説明

弱毒生ワクチン

本発明は、少なくとも1つのABCトランスポーター遺伝子の変異によって弱毒化された細菌であって、この変異は対応するABCトランスポータータンパク質を非機能的にし、この弱毒細菌は対象の中で生き残る、細菌に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2009年2月20日出願のオーストラリア仮特許出願第2009900736号の利益を主張する。この仮特許出願は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本発明は、ワクチン組成物における使用のための、対象の中で生き残る生きた弱毒細菌の生産に関する。特に本発明は、対象の中で生き残りかつワクチン組成物の中で使用されうる弱毒細菌を生産するために、細菌の少なくとも1つのABCトランスポータータンパク質の機能を取り除くことに関する。
【背景技術】
【0003】
細菌感染は、罹患率および死亡率に起因して動物産業において重大な経済的損失を引き起こし、しかもヒトの健康に対して重大な影響を及ぼす。特に、呼吸器感染症および敗血症は、動物またはヒト(対象)の群全体に広まって、それらの対象の健康に悪影響を及ぼしうる一般的な感染症である。これは、著しい生産性の低下、そして最終的にはその対象の死を生じる可能性がある。例えば病原菌、特にMycoplasma(マイコプラズマ)属の病原菌は、呼吸器疾患の重大な原因である。敗血症は、典型的にはE.coli(大腸菌)によって引き起こされる。
【0004】
細菌またはウイルスなどの弱毒病原微生物を含むワクチン組成物が、ワクチン接種を受けた動物およびヒトにおいて防御免疫応答を生成する上で有効であるということが知られている。このような弱毒生ワクチンは有利である。なぜなら、免疫化の後、そのワクチンの基礎になっている病原生物によるその後の抗原接種が、ワクチン接種によって最初に誘導される免疫応答の迅速な再刺激を生じるからである。これは、その病原体の増殖を阻害して、臨床的に関連する疾患の発症を防止するように機能する。
【0005】
一般に、ワクチンにおける使用のための病原生物の弱毒化は、その生物がもはや病原性ではないように、1以上の病原性因子の完全または部分的な除去によって成し遂げられる。病原性因子は、疾患を直接引き起こし、かつ/または当該生物が宿主の中で生き残ることを許容する特質として一般に知られている。有害な宿主応答を促す特質も、病原性因子であるとして一般に知られている。典型的な病原性因子としては、例えば毒素、接着器官(attachment organelle)および免疫回避機構が挙げられる。これは、多くの病原性因子が免疫を誘導することに関与し、そのため病原性因子の欠失があると、このようにして弱毒化された生物の免疫原性が損なわれるという点で、1つの問題を提示する。弱毒生ワクチンは、抗原性で、従って非病原性でありながらも十分なレベルの宿主免疫を誘導することができるまま留まることが好ましい。通常は、弱毒生ワクチンは、対象の中で生き残らず、これは、そのワクチンの基礎になっている生きた弱毒生物の免疫原性の低下に寄与する可能性がある。
【0006】
毒素などのいくつかの病原性因子は弱毒化についての自明な標的である一方で、病原性因子として知られていない因子は弱毒化についての自明な標的ではない。生物の病原性に対するそれらの因子の弱毒化の効果は、容易に明らかにはならないし、また予測もできない。ABC(ATP結合カセット)トランスポータースーパーファミリーのメンバーは、通常は病原性因子とは考えられない。ABCトランスポーターは、細胞外膜および細胞内膜を越えて基質を移行させる機能を果たす膜タンパク質を含む。ABCトランスポーターによって輸送される物質としては、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、代謝産物、脂質、ステロール、および薬物が挙げられる。ABCトランスポーターの配列比較から、このスーパーファミリーの遺伝子およびタンパク質は遠縁の門にわたって保存されているということが示される。
【0007】
本発明は、病原生物の中のABCトランスポーター遺伝子の機能喪失型変異は、その病原生物を弱毒化したが、宿主−疾患モデル系で評価した場合、弱毒生物は免疫原性のまま留まり、その対象の中で生き残ったという、驚くべき知見に基づいている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、少なくとも1つのABCトランスポーター遺伝子の変異によって弱毒化された細菌であって、この変異は、対応するABCトランスポータータンパク質を非機能的にし、この弱毒細菌は対象の中で生き残る、細菌が提供される。
【0009】
第2の態様では、細菌を弱毒化する方法であって、当該方法は、少なくとも1つのABCトランスポーター遺伝子に変異導入することを含み、この弱毒細菌は対象の中で生き残る、方法が提供される。
【0010】
第3の態様では、第1の態様の少なくとも1つの弱毒細菌を含む免疫原性組成物が提供される。
【0011】
第4の態様では、免疫原性上有効量の第1の態様の少なくとも1つの弱毒細菌と、薬理学的に許容できる担体とを含むワクチン組成物が提供される。
【0012】
第5の態様では、疾患の処置または予防のためのワクチン組成物の使用であって、このワクチン組成物は第1の態様の少なくとも1つの弱毒細菌を含む、使用が提供される。
【0013】
第6の態様では、対象における疾患の予防または寛解の方法であって、当該方法は、治療上有効用量のワクチン組成物または免疫原性組成物をこの対象に投与することを含み、当該ワクチン組成物または免疫原性組成物は、第1の態様の少なくとも1つの弱毒細菌を含む、方法が提供される。
【0014】
第7の態様では、疾患の予防の方法であって、当該方法は、治療上有効用量のワクチン組成物または免疫原性組成物を、予防を必要とする対象に投与することを含み、当該ワクチン組成物または免疫原性組成物は、第1の態様の少なくとも1つの弱毒細菌を含む、方法が提供される。
【0015】
1つの実施形態では、変異は、挿入、欠失、置換またはこれらのいずれかの組み合わせによって生成されてもよい。この挿入変異は、例えば相同組み換え、トランスポゾン変異および配列タグ変異誘発によってもたらされてもよい。
【0016】
1つの実施形態では、このABCトランスポーター遺伝子は、ABCペプチドトランスポータータンパク質をコードする遺伝子であってもよい。例えばCvaB、CylB、SpaB、NisT、EpiT、ComA、PedD、LcnC、McbEF、OppDおよびDppD、およびこれらの相同体、特にABCトランスポーター遺伝子はOppDをコードしてもよい。
【0017】
1つの実施形態では、当該細菌は、Avibacterium(アビバクテリウム)、Bacillus(バチルス)、Brucella(ブルセラ)、Bartonella(バルトネラ)、Bordetella(ボルデテラ)、Burkholderia(バークホルデリア)、Vibrio(ビブリオ)、Escherichia(大腸菌類、エシェリキア)、Salmonella(サルモネラ)、Clostridium(クロストリジウム)、Campylobacter(カンピロバクター)、Chalmydia(クラミジア)、Coxiella(コクシエラ)、Erysipelothrix(エリシペロスリクス)、Francisella(フランシセラ)、Listeria(リステリア)、Actinobacillus(アクチノバチルス)、Haemophilus(ヘモフィルス)、Helicobacter(ヘリコバクター)、Aeromonas(エロモナス)、Pseudomonas(シュードモナス)、Streptococcus(ストレプトコッカス、連鎖球菌)、Shigella(赤痢菌)、Yersinia(エルシニア)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycobacterium(マイコバクテリウム)、Mannheimia(マンヘミア)、Ornithobacterium(オルニソバクテリウム)、Rickettsia(リケッチア)、Ureaplasma(ウレアプラズマ)、およびPasteurella(パスツレラ)を含む群から選択されてもよい。特にこの弱毒細菌は、Avibacterium paragallinarum(アビバクテリウム・パラガリナルム)、Bordetella avium(ボルデテラ・アビウム)、Ornithobacterium rhinotracheale(オルニソバクテリウム・ライノトラキア)、Salmonella enteritidis(腸炎菌)、Pasteurella multocida(パスツレラ・マルトシダ)、Mannheimia haemolytica(ヘモリチカ菌)、E.coli(大腸菌)、Clostridium perfringens(クロストリジウム・パーフリンジェンス、ウェルシュ菌)、Mycoplasma agalactiae(マイコプラズマ・アガラクチアエ)、Mycoplasma anatis(マイコプラズマ・アナティス)、Mycoplasma anseris(マイコプラズマ・アンセリス)、Mycoplasma imitans(マイコプラズマ・イミタンス)、Mycoplasma alkalescens(マイコプラズマ・アルカレッセンス)、Mycoplasma arginini(マイコプラズマ・アルギニニ)、Ureaplasma parvum(ウレアプラズマ・パルハム)、Mycoplasma arthritidis(マイコプラズマ・アルスリチジス)、Mycoplasma bovigenitalium(マイコプラズマ・ボビゲニタリウム)、Mycoplasma bovirhinis(マイコプラズマ・ボビリニス)、Mycoplasma bovis(マイコプラズマ・ボビス)、Mycoplasma bovoculi(マイコプラズマ・ボーボクリ)、Mycoplasma californicum(マイコプラズマ・カリフォルニカム)、Mycoplasma capricolum(マイコプラズマ・カプリコルム)、Mycoplasma dispar(マイコプラズマ・ディスパー)、Mycoplasma felis(マイコプラズマ・フェリス)、Mycoplasma fermentans(マイコプラズマ・ファーメンタンス)、Mycoplasma genitalium(マイコプラズマ・ゲニタリウム)、Mycoplasma hominis(マイコプラズマ・ホミニス)、Mycoplasma hyopneumoniae(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ)、Mycoplasma hyorhinis(マイコプラズマ・ハイオリニス)、Mycoplasma hyosynoviae(マイコプラズマ・ハイオシノビエ)、Mycoplasma iowae(マイコプラズマ・アイオワエ)、Mycoplasma mycoides subsp mycoides large colony and small colony(マイコプラズマ・ミコイデス ミコイデス大コロニー型および小コロニー型)、Mycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)、Mycoplasma synoviae(マイコプラズマ・シノビエ)、Mycoplasma orale(マイコプラズマ・オラーレ)、Mycoplasma penetrans(マイコプラズマ・ペネトランス)、Mycoplasma ovipneumoniae(マイコプラズマ・オビニューモニエ)、Mycoplasma pullorum(マイコプラズマ・プローラム)、Mycoplasma alligatorus(マイコプラズマ・アリガトラス)、Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ・ニューモニエ、肺炎マイコプラズマ)、Mycoplasma maleagridis(マイコプラズマ・メレアグリディス)、Mycoplasma haemofelis(マイコプラズマ・ヘモフェリス)、Mycoplasma haemominutum(マイコプラズマ・ヘモマイニュータム)、Mycoplasma haematoparvum(マイコプラズマ・ヘマトパルハム)であってもよい。
【0018】
1つの実施形態では、この細菌は、トリ病原性大腸菌株E956、またはMycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)株Ap3ASであってもよい。
【0019】
1つの実施形態では、当該生きた弱毒細菌は異種抗原を発現してもよい。この異種抗原は、別の病原生物由来の核酸によってコードされてもよい。この異種抗原をコードする核酸は、Avibacterium(アビバクテリウム)、Bacillus(バチルス)、Brucella(ブルセラ)、Bartonella(バルトネラ)、Bordetella(ボルデテラ)、Burkholderia(バークホルデリア)、Vibrio(ビブリオ)、Escherichia(大腸菌類、エシェリキア)、Salmonella(サルモネラ)、Clostridium(クロストリジウム)、Campylobacter(カンピロバクター)、Chalmydia(クラミジア)、Coxiella(コクシエラ)、Erysipelothrix(エリシペロスリクス)、Francisella(フランシセラ)、Listeria(リステリア)、Actinobacillus(アクチノバチルス)、Haemophilus(ヘモフィルス)、Helicobacter(ヘリコバクター)、Aeromonas(エロモナス)、Pseudomonas(シュードモナス)、Streptococcus(ストレプトコッカス、連鎖球菌)、Shigella(赤痢菌)、Yersinia(エルシニア)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycobacterium(マイコバクテリウム)、Mannheimia(マンヘミア)、Ornithobacterium(オルニソバクテリウム)、Rickettsia(リケッチア)、Staphylococci(ブドウ球菌)、Ureaplasma(ウレアプラズマ)、およびPasteurella(パスツレラ)を含む群から選択される属から単離されてもよい。特に、この異種抗原をコードする核酸は、Avibacterium paragallinarum(アビバクテリウム・パラガリナルム)、Bordetella avium(ボルデテラ・アビウム)、Ornithobacterium rhinotracheale(オルニソバクテリウム・ライノトラキア)、Salmonella enteritidis(腸炎菌)、Pasteurella multocida(パスツレラ・マルトシダ)、Mannheimia haemolytica(マンヘミア・ヘモリチカ、ヘモリチカ菌)、E.coli(大腸菌)、Clostridium perfringens(クロストリジウム・パーフリンジェンス、ウェルシュ菌)、Mycoplasma hyopneumoniae(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ)、Mycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)またはMycoplasma synoviae(マイコプラズマ・シノビエ)、Avibacterium paragallinarum(アビバクテリウム・パラガリナルム)、Bordetella avium(ボルデテラ・アビウム)、Ornithobacterium rhinotracheale(オルニソバクテリウム・ライノトラキア)、Mycoplasma agalactiae(マイコプラズマ・アガラクチアエ)、Mycoplasma alkalescens(マイコプラズマ・アルカレッセンス)、Mycoplasma anatis(マイコプラズマ・アナティス)、Mycoplasma anseris(マイコプラズマ・アンセリス)、Mycoplasma imitans(マイコプラズマ・イミタンス)、Mycoplasma arginini(マイコプラズマ・アルギニニ)、Ureaplasma parvum(ウレアプラズマ・パルハム)、Mycoplasma arthritidis(マイコプラズマ・アルスリチジス)、Mycoplasma bovigenitalium(マイコプラズマ・ボビゲニタリウム)、Mycoplasma bovirhinis(マイコプラズマ・ボビリニス)、Mycoplasma bovis(マイコプラズマ・ボビス)、Mycoplasma bovoculi(マイコプラズマ・ボーボクリ)、Mycoplasma californicum(マイコプラズマ・カリフォルニカム)、Mycoplasma capricolum(マイコプラズマ・カプリコルム)、Mycoplasma dispar(マイコプラズマ・ディスパー)、Mycoplasma felis(マイコプラズマ・フェリス)、Mycoplasma fermentans(マイコプラズマ・ファーメンタンス)、Mycoplasma genitalium(マイコプラズマ・ゲニタリウム)、Mycoplasma hominis(マイコプラズマ・ホミニス)、Mycoplasma hyopneumoniae(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ)、Mycoplasma hyorhinis(マイコプラズマ・ハイオリニス)、Mycoplasma hyosynoviae(マイコプラズマ・ハイオシノビエ)、Mycoplasma iowae(マイコプラズマ・アイオワエ)、Mycoplasma mycoides subsp mycoides large colony and small colony(マイコプラズマ・ミコイデス ミコイデス大コロニー型および小コロニー型)、Mycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)、Mycoplasma synoviae(マイコプラズマ・シノビエ)、Mycoplasma orale(マイコプラズマ・オラーレ)、Mycoplasma penetrans(マイコプラズマ・ペネトランス)、Mycoplasma ovipneumoniae(マイコプラズマ・オビニューモニエ)、Mycoplasma pullorum(マイコプラズマ・プローラム)、Mycoplasma alligatorus(マイコプラズマ・アリガトラス)、Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ・ニューモニエ、肺炎マイコプラズマ)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycoplasma maleagridis(マイコプラズマ・メレアグリディス)、Mycoplasma haemofelis(マイコプラズマ・ヘモフェリス)、Mycoplasma haemominutum(マイコプラズマ・ヘモマイニュータム)、Mycoplasma haematoparvum(マイコプラズマ・ヘマトパルハム)由来であってもよい。この異種抗原をコードする核酸は、ニューカッスル病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、トリニューモウイルス、鶏痘、伝染性ファブリキウス嚢病、伝染性喉頭気管炎ウイルス、トリインフルエンザ、アヒルウイルス性肝炎、アヒルウイルス性腸炎、ニワトリ貧血(Chicken Infectious Anaemia)、マレック病ウイルスを含む群から選択されるウイルスから単離されてもよい。
【0020】
対象は、ヒト、ウシ亜科の動物、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ヤギ亜科の動物、ヒツジ属の動物、ブタ類の動物、ラクダ科の動物、ウマ科の動物および鳥類を含めた脊椎動物である。ウシ亜科の動物対象は、雌ウシ、雄ウシ、バイソンまたはバッファローであってもよい。イヌ科の動物対象は、イヌであってもよい。ネコ科の動物対象は、ネコであってもよい。ヤギ亜科の動物対象は、ヤギであってもよい。ヒツジ属の動物対象は、ヒツジであってもよい。ブタ類の動物対象は、ブタであってもよい。ラクダ科の動物対象は、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、ビクーナまたはグアナコであってもよい。ウマ科の動物対象は、ウマ、ロバ、シマウマまたはラバであってもよい。鳥類対象は、いずれの商業的にまたは家庭で飼育される鳥類であってもよい。特にこの鳥類は、ニワトリ(チャボを含む)、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、キジ、ウズラ、ヤマウズラ、ハト、ホロホロチョウ、ダチョウ、エミューまたはクジャクであってもよい。
【0021】
当該ワクチン組成物および免疫原性組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容できる担体または希釈剤(水、生理食塩水、培養液など)、安定剤、炭水化物、タンパク質、タンパク質含有薬剤(ウシ血清または脱脂粉乳など)および緩衝液またはこれらのいずれかの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0022】
安定剤はSPGAであってもよい。炭水化物としては、例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、グルコース、デキストランまたはこれらの組み合わせが挙げられる。加えて、アルブミンまたはカゼインなどのタンパク質またはウシ血清または脱脂粉乳などのタンパク質含有薬剤は、薬学的に許容できる担体または希釈剤として有用である可能性がある。
【0023】
薬学的に許容できる担体または希釈剤として使用するための緩衝液としては、マレイン酸塩、リン酸塩、CABS、ピペリジン、グリシン、クエン酸塩、リンゴ酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ピペラジン、ピリジン、カコジル酸塩、コハク酸塩、MES、ヒスチジン、ビス−トリス、リン酸塩、エタノールアミン、ADA、炭酸塩、ACES、PIPES、イミダゾール、ビス−トリスプロパン、BES、MOPS、HEPES、TES、MOPSO、MOBS、DIPSO、TAPSO、TEA、ピロリン酸塩、HEPPSO、POPSO、トリシン、ヒドラジン、グリシルグリシン、TRIS、EPPS、ビシン、HEPBS、TAPS、AMPD、TABS、AMPSO、タウリン、ホウ酸塩、CHES、グリシン、水酸化アンモニウム、CAPSO、炭酸塩、メチルアミン、ピペラジン、CAPS、またはこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0024】
当該ワクチン組成物および免疫原性組成物は、凍結乾燥されていてもよいし、またはフリーズドライ状態であってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、当該ワクチン組成物または免疫原性組成物は、少なくとも1つのアジュバントをさらに含んでもよい。アジュバントの例としては、フロインド完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、サポニン、鉱油、植物油、カルボポール(carbopol)水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、油乳剤(例えばBayol F(登録商標)もしくはMarcol 52(登録商標))、サポニンもしくはビタミンE可溶化物(solubilisate)またはこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、当該ワクチン組成物は、粘膜への施用に特に有用なアジュバント、例えばE.coli(大腸菌)易熱性毒素またはコレラ毒素を含んでもよい。
【0026】
当該ワクチン組成物または免疫原性組成物は、鼻腔内に、眼内に、皮内に、腹腔内に、静脈内に、皮下に、経口で、エアロゾルによって(噴霧型ワクチン接種)、排泄腔を介してまたは筋肉内に投与されてもよい。対象が鳥類である場合は、点眼剤およびエアロゾル投与が好ましい。エアロゾル投与は、当該ワクチン組成物または免疫原性組成物を非常に多くの対象に投与するのに特に好ましい。
【0027】
当該免疫原性組成物またはワクチン組成物は、1用量あたり少なくとも約10〜約10弱毒細菌、または約10〜約10弱毒細菌、または約10〜約10弱毒細菌、または約10〜約1011弱毒細菌、または約1011〜約1013弱毒細菌、または約1013〜約1015弱毒細菌、または約1015〜約1017弱毒細菌、または約1017〜約1019、または少なくとも約1019弱毒細菌を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】構成要素および実験プロトコルの概略設計である。(A)シグナチャータグ化トランスポゾンの基本構造。(B)シグナチャータグ化変異誘発法(STM)実験についての設計。
【図2】特異的タグの検出。色の変化を示したブロス培養液は、個々のシグナチャータグを検出するためのP2/P4プライマー対を使用するPCRによってスクリーニングされた。各試料は、DNAサイズマーカー(HaeIIIを用いて消化されたpUC18)と一緒に2%アガロースゲルの中で電気泳動にかけられた。レーン1、タグ02を保有するST変異体;レーン2、タグ03を保有するST変異体;レーン3、タグ04を保有するST変異体;レーン4、タグ06を保有するST変異体;レーン5、タグ07を保有するST変異体;レーン6、陰性対照。レーン7、タグ02を保有するトランスポゾンを鋳型として含有する陽性対照プラスミド。
【図3】STM形質転換体の確認。色の変化を示した形質転換体は、個々のシグナチャータグの存在を確認するために、P2/P4プライマーセットを使用するPCRによってスクリーニングされた。各試料は、HaeIIIを用いて消化されたpUC18というDNAサイズ標品とともに、2%アガロースゲルの中で電気泳動にかけられた。レーン1、タグ02を含有する組み換えMg;レーン2、タグ03形質転換体;レーン3、タグ04クローン;レーン4、タグ06形質転換体;レーン5、タグ07を保有する形質転換体;+、タグ02プラスミドを鋳型として有する陽性対照。−、鋳型を加えていない陰性対照。
【図4】確認的スクリーニングの実験計画。
【図5】ST変異体の配列およびサザンブロット分析。(A)直接配列決定によって得られた電気泳動図。(I)。単独のトランスポゾンを可読配列とともにゲノムに持ち込むST変異体26−2。混合配列シグナルが、ST変異体15−1(II)および25−1(III)において、トランスポゾンおよび宿主株ゲノムの接合部から開始するのが見られる。(B)サザンブロッティングによって検出された複数の挿入。レーン1、ST変異体15−1;レーン2、ST変異体15−2;レーン3、ST変異体15−3;レーン4、ST変異体25−1;レーン5、ST変異体25−2;レーン6、ST変異体25−3。このDNAサイズ標品は、HindIIIを用いて消化したファージλ DNAであった。
【図6】病原性および感染力研究における、トリのRSAスコアおよび気嚢病変スコアの分布。(A)感染後2週間におけるRSAスコア。(B)気嚢病変スコア。グループ1、陰性対照;グループ2、ST変異体04−1に感染;グループ3、ST変異体33−1に感染;グループ4、ST変異体03−1に感染;グループ5、ST変異体26−1に感染;グループ6、ST変異体18−1に感染;グループ7、ST変異体20−1に感染;グループ8、ST変異体22−1に感染;グループ9、陽性対照(野生型Ap3ASに感染)。
【図7】トリのRSAスコアおよび気嚢病変スコアの分布。(A)28日目におけるRSAスコア。(B)気嚢病変スコア。6つの異なる気嚢の合計スコア。グループ1、陰性対照;グループ2、陽性対照(野生型Ap3ASに感染);グループ3、ワクチン接種対照(ST変異体26−1でワクチン接種を受けた);グループ4、ワクチン接種を受け(ST変異体26−1)かつ抗原接種した(野生型Ap3ASに感染)。
【図8】相同組み換えのために使用されたPCR構築物の概略図。PCR産物は、上記のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて生成された。このカナマイシン遺伝子は、プライマー対TX/TYを使用して、oppAおよびdppD遺伝子構築物の両方のために増幅された。構築物アームは、oppDについてはWS/WUおよびWY/WTを使用して、またはdppDについてはPCRにおいて60量体プライマーWE/WFを使用することによる、さらなるPCR産物によって生成され加えられた。
【図9】PCRによる相同組み換えの検出。dppD(パネルA)およびoppD(パネルB)遺伝子についてのオリゴヌクレオチドプライマーが、それぞれの領域をE.coli(大腸菌)株の中で増幅するための、oppDについてはプライマー対WS/WTおよびdppDについてはTZ/UAを使用するPCRにおいて使用された:E956(パネルAおよびBのレーン1)、ΔdppD(レーン1、パネルA)、およびΔoppD(レーン1、パネルB)。
【図10】E.coli(大腸菌)E956 dppDおよびoppDノックアウトのサザンブロット。カナマイシン、dppDおよびoppDプローブは、放射標識され、E.coli(大腸菌)E956、ΔdppD、およびΔoppD、それぞれレーン1、2、および3のPst1で切断されたゲノムDNAを探索するために使用された。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(定義)
本願で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その、当該、前記(the)」は、文脈から明らかにそうではないとわかる場合を除いて、複数の言及対象を包含する。例えば、用語「1つのABCトランスポーター」は複数のABCトランスポーターをも包含する。
【0030】
本願明細書に関しては、用語「含む(comprising)」は、「主要部分として包含するが、必ずしもそれのみを包含するわけではない」を意味する。さらには、語「含む(comprising)」の派生語、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などは、それに応じて変更された意味を有する。
【0031】
本願明細書で使用する場合、用語「免疫原性上有効な」は、ワクチン接種の時または免疫原性組成物の投与の際に投与される生きた弱毒細菌の量が、対象において、細菌の病原型に対して効果的な免疫応答を誘導するのに十分であるということを意味する。
【0032】
本願明細書で使用する場合、用語「処置すること」および「処置」は、状態もしくは症候を改善する、状態もしくは疾患の確立を防止する、または状態もしくは疾患もしくは他の望ましくない症候の進行を、どんなものであれ何らかの点で、別の態様で防止し、妨害し、遅延しもしくは逆戻りさせる、いずれかのおよびすべての使用を指す。
【0033】
本願明細書で使用する場合、用語「生き残る」および「持続する、持続性の」は、対象の少なくとも一部分の感染またはコロニー形成の確立および/または維持を指す。持続性は、生物が、複製があろうとなかろうと、組織の中で生存する状態を包含する。「持続する、持続性の」は、臨床的に関連する疾患に関連する場合もあれば関連しない場合もある。
【0034】
本発明は、対象の中で生き残る生きた弱毒細菌およびワクチン組成物におけるその使用に関する。この弱毒細菌は、ABCトランスポータータンパク質をコードする核酸における変異の結果として、少なくとも1つの機能的ABCトランスポータータンパク質を欠く。このABCトランスポータータンパク質は、いずれの手段によって非機能的とされてもよいが、典型的には、これはABCトランスポータータンパク質をコードする核酸の変異によって成し遂げられる。典型的には、この変異は、挿入、欠失またはフレームシフト変異またはこれらのいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、この生きた弱毒細菌は異種抗原をも発現してもよい。
【0035】
いずれの種類の細菌も本発明に従って弱毒化されてもよいが、脊椎動物の病原菌、特に鳥類の病原菌の弱毒化が好ましい。
【0036】
(細菌)
1つの実施形態では、本発明は、ワクチン組成物における使用のための、属Actinobacillus(アクチノバチルス)、Aeromonas(エロモナス)、Avibacterium(アビバクテリウム)、Bacillus(バチルス)、Brucella(ブルセラ)、Bartonella(バルトネラ)、Bordetella(ボルデテラ)、Burkholderia(バークホルデリア)、Escherichia(大腸菌類、エシェリキア)、Salmonella(サルモネラ)、Clostridium(クロストリジウム)、Campylobacter(カンピロバクター)、Chalmydia(クラミジア)、Coxiella(コクシエラ)、Erysipelothrix(エリシペロスリクス)、Francisella(フランシセラ)、Listeria(リステリア)、Actinobacillus(アクチノバチルス)、Haemophilus(ヘモフィルス)、Helicobacter(ヘリコバクター)、Listeria(リステリア)、Aeromonas(エロモナス)、Pasteurella(パスツレラ)、Streptococcus(ストレプトコッカス、連鎖球菌)、Shigella(赤痢菌)、Yersinia(エルシニア)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycobacterium(マイコバクテリウム)、Ornithobacterium(オルニソバクテリウム)、Mannheimia(マンヘミア)、Vibrio(ビブリオ)、Rickettsia(リケッチア)、Pseudomonas(シュードモナス)、Staphylococci(ブドウ球菌)、Ureaplasma(ウレアプラズマ)、およびPasteurella(パスツレラ)(これらに限定されない)などの生きた弱毒細菌に関する。これらの細菌属は、鳥類および様々な異なる動物(ヒトを含む)の両方にとって病原性である非常に多くの種を含む。
【0037】
特に、当該弱毒細菌は、Avibacterium paragallinarum(アビバクテリウム・パラガリナルム)、Bordetella avium(ボルデテラ・アビウム)、Ornithobacterium rhinotracheale(オルニソバクテリウム・ライノトラキア)、Salmonella enteritidis(腸炎菌)、Pasteurella multocida(パスツレラ・マルトシダ)、Mannheimia haemolytica(マンヘミア・ヘモリチカ、ヘモリチカ菌)、E.coli(大腸菌)、Clostridium perfringens(クロストリジウム・パーフリンジェンス、ウェルシュ菌)、Mycoplasma hyopneumoniae(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ)、Mycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)、Mycoplasma synoviae(マイコプラズマ・シノビエ)、Mycoplasma agalactiae(マイコプラズマ・アガラクチアエ)、Mycoplasma alkalescens(マイコプラズマ・アルカレッセンス)、Mycoplasma anatis(マイコプラズマ・アナティス)、Mycoplasma anseris(マイコプラズマ・アンセリス)、Mycoplasma imitans(マイコプラズマ・イミタンス)、Mycoplasma arginini(マイコプラズマ・アルギニニ)、Ureaplasma parvum(ウレアプラズマ・パルハム)、Mycoplasma arthritidis(マイコプラズマ・アルスリチジス)、Mycoplasma bovigenitalium(マイコプラズマ・ボビゲニタリウム)、Mycoplasma bovirhinis(マイコプラズマ・ボビリニス)、Mycoplasma bovis(マイコプラズマ・ボビス)、Mycoplasma bovoculi(マイコプラズマ・ボーボクリ)、Mycoplasma californicum(マイコプラズマ・カリフォルニカム)、Mycoplasma capricolum(マイコプラズマ・カプリコルム)、Mycoplasma dispar(マイコプラズマ・ディスパー)、Mycoplasma felis(マイコプラズマ・フェリス)、Mycoplasma fermentans(マイコプラズマ・ファーメンタンス)、Mycoplasma genitalium(マイコプラズマ・ゲニタリウム)、Mycoplasma hominis(マイコプラズマ・ホミニス)、Mycoplasma hyopneumoniae(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ)、Mycoplasma hyorhinis(マイコプラズマ・ハイオリニス)、Mycoplasma hyosynoviae(マイコプラズマ・ハイオシノビエ)、Mycoplasma iowae(マイコプラズマ・アイオワエ)、Mycoplasma mycoides subsp mycoides large colony and small colony(マイコプラズマ・ミコイデス ミコイデス大コロニー型および小コロニー型)、Mycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)、Mycoplasma synoviae(マイコプラズマ・シノビエ)、Mycoplasma orale(マイコプラズマ・オラーレ)、Mycoplasma penetrans(マイコプラズマ・ペネトランス)、Mycoplasma ovipneumoniae(マイコプラズマ・オビニューモニエ)、Mycoplasma pullorum(マイコプラズマ・プローラム)、Mycoplasma alligatorus(マイコプラズマ・アリガトラス)、Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ・ニューモニエ、肺炎マイコプラズマ)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycoplasma maleagridis(マイコプラズマ・メレアグリディス)、Mycoplasma haemofelis(マイコプラズマ・ヘモフェリス)、Mycoplasma haemominutum(マイコプラズマ・ヘモマイニュータム)、Mycoplasma haematoparvum(マイコプラズマ・ヘマトパルハム)であってもよいが、これらに限定されない。
【0038】
1つの実施形態では、当該生きた弱毒細菌は、E.coli(大腸菌)またはMycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)を含む群から選択されてもよい。
【0039】
E.coli(大腸菌)は、トリ病原性大腸菌 E956であってもよく、Mycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)はMycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム) Ap3ASであってもよい。
【0040】
(対象の中での持続性)
当該生きた弱毒細菌は対象の中で生き残る。この弱毒細菌の持続性は、好ましくは対象−疾患モデル系で評価されるが、本願明細書に記載されるワクチン組成物または免疫原性組成物が投与された対象の中で評価されてもよい。この弱毒細菌の持続性は、臨床徴候および/または症候の観察を手段として評価されてもよい。あるいはまたは加えて、持続性は、対象から採取された試料の中の当該弱毒細菌の存在の判定によって評価されてもよい。この試料は、組織試料(例えば血液、皮膚、毛髪、頬側擦過)または身体の分泌もしくは排泄の試料、例えば粘液、尿、糞便、涙液であってもよい。試料は、対象が生きている間に、または剖検もしくは死検で採取されてもよい。その試料の中の弱毒細菌の存在は、培養、分子的方法(ELISAもしくはPCRなど)または当該技術分野で公知のいずれかの方法によって評価されてもよい。さらには、剖検または死検の時のその対象の侵された領域の観察は、当該弱毒細菌がその対象の中で生き残るかどうかの判定を可能にする可能性もある。
【0041】
(ABCトランスポーター)
ATP結合カセットトランスポーター(ABCトランスポーター)は、タンパク質および遺伝子の最大のスーパーファミリーのうちの1つを形成し、原核生物からヒトまでのすべての門において、代表的なABCトランスポーターが存在する。ABCトランスポーターは、ATPを利用して、細胞膜を越えて物質機能を輸送する膜貫通型タンパク質である。これらの物質としては、代謝産物ペプチド、オリゴペプチド、脂質およびステロール、および薬物が挙げられる。
【0042】
細菌では、ABCトランスポーターは、各々が移し変える基質の種類に基づいて、3つの主な群にさらに分類される。これらのグループは、タンパク質トランスポーター、ペプチドトランスポーター、および非タンパク質基質を輸送する系である。
【0043】
本発明によれば、生きた弱毒細菌は、当該細菌が少なくとも1つの機能的ABCトランスポータータンパク質を欠くように、これらのクラスのいずれかの少なくとも1つのABCトランスポーター遺伝子に変異導入することにより、生産されてもよい。
【0044】
特に興味がもたれるものは、例えばCvaB(E coli(大腸菌))、CylB(Enterococcus faecalis(エンテロコッカス・フェカリス、フェカリス菌))、SpaB(Bacillus subtilis(バチルス・スブチリス、枯草菌))、NisT(Lactococcus lactis(ラクトコッカス・ラクティス、ラクチス乳酸菌) 6F3)、EpiT(Staphylococcus epidermidis(スタフィロコッカス・エピデルミデス、表皮ブドウ球菌))、ComA(Streptococcus pneumoniae(ストレプトコッカス・ニューモニエ、肺炎連鎖球菌))、PedD(Pediococcus acidilactici(ペディオコッカス・アシディラクティシ))、LcnC(Lactococcus lactis subsp. lactis(ラクトコッカス・ラクティス ラクチス型))、McbEF(E coli(大腸菌)) OppDおよびDppD(E.coli(大腸菌)およびM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム))ならびに他の種の中のこれらの相同体を含むABCペプチドトランスポーターである。
【0045】
(対象)
当該生きた弱毒細菌が投与されることになる対象は、ヒト、ウシ亜科の動物、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ヤギ亜科の動物、ヒツジ属の動物、ブタ類の動物、ラクダ科の動物、ウマ科の動物および鳥類を含めたいずれの脊椎動物であってもよいということが企図される。ウシ亜科の動物対象は、雌ウシ、雄ウシ、バイソンまたはバッファローであってもよい。イヌ科の動物対象は、イヌであってもよい。ネコ科の動物対象は、ネコであってもよい。ヤギ亜科の動物対象は、ヤギであってもよい。ヒツジ属の動物対象は、ヒツジであってもよい。ブタ類の動物対象は、ブタであってもよい。ラクダ科の動物対象は、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、ビクーナまたはグアナコであってもよい。ウマ科の動物対象は、ウマ、ロバ、シマウマまたはラバであってもよい。鳥類対象は、いずれの商業的にまたは家庭で飼育される鳥類であってもよい。特にこの鳥類は、ニワトリ(チャボを含む)、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、キジ、ウズラ、ヤマウズラ、ハト、ホロホロチョウ、ダチョウ、エミューまたはクジャクであってもよい。
【0046】
(変異)
非機能的ABCトランスポータータンパク質を作り出すために利用される変異は、挿入、欠失もしくは置換変異またはこれらの組み合わせであってもよいが、ただしこの変異は、機能的ABCトランスポータータンパク質を発現できなくなることを導くものである。ABCトランスポータータンパク質は、複数の機能、例えばATP結合またはオリゴペプチド結合を有してもよい。非機能的ABCトランスポータータンパク質としては、その機能のうちの少なくとも1つにおいて欠損があるABCトランスポータータンパク質が挙げられる。
【0047】
このような変異は、挿入、欠失、置換変異またはこれらの組み合わせであることができるが、ただしこの変異は、機能的ABCトランスポータータンパク質を発現できなくなることを導くものである。好ましい実施形態では、この変異は、ABCトランスポータータンパク質をコードする核酸の少なくとも実質的な部分が削除されているノックアウト変異である。挿入変異は、例えば相同組み換え、トランスポゾン変異または配列タグ変異誘発によって作製されてもよい。
【0048】
本発明に係る使用のための生きた弱毒細菌は、いくつかの方法で得てよい。例えば、生きた弱毒細菌は、突然変異誘発物質(プリンまたはピリミジン類似体など)、紫外光、電離放射線、DNA挿入剤、温度処理、トランスポゾン変異を用いた野生型細菌の処理によって調製されてもよい。これらの方法は、特定の遺伝子に対する変異を標的とはせず、従って、病原性研究と組み合わせた標的遺伝子のDNA配列解析によるなどの当該技術分野で公知の方法による、弱毒化についての処理された細菌のスクリーニングを必要とする。
【0049】
部位特異的な変異誘発などの公知の方法を使用する組み換えDNA技術が、特定の遺伝子、例えばoppDの所定の部位で変異を導入するために使用されてもよい。変異遺伝子がもはや機能的ABCトランスポータータンパク質を発現しないように、1以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置き換えなどの変異を導入するために部位特異的な変異誘発が使用されてもよい。このような変異は、例えばいくつかの核酸の欠失によって作製されてもよい。
【0050】
わずか1つの塩基の欠失(つまりフレームシフトが作られる)で、ABCタンパク質を非機能的にすることができる。いくつかの実施形態では、非常に多くの塩基が削除される。他の実施形態では、ABCトランスポータータンパク質をコードする遺伝子の大多数またはすべてが削除されてもよい。終止コドンまたはフレームシフトを導入する変異は、非機能的ABCトランスポータータンパク質を得るのに適している。
【0051】
ABCトランスポータータンパク質をコードする遺伝子は、コード配列を含むだけでなく、調節配列、例えばプロモーターをも含む。遺伝子は、正しいmRNA翻訳のために必須の領域、例えばリボソーム結合部位をも含む。従って、当該生きた弱毒細菌は、コード領域にだけでなく、加えてまたはあるいは転写および翻訳のために必須の配列(プロモーターおよびリボソーム結合部位など)に変異を含んでもよい。
【0052】
自然突然変異によって作り出される弱毒細菌とは対照的に、ABCトランスポーター遺伝子の断片を削除すること、もしくはABCトランスポーター遺伝子全体を削除すること、もしくは異種のDNA断片の挿入、またはこれらの組み合わせなどの変異によって作り出される弱毒細菌は、それらが野生型病原菌に戻ることはないであろうという長所を有する。従って、好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1つのABCトランスポーター遺伝子が挿入および/または欠失を含む生きた弱毒細菌を提供する。
【0053】
(異種抗原を発現する弱毒細菌)
1つの実施形態では、当該生きた弱毒細菌は、他の病原菌またはウイルスの抗原をコードする異種の遺伝子のための担体として使用されてもよい。これにより、生きた弱毒細菌が複数の疾患に対する免疫応答を誘発するために使用することができるようになる。
【0054】
ABCトランスポータータンパク質をコードする遺伝子は、異種の遺伝子のための挿入部位として使用されてもよい。挿入物としてのABCトランスポーター遺伝子の使用は、異種抗原をコードする配列の挿入は、ABCトランスポータータンパク質を不活性化し、かつ1以上の異種抗原をコードする配列を導入するので、有利である。このような組み換え細菌の構築は、当該技術分野で公知の標準的な技術を使用して、ごく普通に行うことができる。
【0055】
別の実施形態は、機能的ABCトランスポーターを生産せずかつ異種の核酸が挿入されている、属Avibacterium(アビバクテリウム)、Staphylococcus(スタフィロコッカス、ブドウ球菌)、Escherichia(大腸菌類、エシェリキア)、Brucella(ブルセラ)、Salmonella(サルモネラ)、Bordetella(ボルデテラ)、Burkholderia(バークホルデリア)、Vibrio(ビブリオ)、Haemophilus(ヘモフィルス)、Ornithobacterium(オルニソバクテリウム)、Mannheimia(マンヘミア)、Pasteurella(パスツレラ)、Clostridium(クロストリジウム)、Campylobacter(カンピロバクター)、Chalmydia(クラミジア)、Coxiella(コクシエラ)、Erysipelothrix(エリシペロスリクス)、Francisella(フランシセラ)、Listeria(リステリア)、Actinobacillus(アクチノバチルス)、Haemophilus(ヘモフィルス)、Helicobacter(ヘリコバクター)、Aeromonas(エロモナス)、Pseudomonas(シュードモナス)、Shigella(赤痢菌)、Yersinia(エルシニア)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycobacterium(マイコバクテリウム)、Rickettsia(リケッチア)、Ureaplasma(ウレアプラズマ)、およびStreptococcus(ストレプトコッカス、連鎖球菌)から選択される生きた弱毒組み換え細菌に関する。この異種の核酸は、別の病原性微生物またはウイルスから選択される抗原をコードしてもよい。この核酸は、Avibacterium paragallinarum(アビバクテリウム・パラガリナルム)、Bordetella avium(ボルデテラ・アビウム)、Ornithobacterium rhinotracheale(オルニソバクテリウム・ライノトラキア)、Salmonella enteritidis(腸炎菌)、Pasteurella multocida(パスツレラ・マルトシダ)、Mannheimia haemolytica(マンヘミア・ヘモリチカ、ヘモリチカ菌)、E.coli(大腸菌)、Clostridium perfringens(クロストリジウム・パーフリンジェンス、ウェルシュ菌)、Mycoplasma hyopneumoniae(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ)、Mycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)またはMycoplasma synoviae(マイコプラズマ・シノビエ)、Mycoplasma agalactiae(マイコプラズマ・アガラクチアエ)、Mycoplasma alkalescens(マイコプラズマ・アルカレッセンス)、Mycoplasma anatis(マイコプラズマ・アナティス)、Mycoplasma anseris(マイコプラズマ・アンセリス)、Mycoplasma imitans(マイコプラズマ・イミタンス)、Mycoplasma arginini(マイコプラズマ・アルギニニ)、Ureaplasma parvum(ウレアプラズマ・パルハム)、Mycoplasma arthritidis(マイコプラズマ・アルスリチジス)、Mycoplasma bovigenitalium(マイコプラズマ・ボビゲニタリウム)、Mycoplasma bovirhinis(マイコプラズマ・ボビリニス)、Mycoplasma bovis(マイコプラズマ・ボビス)、Mycoplasma bovoculi(マイコプラズマ・ボーボクリ)、Mycoplasma californicum(マイコプラズマ・カリフォルニカム)、Mycoplasma capricolum(マイコプラズマ・カプリコルム)、Mycoplasma dispar(マイコプラズマ・ディスパー)、Mycoplasma felis(マイコプラズマ・フェリス)、Mycoplasma fermentans(マイコプラズマ・ファーメンタンス)、Mycoplasma genitalium(マイコプラズマ・ゲニタリウム)、Mycoplasma hominis(マイコプラズマ・ホミニス)、Mycoplasma hyorhinis(マイコプラズマ・ハイオリニス)、Mycoplasma hyosynoviae(マイコプラズマ・ハイオシノビエ)、Mycoplasma iowae(マイコプラズマ・アイオワエ)、Mycoplasma mycoides subsp mycoides large colony and small colony(マイコプラズマ・ミコイデス ミコイデス大コロニー型および小コロニー型)、Mycoplasma orale(マイコプラズマ・オラーレ)、Mycoplasma penetrans(マイコプラズマ・ペネトランス)、Mycoplasma ovipneumoniae(マイコプラズマ・オビニューモニエ)、Mycoplasma pullorum(マイコプラズマ・プローラム)、Mycoplasma alligatorus(マイコプラズマ・アリガトラス)、Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ・ニューモニエ、肺炎マイコプラズマ)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycoplasma maleagridis(マイコプラズマ・メレアグリディス)、Mycoplasma haemofelis(マイコプラズマ・ヘモフェリス)、Mycoplasma haemominutum(マイコプラズマ・ヘモマイニュータム)、Mycoplasma haematoparvum(マイコプラズマ・ヘマトパルハム)を含む群から選択される病原生物由来の、またはニューカッスル病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、トリニューモウイルス、鶏痘、伝染性ファブリキウス嚢病、伝染性喉頭気管炎ウイルス、トリインフルエンザ、アヒルウイルス性肝炎、アヒルウイルス性腸炎、ニワトリ貧血およびマレック病ウイルスなどの(これらに限定されない)ウイルス由来の抗原(1種または複数種)をコードしてもよい。
【0056】
別の実施形態では、当該ABCトランスポーター遺伝子は、免疫応答を誘発または増強するように機能するタンパク質、例えばインターロイキンまたはインターフェロンをコードする核酸によって完全にまたは部分的に置き換えられてもよい。
【0057】
(ワクチン組成物)
当該生きた弱毒細菌は、ワクチン組成物における使用に適している。このワクチン組成物は、対象の中で生き残ることができる生きた弱毒細菌の免疫原性上有効量と、薬学的に許容できる担体または希釈剤とを含んでもよい。本願明細書に記載されるワクチン組成物または免疫原性組成物は、鼻腔内に、眼内に、皮内に、腹腔内に、静脈内に、皮下に、経口で、排泄腔を介して、エアロゾルによって(噴霧型ワクチン接種)または筋肉内に投与されてもよい。特に、点眼剤およびエアロゾルによる投与は、対象が鳥類である場合に好ましい。エアロゾル投与は、当該ワクチン組成物または免疫原性組成物を非常に多くの対象に投与するときに、特に好ましい。
【0058】
1つの形態では、本発明は、非弱毒形態ではABCトランスポーター遺伝子を含む細菌への感染に対する動物およびヒトの予防または処置のための弱毒生ワクチン組成物を提供する。
【0059】
この薬学的に許容できる担体または希釈剤は、水、生理食塩水、培養液、安定剤、炭水化物、タンパク質、タンパク質含有薬剤(ウシ血清または脱脂粉乳など)および緩衝液、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択されてもよい。
【0060】
安定剤はSPGAであってもよい(1リットルあたり、SPGAは、74.62gのスクロース、0.52gのKHPO、1.25gのKHPO、0.912gのグルタミン酸カリウムおよび10gの血清アルブミンを含有する)。薬学的に許容できる担体または希釈剤として有用な炭水化物は、例えばソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、グルコース、デキストランまたはこれらの組み合わせである。加えて、タンパク質(アルブミンまたはカゼインなど)またはタンパク質含有薬剤(ウシ血清または脱脂粉乳など)は、薬学的に許容できる担体または希釈剤として有用である可能性がある。
【0061】
薬学的に許容できる担体または希釈剤、リン酸緩衝液としての緩衝液は、マレイン酸塩、リン酸塩、CABS(4−(シクロヘキシルアミノ)−1−ブタンスルホン酸)、ピペリジン、グリシン、クエン酸塩、グリシルグリシン、リンゴ酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ピペラジン、ピリジン、カコジル酸塩、コハク酸塩、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸水和物 4−モルホリンエタンスルホン酸)、ヒスチジン、ビス−トリス(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール)、リン酸塩、エタノールアミン、ADA(N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸、N−(カルバモイルメチル)イミノ二酢酸)、炭酸塩、ACES(N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸)、PIPES(1,4−ピペラジンジエタンスルホン酸)、イミダゾール、ビス−トリスプロパン(1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)、TES(2−[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸)、MOPSO(3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MOBS(4−(N−モルホリノ)ブタンスルホン酸)、DIPSO(3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TAPSO(2−ヒドロキシ−3−[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸)、TEA(トリエタノールアミン)、ピロリン酸塩、HEPPSO(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)水和物)、POPSO(ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)脱水物)、トリシン、ヒドラジン、グリシルグリシン、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、EPPS(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸)、ビシン、HEPBS(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(4−ブタンスルホン酸))、TAPS([(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸)、AMPD(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール)、TABS(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−4−アミノブタンスルホン酸)、AMPSO(N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、タウリン、ホウ酸塩、CHES(2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、AMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)、グリシン、水酸化アンモニウム、CAPSO(3−(シクロヘキシルアミノ)−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸)、炭酸塩、メチルアミン、ピペラジン、CAPS(3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸)、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択されてもよい。
【0062】
安定剤を添加すると、当該ワクチン組成物は、当該技術分野で公知の方法に従って凍結乾燥またはフリーズドライに適したものとなる。従って1つの実施形態では、当該ワクチン組成物は、フリーズドライ状態にあるかまたは凍結乾燥されている。
【0063】
いくつかの実施形態では、当該ワクチン組成物はアジュバント活性を有する少なくとも1つの化合物を含んでもよい。ワクチン組成物での使用に適したアジュバントの例は、フロイント完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、サポニン、鉱油、植物油、カルボポール(carbopol)水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、油乳剤(例えばBayol F(登録商標)もしくはMarcol 52(登録商標))、サポニンもしくはビタミンE可溶化物またはこれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、当該ワクチン組成物は、粘膜への施用に特に有用なアジュバント、例えばE.coli(大腸菌)易熱性毒素またはコレラ毒素を含んでもよい。
【0064】
本発明のワクチン組成物は、エアロゾル(噴霧型ワクチン)としての使用のために配合されてもよい。
【0065】
本発明のワクチン組成物は、例えば点眼剤の形態で、眼への使用のために配合されてもよい。例えばこの点眼剤は、水性点眼剤、非水性点眼剤、懸濁液点眼剤または乳化点眼剤であってもよい。この点眼剤の製造は、この生きた弱毒細菌を、滅菌蒸留水、生理食塩水溶液などの水性溶媒中、または植物油(綿実油、大豆油、ゴマ油、落花生油が挙げられる)、鉱油などの非水性溶媒などの中に懸濁させることにより、行われる。等張化剤、pH調整剤、増粘剤、懸濁剤、乳化剤および防腐剤が、任意に添加されてもよい。
【0066】
等張化剤としては、例えば塩化ナトリウム、ホウ酸、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、D−マンニトール、グルコースが挙げられる。pH調整剤としては、ホウ酸、無水亜硫酸ナトリウム、塩化水素酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂が、および本願明細書に列挙される緩衝液のいずれかが挙げられる。増粘剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンまたはこれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択されてもよい。
【0067】
懸濁剤は、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン 硬化ヒマシ油60、ポリオキシキャスターオイル(polyoxy castor oil)またはこれらの組み合わせを含む群から選択されてもよい。加えて、乳化剤の例としては、卵黄レシチンおよびポリソルベート80が挙げられる。さらには塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、p−ヒドロキシベンゾエートまたはこれらの組み合わせなどの防腐剤が使用されてもよい。
【0068】
(投与量)
投与されるべき投与量は、典型的には、投与方法およびワクチン接種が求められる対象である病原体の種類に加えて、年齢、体重およびワクチン接種を受けるべき動物によって変わることになろう。
【0069】
当該ワクチン組成物は、免疫応答を引き起こすのに十分ないずれの用量の細菌を含んでもよい。例えば、用量は、少なくとも10〜約10弱毒細菌、または約10〜約10弱毒細菌、または約10〜約10弱毒細菌、または約10〜約1011弱毒細菌、または約1011〜約1013弱毒細菌、または約1013〜約1015弱毒細菌、または約1015〜約1017弱毒細菌、または約1017〜約1019、または少なくとも約1019弱毒細菌を含有してもよい。
【0070】
1つの実施形態では、当該ワクチン組成物は、エアロゾルとして送達されてもよい。1立方メートルを処置するための用量は、少なくとも10〜約10弱毒細菌または約10〜約1010弱毒細菌、または約1010〜約1012、または約1012〜約1014弱毒細菌、または約1016〜約1018弱毒細菌、または約10〜約1020弱毒細菌、または少なくとも約1020弱毒細菌を含みうる。
【0071】
(投与方法)
本発明のワクチン組成物は、鼻腔内に、皮内に、排泄腔を介して、静脈内に、腹腔内に、皮下に、経口で、エアロゾルによって(噴霧型ワクチン接種)、飲料水の中に、餌の中にまたは筋肉内に投与されてもよい。家禽への施用のためには、エアロゾルによる投与および点眼剤による投与が好ましい。
【0072】
噴霧型ワクチン接種は特に好ましい。なぜなら、この方法は、単に、ワクチン接種を受けるべき対象の存在下で当該ワクチン組成物のエアロゾルを噴霧または生成することによって、非常に多くの対象のワクチン接種を可能にするからである。ワクチン組成物を噴霧するとそのワクチン組成物(生きた弱毒細菌)のエアロゾルが生成され、このエアロゾルが動物によって吸入されると、当該生きた弱毒ウイルスはその動物へと送達され、気道を侵し、呼吸器疾患に似た症状を呈する。多大な時間を要する動物の個々の取り扱いが必要ではないので、このワクチン接種方法は特に効率的である。
【0073】
これより本発明は、以下の具体例を参照してより詳細にさらに説明される。それらの具体例は、範囲を何ら限定するものではないと解釈されるべきである。
【実施例】
【0074】
(実施例1:M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)変異体ライブラリーの作成および同定)
シグナチャータグ化変異誘発法(Signature−tagged mutagenesis、STM)を使用して、M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)変異体ライブラリーを生成し同定した。STM戦略を図1に示す。ユニークなDNAタグが、病原体を形質転換するために使用されるトランスポゾンの中へと組み込まれ、このゲノムの中でのシグナチャータグのランダム挿入が生じる。場合によっては、このシグナチャータグ(図1A)は遺伝子の中へと組み込まれてその遺伝子を不活性化し、挿入変異をもたらす。次いで負の選択プロセスが使用され、適切な動物モデルの中でST変異体のプールがスクリーニングされる。入力側のプールおよび動物から回収されるST変異体は、個々のタグのPCR増幅、次いでハイブリダイゼーションを使用して比較される。この技術は、入力側(選択前)のプールの中に存在するが、動物対象の中での継代後に回収されるプールからは見つからない個々の変異体を同定する(図1B)。これらの見つからない変異体は、その対象の中でのコロニー形成および成長に関与する遺伝子の中に変異を含む可能性が最も高く、それゆえこれらの遺伝子は病原性に関連する決定因子をコードする可能性が高い。
【0075】
(物質および方法)
菌種および培養条件
M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)(Mg) Ap3ASは、もともと、オーストラリアでブロイラーの気嚢から単離されたものであり、非常に病原性が高い。これを、10%ブタ血清を含有する改変Frey培地(MB)の中で、後期対数増殖期(pH およそ6.8)まで、37℃で成長させた。
【0076】
シグナチャータグ化トランスポゾン
トランスポゾンTn4001modを保有するプラスミドpISM 2062.2を使用してST変異体ライブラリーを調製した。このトランスポゾンTn4001modは、ゲンタマイシン耐性遺伝子を含有していた。各シグナチャータグは、ユニークな40bpのオリゴヌクレオチドDNA配列([NK]20;N=A、C、GまたはT;K=GまたはT)と、これに隣接する20bpの2つの不変アームからなっていた。この不変アームは、プライマー対P2/P4またはP3/P5を使用するPCRによってこのユニークな領域の増幅および標識を可能にする。このシグナチャータグをpISM 2062.2のKpnI制限酵素部位へとクローン化した(図1A)。個々のシグナチャータグの配列を表1に列挙する。
【0077】
【表1】

【0078】
(シグナチャータグ化変異誘発法)
シグナチャータグによる形質転換
Mg Ap3ASの希釈物を、1.5mlのMBの中で一晩、37℃で成長させた。色の変化を示した希釈物を合わせ、室温で、16,000gで5分間の遠心分離によってその細胞をペレット化した。この細胞を、200μlの冷やしたHEPES−スクロース緩衝液(8mM HEPES、272mMスクロース(pH 7.4))の中で再懸濁させた。この細胞を、室温で、16,000gで5分間の遠心分離によってペレット化し、冷やしたHEPES−スクロース緩衝液でさらに2回洗浄し、次いで最後に4℃に冷やした400μlのHEPES−スクロース緩衝液の中で再懸濁させた。
【0079】
100μlのアリコートの細胞を氷の上に置き、10μgのプラスミドDNAを加えた。次いでこの細胞−プラスミドDNA混合物を、氷上の冷やした0.2cmギャップのキュベット(Bio−Rad)に移し、2.5kV、100Ω抵抗および25μFキャパシタンスの設定値でGene Pulser(商標) (Bio−Rad)を使用して直ちに電気穿孔した。次いで、電気穿孔した細胞を1mlの冷(4℃の)MBの中に穏やかに再懸濁させ、室温で10分間インキュベーションし、次いで、色の変化があるかどうかに応じて37℃で2〜3時間インキュベーションした。電気穿孔した培養液の500μlの試料を、ゆっくりと傾けることにより、160μg/mlでゲンタマイシンを含有するMAプレート上に広げ、過剰分を、パスツールピペットを使用して取り除いた。次いでこのプレートを乾燥し、気密の広口瓶の中で、37℃で7〜10日間インキュベーションした。
【0080】
ST変異体の確認
プレート上で成長するMgコロニーを、パスツールピペットを使用して選択し、ゲンタマイシン(160μg/ml)を含有する1mlのMBの中に置き、培地が色の変化を示すまでこの培養液をインキュベーションした。200μlの体積の培養液からの細胞を、微量遠心管の中で16,000gで5分間、室温で遠心分離することによりペレット化し、そのペレットを、もとの体積の10分の1の蒸留水の中に再懸濁させた。次いでこの細胞を100℃で5分間加熱し、ここからの2μlをPCRのための鋳型として使用した。STトランスポゾンの存在を確認するために、オリゴヌクレオチドプライマーP2およびP4(表2)を使用して、ユニークな配列を含有する不変アーム内の領域を増幅させた(図3)。このPCRを20μlの反応液量の中で行った。これは2μlの10×反応緩衝液、1μMの各プライマー、200μMの各dNTP、1.5mM MgCl 1.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Promega)および2μlの鋳型DNAを含んでいた。この反応を、98℃で2分間の1サイクル、次いで、94℃で30秒間、50℃で30秒間および72℃で40秒間の35サイクル、および最終の72℃で7分間のインキュベーションを用いて、サーモサイクラー(Omnigene、Hybaid)の中で行った。PCR産物を、サイズ標品(HaeIIIで消化したpUC18)とともに2%アガロースゲルの中で電気泳動にかけた。
【0081】
【表2】

【表3】

【0082】
(トランスポゾン挿入点の決定)
ST変異体からのDNAの単離
各ST形質転換体を、160μgのゲンタマイシン/mlを補った40mlのMBの中で、37℃で、後期対数増殖期(pH およそ6.8)まで成長させた。20,000gで30分間の遠心分離によって細胞を回収し、冷やしたPBSの中で2回洗浄し、SDSを加えて細胞を溶解し、次いでゲノムDNAにせん断を加えるためにその溶液を26ゲージ針に通した。ゲノムDNA抽出を、HighPure PCRキット(Roche)を用いて、わずかの変更を加えて製造業者の手順書に従って行った。最初のリゾチーム処理を省き、200μlではなく50μlの体積の10mM Tris緩衝液(pH 8.0)の中でDNAをカラムから溶出させた。既知の濃度の分子量標品(HindIIIで消化したファージλ DNA)と一緒に0.7%アガロースゲルの中で1μlの試料を電気泳動にかけることにより、精製したDNAの量を推定した。
【0083】
ゲノムDNAの配列決定
ゲノムDNAの配列決定のための手順を、Wada(2000)から改変し変更した。Tn4001に結合するプライマーIGstmGenmeF3(表2)を、トランスポゾン−ゲノムDNA接合部にわたって、およびAp3AS ゲノムDNAへと配列決定するために使用した。この配列を、ABI PRISM Big Dye 3.1 Terminatorケミストリー(Applied Biosystems Incorporated)を使用して決定した。各反応液は、2〜3μgの精製したゲノムDNA、10μMのプライマーおよび4μlのBig Dye 3.1 酵素混合物からなっており、サイクルシークエンス法を、95℃で5分間の1サイクル、次いで95℃で30秒間、55℃で30秒間および60℃で4分間の60サイクルを使用してiCycler(商標) (Bio−Rad)の中で行った。次いで製造業者の推奨手順に従って生成物を清浄にし、次いでABI 3100キャピラリーシークエンサーおよび関連ソフトウェア(Applied Biosystems Incorporated)を使用して分析した。各STトランスポゾンについての挿入部位を、BLASTプログラム(National Center for Biotechnology Information、NCBI)またはFASTAバージョン 3.3t07(PearsonおよびLipman、1988)を使用して決定し、このDNA配列をM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)株RlowゲノムのDNA配列と比較した。
【0084】
(Mg ST変異体の検出)
37のシグナチャータグの各々に相補的なオリゴヌクレオチドを合成した。このオリゴヌクレオチドを、TE緩衝液の中に100μMの濃度まで再懸濁させた。10μlの体積の、各オリゴヌクレオチドの溶液(3ピコモルを含有する)を、Bio−Dot SF(登録商標) Microfiltration Apparatus(Bio−Rad)を製造業者の取扱説明書に従って使用してHybond−N+ナイロン膜(Amersham Pharmacia Biotech)上にスポッティングし、次いでこのオリゴヌクレオチドを3分間のUV架橋によってその膜に固定した。各シグナチャータグに対応するDNAプローブを、オリゴヌクレオチドプライマーP2およびP4をジゴキシゲニン(DIG)(Roche)で、市販品を用いて標識したことを除いて、上記のPCR反応を使用して合成した。DIG標識したプローブを、振盪する水浴の中で、DIG Easy Hyb緩衝液(Roche)の中、40℃で16〜18時間、膜にハイブリダイズさせ、次いでその膜を、第2の洗浄を45℃で行ったことを除いて製造業者の取扱説明書に従って洗浄した。結合したプローブを、DIG Luminescent Detection Kit(Roche)を使用して検出し、検出を、Biomaxフィルム(Kodak)を使用して記録した。PCRも行い、ゲンタマイシン耐性遺伝子の存在およびマイコプラズマ形質転換体の種を確認した。1.5mMのMgCl、200μMの各dNTPおよび1μMの各プライマーを含有する25μl反応混合物の中で1.5U Taq DNAポリメラーゼを使用して、各PCR反応を行った。Mg 16S rRNA遺伝子の1つの領域を、95℃で5分間、次いで95℃で10秒間、58℃で10秒間および72℃で25秒間の35サイクルを通したインキュベーションによって増幅した。予想される生成物はサイズが219bpであった。ゲンタマイシン耐性遺伝子の断片を、95℃で2分間、次いで95℃で30秒間、60℃で30秒間および72℃で15秒間の28サイクルを通してのインキュベーションによって、そして72℃で5分間の最終のインキュベーションによって増幅した。生成物の予想されるサイズは278bpであった。
【0085】
DIG検出システムを使用するシグナチャータグ間のクロスハイブリダイゼーション
DIG標識したシグナチャータグのプールを、上記のとおりの37のシグナチャー−タグオリゴヌクレオチドを含有する単一膜にハイブリダイズさせた。DIG標識したタグは、このタグとプローブとの間のクロスハイブリダイゼーションがない限り、対応するユニークなオリゴヌクレオチドにのみ結合すると予想されるであろう。例えば、標識したタグ02、03および04を含有するプールはドットブロット上のオリゴヌクレオチドタグ02、03 04にのみ結合すると予想され、いずれの他の陽性反応も交差反応とみなされるはずである。クロスハイブリダイゼーション反応は、標識したシグナチャータグの13の異なるプールを使用して評価した。
【0086】
(予備的な動物実験)
ST変異体の生細胞数の算出
1mlあたりの色変化の単位(CCU/ml)として測定した各ST変異体培養液の生菌数を、以下の手順を使用して決定した。滅菌した96穴マイクロタイタープレート(Nunculon、Nunc)の各ウェルに、ゲンタマイシン(160μg/ml)を含有する225μlの滅菌したMBを加えた。8ウェルの第1の列に、25μlの変異体培養液を各ウェルに加え、ピペット操作により数回混合し、そして各ウェルからの25μlを次の列に移し、新しい組のチップを使用して混合した。この一連の連続10倍希釈を列10まで繰り返し、この列10から25μlを捨てた。列11および12を陰性対照として使用した。次いでこのプレートをLinbro(登録商標) プレートシール(ICN Biochemicals)で密封し、37℃で最高2週間、インキュベーションした。培地のpHの大きな低下は培養液の成長を反映し、これは培地の中のフェノールレッド指示薬の赤色から黄色への色の変化によって示される。列1を1/10希釈物とみなし、この培養液の最初の希釈についての補正の後に、CCU/mlの数字を、最確数表を使用して算出した。ニワトリの接種のために必要とされる各形質転換体の用量は1×10CCU/mlであった。
【0087】
実験計画
16羽の4週齢の特定病原体不在(SPF)の白色レグホン(White Leghorn)種のニワトリを、陽圧のファイバーグラスの隔離飼育器の中で収容した。10のST変異体の一連の希釈物を、160μg/mlのゲンタマイシンを含有するMBの中で、マイクロタイタープレートで一晩成長させた(表3)。各クローンの成長を翌日に評価し、対数期にあると見積もった希釈物から採取した100μlをプールに加えた。次いでプールしたST変異体をさらに10倍MBの中で希釈し、この希釈したプールを接種材料として使用した。16羽のニワトリのうちの12羽を、エアロゾルとしての投与によってこのプールしたST変異体に感染させた。残りの4羽のトリは接触感染対照としての役割を果たし、エアロゾル感染の3日後に隔離飼育器に入れた。エアロゾルに感染したトリのうちの6羽を、感染から14日後に安楽死させて試料とし、残り(すべての接触感染のトリを含む)を、感染から28日後に安楽死させて試料とした。
【0088】
【表4】

【0089】
試料の採取および分析
エアロゾル感染前および安楽死前にすべてのトリから血液試料を採取し、室温で3時間放置して凝固させた。次いで試料を室温で10,000gで5分間遠心分離することにより血清を回収し、次いでM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)に対する抗体反応を判定するためのRSA試験を使用して試験した。このRSA試験は、25μlの未希釈の血清および25μlの染色した市販のMg RSA抗原(Intervet International)をガラスプレート上で混合し、1分間揺り動かすことにより、行った。試験は、0(塊の生成なし)〜4(抗原の大きい塊)の段階を使用して採点した。各試験は、対照として陰性血清および陽性血清の両方を含んでいた。ニワトリを二酸化炭素吸入によって安楽死させた。肉眼的気嚢病変を調べ、重症度について以下のとおりの0〜3の段階で採点した:
0=病変なし、気嚢は薄い透明な膜
1=気嚢に付着した乾酪性フィブリンの小さい斑点
2=気嚢は濁ったように見え、かつ厚化し、中程度の量の乾酪性フィブリンが気嚢に付着している
3=厚化した気嚢、および厚い乾酪性フィブリンで覆われた表面。
【0090】
これらの定義の間に位置する病変については半スコアを与えた。左右の前胸気嚢、左右の後胸気嚢および左右の腹気嚢についてスコアを記録した。6つのスコアの合計を、各々個々のトリについての最終スコアとして使用した。拭き取り検体を各トリの気嚢、気管、肺、脾臓、肝臓、腎臓および脳から採取した。この拭き取り検体を使用して、160μgゲンタマイシン/mlを含有するMAプレートおよびゲンタマイシンを含まないMAプレートに接種し、次いで160μg/mlのゲンタマイシンを補った3mlのMBの中へと入れた。MAプレートを、37℃でインキュベーションし、7〜10日後に双眼実体顕微鏡(binocular dissecting microscope)を使用して調べた。これまでの研究では、接種から14日後のインビボ実験の間に、いくつかの変異体からのTn4001トランスポゾンの喪失を検出した。これらの変異体は野生型の表現型を取り戻したが、ゲンタマイシンの選択圧の下では生存することができなかった。ゲンタマイシンを含有しないプレート上のコロニーの数がゲンタマイシンを含有するプレート上のコロニーの数の10倍以上であるとき、トランスポゾンの喪失が疑われた。MB培養液を37℃でインキュベーションし、色の変化を示したブロスからDNAを抽出し、このDNAを上記のとおりのPCRにおける鋳型として使用し、P2/P4プライマー対を使用してユニークなタグ領域を増幅した。
【0091】
(結果)
ST変異体の確認
P2/P4プライマー対を使用してシグナチャータグから生成されたPCR産物の予想したサイズは、タグ25からのサイズ(これは67bpであった)を除いて、79〜81bpの間であった。シグナチャータグを含有する各プラスミドをMg株Ap3ASに導入し、形質転換体を無作為に選択し、ゲンタマイシンを補った培地の中で成長させた。成長を示したすべてのMB培養液をPCRにかけ、ユニークなシグナチャータグを含有するST変異体(図2)の存在を検出した。ST変異体ライブラリーを、各シグナチャータグから生成した少なくとも9の形質転換体を用いて確立し、さらなる実験のために使用した。
【0092】
トランスポゾン挿入部位の決定
この章に記載する研究で使用した10のMg STクローンの各々についてのトランスポゾン挿入部位を、ゲノムDNAを直接配列決定することによって決定した(表3)。このトランスポゾンは、5つのST変異体において、ユニークな仮想タンパク質または保存された仮想タンパク質のいずれかをコードする領域に挿入した。
【0093】
(ST変異体の最適化された検出)
シグナチャータグ間のクロスハイブリダイゼーション
ほとんどのタグは特異的であり、わずかにいくつかだけが他のタグに相補的なオリゴヌクレオチドとクロスハイブリダイゼーションした。タグ02と37との間の強い交差反応があった(プールA、E、GおよびHにおいて)。いくつかのクロスハイブリダイゼーションもタグ15と30との間で検出した(プールD、IおよびJにおいて)が、プールBに関してはクロスハイブリダイゼーションを検出しなかった。タグ13(これがプールの中にあるとき)とタグ28との間で一方向性のハイブリダイゼーションがあった。これは、タグ29と23(プールDおよびH)、およびタグ29と24(プールDおよびH)に関しても、見られた。
【0094】
(ST変異体によるニワトリの感染の予備的な評価)
気嚢の血清学的試験および肉眼的検査
抗M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)抗体応答を、感染の前後でRSA(表4)によって測定した。感染前には、トリではM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)特異的抗体を検出しなかった。エアロゾルによって感染したニワトリのうちで、3分の2が、感染後2週間の時に1より大きいRSAスコアを有しており、そしてすべてが感染後4週間までに陽性となり、RSAスコアは1〜4の間であった。接触感染対照のうちのただ1羽のみが1のRSAスコアを有していた。軽度の気嚢病変(0.5のスコア)は感染後2週間の時に2/6のトリで見られ、感染後4週間の時に3/6のニワトリで見られ、一方で、1羽のトリは腹部気嚢に重篤な病変を有していた(2.5のスコア)。接触感染対照のうちのただ1羽のみが軽度の病変(0.5のスコア)を有していた。詳細な結果を表4に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
回収したST変異体の復帰変異および同定
MAプレートを、ゲンタマイシンの存在下および不存在下でのM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)の成長について調べた。インビボ継代後の、ST変異体からのトランスポゾンの喪失の証拠はなかった。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、接種から2週間後では1羽のトリの気嚢および2羽のトリの気管の拭き取り検体を接種したMAプレート上で、および感染後4週間では4羽のニワトリの気管の拭き取り検体を接種したMAプレート上で上でのみ単離した。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)を、感染から14日後に1羽のトリの心臓から採取した拭き取り検体からも単離した。接触感染対照のどの器官の拭き取り検体からも、M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)を単離しなかった(表4)。感染後2週間に採取した気嚢の拭き取り検体の1つのブロス培養液および気管の4つのブロス培養液は色の変化を示し、10のユニークなタグのうちの3つを、これらの試料からDIGハイブリダイゼーションによって検出した。色の変化を示したブロス培養液は、感染から28日の2羽のトリの気嚢の拭き取り検体および3羽のトリの気管の拭き取り検体から、ならびに5羽のトリの肺、4羽のトリの心臓、2羽のトリの肝臓、3羽のトリの腎臓、4羽のトリの脾臓および1羽のトリの脳を含めた他の器官の拭き取り検体からも得られた。色の変化を示したブロス培養液は、接触感染のトリのうちの1羽の気管、2羽の腎臓および2羽の脳の拭き取り検体からも得られた。しかしながら、21日間のインキュベーション後の色の変化を示した培養液の中のゲンタマイシン耐性遺伝子およびMg 16S rRNA遺伝子の存在を検出するために行ったPCRはすべて陰性であった。これは、これらの培養液の中で観察した色の変化はM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)の成長から生じたものではないということを示唆した。タグ02、32、35および37を保有する変異体は、トリの気嚢、気管から、および1羽のトリの脳から忠実に回収され、最も一般的に検出したタグはタグ32および37であった(表4)。いくつかのブロス培養液はインキュベーション後7日以内に色の変化を示したが、タグはDIGハイブリダイゼーションによって検出することができなかった(データは示さず)。
【0097】
(実施例2:M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)ST変異体のインビボ分析)
(緒言)
STM技術は2つの主要な工程からなる:インビトロでのタグ化変異体ライブラリーの作成、次いで動物におけるインビボでの負の選択。上記の実施例1に記載した改変ハイブリダイゼーション検出システムを使用すると、入力側のプールは互いにクロスハイブリダイゼーションしないタグに由来する変異体のみを含有し、また検出のための明瞭なシグナルを与えた。実施例1のST変異体ライブラリーは、37の異なるタグ化トランスポゾンを使用して生成した。この実施例は、感染したニワトリにおける負の選択を使用して、病原性に関与するかまたはインビボでの生存のために必要とされる遺伝子を同定するための34の異なるタグを含有する102のST変異体のスクリーニングを記載する。
【0098】
(物質および方法)
ST変異体の中の挿入部位の決定
各ST変異体由来のゲノムDNAを、特異的プライマー(表2)を使用する直接配列決定にかけた。配列データを得ることができなかったか、またトランスポゾンの末端の後に混合配列決定信号を生成したST変異体については、サザンブロッティングを使用してトランスポゾン挿入の数を決定した。次いで複数のトランスポゾン挿入を有するST変異体は、トランスポゾン挿入点を同定しようとするさらなる試みには含めなかった。サザンブロッティング用のプローブを、タグ領域を増幅するためのDIG標識したプライマー(P2およびP4)を使用して調製した(表2)。ST変異体のゲノムDNAを、20Uの制限エンドヌクレアーゼ BglII(New England Biolabs)を用いて、37℃で一晩消化し、得られた断片を2.5V/cmで0.7%アガロースゲルの中で一晩分離した。次いで、分離した断片をHybond N+ナイロン膜上に移し、DIG標識したプローブにハイブリダイズさせ、DIG Luminescent detection Kit(Roche)を製造業者の取扱説明書に従って使用してハイブリダイゼーションを検出し、ルミネセンスをBiomax Film(Kodak)上で記録した。
【0099】
(感染したトリにおけるST変異体のスクリーニング)
ST変異体の調製
3つの接種材料(グループA、BおよびC)の各々についての34のST変異体(この34のST変異体の各々が別個のタグを含有する)の各々の10倍希釈シリーズ(この3つの実験グループについて全部で102の変異体)を、ゲンタマイシン(160μg/ml)を補ったMBの中で、マイクロタイタープレートに作製し、37℃で一晩インキュベーションした(表5)。適切な色の変化をもたらした各変異体の希釈物を接種のために使用した。各変異体の適切な培養液の0.1ml試料を取り、他の変異体の培養液と混合して、プールした接種材料を作成した。次いでこのプールしたST変異体を、ニワトリのエアロゾル接種のためにすぐに使用した。
【0100】
【表6】

【0101】
(初期スクリーニング)
実験計画
全部で90羽の4週齢のSPFのニワトリを無作為に3つのグループに割り振り、これらの各々を、陽圧のファイバーグラスの隔離飼育器の中で別々に収容した(1グループあたり30羽のトリ)。各グループの20羽のトリを、ST変異体のプールを用いてエアロゾルによって接種し、残りの10羽のニワトリは、接触感染対照として働き、この10羽のニワトリは、エアロゾルへの曝露から3日後に、接種したトリと一緒に置いた。接触感染対照は、ST変異体の伝染の能力を検討するために使用した。感染から14日後に、10羽の接種したニワトリから血液試料を集め、そしてこれらのニワトリを安楽死させ、病変を調べた。この血液試料を、M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)に対する抗体について、後述するような、RSA試験を使用して試験した。すべてのトリを肉眼的気嚢病変について調べ、これらを、後述するような0〜3の段階で重症度について評価した。各トリの気嚢および気管の拭き取り検体を培養し、後述するようにマイコプラズマを回収した。色を変えた各ブロス培養液からDNAを抽出し、ユニークなタグ領域を増幅するためのPCRにおける鋳型として使用した。次いでPCR産物を、後述するように、存在するST変異体を同定するためのサザンブロットで使用した。MAプレートを、後述するように、10日間のインキュベーション後にチェックした。接種から28日後に同じ手順を使用して、残りのトリを安楽死させ、調べ、試料採取した。
【0102】
(確認的スクリーニング)
M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)ST変異体の調製
初期スクリーニング実験で再単離しなかったST変異体の希釈物を、160μgゲンタマイシン/mlを含有するMBの中で、37℃で一晩成長させた。適切な程度の色の変化を引き起こした各ST変異体の希釈物を接種のために使用した。各変異体の培養液の0.1ml試料を他の変異体の試料と混合し、次いでこのプールを、新しいプールした接種材料として使用するためにMB中で10倍希釈し、これを、エアロゾルによってニワトリに接種するために使用した。
【0103】
実験計画
この確認的実験は、最終的な試験のための候補ST変異体の数を絞るために行った。実験計画および方法は、図4に示す初期スクリーニング実験と同様であった。全部で40羽の4週齢のSPFのニワトリを2つのグループに割り振った。初期スクリーニング実験では接種したトリの中で検出できなかったST変異体を、2つの接種材料(この各々を、トリの2つのグループのうちの1つにエアロゾルによって接種するために使用した)のうちの1つに割り振った。接触感染対照は、この実験には含めなかった。しかしながら、すべての40羽のトリを同じ陽圧のファイバーグラスの隔離飼育器の中に入れたので、従って、各グループは他のグループに対する接触感染対照として使用することができた。これまでに記載したように同じ手順を使用して、接種から14日後に試料採取を行った。手短に言えば、接種前および安楽死の直前に血液試料を集めた。気嚢および気管由来の拭き取り検体を、マイコプラズマの単離のために、死体解剖で集めた。すべてのトリを、肉眼的気嚢病変について調べた。RSAアッセイを使用して血清を試験した。色を変えた各ブロス培養液からDNAを抽出し、ユニークなタグ領域を増幅するためのPCRにおける鋳型として使用し、このあとこのユニークなタグ領域をドットブロットハイブリダイゼーションアッセイにおけるプローブとして使用した。これまでに記載したように、37℃で10日間のインキュベーション後にMAプレートをチェックした。MAプレートからいくつかのコロニーを集め、ゲンタマイシンを補ったMB中、37℃で、色の変化が見られるまで培養した。DNAを抽出し、実施例1にこれまでに記載されたとおりに、Mg 16S rRNA遺伝子の219bpの断片を増幅することによりマイコプラズマの種を確認するためのPCRアッセイにおける鋳型として使用した(図4)。
【0104】
感染したトリから回収される特定のST変異体のPCR確認
配列決定結果(表2)に基づいて各ST変異体に特異的なPCRプライマーを設計した。それらを、接種したトリ由来の培養液の中でST変異体の各々を検出するために、プライマーIGstmGenmeF3とともにPCRアッセイで使用した。2μlの鋳型としての抽出したDNA、2μlの10×反応緩衝液、1μMの各プライマー、200μMの各dNTPおよび1.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Promega)を含有する20μlの体積でPCRを行った。PCRを、95℃で2分間の1サイクル、次いで94℃で45秒間、52℃で45秒間および72℃で1分間の35サイクル、および最終の2℃で7分間のインキュベーションを用いて、サーモサイクラー(Omnigene、Hybaid)の中で行った。
【0105】
(結果)
ST変異体における挿入点をマッピングすること
直接ゲノム配列決定技術を使用して、トランスポゾンの挿入部位を、91のST変異体において決定した。11の変異体については信頼できる配列データを得ることができなかった(表5)。ほとんどの場合、挿入部位はグループA、BおよびCでは同じであったが、唯一の例外はST変異体01−1、02−2、02−3、04−3、09−3および17−3であった。
【0106】
直接配列決定できなかったST変異体をサザンブロッティングにかけ、トランスポゾン挿入の数を決定した。配列決定クロマトグラフは、トランスポゾンに対応する最初の100bpのデータは、質は良好であるということ、しかしトランスポゾンおよびゲノム配列の接合部に到達した後は混合シグナルが得られるということを示した(図5A)。制限エンドヌクレアーゼBglIIがトランスポゾン配列内で切断することは予測していなかったので、プローブに結合されたバンドの数は、トランスポゾンが当該ST変異体のゲノム内に存在した回数を反映するはずである。複数のトランスポゾン挿入は、サザンブロッティングによってST変異体15−1、15−2、15−3、25−1、25−2、25−3、34−1、34−2、34−3、09−3および17−3で確認され、同じシグナチャータグを保有する変異体は、同一の挿入を有するようであった(表5および表6、図5B)。
【0107】
(初期スクリーニング実験)
病理学的および血清学的な知見
各実験グループからのRSA結果を表7に示す。いずれのトリ由来の血清においても、接種時には、抗マイコプラズマ抗体を検出しなかった。一般に、感染後2週間よりも4週間におけるほうがより多くの血清が陽性であり、どのグループにおいても接触感染のトリで抗体応答を検出しなかった。接種後4週間(グループA、BおよびCにおいてそれぞれ0、1および2)よりも、2週間(グループA、BおよびCにおいてそれぞれ2、2および4)におけるほうが、より多くのトリが気嚢病変を有していた。グループCで1羽のニワトリが接種後4週間で3.0の病変スコアを有していたことを除いて、より重篤な気嚢病変は、接種から2週間後(グループAにおいて0.5、グループBにおいて1.0〜2.0およびグループCにおいて0.5〜2.5のスコア)に観察された。より多くの気嚢病変がグループCで見出された。病変の重症度は、RSA結果とあまり相関しておらず、いくつかのトリは高いRSAスコアを有していたが検出可能な気嚢病変は有していなかった。
【0108】
【表7】

【0109】
【表8】

【0110】
回収できるST変異体の同定
接種から14日後および28日後にトリから採取したブロス培養液の結果を表7に要約する。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)の回収のパターンは、予備的な実験で見られたパターンと類似であり、気嚢よりも気管からより多く単離された。一般に、感染後4週間よりも2週間においてより多くの単離がなされた。グループBでは接触感染のトリからはST変異体は再単離されなかったが、グループAでは5つの異なるST変異体を接触感染のトリから再単離し、グループCでは接触感染のトリから2つの異なるST変異体を再単離した。タグ20を保有するST変異体は、気嚢から、および気管から回収される最も一般的なものであり、すべての3グループにおいて高い検出率を有していた。次に最も一般的に単離した変異体は、タグ28を保有する変異体であった。12の異なるタグによって表される16のST変異体は、再単離することができず、それらにはST変異体02−1(−2)、03−1(−2/−3)、04−1(−2)、04−3、06−1(−2/−3)、09−1(−2)、09−3、10−1(−2/−3)、15−1(−2/−3)、17−1(−2)、17−3、22−1(−2/−3)、23−1(−2/−3)、25−1(−2/−3)、33−1(−2/−3)および34−1(−2/−3)が含まれる。
【0111】
M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、いずれの接触感染のニワトリの気嚢または気管の拭き取り検体を用いて接種したMAプレート上でも単離されなかった。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、グループA、BおよびCにおいてそれぞれ3羽、1羽および5羽のトリの気嚢から、接種から2週間後に採取した拭き取り検体を用いて接種したMAプレート上で単離された。それらは、グループCでは5羽のニワトリの気管の拭き取り検体を用いて接種したMAプレート上でも単離されたが、グループAまたはBではいずれのトリからも単離されなかった。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、接種から4週間後に、グループA、BおよびCにおいてそれぞれ、4羽、2羽および6羽のトリの気嚢ならびに1羽、2羽および7羽のニワトリの気管から採取した拭き取り検体を用いて接種したMAプレート上で単離された。マイコプラズマが寒天培養液によって単離されたほとんどあらゆる場合には、それらはブロス培養液によっても単離された。トランスポゾンの喪失は、いずれのST変異体においても検出されなかった。
【0112】
(確認的スクリーニング実験)
初期スクリーニング実験で検出できなかった16のST変異体を2つのグループに分けた。トランスポゾン挿入部位に関する配列データおよびサザンブロッティングは、ST変異体04−1および04−2の中のトランスポゾンは同じ挿入部位を有するが04−3の挿入部位とは異なる挿入部位を有するということを示した。ST変異体09−1および09−2の中のトランスポゾン挿入部位は同一であるが、変異体09−3は複数の挿入を有していた。同じ状況は、ST変異体17−1、17−2および17−3においても見出された。これらの変異体のいずれも、初期スクリーニング実験では検出することができず、そのため、それらは、それらを見分けることができるように、2つの異なる接種材料の中へと入れた。グループ間で潜在的な伝染があり、これらの3つのシグナチャータグがドットブロットハイブリダイゼーションによって検出された場合は、PCRは、トリから再単離された変異体を同定するために使用することができた。
【0113】
病理学的および血清学的な評価
実験中にグループAの1羽のトリが死亡し、グループBの中の1羽が死亡した。グループAにおいて、重篤な気嚢病変(2.5のスコア)が1羽のトリで見られ、軽度の病変(0.5および1.0)が別の2羽のニワトリにおいて見られた。グループBでは1羽のトリが軽度の気嚢病変(1.0)を有していた。抗M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)抗体は、接種の前には検出されなかった.接種から2週間後に、グループAのニワトリの15/19がRSA陽性であったのに対し、グループBのトリの14/19が陽性であった。詳細な結果を表8に示す。
【0114】
【表9】

【0115】
ST変異体の再単離
M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、両方のグループにおいて、気嚢からよりも気管から採取した拭き取り検体を用いて接種したMAプレート上で、より一般に単離された。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、両方のグループにおいて、2羽のトリの気嚢の拭き取り検体を用いて接種したMAプレート上で単離され、そしてグループBのニワトリの18/19の拭き取り検体から接種したMAプレート上で単離された。
【0116】
5つのST変異体をグループAの3羽のニワトリの気嚢から回収し、3つのST変異体をグループBの1羽のトリの気嚢から回収した。気嚢から採取した拭き取り検体よりも、気管から採取した拭き取り検体を用いて接種したMBにおいてより多くのST変異体を回収した。全部で11のST変異体を、グループAのニワトリから再単離し、グループBの18羽のトリから10のST変異体を再単離した。
【0117】
再単離した最も一般的な変異体は、タグ23を保有する変異体であった。この変異体は、17羽のトリの気管から、および2羽のニワトリの気嚢から単離された。2番目に最も一般的に単離された変異体は17−2であり、これらを12羽のトリの気管から単離した(表8)。グループAのトリを接種するために使用したST変異体02−2、03−1 10−1および15−1は、グループBから再単離されたのに対し、グループBのトリを接種するために使用したST変異体04−3、23−1 25−1および34−1は、グループAから再単離された(表8)。ST変異体04−1および33−1は、いずれのグループのいずれのトリからも再単離することはできなかった(表8)。いずれのST変異体においてもトランスポゾンの喪失は検出されなかった。
【0118】
(実施例3:M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)の選択されたST変異体の感染力および病原性)
(ST変異体の調製)
初期スクリーニング実験でも確認的スクリーニング実験でも検出されたことがない2つのST変異体、04−1および33−1、ならびにまれに検出された5つ(ST変異体03、18、20、22および26)を、160μg/mlのゲンタマイシンを補ったMB中、37℃で後期対数増殖期まで培養した。野生型Ap3ASを、ゲンタマイシンを含有しないMBの中、37℃で培養した。各株の濃度を、上記の方法を使用して、およそ1×10CCU/mlに調整した。
【0119】
(病原性および感染力分析)
実験計画
8つのグループの4週齢のSPFのニワトリを、陽圧のファイバーグラスの隔離飼育器の中に別々に収容した(1グループあたり20羽のトリ)。6つのグループの各々を、異なるST変異体を用いてエアロゾルへの曝露によって接種した。陰性対照のトリをMBに曝露し、陽性対照のトリを野生型Ap3ASに曝露した。これらのトリを感染から14日目に安楽死させ、上記のとおりに死体解剖検査を行った。血清および拭き取り検体を各トリから集め、MAプレート上に接種し次いでゲンタマイシンを含まないMBの中に入れた、Ap3AS感染グループから採取した拭き取り検体を例外として、抗マイコプラズマ抗体について検出およびマイコプラズマ単離を上記のとおりに行った。色の変化を示した各ブロス培養液からDNAを単離して、これを、P2/P4プライマー対(表2)を使用してユニークなタグ領域を増幅するためのPCRにおいて鋳型として使用した。PCR産物を、これまでに上で記載されたとおり、特異的タグの存在を検出するためのドットブロットハイブリダイゼーションにおけるプローブとして使用した。また、接種したトリの中のST変異体(表2)を同定するための付加的なツールとしてIGstmGenmeF3プライマーおよび各ST変異体に特異的なプライマーを使用してPCRを行った。気管の上部、中央部および下部を各トリから採取し、組織病理学的に調べ、粘膜の厚さを測定した。
【0120】
再単離したST変異体の検出
ドットブロットハイブリダイゼーションおよびPCR増幅を使用して、ブロス培養液の中の各ST変異体を検出した。野生型Ap3ASはシグナチャータグを含有しないため、ドットブロットハイブリダイゼーションは、陽性対照グループからの培養液については使用することができなかった。ドットブロットハイブリダイゼーション技術は、上で詳述されている。手短に言えば、色の変化を示した培養液から抽出されたDNAの中のタグ領域は、DIG標識したプライマーセットを使用して増幅された。この実験で使用した変異体を同定する7つのシグナチャータグに対応するオリゴヌクレオチドをナイロン膜上にスポッティングし、その後、ハイブリダイゼーションで使用した。DIG Luminescent Detection Kit(Roche)を製造業者の取扱説明書に従って使用して、ハイブリダイゼーションを検出した。各変異体についての配列決定データを使用して、各ST変異体に特異的なPCRプライマーを設計した。野生型株Ap3ASの再単離を確認するために使用したプライマー対(STM13−KE−C’−1−RevおよびSTM13−KF−C’)は、ST変異体13−1、13−2および13−3を配列決定したときに同定された領域を標的にしていた(表2)。
【0121】
2μlの抽出したDNAを鋳型として使用して、2μlの10×反応緩衝液、1μMの各プライマー、200μMの各dNTPおよび1.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Promega)を含有する20μlの反応液の中でPCR反応を行った。PCRを、95℃で2分間インキュベーションし、次いで94℃で45秒間、52℃で45秒間および72℃で1分間の35サイクルでインキュベーションし、そして72℃で7分間最終のインキュベーションを行った。
【0122】
(組織学的検討)
気管切片の調製
上部、中央部および下部の気管の試料を集め、固定のために、10%の中性に緩衝化したホルマリン(1リットルあたり10% ホルマリン、4g NaHPOおよび6.5g NaHPO)に少なくとも24時間浸漬した。次いで組織をパラフィンワックスの中へと処理し、次いで真空包埋した。厚さ2μmの切片を切り出し、ガラススライドの上に採取した。脱ろうおよび再水和の後、この切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、病変についておよび粘膜の厚さの測定について光学顕微鏡法によって調べた。
【0123】
気管病変の検討および粘膜の厚さの測定
気管の上部、中央部および下部の切片における組織学的な病変を、重症度について以下のとおりの0〜3の段階で採点した:
0=目立った変化なし;
0.5=リンパ球の非常に小さい凝集体(2未満の病巣)または非常にわずかの、散在性のリンパ球浸潤;
1=リンパ球の小さい凝集体(2よりも多い病巣)またはリンパ球の散在性の浸潤によって引き起こされる粘膜のわずかの肥厚;
2=偽好酸球およびリンパ球浸潤に起因する粘膜の中程度の肥厚、ならびに管腔の滲出に伴う、または管腔の滲出が伴わない上皮の変性に付随して起こる浮腫;
3=偽好酸球およびリンパ球の浸潤によって引き起こされるかなりの肥厚、ならびに扁平上皮化生または上皮の変性および管腔の滲出を伴う浮腫。
【0124】
各トリの気管の粘膜の厚さを、各トリ由来の上部、中央部および下部の気管からの各切片上の6つの点で厚さを測定することにより決定した。次いでマイクロメートル単位での平均の厚さを、この3つの領域の各々について算出した。
【0125】
統計解析
マンホイットニーのU検定(Mann−Whitney U test)(Windows(登録商標)用Minitab バージョン14.2)を使用して、各実験グループについての中央値組織学的気管病変スコアを比較した。スチューデントのt−検定(Student’s t−test)および一元配置分散分析(ANOVA)を使用して、平均の気管粘膜の厚さを比較した。確率(P値)≦0.05を、有意であるとみなした。
【0126】
(SDS−PAGE電気泳動)
ST変異体の各々ならびにAp3ASおよびts−11株の対数増殖期中期(mid−log phase)の培養液1mlの試料の中の細胞を、16,000gで5分間の遠心分離によって集め、次いで1×SDS−PAGE溶解緩衝液に再懸濁させ、100℃で5分間インキュベーションし、その後に氷の上で急速冷却した。全細胞タンパク質を、12.5%ポリアクリルアミドゲルの中で分子質量標品(Marker 12(商標) Wide Range Protein Standard、Novex)と一緒に分離し、次いでクーマシーブリリアントブルー(Coomassie brilliant blue)で染色した。
【0127】
(結果)
(ST変異体の病原性および感染力)
臨床徴候および死体解剖検査
気嚢病変は、ST変異体04−1(グループ2)、33−1(グループ3)または22−1(グループ8)のエアロゾルに曝露されたトリでは、または陰性対照のトリ(グループ1)では、見られなかった。軽度の病変(0.25のスコア)を、ST変異体03−1(グループ4)で接種した1羽のトリで観察した。ST変異体26−1(グループ5)に感染した20羽のトリのうちで、4羽は軽度の病変(0.50〜1.00)を有していたのに対して、ST変異体18−1(グループ6)に曝露された4羽のトリの腹部気嚢で病変を観察したのみであった。ST変異体20−1に感染したグループ(グループ7)において20羽のトリのうちの6羽が軽度〜重篤な病変(0.50〜2.50)を有していたのに対し、軽度〜重篤な病変(0.50〜3.00)が、病原性のAp3AS株(グループ9)に感染した18羽のトリのうち11羽で見られた。結果を表9に要約し、図6でグラフによって示す。
【0128】
【表10】

【0129】
ST変異体の抗体応答および再単離
感染の時に、抗マイコプラズマ抗体は、いずれの実験用のトリの血清においても、RSA試験を使用して検出されなかった。感染から2週間後に、抗体応答は、グループ2、3、5および8のトリのいずれにおいても検出されなかったが、一方で応答は、グループ4の中で1羽のトリだけで検出可能であった。対照的に、M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)に対する強いRSA反応は、グループ6および7のすべてのトリで検出可能であった。陰性対照トリ(グループ1)は、RSA試験においてMgに対する反応性を示さなかったが、一方ですべての陽性対照のトリ(グループ9)はMgに対して強いRSA反応を有していた(表9、図6)。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、グループ2(ST変異体04−1に感染)またはグループ3(ST変異体33−1に感染)のいずれのトリの気嚢または気管の拭き取り検体を用いて接種したMAプレート上では単離されなかった(表9)。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、グループ4(ST変異体03−1に感染)または8(ST変異体22−1に感染)のいずれのトリの気嚢の拭き取り検体を用いて接種したMAプレート上では単離されなかったが、それらは、グループ4の中の2羽のトリおよびグループ8の中の1羽のトリの気管から単離された。グループ5(ST変異体26−1に感染)では、M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は1羽のトリの気嚢および6羽のトリの気管から単離された。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、グループ6(ST変異体18−1に感染)の20羽のトリのうちの17羽およびグループ7(ST変異体20−1に感染)のすべてのトリの気管からも単離され、グループ6の20羽のトリのうちの5羽およびグループ7の20羽のトリのうちの7羽の気嚢の拭き取り検体からも単離された。陽性対照グループ(グループ9)では、M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、18羽のトリのうちの9羽の気嚢および18羽のトリのうちの17羽の気管から単離された。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、MAプレート上よりもMB中でインキュベーションした拭き取り検体からより高頻度で単離された。M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)は、ST変異体04−1(グループ2)に曝露されたいずれのトリの気嚢または気管の拭き取り検体で接種したMBの中では単離されなかった(表9)。他の変異体に感染したグループでは、Mgは、グループ5(ST変異体26−1)の1羽のトリ、グループ6(ST変異体18−1)の7羽のトリおよびグループ7(ST変異体20−1)の8羽のトリの気嚢の拭き取り検体で接種したMBにおいて回収された。Mgは、ST変異体に曝露されたグループの6羽のトリの気管から回収され、感染したトリの数は、グループ3(ST変異体33−1に感染)の2羽からグループ7(ST変異体20−1に感染)の20羽の範囲であった。回収されたM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)ST変異体の正体(identity)は、それらが保有するユニークなシグナチャータグを使用して確認した(表9)。
【0130】
気管病変および粘膜の厚さ
中央値気管病変スコア(median tracheal lesion score)を表10に示す。変異体に感染したグループすべてのトリのスコアは、陽性対照グループ(グループ9)のトリのスコアとは有意に異なっていた(P<0.0001)。陰性対照グループ(グループ1)とグループ5(ST変異体26−1に感染)または7(ST変異体20−1に感染)との間で有意差はなかった。ST変異体18−1(グループ6)に感染したトリの下部気管病変スコアは、グループ2、3、4、5および7のトリの下部気管病変スコアとは異なっていなかったが、グループ8(ST変異体22−1に感染)のトリおよび陰性対照グループ(グループ1)のトリの下部気管病変スコアとは有意に異なっており、その一方で陽性対照グループのトリの気管中央部における病変スコアだけが、他のグループのいずれのもののトリの病変スコアと異なっていた。平均の気管粘膜の厚さを表10に示す。気管中央部の平均の粘膜の厚さは、変異体に感染グループ(グループ2〜8)のいずれの間でも有意には異ならなかった。しかしながら、それらは、グループ2および7における平均の粘膜の厚さを除いて、陰性対照グループ(グループ1)の平均の粘膜の厚さよりも、すべて有意に大きく、しかもそれらは陽性対照グループ(グループ9)の平均の粘膜の厚さよりも有意に小さかった。上部および中央部の気管の粘膜の厚さにおいて陰性対照とグループ7(ST変異体20−1に感染)との間に有意差はなかったが、下部気管においては差があった(P=0.004)。
【0131】
要約すれば、陽性対照は、組織学的な病変スコアまたは粘膜の厚さによって評価したところ、ST変異体に感染したグループのいずれよりも、有意により重篤な気管病変を有していた。グループ4(ST変異体03−1に感染)は、ST変異体に感染したグループの中で、最も重篤に侵された。
【0132】
【表11】

【0133】
(実施例4:選択されたM.gallisepticum ST変異体を用いたワクチン接種によってもたらされる防御の評価)
(ST変異体ワクチンの調製)
ST変異体26−1を、160μgゲンタマイシン/mlを補ったMB中、37℃で成長させた。この培養液の中の生物の濃度を決定するために使用した方法は上記のとおりであった。ST変異体26−1の濃度は、ワクチン接種についておよそ1×10CCU/1滴(22.5μl)に調整し、次いで各トリに、この培養液の1滴によって眼内にワクチン接種した。
【0134】
(実験計画)
全部で80羽の5週齢のSPFのニワトリを無作為に4つのグループに割り当て、これらを陽圧のファイバーグラスの隔離飼育器の中に収容した。ST変異体26−1は、0日目に点眼剤によって投与した。野生型Ap3ASは、免疫化の2週間後にトリを抗原接種するために、エアロゾルによって投与した。グループ1のトリは、陰性対照としての役割を果たした。これらのトリは、0日目に点眼剤によってMBでワクチン接種を受け、14日目にエアロゾルによってMBで抗原接種された。グループ2のトリは、陽性対照としての役割を果たした。これらは、0日目に点眼剤によってMBでワクチン接種を受け、14日目にエアロゾルによって野生型Ap3ASで感染された。グループ3のトリは、ワクチン接種対照としての役割を果たした。これらのトリは、0日目に点眼剤によってST変異体26−1を投与された。次いでMBが、ワクチン接種から14日後に、エアロゾルによって与えられた。グループ4のトリは、ワクチン接種を受けかつ抗原接種したグループとしての役割を果たした。ニワトリは、0日目に点眼剤によってST変異体26−1で免疫化し、14日目にエアロゾルによって野生型Ap3ASで抗原接種した。
【0135】
実験用のニワトリからの試料採取
ワクチン接種、抗原接種および安楽死の前に、すべてのニワトリから血液試料を集めた。次いで血清を回収し、抗マイコプラズマ抗体レベルの濃度を測定するためにRSAによって試験した。免疫化の前、抗原接種時および死体解剖時に、各トリの体重も測定した。28日目(抗原接種から14日後)に、ニワトリを安楽死させ、死体解剖検査にかけ、M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)の培養のために試料を採取した。6つの気嚢を病変について目視により評価し、上記のとおり0〜3で採点した。拭き取り検体をトリの気嚢および気管から採取し、ゲンタマイシンを加えていないMA上に画線し、次いでM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)を単離するためにゲンタマイシンを含有しないMBの中へと移した。このMAプレートを37℃で10日間インキュベーションし、このMB培養液を、色の変化が観察されるまで37℃でインキュベーションした。色の変化を示したブロスからの生物を遠心分離によってペレット化し、ST変異体26−1および野生型Ap3AS(上記)を同定するためにPCR増幅にかけた。各トリの気管の上部、中央部および下部領域の試料を集め、10%の中性に緩衝化されたホルマリンの中で少なくとも24時間固定した。プロセシングおよび染色の後、光学顕微鏡法によって切片を調べた。病変を、上記のとおり、0〜3の段階で重症度について採点した。各気管領域について6つの異なる点で粘膜の厚さを測定し、次いで平均厚さを、これら3つの領域の各々について算出した。
【0136】
M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)の再単離
ST変異体26−1に特異的な一対のPCRプライマー(IGstmGenmeF3およびSTM26−Rev)およびP2/P4プライマーセット(これはユニークなタグ領域を増幅する)を使用して、ST変異体26−1の再単離を確認した。プライマー対STM26−genomeおよびSTM26−RevはST変異体26−1の中のトランスポゾン挿入部位のいずれかの側に結合し、これを野生型Ap3ASの再単離を確認するために使用した。このPCRは、ST変異体26−1をAp3AS親株から容易に識別することができた(表2)。2μlの10×反応緩衝液、1μMの各プライマー、200μMの各dNTPおよび1.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Promega)を含有する20μl反応液の中で、2μlの抽出したDNAを鋳型として用いて、PCRを行った。PCRを、95℃で2分間インキュベーションし、次いで94℃で45秒間、52℃で45秒間および72℃で1分間の35サイクルを通してインキュベーションし、72℃で7分間の最終のインキュベーションを行った。得られた産物を、DNA分子量マーカーと一緒に、2%アガロースゲルの中で分離した。
【0137】
統計解析
各グループについての平均体重増加百分率を、一元配置ANOVAおよびスチューデントのt−検定(Windows(登録商標)用Minitabs v14.2)を使用して、差について解析した。中央値気管病変スコアを、マンホイットニーのU検定を使用して比較した。上部、中央部および下部の気管の平均の粘膜の厚さを、スチューデントのt−検定および一元配置ANOVAを使用して比較した。P値≦0.05を有意であるとみなした。
【0138】
(結果)
(肉眼病変)
肉眼的気嚢病変は、陽性対照グループ(グループ2)のトリにおいてのみ見られた。このグループでは、5羽のトリが気嚢病変を有しており、全気嚢病変スコアは0.5〜2.5の範囲であった。結果を表10に要約し、図7にグラフによって示す。
【0139】
【表12】

【0140】
(M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)の血清学的試験および再単離)
ワクチン接種および抗原接種時にトリから採取した血清は、検出可能な抗マイコプラズマ抗体を含有していなかった。陰性対照グループ(グループ1)のニワトリで、死体解剖時にM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)に対する何らかの検出可能な血清抗体を有していたものはなかった。対照的に、他の3つのグループの大部分のトリは、死体解剖時にM.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)に対する検出可能な抗体を有していた。陽性対照グループ(グループ2)のすべてのトリは、M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)に対する中程度から強いRSA抗体応答を生成した。抗マイコプラズマ抗体を、グループ3からの20の血清試料のうちの16で検出し、RSAスコアは低い〜中程度の範囲であった。グループ4(ST変異体26−1でワクチン接種を受け、かつ野生型株に感染させた)のすべてのトリで、中程度の抗マイコプラズマ抗体価を検出した。結果を表10に要約する。グループ2、3および4においては、M.gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)を、気嚢の拭き取り検体からよりも気管の拭き取り検体からより高頻度で単離し、そしてグループ1(陰性対照)のトリの気嚢または気管からはまったく単離されなかった。グループ2(抗原接種しただけ)および3(ワクチン接種を受けただけ)の各々1羽のトリにおいて気嚢の拭き取り検体からMgコロニーは成長したのに対して、再単離は、それぞれ19羽および2羽のトリの気管から達成された。ワクチンとしてST変異体26−1が与えられ、次いで株Ap3ASに感染させたグループ4では、Mgは、1羽のトリの気嚢からの、および7羽のトリの気管からのMAプレート上で回収された(表10)。これまでの実験でのように、再単離率は、MAプレート上よりもMB中でのほうが高かった。PCR増幅から、グループ2および3から再単離した唯一のマイコプラズマは、そのグループに投与された株であったということが確認された。株特異的プライマー対を使用したPCR増幅後、グループ4から再単離した唯一のマイコプラズマは野生型Ap3ASであった。結果を表10に示す。
【0141】
(ニワトリの体重増加)
ワクチン接種後14日間にわたって、いずれのグループ間でも体重増加における有意差はなかった。4週目(抗原接種後14日)で、陽性対照のトリ(グループ2)は、グループ1(陰性対照)または3(ワクチン接種対照)のトリよりも低い平均体重増加を有していたが(それぞれP=0.006および0.027)、グループ4(ワクチン接種を受け、かつ抗原接種した)のトリよりは少なくはなかった(P=0.332)(表11)。抗原接種と死体解剖との間の期間(14日目〜28日目)では、グループ2(抗原接種しただけ)のニワトリの平均体重増加は、他のグループの各々のトリの平均体重増加よりも有意に低かった。グループ3(ワクチン接種を受け、抗原接種していない)のトリの平均体重増加は、陰性対照の平均体重増加以下であったが、グループ4(ワクチン接種を受けかつ抗原接種した)のトリの平均体重増加よりも有意に大きかった(P=0.016)。しかしながら、グループ4のトリの平均体重増加は、グループ1のトリの平均体重増加とは有意に異ならなかった(P=0.580)。結果を表11に示す。
【0142】
(気管病変および粘膜の厚さ)
中央値気管病変スコアを表12に示す。病変は、グループ2(抗原接種しただけ)のトリで重篤であった。グループ2(陽性対照)のトリの中央値気管病変スコアは、他の3つのグループにおける中央値気管病変スコアとは有意に異なっていた(P<0.0001)。他のグループのトリの病変スコアは、互いに有意に異ならなかった。グループ2(抗原接種しただけ)のトリの上部、中央部および下部の気管の平均の粘膜の厚さは、他の3つのグループのトリの平均の粘膜の厚さよりも有意に大きかったが(P<0.0001)、これらの他の3つのグループのトリにおける平均の粘膜の厚さの間に有意差はなかった(表12)。しかしながら、中央部および下部の気管において、平均の粘膜の厚さは、グループ1(P=0.028)または3(P=0.036)のトリにおけるよりもグループ4のトリにおいて小さかった。
【0143】
【表13】

【0144】
【表14】

【0145】
(実施例5:トリ病原性大腸菌(Pathogenic Escherichia coli)株E956(APEC E956)におけるdppDおよびoppDオリゴペプチドトランスポーター遺伝子のノックアウト変異体)
インビボ安全性研究から、dppDノックアウトまたは親E956と比べて、病変スコアおよびトリからの再単離率の両方に関して、oppDノックアウトの統計的に有意な弱毒化が示された。インビボ有効性研究から、APEC E956による抗原接種後の、oppDノックアウトのワクチン接種を受けたトリの統計的に有意な防御が示された。
【0146】
実施例1および実施例2は、細胞の中へのオリゴペプチドの輸送に関与する他の細菌性遺伝子に相同であるdppDおよびoppD遺伝子を含めたいくつかの弱毒化する遺伝子変異を説明する。
【0147】
すべての細菌種がほぼ同一の輸送系を持つので、他の鳥病原体および他の動物種の病原体に対する新しいワクチンは、dppDノックアウトを生成することにより開発することができるであろう。
【0148】
この実施例は、トリ病原性大腸菌株E956(APEC E956)におけるdppDおよびoppD遺伝子のノックアウトを説明する。各変異体を、抗原接種系を使用して安全性および有効性について試験した。
【0149】
(方法論)
E.coli(大腸菌)株、培地およびプラスミド
トリ病原性大腸菌株E956(APEC E956)は、もともとブロイラー飼育業者の農場で1日齢のヒナから単離され、抗生物質であるアンピシリン、スルファフラゾール、トリメトプリム、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、およびカナマイシンに感受性があるということが見出された。この生物を、特段の記載がない限り適切な抗生物質選択物(アンピシリン、50ug/ml;カナマイシン、100ug/ml)とともに、ルリア−ベルターニ培地(Luria−Bertani broth)(LB)中またはLB寒天上で、30℃または37℃で一晩繁殖させた。E.coli(大腸菌)DH5α株を、標準的なクローニングおよびプラスミド産生のために使用した。
【0150】
アンピシリン耐性遺伝子、それぞれGam、Bet、およびExoをコードする3つの「Red系」遺伝子γ、λ、およびexoを保有する温度に敏感なpKD46プラスミドを使用してノックアウト構築物と遺伝子ノックアウト標的との間の相同組み換えを促進するために、redリコンビナーゼ系を使用した。このノックアウト構築物は、PCRによって構築し、pGEM−Tベクター(Promega)にライゲーションした。各構築物を含有するプラスミドをPCRにおける鋳型として使用し、形質転換のための直鎖DNAを生成した。
【0151】
(遺伝子ノックアウト構築物の調製)
カナマイシン遺伝子を、オリゴヌクレオチドプライマーTXkanForおよびTYkanRev(表13)を使用してトランスポゾンTnphoAから増幅した。得られた1.064kbp PCR産物を、UltraClean PCR精製キット(MoBio、米国、カリフォルニア州)を製造業者の取扱説明書に従って使用して精製し、製造業者の手順書に従ってpGEM−Tベクター(Promega)にライゲーションした。このライゲーション混合物を使用して、2,500V、200Ω、250μFの設定値を有するGene Pulser(BioRad)および25μg/mlのカナマイシンを含有するLB寒天上で選択した組み換え体を使用する電気穿孔によってE.coli(大腸菌)DH5αを形質転換した。形質転換体を25μg/mlのカナマイシンを含有するLB培地の中で一晩成長させ、キット(Promega)を製造業者の取扱説明書に従って使用してプラスミドを抽出した。カナマイシン耐性遺伝子のクローニングを制限エンドヌクレアーゼ分析によって検証した。直鎖DNAを形質転換のために使用した:dppDノックアウトについては、GenBank Accession(受入番号) L08399のdppD遺伝子の中のそれぞれ領域4384〜4423bpおよび4829〜4868bpに相補的な40bpの5’領域を各々含有するプライマー対WEおよびWFを使用するPCRによってDNAを調製した。このWEおよびWFオリゴヌクレオチドプライマーは、当該カナマイシン遺伝子に相補的な20bpの3’領域を含有しており、PCRで使用されるとき、dppD DNAに相補的な40bp末端を有するカナマイシン遺伝子を増幅した。
【0152】
【表15】

【0153】
(遺伝子ノックアウトの生成)
APEC株E956を、2,500V、200Ω、250μFに設定したBio−Rad Gene Pulser(Bio−Rad)を使用する電気穿孔によって、pKD46を用いて形質転換した。30℃で一晩のインキュベーション後に、100μg/mlのアンピシリンを含有するルリア−ベルターニ寒天上で組み換え体を選択した。本発明者らは、公知の方法を使用する相同組み換えを通して遺伝子ノックアウトを生成した。APEC E956/pKD46の単一の新鮮なコロニーを、100μg/mlのアンピシリンを含有する5mlのLBの中に入れ、振盪しながら(200rpm)30℃で16時間インキュベーションした。翌日、一晩培養液の1:50希釈物を、100μg/mlのアンピシリンを含有する20mlのLBの量で作製し、この培養液を125mlの三角フラスコの中、30℃で振盪した(200rpm)。10細胞/mlの濃度で、L−アラビノース(Sigma)を、1mMの最終濃度になるように加えた。培養液を30℃でおよそ1時間誘導し、次いでこの細胞に42℃で15分間熱ショックを与え、そして直ちに氷水浴に10分間移し、次いで10,000×gで、4℃で10分間の遠心分離によって集めた。この細胞を、20%グリセロールを含有する1mlの氷冷した1mM MOPSの中に再懸濁させ、1.5ml遠心管に移し、卓上型微量遠心機の中で16,000×g、4℃で30秒間遠心分離した。上清を取り除き、細胞を、20%グリセロールを含有する1mlの1mM MOPSの中に再懸濁させ、上記のように遠心分離した。この工程をもう一回繰り返し、最後に細胞を、20%グリセロールを含有する100μlの1mM MOPSの中に再懸濁させた。次いでこの細胞を、予め冷却した電気穿孔キュベット(2mmギャップ、Bio−Rad)に加え、DpnIで消化したDNA 300ngを有する50μlの細胞を、上記の設定を使用して形質転換した。電気穿孔の直後に、0.3mlのLBの中での懸濁によって細胞を回収し、2.7mlのLBへと希釈し、振盪しながら37℃で1.5時間インキュベーションした。この培養液をLBの中で5倍に濃縮し、0.2mlを、20μg/mlのカナマイシンを含有するLBプレート上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。40ug/mlのカナマイシンを含有するLBの中で形質転換体を選択して成長させ、遺伝子ノックアウトをPCRおよびサザンブロッティングによって確認した。
【0154】
(dppDおよびoppD遺伝子ノックアウト株の確認)
dppDまたはoppDにおけるカナマイシン耐性遺伝子の挿入を検証するため、それぞれの遺伝子領域を増幅するためのdppD(TZIUA)およびoppD(WSIWT)についてのプライマー対を使用してPCRを行った。dppDおよびoppDについて、APEC E956親についてのPCR産物の予測されるサイズは、それぞれ0.89kbpおよび0.951kbpであろう。当該カナマイシン遺伝子(1.064kbp)の挿入に伴う予測されるサイズの増加は、dppDおよびoppDについてそれぞれ1.774kbpおよび1.924kbpであろう。
【0155】
(ゲノムDNA抽出およびサザンブロット)
APEC E956、ΔdppD、およびΔoppD株のゲノムDNAを、これまでに記載されたとおりに(Sambrookら、2001)フェノール/クロロホルムを使用して調製した。E.coli(大腸菌)株由来のゲノムDNAをPstIを用いて消化し、その断片を、分子量マーカーと一緒にアガロースゲル電気泳動によって分離した。アガロースゲル電気泳動の後、ゲノムDNA断片を、キャピラリートランスファーによってそのゲルからナイロン膜(Hybond−N、GE Healthcare)に移した。ランダムプライムドDNA標識キット(Roche)を使用してDNAプローブを[γ32P]dATPで標識した。プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションを、Church緩衝液(0.5M NaHPO[pH 7.4]、7% ドデシル硫酸ナトリウム、1mM EDTA、1% ウシ血清アルブミン BSA)(Church & Gilbert、1984)の中で54℃で一晩行った。膜を、2×SSC(1×SSCは、0.15M NaCIに0.015Mクエン酸ナトリウムを加えたものである)−0.1% ドデシル硫酸ナトリウムの中で2回(各々54℃で5分間)、次いで0.5×SSC、0.1% SDSの中で1回(65℃で15分間)洗浄し、Kodak BioMax MSフィルムを用いて−70℃でオートラジオグラフにかけた。
【0156】
(APEC E956 dppDおよびoppDノックアウトの安全性)
1日齢のヒナをAPEC E956、ΔdppD、およびΔoppD株に感染させ、未感染のものおよびAPEC E956に感染したものと比較して各変異体の病原性を評価した。全部で95羽の1日齢のヒナを購入し(SPAFAS、ウッドエンド
ビクトリア(Woodend Vic))、各々20羽のヒナの3つのグループおよび35羽の1つのグループに割り振った。これらのトリを陽圧の隔離飼育器の中に収容し、照射した市販の幼鳥用飼料(starter feed)を自由に取らせた。各グループの各々2羽のヒナから排泄腔の拭き取り検体を採取し、共生E.coli(大腸菌)を評価するために、マッコンキー(MacConkey)寒天培地上に画線した。カナマイシンを含まないE956と一緒に40ug/mlのカナマイシンを含むニュートリエントブロス(nutrient broth)中のE956 ΔdppD、ΔoppDの一晩培養液を、1E+10コロニー形成単位/ml(cfu/ml)の濃度を与えるように調製した。すべてのグループに、市販の伝染性気管支炎ウイルスワクチンVic S(Websters、オーストラリア)の通常の免疫用量の10倍を用いて、点眼剤によって接種した。20羽のヒナのグループ2および3は、各々、それぞれ1E+10cfu/mlのΔdppDおよびΔoppDを含有する20mlのエアロゾルを与えられ、一方で35羽のトリのグループ4は、20mlの1E+10cfu/mlのE956が与えられた。グループ1のヒナは処置されず、陰性対照としての役割を果たした。グループ2、3および4からのヒナを、さらに2回、3日齢および5日齢のときに同じAPEC株に曝露した。すべてのトリを、10日齢のときに死体解剖にかけた。肉眼所見によって疾患を評価し、気嚢病変を前述の基準に従って採点した。拭き取り検体を、左右の後気嚢および前気嚢、気管からおよび無菌で肝臓から採取した。これらの拭き取り検体を、カナマイシン(40ug/ml)を伴って、および伴わずにマッコンキー寒天培地の上に接種し、37℃で一晩インキュベーションした。翌日、プレートを、「レンガの赤色の」コロニー(典型的なE.coli(大腸菌)表現型)の存在について観察し、それらの数を数え記録した。コロニーの数が30未満である場合、E.coli(大腸菌)株を同定するためにPCRを行った。プライマー対を使用してAPEC株を同定した:dppDについてはWA/UA、oppDについてはWA/WT、E956については、pVM01上に存在するiucA遺伝子を増幅するSidfwdseq/bwd siderophore(表13)。共生E.coli(大腸菌)については16Sfwd/16Srevを用いて16s rDNAを増幅した。
【0157】
(APEC dppDおよびoppDノックアウトの有効性)
E.coli(大腸菌)ワクチン候補の有効性を評価するために、60羽の1日齢のトリを、各々20羽のトリの3つのグループに分割した。グループ2および3を、上記のように1日目にE956 ΔdppD、ΔoppDでエアロゾルでワクチン接種し、一方、グループ1は対照としてワクチン接種しないまま残し、上記のように隔離飼育器の中に別々に収容した。ワクチン接種後12日目に、すべてのグループを、上記のように1E+10cfu/mlのAPEC E956を含有する20mlのエアロゾルで別々に抗原接種し、それらの隔離飼育器に戻した。4日後、すべてのトリをハロタンの吸入によって安楽死させ、死体解剖にかけた。気嚢病変スコアを上記のように評価し、感染性の生物の再単離のために採取した拭き取り検体を、カナマイシン(40ug/ml)を含む、および含まないマッコンキー寒天培地で培養した。
【0158】
(結果の解析)
気嚢病変スコアの率および程度、生物の単離率およびトリの体重増加について統計解析を行った。使用した検定は、再単離率についてはフィッシャーの正確確率検定(Fisher’s Exact Test)、および病変スコアおよび体重変化についてはマンホイットニーのU検定であった。
【0159】
(結果)
APEC E956 ΔdppD、およびΔoppDの開発および検証
PCRによって生成される特定の遺伝子ノックアウトについての直鎖DNA構築物を使用して、APEC E956/pKD46を形質転換した。40μg/mlのカナマイシンを含有するLB寒天上で形質転換体を選択し、次いでクローンがカナマイシン遺伝子を保有しているかを確認するためにPCRを行った。オリゴヌクレオチドプライマー対TZ/UAを使用したE956 ΔdppDからの増幅産物のサイズは、E956親株(0.89kbp)と比べて、カナマイシンDNA(1.064kbp)の挿入に起因して1.774kbpであると予測された。図8Aおよび図9、パネルA、それぞれレーン2および1。同様に、オリゴヌクレオチドプライマー対WS/WTを使用するE956 ΔoppDについての増幅産物のサイズは、1.924kbpという予測されたサイズに近かったが、E956親株は0.951kbpの増幅産物を生成した。図8Bおよび図9、パネルB、それぞれレーン1および2。
【0160】
PstI制限酵素を用いてAPEC株E956、ΔdppDおよびΔoppDのゲノムDNAを消化した。当該カナマイシン耐性遺伝子は、遺伝子の中央部に1つのPstI部位を有するため、この酵素を選んだ。dppDおよびoppD放射標識プローブは、APEC E956、ΔdppDおよびΔoppD株においてバンドを検出した(図10)。dppDプローブはE956およびΔoppD株の同様のサイズの断片に結合したが(図10、レーン1および3)、わずかにより小さい分子量バンドおよび2kbpの別のバンドに結合した。oppDプローブは、E956およびΔdppD株の同様のサイズの断片に結合し(図10、レーン1および2)、ΔdppDでは9.8kbpおよび7kbpのバンドに結合した(図10、レーン3)。このカナマイシン遺伝子プローブは、E956には結合しなかったが、ΔdppDおよびΔoppD株においてdppDおよびoppDプローブが結合したものと同じバンドに結合した(図10、レーン1および2)。
【0161】
(E956 ΔdppDおよびΔoppD株を使用する病原性研究)
大腸菌症の徴候について死体解剖時にニワトリを調べ、6つの気嚢を病変について調べ、ワクチン、親生物または共生生物の再単離のために、各トリの左右の前気嚢、気管および肝臓から試料拭き取り検体を採取した。これらの拭き取り検体を、カナマイシンを加えてまたは加えずにマッコンキー寒天培地上にプレーティングした。これらの研究からの結果は以下で論じる。結果は表14、16および19に要約してあり、これらのグループの各々の間で行った統計比較は、表15、17、18、20および21に要約する。
【0162】
【表16】

【0163】
【表17】

【0164】
【表18】

【0165】
【表19】

【0166】
【表20】

【0167】
【表21】

【0168】
【表22】

【0169】
【表23】

【0170】
(トリの体重増加)
E956(143%)、ΔdppD(143%)およびワクチン接種を受けていないニワトリ(174%)の間の、病原性実験における体重増加の百分率の差は、ほとんど有意ではなく、一方で、ワクチン接種を受けていないトリの体重増加の百分率に対するΔoppD(155%)に関しては有意差は見られなかった(表14および15)。有効性実験では、抗原接種前または死体解剖時におけるいずれのトリのグループの体重増加の百分率においても統計的な有意差はなかった(表14および15)。
【0171】
(マッコンキー寒天培地上での生物の再単離率)
病原性実験において、対照およびΔoppDワクチン接種を受けたトリの気嚢または気管から再単離した生物の中央数の間に有意差はなかった(表16)。ワクチン接種を受けていないトリよりもE956またはΔdppDでワクチン接種を受けたトリからより多くの数の生物が単離された(表16)。有効性実験についての結果(表19)は、E956抗原接種したトリとΔoppDワクチン接種を受けたトリとの間で差を示さなかった。ΔdppDまたはΔoppDのいずれかでワクチン接種を受けたトリの中の気管 対 気嚢からなされた単離率に有意差はなかったが、気嚢と比べて、気管からの生物の単離の有意な増加が、E956を用いてワクチン接種を受けたトリに関して観察された(P<0.05)。
【0172】
(気嚢病変率)
死体解剖時の気嚢および器官の検討から、いくつかのトリにおいて大腸菌症の徴候が示され、肝周囲炎および心膜炎が観察された。病原性実験においては、気嚢の率および病変スコアにおいてΔdppDまたはΔoppDのいずれかでワクチン接種を受けたトリの間で統計的に有意な差はなく、ΔoppDとE956との間でより少ない病変が観察されたが、ΔdppDでワクチン接種を受けたトリとE956でワクチン接種を受けたトリとの間で統計学的差異はなかった(表16および18)。防御実験では、ΔoppDワクチン接種を受けかつE956で抗原接種したトリの病変率およびスコアの比較から、ΔoppDを用いた先立つワクチン接種からの統計的に有意な保護効果が示され、ワクチン接種を受けたグループについて0.0およびワクチン接種を受けずに抗原接種したグループについては1.25の中央値病変率が示された(表19および21)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのABCトランスポーター遺伝子の変異によって弱毒化された細菌であって、前記変異は、対応するABCトランスポータータンパク質を非機能的にし、前記弱毒細菌は対象の中で生き残ることができる、細菌。
【請求項2】
前記変異は、挿入、欠失、置換またはこれらのいずれかの組み合わせによって生成される、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
前記挿入変異は、相同組み換え、トランスポゾン変異または配列タグ変異誘発のいずれか1つまたはそれらのいずれかの組み合わせによってもたらされる、請求項2に記載の細菌。
【請求項4】
前記ABCトランスポーター遺伝子は、ABCペプチドトランスポータータンパク質をコードする、請求項1に記載の細菌。
【請求項5】
前記ABCペプチドトランスポーター遺伝子は、CvaB、CylB、SpaB、NisT、EpiT、ComA、PedD、LcnC、McbEF、OppDおよびDppD、およびこれらの相同体を含む群から選択される、請求項4に記載の細菌。
【請求項6】
前記ABCトランスポーター遺伝子はOppDである、請求項5に記載の細菌。
【請求項7】
前記細菌は、Avibacterium(アビバクテリウム)、Bacillus(バチルス)、Brucella(ブルセラ)、Bartonella(バルトネラ)、Bordetella(ボルデテラ)、Burkholderia(バークホルデリア)、Vibrio(ビブリオ)、Escherichia(大腸菌類、エシェリキア)、Salmonella(サルモネラ)、Clostridium(クロストリジウム)、Campylobacter(カンピロバクター)、Chalmydia(クラミジア)、Coxiella(コクシエラ)、Erysipelothrix(エリシペロスリクス)、Francisella(フランシセラ)、Listeria(リステリア)、Actinobacillus(アクチノバチルス)、Haemophilus(ヘモフィルス)、Helicobacter(ヘリコバクター)、Aeromonas(エロモナス)、Pseudomonas(シュードモナス)、Streptococcus(ストレプトコッカス、連鎖球菌)、Shigella(赤痢菌)、Yersinia(エルシニア)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycobacterium(マイコバクテリウム)、Mannheimia(マンヘミア)、Ornithobacterium(オルニソバクテリウム)、Rickettsia(リケッチア)、Ureaplasma(ウレアプラズマ)、およびPasteurella(パスツレラ)を含む群から選択される、請求項1に記載の細菌。
【請求項8】
前記細菌は、Avibacterium paragallinarum(アビバクテリウム・パラガリナルム)、Bordetella avium(ボルデテラ・アビウム)、Ornithobacterium rhinotracheale(オルニソバクテリウム・ライノトラキア)、Salmonella enteritidis(腸炎菌)、Pasteurella multocida(パスツレラ・マルトシダ)、Mannheimia haemolytica(マンヘミア・ヘモリチカ、ヘモリチカ菌)、E.coli(大腸菌)、Clostridium perfringens(クロストリジウム・パーフリンジェンス、ウェルシュ菌)、Mycoplasma agalactiae(マイコプラズマ・アガラクチアエ)、Mycoplasma alkalescens(マイコプラズマ・アルカレッセンス)、Mycoplasma anatis(マイコプラズマ・アナティス)、Mycoplasma anseris(マイコプラズマ・アンセリス)、Mycoplasma imitans(マイコプラズマ・イミタンス)、Mycoplasma arginini(マイコプラズマ・アルギニニ)、Ureaplasma parvum(ウレアプラズマ・パルハム)、Mycoplasma arthritidis(マイコプラズマ・アルスリチジス)、Mycoplasma bovigenitalium(マイコプラズマ・ボビゲニタリウム)、Mycoplasma bovirhinis(マイコプラズマ・ボビリニス)、Mycoplasma bovis(マイコプラズマ・ボビス)、Mycoplasma bovoculi(マイコプラズマ・ボーボクリ)、Mycoplasma californicum(マイコプラズマ・カリフォルニカム)、Mycoplasma capricolum(マイコプラズマ・カプリコルム)、Mycoplasma dispar(マイコプラズマ・ディスパー)、Mycoplasma felis(マイコプラズマ・フェリス)、Mycoplasma fermentans(マイコプラズマ・ファーメンタンス)、Mycoplasma genitalium(マイコプラズマ・ゲニタリウム)、Mycoplasma hominis(マイコプラズマ・ホミニス)、Mycoplasma hyopneumoniae(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ)、Mycoplasma hyorhinis(マイコプラズマ・ハイオリニス)、Mycoplasma hyosynoviae(マイコプラズマ・ハイオシノビエ)、Mycoplasma iowae(マイコプラズマ・アイオワエ)、Mycoplasma mycoides subsp mycoides large colony and small colony(マイコプラズマ・ミコイデス ミコイデス大コロニー型および小コロニー型)、Mycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)、Mycoplasma synoviae(マイコプラズマ・シノビエ)、Mycoplasma orale(マイコプラズマ・オラーレ)、Mycoplasma penetrans(マイコプラズマ・ペネトランス)、Mycoplasma ovipneumoniae(マイコプラズマ・オビニューモニエ)、Mycoplasma pullorum(マイコプラズマ・プローラム)、Mycoplasma alligatorus(マイコプラズマ・アリガトラス)、Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ・ニューモニエ、肺炎マイコプラズマ)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycoplasma maleagridis(マイコプラズマ・メレアグリディス)、Mycoplasma haemofelis(マイコプラズマ・ヘモフェリス)、Mycoplasma haemominutum(マイコプラズマ・ヘモマイニュータム)、Mycoplasma haematoparvum(マイコプラズマ・ヘマトパルハム)である、請求項7に記載の細菌。
【請求項9】
前記細菌は、トリ病原性大腸菌株E956、またはMycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)株Ap3ASである、請求項8に記載の細菌。
【請求項10】
前記弱毒細菌は異種抗原を発現する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項11】
前記異種抗原は、同じまたは別の病原生物のいずれか由来の核酸によってコードされる、請求項10に記載の細菌。
【請求項12】
前記異種抗原をコードする核酸は、Avibacterium(アビバクテリウム)、Bacillus(バチルス)、Brucella(ブルセラ)、Bartonella(バルトネラ)、Bordetella(ボルデテラ)、Burkholderia(バークホルデリア)、Vibrio(ビブリオ)、Escherichia(大腸菌類、エシェリキア)、Salmonella(サルモネラ)、Clostridium(クロストリジウム)、Campylobacter(カンピロバクター)、Chalmydia(クラミジア)、Coxiella(コクシエラ)、Erysipelothrix(エリシペロスリクス)、Francisella(フランシセラ)、Listeria(リステリア)、Actinobacillus(アクチノバチルス)、Haemophilus(ヘモフィルス)、Helicobacter(ヘリコバクター)、Aeromonas(エロモナス)、Pseudomonas(シュードモナス)、Streptococcus(ストレプトコッカス、連鎖球菌)、Shigella(赤痢菌)、Yersinia(エルシニア)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycobacterium(マイコバクテリウム)、Mannheimia(マンヘミア)、Ornithobacterium(オルニソバクテリウム)、Rickettsia(リケッチア)、Ureaplasma(ウレアプラズマ)、およびPasteurella(パスツレラ)、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択される属から単離される、請求項11に記載の細菌。
【請求項13】
前記異種抗原をコードする核酸は、Avibacterium paragallinarum(アビバクテリウム・パラガリナルム)、Bordetella avium(ボルデテラ・アビウム)、Ornithobacterium rhinotracheale(オルニソバクテリウム・ライノトラキア)、Salmonella enteritidis(腸炎菌)、Pasteurella multocida(パスツレラ・マルトシダ)、Mannheimia haemolytica(マンヘミア・ヘモリチカ、ヘモリチカ菌)、E.coli(大腸菌)、Clostridium perfringens(クロストリジウム・パーフリンジェンス、ウェルシュ菌)、Mycoplasma agalactiae(マイコプラズマ・アガラクチアエ)、Mycoplasma alkalescens(マイコプラズマ・アルカレッセンス)、Mycoplasma anatis(マイコプラズマ・アナティス)、Mycoplasma anseris(マイコプラズマ・アンセリス)、Mycoplasma imitans(マイコプラズマ・イミタンス)、Mycoplasma arginini(マイコプラズマ・アルギニニ)、Ureaplasma parvum(ウレアプラズマ・パルハム)、Mycoplasma arthritidis(マイコプラズマ・アルスリチジス)、Mycoplasma bovigenitalium(マイコプラズマ・ボビゲニタリウム)、Mycoplasma bovirhinis(マイコプラズマ・ボビリニス)、Mycoplasma bovis(マイコプラズマ・ボビス)、Mycoplasma bovoculi(マイコプラズマ・ボーボクリ)、Mycoplasma californicum(マイコプラズマ・カリフォルニカム)、Mycoplasma capricolum(マイコプラズマ・カプリコルム)、Mycoplasma dispar(マイコプラズマ・ディスパー)、Mycoplasma felis(マイコプラズマ・フェリス)、Mycoplasma fermentans(マイコプラズマ・ファーメンタンス)、Mycoplasma genitalium(マイコプラズマ・ゲニタリウム)、Mycoplasma hominis(マイコプラズマ・ホミニス)、Mycoplasma hyopneumoniae(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ)、Mycoplasma hyorhinis(マイコプラズマ・ハイオリニス)、Mycoplasma hyosynoviae(マイコプラズマ・ハイオシノビエ)、Mycoplasma iowae(マイコプラズマ・アイオワエ)、Mycoplasma mycoides subsp mycoides large colony and small colony(マイコプラズマ・ミコイデス ミコイデス大コロニー型および小コロニー型)、Mycoplasma gallisepticum(マイコプラズマ・ガリセプチカム)、Mycoplasma synoviae(マイコプラズマ・シノビエ)、Mycoplasma orale(マイコプラズマ・オラーレ)、Mycoplasma penetrans(マイコプラズマ・ペネトランス)、Mycoplasma ovipneumoniae(マイコプラズマ・オビニューモニエ)、Mycoplasma pullorum(マイコプラズマ・プローラム)、Mycoplasma alligatorus(マイコプラズマ・アリガトラス)、Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ・ニューモニエ、肺炎マイコプラズマ)、Mycoplasma(マイコプラズマ)、Mycoplasma maleagridis(マイコプラズマ・メレアグリディス)、Mycoplasma haemofelis(マイコプラズマ・ヘモフェリス)、Mycoplasma haemominutum(マイコプラズマ・ヘモマイニュータム)、Mycoplasma haematoparvum(マイコプラズマ・ヘマトパルハム)、またはこれらのいずれかの組み合わせに由来する、請求項12に記載の細菌。
【請求項14】
前記異種抗原をコードする核酸は、ニューカッスル病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、トリニューモウイルス、鶏痘、伝染性ファブリキウス嚢病、伝染性喉頭気管炎ウイルス、トリインフルエンザ、アヒルウイルス性肝炎、アヒルウイルス性腸炎、ニワトリ貧血、マレック病ウイルスまたはこれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択されるウイルスから単離される、請求項13に記載の細菌。
【請求項15】
前記対象は脊椎動物である、請求項1に記載の細菌。
【請求項16】
前記脊椎動物は、ヒト、ウシ亜科の動物、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ヤギ亜科の動物、ヒツジ属の動物、ブタ類の動物、ラクダ科の動物、ウマ科の動物および鳥類を含む群から選択される、請求項15に記載の細菌。
【請求項17】
前記ウシ亜科の動物対象は雌ウシ、雄ウシ、バイソンまたはバッファローであり、前記イヌ科の動物対象はイヌであり、前記ネコ科の動物対象はネコであり、前記ヤギ亜科の動物対象はヤギであり、前記ヒツジ属の動物対象はヒツジであり、前記ブタ類の動物対象はブタであり、前記ラクダ科の動物対象はラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、ビクーナまたはグアナコであり、前記ウマ科の動物対象はウマ、ロバ、シマウマまたはラバである、請求項15に記載の細菌。
【請求項18】
前記鳥類対象は、いずれかの商業的にまたは家庭で飼育される鳥類である、請求項15に記載の細菌。
【請求項19】
前記鳥類は、ニワトリ(チャボを含む)、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、キジ、ウズラ、ヤマウズラ、ハト、ホロホロチョウ、ダチョウ、エミューまたはクジャクを含む群から選択される、請求項18に記載の細菌。
【請求項20】
細菌を弱毒化するための方法であって、前記方法は、少なくとも1つのABCトランスポーター遺伝子に変異導入することを含み、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の弱毒細菌は対象の中で生き残る、方法。
【請求項21】
対象における疾患の予防または寛解の方法であって、前記方法は、治療上有効用量のワクチン組成物または免疫原性組成物を前記対象に投与することを含み、前記ワクチン組成物または免疫原性組成物は、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の少なくとも1つの弱毒細菌を含む、方法。
【請求項22】
疾患の予防の方法であって、前記方法は、治療上有効用量のワクチン組成物または免疫原性組成物を、予防を必要とする対象に投与することを含み、前記ワクチン組成物または免疫原性組成物は、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の少なくとも1つの弱毒細菌を含む、方法。
【請求項23】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の少なくとも1つの弱毒細菌を含む免疫原性組成物。
【請求項24】
免疫原性上有効量の請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の少なくとも1つの弱毒細菌と、薬理学的に許容できる担体とを含む、ワクチン組成物。
【請求項25】
疾患の処置または予防のためのワクチン組成物の使用であって、前記ワクチン組成物は、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の少なくとも1つの弱毒細菌を含む、使用。
【請求項26】
前記ワクチン組成物または免疫原性組成物は、水、生理食塩水、培養液、安定剤、炭水化物、タンパク質、タンパク質含有薬剤(ウシ血清もしくは脱脂粉乳など)および緩衝液またはこれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容できる担体または希釈剤をさらに含む、請求項23に記載の免疫原性組成物または請求項24に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記安定剤はSPGAであってもよい、請求項26に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項28】
前記炭水化物は、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、グルコース、デキストランまたはこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項26に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項29】
前記タンパク質はアルブミンまたはカゼインである、請求項26に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項30】
前記タンパク質含有薬剤はウシ血清または脱脂粉乳である、請求項26に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項31】
前記緩衝液は、マレイン酸塩、リン酸塩、CABS、ピペリジン、グリシン、クエン酸塩、リンゴ酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ピペラジン、ピリジン、カコジル酸塩、コハク酸塩、MES、ヒスチジン、ビス−トリス、リン酸塩、エタノールアミン、ADA、炭酸塩、ACES、PIPES、イミダゾール、ビス−トリスプロパン、BES、MOPS、HEPES、TES、MOPSO、MOBS、DIPSO、TAPSO、TEA、ピロリン酸塩、HEPPSO、POPSO、トリシン、ヒドラジン、グリシルグリシン、TRIS、EPPS、ビシン、HEPBS、TAPS、AMPD、TABS、AMPSO、タウリン、ホウ酸塩、CHES、グリシン、水酸化アンモニウム、CAPSO、炭酸塩、メチルアミン、ピペラジン、CAPS、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択される、請求項26に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項32】
前記ワクチン組成物または免疫原性組成物は凍結乾燥されているかまたはフリーズドライ状態にある、請求項23から請求項31のいずれか1項に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項33】
少なくとも1つのアジュバントをさらに含む、請求項23から請求項32のいずれか1項に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項34】
前記アジュバントは、フロインド完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、サポニン、鉱油、植物油、カルボポール 水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、油乳剤サポニン、ビタミンE可溶化物またはこれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択される、請求項33に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項35】
前記アジュバントはE.coli(大腸菌)易熱性毒素またはコレラ毒素である、請求項33に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項36】
前記ワクチン組成物または免疫原性組成物は、鼻腔内に、眼内に、皮内に、腹腔内に、静脈内に、皮下に、経口で、排泄腔に、エアロゾルによって(噴霧型ワクチン接種)または筋肉内に投与される、請求項23から請求項35のいずれか1項に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項37】
前記ワクチン組成物または免疫原性組成物は、羽弁投与または点眼剤投与によって投与される、請求項23から請求項36のいずれか1項に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。
【請求項38】
前記ワクチン組成物または免疫原性組成物は、1用量あたり少なくとも約10〜約10弱毒細菌、または約10〜約10弱毒細菌、または約10〜約10弱毒細菌、または約10〜約1011弱毒細菌、または約1011〜約1013弱毒細菌、または約1013〜約1015弱毒細菌、または約1015〜約1017弱毒細菌、または約1017〜約1019、または少なくとも約1019弱毒細菌を含む、請求項23から請求項37のいずれか1項に記載のワクチン組成物または免疫原性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−518388(P2012−518388A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550380(P2011−550380)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000172
【国際公開番号】WO2010/094064
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(509336266)オーストラリアン ポールトリー シーアールシー ピーティーワイ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】