]y-[C-trem];
[Npro]12-[PS]y-[C-term]、好ましくはMELFSNELLYKT-[PS]y-[C-trem];
式中、その定義は上記に規定したとおりである。好ましいものとして開示した前記実施態様はBVDVに関する。
最も好ましくは、yは0である(PSが存在しない)。
【0033】
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が下記の群から選択される以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(好ましくは本発明のBVDV)に関する:
M-[PS]0-[C-term];
MEL-[PS]0-[C-term];
MELF-[PS]0-[C-term];
MELFS-[PS]0-[C-term];
MELFSN-[PS]0-[C-term];
MELFSNE-[PS]0-[C-term];
MELFSNEL-[PS]0-[C-term];
MELFSNELL-[PS]0-[C-term];
MELFSNELLY-[PS]0-[C-term];
MELFSNELLYK-[PS]0-[C-term];
MELFSNELLYKT-[PS]0-[C-term]。
【0034】
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が下記の群から選択される以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(好ましくは本発明のBVDV)に関する:
MELI-[PS]0-[C-term];
MELIS-[PS]0-[C-term];
MELISN-[PS]0-[C-term];
MELISNE-[PS]0-[C-term];
MELISNEL-[PS]0-[C-term];
MELISNELL-[PS]0-[C-term];
MELISNELLY-[PS]0-[C-term];
MELISNELLYK-[PS]0-[C-term];
MELISNELLYKT-[PS]0-[C-term]。
【0035】
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、前記Nproのコード配列の変異が下記の群から選択される以下の式によって特徴付けられるコードポリプロテインをもたらす、ペスチウイルス(好ましくは本発明のBVDV)に関する:
MELIT-[PS]0-[C-term];
MELITN-[PS]0-[C-term];
MELITNE-[PS]0-[C-term];
MELITNEL-[PS]0-[C-term];
MELITNELL-[PS]0-[C-term];
MELITNELLY-[PS]0-[C-term];
MELITNELLYK-[PS]0-[C-term];
MELITNELLYKT-[PS]0-[C-term]。
【0036】
本明細書で開示する別の重要な特徴は、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)および溶液を含む免疫原性組成物である。当業者は、前記組成物に含まれ得る追加の成分を理解している(以下の成書もまた参照されたい:Remington’s Pharmaceutical Sciences, 1990, 18th ed. Mack Publ., Easton)。前記業者は公知の注射可能な生理学的に許容できる無菌溶液を用いることができる。非経口注射または輸液用の即席溶液の調製のためには、等張水溶液(例えば食塩水)または対応する血漿タンパク質溶液を容易に用いることができる。医薬組成物は、凍結乾燥物または乾燥調製物として(例えばパーツで構成されたキットとして)存在することができ、それらは使用前に無菌的条件下で公知の注射可能溶液を用いて直接再構成することができる。
本発明の免疫原性組成物の最終調製物は、例えば注射用には前記ペスチウイルス(好ましくは本発明のBVDV)を無菌的な生理学的に許容できる溶液と混合することによって調製される。前記溶液には、公知の担体物質および/または添加物(例えば血清アルブミン、デキストロース、重亜硫酸ナトリウム、EDTA)を補充することができる。前記溶液は、生理学的に許容できる溶媒、例えばpH7から8の水溶液を基剤とすることができる。前記pHは医薬として許容できる緩衝液によって安定化させることができる。前記溶液はまた、洗剤(例えばTween 20)、血清アルブミン(例えばBSA(ウシ血清アルブミン))、アスコルビン酸および/またはスペルミジンのような安定化剤をさらに含むことができる。本組成物はまた、アジュバント(例えば水酸化アルミニウム、鉱物または他の油)、またはワクチンに添加されるか、もしくはそのような追加の成分によりそれぞれ誘発された後に生成される補助分子(例えばインターフェロン、インターロイキンまたは増殖因子であるが、ただしこれらに限定されない)を含むことができる。
【0037】
例えば、本発明の免疫原性組成物では、ペスチウイルス(特にBVDV)は以下に溶解することができる:
ペスチウイルス(好ましくはBVDV) 102−108 TCID50
SGS* 25%(v/v)
細胞培養液 1用量とするために適切な量

*SGS 2mL当りの組成
シュクロース 75mg
ゼラチン 20mg
水酸化カリウム 0.274mg
L-グルタミン酸 0.72mg
リン酸二水素カリウム 0.516mg
リン酸二カリウム 1.254mg
注射用の水 2mLとするために適切な量
【0038】
免疫原性組成物が最初に凍結乾燥または他の方法により脱水される場合、ワクチン接種前に、前記組成物は、水溶液(例えば食塩水、PBS(リン酸緩衝食塩水))または非水性溶液(例えばオイルエマルジョン(鉱物油または植物性/代謝性油系/単一もしくは二重エマルジョン系)、アルミニウム系、カルボマー系アジュバント)で再水和される。
本発明の免疫原性組成物は動物で免疫学的応答を誘発することができる。より好ましくは、本発明の免疫原性組成物はワクチンである。本明細書で理解されるワクチンは、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)を含み、上記に定義されている(“定義”の項を参照されたい)。
もっとも好ましくは、本発明の免疫原性組成物はさらに医薬として許容できる担体または賦形剤を含む。いくつかの担体または賦形剤が上記に開示されている。本組成物は、注射または輸液として意図される場合、等張溶液を調製するための物質、保存料(例えばp-ヒドロキシベンゾエート)、安定化剤(例えばエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩)を含むことができ、おそらくはまた乳化剤および/または分散剤を含む。
本発明の免疫原性組成物は皮内、気管内または膣内に適用できる。前記組成物は好ましくは筋肉内または鼻内に適用できる。動物体では、上記記載の免疫原性組成物を静脈内からまたは標的組織への直接注射によって適用することが有利であることを証明することができる。全身的適用のためには、静脈内、脈管内、筋肉内、鼻内、動脈内、腹腔内、経口または包膜内ルートが好ましい。より局所的な適用は、皮下、皮内、真皮内、心臓内、肺葉内、骨髄内、肺臓内に、または処置されるべき組織(結合組織、骨組織、筋肉組織、神経組織、上皮組織)にもしくは前記組織近くに直接実施することができる。所望される治療期間および効果に応じて、本発明の免疫原性組成物を1回もしくは数回または間欠的に(例えば日にち基準で数日、数週または数カ月)種々の用量で投与できる。
【0039】
本発明はまた、ペスチウイルス感染(特に本発明のBVDVの感染)の予防および治療用ワクチンの製造における、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)の使用に関する。
本発明の別の重要な部分は、ペスチウイルス(特に本発明のBVDV)、またはそのフラグメント、機能的変種、縮退核酸コードによる変種、融合分子もしくは化学的誘導体をコードする核酸を含むポリヌクレオチド分子である。好ましくは、前記ポリヌクレオチド分子はDNAである。好ましくはまた、前記ポリヌクレオチド分子はRNAである。より好ましい実施態様では、前記ポリヌクレオチド分子はまた、ペスチウイルス(特にBVDV)の機能的5’-および/または3’-非翻訳領域のヌクレオチド配列を含む。
本発明にしたがって弱毒化されるペスチウイルスをコードするポリヌクレオチド分子の製造用土台となる、当分野で公知のヌクレオチド配列がいくつか存在する。いくつかのペスチウイルスメンバーの野生型配列の核酸配列の例を下記に列挙する:
ボーダー病ウイルス
BD31株 NCBI GenBankアクセッション番号[U70263]
X818株 NCBI GenBankアクセッション番号[AF037405]
ウシウイルス性下痢ウイルス1
NADL株 NCBI GenBankアクセッション番号[M31182]
Osloss株 NCBI GenBankアクセッション番号[M96687]
SD-1株 NCBI GenBankアクセッション番号[M96751]
CP7株 NCBI GenBankアクセッション番号[U63479]
ウシウイルス性下痢ウイルス2
890株 NCBI GenBankアクセッション番号[U18059]
C413株 NCBI GenBankアクセッション番号[AF002227]
New York’93株 NCBI GenBankアクセッション番号[AF502399]
古典的ブタ熱ウイルス
Alfort/187株 NCBI GenBankアクセッション番号[X87939]
Alfort-Tubingen株 NCBI GenBankアクセッション番号[J04358]
Brescia株 NCBI GenBankアクセッション番号[M31768]
C strain株 NCBI GenBankアクセッション番号[Z46258]
【0040】
NproおよびErnsのコード配列に関する本発明の変異/改変は上記により詳細に記載されている。この情報を得ることにより、当業者は本発明のペスチウイルスをコードする任意のポリヌクレオチド/核酸の製造を理解することができる。さらにまた、当業者は本発明の弱毒化ペスチウイルスを製造することができる。ポリヌクレオチド配列への変異の導入、前記変異導入ポリヌクレオチドのクローニングおよび増幅のための分子的方法は、例えば成書(Sambrook et al., 1989;またはAusubel et al., 1994)によって提供される。
本発明の別の重要な特徴は、本発明のペスチウイルスを生じる、ペスチウイルスの弱毒化方法である。前記方法は、弱毒化ペスチウイルスがダイマーのErns糖タンパク質を生成しないように前記ペスチウイルスのErns糖タンパク質を改変する工程を含む。さらに別の特徴にしたがえば、前記ペスチウイルスのErns糖タンパク質のカルボキシ末端が欠失、挿入または置換によって改変される。さらに別の特徴にしたがえば、前記ペスチウイルスのErns糖タンパク質の少なくとも最後のC-末端システイン残基が欠失するか、または非Cysアミノ酸残基によって置換される。さらに別の特徴にしたがえば、前記ペスチウイルスのErns糖タンパク質の少なくとも最後のC-末端システイン残基が欠失する。さらに別の特徴にしたがえば、前記ペスチウイルスは、CSFV、BVDV1型および/または2型、およびBDVから成る群から選択される。さらに別の特徴にしたがえば、前記弱毒化ペスチウイルスはCSFペスチウイルスである。さらに別の特徴にしたがえば、前記CSFVペスチウイルスのErns糖タンパク質の配列番号:1の少なくともアミノ酸438位のシステイン残基は欠失するか、または非システイン残基によって置換される。さらに別の特徴にしたがえば、前記ペスチウイルスはBVD 1型および/または2型ペスチウイルスである。さらに別の特徴にしたがえば、前記BVDVのErns糖タンパク質の配列番号:4(BVDV 1型)または配列番号:7(BVDV 2型)の少なくともアミノ酸441位のシステイン残基が欠失しているか、または非システイン残基によって置換されている。さらに別の特徴にしたがえば、前記ペスチウイルスはBDペスチウイルスである。さらに別の特徴にしたがえば、前記BDVのErns糖タンパク質の配列番号:10の少なくともアミノ酸439位のシステイン残基が欠失しているか、または非システイン残基によって置換されている。
【0041】
さらに別の特徴にしたがえば、本発明はペスチウイルスを弱毒化する方法を提供し、前記方法は、糖タンパク質Ernsに存在するRNase活性が欠失、挿入または置換によって不活化され、さらに前記ペスチウイルスはErnsダイマーをまったく形成することができないように前記Ernsを改変することを特徴とする。好ましい実施態様にしたがえば、前記ペスチウイルスはCSFV、BVDVおよびBDV(前記の任意の亜型を含む)から成る群から選択される。
さらに別の特徴にしたがえば、本発明はペスチウイルスを弱毒化する方法を提供し、前記方法は、前記ペスチウイルスがErnsダイマーをまったく形成することができないように欠失、挿入または置換によって糖タンパク質Ernsを改変し、さらにNproタンパク質が不活化されるようにNproタンパク質を欠失、挿入または置換によって改変することを特徴とする。
さらに別の特徴にしたがえば、前記方法は以下の工程を含む:
a)野生型ペスチウイルスヌクレオチド配列をcDNAに逆転写する工程;
b)前記cDNAをクローニングする工程;
c)欠失、挿入変異および/または置換変異の群から選択される変異を前記cDNAに導入する工程(前記変異は糖タンパク質Ernsをコードするコード配列、または糖タンパク質ErnsおよびプロテアーゼNproをコードするコード配列に存在する);
d)in vitroでまたは適切な細胞の感染に際して、ペスチウイルスcDNAのRNAへの転写を指令することができるプラスミドまたはDNAウイルスにcDNAを取り込ませる工程。
本発明のさらに別の重要な実施態様は、ペスチウイルスによって引き起こされる疾患を治療する方法であり、前記方法では、本発明のペスチウイルスまたは本発明の組成物が、その必要がある動物に当業者に公知の適切な用量で投与され、さらに前記ペスチウイルス感染の症状の緩和がモニターされる。
本発明のさらに別の重要な実施態様は、BVDVによって引き起こされる疾患を治療する方法であり、前記方法では、本発明のBVDVまたは本発明の組成物が、その必要がある動物に当業者に公知の適切な用量で投与され、さらにBVDV感染の症状(例えばウイルス血症および白血球減少症および/または発熱および/または下痢)がモニターされる。
【0042】
以下の実施例は本発明を更に例示するが、これらの実施例は本願に開示された本発明の範囲を限定するものと解してはならない。
【実施例1】
【0043】
実験TV#26の目的は、CSFV Alfort/Tubingen変異体(ポリペプチドの438(Erns配列では171)位でシステインコドンの欠失を示す)によるブタの感染後の臨床徴候の出現を規定することであった。この変異はErnsのダイマー形成を妨げる(EP #82(4))。コントロールとして、変異H297Kを有するCSFV Alfort/TubingenのRNase陰性変種および野生型ウイルスを用いた。
この実験では、体重が約20kgの12匹の動物を4匹ずつ3つの群に分けた。CSFV変異体(第一の群:TF #283(1)/第二の群:EP #82(4))およびCSFV野生型ウイルス(第三の群:EP #98(1))を0日目(0 dpi)に筋肉内および鼻内ルートにより適用した。各動物に1.5mLのDMEMで106KID50のウイルスを接種した。感染後、動物を22日間モニターし、直腸温度を毎日または1日おきに記録した。臨床スコアを改変Mittelholzerにしたがって決定した。
【0044】
a)動物実験のためのウイルス
1.TF #283(1):CSFV Alfort/Tubingen、RNase陰性
2.EP #82(4):CSFV Alfort/Tubingen、Ernsダイマー形成不能
3.EP #98(1):CSFV Alfort/Tubingen、野生型
変異体は、親株と比較して細胞培養でわずかに増殖速度が遅い(感染後24から70時間.)。この相違が重要であるか否かはさらに別の実験で試験する必要があろう(図1)。
CSFV変異体(第一の群:TF #283(1)/第二の群:EP #82(4))およびCSFV野生型ウイルス(第三の群:EP #98(1))を0日目(0 dpi)に筋肉内および鼻内ルートにより適用した。各動物に1.5mLのDMEMにて106KID50のウイルスを接種した。懸濁物の2/3を鼻内に適用した(1外鼻孔当たり0.5mL)。より良好な筋肉内適用のために、ウイルスの最後の0.5mLをDMEMで2mLにし腕頭筋に注射した。
チャレンジウイルスの力価の確認のために、以下のように別個の希釈工程および輸送工程後に1mLのウイルス懸濁物を収集した:
a)原液ウイルス(ストックウイルス)
b)105,824KID50/mL(106KID50/1.5mL)のウイルス濃度を得るために希釈液としてDMEMを用いた最初の希釈工程、直ちに-70℃へ。
c)このサンプルを接種物と一緒に“氷上”で保持し、同じように取り扱った。牛舎から戻った後、このサンプルを直ちに-70℃で凍結した。
d)筋肉内適用のための二回目の希釈(上記参照)。牛舎から戻った後、このサンプルを直ちに-70℃で凍結した。
力価の確認はまだ完了していない。
表1:チャレンジウイルス調製物の力価
【表1】

b=最初の希釈工程(鼻内適用用)の後-70℃に直行
c=氷上に戻す
d=二回目の希釈工程(筋肉内適用用)
【0045】
b)実施スケジュール
BC単離、白血球計測、血漿単離、FACS分析および表3の血清調製のために頸静脈から血液を採取した。感染後、動物を22日間モニターし、直腸温度を毎日または実験後期には1日おきに記録した。
表2:血液採取のための実施スケジュール
【表2】

【0046】
c)実験時の動物および観察
平均体重が20kgの動物が2008年3月28日に本研究所に到着した。これらのブタを4匹ずつ3つの別個の群に分けた。6日間の新環境順化の後で、前記動物を変異体および野生型ウイルスに感染させた。
表3.3つの群に対する動物とチャレンジウイルスの割当
【表3】

一般的な健康状態についてブタを毎日観察した。野生型でチャレンジした群#3の動物は、CSFの顕著な徴候のために成熟前に感染後9日目で屠殺しなければならなかった。RNase陰性変異体およびダイマー形成不能変異体を感染させた群では、全ての動物がCSFに典型的な症状を示した。野生型感染動物(群3)と比較して、群1および2の症状の重症度は有意に低かった。
Mittelholzerの臨床スコア(以下のように改変:排便:軟らかい便、通常量=0;便量減少、乾燥/空疎便=1;ほんの少量の乾燥フィブリン被覆便または下痢=2;糞便なし、直腸に粘液または水性もしくは血液含有下痢=3)を記録して病理学的徴候を評価した。
【0047】
表4.Mittelholzerによる群1/2/3についての臨床スコア(動物は安楽死させた)
【表4】

【0048】
直腸温度は、-3および-2 dpiに、さらに0 dpiから20 dpiまで毎日または1日おきに記録した。群1および2では、各動物は感染後4/5日または6日で発症体温の40℃に達した。これらの群の動物では、前記体温は10 dpiまたは11dpiまでに通常値に回復した。野生型ウイルスでは、感染群の体温は感染後4日目から上昇し、安楽死まで解熱は検出できなかった。
d)バッフィーコート調製物の分析
バッフィーコートのウイルス単離によるウイルス血症の検出はまだ終了していない。
【0049】
表5:バッフィーコートの調製(動物は安楽死させた)
【表5】

【0050】
e)白血球数
標準的な検査室手順によりWBC数を血球計算盤“ノイバウアーチャンバー”で決定した。全ての動物について、WBCの減少が実験中に検出できた。生存動物は、実験終了時までにほぼ正常値への増加を示した。
【0051】
表6,WBC計測。n.d.=測定せず。動物は安楽死させた。
【表6】

【0052】
f)血清中和アッセイ
抗体力価の決定はまだ終了していない。
血清中和アッセイは、試験ウイルスとしてSP50を用い、感染前-1日目、群3については感染後9日、さらに群1および2については22 dpiに実施されるであろう。
【0053】
表7:SNTで測定したSP50に対する抗体力価、n.d.=測定せず。SP50の約100 TCID50を中和する血清希釈値の逆数。
【表7】

n.d.=測定せず
およそ100 TCID50のSP50を中和する血清希釈の逆数値が提示される。
【0054】
g)結論
システイン#438の欠失およびそれによるErnsダイマー形成の阻害(生化学データは利用可能である)はCSFVの弱毒化をもたらすことは明白である。この弱毒化が前記ウイルス変異体の一般的な増殖遅延による可能性はほとんどない。なぜならば、変異体と野生型ウイルス間の増殖速度の相違は極めてわずかしか認められなかったからである。WBC数の減少の程度と同様に臨床スコアおよび発熱の進行並びに激しさは、Erns RNase活性を欠くウイルス変異体とErnsダイマー形成を妨げる欠失を有する変種で非常に類似している。ダイマー形成は、生物学的機能には決定的に重要であるが、他のRNaseの酵素活性にはそうでないことが見出されたので、Ernsダイマー形成の阻害およびRNase活性の停止の結果としてのCSFVの弱毒化は、ウイルス宿主相互作用の同じ原理、すなわちErns RNase作用の阻止に依存していると仮説を立てることができる。したがって、ダイマー形成を阻害することは、たとえウイルスが活性なRNaseを発現することができるとしてもRNase活性を阻止することとほとんど同じことである。
【0055】
参考文献








【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱毒化ペスチウイルスを含む免疫原性組成物であって、前記弱毒化ペスチウイルスがダイマーのErns糖タンパク質を生成しない、前記免疫原性組成物。
【請求項2】
弱毒化ペスチウイルスのErns糖タンパク質のカルボキシ末端が欠失、挿入または置換によって改変されている、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
弱毒化ペスチウイルスのErns糖タンパク質の少なくとも最後のシステイン残基が欠失しているか、または非Cysアミノ酸残基によって置換されている、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
弱毒化ペスチウイルスのErns糖タンパク質の最後のシステイン残基が欠失している、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
弱毒化ペスチウイルスがウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)またはボーダー病ウイルス(BDV)である、請求項1から4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
(a)配列番号:4または7に対応するアミノ酸441位において前記弱毒化BVDVのErns糖タンパク質の少なくともシステイン残基が欠失しているか、または非システイン残基によって置換されている;
(b)配列番号:1に対応するアミノ酸438位において前記弱毒化CSFVのErns糖タンパク質のシステイン残基が欠失しているか、または非システイン残基によって置換されている;または、
(c)配列番号:10に対応するアミノ酸439位において前記弱毒化BDVのErns糖タンパク質のシステイン残基が欠失しているか、または非システイン残基によって置換されている、
請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
弱毒化ペスチウイルスがさらに少なくとも1つの変異をNproタンパク質に有し、前記Nproタンパク質の変異が前記Nproタンパク質の不活化をもたらす、請求項1から6のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
Nproの変異が、下記式:[Npro]x-[PS]y-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインをもたらす、請求項7に記載の免疫原性組成物:
式中、
[Npro]は前記ポリプロテインのNpro部分を指し、“x”はポリプロテインに存在するNproのアミノ酸の数を表し;
[PS]は、ユビキチン、LC3、SUMO-1、NEDD8、GATE-16もしくはGABA(A)RAP)、インテイン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2A、またはウサギ出血病ウイルスのp15から成る群から選択されるプロセッシングシグナルを指し;
“Y”は0でも(プロセッシングシグナルは存在しないことを意味する)、または1でも(プロセッシングシグナルが存在することを意味する)よく;
[C-term]は、Nproを除く、キャプシド(C)-タンパク質、改変ERNSタンパク質およびカルボキシ末端NS5Bを含むウイルスポリプロテインに存在する任意の他のタンパク質を含む完全なウイルスポリプロテインを指し;
“y”が0ならば、“x”は0から12であり(Npro特異的アミノ酸が0であるか、または1から12のNproのアミノ酸が存在することを意味する);
“y”が1ならば、“x”は0から168である(Npro特異的アミノ酸が0であるか、または1から168全てのNproのアミノ酸が存在することを意味する)。
【請求項9】
Nproの変異が、下記式:[Npro]4-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインをもたらす、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
Nproの変異が、下記式:[Npro]4-[PS]0-[C-term*]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインをもたらす、請求項8に記載の免疫原性組成物:
式中、
[C-term*]は、C-タンパク質において2位のアミノ酸がDからNに変更された[C-term]である。
【請求項11】
弱毒化ウイルスがBVDVであり、Nproの変異が、 [Npro]x-[PS]0-MELF-[PS]0-[C-term*]から成る群から選択される式によって特徴付けられるコードされたポリプロテインをもたらす、請求項8に記載の免疫原性組成物:
式中、
[C-term*]は、C-タンパク質において2位のアミノ酸がDからNに変更された[C-term]である。
【請求項12】
Nproの変異が[Npro]22-[PS]1-[C-term]から選択される式によって特徴付けられるコードされたポリプロテインをもたらす、請求項8に記載の免疫原性組成物:
式中、
PSはユビキチンまたはLC3である。
【請求項13】
[PS]0が[PS]1で置き換えられ、前記PSが、ユビキチン、LC3、SUMO-1、NEDD8、GATE-16、GABA(A)RAP、インテイン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2A、アフトウイルス2Aおよびウサギ出血病ウイルスのp15から成る群から選択される、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
医薬的に許容できる担体または賦形剤を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
同じ属の少なくとも2つの弱毒化ペスチウイルスを含む、請求項1または14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
弱毒化ペスチウイルスが同じ属の別個の単離株または亜型である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
弱毒化ペスチウイルスが、弱毒化ウイルスのいずれもが組換えにより病原性ペスチウイルスに復帰し得ないように同じコード領域で改変される、請求項15または16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
免疫原性組成物がペスチウイルス感染の予防用ワクチンである、請求項1から17のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
ダイマーのErns糖タンパク質を生成せず、さらに少なくとも1つの変異をNproタンパク質に有し、前記Nproタンパク質の変異が前記Nproタンパク質の不活化をもたらす、前記弱毒化ペスチウイルス。
【請求項20】
Erns糖タンパク質のカルボキシ末端が欠失、挿入または置換によって改変され、さらに前記Nproの変異が欠失、挿入変異および/または置換変異の群から選択される、請求項19に記載の弱毒化ペスチウイルス。
【請求項21】
Erns糖タンパク質の少なくとも最後のシステイン残基が欠失しているか、または非Cysアミノ酸残基によって置換されている、請求項19または20に記載の弱毒化ペスチウイルス。
【請求項22】
弱毒化ペスチウイルスがウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)またはボーダー病ウイルス(BDV)である、請求項19から21のいずれか1項に記載の弱毒化ペスチウイルス。
【請求項23】
(a)配列番号:4または7に対応するアミノ酸441位において前記弱毒化BVDVのErns糖タンパク質の少なくともシステイン残基が欠失しているか、または非システイン残基によって置換されている;
(b)配列番号:1に対応するアミノ酸438位において前記弱毒化CSFVのErns糖タンパク質のシステイン残基が欠失しているか、または非システイン残基によって置換されている;または、
(c)配列番号:10に対応するアミノ酸439位において前記弱毒化BDVのErns糖タンパク質のシステイン残基が欠失しているか、または非システイン残基によって置換されている、請求項22に記載の弱毒化ペスチウイルス。
【請求項24】
Nproの変異が、下記式:[Npro]x-[PS]y-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインをもたらす、請求項30から38のいずれか1項に記載の弱毒化ウイルス:
式中、
[Npro]は前記ポリプロテインのNpro部分を指し、“x”はポリプロテインに存在するNproのアミノ酸の数を表し;
[PS]は、ユビキチン、LC3、SUMO-1、NEDD8、GATE-16もしくはGABA(A)RAP)、インテイン、ピコルナウイルス3C、カリドウイルス2A、アフトウイルス2A、またはウサギ出血病ウイルスのp15から成る群から選択されるプロセッシングシグナルを指し;
“Y”は0でも(プロセッシングシグナルは存在しないことを意味する)、または1でも(プロセッシングシグナルが存在することを意味する)よく;
[C-term]は、Nproを除くが、キャプシド(C)-タンパク質、改変ERNSタンパク質およびカルボキシ末端NS5Bを含むウイルスポリプロテインに存在する任意の他のタンパク質を含む完全なウイルスポリプロテインを指し;
“y”が0ならば、“x”は0から12であり(Npro特異的アミノ酸が0であるか、または1から12のNproのアミノ酸が存在することを意味する);
“y”が1ならば、“x”は0から168である(Npro特異的アミノ酸が0であるか、または1から168全てのNproのアミノ酸が存在することを意味する)。
【請求項25】
Nproの変異が、下記式:[Npro]4-[PS]0-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインをもたらす、請求項24に記載の弱毒化ウイルス。
【請求項26】
Nproの変異が、下記式:[Npro]4-[PS]0-[C-term*]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインをもたらす、請求項24に記載の弱毒化ウイルス:
式中、
[C-term] *は、C-タンパク質において2位のアミノ酸がDからNに変更された[C-term]である。
【請求項27】
Nproの変異が、下記式:[Npro]x-[PS]1-[C-term]によって特徴付けられるコードされたポリプロテインをもたらす、請求項24に記載の弱毒化ウイルス:
式中、
PSはユビキチンまたはLC3の群から選択される。
【請求項28】
ダイマーのErns糖タンパク質を生成しない、組換え弱毒化BVDV。
【請求項29】
弱毒化BVDVのErns糖タンパク質のカルボキシ末端が欠失、挿入または置換によって改変されている、請求項28に記載の組換え弱毒化BVDV。
【請求項30】
弱毒化BVDVのErns糖タンパク質の少なくとも最後のシステイン残基が欠失している、または非Cysアミノ酸残基によって置換されている、請求項27または28に記載の組み換え弱毒化BVDV。
【請求項31】
配列番号:4または7に対応するアミノ酸441位において少なくともシステイン残基が欠失しえいるか、または非システイン残基によって置換されている、請求項28から30のいずれか1項に記載の組換え弱毒化BVDV。
【請求項32】
ペスチウイルスを弱毒化する方法であって、前記弱毒化ペスチウイルスがダイマーのErns糖タンパク質を生成しないように前記ペスチウイルスのErns糖タンパク質を改変する工程を含む、前記弱毒化方法。
【請求項33】
弱毒化ペスチウイルスのErns糖タンパク質のカルボキシ末端が欠失、挿入または置換によって改変されている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
弱毒化ペスチウイルスのErns糖タンパク質の少なくとも最後のシステイン残基が欠失しているか、または非Cysアミノ酸残基によって置換されている、請求項32または33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−530681(P2012−530681A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515376(P2011−515376)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057911
【国際公開番号】WO2009/156448
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(504225895)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (34)
【Fターム(参考)】