説明

張り扇具

【課題】長期使用による劣化が低減され、製造コストが安価となり、さらに携帯性に優れる張り扇具を提供する。
【解決手段】合成樹脂材料で成形され、蛇腹状に折り畳み形成される扇本体2と、扇本体2の基部に形成されるグリップ部3と、扇本体2を折り畳んだ状態で扇本体2の先端部2aから収容する筒形状のケース4と、を備える張り扇具1とした。扇本体2は合成樹脂材料で形成されているので使用時の打音が紙製の場合よりも高くかつ耐久性に優れる。また蛇腹状に折り畳んだ状態でケース4内に収容されるので携帯時に嵩張らず、ケース4やグリップ部3の形状の工夫によりたとえば全体として刀剣などを模した興趣に富む外観を呈するものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ観戦における応援時等に使用する張り扇具に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製などの葉片を蛇腹形状に折り畳んで扇状に形成した、いわゆる張り扇(はりせん)は、簡易な構造で比較的大きな音を発生できることから、野球その他のスポーツ施設での観戦における応援グッズや玩具などとして利用されている。張り扇の従来例としては、たとえば特許文献1、2、3が挙げられる。
【特許文献1】実開昭64−9697号公報
【特許文献2】特開平11−226238号公報
【特許文献3】特開平8−63170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
張り扇は、一般的には厚みのあるボード紙等から形成されているが、材質が紙製のために使用に伴う劣化が激しいという問題がある。この問題に対し、引用文献1には張り扇の表面を樹脂コーティングする技術が記載され、引用文献2には張り扇の芯材を樹脂製のカバーで覆う技術が記載されている。
【0004】
これらのように張り扇を紙基材と樹脂の複合材から形成すれば、張り扇の耐久性の向上が期待できるが、引用文献1、2は、基体(芯材)に樹脂コーティングを施したり、樹脂製のカバーでこれを覆う構造であることから、特別な材料や付加的な工程を必要とし、張り扇の製造コストが高くなりやすいという問題がある。
【0005】
また、張り扇に樹脂材料を適用した場合には、樹脂の弾性により、紙製の場合よりも扇の折り畳み部が拡開しやすくなるので、嵩張って携帯し難く、外観上も好ましくない。
【0006】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、使用による劣化が低減され、製造コストが安価で、さらに携帯性に優れかつ意匠的にも興趣に富む張り扇具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、扇状に折り畳みおよび拡開の可能な合成樹脂シートからなる扇本体と、扇本体の基部に形成されるグリップ部と、扇本体を折り畳んだ状態で扇本体の先端部から収容する筒形状のケースとを備えることを特徴とする張り扇具とした。
【0008】
この張り扇具によれば、扇本体が合成樹脂材料で成形されるため、紙製の場合に比して使用による劣化が低減される。また、前記特許文献におけるように、基体(芯材)に対して特定の樹脂コーティングを施したり、別体の樹脂製のカバーでこれを覆う構造ではなく、汎用の合成樹脂シートを単に扇状に折り畳んで形成されるので、製造コストが安価となる。また、扇本体が折り畳まれた状態でケースに収容されるため、携帯性に優れた張り扇具となる。また弾性の高い合成樹脂シートからなるため、ケースに収容された扇本体には拡開しようとする弾性力が働き、扇本体の両端の折り返し片がケースの内面に押し付けられるので、ケースを外そうとして力を加えない限り、ケースが扇本体から不測に脱落することはない。
【0009】
また、扇本体が剛性でかつ弾性の高い合成樹脂シートからなるため、打音が紙製の場合に比較して著しく大きくなり、グリップ部および扇本体と、ケースとが組合されているので、張り扇具をどのような場所で用いる場合にも扇本体をケースに打ち当てることにより一層大きな打音が生じる。
【0010】
また、本発明は、前記扇本体、グリップ部、およびケースは、それぞれ刀剣の刀身、柄および鞘の形態にデザインして形成され、前記扇本体と前記グリップ部との間には、前記ケースの一端に当接する鍔部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の張り扇具とした。
【0011】
この張り扇具によれば、たとえば後述する実施例のように全体を日本刀の形態にデザインして形成することにより携帯用グッズとして興趣性に富むものとなり、鍔部により使用時の把持が安定かつ容易なものとなり扇本体のケースに対する位置決めも確実になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期使用による劣化が低減され、製造コストが安価となり、さらに携帯性に優れた張り扇具となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1はケースを外した状態の張り扇具の説明図であり、(a)、(b)、(c)はそれぞれ平面図、側面図、正面図である。図2はケースを被せた状態の張り扇具の説明図であり、(a)、(b)、(c)はそれぞれ平面図、側面図、正面図である。本実施形態では、張り扇具を刀剣(具体的には日本刀)の形状にデザインした場合について説明する。
【0014】
本発明の張り扇具1は、合成樹脂シートで成形され、蛇腹状に折り畳み形成される扇本体2と、扇本体2の基部に形成されるグリップ部3と、扇本体2を折り畳んだ状態で扇本体2の先端部2aから収容する筒形状のケース4とを備える。
【0015】
扇本体2は、素体となる合成樹脂シートを蛇腹状に(山状と谷状に交互に)折り畳んで形成した部材からなり、刀剣の刀身に相当する部位を構成する。扇本体2の材質としては弾性および剛性(硬度)が高くかつ適度に可撓性のある市販の熱可塑性樹脂(たとえばポリプロピレン、ポリエステル、アクリル樹脂等)のシートを任意に用いることができるが、任意の材質、仕様のものを選択できかつ低コストで入手できる点でポリプロピレンシートが好ましい。板厚は例えば1mm程度、折り重ね枚数は10枚程度とし、畳んだ状態の扇本体2の厚みが10mm程度となるようにする。
【0016】
グリップ部3は、把持しやすい棒形状として形成されており、本実施形態ではその表面が刀剣の柄を模したデザイン形状となっている。グリップ部3の材質もポリプロピレン等の合成樹脂からなる。グリップ部3には、例えばその一端側に扇本体2を取り付けるための開口部(図示せず)が形成され、扇本体2の基部がこの開口部に挿入されたうえで、螺子止めや熱溶着など公知の方法によりグリップ部3と一体化される。場合によっては、扇本体2とグリップ部3とを別体の部材ではなく、両者を一体の部材として成形してもよい。
【0017】
ケース4は、その一端側に、畳んだ状態の扇本体2を先端部2aから差し込むための開口部4aが形成されており、刀剣の鞘に相当する部材となる。ケース4の材質もポリプロピレン等の合成樹脂からなる。筒断面形状は図示の楕円形状に限られず、角形状などにしてもよい。ケース4の内部空間、すなわち扇本体2の収容空間の寸法は、畳んだ状態の扇本体2よりも若干大きい程度の寸法である。なお、開口部4a寄りのケース4の表面には、ストラップ等を係止可能なコ字形状の鉤部4bが突設されている。
【0018】
そして、扇本体2とグリップ部3との間には、ケース4の一端(開口部4aが形成される端部)に当接する鍔部5が設けられており、日本刃の鍔を模した楕円形状として形成されている。鍔部5は例えばグリップ部3と一体に成形される。
【0019】
以上の張り扇具1によれば、扇本体2が合成樹脂シートで成形されているため、紙製の場合に比して長期使用による劣化が低減される。基体(芯材)に対して樹脂コーティングを施したり、樹脂製のカバーによってこれを覆う構造ではなく、扇本体2は単に合成樹脂シートを扇状に折り曲げて形成するため、製造工程が簡単となり、製造コストが安くなる。
【0020】
また、扇本体2が折り畳まれた状態でケース4に収容されるため、嵩張らず、携帯性等に優れた張り扇具1となる。もちろん、ケース4は扇本体2の保護カバーとしての機能も担うため、不使用時等における扇本体2の損傷を防ぐことができる。
【0021】
ここで、ケース4に収容された扇本体2においては、材質が合成樹脂であることから、各折り返しの部位には拡開しようとする大きな弾性力が発生し、この弾性力により扇本体2の両端の折り返し片2bがケース4の内面に強く押し付けられる。したがって、両者間に生ずる摩擦力により、意識的にケース4を外そうとしない限り、ケース4が扇本体2から容易に外れることはない。
【0022】
また、本実施形態のように、グリップ部3およびケース4を、それぞれ刀剣の柄および鞘を模して成形し、扇本体2とグリップ部3との間には、ケース4の一端に当接する鍔部5を設ける構成とすれば、刀剣に模した興趣性の高い張り扇具となり、鍔部5によりケース4の位置決めも容易に行える。
【0023】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。ケース4の紛失などの事態を考慮して、例えばケース4と、グリップ部3或いは鍔部5との間に連結紐などを掛け渡しておく構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】はケースを外した状態の張り扇具の説明図であり、(a)、(b)、(c)はそれぞれ平面図、側面図、正面図である。
【図2】はケースを被せた状態の張り扇具の説明図であり、(a)、(b)、(c)はそれぞれ平面図、側面図、正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 張り扇具
2 扇本体
3 グリップ部
4 ケース
5 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇状に折り畳みおよび拡開の可能な合成樹脂シートからなる扇本体と、
扇本体の基部に形成されるグリップ部と、
扇本体を折り畳んだ状態で扇本体の先端部から収容する筒形状のケースと、
を備えることを特徴とする張り扇具。
【請求項2】
前記扇本体、グリップ部、およびケースは、それぞれ刀剣の刀身、柄および鞘の形態にデザインして形成され、
前記扇本体と前記グリップ部との間には、前記ケースの一端に当接する鍔部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の張り扇具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−100970(P2009−100970A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276007(P2007−276007)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(592024789)三福商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】