説明

強力な分化および抗増殖活性をもつ新規ベンズアミド誘導体のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤

本発明は、本明細書中式(I)で定義される、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)としての新規ベンズアミド誘導体の調製および製薬上の使用に関連し、その製造方法およびこれらの化合物またはその製薬上許容される塩を癌および乾癬などの細胞増殖関連疾患の治療に用いる方法に関連する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、2003年2月14日に提出された、米国仮出願第60/447,915号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、癌および乾癬などの分化および/または増殖に関連する障害を治療するための、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤としての新規ベンズアミド誘導体の調製および使用に関する。
【0003】
発明の背景
遺伝子の異常な発現は、癌、内分泌関連障害、免疫/炎症性疾患、遺伝病、および神経変性などの病原的または病理的な変化において重要な役割を果たす。ヒトゲノムは、DNA、ヒストンおよび非ヒストンタンパク質を含むクロマチンに包まれている。クロマチンの構造は、特定の遺伝子が発現するか否かを決定する重要な因子である。一般に、凝縮クロマチンは転写抑制を媒介し、一方転写活性遺伝子は開放クロマチンの領域に存在する。ヌクレオソームはクロマチンの基本的な繰り返し単位を形成し、4個のヒストン対、すなわちH3−H4テトラマーおよび2つのH2A−H2Bダイマーから形成されるヒストンオクトマーで巻かれたDNAで構成される。ヒストンH1は、リンカーDNAセグメントを正に荷電したカルボキシ末端ドメインを通して静電的に中性化することによって高次フォールディングを安定化するリンカーのように働く。したがって、ヌクレオソームの動的高次構造は、クロマチン構成および、その結果、遺伝子の活性化の明確なレベルを規定する。Ricky W.Johnson,“Histon deacetylase inhibitors:novel drugs for the treatment of cancer”,Nature Reviews Drug Discovery 2002,1:287。DNAを小さくまとめるヒストンオクトマーの容量は、N−末端のヒストンテイルで起こる多くの翻訳後修飾に影響される。1つの修飾は、ヒストンテイル中でみられるリジン部分のイプシロンアミノ基の、可逆的なアセチル化および脱アセチル化を伴う。N−末端のヒストンテイルの正味のアセチル化のレベルは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)およびヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の2つの種類の酵素の活性によって調節される。HATおよびHDACに加えて、遺伝子活性化の抑制につながるHDACを直接的に補充しうるメチル−CpG結合タンパク質およびアデノシン三リン酸依存性クロマチン再構築複合体を含む他の因子もクロマチン構造の決定に寄与する(Current Opinion in Oncology 2001,13:477−483の総説を参照)。
【0004】
本来のHAT活性をもつコアクチベータ複合体の同定は、ヒストンアセチル化と転写活性化との関連を強く支持する。同様に、転写リプレッサ複合体はターゲット遺伝子のプロモータにHDACを補充することが示されている(Bioassays 1998,20:615)。核ホルモン受容体スーパーファミリー、環状アデノシン3’,5’−モノリン酸関連エンハンサー結合タンパク質(CREB)、シグナル伝達物質および転写活性化剤−1(STAT−1)などの配列特異的転写因子は、DNAコンテクストおよび組織コンテクストに対して選択的に、転写機構の複合体中の異なったコアクチベータおよびコリプレッサと相互作用し、遺伝子発現ネットワークの選択的な調節を行う。これらの調節ネットワークは人体の生理的機能のホメオスタシスを支配し、これらのネットワークの摂動は障害をひきおこす、および/または疾患の進行に大きく影響する。したがって、転写機構の複合体の相互作用の変調は、癌、内分泌関連障害、免疫/炎症性疾患、遺伝病、および神経変性の治療のための新しい発明の方針を提供する(Kozus,E.,et al.,Transcription Factor−specific Requirements for Coactivator and Their Acetyltransferase Functions.Science 1998,279:703−707;McKenna,N.J.and B.W.O’Malley,Combinatorial Control of Gene Expression by Nuclear Receptors and Coregulators.Cell 2002,108(4):465−474;Pazin,M.J.and J.T.Kadonaga,What’s Up and Down with Histon Deacylation and Transcription? Cell 1997,89(3):325−328;Zhong,H.,R.E.Voll,and S.Ghosh,Phosphorylation of NF−B p65 by PKA Stimulates Transcriptional Activity by Promoting a Novel Bivalent Interaction with the Coactivator CBP/p300.Molecular Cell 1998,1(5):661−671;Steffan JS. et al.,Histone deacetylase inhibitors arrest polygulutamine−dependent neurodegeneration in Drosophila,Nature 2001,413:691−694;HDAC inhibitor VX−563 from Vertex Pharmaceuticals proceeds for genetic disorders,2002 EDGAR online News,米国特許出願公開第2002−0115716号明細書、国際公開第00/56153号パンフレット)。
【0005】
例えば、細胞の発達および分化は、クロマチン構造のレベルで制御される、配列遺伝子の活性化の階層的な順序に支配される。RASなどの癌タンパクの構造的活性化またはp53などの腫瘍抑制因子の不活性化をひきおこす遺伝子の変性あるいは変異は、転写を含む無数の分子プログラムに影響を与える。さらに、HATおよびHDACの特定の遺伝子座への不適切なターゲッティング、HATの機能不活性化、HDACの過剰発現またはDNAの高メチル化または低メチル化による後成的な変化をもたらす遺伝子異常は、しばしば腫瘍の開始および成長を導く細胞の発達のプログラムと分化のプログラムとの間のバランスシフトをおこしうる(Current Opinion Genet.Development 1999,9:40−48および175−184の総説を参照)。いくつかのヒトの癌は、HATおよびHDAC活性の機能不良に関係している。一例としては、急性前骨髄球性白血病(APL)患者の多くにみられる15番および17番染色体の転座がある。APLにおいては、染色体転座によってRARアルファ、PML(前骨髄球性タンパク質)およびPLZF(前骨髄球性ジンク・フィンガー)を含む融合タンパク質を生じる。これらの異常タンパク質は、レチノイン酸応答因子に結合し、SMRTコリプレッサへの結合を増強することによって高い親和性をもつHDACを補充し、レチノイドには応答せず、RARターゲットの遺伝子の構成的抑制をもたらす(Oncogenr 2001,20:7204−7215)。レチノイド酸受容体(RAR)は、骨髄分化に重要なリガンド活性化転写モジュレータである。自身のパートナーであるRXRとヘテロダイマー化したRARは、ターゲット遺伝子のプロモータ領域に位置するレチノイド酸応答因子に結合し、レチノイドが存在しない場合には、NCORおよびSMRTコリプレッサを通してSIN3/HDACを補充することで転写を抑制する。リガンドの付加によって、HDAC複合体がRAR/RXRから放出され、その後TIF2およびCBPなどのHATの結合により転写が活性化される。したがって、機能性レチノイド酸応答因子を含む遺伝子の協調的な活性化および抑制は、骨髄細胞分化に重要である。さらに、HDAC阻害剤の付加はAPL細胞のレチノイド誘導骨髄細胞分化に対する感度を回復させることができ、このことから異常なヒストン脱アセチル化が白血病誘発の鍵となる過程であることが示される。
【0006】
ヒストン脱アセチル化酵素は、過剰発現したときに腫瘍の成長に対する天然のブレーキである腫瘍抑制遺伝子の発現を抑えることが報告されている。例えば、細胞増殖の重要な制御因子であるp53は、細胞がストレスにさらされたときに細胞周期およびアポトーシスを調節するシグナルを遺伝子に送る。この機能は主にp53のDNAに配列特異的に結合する、および転写を活性化する能力によって調節される。主にDNA結合ドメインの中心で起こる変異によるものである、p53のこの性質の不活性化は、しばしば悪性化をもたらす。CBP/p300はコアヒストンのアセチル化およびp53のアセチル化によってp53を上方調節しうることが示されている(W.Gu and R.G.Roeder,Activation of p53 Sequence−Specific DNA Binding by Acetylation of the p53 C−Terninal Domain.Cell 1997,90(4):595−606)。逆に、哺乳類のHDAC−1、HDAC−2、およびHDAC−3が、コアヒストンおよびp53の両方の脱アセチル化によってp53の機能を下方調節しうることが示されている(Juan,L.−J.,et al.,Histone Deacetylases Specifically Down−regulate p53−dependent Gene Activation.The Journal of Biological Chemistry 2000,275(27):20436−20443)。
【0007】
これらのデータは、HDACによって媒介される不適当な転写抑制が、癌タンパク質によるものと共通の分子メカニズムであり、クロマチン構造の変性が通常の細胞分化に影響を与え、それによって腫瘍の形成およびその他の過剰増殖障害が導かれることを示す。したがって、HDAC活性の阻害が癌およびその他の過剰増殖疾患の合理的な治療方法であると考えられる。
【0008】
(1)ブチレートおよびフェニルブチレートなどの短鎖脂肪酸;(2)スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)およびトリコスタチンA(TSA)などの有機ヒドロキサム酸;(3)トラポキシンおよびHC−トキシンなどの、2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシデカノイル(AOE)部分を含む環状テトラペプチド;(4)アピシジンおよびFK228などのAOE部分を含まない環状ペプチド;および(5)MS−275などのベンズアミドを含むいくつかのHDAC阻害剤の類が同定されている(欧州特許出願公開第0847992号明細書、米国特許出願公開第2002/0103192号明細書、国際公開第02/26696号パンフレット、国際公開第01/70675号パンフレット、国際公開第01/18171号パンフレット)。
【0009】
酪酸は、主にヒストン脱アセチル化酵素を阻害する活性によって、細胞増殖阻害剤および細胞分化誘導剤として働く(A.Nudelman and A.Rephaeli,Novel Mutual Prodrug of Retinoic and Butyric Acids with Enhanced Anticancer Activity.J.Med.Chem.2000.43(15):2962−2966)。フェニルブチレートは、β−サラセミア、トキソプラズマ症、およびマラリアを治療する単一の薬剤として用いられてきた。フェニルブチレートは、さらに、RA(レチノイド酸)と組み合わせて難治性APLの治療に成功したことが報告されている(R.P.Warrel et al.,Therapeutic targeting of transcription in acute promyelocytic leukemia by use of an inhibitor of histone deacetylase.J.Natl.Cancer Inst.1998,90(21):1621−1625)。他の脂肪酸である、強力な抗けいれん剤、精神安定剤および催奇剤であるバルプロ酸もまた、ヒストン脱アセチル化酵素の直接的な阻害剤である(C.J.Phiel et al.,Histon Deacetylase Is a Direct Target of Valproic Acid,a Potent Anticonvulsant,Mood Stabilizer,and Teratogen.The Journal of Biological Chemistry 2001,276(39):36734−36741;欧州特許出願公開第1170008号明細書)。
【0010】
一連のベンズアミドが、低マイクロモルレンジでHDAC阻害活性をもつことが発見された。この一連のベンズアミドから、リード化合物であるMS−275が三井化学株式会社によって試験され、MS−275は動物モデルで重大な副作用がなく経口で抗癌活性が示された最初のHDAC阻害剤となった(A.Saito et al.,A synthetic inhibitor of histon deacetylase,MS−27−275,with marked in vivo antitumor activity against human tumors.Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America 1999,96(8):4592−4597;欧州特許出願公開第0847992号明細書)。MS−275は、現在はメリーランド大学グリーンバウム癌センターにおいて白血病の患者に対して、および米国国立癌研究所において進行性固形癌に対して、臨床試験が行われている(E.B.Levit,Clinical Trails in Leukemia focus on New Treatment Approaches.2001 Release−University of Maryland Medical News 2001 Maryland http://www.umm.edu/news/releases/karp.html,A Phase I Study of an Oral Histon Deacetylase Inhibitor,MS−275,in Refractory Solid Tumors and Lymphomas. 2001,National Cancer Institute)。しかしながら、より強いHDAC阻害活性などの、改善されたプロファイルをもつ新しい化合物の発見がなお必要とされている。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、分化誘導および増殖阻害効果を示し、癌および乾癬などの分化および/または増殖に関連する障害の治療または改善する薬剤として有用な化合物を提供する。特に、本発明の化合物は、悪性血液病および固形癌に対して高い効果を示す。
【0012】
図面の簡単な説明
図1は、HDAC阻害剤の例、すなわちトリコスタチンA、MS−275および本発明の化合物によるさまざまな核ホルモン受容体の転写活性化を表すグラフである。
【0013】
発明の詳細な説明
多数の文献が本明細書中に引用される。本明細書中に引用される文献および文書の内容は参照として本明細書中に組み込まれる。
【0014】
本発明は式(I)で表される化合物、またはそのステレオアイソマー、エナンチオマー、ジアステレオマー、水和物、もしくは製薬上許容される塩を提供する;
【0015】
【化1】

【0016】
ここでAはフェニルまたはヘテロ環基であり、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、フェニル基およびヘテロ環基からなる群から選択される1〜4個の置換基で置換されてもよく;
Bはフェニルまたはヘテロ環基であり、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、フェニル基およびヘテロ環基からなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されてもよく;
Zは鎖状、環状、またはその組み合わせの、結合、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキレンまたは−O−、−S−、−NH−、−CO−、−CS−、−SO−、または−SO−をもつ部分であり;
Yは鎖状、環状、またはその組み合わせの、−CO−、−CS−、−SO−、または−SO−をもつ部分であり;環Bの質量中心(W1)、環Aの質量中心(W2)、および部分Yの水素結合の受容体としての酸素または硫黄原子(W3)の間の距離が、例えば以下のようになりうる:W1〜W2=6.0〜12.0Å、W1〜W3=3.0〜6.0Å、およびW2〜W3=4.0〜8.0Å;好ましくはW1〜W2=8.0〜10.0Å、W1〜W3=3.0〜5.0Å、およびW2〜W3=5.0〜8.0Å(本明細書中に記載される本発明の化合物は、必ずしもこれらの次元に限定されない);
およびRは独立に水素または置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキルであり;またはRおよびRは結合を形成してもよく;
は水素または置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキルであり;Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基または炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基である。
【0017】
、X、X、またはXのうち1つはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基または炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基であり、他のX、X、X、またはXは独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基または炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基である。
【0018】
上記構造式(I)および本明細書中で、以下の用語は指定した意味である:
「ヘテロ環」の用語は、本明細書で用いる場合、ピロリジン、ピロリン、ピラゾリン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、モルフォリンなどの、1以上のヘテロ原子を含む1価の飽和または不飽和の単環基を意味する。
【0019】
「ハロゲン」の用語は、本明細書で用いる場合、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0020】
「炭素数1〜4のアルキル」の用語は、本明細書で用いる場合、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルを含む。
【0021】
「炭素数1〜4のアルコキシ」の用語は、本明細書で用いる場合、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシなどを含む。
【0022】
「炭素数1〜4のアミノアルキル」の用語は、本明細書で用いる場合、アミノメチル、1−アミノプロピル、2−アミノプロピルなどを含む。
【0023】
「炭素数1〜4のアルキルアミノ」の用語は、本明細書で用いる場合、N−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N−イソプロピルアミノなどを含む。
【0024】
「炭素数2〜4のアシル」の用語は、本明細書で用いる場合、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリルなどを含む。
【0025】
「炭素数2〜4のアシルアミノ」の用語は、本明細書で用いる場合、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチリルアミノ、イソブチリルアミノなどを含む。
【0026】
「炭素数2〜4のアルキルチオ」の用語は、本明細書で用いる場合、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオなどを含む。
【0027】
「炭素数2〜4のパーフルオロアルキル」の用語は、本明細書で用いる場合、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどを含む。
【0028】
「炭素数2〜4のパーフルオロアルキルオキシ」の用語は、本明細書で用いる場合、トリフルオロメトキシ、ペンタフルオロエトキシなどを含む。
【0029】
「炭素数1〜4のアルキレン」の用語は、本明細書で用いる場合、メチレン、エチレンなどを含む。
【0030】
空間位置の定義に用いられる「環の質量中心」の用語は、環を形成する原子のX、YおよびZ軸座標の平均として定義される。
【0031】
本発明の化合物は、以下のように調製する:
(a)式(II)で表される化合物を式(III)で表される化合物と縮合させ、式(IV)で表される化合物を得る:
【0032】
【化2】

【0033】
ここでA、Z、Y、B、RおよびRは、上述の定義と同じであり;Rは−C(=Q)OHをもつ(Qは酸素または硫黄原子である)部分または−NHをもつ部分であり;Rは、Rが−C(=Q)OHをもつ(ここでQは酸素または硫黄原子である)部分である場合、−NHをもつ部分であり、およびRが−NHをもつ部分である場合、−C(=Q)OHをもつ部分(ここでQは酸素または硫黄原子である)である。
【0034】
(b)式(IV)で表される化合物を式(V)で表される化合物と縮合させ、本発明の化合物を得る:
【0035】
【化3】

【0036】
ここでR、R、X、X、X、およびXは、上述の定義と同じである。
【0037】
上述の縮合反応(a)および(b)は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジフェニルホスホリックアジド、またはジエチルホスホリルシアニドなどのペプチド縮合試薬を用いて行われる。
【0038】
前記反応は、0〜80℃で4〜72時間で行われうる。用いることのできる溶媒は、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミドなどの通常の溶媒である。必要に応じて水酸化ナトリウム、トリエチルアミンおよびピリジンなどの塩基または塩酸、酢酸、およびトリフルオロ酢酸などの酸を反応系に加えてもよい。
【0039】
式(I)で表される本発明の化合物および中間体は、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの通常の分離方法で精製または単離できる。
【0040】
本発明の新規化合物は、分化誘導効果をもち、したがって、癌および乾癬などの分化および/または増殖に関連する障害の治療または改善する薬剤として有用である。特に、本発明の化合物は、制癌薬として悪性血液病および固形癌に対して高い効果を示す。
【0041】
薬剤として有用な本発明の活性成分は、一般的な薬剤組成物の形態で用いられうる。前記薬剤組成物は、錠剤、カプセル、粉末、シロップ、溶液、懸濁液、エアロゾルなどの通常採用される形態であってよく、香料、甘味料などを適当な固体もしくは液体の担体または希釈剤、または注射溶液もしくは懸濁液を形成する適当な滅菌媒体に含んでもよい。このような組成物は、典型的には1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%の活性化合物を含み、残りは製薬上許容される担体、希釈剤または溶媒または塩溶液である。
【0042】
本発明の化合物はヒトおよび動物を含む哺乳類に、経口、経鼻、経皮、経肺、または非経口の経路で臨床的に投与される。経口経路による投与は、より簡便であり注射で起こりうる痛みおよび刺激を避けられるので好ましい。いずれの経路でも、投与量は約0.0001〜約200mg/kg体重/日の範囲であり、1回でまたは分割して投与される。しかしながら、治療を受けるそれぞれの患者に最適な投与量は、治療責任者によって決定される。一般的に、最初は少量を投与してその後最適な投与量を決定するために増量する。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は本発明の具体的な例示として説明するものであって、本発明は実施例の具体的な詳細に限定されないと解されるべきである。本明細書中および実施例に記載の部および百分率は、特記しない限り全て重量基準である。
【0044】
さらに、本発明のさまざまな形態を記述または請求する、一連の特定の物性、測定単位、条件、物理的状態または百分率を表すもののような、本明細書または以下の実施例に列挙される任意の数値の範囲は、本明細書中に参照またはその他として明示的に組み込まれる。このような範囲内に入る任意の数値は、数値または範囲のサブセットを含めて、列挙される任意の範囲に包含される。「約」の用語は、変数を修正するために、または変数とあわせて用いられる場合、本明細書中に開示される数値または範囲が柔軟であること、並びに当業者が本発明を実施する場合、温度、濃度、量、内容物、炭素数、および性質が前記範囲の外または異なった値であっても所望の結果が得られることを表す。
【0045】
実施例1
4−[N−(ピリジン−3−イルアクリロイル)アミノメチル]安息香酸の調製
【0046】
【化4】

【0047】
N,N’−カルボニルジイミダゾール0.33g(2.01mmol)のテトラヒドロフラン(10ml)懸濁液に、0.30g(2.01mmol)の3−ピリジンアクリル酸溶液を0℃で滴下して加える。その後、混合物を室温で3時間撹拌し、別に調製した0.30g(2.00mmol)の4−アミノメチル安息香酸を含む2.0ml(2.00mmol)の1N水酸化ナトリウム水溶液に滴下して加え、その後室温で8時間撹拌する。反応混合物を真空で濃縮する。残留物に飽和塩化ナトリウム水溶液(2ml)を加え、その後混合物を濃塩酸で中和してpH5にする。沈殿した白色固体をろ過して集め、冷水で洗い、乾燥させて表題化合物を得る(0.46g、82%)。C1614のHRMS計算値:282.2988。実測値282.2990。C1614のMA計算値:C,68.07%;H,5.00%;N,9.92%。実測値:C,68.21%;H,5.03%;N,9.90%。
【0048】
実施例2
N−(2−アミノ−5−フルオロフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルアクリロイル)アミノメチル]ベンズアミドの調製
【0049】
【化5】

【0050】
N,N’−カルボニルジイミダゾール0.29g(1.78mmol)のテトラヒドロフラン(15ml)懸濁液に、0.50g(1.78mmol)の4−[N−(ピリジン−3−イルアクリロイル)アミノメチル]安息香酸を加え、その後、45℃で1時間撹拌する。冷却した後、反応混合物を別に調製した0.28g(2.22mmol)の4−フルオロ−1,2−フェニレンジアミンおよび0.20mg(1.78mmol)のトリフルオロ酢酸を含むテトラヒドロフラン(10ml)溶液に室温で加える。室温で24時間反応させた後、沈殿した白色固体をろ過して集め、テトラヒドロフランで洗い、乾燥させて表題化合物を得る(0.40g、57%)。HNMR(300MHz,DMSO−d):δppm:4.49(2H,d)、4.84(2H,br.s)、6.60(1H,t)、6.80(2H,m)、6.96(1H,t)、7.18(1H,d)、7.42(2H,d)、7,52(1H,d)、7.95(2H,d)、8.02(1H,d)、8.56(1H,d)、8.72(1H,br,t)、8.78(1H,s)、9.60(1H,br.s)。IR(KBr)cm−1:3310、1655、1631、1524、1305、750。C2219FのHRMS計算値:390.4170。実測値390.4172。C2219FのMA計算値:C,67.68%;H,4.40%;N,14.35%。実測値:C,67.52%;H,4.38%;N,14.42%。
【0051】
実施例3
4−[N−シナモイルアミノメチル]安息香酸の調製
【0052】
【化6】

【0053】
N,N’−カルボニルジイミダゾール0.33g(2.01mmol)のテトラヒドロフラン(10ml)懸濁液に、0.30g(2.01mmol)の桂皮酸溶液を0℃で滴下して加える。その後、混合物を室温で3時間撹拌し、別に調製した0.30g(2.00mmol)の4−アミノメチル安息香酸を含む2.0ml(2.00mmol)の1N水酸化ナトリウム水溶液に滴下して加え、その後室温で8時間撹拌する。反応混合物を真空で濃縮する。残留物に飽和塩化ナトリウム溶液(2ml)を加え、その後混合物を濃塩酸で中和してpH7にする。沈殿した白色固体をろ過して集め、冷水で洗い、乾燥させて表題化合物を得る(0.51g、91%)。C1715NOのHRMS計算値:281.3242。実測値281.3240。C1715NOのMA計算値:C,72.58%;H,5.38%;N,4.98%。実測値:C,72.42%;H,5.37%;N,4.87%。
【0054】
実施例4
N−(2−アミノ−5−フルオロフェニル)−4−[N−シナモイルアミノメチル]ベンズアミドの調製
【0055】
【化7】

【0056】
N,N’−カルボニルジイミダゾール0.29g(1.78mmol)のテトラヒドロフラン(15ml)懸濁液に、0.50g(1.78mmol)の4−[N−シナモイルアミノメチル]安息香酸を加え、その後、45℃で1時間撹拌する。冷却した後、反応混合物を別に調製した0.28g(2.22mmol)の4−フルオロ−1,2−フェニレンジアミンおよび0.20mg(1.78mmol)のトリフルオロ酢酸を含むテトラヒドロフラン(10ml)溶液に室温で加える。室温で16時間反応させた後、沈殿した白色固体をろ過して集め、テトラヒドロフランで洗い、乾燥させて表題化合物を得る(0.45g、64%)。HNMR(300MHz,DMSO−d):δppm:4.42(2H,d)、4.92(2H,br.s)、6.62(1H,t)、6.78(2H,m)、7.01(1H,t)、7.32(5H,m)、7.54(5H,m)、8.76(1H,br,t)、9.58(1H,br.s)。IR(KBr)cm−1:3306、1618、1517、1308、745。C2320FのHRMS計算値:389.4292。実測値389.4294。C2320FのMA計算値:C,70.94%;H,5.18%;N,10.79%。実測値:C,70.72%;H,5.18%;N,10.88%。
【0057】
実施例5
N−(2−アミノ−5−フルオロフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルアクリロイル)アミノメチル]ベンズアミド(化合物CS02100055)、N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(4−フルオロフェニル)アミノメチル]ベンズアミド(化合物CS02100019)、およびN−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド(MS−275、EP0847992)によるインビトロのHDAC酵素活性の阻害。
【0058】
MS−275および化合物CS02100055およびCS02100019のHDACに対する阻害効果を、HDAC比色活性アッセイキット(バイオモル リサーチ ラボラトリーズ、ペンシルバニア州、米国)を用いて、装置の指示書に従って試験した。簡潔には、異なった濃度の試験化合物を96穴プレートに入れ、その後装置を用いてHDAC活性を与えたHeLa細胞の抽出物と混合した。基質を加えてHDAC反応を開始させた。10分後、カラーデリスデベロッパー(Color De Lys Developer)を加えて反応を停止させた。マイクロプレートをプレートリーダーに入れて405nmで検出した。HDAC活性を指示書に従って計算した。試験結果を表1に表す。
【0059】
【表1】

【0060】
実施例6
N−(2−アミノ−5−フルオロフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルアクリロイル)アミノメチル]ベンズアミド(化合物CS02100055)、N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(4−フルオロフェニル)アミノメチル]ベンズアミド(化合物CS02100019)、およびN−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド(MS−275、EP0847992)のインビトロのさまざまな腫瘍細胞系に対する成長阻害効果。
【0061】
成長阻害試験はMTS法で行った。生死判別アッセイの約72時間前に、細胞を96穴プレートに5〜10×10細胞/ウェル(使用する個々の細胞系の成長速度による)でシードした。24時間後、異なった濃度の試験化合物を加え、細胞を48時間培養し、その後、20μl/ウェルの、テトラゾリウム化合物(プロメガ(Promega))を含むセルタイター 96アクエアス ワン ソリューソン リエージェント(CellTiter 96 AQueous One Solution Reagent)を各ウェルに加えた。続けてMTSを培養液に加えた。プレートを37℃で2時間インキュベートした後、96穴プレートリーダーを用いて490nmでの吸光度を記録した。細胞の生死は、A治療/Aコントロール×100%(Aは490nmで記録した吸光度を表す)で計算した。阻害された細胞成長がコントロールに対して50%になるときの濃度をGI50とした。化合物はすべてDMSOに溶かし、DMSOの最終濃度が≦0.1%になるように1:1000に希釈して培養に加えた。全ての試料を2回アッセイして、それぞれの実験は少なくとも3回繰り返した。試験結果を表2にまとめる。
【0062】
【表2】

【0063】
実施例7
N−(2−アミノ−5−フルオロフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルアクリロイル)アミノメチル]ベンズアミド(化合物CS02100055)、N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド(MS−275、EP0847992)、およびトリコスタチンA(TSA)による核ホルモン受容体の転写活性化。
【0064】
図1に示すように、試験化合物によるいくつかの核ホルモン受容体の転写活性化をレポーターアッセイ実験で調べた。簡潔には、U2OS細胞をトランスフェクションの前日に密集度が50〜80%になるように96穴プレートにシードした。グルココルチロイド受容体(GR)、ペルオキシソーム増殖活性化受容体γ(PPARγ)、エストロゲン受容体α(ERα)、またはエストロゲン受容体β(ERβ)のいずれかをコードしたcDNAを含む発現プラスミドの1つで、レチノイドX受容体α(RXRα)、およびその対応するルシフェラーゼレポータープラスミドとともに、FuGene6トランスフェクション試薬を用いて指示書(ロシュ(Roche))に従い細胞をトランスフェクトした。24時間、細胞にタンパク質を発現させた後、それぞれの化合物または媒体(DMSO)を加えた。24時間後細胞を回収し、ルシフェラーゼアッセイキットを用いて指示書(プロメガ)に従ってルシフェラーゼアッセイを行った。ルシフェラーゼアッセイのデータを規格化するために、トランスフェクトした細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性をキット(プロメガ)を用いて指示の通りに測定した。それぞれの核受容体の応答因子は、以下の通りである:GR(5’−GATCTTGTACAGGATGTTCTCTAGCGATGTACAGGATGTTCTCTAGCGATGTACAGGATGTTCTCATG−3’)(配列番号1)、PPAR(5’−CGCGTTCCTTTCCGAACGTGACCTTTGTCCTGGTCCCCTTTTGCT−3’)(配列番号2)、およびER(5’−TCGAGTCAGGTCACAGTGACCTGATC−3’)(配列番号3)。試験結果を図1にまとめる。図1は、異なるHDAC阻害剤であるトリコスタチンA、MS−275およびCS2100055による核ホルモン受容体の転写活性化を表す。実験は上述と同様に行った。それぞれのグラフでLDは各受容体の対応するリガンドを意味し、CS55はCS2100055を意味する。全ての実験で、試験化合物の濃度は、TSAが0.2□M、MS−275が1μM、およびCS55が1μMであった。デキサメタゾン(0.1μM)、ロシグリタゾン(10μM)、およびE2(0.01μM)をそれぞれGR、PPARγ、およびERのリガンドに用いた。3回の独立した実験を行い、例示的な実験を図1に示した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】HDAC阻害剤の例、すなわちトリコスタチンA、MS−275および本発明の化合物によるさまざまな核ホルモン受容体の転写活性化を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

またはそのステレオアイソマー、エナンチオマー、ジアステレオマー、水和物、もしくは製薬上許容される塩;
ここでAはフェニルまたはヘテロ環基であり、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、フェニル基およびヘテロ環基からなる群から選択される1〜4個の置換基で置換されてもよく;
Bはフェニルまたはヘテロ環基であり、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、フェニル基およびヘテロ環基からなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されてもよく;
Zは鎖状、環状、またはその組み合わせの、結合、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキレンまたは−O−、−S−、−NH−、−CO−、−CS−、−SO−、もしくは−SO−をもつ部分であり;
Yは鎖状、環状、またはその組み合わせの、−CO−、−CS−、−SO−、または−SO−をもつ部分であり;環Bの質量中心(W1)、環Aの質量中心(W2)、および部分Yの水素結合の受容体としての酸素または硫黄原子(W3)の間の距離が;それぞれW1〜W2=約6.0〜約12.0Å、W1〜W3=約3.0〜約6.0Å、およびW2〜W3=約4.0〜約8.0Å;またはそれぞれW1〜W2=約8.0〜約10.0Å、W1〜W3=約3.0〜約5.0Å、およびW2〜W3=約5.0〜約8.0Åであり;
およびRは独立に水素または置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキルであり;またはRおよびRは結合を形成してもよく;
は水素または置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキルであり;
は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基または炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基であり;並びに
、X、X、またはXのうち1つはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基または炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基であり、他のX、X、X、またはXは独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基または炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基である。
【請求項2】
式IVの化合物:
【化2】

またはそのステレオアイソマー、エナンチオマー、ジアステレオマー、水和物、もしくは製薬上許容される塩;
ここでAはフェニルまたはヘテロ環基であり、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、フェニル基およびヘテロ環基からなる群から選択される1〜4個の置換基で置換されてもよく;
Bはフェニルまたはヘテロ環基であり、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、フェニル基およびヘテロ環基からなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されてもよく;
Zは鎖状、環状、またはその組み合わせの、結合、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキレンまたは−O−、−S−、−NH−、−CO−、−CS−、−SO−、または−SO−をもつ部分であり;
Yは鎖状、環状、またはその組み合わせの、−CO−、−CS−、−SO−、または−SO−をもつ部分であり;環Bの質量中心(W1)、環Aの質量中心(W2)、および部分Yの水素結合の受容体としての酸素または硫黄原子(W3)の間の距離が;それぞれW1〜W2=約6.0〜約12.0Å、W1〜W3=約3.0〜約6.0Å、およびW2〜W3=約4.0〜約8.0Å;またはそれぞれW1〜W2=約8.0〜約10.0Å、W1〜W3=約3.0〜約5.0Å、およびW2〜W3=約5.0〜約8.0Åであり;および
およびRは独立に水素または置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキルである;またはRおよびRは結合を形成してもよい。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物またはそのステレオアイソマー、エナンチオマー、ジアステレオマー、水和物もしくは製薬上許容される塩の、以下の段階を含む製造方法;
(a)式(II)で表される化合物を式(III)で表される化合物と縮合させ、式(IV)で表される化合物を得る:
【化3】

は−C(=Q)OHをもつ(ここでQは酸素または硫黄原子である)部分であり、またはRは−NHをもつ部分であり;Rは、Rが−C(=Q)OHをもつ(ここでQは酸素または硫黄原子である)部分である場合、−NHをもつ部分であり、またはRが−NHをもつ部分である場合、−C(=Q)OHをもつ部分(ここでQは酸素または硫黄原子である)であり;および
(b)式(IV)で表される化合物を式(V)で表される化合物と縮合させ、式(I)で表される化合物を得る:
【化4】

ここでX、X、X、またはXのうち1つはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基または炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基であり、他のX、X、X、またはXは独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基または炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基であり;
は水素または置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキルであり;および
は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜4のアシルアミノ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキルオキシ基、カルボキシル基または炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基である。
【請求項4】
前記段階(a)および段階(b)の縮合反応がペプチド縮合試薬を用いて行われる、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ペプチド縮合試薬がジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジフェニルホスホリックアジド、またはジエチルホスホリルシアニドである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記段階(a)および段階(b)の縮合反応が約0℃〜約80℃の温度で行われる、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物の有効量および少なくとも1つの製薬上許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む、分化および/または増殖に関連する疾患を治療および/または改善するために有用な薬剤組成物。
【請求項8】
前記増殖に関連する疾患が、乾癬、悪性血液病、および固形癌のみからなる群から選択される、請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
約0.0001〜約200mgの範囲の量の前記化合物を含む、請求項7に記載の薬剤組成物の単位剤形。
【請求項10】
経口、経鼻、経皮、経肺、または非経口の経路で投与するための、請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物の有効量を必要とする患者に投与することを含む、細胞増殖疾患を治療する方法。
【請求項12】
前記細胞増殖疾患が、悪性腫瘍および乾癬のみからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物の有効量が、約0.0001〜約200mg/kg体重/日の範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
活性薬剤化学療法化合物またはメチルトランスフェラーゼ阻害剤とともに、少なくとも1つの製薬上許容される賦形剤、担体、もしくは希釈剤を用いて製剤された請求項1に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、細胞増殖疾患を治療する方法。
【請求項15】
前記細胞増殖疾患が、悪性腫瘍および乾癬のみからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物の有効量および少なくとも1つの製薬上許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む、核受容体を活性化するための薬剤組成物。
【請求項17】
約0.0001〜約200mgの範囲の量の前記化合物を含む、請求項16に記載の薬剤組成物の単位剤形。
【請求項18】
経口、経鼻、経皮、経肺、または非経口の経路で投与するための、請求項16に記載の薬剤組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物の有効量を必要とする患者に投与することを含む、核受容体が媒介する症状を治療または予防する方法。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物の有効量を必要とする患者に投与することを含む、核受容体の異常に低い活性が媒介する症状を治療または予防する方法。
【請求項21】
前記症状が、内分泌に関連する障害、免疫系または炎症性障害、遺伝障害、および神経変性のみからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記症状が、内分泌に関連する障害、免疫系または炎症性障害、遺伝障害、および神経変性のみからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物の有効量が、約0.0001〜約200mg/kg体重/日の範囲である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物の有効量が、約0.0001〜約200mg/kg体重/日の範囲である、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−527362(P2007−527362A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502441(P2006−502441)
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000401
【国際公開番号】WO2004/071400
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(505192899)シンセン チップスクリーン バイオサイエンセズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】