強化材層の成長による複合材の製造方法及び関連機器
2層以上の強化材の層を現場で(in-situ)成長させること、及び、各層を次の層を成長させる前にマトリックスで含浸することを含む、複合材の製造方法。強化材の層は化学蒸着法によって形成されうる。この方法は、所望の形状及び物性を有する部品を形成するためのアディティブ層製造技術として使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブをベースとするナノ複合材はE.T. Thostenson and T-W. Chou, "Aligned Multi-Walled Carbon Nanotube-Reinforced Composites: Processing and Mechanical Characterization", Journal of Physics D: Applied Physics, 35(16) L77-L80 (2002) に記載されている。この論文によると、ナノ複合材の特性の改良に向けての最も重要な課題の1つはポリマーマトリックス中でのナノチューブの均一な分散体を得ることである。この論文に示された解決法はミクロスケールの2軸押出機である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の1つの態様は、2層以上の強化材の層を現場で(in-situ)成長させること、及び、
各層を次の層を成長させる前にマトリックスで含浸すること、
を含む、複合材の製造方法を提供する。
【0004】
本発明のさらなる態様は、現場で(in-situ)成長された、2層以上の強化材の層、及び、各層を含浸するマトリックスを含む、複合材を提供する。
【0005】
本発明のさらなる態様は、2層以上の強化材の層を現場で(in-situ)成長させるための装置、
マトリックス材料を塗布し、各層をマトリックス材料で含浸するための含浸装置、
を含む、複合材を製造するための機器を提供する。
【0006】
本発明は分散体に対する別の解決法を提供する。強化材をマトリックス中で分散させる試みの代わりに、強化材を現場で成長させ、そして次の層を成長させる前に各層をマトリックスで含浸する。
【0007】
強化材の層は成長段階の間に電磁場を印加することで整列されうる。すべての層に対して同一の方向に電磁場を印加してよく、又は、第一の層に第一の角度で、第二の層に第二の角度で印加し、それにより、各層内の強化材要素を異なる角度で成長させることもできる。
【0008】
強化材の層の成長は各層の成長の間にプラズマを形成することで促進されうる。これにより、より低い温度、通常、25〜500℃で成長を行うことができる。
【0009】
強化材の層はアーク放電法によって現場で成長されうる。ここで、負電極中に含まれる原料は放電により生じる高温のために昇華する。又は、強化材の層はレーザーアブレーション法によって現場で成長されうる。ここで、プロセスチャンバー中に不活性ガスをブリードしながら、高温反応器内でパルスレーザーがターゲットを蒸発させる。蒸発した材料が凝縮する際に、反応器のより低温の表面に強化材の層が発現する。放電又はレーザーアブレーションの場合に、強化材の層を構成する要素(たとえば、カーボンナノチューブ)は気相状態で形成され、層の現場での成長が基材上での要素の凝縮によって起こる。しかしながら、このようなアーク放電及びレーザーアブレーション法での問題は高体積での製造に向かないことであり、そして、高温を要求する傾向があることである。それゆえ、好ましくは、方法が、たとえば、化学気相蒸着法の一部として、強化材の成長を触媒する触媒粒子の層を1層以上形成することをさらに含む。このことで、より低温、通常、25〜500℃の範囲で成長を行うことが可能になる。この場合、事前に形成された要素を蓄積させることで成長させる代わりに、強化材の層を構成する要素を現場で成長させることによって層が成長する。
【0010】
好ましくは、触媒粒子のそれぞれの層は強化材の各層のために提供される。これにより、触媒粒子の少なくとも2層の層が異なる形状及び/又は異なる触媒粒子充填密度(層間及び/又は層内)で提供されうる。
【0011】
触媒粒子は水又はアルコール中の溶液中に維持された金属塩の沈殿によって直接的に堆積されるか、又は、コロイド懸濁液として、堆積されることができる。好ましくは、触媒粒子は懸濁液又は溶液として触媒を含むドロップレットを表面に、たとえば、プリンティングヘッドからスプレーすることで堆積される。
【0012】
通常、方法は、レーザー又は他の熱源を用いて、含浸の間にマトリックスを加熱することをさらに含む。マトリックス材料は、通常、層として堆積され、たとえば、粉体の層として堆積され、それが現場で加熱されて強化材を含浸する。
【0013】
含浸は通常、毛細管作用の方法によって行う。
【0014】
マトリックスは、チタンなどの金属、又は、熱硬化性樹脂又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱可塑性樹脂材料などのポリマーであってよい。
【0015】
少なくとも2層の強化材の層は、異なる形状で含浸し及び/又は成長されることができる。これにより、いわゆる「アディティブ層製造」又は「急速製造」法によって、複合材をあらゆる所望の形状を形成することができる。
【0016】
少なくとも2層の強化材の層は、また、異なる充填密度で成長されうる。さらに、強化材の層の少なくとも1層は層を横切って変化している充填密度でもって成長されうる。これにより、材料が選択的に強化されうる。
【0017】
強化材の層は、通常、チューブ、繊維又はプレートなどの延長構造を有する強化材要素を含む。強化材要素は中実であってもチューブ状であってもよい。たとえば、強化材要素は単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、又は、非晶質カーボンの層で被覆されたカーボンナノチューブであることができる。
【0018】
好ましくは、強化材の層の少なくとも1つの層は、100を超えるアスペクト比を有する強化材要素を含む。
【0019】
好ましくは、強化材の層の少なくとも1つの層は、100nm未満の直径を有する強化材要素を含む。
【0020】
強化材は炭化珪素又はアルミナなど、いかなる材料から形成されてもよいが、好ましくは、強化材の層の少なくとも1つの層はカーボンファイバーを含む。このことは、炭素−炭素結合の強度及び剛性のために好ましい。
【0021】
各層中の強化材要素は末端−末端で成長されても(たとえば、各層を成長させるのに触媒粒子の単一の層を用いて)、又は、強化材の層のうちの少なくとも1つの層はその厚さの第一の部分でマトリックスによって部分的にのみ含浸され、層の厚さの第二の部分が露出されたままであり、それと次の層が部分的にオーバーラップしている重なり形態で成長されてもよい。
【0022】
以下において、本発明の態様を図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図2】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図3】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図4】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図5】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図6】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図7】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図8】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図9】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図10】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図11】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図12】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図13】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図14】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図15】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図16】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図17】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
態様の詳細な説明
図1に示す機器1はプロセスチャンバー(図示せず)内に収容されている。負プラズマ源電極2及び正プラズマ源電極3は出力源4によって接続されている。レーザー5は正プラズマ源3の上方にあり、ラスタースキャニング機構(図示せず)に接続されている。ガスサプライ6は、チャンバーへの予熱されたプロセスガス、たとえば、CH4/H2を供給するためにオン及びオフすることができる。第二のガスサプライ7はプロセスチャンバーへの不活性ガス、たとえば、N2を供給するためにオン及びオフすることができる。不活性ガスはマトリックス材料の融点温度又はそれよりわずかに低い温度に予熱される。電極2も同様の温度に加熱要素(図示せず)によって加熱される。
【0025】
加熱されたホッパー8及び冷却されたインクジェットプリンティングヘッド9を輸送機構(図示せず)上に取り付けられ、この輸送機構はホッパー8及びプリンティングヘッド9を図1中、左から右(すなわち、負プラズマ源2の一端から他端)に移動させることができる。輸送機構(図示せず)は負プラズマ源2を上下に移動するために提供される。
【0026】
図1〜10は機器の側面図であり、図面の平面から外れた第3(幅)の寸法を示していない。しかしながら、電極2、3、レーザー5、ホッパー8及びプリンティングヘッド9は機器の幅を横切って延在している。
【0027】
図2に示す第1のプロセス工程において、ホッパー(8)はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリマーの粉体で充填されている。ホッパー8は負プラズマ源2を横切って移動され、そしてホッパー8中のディスペンシングオリフィス(示していない)が開放されてポリマー粉体の層10が堆積される。このように、源2はアディティブ層製造プロセスのための床又はプラットフォームとしても機能する。オリフィスはその後、閉止される。不活性ガスはポリマーの酸化を抑制する。レーザー5をオンにして、ラスター機構が層10を横切ってビームを走査し、層10を固着させる。レーザービームの加熱効果によって、ポリマー層10が融解する。レーザービームの経路のシャッター(図示していない)を開放しそして閉止し、層10の上を走査している際にビームを選択的に調節する。このため、層10は所望の形状を形成するために要求される領域だけで固着する。より詳細には、所望の三次元形状によって一連のスライスを画定するコンピュータ補助設計(CAD)モデルによってシャッターを開閉する。
【0028】
図3に示す第2のプロセス工程において、プリンティングヘッド9を層10を横切って移動させ、触媒粒子11の配列を堆積させる。プリンティングヘッド9は層10の上にコロイドドロップの配列をスプレーし、高温不活性ガス環境中でコロイドが蒸発し、コロイドドロップ中に懸濁された金属触媒粒子11が堆積される。触媒粒子11は、たとえば、金属であり、好ましくは、遷移金属、Fe、Ni又はCo又はその合金であってよく、コロイド液体は、たとえば、アルコール、水、油又はその混合物であることができる。流体をベースとする冷却装置(図示せず)はプリンティングヘッド9及びプリント流体を含有するリザーバー(図示せず)を冷却し、流体がプリントされる前に、コロイド液体が沸騰することを防止する。プリンティングヘッド9のプリンティングオリフィス(ドロップレットのスプレーを吐出する)を層10に十分に近くに配置し、コロイド液体が層10に衝突する前に、悪影響を及ぼして空中に蒸発することのないようにする。
【0029】
触媒粒子11を図3に、例示のために層10の長さに沿って規則的な間隔で示しているが、粒子間の間隔は長さ及び幅の寸法で本質的にランダムである。
【0030】
各触媒粒子の直径は、通常、1nm〜1μmの範囲であり、そして触媒粒子は密に充填されていても、又は、間隔が開いていてもよい。
【0031】
図4に示す第3のプロセス工程において、炭素質のフィード原料をガスサプライ6から導入し、出力源4をオンにし、電極2,3の間にプラズマを生成させる。これにより、電極2、3の間の電磁場の方向に整列された、ナノファイバー12の層の現場成長が行われる。成長機構はBaker (Baker, R.T.K., Barber, M.A., Harris, P.S., Feates, F.S. & Waire, R.J. JJ Catal 26 (1972))によって記載されているとおりである。炭素質ガスは金属触媒粒子の表面上で解離され、炭素がその表面上に吸着され、それが沈殿面に拡散することによって輸送され、触媒粒子を先端に有する炭素フィラメントを形成するということが一般に受け入れられている。この拡散が触媒のバルク中を通って起こるのか又はその表面に沿って起こるのか、そして、拡散が炭素濃縮によって起こるのか又は熱勾配によって起こるのかについての議論は継続してなされている。このように、成長プロセスが完了したときに、ナノファイバー12の「林立」が生じ、各ナノファイバー12の先端には触媒粒子11を有している。
【0032】
触媒粒子及びプラズマによって、マトリックスの融点よりも低い、比較的に低い温度でのナノファイバーの成長が可能になる。
【0033】
ナノファイバーの直径は、通常、1nm〜1μmの範囲である。このように、「ナノファイバー」として記載しているけれども、ファイバー12の直径は、所望ならば、100nmを超えてもよい。
【0034】
いったん、適切な長さのナノファイバー12が成長したら、プラズマ出力源4及びガスサプライ6をオフにし、不活性ガスをパージし、そして図5に示す第4のプロセス工程において、プラットフォーム2を下げ、ホッパー8をナノファイバー12の層に沿って移動させ、ポリマー粉体のさらなる層13を堆積させる。ポリマー粉体のサイズは、通常、ナノファイバー12の直径より3桁大きく、そしてナノファイバー12の間隔より有意に大きい。結果として、図5に示すように、ポリマー粉体層13はナノファイバー12の層の上に配置される。層13は、20〜50μmのポリマー粉体サイズの何倍かの厚さであり、通常、0.2〜0.5mmの大きさである。
【0035】
図6に示す第5のプロセス工程において、レーザー5をオンにし、層13を横切ってラスター機構でビームを走査し、それにより、固着された層13’を形成させる。ラスター走査の間に、所望の形状で固着された層13’を形成するために必要とされるとおりにシャッターを開閉する。
【0036】
固着されていないポリマー層13の厚さは、図6に示すように、ナノファイバー12の層がその厚さの低部にわたってマトリックスで部分的にのみ含浸され、ナノファイバー12の層の上部は露出されたままとなるように選択される。例として、図5に示す、固着されていない層13の厚さは0.2〜0.5mmの範囲であることができ、そして図6に示す、固着された層13’の厚さは0.1〜0.25mmの範囲であることができる。このため、この場合には、固着されたマトリックス13’の層よりも若干長いナノファイバー12は0.1mmを超える長さを有し、アスペクト比が100を超える。ファイバー12の長さと、固着された層13’の厚さとの比は図6において約2:1であるが、このことは例示の目的のみであり、実際には、もっとずっと低い程度のオーバーラップ(たとえば、1.05:1の比)が有意な層間強化を提供するために要求される。
【0037】
その後、レーザーをオフにし、図2〜6に示す5つのプロセス工程を繰り返し、一連の層のナノファイバーの層を蓄積させ、ここで、各層は、次の層を堆積させる前に、マトリックスで含浸される。
【0038】
このように、第1の繰り返しにおいて、触媒粒子14の第2の層は図7に示すように堆積される。図7において、触媒粒子14はナノファイバー12の配列と交互に規則的な配列で示されている。しかしながら、マトリックス粒子14の分布は長さ及び幅の寸法の両方で本質的にランダムである。
【0039】
図8に示すとおり、ナノファイバー15の第2の層は、その後、触媒粒子14によって触媒されて成長する。ナノファイバー15の第2の層はナノファイバー12の前の層に部分的にオーバーラップされていることに注意されたい。このことは「層間強化」とともに、「層内強化」をもたらす。図8において、垂直に延在しているナノファイバー15で第2の層を示しているが、別の態様において、第2のプラズマ源3はプラットフォーム2に対して移動することができ、それにより、第2の層中のナノファイバーは異なる方向で整列し、たとえば、垂直に対して45°の鋭角で整列される。所望ならば、ナノファイバーの各々の逐次の層について、電磁場が再指向されうる。要求される位置に、プラットフォーム2に対してプラズマ源電極3を移動させるように輸送機構(図示せず)が提供される。同様に、所望の角度の電磁場が提供されるように、プラットフォーム2を移動させ又は回転させるための機構(図示せず)も提供されうる。
【0040】
図9に示すとおり、負プラズマ源2を再び下げ、そしてポリマー粉体の更なる層16をナノファイバーの層15の上に堆積させる。
【0041】
図10に示すとおり、その後、層16をレーザー5によって固着させ、固着された層16’を形成する。
【0042】
そのプロセスを、その後、必要に応じて繰り返し、ナノファイバーの各層を、所望の二次元形状及び寸法の断面を形成するように選択的に含浸する。いったん、構造体が形成すると、固着されていない粉体は除去され、所望の三次元形状を有する要素を残す。
【0043】
上記の態様において、触媒粒子11、14のそれぞれの層はファイバーの各層に堆積される。別の態様において、図8に示す重なり合わせた形態の一連の別個のファイバーとして成長するのでなく、末端から末端へと成長する一連のファイバーの層を触媒するように触媒粒子11の層を再使用してもよい。
【0044】
場合により、プリンティングヘッド9を選択的に調整して、所望の形状及び/又は充填密度でコロイドドロップの各層を堆積させることもできる。これにより、異なる形状及び/又は充填密度でナノチューブの各層を成長させることができる。場合により、コロイドドロップの充填密度(及び、そのため、ナノチューブの充填密度)は、層間のみならず、層を横切る方向(幅方向及び/又は長さ方向)にも変化させることができる。
【0045】
ホッパー8を用いてマトリックス粉体を堆積させる代わりに、マトリックス粉体の層を、ローラーにより又は基材を横切って層を広げる他のフィードシステムにより適用してもよい。
【0046】
図11〜17は、熱硬化性エポキシ樹脂マトリックス(図1〜10の機器で使用した熱可塑性樹脂マトリックスの代わりに)を用いた、複合材の製造のためのアディティブ層(additive layer)製造装置を示す。図11〜17に示す装置は図1の装置のすべての要素を含んでいるが(ホッパー8を除く)、これらの要素は明瞭化のために図11〜17に示していない。
【0047】
図11に示す第一のプロセス工程において、プラットフォーム20を液体エポキシ樹脂22の浴21に浸漬させる。その後、図12に示すように、浴21の表面のわずかに上方の位置にプラットフォームを持ち上げ、ここで、樹脂のマウンド22がプラットフォーム20によって支えられている。ドクターブレード(図示せず)をマウンド22を横切ってワイプし、図13に示す樹脂の均一な厚さの層22’を残させる。その後、レーザー(図示せず)をオンにし、層22’を横切って走査し、樹脂を所望の形状で硬化させる。
【0048】
その後、プリンティングヘッド(図示せず)を層22’を横切って移動させ、触媒粒子の列(図示せず)を堆積させる。炭素質原料を、その後、プロセスチャンバー内に導入し、プラズマ源(図示せず)からプラズマを層22に対して角度をもって適用し、電磁場の方向に整列したナノファイバーの層23の成長を生じさせる。45°の角度を図14で示しているが、この角度は、必要ならば、5°まで低くすることができる。
【0049】
いったん、適切な長さのナノファイバー23が成長したら、プラズマ出力源及びガスサプライをオフにし、チャンバー内の不活性ガスをパージし、そしてプラットフォーム20を図15に示すように下げる。
【0050】
プラットフォーム20を、その後、図16に示す浴21の表面のわずかに上方の位置に持ち上げ、ここで、樹脂のマウンド24がナノファイバーの層23を含浸する。ドクターブレードをマウンド23を横切ってワイプし、図17に示す樹脂の均一な厚さの層24’を形成させる。その後、レーザーをオンにし、層24’を横切って走査し、樹脂を所望の形状で硬化させる。図17で層24’はナノファイバーの層23の上方に示されているが、実際には、図6に示す層13’と同様に、層24’は、その硬化後に、厚さの低部でマトリックスを含浸するだけになるように十分に薄くてよいことに注意されたい。これにより、ナノファイバーの次の層と部分的な重なりが生じる。
【0051】
その後、このプロセスを繰り返し、バルク材料を形成する。
【0052】
図1〜17は縮尺比に従っておらず、このため、種々の要素の相対寸法は示したものから有意に変更されうることに注意されたい。
【0053】
本発明は好ましい態様を参照しながら上記に記載してきたが、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修飾がなされうることは理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブをベースとするナノ複合材はE.T. Thostenson and T-W. Chou, "Aligned Multi-Walled Carbon Nanotube-Reinforced Composites: Processing and Mechanical Characterization", Journal of Physics D: Applied Physics, 35(16) L77-L80 (2002) に記載されている。この論文によると、ナノ複合材の特性の改良に向けての最も重要な課題の1つはポリマーマトリックス中でのナノチューブの均一な分散体を得ることである。この論文に示された解決法はミクロスケールの2軸押出機である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の1つの態様は、2層以上の強化材の層を現場で(in-situ)成長させること、及び、
各層を次の層を成長させる前にマトリックスで含浸すること、
を含む、複合材の製造方法を提供する。
【0004】
本発明のさらなる態様は、現場で(in-situ)成長された、2層以上の強化材の層、及び、各層を含浸するマトリックスを含む、複合材を提供する。
【0005】
本発明のさらなる態様は、2層以上の強化材の層を現場で(in-situ)成長させるための装置、
マトリックス材料を塗布し、各層をマトリックス材料で含浸するための含浸装置、
を含む、複合材を製造するための機器を提供する。
【0006】
本発明は分散体に対する別の解決法を提供する。強化材をマトリックス中で分散させる試みの代わりに、強化材を現場で成長させ、そして次の層を成長させる前に各層をマトリックスで含浸する。
【0007】
強化材の層は成長段階の間に電磁場を印加することで整列されうる。すべての層に対して同一の方向に電磁場を印加してよく、又は、第一の層に第一の角度で、第二の層に第二の角度で印加し、それにより、各層内の強化材要素を異なる角度で成長させることもできる。
【0008】
強化材の層の成長は各層の成長の間にプラズマを形成することで促進されうる。これにより、より低い温度、通常、25〜500℃で成長を行うことができる。
【0009】
強化材の層はアーク放電法によって現場で成長されうる。ここで、負電極中に含まれる原料は放電により生じる高温のために昇華する。又は、強化材の層はレーザーアブレーション法によって現場で成長されうる。ここで、プロセスチャンバー中に不活性ガスをブリードしながら、高温反応器内でパルスレーザーがターゲットを蒸発させる。蒸発した材料が凝縮する際に、反応器のより低温の表面に強化材の層が発現する。放電又はレーザーアブレーションの場合に、強化材の層を構成する要素(たとえば、カーボンナノチューブ)は気相状態で形成され、層の現場での成長が基材上での要素の凝縮によって起こる。しかしながら、このようなアーク放電及びレーザーアブレーション法での問題は高体積での製造に向かないことであり、そして、高温を要求する傾向があることである。それゆえ、好ましくは、方法が、たとえば、化学気相蒸着法の一部として、強化材の成長を触媒する触媒粒子の層を1層以上形成することをさらに含む。このことで、より低温、通常、25〜500℃の範囲で成長を行うことが可能になる。この場合、事前に形成された要素を蓄積させることで成長させる代わりに、強化材の層を構成する要素を現場で成長させることによって層が成長する。
【0010】
好ましくは、触媒粒子のそれぞれの層は強化材の各層のために提供される。これにより、触媒粒子の少なくとも2層の層が異なる形状及び/又は異なる触媒粒子充填密度(層間及び/又は層内)で提供されうる。
【0011】
触媒粒子は水又はアルコール中の溶液中に維持された金属塩の沈殿によって直接的に堆積されるか、又は、コロイド懸濁液として、堆積されることができる。好ましくは、触媒粒子は懸濁液又は溶液として触媒を含むドロップレットを表面に、たとえば、プリンティングヘッドからスプレーすることで堆積される。
【0012】
通常、方法は、レーザー又は他の熱源を用いて、含浸の間にマトリックスを加熱することをさらに含む。マトリックス材料は、通常、層として堆積され、たとえば、粉体の層として堆積され、それが現場で加熱されて強化材を含浸する。
【0013】
含浸は通常、毛細管作用の方法によって行う。
【0014】
マトリックスは、チタンなどの金属、又は、熱硬化性樹脂又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱可塑性樹脂材料などのポリマーであってよい。
【0015】
少なくとも2層の強化材の層は、異なる形状で含浸し及び/又は成長されることができる。これにより、いわゆる「アディティブ層製造」又は「急速製造」法によって、複合材をあらゆる所望の形状を形成することができる。
【0016】
少なくとも2層の強化材の層は、また、異なる充填密度で成長されうる。さらに、強化材の層の少なくとも1層は層を横切って変化している充填密度でもって成長されうる。これにより、材料が選択的に強化されうる。
【0017】
強化材の層は、通常、チューブ、繊維又はプレートなどの延長構造を有する強化材要素を含む。強化材要素は中実であってもチューブ状であってもよい。たとえば、強化材要素は単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、又は、非晶質カーボンの層で被覆されたカーボンナノチューブであることができる。
【0018】
好ましくは、強化材の層の少なくとも1つの層は、100を超えるアスペクト比を有する強化材要素を含む。
【0019】
好ましくは、強化材の層の少なくとも1つの層は、100nm未満の直径を有する強化材要素を含む。
【0020】
強化材は炭化珪素又はアルミナなど、いかなる材料から形成されてもよいが、好ましくは、強化材の層の少なくとも1つの層はカーボンファイバーを含む。このことは、炭素−炭素結合の強度及び剛性のために好ましい。
【0021】
各層中の強化材要素は末端−末端で成長されても(たとえば、各層を成長させるのに触媒粒子の単一の層を用いて)、又は、強化材の層のうちの少なくとも1つの層はその厚さの第一の部分でマトリックスによって部分的にのみ含浸され、層の厚さの第二の部分が露出されたままであり、それと次の層が部分的にオーバーラップしている重なり形態で成長されてもよい。
【0022】
以下において、本発明の態様を図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図2】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図3】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図4】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図5】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図6】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図7】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図8】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図9】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図10】多層の熱可塑性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図11】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図12】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図13】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図14】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図15】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図16】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【図17】熱硬化性樹脂マトリックス複合材の製造の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
態様の詳細な説明
図1に示す機器1はプロセスチャンバー(図示せず)内に収容されている。負プラズマ源電極2及び正プラズマ源電極3は出力源4によって接続されている。レーザー5は正プラズマ源3の上方にあり、ラスタースキャニング機構(図示せず)に接続されている。ガスサプライ6は、チャンバーへの予熱されたプロセスガス、たとえば、CH4/H2を供給するためにオン及びオフすることができる。第二のガスサプライ7はプロセスチャンバーへの不活性ガス、たとえば、N2を供給するためにオン及びオフすることができる。不活性ガスはマトリックス材料の融点温度又はそれよりわずかに低い温度に予熱される。電極2も同様の温度に加熱要素(図示せず)によって加熱される。
【0025】
加熱されたホッパー8及び冷却されたインクジェットプリンティングヘッド9を輸送機構(図示せず)上に取り付けられ、この輸送機構はホッパー8及びプリンティングヘッド9を図1中、左から右(すなわち、負プラズマ源2の一端から他端)に移動させることができる。輸送機構(図示せず)は負プラズマ源2を上下に移動するために提供される。
【0026】
図1〜10は機器の側面図であり、図面の平面から外れた第3(幅)の寸法を示していない。しかしながら、電極2、3、レーザー5、ホッパー8及びプリンティングヘッド9は機器の幅を横切って延在している。
【0027】
図2に示す第1のプロセス工程において、ホッパー(8)はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリマーの粉体で充填されている。ホッパー8は負プラズマ源2を横切って移動され、そしてホッパー8中のディスペンシングオリフィス(示していない)が開放されてポリマー粉体の層10が堆積される。このように、源2はアディティブ層製造プロセスのための床又はプラットフォームとしても機能する。オリフィスはその後、閉止される。不活性ガスはポリマーの酸化を抑制する。レーザー5をオンにして、ラスター機構が層10を横切ってビームを走査し、層10を固着させる。レーザービームの加熱効果によって、ポリマー層10が融解する。レーザービームの経路のシャッター(図示していない)を開放しそして閉止し、層10の上を走査している際にビームを選択的に調節する。このため、層10は所望の形状を形成するために要求される領域だけで固着する。より詳細には、所望の三次元形状によって一連のスライスを画定するコンピュータ補助設計(CAD)モデルによってシャッターを開閉する。
【0028】
図3に示す第2のプロセス工程において、プリンティングヘッド9を層10を横切って移動させ、触媒粒子11の配列を堆積させる。プリンティングヘッド9は層10の上にコロイドドロップの配列をスプレーし、高温不活性ガス環境中でコロイドが蒸発し、コロイドドロップ中に懸濁された金属触媒粒子11が堆積される。触媒粒子11は、たとえば、金属であり、好ましくは、遷移金属、Fe、Ni又はCo又はその合金であってよく、コロイド液体は、たとえば、アルコール、水、油又はその混合物であることができる。流体をベースとする冷却装置(図示せず)はプリンティングヘッド9及びプリント流体を含有するリザーバー(図示せず)を冷却し、流体がプリントされる前に、コロイド液体が沸騰することを防止する。プリンティングヘッド9のプリンティングオリフィス(ドロップレットのスプレーを吐出する)を層10に十分に近くに配置し、コロイド液体が層10に衝突する前に、悪影響を及ぼして空中に蒸発することのないようにする。
【0029】
触媒粒子11を図3に、例示のために層10の長さに沿って規則的な間隔で示しているが、粒子間の間隔は長さ及び幅の寸法で本質的にランダムである。
【0030】
各触媒粒子の直径は、通常、1nm〜1μmの範囲であり、そして触媒粒子は密に充填されていても、又は、間隔が開いていてもよい。
【0031】
図4に示す第3のプロセス工程において、炭素質のフィード原料をガスサプライ6から導入し、出力源4をオンにし、電極2,3の間にプラズマを生成させる。これにより、電極2、3の間の電磁場の方向に整列された、ナノファイバー12の層の現場成長が行われる。成長機構はBaker (Baker, R.T.K., Barber, M.A., Harris, P.S., Feates, F.S. & Waire, R.J. JJ Catal 26 (1972))によって記載されているとおりである。炭素質ガスは金属触媒粒子の表面上で解離され、炭素がその表面上に吸着され、それが沈殿面に拡散することによって輸送され、触媒粒子を先端に有する炭素フィラメントを形成するということが一般に受け入れられている。この拡散が触媒のバルク中を通って起こるのか又はその表面に沿って起こるのか、そして、拡散が炭素濃縮によって起こるのか又は熱勾配によって起こるのかについての議論は継続してなされている。このように、成長プロセスが完了したときに、ナノファイバー12の「林立」が生じ、各ナノファイバー12の先端には触媒粒子11を有している。
【0032】
触媒粒子及びプラズマによって、マトリックスの融点よりも低い、比較的に低い温度でのナノファイバーの成長が可能になる。
【0033】
ナノファイバーの直径は、通常、1nm〜1μmの範囲である。このように、「ナノファイバー」として記載しているけれども、ファイバー12の直径は、所望ならば、100nmを超えてもよい。
【0034】
いったん、適切な長さのナノファイバー12が成長したら、プラズマ出力源4及びガスサプライ6をオフにし、不活性ガスをパージし、そして図5に示す第4のプロセス工程において、プラットフォーム2を下げ、ホッパー8をナノファイバー12の層に沿って移動させ、ポリマー粉体のさらなる層13を堆積させる。ポリマー粉体のサイズは、通常、ナノファイバー12の直径より3桁大きく、そしてナノファイバー12の間隔より有意に大きい。結果として、図5に示すように、ポリマー粉体層13はナノファイバー12の層の上に配置される。層13は、20〜50μmのポリマー粉体サイズの何倍かの厚さであり、通常、0.2〜0.5mmの大きさである。
【0035】
図6に示す第5のプロセス工程において、レーザー5をオンにし、層13を横切ってラスター機構でビームを走査し、それにより、固着された層13’を形成させる。ラスター走査の間に、所望の形状で固着された層13’を形成するために必要とされるとおりにシャッターを開閉する。
【0036】
固着されていないポリマー層13の厚さは、図6に示すように、ナノファイバー12の層がその厚さの低部にわたってマトリックスで部分的にのみ含浸され、ナノファイバー12の層の上部は露出されたままとなるように選択される。例として、図5に示す、固着されていない層13の厚さは0.2〜0.5mmの範囲であることができ、そして図6に示す、固着された層13’の厚さは0.1〜0.25mmの範囲であることができる。このため、この場合には、固着されたマトリックス13’の層よりも若干長いナノファイバー12は0.1mmを超える長さを有し、アスペクト比が100を超える。ファイバー12の長さと、固着された層13’の厚さとの比は図6において約2:1であるが、このことは例示の目的のみであり、実際には、もっとずっと低い程度のオーバーラップ(たとえば、1.05:1の比)が有意な層間強化を提供するために要求される。
【0037】
その後、レーザーをオフにし、図2〜6に示す5つのプロセス工程を繰り返し、一連の層のナノファイバーの層を蓄積させ、ここで、各層は、次の層を堆積させる前に、マトリックスで含浸される。
【0038】
このように、第1の繰り返しにおいて、触媒粒子14の第2の層は図7に示すように堆積される。図7において、触媒粒子14はナノファイバー12の配列と交互に規則的な配列で示されている。しかしながら、マトリックス粒子14の分布は長さ及び幅の寸法の両方で本質的にランダムである。
【0039】
図8に示すとおり、ナノファイバー15の第2の層は、その後、触媒粒子14によって触媒されて成長する。ナノファイバー15の第2の層はナノファイバー12の前の層に部分的にオーバーラップされていることに注意されたい。このことは「層間強化」とともに、「層内強化」をもたらす。図8において、垂直に延在しているナノファイバー15で第2の層を示しているが、別の態様において、第2のプラズマ源3はプラットフォーム2に対して移動することができ、それにより、第2の層中のナノファイバーは異なる方向で整列し、たとえば、垂直に対して45°の鋭角で整列される。所望ならば、ナノファイバーの各々の逐次の層について、電磁場が再指向されうる。要求される位置に、プラットフォーム2に対してプラズマ源電極3を移動させるように輸送機構(図示せず)が提供される。同様に、所望の角度の電磁場が提供されるように、プラットフォーム2を移動させ又は回転させるための機構(図示せず)も提供されうる。
【0040】
図9に示すとおり、負プラズマ源2を再び下げ、そしてポリマー粉体の更なる層16をナノファイバーの層15の上に堆積させる。
【0041】
図10に示すとおり、その後、層16をレーザー5によって固着させ、固着された層16’を形成する。
【0042】
そのプロセスを、その後、必要に応じて繰り返し、ナノファイバーの各層を、所望の二次元形状及び寸法の断面を形成するように選択的に含浸する。いったん、構造体が形成すると、固着されていない粉体は除去され、所望の三次元形状を有する要素を残す。
【0043】
上記の態様において、触媒粒子11、14のそれぞれの層はファイバーの各層に堆積される。別の態様において、図8に示す重なり合わせた形態の一連の別個のファイバーとして成長するのでなく、末端から末端へと成長する一連のファイバーの層を触媒するように触媒粒子11の層を再使用してもよい。
【0044】
場合により、プリンティングヘッド9を選択的に調整して、所望の形状及び/又は充填密度でコロイドドロップの各層を堆積させることもできる。これにより、異なる形状及び/又は充填密度でナノチューブの各層を成長させることができる。場合により、コロイドドロップの充填密度(及び、そのため、ナノチューブの充填密度)は、層間のみならず、層を横切る方向(幅方向及び/又は長さ方向)にも変化させることができる。
【0045】
ホッパー8を用いてマトリックス粉体を堆積させる代わりに、マトリックス粉体の層を、ローラーにより又は基材を横切って層を広げる他のフィードシステムにより適用してもよい。
【0046】
図11〜17は、熱硬化性エポキシ樹脂マトリックス(図1〜10の機器で使用した熱可塑性樹脂マトリックスの代わりに)を用いた、複合材の製造のためのアディティブ層(additive layer)製造装置を示す。図11〜17に示す装置は図1の装置のすべての要素を含んでいるが(ホッパー8を除く)、これらの要素は明瞭化のために図11〜17に示していない。
【0047】
図11に示す第一のプロセス工程において、プラットフォーム20を液体エポキシ樹脂22の浴21に浸漬させる。その後、図12に示すように、浴21の表面のわずかに上方の位置にプラットフォームを持ち上げ、ここで、樹脂のマウンド22がプラットフォーム20によって支えられている。ドクターブレード(図示せず)をマウンド22を横切ってワイプし、図13に示す樹脂の均一な厚さの層22’を残させる。その後、レーザー(図示せず)をオンにし、層22’を横切って走査し、樹脂を所望の形状で硬化させる。
【0048】
その後、プリンティングヘッド(図示せず)を層22’を横切って移動させ、触媒粒子の列(図示せず)を堆積させる。炭素質原料を、その後、プロセスチャンバー内に導入し、プラズマ源(図示せず)からプラズマを層22に対して角度をもって適用し、電磁場の方向に整列したナノファイバーの層23の成長を生じさせる。45°の角度を図14で示しているが、この角度は、必要ならば、5°まで低くすることができる。
【0049】
いったん、適切な長さのナノファイバー23が成長したら、プラズマ出力源及びガスサプライをオフにし、チャンバー内の不活性ガスをパージし、そしてプラットフォーム20を図15に示すように下げる。
【0050】
プラットフォーム20を、その後、図16に示す浴21の表面のわずかに上方の位置に持ち上げ、ここで、樹脂のマウンド24がナノファイバーの層23を含浸する。ドクターブレードをマウンド23を横切ってワイプし、図17に示す樹脂の均一な厚さの層24’を形成させる。その後、レーザーをオンにし、層24’を横切って走査し、樹脂を所望の形状で硬化させる。図17で層24’はナノファイバーの層23の上方に示されているが、実際には、図6に示す層13’と同様に、層24’は、その硬化後に、厚さの低部でマトリックスを含浸するだけになるように十分に薄くてよいことに注意されたい。これにより、ナノファイバーの次の層と部分的な重なりが生じる。
【0051】
その後、このプロセスを繰り返し、バルク材料を形成する。
【0052】
図1〜17は縮尺比に従っておらず、このため、種々の要素の相対寸法は示したものから有意に変更されうることに注意されたい。
【0053】
本発明は好ましい態様を参照しながら上記に記載してきたが、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修飾がなされうることは理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の強化材の層を現場で(in-situ)成長させること、及び、
各層を次の層を成長させる前にマトリックスで含浸すること、
を含む、複合材の製造方法。
【請求項2】
前記強化材の層の成長の間に電磁場を印加することで、前記強化材の層の少なくとも1層を整列させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記層の第一の層に対して第一の角度で電磁場を印加し、そして前記層の第二の層に対して第二の角度で電磁場を印加することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
各層の成長の間にプラズマを形成させることをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記強化材の層の成長を触媒するための1層以上の触媒粒子の層を形成させることをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
触媒粒子のそれぞれの層は強化材の層の各層について形成される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
異なる形状を有する触媒粒子の層を少なくとも2層形成することをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
異なる触媒粒子充填密度を有する触媒粒子の層を少なくとも2層形成することをさらに含む、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
触媒粒子充填密度が層を横切って変化している、触媒粒子の層を少なくとも1層形成させることをさらに含む、請求項5〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
触媒粒子の各層は、溶液又は懸濁液中に触媒粒子を含む液体のドロップレットを表面上にスプレーすることで堆積される、請求項5〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記液体はコロイド懸濁液として触媒粒子を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
含浸の間にマトリックスを加熱することをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記マトリックスをレーザービームによって加熱する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記強化材の層の上にマトリックス材料の層を堆積させ、そしてマトリックス材料の層の少なくとも一部を加熱することで強化材の各層が含浸される、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
前記マトリックス材料の層は粉体である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記強化材の各層は毛細管作用によって含浸される、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記マトリックスはポリマーである、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記マトリックスは熱可塑性樹脂である、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記マトリックスは熱硬化性樹脂である、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
異なる形状を有する強化材の層を少なくとも2層含浸させることをさらに含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
異なる形状を有する強化材の層を少なくとも2層成長させることをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
異なる充填密度を有する強化材の層を少なくとも2層成長させることをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
異なって整列された強化材要素を有する強化材の層を少なくとも2層成長させることを含む、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
層を横切って充填密度が変化している強化材の層を少なくとも1層形成させることをさらに含む、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記強化材の層の少なくとも1層はアスペクト比が100を超える強化材要素を含む、請求項1〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記強化材の層の少なくとも1層は直径が100nm未満である強化材要素を含む、請求項1〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記強化材の層の少なくとも1層はカーボンファイバーを含む、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
強化材の層の少なくとも1層はその厚さの第一の部分にわたってマトリックスが部分的にのみ含浸され、該層の厚さの第二の部分は露出されたままになっており、そのため、次の層が前記層に部分的にオーバーラップする、請求項1〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項記載の方法によって製造された複合材。
【請求項30】
現場で成長した少なくとも2層の強化材の層、及び、各層を含浸しているマトリックスを含む、複合材。
【請求項31】
2層以上の強化材の層を現場で成長させるための装置、及び、
各層にマトリックス材料を塗布し、各層をマトリックス材料で含浸するための含浸装置、
を含む、複合材を製造するための機器。
【請求項1】
2層以上の強化材の層を現場で(in-situ)成長させること、及び、
各層を次の層を成長させる前にマトリックスで含浸すること、
を含む、複合材の製造方法。
【請求項2】
前記強化材の層の成長の間に電磁場を印加することで、前記強化材の層の少なくとも1層を整列させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記層の第一の層に対して第一の角度で電磁場を印加し、そして前記層の第二の層に対して第二の角度で電磁場を印加することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
各層の成長の間にプラズマを形成させることをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記強化材の層の成長を触媒するための1層以上の触媒粒子の層を形成させることをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
触媒粒子のそれぞれの層は強化材の層の各層について形成される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
異なる形状を有する触媒粒子の層を少なくとも2層形成することをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
異なる触媒粒子充填密度を有する触媒粒子の層を少なくとも2層形成することをさらに含む、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
触媒粒子充填密度が層を横切って変化している、触媒粒子の層を少なくとも1層形成させることをさらに含む、請求項5〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
触媒粒子の各層は、溶液又は懸濁液中に触媒粒子を含む液体のドロップレットを表面上にスプレーすることで堆積される、請求項5〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記液体はコロイド懸濁液として触媒粒子を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
含浸の間にマトリックスを加熱することをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記マトリックスをレーザービームによって加熱する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記強化材の層の上にマトリックス材料の層を堆積させ、そしてマトリックス材料の層の少なくとも一部を加熱することで強化材の各層が含浸される、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
前記マトリックス材料の層は粉体である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記強化材の各層は毛細管作用によって含浸される、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記マトリックスはポリマーである、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記マトリックスは熱可塑性樹脂である、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記マトリックスは熱硬化性樹脂である、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
異なる形状を有する強化材の層を少なくとも2層含浸させることをさらに含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
異なる形状を有する強化材の層を少なくとも2層成長させることをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
異なる充填密度を有する強化材の層を少なくとも2層成長させることをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
異なって整列された強化材要素を有する強化材の層を少なくとも2層成長させることを含む、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
層を横切って充填密度が変化している強化材の層を少なくとも1層形成させることをさらに含む、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記強化材の層の少なくとも1層はアスペクト比が100を超える強化材要素を含む、請求項1〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記強化材の層の少なくとも1層は直径が100nm未満である強化材要素を含む、請求項1〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記強化材の層の少なくとも1層はカーボンファイバーを含む、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
強化材の層の少なくとも1層はその厚さの第一の部分にわたってマトリックスが部分的にのみ含浸され、該層の厚さの第二の部分は露出されたままになっており、そのため、次の層が前記層に部分的にオーバーラップする、請求項1〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項記載の方法によって製造された複合材。
【請求項30】
現場で成長した少なくとも2層の強化材の層、及び、各層を含浸しているマトリックスを含む、複合材。
【請求項31】
2層以上の強化材の層を現場で成長させるための装置、及び、
各層にマトリックス材料を塗布し、各層をマトリックス材料で含浸するための含浸装置、
を含む、複合材を製造するための機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2010−502484(P2010−502484A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527211(P2009−527211)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050509
【国際公開番号】WO2008/029178
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(508305926)エアバス ユーケー リミティド (38)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050509
【国際公開番号】WO2008/029178
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(508305926)エアバス ユーケー リミティド (38)
【Fターム(参考)】
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