説明

強力な抗糖尿病薬化合物の塩および多形体

【課題】炎症性および代謝性の状態および疾患の治療に有用な化合物の塩および多形体の提供。
【解決手段】ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体の発現および/または機能を調節する下記化合物の塩および多形体。


塩および多形体は、II型糖尿病、脂質代謝、脂肪細胞分化および炎症などのエネルギー恒常性に関連する状態および障害の治療または予防において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する言及
本願は、2003年10月3日出願の米国暫定特許出願第60/508470号(この暫定出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)の名称を有し、それの恩恵を主張するものである。
【0002】
本発明は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(「PPARγ」)受容体の強力な調節剤の塩型およびそれの多形体;その塩型もしくは多形体を含む組成物;その塩型または多形体の製造方法;ならびに例えばII型糖尿病(およびそれの合併症)、高コレステロール血症(および異常に高いもしくは低い血漿リポタンパク質またはトリグリセリドレベルに関連する関連障害)および炎症障害などの診断または治療でのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、ステロイド/甲状腺/レチノイド受容体スーパーファミリーに属するトランスデューサータンパク質である。PPARは最初に、既知のリガンドを持たないオーファン受容体として確認されたが、脂肪酸ペルオキシソーム増殖因子の多面発現効果に介在する能力によって命名された。それらの受容体は、レチノイドX受容体(「RXR」)とのヘテロ二量体としての応答DNA配列に結合することで、標的遺伝子の発現を制御するリガンド調節転写因子として機能する。その標的遺伝子は、脂質代謝および脂肪細胞の分化に関与する酵素をコードする。従って、脂質代謝に関与する転写因子の発見によって、脊椎動物におけるエネルギー恒常性の調節を理解する上での手がかりが得られ、さらには肥満、糖尿病および異脂肪血症などの障害用の治療薬開発の標的が提供された。
【0004】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(「PPARγ」)は、リガンド活性化転写因子の核受容体スーパーファミリーの1構成員であり、脂肪組織特異的に発現されることが明らかになっている。それの発現は、いくつかの前脂肪細胞系の分化の途上の初期に誘発される。別の研究では、PPARγが脂肪生成信号伝達カスケードにおいて非常に重要な役割を果たすことが明らかになっている。PPARγはまた、抗肥満および抗糖尿病状態の標的とする非常に重要な段階であることが明らかになっているエネルギー恒常性および脂肪細胞分化の調節に関与するob/レプチン遺伝子を調節する。
【0005】
PPARγの臨床的重要性を考慮すると、PPARγ機能を調節する化合物を、新たな治療薬の開発に用いることができる。PPARγの強力な調節剤については、例えば国際特許公開番号WO 01/00579(米国特許出願第09/606433号に相当)、米国特許公開US2002/0037928A1および米国特許US6200995B1およびUS6583157B2に記載されている。本明細書では化合物101と呼ぶこれらの有望な調節剤の一つが、II型糖尿病の診断または治療処置用に臨床開発の段階にある。その調節剤の開発は、その病気を治療する経口療法を提供し得るものと考えられる。
【0006】
各医薬化合物は、至適治療血中濃度および致死濃度を有する。化合物の生物学的利用能が、理想的な血中レベルを得る上で必要な薬物製剤中での用量強度を決定する。その薬剤が生物学的利用能の異なる2種類以上の多形体として結晶化し得る場合、至適用量は製剤中に存在する多形体によって決まる。いくつかの薬剤は、治療濃度と致死濃度の間で狭いマージンを示す。例えばクロラムフェニコール−3−パルミテート(CAPP)は、少なくとも3種類の多形体および1種類の非晶質体で結晶化することが知られている広スペクトルの抗生物質である。最も安定な形のAが市販されている。その多形体と別の形態Bとの間の生理活性における差は係数8であることから、加工および/または貯蔵時の変化のために無意識にB型として投与された場合、その化合物の致死的過量投与となる可能性が生じる。従って、米国食品・医薬品局などの規制当局は、固体製剤中の活性成分の多形体含有量に関して厳格な管理を行うようになった。多形体で存在する薬剤において、純粋で熱力学的に好ましい多形体以外のものを上市する場合が市販されることになる場合、規制当局はロットごとのモニタリングを要求する可能性がある。そこで、医学的理由と商業的理由の両方により、他の動力学的に優先する多形体を実質的に含まない、熱力学的に最も安定な多形体で純粋な薬剤を製造および市販することが重要になる。
【0007】
そのような調節剤の新たな形態によってさらに、II型糖尿病などの病気の治療用の製剤が開発され得る。例えば、製薬業界では、化合物の塩型およびその塩の多形体が、その化合物の溶解度、溶解速度、生物学的利用能、化学的および物理的安定性、流動性、フラクタル性(fractability)および圧縮性ならびにその化合物に基づく薬剤製品の安全性および効力などに影響を与えることが知られている(例えば、Knapman, K. Modern Drug Discoveries, 2000: 53参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許公開番号WO01/00579(米国特許出願第09/606433号に相当)
【特許文献2】米国特許公開US2002/0037928A1
【特許文献3】米国特許US6200995B1
【特許文献4】米国特許US6583157B2
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Knapman, K. Modern Drug Discoveries, 2000: 53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、至適な物理的および化学的特性を有する調節剤の塩型または遊離塩基を確認することで、医薬としてのそのようなPPARγ調節剤の開発が進むであろう。そのような物理的および化学的特性の最も有用なものには、容易かつ再現性のある製造、得結晶性、非吸湿性、水溶解度、可視光および紫外光に対する安定性、温度および湿度の加速安定性条件下での低分解速度、異性体間の低い異性化速度、ならびにヒトに対する長期投与での安全性などがある。
【0011】
化合物101の遊離塩基およびある種の製薬上許容される塩が、米国特許出願第09/606433号(国際特許公開WO 01/00579に相当)および米国特許第6583157B2号に記載されている。それらの特許に挙げられている製薬上許容される酸塩には、特に、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸もしくはリンの酸類のような無機酸から誘導されるもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸およびメタンスルホン酸のような比較的無毒性の有機酸から誘導される塩などがある。上記構造の記載のいずれかの塩型が他のものより優れているという記述も示唆もない。
【0012】
本発明者らは、上記の特性リストから判断して、全ての塩が等しく有用であるとは限らないことを発見した。そこで本発明は、強力なPPARγ調節剤の必要性ならびに製造および生物学的利用能において改善された固体形態のPPARγ調節剤の必要性を扱うものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、例えば高血糖および高インシュリン血症のようなエネルギー恒常性、脂質代謝、脂肪細胞分化、炎症および糖尿病状態に関連するものなど(これらに限定されるものではない)の状態および障害の治療または予防において有用なPPARγ調節剤の新規な塩型および新規な多形体を提供する。ある種の実施形態では前記多形体は、本発明の塩の多形体である。本発明はまた、PPARγ調節剤の含水および無水の両方の多形体を包含するものである。いずれか特定の実施理論に限定されるものではないが、塩および多形体の貯蔵安定性、圧縮性、バルク密度または溶解特性は、PPARγ調節剤の製造、製剤および生物学的利用能において有利であると考えられている。本発明はまた、前記塩および/または多形体を含む医薬組成物、ならびに例えば高血糖および高インシュリン血症など(これらに限定されるものではない)のエネルギー恒常性、脂質代謝、脂肪細胞分化、炎症および糖尿病状態に関連する状態および障害の治療におけるそれらの使用方法をも提供する。
【0014】
前記塩および多形体は、米国特許出願09/606433号(国際特許公開WO 01/00579に相当)および米国特許第6583157B2号(これらに内容は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている化合物101から形成される。化合物101は、下記の構造(I)を有する。
【化1】

【0015】
ある好ましい態様において本発明は、化合物101のベンゼンスルホン酸塩を提供する。本発明者らは、化合物101のベンゼンスルホン酸塩が、下記に詳述する予想外の優れた特性を有することを発見した。さらに別の態様において本発明は、それぞれ下記で詳述する形態Iおよび形態IIと称する化合物101のベンゼンスルホン酸塩の多形体を提供する。
【0016】
本発明はさらに、本発明の塩型または多形体ならびに製薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明はさらに、II型糖尿病、高コレステロール血症、炎症障害または関連障害の治療または予防方法であって、そのような治療または予防を必要とする被験者に対して、治療上有効量の本発明の塩または多形体を投与する段階を有する方法を提供する。
【0018】
本発明はさらに、PPARγ受容体が介在する状態または障害の治療または予防方法であって、そのような治療または予防を必要とする被験者に対して、治療上有効量の本発明の塩または多形体を投与する段階を有する方法を提供する。
【0019】
さらに別の実施形態において本発明は、本発明の塩および多形体の製造、単離および/または特性決定方法を提供する。
【0020】
本発明の新規な塩型および多形体は、動物またはヒトで使用される製剤の製造のための活性医薬成分として特に有用である。そこで本発明は、それらの固体形態の最終医薬品としての使用を包含するものである。本発明の塩、多形体および最終医薬品は、例えばエネルギー恒常性、脂質代謝、脂肪細胞分化および炎症に関連する状態および障害の治療または予防において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】化合物101の構造を示す図である。
【図2】化合物101の合成図式の1例を示す図である。
【図3】化合物101の合成図式の別の例を示す図である。
【図4】形態Iを含むサンプルの示差走査熱量測定サーモグラムである。
【図5】形態Iを含むサンプルのX線粉末回折パターンである。
【図6】形態Iを含むサンプルの吸湿等温線である。
【図7】形態Iを含むサンプルの赤外線スペクトラムである。
【図8】形態IIを含むサンプルの示差走査熱量測定サーモグラムである。
【図9】形態IIを含むサンプルのX線粉末回折パターンである。
【図10】形態IIを含むサンプルの赤外線スペクトラムである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
6.1定義
本明細書で使用される「治療する」、「治療用」または「治療」という用語は、疾患および/またはその付随する症状を緩和あるいは排除する方法を指す。本明細書で使用される「予防する」、「予防用」または「予防」という用語は、被験者が疾患にかからないようにする方法を指す。
【0023】
本明細書で使用される「糖尿病」は、I型糖尿病(若年性糖尿病)またはII型糖尿病(インシュリン非依存性糖尿病すなわちNIDDM)を意味し、好ましくはII型糖尿病を意味する。
【0024】
本明細書で使用される「PPARγ介在状態または障害」あるいは「PPARγ介在状態または疾患」等の用語は、不適切な、つまり正常値より少ない、あるいは正常値より大きいPPARγ活性を特徴とする状態、障害または疾患を意味する。不適切なPPARγ活性は、正常にPPARγを発現しない細胞でのPPARγ発現、PPARγ発現増加(例えばある種のエネルギー恒常性、脂質代謝、脂肪細胞分化ならびに炎症障害および疾患を生じる)、あるいはPPARγ発現低下(例えばある種のエネルギー恒常性、脂質代謝、脂肪細胞分化ならびに炎症障害および疾患を生じる)の結果として生じるものと考えられる。PPARγ介在状態または障害には、不適切なPPARγ活性が完全または部分的に介在し得る。しかしながら、PPARγ介在状態または障害は、PPARγの調節によりその基礎状態または疾患がある程度影響されるものである(例えば、PPARγ調節剤によって、少なくとも一部の患者において快適さが多少改善される)。PPARγ介在状態および障害の例としては、代謝疾患、例えば糖尿病、II型糖尿病、肥満、高血糖、インスリン抵抗性、高インスリン血症、高コレステロール血症、高血圧、高リポタンパク質血症、高脂血症、高トリグリセリド血症および異脂肪血症や、関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの炎症疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
各種形態での「調節する」という用語は、特定のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体、好ましくはPPARγに関連する機能や活性を上昇または低下させる化合物の能力を指す。本明細書で記載される調節は、直接または間接での、PPARγの阻害または活性化を含む。阻害薬としては、結合し、部分的にあるいは完全に刺激をブロックし、活性化を低下、阻止、遅延させ、信号伝達を非活性化、鈍化、あるいは下降させる化合物、例えば拮抗薬である。活性化剤とは、結合して、信号伝達を刺激し、上昇させ、開放し、活性化し、促進し、活性化を強化し、感作し、あるいは上昇させる化合物、例えば作働薬である。さらに、PPARγ受容体活性の調節は、PPARγ受容体に関連する活性の拮抗作用、作働作用、部分拮抗作用および/または部分作働作用を包含するものである。
【0026】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、指定の成分(示されている場合は、指定量で)を含むもの、ならびに直接または間接での指定量での指定成分の組み合わせの結果として得られるものを包含するものである。「製薬上許容される」とは、希釈剤、賦形剤または担体が製剤の他の成分と適合性であって、被投与者に対して無害であるべきであることを意味する。
【0027】
「治療上有効量」という用語は、研究者、獣医、医師その他の臨床関係者が追求する組織、系、動物またはヒトでの生理的または医学的応答を誘発する、あるいは治療対象の疾患の1以上の症状の発症を防止したり、それをある程度改善するだけの当該塩または多形体構造式Iの化合物の量を指す。
【0028】
「被験者」という用語は本明細書においては、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等(しかしながらこれらに限定されない)を含む哺乳動物などの動物を含むと定義される。好ましい態様では、被験者はヒトである。
【0029】
単独、あるいは他の置換基の一部としての「アルキル」という用語は、別段の断りがない限り、完全に飽和の、あるいはモノ−あるいは多不飽和の、2価および多価の基を含む、指定数の炭素原子(例えばC〜C10は1から10個の炭素原子を意味する)を持つ直鎖または分岐鎖、あるいは環状の炭化水素基、あるいはそれらの組合せを意味する。飽和炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、およびn−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル等の同族体および異性体を意味する。不飽和アルキル基は1個またはそれ以上の二重結合または三重結合を持つものが挙げられる。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、および高級同族体および異性体が挙げられる。「アルキル」という用語は、別段の断りがない限り、「ヘテロアルキル」、「シクロアルキル」および「アルキレン」として後記にさらに詳しく定義するアルキルの誘導体も含むものである。単独、あるいは他の置換基の一部としての「アルキレン」という用語は、アルカンから誘導される2価の基、例えば−CHCHCHCH−を意味する。一般的には、アルキル基は1〜24個の炭素原子を持つものであるが、10あるいはそれ以下の炭素数のものが本発明では好ましい。「低級アルキル」あるいは「低級アルキレン」は短い鎖状のアルキルあるいはアルキレン基であり、一般的には8個あるいはそれ以下の炭素数のものをいう。
【0030】
単独、あるいは他の用語と組み合わされて用いられる「ヘテロアルキル」という用語は、別段の断りがない限り、規定数の炭素原子およびO、N、SiおよびSから選ばれる1〜3個のヘテロ原子から構成される安定な直鎖または分岐鎖、あるいは環状の炭化水素基、またはそれらを組合せたものを意味し、窒素原子およびイオウ原子は酸化されていてもよく、窒素へテロ原子は4級化されていてもよい。そのへテロ原子O、NおよびSは、ヘテロアルキル基のいずれの位置にあってもよい。ヘテロ原子Siは、アルキル基が分子の残りと結合する位置を含む、ヘテロアルキル基内のいずれの位置にあってもよい。例として、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCHおよび−CH=CH−N(CH)−CHが含まれる。2個以下のヘテロ原子は、例えば、−CH−NH−OCH、−CH−O−Si(CHなどのように連続的であってもよい。「ヘテロアルキル」という用語には、「ヘテロアルキレン」および「ヘテロシクロアルキル」として後記に詳細に定義する基も含まれる。
【0031】
ある種の実施形態において、アリール基は「置換」されている。その実施形態では、アリール基における置換基は多様であり、ゼロから芳香環系上の空いている価数の総数までの範囲の数での−ハロゲン、−OR′、−OC(O)R′、−NR′R″、−SR′、−R′、−CN、−NO、−COR′、−CONR′R″、−C(O)R′、−OC(O)NR′R″、−NR″C(O)R′、−NR″C(O)R′、−NR′−C(O)NR″R′″、−NR′C(NH)=NH、−NH−C(NH)=NH、−NH−C(NH)=NR′、−S(O)R′、−S(O)R′、−S(O)NR′R″、−N、−CH(Ph)、パーフルオロ(C〜C)アルコキシおよびパーフルオロ(C〜C)アルキルから選択され、R′、R″およびR′″は独立に、水素、(C〜C)アルキルおよびヘテロアルキル、未置換アリール、(未置換アリール)−(C〜C)アルキルおよび(未置換アリール)オキシ−(C〜C)アルキルからなる群から選択される。
【0032】
「製薬上許容される塩」という用語は、比較的無毒性の酸を用いて製造される活性化合物の塩を包含するものである。酸付加塩は、中性型のそのような化合物を、無希釈または好適な不活性溶媒中にて、十分な量の所望の酸と接触させることで得ることができる。製薬上許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸もしくはリンの酸類のような無機酸から誘導されるもの、ならびに酢酸;プロピオン酸;イソ酪酸;マレイン酸;マロン酸;安息香酸;コハク酸;スベリン酸;フマル酸;マンデル酸;フタル酸;ベンゼンスルホン酸;p−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸およびo−トルエンスルホン酸などのトルエンスルホン酸;クエン酸;酒石酸;およびメタンスルホン酸のような比較的無毒性の有機酸から誘導される塩などがある。アルギン酸などのアミノ酸の塩ならびにグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al. J. Pharm. Sci. 66: 1-19 (1977)参照)。
【0033】
本発明の化合物の中性型は、その塩を塩基あるいは酸と接触させて、常法により親化合物を単離することにより再生できる。化合物の親形態は、前記各種の塩形態とは、ある種の物理特性、例えば極性溶媒への溶解性等が異なるが、それ以外においては本発明に関しては、塩は化合物の親形態と等価である。
【0034】
下記で説明する特定の塩には、本発明の化合物101の「ベシル酸塩」または「ベンゼンスルホン酸塩」などがある。ベシル酸塩またはベンゼンスルホン酸塩は、ベンゼンスルホン酸から形成される酸付加塩である。
【0035】
本明細書において「多形体」および「多形形態」という用語ならびに関連する用語は、同じ分子の結晶形を指し、異なる多形体は、例えば融点、融解熱、溶解度、溶解速度および/または結晶格子における分子の配置もしくは配座の結果としての振動スペクトラムなどの異なる物理特性を有し得る。多形体が示す物理特性における相違は、貯蔵安定性、圧縮性および密度(製剤および製品製造において重要)および溶解速度(生物学的利用能において重要な要素)などの製薬上のパラメータに影響する。安定性における差は、化学的反応性における変化(例えば、酸化の違いによって、ある多形体からなる場合、別の多形体からなる場合より急速に製剤が変色する)または物理的変化(例えば、動力学的に優先される多形体が熱力学的により安定な多形体に変換するために、貯蔵時に錠剤が砕ける)またはその両方(例えば、ある多形体の錠剤が、高湿度での崩壊をより受けやすい)によって生じ得る。溶解度/溶解性の差の結果として、極端な場合には、何らかの多形転移によって効力が失われたり、あるいは他の極端な場合には毒性を生じることがある。さらに、結晶の物理特性が加工において重要である可能性があり、例えば、ある多形体の方が溶媒和物を形成しやすいことが考えられたり、あるいは濾過や洗浄による不純物除去が困難になることが考えられる(すなわち、粒子の形状および粒径分布が多形体間で異なる場合が考えられる)。
【0036】
分子の多形体は、当業界で公知の多くの方法によって得ることができる。そのような方法には、溶融再結晶、溶融冷却、溶媒再結晶、脱溶媒和、急速留去、急冷、徐冷、蒸気拡散および昇華などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
多形体を特性決定する技術には、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折法(XRPD)、単結晶X線回折法、振動スペクトル測定(例:IRおよびラマンスペクトル測定)、固体NMR、高温光学顕微鏡観察、走査電子顕微鏡観察(SEM)、電子結晶学分析および定量分析、粒径分析(PSA)、表面積分析、溶解度試験および溶解試験などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書で使用される「溶媒和物」という用語は、溶媒を含む物質の結晶形を指す。「水和物」という用語は、溶媒が見ずである溶媒和物を指す。
【0039】
本明細書で使用される「脱溶媒和溶媒和物」という用語は、溶媒和物から溶媒を除去することによってのみ得ることができる物質の結晶形を指す。
【0040】
本明細書で使用される「非晶質形」という用語は、物質の非結晶形を指す。
【0041】
塩型および多形体以外に、本発明はプロドラッグの形である化合物を提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理条件下で容易に化学変化を受けて当該化合物を提供する、当該化合物の構造的に修飾された形態である。さらに、プロドラッグはex vivo環境下で化学的あるいは生化学的方法により当該化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグは、好適な酵素あるいは化学試薬と一緒に経皮貼付剤の貯留部に入れると、化合物にゆっくりと変換され得る。プロドラッグは、ある状況下では当該化合物すなわち親薬剤より投与が容易であるため、有用であることが多い。また、例えば、親薬剤が生物学的利用性でない場合でも、プロドラッグは経口投与で生物学的利用性である場合がある。プロドラッグは、親薬剤より医薬組成物において改善された溶解性を示すこともあり得る。非常に多様なプロドラッグ誘導体が当業界では公知であり、例えば、プロドラッグの加水分解や酸化活性化の依るものなどがある。プロドラッグの一例として、エステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、代謝的に加水分解されてカルボン酸、すなわち活性体となる化合物が考えられるが、それに限定されるものではない。他の例としては、化合物のペプチジル誘導体などがある。
【0042】
本発明の化合物は、1以上の原子で、自然界にはない割合の原子同位体を含んでいてもよい。例えばその化合物は、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)、硫黄−35(35S)または炭素−14(14C)のような、放射性同位元素で放射能標識することができる。放射能標識された化合物は、治療薬(例:癌治療薬)、研究試薬(例:結合アッセイ試薬)および診断薬(例:in vivo造影剤)として有用である。放射性であるか否かを問わず、本発明の化合物の全ての同位体形態が本発明の範囲に包含されるものである。
【0043】
6.2:本発明の実施形態
本発明は、化合物101の塩型および多形体;その塩および多形体を単独であるいは他の有効成分と組み合わせて含む組成物;受容体活性、特にはPPARγ活性の調節におけるそれらの使用方法に関するものである。いずれか特定の実施理論に拘束されるものではないが、その塩および多形体の貯蔵安定性、圧縮性、密度または溶解特性は、PPARγ調節剤の製造、製剤および生物学的利用能に関して有利である。
【0044】
本発明の好ましい塩および多形体は、臨床および治療製剤において適切である安定性、溶解度および溶解速度などの物理特性を特徴とするものである。本発明の好ましい多形体は、固体製剤の製造に好適である結晶形態、圧縮性および硬度などの物理特性を特徴とするものである。そのような特性は、本明細書に記載され、当業界で公知のX線回折、顕微鏡観察、IRスペクトル測定および熱分析などの技術を用いて測定することができる。
【0045】
本発明の塩および多形体は、糖尿病状態、エネルギー恒常性、脂質代謝、脂肪細胞分化および炎症に関連する状態および障害の治療または予防において有用である(Ricote et al., Nature 391: 79-82 (1998)およびJiang et al., Nature 391: 82-86 (1998)参照)。例えば、本発明の塩および多形体は、II型糖尿病などの代謝障害の治療において有用である。さらに、本発明の化合物は、II型糖尿病などの代謝障害の合併症(例:神経障害、網膜症、糸球体硬化症および心血管障害)の予防および治療において有用である。
【0046】
6.2.1:化合物101の塩
1態様において本発明は、エネルギー恒常性、脂質代謝、脂肪細胞分化、炎症および糖尿病または糖尿病状態に関連する状態および障害の治療または予防において特定の用途を有するPPARγ受容体の強力な調節剤である化合物101の特定の製薬上許容される塩を提供する。本発明のその態様は、化合物101のHCl塩、HBr塩、トシル酸塩およびベシル酸塩を提供する。
【0047】
好ましい実施形態において本発明は、化合物101のベシル酸塩を提供する。上記で示したように、化合物101は下記一般式(I)を有する。
【化2】

【0048】
化合物101のベンゼンスルホン酸塩型では、ベンゼンスルホン酸は下記式(II)によるものである。
【化3】

【0049】
式(II)において、フェニル環は、上記のアリール置換基であっても良いRで置換されていても良く、nは1〜5のいずれかの整数である。ある種の実施形態では、Rはヘテロアルキル、アルキルまたは水素であり、nは1〜5のいずれかの整数である。別の実施形態では、Rはアルキルまたは水素であることができ、nは1〜5のいずれかの整数である。一部の実施形態において、Rは低級アルキルまたは水素であり、nは1〜5のいずれかの整数である。特定の実施形態において、各Rは水素である。化合物101の好ましいベシル酸塩は、下記式(III)によって与えられる。
【化4】

【0050】
本発明の各塩は、化合物101の製造から得ることができる(図1参照)。化合物101は、当業者には明らかな方法に従って合成および取得することができる。好ましい実施形態では、化合物101は、下記の実施例、米国特許第6583157号および国際特許公開WO 01/00579(これらの内容は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている方法に従って製造される。
【0051】
別法において化合物101は、下記の方法に従って化合物101の塩を単離し、そのような化合物101の塩を適切な塩基で処理することで中性型に変換することで製造することができる。例えば、化合物101は、化合物101の塩酸塩を濾過によって単離し、酢酸エチル中の重炭酸ナトリウムその他の好適な塩基で処理することで、それを中性型に変換することによって製造することができる。そのような実施形態において、化合物101の塩酸塩は、当業者には公知の方法によって製造することができる。例えば、化合物101の塩酸塩は、実施例7に記載の方法に従って、3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニルアミンを2,4−ジクロロベンゼンスルホニルクロライドおよび塩酸と反応させて、2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−キノリン−3−イルオキシ)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドHClを得ることで製造することができる。
【0052】
3−ヒドロキシキノリンからの化合物101の合成手法の例を、図2および3に示してあり、それについては下記の実施例で詳述する。いずれかの方法によって製造された化合物101を、無希釈または好適な不活性溶媒中で適切な酸と接触させることで、本発明の塩型を得ることができる。例えば、化合物101を適切なベンゼンスルホン酸と接触させることで、本発明のベシル酸塩型を得ることができる。
【0053】
下記の実施例で詳細に示すように、化合物101のベシル酸塩およびそれの多形体は、化合物101の他の塩と比較して、驚くほど優れた安定性を吸湿特性を示す。
【0054】
6.2.2:多形体
本発明はまた、エネルギー恒常性、脂質代謝、脂肪細胞分化および炎症に関連する状態および障害の治療または予防において特定の用途を有するPPARγ受容体の強力な調節剤である化合物101の多形体を提供する。ある種の実施形態において、本発明の多形体は、上記の化合物101のベシル酸塩の多形体である。化合物101およびそれの製造については、上記で、さらには下記の実施例で説明している。
【0055】
本発明の各多形体は、化合物101の製造から得ることができる(図1参照)。固体化合物101を溶解させ、次に下記に記載の溶媒混合物から結晶化させて、本発明の多形体を得ることができる。本発明の特定の実施形態では、化合物101のベシル酸塩を溶解させ、次に下記に記載の溶媒混合物から結晶化させて、本発明の多形体を得ることができる。
【0056】
1実施形態では、本発明は、化合物101のベシル酸塩(2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニル]−ベンゼンスルホンアミドベンゼンスルホン酸塩)の形態Iを提供する。1実施形態において、化合物101のベシル酸塩の形態I多形体は、約180℃以上の融点を有する。特定の実施形態では、その形態I多形体は約180〜200℃の融点を有する。形態I多形体のある例を、下記の実施例に記載の方法に従って示差走査熱量測定によって調べたところ、それは約186.3℃〜約189.5℃で吸熱を有し、約81.5J/g〜約89.9J/gの融解エンタルピーを有していた。別の実施形態では、化合物101のベシル酸塩の形態I多形体は、CuKα線を用いての図5のものと同様のX線粉末回折パターンを有する。例えば、本発明の特定の形態I多形体は、CuKα線を用いて7.0、19.5、22.0、24.0、24.5および28°2θに主要X線粉末回折パターンピークを有する。ある種の実施形態では、本発明の形態I多形体は、CuKα線を用いての7.0、19.5、22.0、24.0、24.5および28°2θにおけるX線粉末回折パターンピークのうちの1個、2個、3個、4個、5個または6個で主要X線粉末回折パターンピークを有する。別の実施形態では、本発明の形態I多形体は、約186〜200℃の融点とCuKα線を用いての7.0、19.5、22.0、24.0、24.5および28°2θでのX線粉末回折パターンピークのうちの1個、2個、3個、4個、5個または6個での主要X線粉末回折パターンピークの両方を有する。さらに別の実施形態では、本発明の形態I多形体は、1567、1461、913、895および881cm−1での赤外線吸光度ピークのうちの1個、2個、3個、4個または5個に主要赤外線吸光度ピークを有する。
【0057】
化合物101の形態Iのベシル酸塩は、本明細書の記述内容に基づけば当業者には明らかな形態Iの形成方法によって作ることができる。ある種の実施形態では、形態Iは、化合物101およびベンゼンスルホン酸の水和物のエタノール溶液から結晶化させることができる。好ましくは、ベンゼンスルホン酸水和物(アルドリッチ(Aldrich))のエタノール溶液を、加熱下に固体化合物101に加えて完全な溶液とすることができ、その溶液を冷却することで形態Iが得られる。形態Iも、下記の実施例に記載の方法に従って、酢酸エチルおよびエタノールの溶液から結晶化することができる。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、化合物101のベシル酸塩(2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニル]−ベンゼンスルホンアミドベンゼンスルホン酸塩)の形態IIを提供する。1実施形態において、化合物101のベシル酸塩の形態II多形体は、約230℃以上の融点を有する。特定の実施形態では、その形態II多形体は約230〜240℃の融点を有する。化合物101のベシル酸塩の例示的な形態IIは、驚くべき安定性を示し、約233℃の融点を有していた。形態II多形体のある例を、下記の実施例に記載の方法に従って示差走査熱量測定によって調べたところ、それは約233.7℃で吸熱を有し、約98.9J/gの融解エンタルピーを有していた。別の実施形態では、化合物101のベシル酸塩の形態II多形体は、CuKα線を用いての図9のものと同様のX線粉末回折パターンを有する。例えば、本発明の特定の形態II多形体は、CuKα線を用いて15、19、20.5、23.5、24.5、25、26.5、29.5および30.5°2θに主要X線粉末回折パターンピークを有する。ある種の実施形態では、本発明の形態II多形体は、CuKα線を用いての15、19、20.5、23.5、24.5、25、26.5、29.5および30.5°2θにおけるX線粉末回折パターンピークのうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個で主要X線粉末回折パターンピークを有する。ある種の実施形態では、本発明の形態II多形体は、約230〜240℃の融点とCuKα線を用いての15、19、20.5、23.5、24.5、25、26.5、29.5および30.5°2θでのX線粉末回折パターンピークのうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個での主要X線粉末回折パターンピークの両方を有する。別の実施形態では、本発明の形態II多形体は、1573、1469、1459、912および859cm−1での赤外線吸光度ピークのうちの1個、2個、3個、4個または5個に主要赤外線吸光度ピークを有する。
【0059】
化合物101の形態IIのベシル酸塩は、本明細書の記述内容に基づいて当業者には明らかな形態IIの形成方法によって作ることができる。ある種の実施形態では、形態IIは、下記の実施例に記載の方法に従って、酢酸エチルおよびエタノールの溶液から結晶化させることができる。好ましくは、化合物101の形態IIのベシル酸塩は、加熱下にて固体化合物101にベンゼンスルホン酸のエタノール溶液を加えることで製造することができる。その反応懸濁液を加熱下に攪拌し、次にさらに攪拌しながら冷却して、化合物101の形態IIのベシル酸塩を得ることができる。
【0060】
ある種の実施形態では、本発明は、化合物101の形態IまたはIIのいずれかのベシル酸塩の結晶化ならびに溶液または固体状態での前記結晶体の他の形態への変換(例:形態Iの結晶化と形態Iから形態IIへの変換)によって、化合物101の形態IまたはIIのベシル酸塩を取得することも想到するものである。
【0061】
下記の実施例で詳細に示すように、化合物101のベシル酸塩は、化合物101の他の酸付加塩より優れた特性を示す。化合物101のベシル酸塩の形態Iおよび形態II多形体、ならびにそれらの多形体は、動物またはヒトへの投与用の製剤で使用する上で有利な安定性および吸湿性を示す。化合物101の形態IIのベシル酸塩は、相対的に安定性が高いことから、化合物101の形態Iのベシル酸塩より好ましい。
【0062】
6.2.3:組成物
別の態様において本発明は、ヒトおよび動物でのPPARγ活性を調節する医薬組成物を提供する。その組成物は、本発明の塩または多形体および製薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む。ある種の実施形態では、本発明の医薬組成物は、化合物101の純粋な塩または多形体を含む。例えば本発明の医薬組成物は、純粋な形態Iまたは純粋な形態IIを含むことができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「純粋」である塩または多形体、すなわち実質的に他の多形体を含まないものは、約10%未満の1種類以上の他の多形体、好ましくは約5%未満の1種類以上の他の多形体、より好ましくは約3%未満の1種類以上の他の多形体、最も好ましくは約1%未満の1種類以上の他の多形体を含むものである。
【0064】
本発明の塩または多形体の投与用の医薬組成物は、簡便には単位製剤で提供することができ、製薬業界で公知のいずれかの方法によって調製することがきる。いずれの方法も、1以上の補助成分を構成する担体と有効成分を組み合わせる段階を有する。通常において医薬組成物は、液体担体、微粉砕固体担体またはその両方と有効成分を均一かつ十分に組み合わせ、次に必要に応じて生成物を所望の製剤に成形することで製造される。その医薬組成物において、塩または多形体は、調節、予防または治療されるプロセス、状態たは疾患に対して所望の効果をもたらすだけの量で含まれる。
【0065】
前記有効成分を含む医薬組成物は、経口使用に好適な形態、例えば錠剤、トローチ、ロゼンジ剤、水系もしくは油系懸濁液、分散性粉体または粒剤、乳濁液、硬または軟カプセル、またはシロップ、液剤、またはエリキシル剤とすることができる。経口使用用の組成物は、医薬組成物の製造に関して当業界で公知の方法に従って製造することができ、そのような組成物には、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1以上の薬剤を含ませることで、製薬的に見た目や口当たりの良い製剤を得ることができる。錠剤は、錠剤製造に好適である無毒性で製薬上許容される賦形剤との混合で有効成分を含む。それらの賦形剤は、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの希釈剤;例えばコーンスターチまたはアルギン酸などの造粒剤および崩壊剤;例えばデンプン、ゼラチンもしくはアカシアなどの結合剤;ならびに例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの潤滑剤であることができる。錠剤は未コーティングとすることができるか、あるいは公知の方法によってコーティングを施して、消化管での崩壊および吸収を遅延させ、それによって比較的長期間にわたって持続的作用を提供するようにすることができる。例えば、モノステアリン酸グリセリルおよびジステアリン酸グリセリルなどの徐放材料を用いることができる。それらは、米国特許第4256108号、4166452号および4265874号に記載の技術によってコーティングして、徐放用の浸透圧治療錠剤を形成することもできる。
【0066】
経口使用向けの組成物は、有効成分を例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリンまたは微結晶セルロースなどの不活性固体希釈剤と混和した硬ゼラチンカプセルとして、あるいは有効成分を、水または例えば落花生油、液体パラフィンもしくはオリーブ油などの油系媒体と混和した軟ゼラチンカプセルとして提供することもできる。
【0067】
水系懸濁液は、水系懸濁液の製造に好適な賦形剤と混和した形で活性材料を含む。そのような賦形剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムなどの懸濁剤がある。分散剤または湿展剤には、レシチンなどの天然ホスファチド、あるいは例えばポリオキシエチレンステアレートなどのアルキレンオキサイドと脂肪酸との縮合生成物、またはヘプタデカエチレンオキシセタノールなどのエチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどのエチレンオキサイドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、または例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートなどのエチレンオキサイドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物があり得る。水系懸濁液には、例えばp−ヒドロキシ安息香酸のエチルもしくはn−プロピルエステルなどの1以上の保存剤、1以上の着色剤、1以上の香味剤、ショ糖もしくはサッカリンなどの1以上の甘味剤を含有させることもできる。
【0068】
油系懸濁液は、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油などの植物油または液体パラフィンなどの鉱油中に有効成分を懸濁させることで製剤することができる。油系懸濁液には、蜜ロウ、硬パラフィンもしくはセチルアルコールなどの増粘剤を含有させることができる。上記のような甘味剤および香味剤を加えて、風味の良い経口製剤を得ることができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を加えることで防腐することができる。
【0069】
水を加えることで水系懸濁液を調製する上で好適な分散性粉体および粒剤では、有効成分を、分散剤もしくは湿展剤、懸濁剤および1以上の保存剤と混合する。好適な分散剤もしくは湿展剤および懸濁剤の例としては、前述したものがある。例えば甘味剤、香味剤および着色剤などの別の賦形剤を存在させることもできる。
【0070】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型乳濁液の形とすることもできる。油相は、オリーブ油もしくは落花生油などの植物油または液体パラフィンなどの鉱油、あるいはそれらの混合物とすることができる。好適な乳化剤には、例えばアカシアガムおよびトラガカントガムなどの天然ガム類;例えば大豆レシチンなどの天然ホスファチド;ならびに、ソルビタンモノオレエートなどの脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導されるエステルもしくは部分エステル、および例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのエチレンオキサイドと前記部分エステルとの縮合生成物があり得る。乳濁液にはさらに、甘味剤および香味剤を含有させることもできる。
【0071】
シロップおよびエリキシル剤は、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールまたはショ糖などの甘味剤を加えて製剤することができる。そのような製剤には、粘滑剤、保存剤、香味剤および着色剤を含有させることもできる。
【0072】
医薬組成物は、無菌注射用水系もしくは油系懸濁液の形態とすることができる。この懸濁液は、上記の好適な分散剤もしくは湿展剤および懸濁剤を用いて、公知の方法に従って製剤することができる。無菌注射製剤は、例えば1,3−ブタンジオール溶液のように、無毒性の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒中の無菌注射用液剤または懸濁液とすることもできる。使用可能な許容される媒体および溶媒の中には、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、従来から溶媒または懸濁媒体として、無菌の固定油が使用されている。それに関しては、合成モノもしくはジグリセリドなどのいかなる種類の固定油も使用可能である。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製に使用することができる。
【0073】
本発明の塩または多形体は、薬剤の直腸投与用の坐剤の形で投与することもできる。そのような組成物は、常温では固体であるが直腸体温では液体となることで、直腸で融解して薬剤を放出する好適な無刺激性賦形剤と該薬剤とを混和することで製剤することができる。そのような材料には、カカオ脂およびポリエチレングリコール類などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
局所用には、本発明の塩または多形体を含むクリーム、軟膏、ゼリー、液剤または懸濁液などを用いる。本明細書で使用される場合、局所投与は、含嗽液およびうがい剤の使用も含む。
【0075】
本発明の医薬組成物および方法は、上記の病的状態の治療または予防に通常用いられる本明細書に記載の他の治療活性化合物をさらに含むことができる。
【0076】
6.2.4:使用方法
さらに別の態様において本発明は、PPARγが介在する状態または疾患を有する被験者に対して、治療上有効量の本発明の塩または多形体あるいは組成物を投与することで、そのような疾患または状態を治療する方法を提供する。その被験者は、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等(しかしながらこれらに限定されない)などの哺乳動物のような動物であることができる。
【0077】
生理的環境(例:細胞型、宿主の病的状態など)に応じて、これらの化合物はPPARγの作用を活性化または遮断することができる。PPARγ受容体を活性化、すなわち作働させることで、前記化合物は、PPARγ受容体が介在する状態を調節することができる治療薬として使用されるであろう。前述のように、そのような状態の例にはII型糖尿病などがある。そこでPPARγ受容体作働薬を、II型糖尿病などの状態の治療に用いることができる。さらにその化合物は、糖尿病の合併症(例:神経障害、網膜症、糸球体硬化症および心血管障害)の予防および治療、ならびに高脂血症の予防または治療において有用である。さらに前記化合物は、ごく最近になってPPARγによって抑制されることが認められた炎症状態の調節に有用である(Ricote et al., Nature 391: 79- 82 (1998)およびJiang et al., Nature 391: 82-86 (1998)参照)。炎症状態の例には、関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化などがある。PPARγの拮抗作用によって作用する化合物は、肥満、高血圧、高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク質血症および代謝障害の治療において有用である。
【0078】
PPARγが介在する肥満、糖尿病、炎症状態その他の状態または障害の治療での治療的使用では、本発明の製薬方法で使用される化合物は、初期用量約0.001mg/kg/日〜約100mg/kg/日で投与される。約0.1mg/kg〜約10mg/kgの1日用量範囲が好ましい。しかしながら用量は、患者の要求、治療対象の状態の重度、使用される化合物に応じて変動し得るものである。特定の状況に適した用量の決定は、担当医の技術の範囲内である。一般には治療は、化合物の至適用量より少ない比較的少量の用量で開始する。その後、その環境下で至適な効果に達するまで、用量を小刻みに増やす。簡便には、所望に応じて、総1日用量を分割し、1日の間に分けて投与することができる。
【0079】
治療対象の疾患および被験者の状態に応じて、本発明の多形体は、経口、非経口(例:筋肉、腹腔内、静脈、ICV、大槽内の注射もしくは注入、皮下注射、またはインプラント)、吸入噴霧、経鼻、膣、直腸、舌下または局所の投与経路によって投与することができ、各投与経路に適した従来の無毒性で製薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む好適な単位製剤に、単独でまたは混合で製剤することができる。
【0080】
PPARγ受容体の調節が必要とされる状態の治療または予防では、適切な用量レベルは、約0.001〜100mg/患者体重kg/日であり、それは単独投与または連続投与することができる。好ましくは用量レベルは、約0.01〜約25mg/kg/日;より好ましくは約0.05〜約10mg/kg/日である。好適な用量レベルは、約0.01〜25mg/kg/日、約0.05〜10mg/kg/日、または約0.1〜5mg/kg/日であることができる。その範囲内では用量は、0.005〜0.05、0.05〜0.5、または0.5〜5.0mg/kg/日であることができる。経口投与の場合、組成物は好ましくは、有効成分1.0〜1000mg、特には有効成分1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.01000.0mgを含む錠剤の形態で提供することで、治療を受ける患者に対する用量の症状に応じた調節を行う。前記多形体は、1〜4回/日、好ましくは1または2回/日の投与法で投与することができる。
【0081】
しかしながら、特定の患者における具体的な用量レベルおよび投与回数は変動し得るものであり、使用される具体的な多形体の活性、その多形体の代謝安定性および作用期間、年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与の形態および時刻、排泄速度、併用薬剤、特定の状態の重度、ならびに治療を受ける宿主などの各種要素によって決まることは明らかであろう。
【0082】
本発明の塩および多形体は、代謝障害および炎症状態、それらの合併症ならびにそれらに関連する病気(例:心血管疾患および高血圧)の治療または予防に関連する用途を有する他の化合物と併用することができる。多くの場合、それら代替薬剤と当該化合物または組成物の併用投与は、そのような薬剤の効力を高めるものである。従って、場合によっては本発明の化合物は、例えば抗糖尿病薬と組み合わせたり、それと組み合わせて投与する場合には、単独で使用される場合に予想される量より少ない用量で、あるいは併用療法の場合の計算量より少ない用量で用いることができる。
【0083】
例えば、併用療法に適した薬剤は、現在市販されているもの、および開発途上のもの、あるいは将来開発されるであろうものを含む。代謝障害の治療に有用な薬剤の例としては、(a)抗糖尿病薬、例えばインスリン、スルホニル尿素(例えば、メグリナチド(meglinatide)、トルブタミド、クロルプロパミド、アセトヘキサミド、トラザミド、グリブリド(glyburide)、グリピジド(glipizide)およびグリメピリド)、ビグアニド類、例えば、メトホルミン(グルコファージ;登録商標)、α−グルコシダーゼ阻害薬類(アカルボース)、チアゾリジノン化合物、例えば、ロシグリタゾン(アバンディア;登録商標)、トログリタゾン(レズリン;登録商標)およびピオグリタゾン(アクトス;登録商標);(b)β3アドレナリン受容体作働薬、レプチンまたはその誘導体および神経ペプチドY拮抗薬;(c)胆汁酸抑制薬(コレスチラミンおよびコレスチポール)、HMG−CoA還元酵素阻害薬、例えば、スタチン類(ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチンおよびシムバスタチン)、ニコチン酸(ナイアシン)、フィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジルおよびクロフィブレート)およびニトログリセリンなどがあるが、これらに限定されるものではない。炎症疾患の治療に有用な薬剤の例としては、(a)非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、例えばプロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン(benoxaprofen)、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン(miroprofen)、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン(pirprofen)、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェン(tioxaprofen))、酢酸誘導体(例えば、インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナック、クリダナク、クロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロズ酸、フェンチアザク、フロフェナック(furofenac)、イブフェナック、イソゼッパク(isoxepac)、オキシピナック(oxpinac)、スリンダク、チオピナック(tiopinac)、トルメチン、ジドメタシン(zidometacin)およびゾメピラック)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサルおよびフルフェニサル(flufenisal))、オキシカム類(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカムおよびテノキシカム)、サリチル酸塩(アセチルサリチル酸およびスルファサラジン)およびピラゾロン類(アパゾン、ベズピペリロン(bezpipylon)、フェプラゾン(feprazone)、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾンおよびフェニルブタゾン);(b)シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害薬、例えば、セレコキシブ(celecoxib;セレブレックス(Celebrex;登録商標))およびロフェコキシブ(rofecoxib:ビオックス(Vioxx;登録商標))および(c)ホスホジエステラーゼIV(PDE−IV)阻害剤などがあるが、これらに限定されるものではない。本発明の多形体の第2の有効成分に対する重量比は変動し得るものであり、各成分の有効用量によって決まる。一般的には、それぞれの有効用量を用いる。そこで例えば、本発明の多形体をNSAIDと併用する場合、本発明の多形体のNSAIDに対する重量比は、約1000:1〜約1:1000、好ましくは約200:1〜約1:200の範囲である。本発明の塩または多形体と他の有効成分の組み合わせも上記の範囲内であるが、各場合で、それぞれの有効成分の有効用量を用いるべきである。
【0084】
ある種の実施形態では、本発明の塩および多形体を、各種の他の適応症の治療または予防に用いることができる。そのような適応症には、糖尿病(I型およびII型糖尿病など)、高血圧、狭心症、異脂肪血症(高トリグリセリド血症、高リポタンパク質血症および高コレステロール血症など)、痛風、腎障害および糖尿病の続発症である他の腎臓疾患、糖尿病性神経障害、他のインシュリン耐性関連疾患、多嚢胞性卵巣症候群、グルココルチコイド誘発インシュリン耐性、肥満、骨障害、女性特有の状態(過剰な更年期子宮出血など)およびアクネなどの代謝状態;アルツハイマー病、神経炎症、虚血性卒中、閉鎖性頭部外傷および多発性硬化症などの神経障害;アテローム性動脈硬化、再狭窄、結腸癌、前立腺癌、乳癌、脂肪肉腫、上皮細胞癌、尿路上皮癌および他の癌などの増殖障害;ならびに関節リウマチ、炎症性大腸疾患、結腸炎、クローン病、黄斑変性、他の炎症障害および他の免疫障害などの炎症または免疫障害などがあるが、これらに限定されるものではない。そのような適応症の治療または予防において本発明の塩および多形体の使用を提案する根拠について、下記で説明する。
【0085】
PPARγ作働薬が脂肪細胞分化および脂肪蓄積を促進することから、PPARγ調節剤は肥満の治療に有用であると考えられている。PPARγ調節剤はまた、前脂肪細胞の正常なホルモン介在分化による脂肪細胞への変化も遮断する(Wright et al., J. Biol. Chem. 275 (3): 1873-1877 (2000)参照)。PPARγ作働薬は、成熟脂肪細胞におけるob遺伝子の発現(レプチン産生)を阻害することができる。従って、PPARγ調節剤がレプチン産生を増加させて、結果的に食欲および食物摂取が低下することになる(Sinha et al., Metab. Clin. Exp., 48 (6): 786-791 (1999)参照)。さらに、ラットにおいてPPARγ調節剤によって誘発された高レプチン血症状態では、PPARγ発現の低下および脂肪酸酸化酵素の上昇を生じる。これらの効果には、脂肪細胞分化の逆転が伴う。
【0086】
さらに、PPARγ作働薬は、脂肪細胞および骨格筋におけるUCP2発現を上昇させて、エネルギー消費を増加させる(Viguerie-Bascands et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 256 (1): 138-141 (1999)およびCamirand et al., Endocrinology 139 (1): 428-431 (1998)参照)。PPARγは、脂肪組織でのUCP2およびUCP3の発現を抑制する上で非常に重要である(Kelly et al., Endocrinology 139 (12): 4920-4927 (1998))。これらの結果を併せて考えると、高用量のPPARγ調節剤での比較的短期間の治療で、肥満に対して長期間の効果があり;従来の肥満治療では成熟脂肪細胞における脂肪含有量が減るが、脂肪の急速な再合成を行うことができる脂質合成酵素がそれらに残ることが示唆される。 そのような急速な再合成が、治療の失敗の原因となっている可能性がある(Zhou et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (5): 2391-2395 (1999)参照)。
【0087】
PPARγ作働薬が血管上皮細胞によるエンドテリン−1分泌を抑制することで血圧が降下することから、PPARγ調節剤は高血圧の治療において有用であると考えられている(Satoh et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 254 (3): 757-763 (1999)およびItoh et al., Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 26 (7): 558-560 (1999)参照)。PPARγ作働薬はまた、各種モデルの高血圧においても血圧を降下させる(Komers et al., Physiol. Res. (Prague) 47 (4): 215-225 (1998))。
【0088】
PPARγが全身グルコースおよび脂質恒常性で示唆されていることから、PPARγ調節剤は、脂質障害の治療において有用であると考えられている(Kliewer et al., Curr. Opin. Genet. Dev. 8 (5): 576-581 (1998)参照)。PPARγ作働薬は、高トリグリセリド血症も改善する(Berger et al., J. Biol. Chem. 274 (10): 6718-6725 (1999)参照)。さらにPPARγ作働薬は、抗高脂血症性である(Henke et al., J. Med. Chem. 41 (25): 5020-5036 (1998)参照)。最後に、PPARγ活性化剤が、用量依存的に高密度リポタンパク質(HDL)を増加させ、VLDL、LDLおよびトリグリセリド類を減少させることが明らかになっている(Bisgaier et al., J. Lipid Res. 39 (1): 17-30 (1998)参照)。
【0089】
活性化単球/マクロファージがPPARγを発現し、PPARγ活性化によってIL−1およびTNFαの誘発マクロファージ産生が低下することから、PPARγ調節剤はアテローム性動脈硬化の治療において有用であると考えられている。それは、アテローム性動脈硬化においてPPARγが役割を果たしている可能性を示唆するものである(McCarty et al., J. Med. Food 1 (3): 217-226 (1999)参照)。さらに、PPARγは、平滑筋細胞に対する非エステル化脂肪酸(NEFA)の効果に介在して、小動脈および大動脈の内膜における細胞外基質を変化させる。その変化は、LDLの沈着増加をもたらす可能性があり、アテローム性動脈硬化の病因に関連していると考えられる。PPARγの調節剤は、このプロセスに影響し得る(Olsson et al., Diabetes 48 (3): 616-622 (1999)参照)。
【0090】
さらに、PPARγ作働薬は、増殖因子によって誘発される血管平滑筋細胞の増殖、肥大および移動を阻害する。これらのプロセスは、血管再構築およびアテローム性動脈硬化の進行において必須である。PPARγは、動脈硬化性プラークでの単球/マクロファージ機能の低下に関与し、プラーク崩壊で示唆される酵素であるマトリクスメタロプロテアーゼ−9の発現を調節する。この場合、PPARγ作働薬が有用である可能性がある(Marx et al., Am. J. Pathol. 153 (1): 17-23 (1998)およびShu et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 267 (1): 345-349 (2000)参照)。PPARγは、ヒト硬化病変のマクロファージ泡沫細胞において発現される(Ricote et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 (13): 7614-7619 (1998)参照)。PPARγは、動脈硬化性プラークおよび内皮細胞においても発現される。内皮細胞では、PPARγ作働薬は、in vitroにおいてVCAM−1およびICAM−1(血管細胞接着分子)のTNFα誘発発現を顕著に弱める。PPARγ作働薬は、アポE欠乏マウスにおいて動脈硬化性プラークへの単球/マクロファージのホーミングをかなり減少させる。これらの効果の組み合わせは、アテローム性動脈硬化における炎症応答調節で有効である可能性がある(Pasceri et al., Circulation 101 (3): 235-238 (2000)参照)。
【0091】
最後に、ヒトでの遺伝的証拠から、PPARγが、恐らくは直接の局所的血管壁効果を介して、肥満および脂質代謝に対する効果からは独立の、アテローム発生における重要な役割を果たすことも示唆されている(Wang et al., Cardiovasc. Res. 44 (3): 588-594 (1999)参照)。昨年には、マクロファージの生物学、細胞周期調節およびアテローム性動脈硬化において、特に単球/マクロファージ機能の調節剤として、PAPRγを示唆する研究が大幅に増えている(Ricote et al., J. Leukocyte Biol. 66 (5): 733-739 (1999)参照)。
【0092】
TZD類がin vitroで骨小結節形成および石灰化を阻害することから、PPARγ調節剤は骨障害の治療において有用であると考えられている(Johnson et al., Endocrinology 140 (7): 3245-3254 (1999)参照)。PPARγ多形は、閉経後女性における骨塩量に影響する(Ogawa et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 260 (1): 122-126 (1999)参照)。TZD類は、in vitroでの骨吸収の強力な阻害薬である。従ってTZD類は、糖尿病患者での骨吸収を抑制し、骨損失を防止することができる(Okazaki et al., Endocrinology 140 (11): 5060-5065 (1999)参照)。糖尿病患者のTZDによる短期治療によって、骨代謝が低下する。その効果は、グルコース代謝への大幅な改善の前に認められ、効果が骨に直接発揮されることが示唆される。グルコースおよび骨の代謝に対する二重効果によって、糖尿病患者において骨量を保存することができる(Okazaki et al., Endocr. J. (Tokyo) 46 (6): 795-801 (1999)参照)。
【0093】
PPARγ作働薬を用いて、女性における過剰な更年期子宮出血を阻害できることから、PPARγ調節剤は女性特有の状態の治療において有用と考えられている(アーバン(Urban)ら、WO 98/39006)。
【0094】
PPARγが皮脂細胞の分化において示唆されることから、PPARγ調節剤はアクネの治療において有用であると考えられている。PPARγ作働薬は、アクネ、表皮細胞の分化に関連する他の皮膚障害その他の皮膚の増殖疾患の治療において用いることができる(Rosenfield et al., Dermatology (Basel) 196 (1): 43-46 (1998);リビエル(Rivier)ら、FR2773075A1およびペルシャドシン(Pershadsingh)らの米国特許第5981586号参照)。
【0095】
レチノイド−X受容体作働薬との組み合わせで、PPARγ作働薬が、癌、再狭窄およびアテローム性動脈硬化などの制御されない細胞増殖を低下させることから、PPARγ調節剤は細胞増殖に関連する障害の治療において有用であると考えられる。PPARγ作働薬は単独または公知の薬剤との併用で、血管形成術、血管移植または直腸摘出術後に認められる増殖応答を低下させることができる。
【0096】
PPARγ作働薬が神経傷害性および星状細胞活性化を起こす小膠細胞および単球による催炎性産物のbアミロイド刺激分泌を阻害することから、PPARγ調節剤は、アルツハイマー病の治療において有用であると考えられている。それらはまた、活性化マクロファージへの単球の分化を停止させ、IL−6、TNFαおよびシクロオキシゲナーゼ−2のbアミロイド刺激発現を阻害する(Combs et al., J. Neuroscience 20 (2): 558-567 (2000)参照)。アルツハイマー病と診断された患者からの側頭皮質では、シクロオキシゲナーゼ−1、シクロオキシゲナーゼ−2およびPPARγレベルが上昇していた。PPARγを活性化させるある種の薬剤は、膠細胞でのCOX−2発現を阻害する(Kitamura et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 254 (3): 582-586 (1999)参照)。さらに、PPARγ作働薬は、iNOSの阻害によるサイトカイン誘発アポトーシス死から小脳顆粒細胞を保護する(Heneka et al., J. Neuroimmunol. 100 (1-2): 156-168 (1999)参照)。最後に、活性化単球/マクロファージはPPARγを発現し、PPARγ活性かによって、IL−1およびTNFαの誘発マクロファージ産生が低下する。そのプロセスは、アルツハイマー病において示唆される可能性がある(McCarty et al., J. Med. Food 1(3): 217-226 (1999)参照)。
【0097】
PPARγ作働薬が膠細胞によるiNOSのLPSおよびIFN−g誘発発現を阻害することから、PPARγ調節剤は神経炎症の治療において有用であると考えられている(Kitamura et al., Neurosci. Lett. 262 (2): 129-132 (1999)参照)。さらに、PPARγリガンドは、虚血性卒中、閉鎖性頭部外傷および多発性硬化症などの神経炎症に関連する他の障害に関係している可能性がある。
【0098】
PPARγ作働薬の抗血管新生効果に内皮細胞に対するアポトーシス刺激が介在していることから、PPARγ調節剤はある種の癌の治療において有用であると考えられている(Bishop-Balley et al., J. Biol. Chem. 274 (24): 17042-17048 (1999)参照)。さらに、PPARγ作働薬は、ヒト結腸癌細胞の最終分化および増殖停止を誘発する(Kitamura et al., Jpn. J. Cancer Res. 90 (1): 75-80 (1999)およびSarraf et al., Nat. Med. (NY) 4(9): 1046-1052 (1998)参照)。PPARγ作働薬はまた、ヒト結腸癌細胞に対するレチノイン酸の抗増殖効果を高める(Brockman et al., Gastroenterology 115 (5): 1049-1055 (1998)参照)。さらに、特定のPPARγ作働薬は、in vitroおよびin vivoでヒト前立腺癌に対して強力な抗腫瘍効果を有する(Kubota et al., Cancer Res. 58 (15): 3344-3352 (1998)参照)。
【0099】
PPARγ作働薬は、培養ヒト乳房腫瘍細胞の増殖を阻害し、アポトーシスを誘発することもできる。効果はin vivoでマウスでも認められる(Elstner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 (15): 8806-8811 (1998)参照)。PPARγ作働薬は、悪性乳房上皮細胞の最終分化を誘発することができる(Mueller et al., Mol. Cell 1(3): 465-470 (1998)およびYee et al., Int. J. Oncol. 15(5): 967-973 (1999)参照)。PPARγ作働薬は、脂肪肉腫の治療において有用である(エバンス(Evans)ら、WO 98/29120参照)。PPARγは、尿路上皮性のヒトの癌のような全てのヒト移行上皮細胞癌において非常に多く発現される。PPARγ作働薬は、分化を誘発し、増殖を阻害する(Guan et al., Neoplasia (NY) 1(4): 330-339 (1999)参照)。最後に、多くの細胞種(肝細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、角化細胞、筋細胞および単球/マクロファージ)の分化には、PPARγが関与している。従って、PPARγ調節剤は、それらおよび他の細胞種から生じる悪性腫瘍の治療において何らかの役割を果たし得る(Varmecq et al., Lancet 354 (9173): 141-148 (1999)参照)。
【0100】
PPARγが活性化マクロファージにおいて顕著に上昇することから、PPARγ調節剤は炎症性障害および免疫障害の治療において有用であると考えられている。PPARγは、炎症サイトカイン類の発生および発現 of iNOS、ゲラチナーゼBおよびスカベンジャー受容体Aの発現などの単球/マクロファージ機能の低下において示唆される。従って、PPARγ作働薬は有用である可能性がある(Marx et al., Am. J. Pathol. 153(1): 17-23 (1998)参照)。関節リウマチの治療におけるNSAID類(その一部はPPARγを活性化する)の治療効果上昇には、PPARγ活性化が介在している可能性がある(Jiang et al., Nature 391 (6662): 82-86 (1998)参照)。PPARγ作働薬は、活性化マクロファージによるiNOS産生を阻害する。従って、PPARγ作働薬は有用である可能性がある(Colville-Nash et al., J. Immunol. 161(2): 978-984 (1998)参照)。
【0101】
さらに、PPARγ作働薬は、骨髄由来肥満細胞による抗原誘発サイトカイン産生を弱める(Sugiyama et al., FEBS Lett. 467(2-3): 259-262 (2000)参照)。最近、PPARγについての免疫調節の役割が、単球およびマクロファージなどの生来の免疫系に必須の細胞において報告されている。PPARγ作働薬は、ヘルパーT細胞クローンおよび単離したばかりの脾細胞の増殖応答の重要な阻害に介在する。従って、T細胞クローンによるIL−2産生がPPARγ作働薬によって阻害されることから、それは免疫抑制剤としての用途を有する可能性がある(Clark et al., J. Immunol. 164(3): 1364-1371 (2000)参照)。PPARγは、単球/マクロファージ機能の調節剤としても示唆される(Ricote et al., J. Leukocyte Biol. 66 (5): 733-739 (1999)参照)。白血球でのPPARγ発現は、急性炎症攻撃に対する宿主の応答において何らかの役割を果たしてる可能性があり、抗炎症制御の重要な標的となる可能性がある(Leininger et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 263 (3): 749-753 (1999)参照)。
【0102】
さらに、PPARγ活性化剤は、血管細胞接着分子VCAM−1および単球が介在する慢性炎症を制限する上で役立つ可能性がある(Jackson et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 19 (9): 2094-2104 (1999)参照)。PPARγ作働薬はさらに、炎症性大腸疾患(IBD)のマウスモデルにおいて、結腸の炎症を顕著に低下させる。PPARγ作働薬は、大腸炎およびクローン病を治療する上で有用である可能性がある(Su et al., J. Clin. Invest. 104 (4): 383-389 (1999)参照)。
【0103】
最後に、PPARγ作働薬の抗血管新生効果に、内皮細胞に対するアポトーシス刺激が介在することから、PPARγ調節剤は黄斑変性などの眼球障害の治療において有用であると考えられている。それは、そのような作働薬が黄斑変性の治療において有用である可能性を示唆するものである(Bishop-Balley et al., J. Biol. Chem. 274 (24): 17042-17048 (1999)参照)。
【0104】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、単独あるいはインシュリン、スルホニル尿素(例:メグリナチド、トルブタミド、クロルプロパミド、アセトヘキサミド、トラザミド、グリブリド、グリピジドおよびグリメピリド)、ビグアニド類、例えばメトホルミン(グルコファージ;登録商標)、α−グルコシダーゼ阻害薬類(アカルボース)、チアゾリジノン化合物、例えば、ロシグリタゾン(アバンディア;登録商標)、トログリタゾン(レズリン;登録商標)およびピオグリタゾン(アクトス;登録商標)などの抗糖尿病薬から選択される第2の治療薬との併用で本発明の塩または多形体を用いる、II型糖尿病の治療または予防に関するものである。併用で用いる場合、担当医は、治療薬の組み合わせを投与することができるか、あるいは投与を順次で行うことができる。
【実施例】
【0105】
7:実施例
下記で使用される試薬および溶媒は、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co., Milwaukee, Wis., USA)などの商業的入手先から入手することができる。H−NMRスペクトラムは、バリアン・ジェミニ(Varian Gemini)400MHzNMRスペクトル装置で記録した。重要なピークを、プロトン数、多重度(s、1重線;d、2重線;t、3重線;q、4重線;m、多重線;brs、広い1重線)およびヘルツ(Hz)単位でのカップリング定数の順で表にまとめている。エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量スペクトル分析は、サンプル運搬用にHP1100HPLCを用いるヒューレット−パッカード(Hewlett-Packard)1100MSDエレクトロスプレー質量分析装置で実施した。
【0106】
質量分析結果は、質量/電荷の比として報告する。化合物を0.1mg/mLでメタノールに溶かし、1μLを運搬溶媒を用いて質量分析装置に注入し、それを100〜1500ダルトンで走査した。化合物は、1%酢酸含有の1:1アセトニトリル/水を運搬溶媒として用いて、正ESIモードで分析することができると考えられる。化合物はまた、2mM NHOAcのアセトニトリル/水溶液を運搬溶媒として用いて、負ESIモードで分析することもできると考えられる。
【0107】
X線粉末回折分析は、CuKα線を用いる島津(Shimadzu)XRD−6000X線粉末回折計を使用して行った。その装置の高精度焦点X線管の電圧およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。発散スリットおよび散乱スリットは、1°に設定し、受光スリットは0.15mmに設定した。回折した放射線を、NaIシンチレーション検出器によって検出した。2.5〜40°2θまでの3°/分(0.4秒/0.02°の段差)でのθ−2θ連続走査を用いた。シリコン標準を分析して、装置のアラインメントを調べた。データの収集および解析は、XRD−6000v.4.1を用いて行った。
【0108】
ある実験では、インジウム標準で較正したTAインスツルーメンツ(TA instruments)の示差走査熱量計2920を用いて示差走査熱量測定を行った。サンプルをアルミニウム製のサンプル皿に入れ、カバーを施した。サンプルを25℃で平衡とし、最終温度350℃まで10℃/分の制御速度で窒素パージ下に加熱した。
【0109】
他の実験では、TAインスツルーメンツのQ100示差走査熱量計を用いて示差走査熱量測定を行った。サンプルをアルミニウム製のサンプル皿に入れ、カバーを施した。サンプルを25℃で平衡とし、最終温度250℃まで10℃/分の制御速度で窒素パージ下に加熱した。
【0110】
水分吸収/脱着データは、VTI SGA−100蒸気吸収分析装置(VTI SGA-100 Vapor Sorption Analyzer)で収集した。吸収および脱着データは、窒素パージ下に10%RH間隔で5%〜95%相対湿度(「RH」)の範囲にわたって収集した。分析に先立って、サンプルの乾燥は行わなかった。分析に使用した平衡基準は、5分以内で0.0100%未満の重量変化であり、その重量基準が満足されなかった場合には最大平衡時間は3時間とした。サンプルの初期水分含有量について、データの補正は行わなかった。較正標準として、NaClおよびPVPを用いた。
【0111】
走査型電子顕微鏡検査(SEM)は、FEIクオンタ200(FEI Quanta 200)走査型電子顕微鏡を用いて行った。広視野検出器を、低真空モードで用いた。装置の磁極片には、電子二次検出器コーンを取り付けた。ビーム電圧は4.7〜5.0kBの範囲とし、チャンバ圧は69.3〜118.7Paの範囲とした。画像解像度は、1024×948であった。アルミニウム製スタブに取り付けたカーボンテープ上に少量を乗せることで、分析用にサンプルの準備を行った。装置について、NIST標準を用いて倍率の較正を行った。データは、xTm構築番号1564を用いて収集し、XT Docu(バージョン3.2)を用いて解析した。SEM画像上に報告の倍率は、初期データ取得時に計算した。
【0112】
固体赤外線(IR)スペクトラムは、パーキン−エルマー(Perkin-Elmer)1600赤外線スペクトル装置を用いて得た。化合物は、KBrペレットに約1%で分散させた。
【0113】
7.1:実施例1:化合物101の合成
本実施例は、化合物101の合成例を提供するものである。化合物101の酸付加塩の合成方法など、化合物101の別の合成方法を下記に記載している。さらに他の別の合成法は、当業者には明らかであろう。
【化5】

【0114】
3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロ−フェノキシ)−3,4−ジヒドロ−キノリン(II)
3−ヒドロキシキノリン(I)(文献(Naumann et. al., Synthesis 4: 279-281 (1990))の手順に従って製造)(3g)および1,2,3−トリクロロ−5−ニトロベンゼン(4.7g)をDMF(80mL)に溶かし、炭酸セシウム(7.4g)とともに60℃で2時間加熱した。反応液を氷/水(500mL)に投入した。得られたオフホワイト沈澱を濾取し、ヘキサンで洗って、化合物IIを、次の反応で用いるのに好適な固体(6.9g)として得た。
【0115】
H NMR(CDCl)δ8.863(d、J=2.2Hz、1H)、8.360(s、2H)、8.106(d、J=8.6Hz、1H)、7.646(m、2H)、7.529(d、J=8.6Hz、1H)、7.160(d、J=2.2Hz、1H)。
【0116】
3,5−ジクロロ−4−(3,4−ジヒドロ−キノリン−3−イルオキシ)−フェニルアミン(III)
化合物II(6.9g)のエタノール/THF/水(比率40:20:10)溶液に、塩化アンモニウム(3.3g)および鉄粉(3.4g)を加えた。その混合物を5時間加熱還流した。その熱混合物をセライトで濾過し、濃縮した。残留物を酢酸エチルに溶かし、飽和NaHCO溶液と次に水、そして次にブラインで洗浄した。溶液を硫酸マグネシウムで脱水し、濃縮して、化合物IIIをオフホワイト固体として得た(5.6g)。
【0117】
H NMR(DMSO)δ8.846(d、J=2.9Hz、1H)、8.010(m、1H)、7.915(m、1H)、7.645(m、1H)、7.560(m、1H)、7.401(d、J=2.9Hz、1H)、6.778(s、2H)、5.762(s、2H)。
【0118】
2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニル]−ベンゼンスルホンアミド(101)
従来の方法に従ってアニリンIIIを2,4−ジクロロベンゼンスルホニルクロライドで処理することで、化合物101を得た。
【0119】
H NMR(d−アセトン)δ9.9(1H、brs)、8.794(1H、d、J=2.9Hz)、8.23(1H、d、J=8.4Hz)、8.035(1H、brd、J=8.4Hz)、7.793(1H、d、J=1.5Hz)、7.78(1H、m)、7.62〜7.70(2H、m)、7.57(1H、td、J=6.8、1.2Hz)、7.476(2H、s)、7.364(1H、d、J=2.6Hz)。MS(M−H)511.0。
【0120】
7.2:実施例2:PPARγリガンド結合
文献(Lehmann et al., J. Biol. Chem. 270: 12953-12956 (1995))と同様の方法を用いたところ、実施例1に従って製造した化合物101は、放射性リガンドとして[H]−BRL49653を用いるPPARγリガンド結合アッセイで1μM未満のIC50を示した。
【0121】
7.3:実施例3:化合物101のHCl塩の結晶化
化合物101をHCl塩として再結晶した。化合物IIの化合物IIIへの還元にSnCl還元を用いた以外は実施例1に従って製造した化合物101を、温エタノール約3.5リットルに懸濁させた。21%NaOEt/エタノール約240mLを加えて、完全な溶液を形成した。その温溶液に、濃HCl 145mL(約3当量)のエタノール(450mL)溶液を加え、徐々に放冷して室温とした。固体沈澱を真空濾過によって回収した。生成物を水(2リットル)中でスラリーとし、濾過によって再度回収した。風乾後、精鋭物を70℃で311gの恒量となるまで真空乾燥した。化合物101の無水HCl塩を、NMRおよびCHNで確認した。
【0122】
化合物101のHCl塩は、小さい菱形結晶または針状物を形成した。SEMは、板状粒子または角柱状粒子を示した。DSCは、例えば125.2、161.5、222.6、190.3、224.9、235.6、242.4および182℃で多様な吸熱事象を示した。吸熱事象は広く、溶融エンタルピーは計算できなかった。XRPDは、結晶粒子または部分結晶粒子を示した。
【0123】
7.4:実施例4:化合物101のHBr塩の結晶化
化合物101をHBr塩として再結晶した。48%HBr0.98g(3当量)のエタノール(3mL)溶液を、遊離塩基型の化合物101(1g)のエタノール(20mL)溶液に加えた。本実施例においては、化合物101は、化合物IIの化合物IIIへの還元にSnCl還元を用いた以外は実施例1に従って製造した。得られた透明溶液を、白色沈澱が生成するまで超音波浴に入れた。室温で10分間放置した後、懸濁液を加熱して再度透明溶液を形成した。その溶液を、ジャケットを巻いたフラスコ中で終夜にて徐々に放冷した。固体(0.829g)を真空濾過によって回収し、恒量となるまで真空乾燥した。化合物101のHBr塩をNMRおよびCHNによって確認した。
【0124】
化合物101のHBr塩は結晶を形成し、SEMは板状物を示した。DSCは単一サンプルから255.4および261.7℃の吸熱事象および158.5J/gの溶融エンタルピーを示した。一方または両方の吸熱事象が、サンプル融解によるものであった。XRPDは、結晶粒子または部分結晶粒子を示した。
【0125】
7.5:実施例5:化合物101のトシル酸塩の結晶化
化合物101をトシル酸塩として再結晶した。p−トルエンスルホン酸・1水和物(4.5g、2当量)のエタノール(55mL)/水(11mL)溶液を、遊離塩基型の化合物101(6g)のエタノール(120mL)溶液に加えた。本実施例においては、化合物101は、化合物IIの化合物IIIへの還元にSnClを用いた以外は実施例1に従って製造した。混合物を加熱して、透明溶液を形成した。冷却して室温とした後、白色沈澱が認められるようになるまで、窒素気流下に一部の溶媒を除去した。懸濁液を再度加温して透明溶液を形成し、それを徐々に冷却しながら60時間攪拌した。固体を真空濾過によって回収し、恒量となるまで真空乾燥して、融点215〜220℃の固体6.4gを得た。それをエタノール(30mL)に再度懸濁させ、加熱して溶解させた。徐々に冷却した後、固体を回収し、真空乾燥して、融点218〜220℃の固体6.19gを得た。化合物101のトシル酸塩をNMRによって確認した。
【0126】
化合物101のトシル酸塩は結晶を形成し、SEMは不規則形状粒子を示した。DSCは、220.6℃の吸熱事象および86.76J/gの溶融エンタルピーを示した。XRPDは、結晶粒子または部分結晶粒子を示した。
【0127】
7.6:実施例6:化合物101のベシル酸塩のI型の結晶化
本実施例は、化合物101の遊離塩基から化合物101の形態Iベシル酸塩の少量結晶化の例を提供するものである。化合物101を、ベンゼンスルホン酸(PhSOH−xHO;アルドリッチ)を用いて形態Iとして再結晶した。ベンゼンスルホン酸3.9gをエタノール5mLに溶かし、そのエタノール溶液を固体遊離塩基化合物101 5.02gに加えた。本実施例においては、化合物101は、化合物IIの化合物IIIへの還元にSnClを用いた以外は実施例1に従って製造した。混合物をエタノール5mLで洗い、追加のエタノールをさらに加えて総量を25mLとした。混合物を加熱して完全な溶液を形成し、攪拌しながら徐々に冷却した。固体の形態I 5.57gを濾取し、エタノールで洗った。
【化6】

【0128】
7.7:実施例7:化合物101のベシル酸塩の大量合成
本実施例は、化合物101に対する前駆体からの化合物101のベシル酸塩の合成例を提供するものである。そのような前駆体から化合物101のベシル酸塩を合成する代替法については、当業者には明らかであろう。
【0129】
3−ヒドロキシキノリン(3)
3−アミノキノリン(2)を、ジアゾニウム塩を介して、収率96%で3−ヒドロキシキノリン(3)に変換した。
【0130】
3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロ−フェノキシ)−キノリン(4)
3−ヒドロキシキノリン(3)および1,2,3−トリクロロ−5−ニトロベンゼンをDMFに溶かし、炭酸カルシウムとともに加熱して、イソプロパノールでの磨砕後に、収率93%で3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロ−フェノキシ)−キノリン(4)を得た。
【0131】
3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニルアミン(5)
3−(2,6−ジクロロ−4−ニトロ−フェノキシ)−キノリン(4)のニトロ官能基を、5重量%(触媒/化合物4)の1%白金/2%バナジウム/炭素触媒の酢酸エチル懸濁液を用いて、0℃で水素下に接触還元した。取得物を加熱して20℃とし、セライトで濾過した。セライトをTHFで洗浄し、濾液を合わせ、溶媒留去して、3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニルアミン(5)を収率98%で得た。
【0132】
2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−キノリン−3−イルオキシ)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドHCl(1)
次に、3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニルアミン(5)を2,4−ジクロロベンゼンスルホニルクロライドと反応させ、その後に塩酸で処理して、2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−キノリン−3−イルオキシ)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドHCl(1;化合物101の塩酸塩)を収率99%で得た。
【0133】
7.8:実施例8:化合物101の塩酸塩の製造および再結晶
本実施例は、化合物101への前駆体から化合物101の塩酸塩を合成および再結晶するのに用いることができる方法を説明するものである。実施例7に従って製造した3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニルアミンの塩化メチレン溶液を、2,4−ジクロロベンゼンスルホニルクロライドおよび2当量のピリジンで処理した。塩化メチレンを蒸留することで溶液を濃縮した。反応完了後、残った溶媒を減圧下に除去して、粘稠泡状物を得た。その泡状物を再度塩化メチレンに溶かした。4当量の3N HClを加えることで粘稠沈澱を得て、それを濾過によって回収した。固体を塩化メチレンと次に水で洗浄した。真空乾燥した後、非晶質固体を得た。炭素、水素、窒素燃焼分析(CHN)は、その非晶質固体が化合物101のHCl塩+0.5HOであることを示していた。
【0134】
NaHCO溶液とともに酢酸エチルで抽出することで遊離塩基に変換することで、化合物101の塩酸塩のさらなる精製を行った。MgSOで脱水し、濃縮して、遊離塩基を白色固体として得た。本実施例では、化合物101の遊離塩基を塩酸塩に変換し戻した。しかしながら、本実施例に記載の手順を用いて、本明細書に記載の化合物101のあらゆる酸付加塩を得ることができる。
【0135】
化合物101の遊離塩基(300g)を、温エタノール約3.5リットルに懸濁させた。NaOEtのエタノール溶液(21%、約240mL)を加えて、完全な溶液を得た。濃HCl 145mL(約3当量)のエタノール(450mL)溶液を前記温溶液に加え、混合物を徐々に放冷して室温とした。固体沈澱を真空濾過によって回収した。生成物を水(2リットル)でスラリーとし、濾過によって再度回収した。風乾後、生成物を70℃で311gの恒量となるまで真空乾燥した。生成物は、NMRおよびCHNによって、化合物101の無水HCl塩であることが確認された。
【0136】
7.9:実施例9:化合物101のベシル酸塩の製造
化合物101のベシル酸塩を、実施例7に従って製造した2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−キノリン−3−イルオキシ)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドHClから合成した。塩酸塩である2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−キノリン−3−イルオキシ)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドHClを、重炭酸ナトリウム/酢酸エチルの2相反応溶液を用いて、遊離塩基を経由してベシル酸塩に変換した。有機層の分離とそれに続くエタノールとの溶媒交換によって、化合物101のベシル酸塩(6)が収率84%で沈澱した。4−アミノキノリン(2)から出発して、化合物101のベシル酸塩(6)の全体収率は73%であった。
【0137】
実施例7および8に記載の製造を2回行った。一方のバッチでは、化合物101のベシル酸塩の形態IおよびIIの混合物が得られた。他方のバッチでは、化合物101のベシル酸塩の形態II多形体のみが得られた。
【0138】
7.10:実施例10:化合物101のベシル酸塩の形態IIの再結晶
【化7】

【0139】
化合物101を、ベンゼンスルホン酸(PhSOH−xHO;アルドリッチ)を用いて形態IIとして再結晶した。
【0140】
実施例7および8に従って製造した化合物101のベシル酸塩(6)の形態IおよびIIの混合物(6.938kg)を、軽く加熱しながら(約28℃)酢酸エチル中で攪拌した。重炭酸ナトリウムの飽和溶液(13リットル)を少量ずつ加えた(吸熱、ガス発生)。得られた2相混合物を約1時間攪拌した。相を分液し、有機層を飽和塩化ナトリウム溶液(13リットル)で洗浄した。有機層を分液し、蒸留によって濃縮した(91リットルの留出液を除去)。酢酸エチル(91リットル)を加え、溶液を活性炭によって脱色し、セライトで濾過した。フィルターケーキを酢酸エチルで洗浄し(15リットルで2回)、濾液を、活性炭脱色段階からの酢酸エチル濾液と合わせた。約135リットルを留去することで溶液を濃縮した。エタノール(16リットル)を加え、溶液を加熱して77℃とした。エタノール(5リットル)に溶かしたベンゼンスルホン酸(4.126kg)を加えた。追加のエタノール2リットルを用いて、ベンゼンスルホン酸溶液の入った容器を洗った。冷却して約69℃とした後、化合物101のベシル酸塩(6)36gを加えた。懸濁液を約67〜69℃で38分間攪拌し、冷却して20℃とし、約4時間攪拌した。濾過および真空乾燥後に、固体6.377kg(92%)を得た。
【0141】
7.11:実施例11:形態Iの分析
本実施例は、実施例6に従って製造した形態Iの示差走査熱量測定(DSC)および吸湿性分析を示すものである。
【表1】

【0142】
サンプル1のXRPD分析(図5参照)は、約7.0、19.5、24.0、24.5および28.5°2θに主要ピークを示した。形態Iは、驚くほど低い吸湿性を示し、25%から95%相対湿度でちょうど0.6%の重量増であり、95%から25%相対湿度ではちょうど0.6%の重量損であった(図6参照).
7.12:実施例12:形態Iの分析
本実施例は、実施例8に従って製造した形態IのX線粉末回折(XRPD)および示差走査熱量測定(DSC)分析を示すものである。実施例8の形態I多形体は、実施例6の形態I多形体と同様の特性を示した。
【表2】

【0143】
サンプル5のXRPD分析は、約7.0、19.5、22.0、24.0、24.5および28°2θに主要ピークを示した。走査型電子顕微鏡検査は、形態Iが各種大きさの条痕がある管状粒子および恐らくは積層シートを形成することを示した。赤外線スペクトラム(図7参照)は、形態Iが約1567、1461、913、895および881cm−1にピークを有することを示した。
【0144】
7.13:実施例13:形態IIの分析
本実施例は、実施例8に従って製造した形態IIの示差走査熱量測定(DSC)および吸湿性分析を示すものである。
【表3】

【0145】
サンプル6のXRPD分析(図9参照)は、約15、19、20.5、23.5、24.5、25、26.5、29.5および30.5°2θに主要ピークを示した。赤外線スペクトラム(図10)は、形態IIが約1573、1469、1459、912および859cm−1にピークを有することを示した。
【0146】
本明細書で引用の全ての刊行物および特許出願は参照により、あたかもそれぞれの個別の刊行物または出願が参照によって具体的かつ個別に組み込まれていると示されているかのように、本明細書に組み込まれるものとする。理解を深めることを目的とした図や実施例によって、前記の発明についてやや詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱しない限りにおいて、ある種の変更および修正を行うことが可能であることは、本発明の記述を鑑みれば、当業者には容易に明らかになろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩。
【化1】

【請求項2】
2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニル]−ベンゼンスルホンアミドベンゼンスルホン酸塩。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物の形態I多形体。
【請求項4】
約186.3〜約189.5℃の示差走査熱量測定融点最大値を有する請求項3に記載の多形体。
【請求項5】
約81.5〜約89.9J/gの示差走査熱量測定溶融熱を有する請求項3に記載の多形体。
【請求項6】
約180〜200℃の融点を有する請求項3に記載の多形体。
【請求項7】
約186℃の融点を有する請求項3に記載の多形体。
【請求項8】
CuKα線を用いて約7.0、19.5、22.0、24.0、24.5および28°2θに主要なX線粉末回折ピークを有する請求項3に記載の多形体。
【請求項9】
約1567、1461、913、895および881cm−1に主要な赤外線吸収ピークを有する請求項3に記載の多形体。
【請求項10】
エタノールからの前記式(I)の化合物のベシル酸塩の結晶化によって得られる請求項3に記載の多形体。
【請求項11】
請求項1または2に記載の化合物の形態II多形体。
【請求項12】
約233.7℃の示差走査熱量測定融点最大値を有する請求項11に記載の多形体。
【請求項13】
約98.9J/gの示差走査熱量測定融解熱を有する請求項11に記載の多形体。
【請求項14】
約230℃より高い融点を有する請求項11に記載の多形体。
【請求項15】
約233℃の融点を有する請求項11に記載の多形体。
【請求項16】
CuKα線を用いて約15、19、20.5、23.5、24.5、25、26.5,29.5および30.5°2θに主要なX線粉末回折ピークを有する請求項11に記載の多形体。
【請求項17】
約1573、1469、1459、912および859cm−1に主要な赤外線吸収ピークを有する請求項11に記載の多形体。
【請求項18】
エタノールから前記式(I)の化合物のベシル酸塩を結晶化させることで得られる請求項11に記載の多形体。
【請求項19】
下記式(I)の化合物の塩酸塩。
【化2】

【請求項20】
下記式(I)の化合物のp−トルエンスルホン酸塩。
【化3】

【請求項21】
請求項1に記載の塩および製薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項22】
請求項3または11に記載の多形体および製薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項23】
前記多形体が純粋な形態のものである請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
被験者におけるPPARγ介在の状態または障害の治療方法において、前記被験者に対して、治療上有効量の請求項21または22に記載の医薬組成物を投与する段階を有する方法。
【請求項25】
前記PPARγ介在の状態または障害が代謝障害または炎症状態である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記代謝障害が、糖尿病、肥満、高コレステロール血症、高脂血症、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高血糖、インシュリン耐性および高インシュリン血症からなる群から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記代謝障害がII型糖尿病である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記炎症状態が、関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化からなる群から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記被験者がヒトである請求項24に記載の方法。
【請求項30】
下記式(I)の化合物:
【化4】


の製造方法において、
a)3,5−ジクロロ−4−(キノリン−3−イルオキシ)−フェニルアミンを2,4−ジクロロベンゼンスルホニルクロライドおよび塩酸と反応させて、2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−キノリン−3−イルオキシ)フェニル−ベンゼンスルホンアミドHClを得る段階;および
b)前記2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−キノリン−3−イルオキシ)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドHClを中和して、前記式(I)の化合物を得る段階
を有することを特徴とする方法。
【請求項31】
前記2,4−ジクロロ−N−[3,5−ジクロロ−4−キノリン−3−イルオキシ)フェニル]−ベンゼンスルホンアミドHClを、酢酸エチル中にて重炭酸ナトリウムで中和する請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−97090(P2012−97090A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264219(P2011−264219)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2006−534205(P2006−534205)の分割
【原出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(506107472)アムジェン インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】