説明

張力付加装置

【課題】シート体に対して、面内で均一な張力を付加することができる張力付加装置を提供する。
【解決手段】スクリーン500の各辺中央に対応して設けられたヘッド14,20,26,32は、対応のベース板に対し、その延在方向に位置固定されており、他のヘッド11〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33,34は、対応のベース板に対し、その延在方向に移動自在である。ヘッド11,17,23,29の各々と、ヘッド11〜13,15〜19,21〜25,27〜31,33,34の各々とは、螺合構造を介して連結されている。雌ネジに対する雄ネジのねじ込み深さは、各ヘッド14,20,26,32取り付けられたステッピングモータからの回転力作用により変化する。4つのステッピングモータは、互いに同期がとられており、全てのヘッド11〜34は、点Pを中心に放射状に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力付加装置に関し、特に、シート体の面方向に張力を付加する張力付加装置に関する。
【背景技術】
【0002】
張力付加装置の一例としての紗張り装置が、スクリーン印刷において用いられている。紗張り装置は、スクリーンの面方向に張力を付加するための装置である(特許文献1)。従来技術に係る紗張り装置の構成について、図6を用い説明する。
図6(a)に示すように、従来技術に係る紗張り装置では、対象とするスクリーン950の外側を取り囲むように、複数のエアシリンダ911〜930が配されている。エアシリンダ911〜930の各々には、内向きに配されたクランパ911a〜930aが取り付けられている。
【0003】
このような紗張り装置を用いスクリーン950に張力を付加する際には、スクリーン950をエアシリンダ911〜930で取り囲まれた領域に配置し、各クランパ911a〜930aを用いて、スクリーン950の端縁部分をクランプする。そして、エアシリンダ911〜930の各ロッドをX軸方向あるいはY軸方向へと駆動させる。
図6(b)に示すように、エアシリンダ911〜930の各ロッドを駆動させると、スクリーン950には、その面に沿った方向(X−Y方向)に張力が付加される。ユーザは、上記張力が付加された状態で、スクリーン950の中程領域950aに枠をあてがい、接着剤などで接合する。
【0004】
ところで、図6(b)に示すように、X軸方向とY軸方向にスクリーン950に張力を付加する場合には、スクリーン950において、各コーナ内側部分(矢印D〜Dで示す領域)の歪が特に大きくなってしまい、枠を接合するための領域950aが小さくならざるを得ない。このような課題の解決を図ろうとなされたのが、図7に示す紗張り装置である(特許文献2)。
【0005】
図7に示すように、従来の改良技術に係る紗張り装置では、X軸方向及びY軸方向にスクリーンに張力を付加するためのエアシリンダ911〜930が設けられている点は、図6に示す紗張り装置と同じであるが、改良技術に係る紗張り装置では、これらに加えてスクリーンのコーナ部分を引っ張るための4つのエアシリンダ931〜934が追加されている点が異なる。
【0006】
図7に示す紗張り装置では、その駆動において、エアシリンダ931〜934を駆動してスクリーンの斜め方向に張力を付加し、その状態で他のエアシリンダ911〜930を駆動して紗張りを完了させるものである。このような装置を用いることで、図6に示す従来の紗張り装置に比べて、より均一な張力をスクリーンに付加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−288790号公報
【特許文献2】特開平09−109362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図7に示す紗張り装置では、スクリーンのコーナ部分を引っ張るエアシリンダと、その他のエアシリンダ911〜930とを時間的に前後した状態で駆動するので、スクリーンには歪が残ってしまい、更なる改良が必要である。即ち、図7に示す紗張り装置では、先にスクリーンのコーナ部分をエアシリンダ931〜934で引っ張るので、この引っ張りが行われた時点ですでにスクリーンには歪を生じてしまうことになり、その後においても、この歪を完全に除去することは困難である。
【0009】
なお、上記においては、スクリーン印刷に用いるスクリーンに張力を付加するための紗張り装置を一例としたが、スクリーンに代表されるメッシュ地やその他の布地、更には樹脂フルムや紙などのシート体に張力を付加するような装置についても、同様の課題が存在する。
本発明は、上記問題の解決を図るべくなされたものであって、シート体に対して、面内で均一な張力を付加することができる張力付加装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、次の構成を採用することとした。
本発明に係る張力付加装置は、n角形(nは、3以上の整数)の形状を有するシート体を対象とし、そのシート体の面に沿った方向に張力を付加する装置である。本発明に係る張力付加装置は、n個のベース板と、複数の可動ヘッドと、複数のクランパとを主な要素として備えている。
【0011】
・ n個のベース板;上記n角形の形状(対象とするシート体の形状)の外側を囲み、且つ、その各辺に沿う状態で配されている。
・ 複数の可動ヘッド;上記n角形の形状の外側を囲む状態で、対応する各ベース板に取り付けられている。
・ 複数のクランパ;複数の可動ヘッドの各々に取り付けられ、各々がシート体の端縁をクランプする。
【0012】
ベース板は、上記n角形の形状における対応する辺の延伸方向に対しては位置固定され、且つ、当該延伸方向と直交する方向に移動自在となっている。
複数の可動ヘッドには、上記n角形の形状の各辺の中央に対応して設けられた中央部ヘッドと、各コーナに対応して設けられたコーナ部ヘッドとが含まれている。
中央部ヘッドの各々は、対応するベース板に対し、当該ベース板の延在方向に位置固定されており、コーナ部ヘッドの各々は、上記n角形の形状における対応する両側の辺に対応して設けられたベース板に対し、当該ベース板の延在方向に移動自在である。
【0013】
コーナ部ヘッドの各々と、当該コーナ部ヘッドの両側の辺に対応して配された2つの中央部ヘッドとは、雄ネジと雌ネジとの螺合構造を介して連結されており、装置全体の上記雄ネジ及び雌ネジは、同一のネジ方向、且つ、同一のネジピッチで形成されている。
ここで、雌ネジに対する雄ネジのねじ込み深さは、各中央部ヘッドの雄ネジまたは雌ネジに対して入力された回転力の作用により変化するものであり、コーナ部ヘッドの各々は、当該コーナ部ヘッドの両側辺に対応して配された2つの中央部ヘッドの双方に対して、雌ネジに対する雄ネジのねじ込み深さの変化に応じて、ベース板の延在方向における間隔が変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本発明に係る張力付加装置では、中央部ヘッドおよびコーナ部ヘッドを含む複数の可動ヘッドが、n角形の形状(張力付加対象であるシート体の形状)の外側を取り囲む状態で配されている。そして、コーナ部ヘッドの各々と、当該コーナ部ヘッドの両側辺に対応して配された2つの中央部ヘッドとは、雄ネジと雌ネジとの螺合構造を介して連結され、且つ、中央部ヘッドに入力される回転力により、雌ネジに対する雄ネジのねじ込み深さを変化させることができるようになっている。これにより、中央部ヘッドとコーナ部ヘッドとは、ネジのピッチに応じて正確に互いの間隔が変化される。
【0015】
また、中央部ヘッドとその両側のコーナ部ヘッドとは、ベース板に取り付けられており、ベース板は、n角形の形状の当該辺に沿った方向には位置固定され、これに直交する方向には移動自在となっている。そして、コーナ部ヘッドは、両側の辺に対応する中央部ヘッドに対して、上記のように移動するので、合成された変位だけ移動することになる。
従って、本発明に係る張力付加装置では、複数のヘッドにおける中央部ヘッド及びコーナ部ヘッドは、これらの中心に対して放射状に移動できる。そして、雄ネジ及び雌ネジのネジピッチ及びネジ切方向は、全てにおいて同じであるので、各中央部ヘッドに対する回転力の入力を同期させておけば、これらすべてが同期した状態で移動する。よって、本発明に係る張力付加装置では、シート体に対して、面内で均一な張力を付加することができる。
【0016】
本発明に係る張力付加装置では、例えば、次のようなバリエーションを採用することができる。
上記本発明に係る張力付加装置では、中央部ヘッドとコーナ部ヘッドとの各間に、回転自在の回転軸が挿通されており、中央部ヘッドに入力された回転力が、回転軸を介して雄ネジまたは雌ネジに伝達される、という構成を採用することができる。
【0017】
また、上記本発明に係る張力付加装置では、複数の可動ヘッドに、各中央部ヘッドと各コーナ部ヘッドとの間に挿設された中間部ヘッドが含まれており、中央部ヘッドと中間部ヘッド、及び、中間部ヘッドとコーナ部ヘッドは、各々が等ピッチの関係である、という構成を採用することもできる。
また、上記本発明に係る張力付加装置では、複数の可動ヘッドが、シート体の面に相当する方向において、点対称の関係を以って配されている、という構成を採用することもできる。
【0018】
また、上記本発明に係る張力付加装置では、中央部ヘッドの各々には、ステッピングモータが接続されており、全てのステッピングモータは、同期がとられた状態で、各中央部ヘッドに対して回転力を入力する、という構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る紗張り装置1の構成を示す平面図である。
【図2】紗張り装置1の主要部を部分的に示す部分斜視図である。
【図3】紗張り装置1の主要部の内部構造を示す部分断面図である。
【図4】紗張り装置1の主要部の部分断面図であって、可動ヘッド27〜29が移動した状態を示す。
【図5】紗張り装置1により、張力付加対象であるスクリーン500に張力を付加した状態を示す平面図である。
【図6】(a)は、従来技術に係る紗張り装置の構成を示す平面図であり、(b)は、当該従来技術に係る紗張り装置を用いてスクリーン950に張力を付加した状態を示す平面図である。
【図7】従来における改良技術に係る紗張り装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下の説明に係る実施の形態は、本発明の構成上の特徴および当該特徴的構成から奏される作用効果を分かりやすく説明するための一例として用いるものであって、本発明は、その本質的な特徴部分を除き、以下の内容に何ら限定を受けるものではない。
[実施の形態]
1.構成
本実施の形態では、シート体の一種であるスクリーンを対象とする紗張り装置1を一例に、以下で説明をする。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る紗張り装置1は、24個のヘッド11〜34と、ヘッド11〜34の各々に取り付けられたクランパ48〜71を備える。24個のヘッド11〜34は、X軸方向及びY軸方向に、対象とするスクリーン500の外側を取り囲む状態で、枠状に配されている。
24個のヘッド11〜34の内、スクリーン500におけるX軸方向の辺及びY軸方向の辺の各々の中央に対応して配されたヘッド14,20,26,32には、ステッピングモータ36〜39が取り付けられている。図示を省略しているが、各ステッピングモータ36〜39には、モータドライバが接続されており、同期駆動できるようになっている。
【0022】
また、張力付加の対象であるスクリーン500は、略正方形である。スクリーン500の各辺に対応するヘッド11〜17、ヘッド17〜23、ヘッド23〜29、ヘッド29〜11の配置構成について、図2を用い説明する。
図2に示すように、ヘッド23〜29は、一枚のベース板72上に取り付けられている。ベース板72は、X軸方向における長さが、Y軸方向における幅、及びZ軸方向における厚みに比べて長くなっている。スクリーン500の一辺の中央に対応して配されたヘッド26は、ベース板72に対して固定されている。
【0023】
一方、他のヘッド23〜25,27〜29は、X軸方向にスライド自在となっている。即ち、二点鎖線で囲むC部分に示すように、ベース板72上には、ガイドレール75が敷設されており、これに各ヘッド23〜25,27〜29のガイドブロック76が取り付けられている。
ベース板72の下側には、2つのガイドブロック73,74が取り付けられており、各々がガイドレール44,45に取り付けられている。ガイドレール44,45は、ガイドレール75の延伸方向に対して直交するY軸方向に延伸されている。
【0024】
図2では、図示していないが、ヘッド11〜17、ヘッド17〜23、ヘッド29〜11についても、上記同様の構成を以って配されている。図1に戻って、ヘッド11〜17が取り付けられているベース板(不図示)は、ガイドレール40,41に沿ってY軸方向にスライド自在であり、ヘッド17〜23が取り付けられているベース板(不図示)は、ガイドレール42,43に沿ってスライド自在であり、ヘッド29〜11が取り付けられているベース板(不図示)は、ガイドレール46,47に沿ってスライド自在である。
【0025】
なお、スクリーン500の各コーナに対応して配されているヘッド11,17,23,29については、その両側の辺に対応したベース板に対してスライド自在となっている。例えば、ヘッド23は、ガイドレール42,43に沿ってX軸方向にも移動自在であり、且つ、ガイドレール44,45に沿ってY軸方向にも移動自在である。
紗張り装置1では、24個のヘッド11〜34は、これらの配置に係る仮想中心(点P)に対して、点対称の関係を以って配されている。
【0026】
二点鎖線で囲むB部分に示すように、張力付加の対象であるスクリーン500は、X軸方向及びY軸方向に細かな網目状をしたシート体である。使用材料は、例えば、ポリエステルである。なお、スクリーン500としては、これ以外にバイアス張りのものを採用することもできる。
二点鎖線で囲むA部分に示すように、各クランパ48〜71には、クランプ爪63a,63bを有し、その噛合によりスクリーン500の端縁をクランプできるようになっている。クランパ48〜71の内、スクリーン500の各コーナに対応して配される4つのクランパ48,54,60,66については、クランプ爪が点Pの方を向くように配置されている。他のクランパ49〜53,55〜59,61〜65,67〜71は、クランプ爪がX軸方向またはY軸方向を向くように配置されている。24個のクランパ48〜71は、各々のクランプ爪がスクリーン500の端縁を略等ピッチでクランプする。
【0027】
2.ヘッド11〜34の内部構造
ヘッド11〜34の内部構造について、ヘッド26〜29を一例として、図3を用い説明する。
図3に示すように、ヘッド26〜29を挿通する状態で、回転シャフト104が設けられている。なお、図の右側に向けても回転シャフト125が設けられている。
【0028】
回転シャフト104,125のヘッド26側の端には、ギア102,103が取り付けられている。ギア102,103は、それぞれ“はす葉状”をしており、同様に“はす葉状”をしてステッピングモータ38のモータ軸100の先端に取り付けられたギア101と噛合する。
回転シャフト104には、その軸上において、3つのギア105〜107が取り付けられており、各ヘッド26〜29に対してブッシュ108〜111を介して取り付けられている。このため、回転シャフト104,125は、ステッピングモータ38の回転力を受けて、回転自在となっている。
【0029】
ヘッド26〜28の各々には、回転シャフト104に取り付けられたギア105〜107の各々に対して、噛合するギア112,116,120が設けられている。各ギア112,116,120には、これらと一体に回転するボルト113,117,121が接合されている。ボルト113,117,121は、ヘッド26〜28に対し、ブッシュ114,118,122を介して取り付けられている。
【0030】
ボルト113,117,121は、その先端部分が、隣接するヘッド27〜29に侵入した状態であり、当該部分に雄ネジが設けられている。各ヘッド27〜29には、ボルト113,117,121に対応するナット115,119,123が接合されている。ボルト113,117,121およびこれに対応するナット115,119,123は、全てのネジピッチおよびネジ切り方向が同一である。
【0031】
なお、図3では、一部のヘッド26〜29の内部構造について示したが、他のヘッド11〜25,30〜34についても同様の構造を備えている。
3.ヘッド11〜34のスライド
ヘッド11〜34のスライド駆動について、ヘッド26〜29を一例として、図4を用い説明する。
【0032】
図4に示すように、ステッピングモータ38からモータ軸100を介して、回転力が回転シャフト104に伝達されると、ギア105〜107,112,116,120を介して、ボルト113,117,121が同じ角度だけ回転する。ボルト113,117,121が回転すると、ヘッド27〜29に固定されたナット115,119,123から抜ける方向に、相対的に移動する。
【0033】
ボルト113,117,121及びナット115,119,123のネジピッチは、すべて同一であるので、ヘッド26とヘッド27との間にできる間隙x1と、ヘッド27とヘッド28との間にできる隙間x2と、ヘッド28とヘッド29との間にできる隙間x3は、すべて等しい関係となる。また、隙間x1,x2,x3は、ナット115,119,123に対するボルト113,117,121のねじ込み深さの変化に応じた量となる。
【0034】
上記のように、ステッピングモータ36〜39は同期された状態で駆動されるので、全てのヘッド11〜34が互いの間に同じ隙間を生じることになる。
以上の駆動後の状態を示したのが、図5である。
図5に示すように、各ヘッド11〜34の互いの間に同じ寸法の隙間が生じ、ヘッド11〜34の外形寸法が、(w3×w4)となる。ここで、図1に示す外形寸法(w1×w2)に対しては、次の関係を満たす。
【0035】
[数1]w3−w1=w4−w2
コーナ部分に対応して配されたヘッド11,17,23,29は、その両側からのスライドの合成により、点Pを中心として放射状にスライド移動することになる。
4.優位性
本実施の形態に係る紗張り装置1では、各ヘッド11〜34の互いの間が、雄ネジと雌ネジとの螺合構造を介して連結され、且つ、ヘッド14,20,26,32に取り付けられたステッピングモータ36〜39から入力される回転力により、ナット115,119,123に対するボルト113,117,121のねじ込み深さを変化させることができるようになっている。これにより、ヘッド11〜34は、図5に示すように、点Pを放射状に広がる。
【0036】
従って、本実施の形態に係る紗張り装置1では、複数のヘッド11〜34が点Pを中心に放射状に移動できるので、また、ステッピングモータ36〜39の回転駆動が同期されているので、スクリーン500に対して、面内で均一な張力を付加することができる。
5.その他の事項
上記実施の形態に係る紗張り装置1では、24個のヘッド11〜34を備える構成を一例として採用したが、ヘッドの数はこれに限定されるものではない。特に、機構的に可能な限度において、また、コスト面で許容される限度において、多くのヘッドを構成として含むことが、スクリーンなどのシート体を均一に引っ張る、という観点から望ましい。なお、クランパの配置については、出来るだけ等ピッチとなるようにすることが、シート体に均一な張力を付加するという観点から望ましい。
【0037】
また、上記実施の形態では、正方形のスクリーン500を張力付加の対象としたが、スクリーン500の形状は、これに限られない。例えば、三角形や五角形、あるいはそれ以上の多角形のものを採用することができる。また、上記実施の形態では、張力付加装置の一例として、紗張り装置に本発明の構成を適用したが、これ以外にも樹脂製フィルムに張力を掛けるという用途や、紙に張力を掛ける用途などにも、本発明を適用することができる。
【0038】
また、上記実施の形態では、4つのステッピングモータ36〜39を備える構成を採用したが、一つのモータから回転力を分配して伝達することとしてもよい。また、モータ以外にもロータリアクチュエータなどの動力源を採用することもできる。
また、上記実施の形態では、ボルト113,117,121に回転力を入力することとしたが、逆にナットに回転力を入力することとしても、上記同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
また、上記実施の形態では詳述していないが、クランパ48〜71における各クランプ爪のサイズについては、各々が出来るだけ小さな領域でスクリーンの端縁をクランプ出来るようにすることが望ましい。即ち、各々のクランプ面積を大きくすると、張力を付加した際(図5の状態)に、クランプ部分の近傍でのスクリーンの歪が大きなものとなる。各クランプ面積を極力小さくすることにより、スクリーンの端縁での歪を小さく抑えることができる。
【0040】
また、図1及び図5に示すように、上記実施の形態に係る紗張り装置1では、クランパ49〜53,55〜59,61〜65,67〜71における各クランプ爪の方向をX軸方向またはY軸方向としたが、装置の製造コスト面において許容される場合には、各クランプ爪が点Pを向くように配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、スクリーン印刷でのスクリーンへの張力付加などに際して、面内で均一な張力を付加することができ、高効率の作業を行うことができる張力付加装置を実現するのに有効である。
【符号の説明】
【0042】
1.紗張り装置
11〜34.ヘッド
36〜39.ステッピングモータ
40〜47,75.ガイドレール
48〜71.クランパ
72.ベース板
73,74,76.ガイドブロック
100.モータ軸
101〜103,105〜107,112,116,120,124.ギア
104,125.回転シャフト
108〜111,114,118,122.ブッシュ
113,117,121.ボルト
115,119,123.ナット
500.スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n角形(nは、3以上の整数)の形状を有するシート体に対して、当該シート体の面に沿った方向に張力を付加する張力付加装置であって、
前記n角形の形状の外側を囲み、当該形状の各辺に沿う状態で配されたn個のベース板と、
前記n個のベース板に取り付けられた複数の可動ヘッドと、
前記複数の可動ヘッドの各々に取り付けられ、前記シート体の端縁をクランプするクランパと、
を備え、
前記ベース板は、前記n角形の形状における対応する辺の延伸方向に対しては位置固定され、且つ、当該延伸方向と直交する方向に移動自在となっており、
前記複数の可動ヘッドには、前記n角形の形状における各辺の中央に対応して設けられた中央部ヘッドと、各コーナに対応して設けられたコーナ部ヘッドとが含まれており、
前記中央部ヘッドの各々は、対応する前記ベース板に対し、当該ベース板の延在方向に位置固定されており、
前記コーナ部ヘッドの各々は、対応する両側の辺に対応して設けられた前記ベース板に対し、当該ベース板の延在方向に移動自在であり、
前記コーナ部ヘッドの各々と、当該コーナ部ヘッドに対し、その両側の辺に対応して配された2つの中央部ヘッドとは、雄ネジと雌ネジとの螺合構造を介して連結されており、
全ての前記雄ネジ及び前記雌ネジは、同一のネジ方向、且つ、同一のネジピッチで形成されており、
前記雌ネジに対する前記雄ネジのねじ込み深さは、前記中央部ヘッドの雄ネジまたは雌ネジに対して入力された回転力の作用により変化するものであり、
前記コーナ部ヘッドの各々は、当該コーナ部ヘッドの両側辺に対応して配された2つの中央部ヘッドの双方に対して、前記雌ネジに対する前記雄ネジのねじ込み深さの変化に応じて、前記ベース板の延在方向における間隔が変化する
ことを特徴とする張力付加装置。
【請求項2】
前記中央部ヘッドと前記コーナ部ヘッドとの各間には、回転自在の回転軸が挿通されており、
前記中央部ヘッドに入力された回転力は、前記回転軸を介して前記雄ネジまたは前記雌ネジに伝達される
ことを特徴とする請求項1に記載の張力付加装置。
【請求項3】
前記複数の可動ヘッドには、各中央部ヘッドと各コーナ部ヘッドとの間に挿設された中間部ヘッドが含まれており、
前記中央部ヘッドと前記中間部ヘッド、及び、前記中間部ヘッドと前記コーナ部ヘッドは、各々が等ピッチの関係である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の張力付加装置。
【請求項4】
前記複数の可動ヘッドは、点対称の関係を以って配されている
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の張力付加装置。
【請求項5】
前記中央部ヘッドの各々には、ステッピングモータが接続されており、
全てのステッピングモータは、同期がとられた状態で、各中央部ヘッドに対して回転力を入力する
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の張力付加装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−11417(P2011−11417A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156504(P2009−156504)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(592127965)NKE株式会社 (28)
【Fターム(参考)】