説明

弱溶剤型塗料用樹脂組成物

【課題】本発明は、特定の顔料分散剤を使用することにより、混色性の良好な塗料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】実質的ビニル系重合体からなり、分子内に炭素原子に結合した加水分解性ケイ素基を少なくとも1個有する共重合体(A)成分、シリコン化合物及び又はその加水分解縮合物(B)成分、顔料分散剤(C)成分、顔料(D)成分、弱溶剤(E)成分からなる弱溶剤型塗料用樹脂組成物により良好な混色性となる塗料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱溶剤型塗料用樹脂組成物および、その顔料分散方法に関する。さらに詳しくは、例えば金属、タイル、ガラス、セメント、窯業系成形物、プラスチック、木材、紙、繊維などからなる建築物、家電用品、産業機器などの塗装に好適に使用しうる塗料用樹脂組成物および、当該塗料用樹脂組成物を用いた顔料分散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窯業系組成物、コンクリートや鉄鋼などからなる建築物、建材などの産業製品などの表面を、例えば、フッ素樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料などの塗料で被覆することによって建築物などの外観をよくしたり、防食性や耐候性等を向上させたりしている。
中でも、耐候性、耐汚染性、無機基材や有機塗膜への密着性に優れた塗料としてシロキサン結合とウレタン結合を併用したアクリルシリコン樹脂塗料が挙げられ、既に、特許出願を行なっている(特許文献1参照)。
しかしながら、この組成物を塗料化する場合、顔料分散性や貯蔵安定性が不十分な場合があった。
【特許文献1】特開平2000−297242
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、アクリルシリコン樹脂塗料やアクリルウレタン樹脂塗料の優れた特徴を維持しつつ、これら塗料の顔料分散性や貯蔵安定性を改善した塗料用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の構成からなる新規な塗料用硬化性樹脂組成物を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0005】
すなわち本願発明は、
1)実質的ビニル系重合体からなり、下記分子内に一般式(1)
2a
|
(R1O)3-a−Si− (1)
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10アリ−ル基及び炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選択された1価を表す。R1又はR2が複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。aは、0〜2の整数を表す。)
で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基を少なくとも1個有する共重合体(A)成分、下記一般式(2)
(R3O)4-b−Si−R4b (2)
(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、R4は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、bは0または1を示す)で表されるシリコン化合物及び又はその加水分解縮合物(B)成分、顔料分散剤(C)成分、顔料(D)成分、弱溶剤(E)からなる弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項1)である。
また、2)(C)成分がアクリル系共重合体、ウレタンオリゴマー、高分子共重合体のリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項2)である。
また、3)(C)成分のアクリル系共重合体がアミン価を有する顔料分散剤であることを特徴とする請求項2に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項3)である。
また、4)(C)成分の高分子共重合体のリン酸エステル塩がアミン価および酸価を有する顔料分散剤であることを特徴とする請求項2に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項4)である。
また、5)その他添加剤(F)成分としてタレ止め剤、色分れ防止剤、消泡剤から選ばれる少なくとも1種を配合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項5)である。
また、6)(A)成分が、(a)加水分解性シリル基を含有するビニル系単量体、(b)水酸基を含有するビニル系単量体、(c)その他の共重合可能な単量体を共重合してなるビニル系共重合体である請求項1〜5いずれか1項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項6)である。
また、7)前記(c)その他の共重合可能な単量体のうち(d)炭素数が5以上の(メタ)アクリル酸アルキルを含有してなる請求項6に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項7)である。
また、8)弱溶剤(E)成分が脂肪族炭化水素を含有してなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項8)である。
また、9)本組成物に、さらに有機金属系化合物(G)成分を配合してなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項9)である。
また、10)本組成物に、さらに多単官能イソシアナート化合物(H)成分を配合してなる請求項1〜9のいずれか一項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物(請求項10)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、実質的ビニル系重合体からなり、分子内に炭素原子に結合した加水分解性ケイ素基を有する共重合体(A)成分、シリコン化合物及び又はその加水分解縮合物(B)成分、顔料分散剤(C)成分、顔料(D)成分からなる弱溶剤型塗料用樹脂組成物を用いることにより、顔料分散性の優れた弱溶剤型塗料用樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の炭素原子に結合した加水分解性シリル基を含有する共重合体(A)成分は、その主鎖が実質的にアクリル系単量体が共重合した主鎖からなる(以下、主鎖が実質的にアクリル系共重合鎖からなるともいう)共重合体であるため、得られる本発明の塗料用硬化性樹脂組成物から形成される塗膜の耐候性、耐薬品性などが優れたものとなる。
【0008】
なお、前記共重合体(A)の主鎖が実質的にアクリル共重合鎖からなるとは、共重合体(A)の主鎖を構成する単位のうちの50%以上、さらには70%以上がアクリル系単量体単位から形成されていることを意味する。
【0009】
また、共重合体(A)は、加水分解性シリル基が炭素原子に結合した形式で含有されているため、塗膜の耐水性、耐アルカリ性、耐酸性などがすぐれたものとなる。
【0010】
アクリル系共重合体(A)において、加水分解性シリル基は、共重合体(A)1分子あたり1個以上必要であるが、2個以上、好ましくは3個以上であることが、本発明の組成物から形成される塗膜の耐候性、耐溶剤性などの耐久性が優れるという点から好ましい。
【0011】
前記加水分解性シリル基は、共重合体(A)の主鎖の末端に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよく、主鎖の末端および側鎖に結合していてもよい。加水分解性シリル基の導入方法としては、加水分解性シリル基を含有する単量体をその他の単量体と共重合する方法、シリケ−ト化合物を反応させる方法等がある。簡便な方法としては加水分解性シリル基を含有する単量体を他の単量体を共重合する方法である。一般式(1)では示していないが、一般式(1)のケイ素原子は炭素原子に結合している構造を有している。
【0012】
前記加水分解性シリル基の加水分解性基は、ハロゲン基、アルコキシ基等がある。その中で、反応の制御の簡便さからアルコキシ基が好ましく、一般式(1)で示される。
【0013】
一般式(1)中のR1としては、炭素数が10を超える場合には、加水分解性シリル基の反応性が低下するようになる。また、R1がたとえばフェニル基、ベンジル基などのアルキル基以外の基である場合にも、加水分解性シリル基の反応性が低下するようになる。
一般式(1)中のR2としては本発明の組成物が硬化性に優れるという点から炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0014】
前記一般式(1)において、(R1O)3-aは3−aが1以上3になるように、さらには共重合体(A)の硬化性が良好になるという点からaが0または1であるのが好ましい。したがって、R2の結合数は0〜1であるのが好ましい。
【0015】
一般式(1)中にR1、R2が2個以上存在する場合、それぞれは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0016】
一般式(1)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基の具体例としては、たとえば後述する加水分解性シリル基を含有する単量体に含有される基が挙げられる。
前記(A)成分は水酸基を含有することが好ましく、その場合、例えば、(a)加水分解性シリル基を含有するビニル系単量体、(b)水酸基を含有するビニル系単量体、(c)その他の共重合可能なモノマ−重量部を共重合することにより得ることができる。
【0017】
なお、共重合体(A)中の前記単量体単位(a)の含有割合は、本発明の組成物を用いて形成される塗膜の耐久性が優れる、強度が大きくなるという点から、1〜90重量%、さらには2〜70重量%、とくには3〜50重量%であるのが好ましい。
【0018】
加水分解性シリル基含有ビニル共重合体(a)成分の具体例としては、たとえば
【0019】
【化1】

【0020】
などの一般式(3)
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
などの一般式(4)
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
などの一般式(5)
【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
などの一般式(6)
【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
などの一般式(7)
【0033】
【化10】

【0034】
(式中、R5は、水素またはメチル基を表し、R6は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を、R7は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10アリ−ル基及び炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選択された1価を表す。R6又はR7が複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。aは、0〜2の整数を表す。nは1〜12の整数を、pは1〜14の整数を、qは0〜22の整数をそれぞれ表す。で表される化合物)などがあげられる。これらの中では、共重合性および重合安定性、ならびに得られる組成物の硬化性および保存安定性が優れるという点から、前記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
これらの加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)成分は単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0035】
前記水酸基含有ビニル系単量体(b)としてはその誘導体も含めて用いることができる。具体例としては次のような化合物が例示できる。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2―ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシエチルビニルエ−テル、N―メチロ−ル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシスチレン、東亜合成化学工業(株)製のアロニクス5700、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製のHE―10、HE−20、HP―1およびHP―20(以上、いずれも末端に水酸基を有するアクリル酸エステルオリゴマ−)、日本油脂(株)製のブレンマ−PPシリ−ズ(ポリプロピレングリコ−ルメタクリレ−ト)ブレンマ−PEシリ−ズ(ポリエチレングリコ−ルモノメタクリレ−ト)ブレンマ−PEPシリ−ズ(ポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ルメタクリレ−ト)ブレンマ−AP−400(ポリプロピレングリコ−ルモノアクリレ−ト)、ブレンマ−AE−350(ポリエチレングリコ−ルモノアクリレ−ト)およびブレンマ−GLM(グリセロ−ルモノメタクリレ−ト)、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類。
【0036】
水酸基含有化合物とε―カプロラクトンとの反応により得られるε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合体化合物であるPlaccel FA―1、 Placcel FA―4、 Placcel FM―1、 Placcel FM―4(以上ダイセル化学工業(株)製)、TONE M−201(UCC社製)。ポリカ−ボネ−ト含有ビニル系化合物(具体例としては、HEAC―1(ダイセル化学工業(株)製)などの水酸基を有するモノエチレン性不飽和モノマーを共重合モノマーとした1分子中に2以上の水酸基を有するアクリルポリオールも使用できる。中でも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−トは、イソシアナ−トとの反応性に優れ、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性が良好な塗膜が得られる点から好ましい。特に好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−トである。
【0037】
これらのアルコ−ル性水酸基含有ビニル系単量体(b)成分は単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。また、使用量としては、2〜40重量%が好ましく、硬化性、密着性、耐溶剤性が十分に発現する点から、3〜35重量%がさらに好ましく、特に、3〜20重量%がさらに好ましい。
【0038】
前記共重合可能モノマ−(c)成分の具体例としては、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレ−ト、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレ−ト、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸またはリン酸エステル類との縮合生成物などのリン酸エステル基含有(メタ)アクリル系化合物、ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル誘導体が挙げられる。
【0039】
それ以外の共重合性のモノマ−としては、スチレン、αーメチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの塩;無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物、これら酸無水物と炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖を有するアルコールまたはアミンとのジエステルまたはハーフエステルなどの不飽和カルボン酸のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有ビニル系化合物;メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸などのその他ビニル系化合物などが挙げられる。
【0040】
これらの共重合可能モノマ−(c)成分は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の(A)成分においては、(A)成分を構成する前記その他の共重合可能なビニル系単量体(c)成分のうち、炭素数が5以上の(メタ)アクリル酸および/またはその誘導体(d)成分を共重合させることが好ましい。前記(d)成分の具体例としては、たとえばペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレ−ト、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレ−ト、ノニル(メタ)アクリレ−ト、デカニル(メタ)アクリレ−ト、ウンデカニル(メタ)アクリレ−ト、ラウリルメチル(メタ)アクリレ−ト、パルミトイル(メタ)アクリレ−ト、ステアリル(メタ)アクリレ−ト、ブレンマ−SLMA((メタ)アクリル酸のC12〜C18アルキルエステルの混合物;日本油脂(株)製)などが挙げられる。
弱溶剤が脂肪族系化合物を含む溶剤である場合の溶解性を向上されるという点から、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト、オクチル(メタ)アクリレ−ト、ノニル(メタ)アクリレ−ト、デカニル(メタ)アクリレ−ト、ウンデカニル(メタ)アクリレ−ト、ラウリルメチル(メタ)アクリレ−ト、パルミトイル(メタ)アクリレ−ト、ステアリル(メタ)アクリレ−ト、ブレンマ−SLMAが好ましい。特に、ラウリルメチル(メタ)アクリレ−ト、パルミトイル(メタ)アクリレ−ト、ステアリル(メタ)アクリレ−ト、ブレンマ−SLMAがさらに好ましい。
【0041】
(c)成分の使用量としては、2〜70重量%が好ましく、重合時および希釈時の溶剤に対する溶解性よおび重合安定性の点から、5〜60重量%がさらに好ましく、特に、5〜50重量%がさらに好ましい。
【0042】
前記(b)成分、(c)成分と(d)成分の使用量の合計は、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(a)成分の種類および使用量に応じて適宜調整すればよいが、通常用いる重合成分全量の10〜99重量%、さらには30〜98重量%、とくには50〜97重量%であるのが好ましい。また、(a)成分の使用量としては重合成分の1〜90重量%、さらに2〜70重量%、特には3〜50重量%が好ましい。
【0043】
加水分解性シリル基含有共重合体(A)は、たとえば特開昭54−36395号公報、特開昭57−55954号公報などに記載のヒドロシリル化法または加水分解性シリル基を含有する単量体を用いた溶液重合法によって製造することができるが、合成の容易さなどの点から加水分解性シリル基を含有する単量体を用い、アゾビスイソブチロニトリル、V−59(和光純薬(株)製)などのアゾ系ラジカル重合開始剤を用いた溶液重合法によって製造することがとくに好ましい。
【0044】
また、前記溶液重合の際には、必要に応じて、たとえばn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γーメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γーメルカプトプロピルトリエトキシシラン、(CH3O)3Si−S−S−Si(OCH33,(CH3O)3Si−S8−Si(OCH33などの連鎖移動剤を単独または2種以上併用することにより、得られる樹脂(A)成分の分子量を調整してもよい。特に、たとえばγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基を分子中に有する連鎖移動剤を用いた場合には、樹脂(A)成分の末端に加水分解性シリル基を導入することができるので好ましい。かかる連鎖移動剤の使用量は、用いる重合成分全量の0.05〜10重量%、特には0.1〜8重量%であることが好ましい。
【0045】
本発明においては、一般式(2)
(R3O)4-b−Si−R4b (2)
(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、R4は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、bは0または1を示す)で表されるシリコン化合物及び又はその加水分解縮合物(B)成分が使用される。(B)成分を配合することによりさらに耐汚染性を向上させることができる。
【0046】
前記一般式(2)において、R3は炭素数1〜10のアルキル基(好ましくはたとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルリル基(好ましくはたとえばフェニル基などの炭素数6〜9のアリール基およびベンジル基などの炭素数7〜9のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基)である。前記アルキル基の炭素数が10を超える場合には、シリコン化合物の部分加水分解縮合物(B)成分の反応性が低下するようになる。また、R3が前記アルキル基、アリール基、アラルキル基以外の場合にも反応性が低下するようになる。
【0047】
また、前記一般式(2)において、R4は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルリル基、好ましくはR3と同様の炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜9のアリール基、炭素数7〜9のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素である。前記一般式(2)において、bが0または1になるように選ばれるが、本発明の組成物から形成される塗膜の硬化性が向上するという点からは、bが0であるのが好ましい。
一般式(2)中に存在する(R3O)4-bの数が複数個の場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0048】
前記(B)成分のシリコン化合物の具体例としては、たとえばテトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラn−プロピルシリケート、テトラi−プロピルシリケート、テトラn−ブチルシリケート、テトラi−ブチルシリケートなどのテトラアルキルシリケート;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシランなどが挙げられる。
【0049】
また、前記シリコン化合物の部分加水分解縮合物(B)成分の具体例としては、たとえば通常の方法で前記テトラアルキルシリケートやトリアルコキシシランに水を添加し、縮合させて得られるものがあげられ、たとえばMSI51、ESI40、ESI48、EMSi48(30/70)、ESi48(50/50)ESi48(75/25)(以上、コルコート(株)製)、MS51、MS56、MS56S(以上、三菱化学(株)製)、FR−3、シリケ−ト40、シリケ−ト45、シリケ−ト48、ES−48(以上、多摩化学(株)製)などのテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物や、たとえばAFP−1(信越化学工業(株)製)などのトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物などが挙げられる。
【0050】
前記(B)成分のシリコン化合物の部分加水分解縮合物のうちでは、耐汚染性を発現するのに樹脂(A)および(E)成分と適度な相溶性を示す点、得られる本発明の組成物の硬化性が良好で、該組成物を用いて形成される塗膜の硬度が上昇することにより汚染物質の付着を制御するという点から、MSI51、MS51、MS56、MS56S(テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)やESI48、HAS−1(テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物)、FR−3(メトキシ−エトキシ複合タイプシリケ−ト)などのテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物を用いるのが好ましく、特に、重量平均分子量が1000より大きいMS56、MS56S、FR−3、シリケート45およびESI48のような化合物が、配合量を低減できる点から更に好ましい。
前記(B)成分は単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0051】
前記(B)成分の使用量は(A)および(E)の混合成分100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部、更に好ましくは2〜30重量部である。(B)成分の使用量が100重量部をこえると塗膜の表面光沢などの外観性が低下したり、クラックなどが発生したりするようになる。
【0052】
前記(B)成分は、(A)成分との相溶性を向上させるため、(A)成分の重合時に(B)成分を加えること、さらに、(A)成分に(B)成分をホットブレンドすることができる。
【0053】
さらに、本発明の組成物を塗料化するために必要な成分として顔料分散剤(C)成分、および、顔料(D)成分が含有される。
【0054】
顔料分散剤(C)成分としてはアクリル系共重合体、ウレタンオリゴマー、高分子共重合体のリン酸エステル塩などを挙げることができる。
アクリル系共重合体としてはフローレンDOPA−15BHF、フローレンDOPA−17HF(共栄社化学製)などのDOPAシリーズが挙げられる。アクリル系共重合体はアミン価を有し、さらにはそのアミン価が5〜100mgKOH/g、特には10〜50mgKOH/gが好ましい。
ウレタンオリゴマーとしてはTG−710(共栄社化学製)が挙げられる。
高分子共重合体のリン酸エステル塩としては、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375(楠本化成製)が挙げられ、好ましくはアミン価を有し、さらにはそのアミン価が5〜100mgKOH/g、特には5〜50mgKOH/gが好ましい。
顔料分散剤の添加量は顔料の粒子系等に影響されやすく、適宜、調整が必要である。
【0055】
顔料(D)成分としては、たとえば、酸化チタン、群青、紺青、亜鉛華、ベンガラ、カーボンブラック、酸化鉄、アルミニウム粉、雲母などの無機顔料、アゾ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キノリン系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料などの有機顔料などを使用することが出来る。
【0056】
前記(A)成分、(B)成分、(E)成分からなる組成物を用いて顔料分散を行なう場合、顔料(D)成分と顔料分散剤(C)成分の組み合わせにより効果が異なる。
【0057】
酸化チタン、赤錆、黄土などの無機系顔料については顔料分散剤としては高分子重合体のリン酸エステル塩が好ましく、さらにはアミン価を有する塩が好ましく、更には酸価を有するものが特に好ましい。具体例としてはディスパロンDA−325(楠本化成製)があげられる。また、アミン価を有したアクリル系共重合体、具体例としてはフローレンDOPA−15BHF、フローレンDOPA−17HF(共栄社化学製)などのDOPAシリーズも好ましく、ウレタンオリゴマーはクリアー分離を起こし易い傾向がある。
一方、一次粒子の小さいカーボンおよび有機系顔料についてはウレタンオリゴマーが適しているが、汎用的に使用されるポリカルボン酸系の顔料分散剤は凝集を起こしたり、貯蔵後に増粘するなど安定性が低下する傾向がある。一次粒子の小さいカーボンについてはフローレンDOPA−15BHFのようなアクリル系共重合体や高分子重合体のリン酸エステル塩は貯蔵安定性を低下させる傾向がある。
【0058】
本発明の組成物には、さらに、その他添加剤(F)成分としてタレ止め剤、色分れ防止剤、消泡剤から選ばれる少なくとも1種を配合することができる。( タレ止め剤としてはターレン6820−10M、ターレン6820−20M(共栄社化学製)、フローノンEDM−10(共栄社化学製)などの脂肪酸アマイドワックス系、ターレン2000(共栄社化学製)などの長鎖脂肪酸エステル重合体などが挙げられる。これらのうち、ターレン6820シリーズやフローノンEDM−10が垂れ限界膜厚を高く維持でき、且つ、耐候性を損ねない点で好ましい。
【0059】
色分れ防止剤としてはフローレンAF205、フローレンAF505、フローレンAF1005(共栄社化学製)などの特殊シリコン系が挙げられる。これらのうち、フローレンAF205、フローレンAF505が接触角を低く維持し、汚染性への影響が小さく好ましい。
【0060】
消泡剤としてはフローレンAC900、フローレンAC903、フローレンAC905(共栄社化学製)、ディスパロンOX−77(楠本化成製)などのアクリル・ビニルエーテル系が挙げられる。これらのうち、フローレンAC903、OX−77が接触角を低く維持し、汚染性への影響が小さく好ましい。
【0061】
本発明の弱溶剤(E)成分は、労働安全衛生法の第3種有機溶剤および第3種有機溶剤に相当する溶剤である。例えば、第3種有機溶剤である芳香族炭化水素を100%含有するソルベッソ100(エクソンモービル製)が挙げられる。また、好ましくは(E)成分として脂肪族炭化水素を含有するものが好ましい。具体的には、非水系で芳香族含有量が、50%以下の溶剤が挙げられ、ペガソールAN45、エクソンナフサNo.6、エクソンナフサNo.5、エクソンナフサNo.3、エクソ−ルD40、エクソ−ルD80(以上、エクソンモービル製)、LAWS(シェル化学製)、Aソルベント、アイソパ−E、アイソパ−G(以上、新日本石油製)、IPソルベント1620、IPソルベント2028(以上、出光石油化学製)などが挙げられる。
【0062】
本発明の弱溶剤(E)成分は上記に示したように、(A)成分の重合時にも使用でき、また、本組成物の希釈溶剤、塗料化時の希釈溶剤、塗装時の希釈溶剤として用いることができる。使用量としては、特に制限はなく、適宜調整することができる。
【0063】
本発明の組成物を用いて作製した塗料を硬化させる場合、有機金属化合物(G)および、架橋剤としてイソシアナ−ト基を2個以上有する多官能性イソシアナート化合物(H)成分を含有することができる。そしてこれらを予め混合しておいて硬化剤として塗料に混合して用いることができる。硬化剤中には有機金属化合物、多官能性イソシアナートの他に弱溶剤成分や、後述する単官能性イソシアナート成分を配合することができる。
【0064】
前記有機金属化合物(G)は硬化性点より錫系化合物、アルミキレート化合物が好ましい。
前記錫化合物の具体例としては、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジオクチル錫オキサイドまたはジブチル錫オキサイドとシリケ−トとの縮合物、ジブチル錫ジオクトエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジステアレ−ト、ジブチル錫ジアセチルアセトナ−ト、ジブチル錫ビス(エチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(ブチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(オレイルマレ−ト)、スタナスオクトエ−ト、ステアリン酸錫、ジ−n−ブチル錫ラルレ−トオキサイドがある。また、分子内にS原子有する錫化合物としては、ジブチル錫ビスイソノニル−3―メルカプトプロピオネ−ト、ジオクチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、オクチルブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、オクチルブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−トなどが挙げられる。
前記錫化合物のうちでは、分子内にS原子を有する化合物が好ましく、特にイソシアナ−トを配合した場合の貯蔵安定性およびポットライフが良好であることから好ましい。具体例としては、ジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−トが硬化性、貯蔵安定性、ポットライフの点から好ましい。
【0065】
また、前記アルミキレート化合物も好ましく、エチルアセトアセートアルミニウムジイソプロピレート、アルミトリス(アセチルアセトナート)、アルキルアセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどがあげられる。
【0066】
前記アルミキレート化合物としては、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)とアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)がイソシアナートと配合した場合の貯蔵安定性およびポットライフのバランスが良好で、塗膜の接触角が小さくなるという点から好ましい。
【0067】
前記有機金属化合物(G)成分は単独でもよく、また、2種類以上併用してもよい。
【0068】
前記(G)成分の使用量は、(A)および(B)の混合成分100重量部に対して0.01〜30重量部、さらには、0.1〜10重量部、特には0.2〜5重量部が好ましい。有機金属化合物(G)成分の量が0.001重量部より少ない場合、硬化性が不十分となり、また、30重量部を超えると、該組成物を用いて形成した塗膜の表面光沢など外観性の低下傾向がある。
【0069】
前記、多官能性イソシアナ−ト化合物(H)としては、脂肪族系もしくは芳香族系のものが挙げられる。
【0070】
脂肪族系多官能性イソシアナ−ト化合物の具体例として、常温硬化用でヘキサメチレンジイソシアナ−ト、ジシクロヘキシルメタン4,4‘−ジイソシアナ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアナ−ト、イソフォロンジイソシアナ−トがあり、構造としては単量体、ビュレット型、ウレジオ型、イソシアヌレ−ト型がある。
【0071】
また、芳香族多官能性イソシアナ−トとしては、2,4―トリレンジイソシアナ−ト、2,6―トリレンジイソシアナ−ト、ジフェニルメタン−4,4‘−ジイソシアナ−ト、キシレンジイソシアナ−ト、ポリメチレン−ポリフェニレル−ポリイソシアナ−ト、などがある。これにも、ビュレット型、ウレジオ型、イソシアヌレ−ト型がある。
【0072】
加熱硬化用としてはブロックタイプのものがある。そのブロック剤としてはメチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル、n−プロピルアルコ−ル、イソ−プロピルアルコ−ル、n−ブチルアルコ−ル、sec−ブチルアルコ−ル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ベンジルアルコ−ル、フルフリルアルコ−ル、シクロヘキシルアルコ−ル、フェノ−ル、o−クレゾ−ル、m−クレゾ−ル、p―クレゾ−ル、p−tert−ブチルフェノ−ル、チモ−ル、p−ニトロフェノ−ル、β―ナフト−ルなどがある。
【0073】
これらの化合物は、2種以上混合して用いることもできる。
前記多官能性イソシアナ−ト化合物(H)成分の使用量は、NCO/OH比率で0.5〜2.0、好ましくは0.7〜1.5となるような比率で行なうことが好ましい。(H)成分が0.5より小さいと、得られる組成物の硬化性が低下するようになり、また、2.0を超えると、該組成物を用いて得られた塗膜に未反応のイソシアナ−ト化合物あるいはイソシアナ−ト基が残存し、塗り重ね時にちぢみを生じる原因となる他、塗膜表面の水との接触角が低下し難くなり、耐汚染性の改良に悪影響を与える傾向がある。
【0074】
本発明の組成物には、単官能イソシアナ−ト化合物(I)成分を用いることができる。単官能イソシア−ト化合物(I)成分を用いることにより硬化剤中の水分を除去することができる。具体例として、イソシアン酸、メチルイソシアナ−ト、エチルイソシアナ−ト、イソプロピルイソシアナ−ト、ヘキシルイソシアナ−ト、ビニルイソシアナ−ト、イソプロペニルイソシアナ−ト、フェニルイソシアナ−ト、トリルイソシアナ−ト、ニトロフェニルイソシアナ−ト、ナフチルイソシアナ−ト、トシルイソシアナ−トなどが挙げられるが、脱水能力および化合物自体の安定性の点からヘキシルイソシアナ−ト、トリルイソシアナ−ト、トシルイソシアナ−トが好ましい。
【0075】
中でも脱水効果の持続性の点からトシルイソシアナ−トが特に好ましい。これらは、単独または2種類以上併用することができる。単官能イソシア−ト化合物(I)成分を用いることにより、硬化剤が脱水され、ポリイソシアナ−ト、有機金属化合物を混合した場合の貯蔵安定性が飛躍的に向上する。
前記単官能イソシアナ−ト化合物(I)成分の配合量としては前記硬化剤100重量部中に0.1〜10重量部が好ましい。脱水効果と硬化性維持の点から、0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がさらに好ましい。
【0076】
樹脂(A)成分には、さらに脱水剤を配合することによって、組成物の保存安定性を長期間にわたって優れたものにすることができる。
【0077】
前記脱水剤の具体例としてはたとえばオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトイソプロピオン酸トリメチル、オルトイソプロピオン酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチル、オルトイソ酪酸トリメチル、オルトイソ酪酸トリエチルなどの加水分解性エステル化合物などが挙げられる。この中では、脱水効果,貯蔵安定性の点より、オルト酢酸メチル、オルト蟻酸メチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0078】
前記脱水剤は、塗料化時に加え、貯蔵安定性を向上させることができる。(A)100重量部に対して0.5〜20重量部、さらには1〜10重量部、特には1〜5重量部で使用されることが好ましい。
【0079】
また、本発明の弱溶剤型塗料用樹脂組成物には、反応性希釈剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの添加剤を適宜加えてもよい。
【0080】
本発明の塗料用樹脂組成物は、たとえばローラー、吹き付け、刷毛、浸漬などの通常の方法によって被塗物に塗布され、通常、常温でそのまま、または30℃以上で焼き付けて硬化せしめる。
【0081】
本発明の塗料用樹脂組成物は、たとえば、金属、タイル、セラミックス、ガラス、セメント、モルタル、窯業系成形物、プラスチック、木材、紙、繊維、鉄部などからなる建築物、家電用品、産業機器などの塗料として好適に使用される。さらに、無機質基材に対しては、微弾性中塗り、弾性中塗り上の上塗り塗料として使用することができる。
【実施例】
【0082】
次に、本発明の塗料用硬化性樹脂組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
樹脂成分
(A)成分の合成
攪拌機、温度計、冷却還流器、チッ素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器にペガソールAN45を50重量部仕込み、チッ素ガスを導入しつつ110℃に昇温した後に、イソブチルメタクリレート60重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート10重量部、2−エチルヘキシルアクリレート10、2−ヒドロキシメタクリレート10重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10重量部、2,2‘−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.9重量部、ペガソールAN45 25重量部からなる成分を滴下ロ−トから5時間かけて等速滴下した。次に、上記反応容器中へ2,2‘−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.1重量部、ペガソールAN45 8重量部を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、110℃で2時間攪拌した後に、室温まで冷却した(A成分)。
【0083】
最後にオルト酢酸メチル0.5重量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.5重量部、エチルシリケート48 20重量部を加えて、ペガソールAN45で固形分濃度が50%になるように調整した(A+B成分)。得られた樹脂の数平均分子量(GPC)は15,000であった(AB−1)。
【0084】
顔料分散処方
サンドグラインダー(アイメックス製)を用いて、表4、5に示した配合(重量部)でミルベース(1時間混練)を作製し、更に、レットダウン(30分混合)を行ない塗料化を行なった。表1に使用した顔料種、表2に添加剤種、表3に硬化剤組成(重量部)を示した。
得られた調色塗料組成物を23℃、相対湿度55%の条件下でアート試験紙上に、150μのアプリケーターを用いて塗布し乾燥した。得られた塗装物に対して2時間後に基材の下半分を流し塗りし、垂直に立てかけた。
【0085】
23℃、相対湿度55%の条件下で24時間養生後、1層目(アプリケーター部)と2層目(流し塗り部)との色相変化ΔEをCR300(ミノルタ(株)製)と目視にて評価し、さらに60°光沢をGM268(ミノルタ(株)製)にて測定した。その結果を表8〜10に示した。
目視評価基準
○:色の違いが殆どわからない
○△:色の違いがわずかにわかる
×:色の違いが明確にわかる。
硬化剤作製方法
ソルベッソ100、U350を計量、混合後、アディティブTIを加え室温で10分以上脱水する。次いで、TSA100を加え混合する。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
U350:分子内にS原子を有する錫化合物(メルカプト錫)(日東化成(株)製)
TSA100:多官能性イソシアナート化合物(旭化成ケミカルズ(株)製)
ソルベッソ100:芳香族系弱溶剤(エクソンモービル(株)製)
アディティブTI:単官能イソシアナート(住化バイエルウレタン(株))
得られた塗料の混色性については以下の方法に従って評価した。
【0090】

混色性および光沢
表4〜5に示した配合(重量部)で調色塗料を得た。得られた塗料の貯蔵安定性を表6〜7に示した。
貯蔵安定性試験方法
マヨネーズ瓶に約150g各塗料を採取し、40℃乾燥機で2週間、4週間保存する。取り出し後、23℃55%RHの雰囲気下でストーマー型粘度計で測定する(単位:KU)。
表4、5で作成した調色塗料に表3の硬化剤Aと塗料用シンナー(日亜ペイント(株)製)を表8〜10に示す配合部数(重量)で配合し、その結果を表8〜10に示す。
【0091】
【表4】

【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
本願発明により得られる塗料組成物は色の混ざり(混色性)が良好で特に塗り重ねた場合においても前後においても色のむらが少なく良好な色の塗膜が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的ビニル系重合体からなり、下記分子内に一般式(1)
2a
|
(R1O)3-a−Si− (1)
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10アリ−ル基及び炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選択された1価を表す。R1又はR2が複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。aは、0〜2の整数を表す。)
で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基を少なくとも1個有する共重合体(A)成分、下記一般式(2)
(R3O)4-b−Si−R4b (2)
(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、R4は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、bは0または1を示す)で表されるシリコン化合物及び又はその加水分解縮合物(B)成分、顔料分散剤(C)成分、顔料(D)成分、弱溶剤(E)からなる弱溶剤型塗料用樹脂組成物。
【請求項2】
(C)成分がアクリル系共重合体、ウレタンオリゴマー、高分子共重合体のリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分のアクリル系共重合体がアミン価を有する顔料分散剤であることを特徴とする請求項2に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分の高分子共重合体のリン酸エステル塩がアミン価および酸価を有する顔料分散剤であることを特徴とする請求項2に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物。
【請求項5】
その他添加剤(F)成分としてタレ止め剤、色分れ防止剤、消泡剤から選ばれる少なくとも1種を配合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分が、(a)加水分解性シリル基を含有するビニル系単量体、(b)水酸基を含有するビニル系単量体、(c)その他の共重合可能な単量体を共重合してなるビニル系共重合体である請求項1〜5いずれか1項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物。
【請求項7】
前記(c)その他の共重合可能な単量体のうち(d)炭素数が5以上の(メタ)アクリル酸アルキルを含有してなる請求項6に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物。
【請求項8】
弱溶剤(E)成分が脂肪族炭化水素を含有してなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物。
【請求項9】
本組成物に、さらに有機金属系化合物(G)成分を配合してなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物。
【請求項10】
本組成物に、さらに多単官能イソシアナート化合物(H)成分を配合してなる請求項1〜9のいずれか一項に記載の弱溶剤型塗料用樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−182995(P2006−182995A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380805(P2004−380805)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】