説明

強力なサイクリン依存性キナーゼ阻害剤としてのインディルビン−3’−オキシム誘導体

本発明は、抗癌活性を有する強力なサイクリン依存性キナーゼ阻害剤としてのインディルビン−3’−オキシム誘導体に関する。更に詳細には、本発明は、ヒト肺癌細胞、ヒト繊維肉腫細胞、ヒト大腸癌細胞、ヒト白血病細胞、ヒト胃癌細胞、ヒト鼻咽頭癌細胞及び/又はヒト乳癌細胞に対する優れた抗癌活性を有する強力なサイクリン依存性キナーゼ阻害剤としてのインディルビン−3’−オキシム誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌活性を有する強力なサイクリン依存性キナーゼ阻害剤としてのインディルビン−3’−オキシム誘導体に関する。更に詳細には、本発明は、ヒト肺癌細胞、ヒト繊維肉腫細胞、ヒト大腸癌細胞、ヒト白血病細胞、ヒト胃癌細胞、ヒト鼻咽頭癌細胞及び/又はヒト乳癌細胞に対する優れた抗癌活性を有する強力なサイクリン依存性キナーゼ阻害剤としてのインディルビン−3’−オキシム誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞周期の進行、ニューロン機能、分化及びアポトーシスの調節に関与するセリン/スレオニンキナーゼのグループに属する。これらの活性は対応するサイクリンとの結合を含む複数の機構によって厳重に制御されており、その発現レベルは細胞周期の各期にわたって変動する。種々の異なるCDK/サイクリン複合体が、G1期、S期、G2期、M期を通した細胞周期の各段階において活性化される。初期G1期におけるCDK4/サイクリンD及びCDK6/サイクリンD並びに後期G1期におけるCDK2/サイクリンEによる網膜芽細胞腫蛋白(pRb)の連続的なリン酸化によって、E2F(転写因子タンパク質)の放出が生ずる。次に、E2Fタンパク質は、細胞周期のS期へ入るために必要な一連の遺伝子の転写活性化を引き起こす。続いて、CDK2がDNA複製の後期(S期)にサイクリンAよって活性化され、残存するE2F活性によって誘発されるアポトーシスを防止するよう適切な時期にE2Fの非活性化を促進する。最終的には、サイクリンA又はBと複合体を形成したCDK1が、G2/Mチェックポイントを制御し細胞の有糸分裂を促進する機能を担っていると考えられている。
【0003】
細胞周期の調節に加え、CDK2、7、8及び9について他の役割が分かっている。例えば、CDK2/サイクリンEはp53に媒介されるDNA損傷の反応経路にとって重要であり、CDK7、8、及び9はRNAポリメラーゼのリン酸化を通して転写の開始と伸長の調節に関与している。従って、CDKは種々の異なる機構を通して細胞の成長及び生存に影響を及ぼし、CDK活性の適切な制御はいろいろな細胞プロセスにとって重要である。現在、多くのヒト腫瘍において、サイクリンD及びサイクリンEのようなサイクリンの異常な高発現や変異によるCDKの制御不良が起こることが分かっている。例えば、CDK2/サイクリンE複合体の発現及び触媒活性は大腸癌、卵巣癌、乳癌及び前立腺癌において増加し、原発癌におけるサイクリンEの高発現は乳癌患者の低い生存率と相関関係がある。CDK1/サイクリンB複合体の異常な発現も、いくつかの場合(前立腺腺癌及び肺癌)に観察されている。
【0004】
CDK2は細胞周期の進行及び増殖に必要ないかも知れないという報告があるが、最近の報告は、メラニン形成細胞及び肝細胞が、増殖及び生存に関し、CDK2に依存している可能性を示唆している。また、CDK1及びCDK2を同時に欠乏させた調査では、CDK1又はCDK2のいずれか一つを対象とする場合に比べて、腫瘍セルラインの抗細胞増殖に高い効果があると報告された。更に、新たに得られた証拠により、ある種の腫瘍細胞は増殖のために特定の間期のCDKを必要とする可能性が示唆されている。このように、CDKを阻害することは、癌治療の興味ある標的として、腫瘍の成長を制御する有効な戦略を提供する可能性がある。
【0005】
現在までに、多くの低分子CDK阻害剤が臨床試験中である。これらの阻害剤は、キナーゼのATP結合部位においてATPと競合して作用する平面状の小さい複素環である。これらの中でフラボピリドールは臨床評価に入った最初のCDK阻害剤だった。R−ロスコビチン(1分子中に3個の置換基を有するプリン類縁体)及びBMS−387032(アミノチアゾール)はCDK2/サイクリンEに対して選択性を有し、PD−0332991(ピリドピリミジン)はCDK4/サイクリンD及びCDK6/サイクリンDに対して高い選択性を有している。インディルビン、ビス−インドール・スキャフォールド及びその誘導体は、CDK、GSK−3β及びオーロラキナーゼのような重要なプロテインキナーゼを標的とする強力な阻害剤として、大変な興味を持って調査されてきた。
【0006】
国際公開公報WO2005/070416 A1において、本出願の発明者は、ヒト癌セルラインに対する抗癌特性を有するインディルビン誘導体を開示した。この開示においては、ヒト癌セルラインに関して細胞増殖を阻害することによる抗癌特性を有するインディルビン誘導体が開示されている。開示されたインディルビン誘導体の中で、5’−ブロモ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシムは種々の癌セルラインに対して最も強力な抗増殖効果(IC50=0.79〜2.9μM)を示した。しかし、インディルビン骨格の5’位のラジカルを更に置換することは行われなかったし、また、そのような化合物について抗癌活性も測定されなかった。更に、インディルビン骨格の5’位で種々の置換を行った場合の効果を調べる合成や生物学的評価についての報告もない。
【0007】
一方で、本出願の発明者は、5’位を更に置換することは5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム類縁体と比較して明らかに有利であることを発見した。そして、本出願の発明者は、新規な5’,5−置換インディルビン−3’−オキシム類縁体の設計、合成並びにCDK阻害活性、抗増殖活性及びインビトロ抗癌活性を含む生物学的評価による調査を行って、本発明を完成した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、式(I)で表される抗癌活性を有するサイクリン依存性キナーゼ阻害剤としてのインディルビン−3’−オキシム誘導体化合物を提供することである。
式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
ここで、
1はF、Cl、CH又はCH3から選択され、
2はF、Cl又はNO2から選択される。
【0011】
また、本発明は、R1がOHであり、R2がNO2である化合物;R1がFであり、R2がNO2である化合物を提供する。
【0012】
また、本発明は、
i)R1がOHであり、R2がClである化合物、
ii)R1がOHであり、R2がFである化合物、
iii)R1がClであり、R2がNO2である化合物、及び
iv)R1がCH3であり、R2がNO2である化合物
を提供する。
【0013】
更に、本発明は、ヒト肺癌セルライン、ヒト繊維肉腫セルライン、ヒト大腸癌セルライン、ヒト白血病セルライン、ヒト胃癌セルライン、ヒト鼻咽頭癌セルライン及び/又はヒト乳癌セルラインに対する優れた抗癌活性を有する式(I)で表されるインディルビン−3’−オキシム誘導体化合物を提供する。
【0014】
更に、本発明の目的は、前記インディルビン−3’−オキシム誘導体化合物及び医薬として許容可能な担体を有する抗癌組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に関連したインディルビン誘導体の構造を示す。
【図2】図2は、CDK2のATP結合部位への2及び11bの結合状態を示す。図2(a)は、2とキナーゼ主鎖との間の水素結合ネットワーク(緑色の破線)を示す。2のCDK2との結合状態は、CDK2のヒンジ領域との3個の水素結合、オキシム部分とGln131のカルボニルの酸素との間の更なる水素結合を表している。また、ニトロ基は、Lys33、Asp145の側鎖と塩橋を形成している。図2(b)は、CDK2の2とのファンデルワールス表面をCPK表示で示している。5’−ブロモ基は、正に帯電したアミノ酸残基のLsy89を提示するATP結合ポケットの外側の水性の空間に向かって投影されている。図2(c)は、11bとキナーゼ主鎖との間の水素結合ネットワーク(緑色の破線)を示す。11bは、5’−ヒドロキシ基とAsp86のカルボン酸との間に更なる水素結合を形成している。これにより、CDK2阻害活性が更に向上している可能性がある。図2(d)は、CDK2の、ATP結合部位で結合した11bとの分子表面の表示を示す。結合面内に存在するいくつかの重要なアミノ酸が表示されている。5’−ヒドロキシ基はポケットから溶媒の方に向かっている。
【図3】図3は、5’,5−置換インディルビン−3’−オキシム誘導体が1μMの時のCDK1、CDK2活性のパーセントを示す。一連のインディルビン誘導体が、明細書に記載したように、1μMで、CDK1/サイクリンB、CDK2/サイクリンBについての効果が試験されている。実験は、比較対象として、5−ニトロインディルビン−3’−オキシム(1)についても実施された。
【図4】図4は、10μMでの11b、12bのキナーゼパネルによるスクリーニングを示す。化合物11b、12bが、明細書に記載したように、10μMの濃度で、受容体型チロシンキナーゼ及びセリン/スレオニンキナーゼからなる種々のキナーゼパネルに対して試験されている。1μMの11bはTrkAに対する9%の阻害活性を示し、また、AuroraA(1μM)とIKKβ(10μM)の2種のセリン/スレオニンキナーゼ及び受容体型チロシンキナーゼTrkA(4μM)に対する11bのIC50値が用量反応曲線から算出されている。
【図5】図5は、11bによる異種移植された腫瘍の成長の抑制を示す。図5は、SD−ラットがRK3E−ras−Luc細胞(5×106/100μl)を注射されたこと示している。腫瘍が5mmの大きさに達した時、ラットは非麻酔状態で1日おきに合計5回、静脈内に11b(5mg/kg)が注射された。腫瘍の大きさは、明細書に記載したようにノギスで測定した。図5(b)は、対照及び11bで処置されたラットから切除された皮下腫瘍の代表例を示す。図5(c)は、対照及び11bで処置されたラットのインビボ生物発光イメージングアッセイを示す。
【図6】図6は、腫瘍組織の組織学的検査及び免疫組織化学的検査を示す。RK3E−ras−Luc細胞がラットの左側腹部に皮下接種された。5日目から1日おきに、11b(5mg/kg)が担腫瘍ラットの静脈内に注射された。11日目にラットを屠殺した。図6(a)は、腫瘍切片のH&E染色(左側)、固形腫瘍のパラフィン切片のTUNELアッセイ(中央)、及び、PCNAの免疫組織化学染色(右側)を示す。図6(b)はTUNELアッセイの陽性細胞を示し、図6(c)はPCNA免疫染色の陽性細胞を示す。細胞は3回計数した(柱は平均値、棒線はSD)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
インディルビン誘導体を含む抗癌剤のターゲットであるCDK2/サイクリンEに対する阻害活性を向上させるために、5’位及び5位の両方を置換した新規な一連のインディルビン−3’−オキシム誘導体を設計し、合成した。5’−置換類縁体の、OH又はハロゲンとの結合状態はCDK2のATP結合部位における分子ドッキングの研究により予測され、更に、CDK2阻害活性の向上を説明する可能性のある重要な相互作用も示された。
【0017】
構造活性相関解析は、5’位では、CH3やOCH3のような電子供与性基よりもOH基やハロゲン基の方が好ましいことを示している。合成した誘導体の中では、5’−ヒドロキシ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(11b)及び5’−フルオロ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(13b)が、CDK2に対してIC50値がそれぞれ1.9nM、1.7nMの強力な阻害活性を示し、また、種々のヒト癌セルラインに対してIC50値が0.2〜3.3μMの範囲の抗増殖効果を示した。10種の異なる受容体型チロシンキナーゼ及びセリン/チロシンキナーゼのパネルでの11bのキナーゼ選択性プロファイルの研究の結果、CDKに対する阻害活性の選択性は500倍以上であった。11bの抗癌活性が更に確認され、5mg/kgの用量で静脈内投与されたインビボ異種移植動物モデルは体重の減少もなく対照動物に比べて84%の腫瘍容積の減少を示した。組織学的解析を通した抗腫瘍活性の機序がアポトーシス及び増殖のマーカーによって示され、それぞれアポトーシスは増加し、増殖は減少した。
【0018】
更に、他の類縁体、例えば5’−ヒドロキシ−5−クロロ−インディルビン−3’−オキシム(11a)、5’−ヒドロキシ−5−フルオロ−インディルビン−3’−オキシム(11c)、5’−クロロ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(12b)及び5’−メチル−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(14b)が効果的な抗癌剤と考えられた。
【0019】
本発明は、以下の通り、更に具体的に説明することができる。
【0020】
設計戦略のための分子ドッキング
化合物2の増強された抗増殖効果に取り組むために、CHARMm−ベース・分子動力学・ドッキング・プログラム(Discovery Studio 2.0)のCDockerを用いて、CDK2(図2)のATP結合部位における分子ドッキングの研究を行った。図2(a)は、化合物2の1’位の窒素、2位のカルボニルの酸素及び1位の窒素がATP結合部位のヒンジ部分(Gln81、Leu83)と3個の水素結合の相互作用を維持していることを示している。更に、オキシム部分の3’−ヒドロキシル基はGln31の主鎖カルボニルと水素結合を形成し、5−ニトロ基はLys33、Asp145の側鎖との塩橋に寄与している。図2(b)は、リガンド、2及び5’−Br基の周囲4Å以内の静電ポテンシャルを有する結合面が、実質的な結合相手である正に帯電したアミノ酸残基のLsy89が存在するATP結合ポケットの外側の水性の空間に向かって投影されているようであることを示している。5’−Br基の孤立電子対の電子と正に帯電したLys89残基との別の静電的な相互作用がCDK2との高い結合親和性を与えているようであり、その結果、5’−非置換−インディルビン−3’ −オキシム類縁体の1に比べて2がより強力な抗増殖活性を有することに貢献しているという仮説を立てることができる。ドッキングの研究によって得られたデータによれば、5−置換基(Cl、NO2、F及びOCF3)に加えて更に5’−位の誘導体化を行うことは、CDK2の結合親和性を最適化するためのインディルビン・スキャフォールドの修飾の戦略に理想的であろう。
【0021】
CDK阻害活性及び抗増殖活性に関してインディルビン骨格の5’位での構造活性相関を調査するために、次のグループを誘導体化に選定した。1)5’−F,5’−Cl(5’−ブロモ類縁体の2の場合と同様な静電相互作用をLys89と形成することができる)、2)5’−OH(CDK2に更なる水素結合を提供して親水性の性質を導入する)、3)5’−OCH3、5’−CH3(ハロゲン置換類縁体と比較した対比効果を期待する)。
【0022】
事実、設計した分子の代表例、5’−ヒドロキシ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム誘導体(11b)のCDK2のATP結合部位におけるドッキングモデルは、新しい水素結合の相互作用が溶媒露出領域において11bの5’−OH基とAsp86の間で形成されているようであり、また、11bのオキシム部がGln131ではなくIle10と相互作用しているようであることを示した。図2(d)は、11bの周囲4Å以内の静電ポテンシャルを有する結合面を提示し、5’−OHがどのように外側の水性の表面、溶媒露出領域の中へ向って突き出ているかを示した。
【0023】
化学
5’,5−置換−3’−インディルビン・オキシム誘導体を合成するために、5−置換インドキシルN,O−ジアセテート(5a〜d)を対応する5−置換アントラニル酸(3a〜d)から調整した(スキーム1)。
【0024】
【化2】

【0025】
簡潔に言えば、化合物3a〜dをグリオキシル酸エチルの存在下で還元的アルキル化条件に置き、続いて、加水分解してジカルボン酸(4a〜d)を得、最終的にこれを無水酢酸中で環化して5a〜dを得た。5’−ヒドロキシ誘導体の場合、フェノール性ヒドロキシル基も環化条件下でアセチル化されるので、環化化合物5aはトリアセテートの形で得た。
【0026】
“Moon,M.J.et al.,Bioorg.Med.Chem.2006,14,237−246”では、5−置換インドキシルN,O−ジアセテート(5a〜d)を種々の5−置換イサチン類縁体(6a〜d)と共役反応させて塩基性条件下で5’,5−置換インディルビン誘導体(7〜10)を得、続いて、ケトンを3’−オキシム基に変換するためにそれぞれのインディルビン(7〜10)をヒドロキシルアミンと反応させて、5’,5−置換−3’−インディルビンオキシム誘導体(11〜14)が合成された(スキーム2)。
【0027】
【化3】

【0028】
5’−メトキシ−5−置換−3’−オキシム化合物(16a〜c)は、対応する5’−ヒドロキシ−5−置換―インディルビン誘導体(15a〜c)から、フェノール性ヒドロキシル基をメチル化し、続いて、ヒドロキシルアミンと反応させることによって合成した(スキーム3)。
【0029】
【化4】

【0030】
CDK阻害活性及びキナーゼ選択制プロファイル
5’,5−置換−インディルビン−3’−オキシム誘導体は、最初に、1μMでCDK1/サイクリンB、CDK2/サイクリンEに対する阻害活性を評価した(図3)。5’−位の置換体の効果の比較のために、5−ニトロインディルビン−3’−オキシム(1)も併せて試験した。CDK1と比べた場合のCDK2に対するこれらの化合物の阻害活性及び選択性は、R1−位の5’−置換基に依存することが分かった。一般に、5’,5−置換インディルビン−3’−オキシム誘導体は、12d及び16a〜cを除いて、CDK2に対して1μMで90%以上の阻害効力を有する強力な阻害活性を示した。特に、5’−OH類縁体の11a〜dは、CDK1及びCDK2の両方に対して最も高い阻害効力示した。R1位の5’−OHは、CDK1と比べたCDK2の選択性を減少させる結果となったが、しかしながら、文献によれば、CDK1及びCDK2に対する同時阻害剤が抗癌活性の点で更なる利点を有する可能性があるという観点から、この結果は重要と言える。更に、5’−ヒドロキシル基の置換は、インディルビン類縁体の物理化学的性質の中で大きな欠点であった水溶性を改善させた。5’−OH−置換インディルビン−3’−オキシム誘導体とは対照的に、5’−クロロ及び5’−フルオロ置換インディルビン−3’−オキシム誘導体(12a〜d及び13a〜d)は、CDK1と比べて6〜10倍の選択性で強力なCDK2阻害活性を保持した。例えば、5’−クロロ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(12b)は、CDK2に対しては、CDK1よりも約8倍強力であった(表1)。
【0031】
表1.5’,5−置換インディルビン−3’−オキシム誘導体のCDK2/サイクリンE阻害活性
【0032】
【表1】

【0033】
実験の項に記載したように、一連のインディルビン誘導体を10種の濃度でCDK2/サイクリンEキナーゼアッセイの試験をした。用量反応曲線からIC50を計算した。CDK1/サイクリンBキナーゼアッセイにおける11b及び12bのIC50値は、それぞれ13nM及び195nMである。
【0034】
5’−ハロゲン化によってCDK1阻害効力が低下することは、5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(1)に比べて低いCDK1阻害活性(IC50=190nM)を示した5’−ブロモ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(2)についての報告によって更に裏付けることができる。5’位に電子供与性基を有する一連の化合物の中で、5’−CH3を有する14bは、CDK1と比べて7倍の選択性で強力なCDK2阻害活性を保持した。しかしながら、5’−OCH3置換誘導体(16a〜c)は、1nMでCDK1及びCDK2に対して弱い阻害活性を示したか又は阻害活性は示さなかった。
【0035】
CDK2阻害活性に関して、5’,5−インディルビン−3’−オキシム誘導体の構造活性相関をIC50値により分析した(表1)。5’−OCH3誘導体(16a〜c)を除いて、ほとんどの誘導体は1〜70nMのIC50値で強力な阻害活性を示した。R位の5’−置換基の効果に関しては、−OCH3<−Cl<−H、−CH3<−OH、Fの順に従ってCDK2阻害活性は増加した。例えば、5’−クロロ−置換−インディルビン−3’−オキシム誘導体(12a〜d)は、5’−フルオロ−インディルビン−3’−オキシム誘導体(13a〜c)(IC50=1〜8nM)よりも10倍弱いCDK2阻害活性(IC50=10〜76nM)を示した。他の電子供与性基である5’−CH3−が置換されたインディルビン−3’−オキシム(14b)は16bに比べて270倍の増強された阻害効果を示したが、電子供与性基の5’−OCH3置換基(16a〜c)は2−8μMのIC50値で極めて低いCDK2阻害活性を示した。特に、最も強力なCDK2阻害剤である11b、13b及び13cは、CDK2に対するIC50値が約2nMで、5’−非置換−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(1)(IC50=7nM)よりも約4倍高い効力を示した。インディルビン−3’−オキシム誘導体のR2位の5−置換の効果の分析では、ニトロ基及びフルオロ基は、クロロ基又はトリフルオロメトキシ基のような他の5−置換基よりも、概してCDK2阻害により有利であった。総合すれば、5’−位のOH及びF並びに5−位のNO2及びFのような電子的効果を与える置換基の組み合わせを有するインディルビン−3’−オキシム誘導体は、CDK2に対して強力な阻害活性を示した。
【0036】
代表的な強力で選択的なCDK2阻害剤11b及び12bは、受容体型チロシンキナーゼ及びセリン/スレオニンキナーゼを含むキナーゼのより多様なパネルに対して、更に評価を行った(図4)。11bは、試験したキナーゼの中でAurora A、IKKβ及びTrkAに対してのみ弱い阻害活性を示し、IC50値は1〜10μMの範囲であった。12bは、試験した全てのキナーゼパネルに対して、無視できる程度の阻害活性しか示さなかった。11b及び12bのCDK1及び2に対するIC50値が低いナノモルの範囲にあることから、この研究で試験したセリン/スレオニンキナーゼ及び受容体型チロシンキナーゼにおけるキナーゼ選択性プロファイルはCDK1及びCDK2に非常に有利と言える。
【0037】
抗増殖活性
種々の癌セルライン、A549、HT1080、HCT116、K562、SNU638、KB、MCF−7に対する5’,5−置換−インディルビン−3’−オキシム誘導体の抗増殖活性をSRBアッセイにより評価し、癌細胞増殖阻害のIC50値を表2にまとめた。5’−ブロモ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(2)及びロスコビチンは、このアッセイにおいて、ポジティブコントロールとして一緒に試験した。
【0038】
表2.異なるヒト癌セルラインについての5’,5−置換インディルビン−3’−オキシム誘導体の抗増殖活性
【0039】
【表2】

【0040】
実験の項で説明したように、SRBアッセイを用いて、a一連のインディルビン誘導体の種々のヒト癌セルラインに対する効果を5つの濃度で試験した。IC50(μM)値は、用量反応曲線から計算した。bヒト肺癌細胞。cヒト繊維肉腫細胞。dヒト大腸癌細胞。eヒト白血病細胞。fヒト胃癌細胞、gヒト鼻咽頭癌細胞。hヒト乳癌細胞。i実験は、ポジティブコントロールとして、2及びロスコビチンについても実施した。
【0041】
5’−ヒドロキシ誘導体(11a〜d)の抗増殖活性は、NO2>F>Cl、OCF3の順で、5位の置換基に応じてCDK2に対するこれらの阻害活性の効力と良く相関した。特に、5’−ヒドロキシ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(11b)は、HT1080及びHCT116セルラインに対して〜0.4μMのIC50値を有し、2と比較して、癌細胞に応じて同程度の又は改善された阻害活性を示した。2の5’−ブロモ基をF及びClのような他のハロゲン基に置き換えた化合物の中で、5−ニトロ誘導体(12b及び13b)は、5’−ブロモ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム化合物(2)よりも、特にサイクリンD1の調節を解除しているヒト大腸癌細胞HCT116に対して、約0.3μMのIC50値で、より効果的であった。
【0042】
特に、5’−フルオロ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(13b)は、その強力なCDK2阻害活性と相関して、全ての癌細胞に対して最も広い阻害効力スぺクトル(IC50=0.28〜0.94μM)を示した。化合物13bは、他の誘導体の多くが弱い活性であるのとは対照的に、ヒト肺癌細胞A549に対して、他にはないナノモルのIC50値の抗増殖活性を有する。しかしながら、5’−CH3、5’−OCH3のような電子供与性基と置換されたインディルビン−3’−オキシム誘導体(14及び16)は、抗増殖活性がIC50値0.8〜1μMの範囲である5’−メチル−5−ニトロ−3’−オキシム(14b)を除いて、多くの癌細胞に対して非常に弱い阻害剤であった。5−位(R)の置換の効果に関しては、5−NO3基は、5’−OH、Cl、F、CH3と組み合わせたときに、一連の5’,5−二置換誘導体の中で最も強力な抗増殖効果を示した。この結果は、我々の以前に発表した結果23とよく一致し、また、2及び11bの仮定した結合状態、すなわちCDK2のATP結合部位において5−ニトロ基とAsp145、Lys33との間で塩橋を有する更なる結合が形成されているようであるということによって指示されている。5’−OCH3誘導体の場合、5−F置換類縁体(16b)のみが中程度の抗増殖活性を示し、これにより異なる作用機序がこの類縁体に関連している可能性が示唆された。この研究の結果を組み合わせると、5’−ヒドロキシル基又はハロゲン基は、おそらくCDK2のATP結合部位で更なる水素結合の相互作用を形成することによって、CDKや癌細胞増殖の阻害に有利だろうという重要な考察が示唆される。
【0043】
11bのインビボ抗癌活性
5’−OH−5−ニトロ類縁体(11b)のインビボの効果を探索するために、我々のグループが発表したように、k−ras遺伝子及びGFP/Luc遺伝子を有しているRK3Eラット腎臓細胞が皮下移植されたSprague Dawley(SD)ラットの腫瘍異種移植動物モデルを利用した。移植の5日後に、11bを5mg/kgで1日おきに、合計5回、日々モニタリングしながら動物にi.v.投与した。腫瘍の容積は、コントロール群(図5(a)及び図5(b))と比較して約84.3%で、有意に減少した。11bの投与期間中は、コントロール群と比較して体重に有意な差はなかった(データは示さず)。11bの処置の後10日目に得られたバイオルミネセンスイメージは、腫瘍成長の指標であるルミネセンス強度が有意に減少していることを示した(図5(c))。
【0044】
組織学的分析により、未処置のコントロールの固形腫瘍は、多くの有糸分裂像、多病巣性壊死及び出血を示している未分化の癌腫に属していることが明らかになった。しかし、11bで処置した腫瘍は、広範な細胞死を引き起こした(図6(a)左側)。TUNEL−陽性のアポトーシス細胞は、11bで処置した動物の組織の場合はコントロールの組織と比べて約6倍増加した(図6(a)中央及び図6(b))。一方、細胞増殖マーカーであるPCNAの発現レベルは、11bで処置した動物においてはコントロールと比べて低下した(図6(a)右側及び図6(c))。これらの結果は、インビボにおける細胞増殖阻害及びアポトーシス活性化を通して、11bが腫瘍の成長を抑制することを示している。
【0045】
要約すると、種々の癌セルラインに抗増殖活性を有する、CDK1及び2に対する強力な阻害剤として、いくつかの新規な5’,5−置換−インディルビン−3’−オキシム化合物を開発した。5’,5−置換インディルビン−3’−オキシム誘導体の増強された阻害活性は、CDK2のATP結合部位における分子ドッキングの研究によって、5’−非置換インディルビン−3’−オキシム(1)と比較して解釈できた。その結果、溶媒露出領域に向かった分子の更なる投影図及び5’−ヒドロキシ類縁体(11b)で例示されるようなATP結合ポケットの提示されたアミノ酸残基との相互作用が決定された。特に、5’−ヒドロキシ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(11b)及び5’−フルオロ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(13b)は、それぞれ1.71nM及び1.91nMのIC50値を有する強力なCDK2阻害剤であり、更に、0.2〜3.3μMの範囲のIC50値を有する種々のヒト癌セルラインへの強力な抗増殖剤でもあった。構造活性相関分析により、5’位は、5’−CH3、5’−OCH3のような電子供与性基よりOH基及びハロゲン基の方が好ましいことが示された。代表的な類縁体である5’−ヒドロキシ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(11b)は、選択したキナーゼパネルについてCDKに対する阻害活性の選択性は500倍以上を示し、また、重要なインビボ抗癌活性も示した。この研究から得られた情報は、CDK阻害剤に基づくドラッグデザインの開発及び臨床応用に貢献することが期待された。
【0046】
更に、5’−ヒドロキシ−5−クロロ−インディルビン−3’−オキシム(11a)、5’−ヒドロキシ−5−フルオロ−インディルビン−3’−オキシム(11c)、5’−クロロ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(12b)及び5’−メチル−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(14b)のような他の類縁体も有効な抗癌剤と考えられた。
【0047】
本発明は、次の実施例によって、より具体的に説明することができる。しかし、本発明の範囲は、次の実施例に限定して解釈してはならい。
【実施例】
【0048】
化学
300MHzのJEOL JNM−LA 300WB分光計又は400MHzのJEOL JNM−ECX 400P分光計を用いて、1H NMRスペクトルを決定した。スペクトルは、CDCl3、DMSO−d6又はアセトン−d6において取得した。特に明記しない限り、化学シフトは、内部テトラメチルシランからの低磁場側のppm又はDMSO(2.5ppm)、アセトン(2.04ppm)からの相対的なppmとして表示する。質量分析法は、エレクトロスプレーで実施し、FAB、EI[JEOL:マスレンジ2600amu、10kV加速]及びESIで高分解能質量スペクトル(m/z)を記録した。高分解能質量分析はKorea Basic Science Institute(Daegu)で実施した。
【0049】
全ての最終生成物の純度はHPLCで決定した(特に明記しない限り、少なくとも95%の純度)。純度の決定は、島津 Shim−pack C18 分析カラム(250mm 4.6mm,5m,100Å リニアグラジエント溶媒システム)を用いて、島津 SCL−10A VP HPLCシステムにより行った。溶媒システムは、流速=1mL/minでH2O:CH3CN=65:35から5:95へ30minとした。ピークはダイオードアレイ検出器を用いたUV吸収により検出した。
【実施例1】
【0050】
5−置換インドキシN,O−ジアセテート(5a〜d)の調製
5−置換アントラニル酸(1.0g、6.45mmol)を50mlのメタノールに溶解した溶液に0.5mlの酢酸を加え、次いでグリオキシル酸エチル(1ml,9.7mmol)及びNaCNBH3(609.5mg,9.7mmol)を加えた。反応混合物は室温で3時間撹拌した。その後、エバポレーションによってメタノールを除去した。残渣を飽和NH4Cl水溶液に溶解し、酢酸エチルで抽出した。抽出物を合せ、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、エバポレーションを行った。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(CH3Cl:メタノール=30:1)で精製し、更に、この生成物(1.4g,5.8mmol)を25mlの1規定のNaOH(aq)と10mlのメタノールの中で加水分解した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、得られた溶液を1規定のHClで酸性化した。形成された沈殿物をろ過によって集め、水で洗浄した。得られた二酸化合物(4a〜d)(1.2g,4.97mmol)を無水酢酸(15ml)とNa2CO3(1.3g,12.4mmol)の中へ加えた。反応混合物を4時間還流した。生成物を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した。抽出物を合せ、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、エバポレーションを行った。生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製した。
【0051】
1−アセチル−1H−インドール−3,5−ジイルジアセテート(5a)のデータ
1H NMR (CDCl3, 300 MHz, ppm, J in Hz) 8.46 (1H, d, J = 9.3 Hz), 7.76 (1H, s), 7.30 (1H, d, J = 2.4 Hz), 7.11 (1H, dd, J = 9.3, 2.4 Hz), 2.67 (3H, s), 2.36 (3H, s), 2.31 (3H, s). ESI [M-H] - : 273.83.
1−アセチル−5−クロロ−1H−インドール−3−イルアセテート(5b)のデータ
1H NMR (CDCl3, 400 MHz, ppm, J in Hz) 8.40 (1H, d, J = 8.8 Hz), 7.75 (1H, s), 7.53 (1H, d, J = 2 Hz), 7.34 (1H, dd, J = 8.8, 2 Hz), 2.61 (3H, s), 2.39 (3H, s). ESI [M-H] - : 249.83.
1−アセチル−5−フルオロ−1H−インドール−3−イルアセテート(5c)のデータ
1H NMR (CDCl3, 400 MHz, ppm, J in Hz) 8.42 (1H, m), 7.75 (1H, s), 7.19 (1H, dd, J = 8.2, 2.4 Hz), 7.10 (1H, td, J = 8.8, 2.4 Hz), 2.59 (3H, s), 2.37 (3H, s). ESI [M-H] - : 233.88.
1−アセチル−5−メチル−1H−インドール−3−イルアセテート(5d)のデータ
1H NMR (CDCl3, 400 MHz, ppm, J in Hz) 8.31 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.65 (1H, s), 7.31 (1H, s), 7.19 (1H, d, J = 7.6 Hz), 2.57 (3H, s), 2.44 (3H, s), 2.36 (3H, s). ESI [M-H] - : 229.80.
【実施例2】
【0052】
5’,5−置換インディルビン−3’−オキシム誘導体(11〜14)の調製
イサチン類縁体(77mg,0.425mmol)をメタノール(5ml)に溶解した溶液に5−置換インドキシN,O−ジアセテート(100mg,0.425mmol)を加え、混合物を5分間撹拌した。無水Na2CO3(112.5mg,1.06mmol)を加え、室温で3時間撹拌を継続した。黒色の沈殿物をろ過し、冷水で洗浄し、減圧下で乾燥して、5,5−置換インディルビンの誘導体(7〜10)を得た。適当なインディルビン誘導体(10mg,0.032mmol)をピリジン(0.3ml)に溶解し、塩酸ヒドロキシルアミン(6.6mg,0.095mmol)を加えた。反応混合物を還流下で120℃、2時間加熱した。冷却後、生成物を1規定HClで酸性化した。沈殿物をろ過し、水で洗浄して、対応する3’−オキシムを定量的に、(2’Z,3’E)の形態で選択的に得た。生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム:メタノール=20:1)で精製した。
【0053】
(2’Z,3’E)−5’−ヒドロキシ−5−クロロ−インディルビン−3’−オキシム(11a)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.71 (1H, s, N-H), 10.78 (1H, s, N'-H), 9.27 (1H, s, O-H), 8.59 (1H, d, J = 2 Hz, H-4), 7.74 (1H, d, J = 2 Hz, H-4'), 7.24 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7), 7.11 (1H, dd, J = 8, 2 Hz, H-6'), 6.87 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-6), 6.85 (1H, d, J = 8 Hz, H-7'). HRMS (EI) [M]+ (C16H10ClN3O3): calcd 327.0411 found 327.0408. Purity 92%.
(2’Z,3’E)−5’−ヒドロキシ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(11b)のデータ
1H NMR (DMSO, 300 MHz, ppm, J in Hz) 13.87 (1H, s, NOH), 11.78 (1H, s, N-H), 11.35 (1H, s, N'-H), 9.41 (1H, d, J = 2.8 Hz, H-4), 9.32 (1H, s, O-H), 8.05 (1H, dd, J = 11.6, 2.8 Hz, H-6), 7.76 (1H, d, J = 3.2 Hz, H-4'), 7.29 (1H, d, J = 11.6 Hz, H-7), 7.04 (1H, d, J = 11.2 Hz, H-7'), 6.86 (1H, dd, J = 11.2, 3.2 Hz, H-6'). HRMS (EI) [M]+ (C16H10N4O5): calcd 338.0651 found 338.0648.
(2’Z,3’E)−5’−ヒドロキシ−5−フルオロ−インディルビン−3’−オキシム(11c)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.69 (1H, s, N-H), 10.66 (1H, s, N'-H), 9.25 (1H, s, O-H), 8.42 (1H, dd, J = 11.4, 2.8 Hz, H-6), 7.73 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4'), 7.24 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-6'), 6.81-6.99 ( 3H, m, H-7', H-4, H-7). HRMS (EI) [M]+ (C16H10FN3O3): calcd 311.0706 found 311.0707. Purity 93%.
(2’Z,3’E)−5’−ヒドロキシ−5−トリフルオロメトキシ−インディルビン−3’−オキシム(11d)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.70 (1H, s, N-H), 10.78 (1H, s, N'-H), 9.22 (1H, s, O-H), 8.50 (1H, s, H-4), 7.70 (1H, d, J = 2 Hz, H-4'), 7.21 (1H, d, J = 8.8 Hz, H-7'), 7.03 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7), 6.88 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-6), 6.80 (1H, dd, J = 8.8, 2.4 Hz, H-6'). HRMS (ESI) [M-H] - (C17H9F3N3O4): calcd 376.0545 found 376.0546.
(2’Z,3’E)−5’−クロロ−5−クロロ−インディルビン−3’−オキシム(12a)のデータ
1H NMR (acetone, 300 MHz, ppm, J in Hz) 13.05 (1H, s, NOH), 11.82 (1H, s, N-H), 9.81 (1H, s, N'-H), 8.67 (1H, s, H-4), 8.35 (1H, d, J = 1.8 Hz, H-4'), 7.45 (2H, m, H-6, H-7), 7.16 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-6'), 6.97 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7'). HRMS (EI) [M]+ (C16H9Cl2N3O2): calcd 345.0072 found 345.0075.
(2’Z,3’E)−5’−クロロ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(12b)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.98 (1H, s, N-H), 11.39 (1H, s, N'-H), 9.45 (1H, s, H-4), 8.25 (1H, s, H-4'), 8.08 (1H, d, J = 7.6 Hz, H-6), 7.50 (2H, m, H-6', H-7), 7.05 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7'). HRMS (ESI) [M-H] - (C16H8ClN4O4): calcd 355.0234 found 355.0242.
(2’Z,3’E)−5’−クロロ−5−フルオロ−インディルビン−3’−オキシム(12c)のデータ
1H NMR (acetone, 300 MHz, ppm, J in Hz) 12.96 (1H, s, NOH), 11.78 (1H, s, N-H), 9.71 (1H, s, N'-H), 8.41 (1H, d, J = 11.4 Hz, H-7), 8.32 (1H, s, H-4), 7.40-7.50 (2H, m, H-4', H-6'), 6.88-6.91 (2H, m, H-6, H-7'). HRMS (ESI) [M-H] - (C16H8ClFN3O2): calcd 328.0289 found 328.0291.
(2’Z,3’E)−5’−クロロ−5−トリフルオロメトキシ−インディルビン−3’−オキシム(12d)のデータ
1H NMR (acetone, 300 MHz, ppm, J in Hz) 13.02 (1H, s, NOH), 11.82 (1H, s, N-H), 9.88 (1H, s, N'-H), 8.63 (1H, s, H-4) , 8.34 (1H, d, J = 2.1 Hz, H-4'), 7.47 (2H, m, H-6, H-7), 7.11 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-6'), 7.03 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7'). HRMS (ESI) [M-H] - (C17H8ClF3N3O3): calcd 394.0206 found 394.0215.
(2’Z,3’E)−5’−フルオロ−5−クロロ−インディルビン−3’−オキシム(13a)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.81 (1H, s, N-H), 10.85 (1H, s, N'-H), 8.62 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4), 7.97 (1H, dd, J = 8.2, 2.4 Hz, H-6), 7.47 (1H, m, H-4'), 7.31 (1H, m, H-7), 7.15 (1H, dd, J = 8.4, 2 Hz, H-6'), 6.88 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7'). HRMS (ESI) [M-H] - (C16H8ClFN3O2): calcd 328.0289 found 328.0295.
(2’Z,3’E)−5’−フルオロ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(13b)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.89 (1H, s, N-H), 11.40 (1H, s, N'-H), 9.43 (1H, d, J = 2 Hz, H-4), 8.08 (1H, dd, J = 8.6, 2 Hz, H-6), 8.00 (1H, dd, J = 8.6, 2 Hz, H-7), 7.51 (1H, m, H-4'), 7.33 (1H, td, J = 9, 2.8 Hz, H-6'), 7.06 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7'). HRMS (EI) [M]+ (C16H9FN4O4): calcd 340.0608 found 340.0610.
(2’Z,3’E)−5’−フルオロ−5−フルオロ−インディルビン−3’−オキシム(13c)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.76 (1H, s, N-H), 10.68 (1H, s, N'-H), 8.41 (1H, dd, J = 11.2, 2.4 Hz, H-4), 7.93 (1H, dd, J = 8.8, 2.4 Hz, H-4'), 7.39 (1H, m, H-7), 7.30 (1H, td, J = 8.8, 2 Hz, H-6), 6.93 (1H, td, J = 9, 2.4 Hz, H-6'), 6.84 (1H, m, H-7'). HRMS (EI) [M]+ (C16H9F2N3O2): calcd 313.0663 found 313.0666. Purity 93%.
(2’Z,3’E)−5’−フルオロ−5−トリフルオロメトキシ−インディルビン−3’−オキシム(13d)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 12.02 (1H, s, N-H), 10.72 (1H, s, N'-H), 8.59 (1H, s, H-4), 8.02 (1H, dd, J = 8.8, 2.4 Hz, H-6), 7.41 (1H, m, H-4'), 7.18 (1H, td, J = 9.2, 2 Hz, H-6), 7.00 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7), 6.9 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7'). HRMS (FAB) (C17H9O3N3F4): calcd 379.0579 found 379.0580.
(2’Z,3’E)−5’−メチル−5−クロロ−インディルビン−3’−オキシム(14a)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.85 (1H, s, N-H), 10.76 (1H, s, N'-H), 8.64 (1H, s, H-4), 8.10 (1H,s, H-4'), 7.29 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-6), 7.20 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7), 7.10 (1H, d, J = 8.2 Hz, H-6'), 6.86 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7'), 2.31 (3H, s, CH3). HRMS (EI) [M]+ (C17H12ClN3O2): calcd 325.0618 found 325.0623.
(2’Z,3’E)−5’−メチル−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(14b)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.87 (1H, s, N-H), 11.38 (1H, s, N'-H), 9.46 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4), 8.11 (1H,s, H-4'), 8.07 (1H, dd, J = 8, 2.4 Hz, H-6), 7.37 (1H, d, J = 8 Hz, H-7), 7.26 (1H, d, J = 8.8 Hz, H-6'), 7.05 (1H, d, J = 8.8 Hz, H-7'), 2.32 (3H, s, CH3). HRMS (ESI) [M-H] - (C17H11N4O4): calcd 335.0780 found 335.0787. Purity 93%.
(2’Z,3’E)−5’−メチル−5−フルオロ−インディルビン−3’−オキシム(14c)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.78 (1H, s, N-H), 10.61 (1H, s, N'-H), 8.43 (1H, dd, J = 11.2, 2.4 Hz, H-4), 8.06 (1H,s, H-4'), 7.26 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7), 7.17 (1H, d, J = 8 Hz, H-7'), 6.86 (1H, td, J = 8.4, 2.4 Hz, H-6), 6.80 (1H, d, J = 8 Hz, H-6'), 2.28 (3H, s, CH3). HRMS (EI) [M]+ (C17H12FN3O2): calcd 309.0914 found 309.0912.
(2’Z,3’E)−5’−メチル−5−トリフルオロメトキシ−インディルビン−3’−オキシム(14d)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.80 (1H, s, N-H), 10.87 (1H, s, N'-H), 8.59 (1H, d, J = 2 Hz, H-4), 8.09 (1H,s, H-4'), 7.34 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-6), 7.25 (1H, d, J = 8 Hz, H-7), 7.10 (1H, d, J = 7.4 Hz, H-6'), 6.94 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7'), 2.33 (3H, s, CH3). HRMS (EI) [M]+ (C18H12F3N3O3): calcd 375.0831 found 375.0833.
【実施例3】
【0054】
5’−メトキシ−5−置換インディルビン−3’−オキシム誘導体(16a〜c)の調製
5’−ヒドロキシ−インディルビン類縁体(7d)(10mg,0.028mmol)をアセトン(1ml)に溶解した溶液にヨウ化メチル(17L,0.276mmol)を滴下し、KCO(19mg,0.138mmol)を加え、室温で4時間撹拌を続けた。黒色の沈殿物をろ過し、冷水で洗浄し、減圧下で乾燥して、5’−メトキシ−5−置換インディルビン(15c)を得た。適当なインディルビン誘導体(6mg,0.016mmol)をピリジン(0.3ml)に溶解し、塩酸ヒドロキシルアミン(3.4mg,0.048mmol)を加えた。反応混合物を還流下で120℃、1時間加熱した。冷却後、生成物を1規定HClで酸性化した。沈殿物をろ過し、水で洗浄して、対応する3’−オキシムを定量的に、(2’Z,3’E)の形態で選択的に得た。生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製した。
【0055】
(2’Z,3’E)−5’−メトキシ−5−ニトロ−インディルビン−3’−オキシム(16a)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.82(1H, s, N-H), 9.46 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4), 9.33 (1H, s, N'-H), 8.12 (1H, dd, J = 8.4, 2.4 Hz, H-6), 7.77 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4'), 7.30 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7), 7.24 (1H, d, J = 9.2 Hz, H-7'), 6.85 (1H, dd, J = 7.8, 2.4 Hz, H-6'), 3.39 (3H, s, OCH3). HRMS (ESI) [M-H] - (C17H11N4O5): calcd 351.0729 found 351.0724. Purity 94%.
(2’Z,3’E)−5’−メトキシ−5−フルオロ−インディルビン−3’−オキシム(16b)のデータ
1H NMR (DMSO, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.68 (1H, s, N-H), 9.22 (1H, s, N'-H), 8.44 (1H, m, H-4), 7.70 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4'), 7.21 (1H, d, J = 8.8 Hz, H-6), 6.96 (2H, m, H-7, H-7'), 6.79 (1H, dd, J = 8.6, 2.4 Hz, H-6'), 3.26 (3H, s, OCH3). HRMS (EI) [M]+ (C17H12FN3O3): calcd 325.0863 found 325.0859.
(2’Z,3’E)−5’−メトキシ−5−トリフルオロメトキシ−インディルビン−3’−オキシム(16c)のデータ
1H NMR (acetone, 400 MHz, ppm, J in Hz) 11.70 (1H, s, N-H), 8.62 (1H, s, H-4), 8.28 (1H, s, N'-H), 7.90 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4'), 7.24 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-6), 7.12 (1H, m, H-7'), 7.04 (1H, d, J = 8.4 Hz, H-7), 6.99 (1H, dd, J = 8.4, 2.4 Hz, H-6'), 3.33 (3H, s, OCH3). HRMS (EI) [M]+ (C18H12F3N3O4): calcd 391.0780 found 391.0782.
【実施例4】
【0056】
分子ドッキング
Discovery Studio 2.0(Accelrys)のCHARMm−ベース分子動力学ドッキングアルゴリズムのCDockerを用いて、分子ドッキングを行った。5−ブロモ−インディルビンと共結晶化したCDK2の構造は、PDBデータバンク(PDBコード:2BHE)から得た。続いて、プロテインクリーンプロセス及びCHARMm−力場を適用した。半径8Åの5−ブロモ−インディルビンの周囲の領域を活性部位として選択した。複合体の構造からリガンドを除去した後、活性部位の周囲に3軸方向において結合球面を構成した。全てのデフォルトパラメータは、ドッキングプロセスに使用した。CHARMm−ベース分子動力学(1,000ステップ)を使用してランダムなリガンド11bのコンフォメーションを作成し、剛体回転(リジッドボディローテーション)続いて700Kでのシミュレーティドアニーリングを行って、結合部位におけるリガンド11bの位置を最適化した。最終的なエネルギー最小化は、フルポテンシャルモードとして設定した。11bの最終的な結合コンフォメーションは、エネルギーに基づいて決定した。リガンド2、13bのドッキング研究を上記の通り実施した。
【実施例5】
【0057】
生物学的方法
酵素アッセイ
CDK1/サイクリンB、CDK2/サイクリンEは、Millipore(Billerica,MA)から購入した。キナーゼ活性は、0.1mg/mLのヒストンH1を含むバッファー(8mM MOPS pH7.0,0.2mM EDTA,10mM 酢酸マグネシウム)中で、CDK1については45M[−33P]ATP(500cpm/pmol)の存在下で、又は、CDK2については120μM[γ−33P]ATP(500cpm/pmol)の存在下で、最終反応量25μMで試験した。MgATP混合物を添加することによって反応を開始した。30℃で40分間インキュベーションした後、3%リン酸溶液を5μL添加することによって反応を停止した。上清の10μL分量をWhatman P30 ホスホセルロース紙の2.5cm×3cm小片上にスポットし、20秒後にそのフィルタを75mMリン酸中で5分間3回洗浄し、乾燥前にメタノール中で1回洗浄した。1mLのACS(Amersham)シンチレーション液の存在下で、湿ったフィルタを計数した。活性は、通常、最大活性、すなわち阻害剤の非存在下のパーセンテージとして表される。コントロールには適当に希釈したDMSOを用いた。
【0058】
種々の組換えキナーゼ(c−Met,Met M1250T,Ron,VEGF2,EGFR,TrkA,PI3Kγ,IKKβインスリン受容体,Aurora A)に対するキナーゼ活性の阻害を、ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)アッセイを用いて測定した。簡潔に言えば、アッセイはATPの存在下でペプチド基質のリン酸化に基づいている。結果として生じたリン酸化された基質は、TR−FRET(時間分解蛍光共鳴エネルギー転移)シグナルによって検出する。キナーゼドメインを含む組換えタンパク質は、Millipore(Billerica,MA)から購入した。酵素、ATP及び基質の最適濃度は、HTRF KinEASEキット(Cisbio)を用いて、製造業者の指示に従って、それぞれの酵素について設定した。アッセイは、キナーゼ反応バッファー(250mM HEPES(pH7.0),0.5mM オルトナバジウム酸塩,0.05% BSA,0.1% NaN3)中で、連続的に希釈した化合物及びペプチド基質に酵素を混合して構成する。検出用試薬の添加の後、EnVisionマルチ−ラベルリーダー(Perkan Elmer,Waltham,MA)を用いてTR−FRETシグナルを測定した。
【0059】
細胞増殖アッセイ
細胞(A549,HT1080,HCT116,K562,SNU638,KB,MCF−7)を計数し、新鮮な培地(10%FBSを含むMEME,DMEM又はRPMI)で5×104cells/mLに希釈し、190μLの細胞懸濁液を種々の濃度の試験化合物(10%DMSO水溶液中に10μL)を含む96穴プレートに加えた。試験プレートをCO2インキュベーターで37℃3日間インキュベートした。0日目のコントロールとして、細胞をCO2インキュベーターで37℃30分間インキュベートした。全ての処理は、3連で行った。インキュベーション期間経過後、細胞を、冷却した50%TCA50μLで4℃で30分間固定し、水道水で5回洗浄し、風乾した。固定した細胞を、0.4%SRB溶液含有1%酢酸水溶液で室温で1時間染色した。次いで、1%酢酸で5回洗浄することによって遊離のSRB溶液除去し、風乾した。結合した色素を200Lの10mM Tris−base(pH10.0)で溶解し、吸光度をELISA用マイクロプレートリーダーを用いて515nmで測定した。最終的に、各々の処理手順で得られた吸光度の値を平均して、0日目のコントロールで得られた平均値を引き算した。これらの結果は、溶媒で処理したコントロールのインキュベーションに対してのパーセンテージとして表し、IC50値は非線形回帰分析(生存パーセント対濃度)を用いて計算した。
【0060】
腫瘍異種移植動物モデル
k−ras−形質転換ラットの腎臓上皮細胞セルライン(RK3E−ras)は、10%FCS、100ユニット/mLペニシリン及び100Ag/mLストレプトマイシンを追加したDMEM中で保持した。RK3E−ras細胞は、Eric Fearon博士(ミシガン大学医学部、Ann Arbor,MI)から快く提供を受け、以前の報告に記載されている。インビボでの腫瘍成長の抑制を調べるために、雄のSDラット(生後6週)を用いた。0日目のラットの側腹部にRK3E−ras−Luc細胞(5×106)を皮下移植し、以前に記載したように5日目にラットをランダムにグループ化した(5匹/グループ)。11bを含有するPEG400、EtOH及びDWの混合物の溶液(30:33:37,3mg/mL,5mg/kg)を1日おきに、合計5回、無麻酔状態で静脈内に投与した。最終投与の48時間後に動物を屠殺し、ラットの体重及び腫瘍の容積を測定した。腫瘍成長の容積は、次の通り計算した:V=(ab2)/2、ここで、aは腫瘍の最も長い直径、bは腫瘍の最も短い直径である。全て実験は、Chosun大学歯学部(Gwangju,韓国)の動物実験委員会により承認されたプロトコルの下で実施した。
【0061】
生物発光イメージングアッセイ
生物発光イメージングのために、ラットにランパン/ケタミン(1:1)麻酔でルシフェリン(Molecular Probes,Palo Alto,CA)をi.p.投与した。LAS−1000 plusイメージングシステム(富士フィルム,東京,日本)を用いて、ラットをイメージングし、腫瘍から放出されたバイオルミネセンスシグナルを記録した。放出された光を取り込むためにCCDカメラを備えているLAS−1000システムを用い、データ解析のためにLiving Imageソフトウエア(Multi Gauge v3.0)を用いた。
【0062】
組織学、免疫組織化学及びTUNELアッセイ
切除した固形腫瘍を10%緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンで包理した。光学顕微鏡検査のために、4−μmの切片とした組織をH&Eで染色した。免疫組織化学的染色は、抗−PCNA抗体を用いてアビジン−ビオチン複合体法で行った。免疫反応は、3,3’−ジアミノベンジジンで可視化し、マイヤーヘマトキシリンで対比染色した。ApopTag Plus Peroxidase In Situ Apoptosis Detection kit (Intergen,Purchase,NY)を用いて、製造業者の指示に従って、TUNELアッセイを行った。簡潔に言えば、スライドを脱パラフィンし、20μg/mLのプロテイナーゼKで37℃で15分間処理し、染色を増強した。内因性のペルオキシダーゼをブロックするために3%過酸化水素中に漬けた後、スライドをターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼを含む反応バッファーで37℃で1時間インキュベートした。次いで、スライドをペルオキシダーゼ結合抗ジゴキシゲニン抗体とともに30分間インキュベートし、反応生成物を2mMの過酸化水素を含む0.03%の3,3’−ジアミノベンジジン溶液で可視化した。スライドは、0.5%のメチルグリーンで対比染色した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される抗癌活性を有するサイクリン依存性キナーゼ阻害剤としてのインディルビン−3’−オキシム誘導体化合物。
式(I)
【化5】

(ここで、
1はF、Cl、OH又はCH3から選択され、
2はF、Cl又はNO2から選択される。)
【請求項2】
1がOHであり、R2がNO2である、請求項1に記載のインディルビン−3’−オキシム誘導体化合物。
【請求項3】
1がFであり、R2がNO2である、請求項1に記載のインディルビン−3’−オキシム誘導体化合物。
【請求項4】
i)RがOHであり、R2がClである化合物、
ii)RがOHであり、R2がFである化合物、
iii)RがClであり、R2がNO2である化合物、及び
iv)RがCH3であり、R2がNO2である化合物
である、請求項1に記載のインディルビン−3’−オキシム誘導体化合物。
【請求項5】
ヒト肺癌セルライン、ヒト繊維肉腫セルライン、ヒト大腸癌セルライン、ヒト白血病セルライン、ヒト胃癌セルライン、ヒト鼻咽頭癌セルライン及び/又はヒト乳癌セルラインに対する優れた抗癌活性を有する、請求項1に記載のインディルビン−3’−オキシム誘導体化合物。
【請求項6】
前記インディルビン−3’−オキシム誘導体化合物及び医薬として許容可能な担体を有する抗癌組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−518874(P2013−518874A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551909(P2012−551909)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000611
【国際公開番号】WO2011/096676
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512205670)エニジェン カンパニー.,リミテッド. (1)
【Fターム(参考)】