説明

強化積層板

【課題】 重量を増大させないで、単位質量当たり耐衝撃性能を飛躍的に向上させることのできる強化積層板を提供する。
【解決手段】 水平な中間層1と、該中間層1の上下各表面に一体状に被着された被覆層2、2とを備えた積層板であって、前記中間層1は、飛行体が衝突したときの運動エネルギーを主に自身の弾性変形や塑性変形により消失させる第1樹脂材料層3と、前記運動エネルギーを主に、自身の脆性破砕と前記飛行体の変形とにより消失させる第2樹脂材料層4とを上下方向に対し角度θ1だけ傾斜させた状態で水平方向へ交互に配列すると共に一体状に結合させたものとなされており、また前記被覆層2は前記第1樹脂材料層3と同質の樹脂材料で形成されている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両などの窓用強化透視材や、警察官などの用いる防御用楯などに使用される強化積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量で耐衝撃性能に優れる強化積層板として、図6Aに示すように、ポリカーボネート板7とアクリル板8とを水平方向に沿わせた姿勢で上下方向へ多層状に積層し一体状に結合させたものが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
この強化積層板は、ポリカーボネート板7が弾性変形と塑性変形により衝撃を吸収するように機能し、一方、アクリル板8が脆性破砕により衝撃を吸収するほか飛行体を変形させて衝撃を吸収させるように機能して防御性能を発揮するもの。この強化積層板においては、例えば図6Bに示すようにポリカーボネート板7やアクリル板8の厚さ又は数を増大させることで防御能力を任意に増大させることが可能である。
【0004】
なお、複数種類の樹脂材料層を厚さ方向に対し傾斜させて積層させる技術は特許文献2に開示されている。この文献によれば、積層角度を0度から4度として、各層の端面を出現させて縞模様的とし、表面特性を複数積層した樹脂の特性を併せ持ったものとするものが知られている。
【特許文献1】特開2001−355999号公報
【特許文献2】特開平9−85847号公報(第2頁の段落番号0010、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などに開示された従来の積層板は、ガラスを主材料としたものと較べると、飛行体の運動エネルギーを消失させるための単位質量当たり防御能力が向上するが、ポリカーボネート板7とアクリル板8とを厚さ方向に直交する方向に沿わせる構造であることが単位質量当たりの防御能力を制限するものとなるのであり、またポリカーボネート板7又はアクリル板8の厚さや数を増やして防御能力を増大させるとき、重量が不可避的に増大するなどの問題がある。
【0006】
本発明は、これらの問題点を解消することのできる強化積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は中間層と、該中間層の上下各表面に一体状に被着された被覆層とを備えた積層板であって、前記中間層は外部からの運動エネルギーを主に自身の弾性変形や塑性変形により吸収する第1樹脂材料層と、前記運動エネルギーを主に自身の脆性破砕により吸収する第2樹脂材料層とを交互に積み重ねた層であって、互いの重ね合わせた境界面は、前記被覆層の面に対して傾斜されており、かつ中間層の表面に出現する第1樹脂材料層と第2樹脂材料層の端面は前記被覆層により被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
飛行体が垂直に入射すると、強化積層板に与えられる衝撃エネルギーが最大となるが、本発明によれば、中間層は第1樹脂材料層と第2樹脂材料層との境界面が傾斜させた状態となっているため、被覆層に対して垂直に進入した飛行体であっても、境界面においては入射角が垂直ではなくなり、衝突した飛行体を第1樹脂材料層の境界面の弾性により方向を変更させ、中間層に留めるように作用する。
【0009】
この結果、強化積層板の厚さを増大させないでも、即ち積層板の重量を増大させないでも、その防御能力を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
図1A及びBは本発明の実施の形態に係る2種類の強化積層板の断面図である。これら強化積層板100A、100Bのそれぞれは、水平な中間層1と、該中間層1の上下各表面に一体状に被着された被覆層2、2とを備えている。
【0011】
上記中間層1は飛行体が衝突したときの運動エネルギーを主に自身の弾性変形や塑性変形により吸収する第1樹脂材料層3と、前記運動エネルギーを主に、自身の脆性破砕と前記飛行体の塑性変形とにより吸収する第2樹脂材料層4とを上下方向に対し一定角度θ1だけ傾斜させた状態で水平方向へ交互に配列すると共に接着剤により一体状となっている。また上記被覆層2のそれぞれは第1樹脂材料層3と同質の樹脂材料で形成されている。各被覆層2及び第1樹脂材料層3はポリカーボネートで形成し、第2樹脂材料層4はアクリルで形成するのがよい。
【0012】
図1Bに示す強化積層板100Bについてさらに詳細に説明すると、中間層1は水平な2つの層である上層1A及び下層1Bからなり、上層1Aは第1樹脂材料層3と第2樹脂材料層4とを上下方向に対し左右一側へ一定角度θ1だけ傾斜させた状態で水平方向へ交互に配列してあり、下層1Bは第1樹脂材料層3と第2樹脂材料層4とを上層の場合の反対側へ一定角度θ1だけ傾斜させた状態で水平方向へ交互に配列してあり、さらに上層1Aの1樹脂材料層3及び第2樹脂材料4と、下層1Bの1樹脂材料層3及び第2樹脂材料4とを接着剤により一体状に結合している。
【0013】
次に図1Aに示す強化積層板100Aの具体的な製造例について図2を参照して説明する。図2は該製造例を示す説明図である。
【0014】
図2Aに示すように、水平な支持平面5上に、支持平面5に対し略、30度〜60度の範囲内の一定角度θ1に傾斜された傾斜面6aを具備した治具6を固定させる。
【0015】
一方では、厚さa1が略、2mm〜4mmの範囲内の一定大きさとなされた帯状のポリカーボネート板7を多数、用意すると共に、厚さa2が略、4mm〜10mmの範囲内の一定大きさとなされた帯状のアクリル板8を多数、用意する。
【0016】
次にポリカーボネート板7とアクリル板8とを支持平面5上に交互に搬入して治具6の傾斜面6aにこれと平行に立て掛けることにより、これらポリカーボネート板7とアクリル板8とが密接した傾斜状態で水平方向へ交互に配列されてなる交互配列状態とする。
【0017】
この交互配列状態が必要な長さに達したとき、この交互配列状態の周囲に透明な接着剤9を供給してポリカーボネート板7とアクリル板8との密接箇所に透明な接着剤9を含浸させ硬化させる。このさい、接着剤9は熱硬化型、光硬化型又は反応型の何れであってもよい。これによりポリカーボネート板7とアクリル板8とを重ね合わさせた境界面が傾斜し、交互配列状態が一体状に結合された一体状交互配列体10が形成される。
【0018】
次に図2Bに示すように、一体状交互配列体10の上面の凹凸を研削して水平な平坦面10aとする。これを、支持面5上で反転し、この反転状態での上面を先と同様に研削して、図2Cに示すような水平な平坦面10bとする。
【0019】
そして最後に、図2Eに示すように一体状交互配列体10Bの上面と下面のそれぞれに、平面視形状が一体状交互配列体10Bと同一で厚さが2mm〜6mmのポリカーボネート板11を透明な接着剤12で一体状に結合させる。
【0020】
次に図1Bに示す強化積層板100Bの具体的な製造例について図3を参照して説明する。図3は該製造例を示す説明図である。
【0021】
図2Aに示す帯状のポリカーボネート板7と帯状のアクリル板8のそれぞれの巾を先の場合の半分にして、先の第2の一体状交互配列体10Bを得る場合と同様な製造工程を経ることにより、厚さが4mm〜8mmである図3Aに示すような一体状交互配列体10Cを2つ形成する。
【0022】
次に図3Bに示すように、2つの一体状交互配列体10C、10Cを、ポリカーボネート板7及びアクリル板8の傾斜方向が逆向きとなるように対向させると共に、透明な接着剤13で一体状に結合させる。これにより、上下方向が透明となされた一体状交互配列体10Dが形成される。
【0023】
この一体状交互配列体10Dにおいて、上層の一体状交互配列体のポリカーボネート板7及びアクリル板8と、下層の一体状交互配列体のポリカーボネート板7及びアクリル板8とを図3Bに示すように正確な一線状に合致させてもよいし、或いは図3Cに示すように水平方向へずれた状態に合致させても差し支えない。
【0024】
そして最後に図3D、Eに示すように、上記一体状交互配列体10Dの上面と下面のそれぞれに先の場合と同様に、平面視形状が一体状交互配列体10Dと同一で厚さが略、2mm〜6mmの範囲内の一定値となされたポリカーボネート板11を透明な接着剤12で一体状に結合させる。
【0025】
図2E及び図3D、Eに示すそれぞれの積層板100A、100Bの各部と図1中の各部との対応関係を示すと、一体状交互配列体10B,10Dは中間層1に対応し、一体状交互配列体10B,10Dを形成したポリカーボネート板7は第1樹脂材料層3に対応し、一体状交互配列体10B,10Dを形成したアクリル板8は第2樹脂材料層4に対応し、さらに一体状交互配列体10B,10Dの上面と下面に結合されたポリカーボネート板11は被覆層2に対応する。
【0026】
また上側の一体状交互配列体10Cは上層1Aに、そして下側の一体状交互配列体10Cは下層1Bに対応している。
【0027】
次に上記強化積層板100Aと強化積層板に向かって来る飛行体との関係について図4を参照して説明する。図4は該関係を示す説明図である。
飛行体b1は強化積層板100Aの被覆層2に直交する矢印方向c1へ進行して衝突するときに強化積層板100Aに対し最も大きな貫通力を呈することから、ここでは飛行体b1は矢印方向c1へ進行するものとする。
【0028】
この飛行体b1が強化積層板100Aの一方側の被覆層2に衝突すると、被覆層2は主に、飛行体b1が衝突した箇所近傍の自身の弾性変形及び塑性変形により飛行体b1の運動エネルギーを吸収する。
【0029】
次に飛行体b1が被覆層2を貫通して中間層1に到達すると、第1樹脂材料層3の境界面3aが強化積層板100Aの厚さ方向(以後、全体厚さ方向という。)に対し傾斜しているため、飛行体b1は境界面3aと直交する方向に対し境界面3aの傾斜に対応した角度(これが飛行体b1の入射角である。)θ2だけ傾斜した方向から進入して境界面3aに衝突する。このとき境界面3aはこのように衝突した飛行体b1を受け止めると同時に境界面3aの弾性作用により飛行体b1の進行方向を矢印方向c2へ変更させるように仕向ける。第2樹脂材料層4が破砕されることにより、飛行体b1の運動エネルギーは吸収される。一方、飛行体b1は各層との衝突により先端部を扁平状に塑性変形されるため貫通力はさらに減じられる。これにより飛行体b1を中間層1内に留める。
【0030】
上記した中間層1などによっても飛行体b1の運動エネルギーが十分に減殺されることなく飛行体b1が反対側の被覆層2に達したときには、この被覆層2は先端部の変形された飛行体b1に対し自身の広い範囲の弾性変形及び塑性変形により大きな抵抗力を付与し飛行体b1の運動エネルギーを効果的に吸収する。
【0031】
図4において、飛行体b1が点線で示す矢印方向d1(θ3)上を経て強化積層板100Aに進入した場合は、第1樹脂材料3に対する飛行体の入射角θ2が90度又はこれに近い大きさになる。飛行体b1が第1樹脂材料層3の中心線上を経て進入しても、第1樹脂材料層3の厚さが2mm〜4mmである一方で、飛行体b1の直径は4mm以上あるのが一般的であるためとし、飛行体b1は必ず第2樹脂材料4に衝突してその運動エネルギーを第2樹脂材料4の破砕などにより減殺される。また反対側の被覆層2に対する飛行体b1の入射角θ3よりさらに大きいと、強化積層板100Aの全体的弾性変形などにより飛行体b1を弾き返す可能性が高まる。
【0032】
上記の強化積層板100Aにおいて第2樹脂材料層4は、飛行体の運動エネルギーを吸収する過程で粉砕する。このとき、中間層表面に出現している第2樹脂材料層4の端部から破砕した樹脂が飛び出そうとするが、被覆層2によりこれを押し止め、強化積層板100Aの外に破砕した第2樹脂材料が飛散するのを抑止する。
【0033】
次に図54を参照して強化積層板100Bと飛行体b1との関係に言及する。図5は該関係を示す説明図である。
【0034】
強化積層板100Bは、中間層1が2つの層である上層1A及び下層1Bからなり、上層1Aは第1樹脂材料層3と第2樹脂材料層4とを上下方向に対し左右一側へ傾斜させた状態で水平方向へ交互に配列し、下層1Bは第1樹脂材料層3と第2樹脂材料層4とを上下方向に対し上層1Aの反対側へ傾斜させた状態で水平方向へ交互に配列してあるため、上層1Aを点線で示す矢印方向d2(入射角θ4)から進入した飛行体b1は、下層1Bの境界面3aと直交する方向に対し境界面3aの傾斜に対応した入射角θ5だけ傾斜した方向から進入して境界面3aに衝突する。このとき境界面3aは飛行体b1を矢印方向c3へ変更するように作用して全体厚さ方向と直交した方向へ移動させる。これにより飛行体b1は進入方向(厚さ方向)の運動エネルギーを減殺され強化積層板100Bに対する貫通力を減じられる。ここにおいて、強化積層板100Bの上層1A、1Bの傾斜角度は異なるものであって、同じものであっても良い。また、上層1A、1Bとの間で、互いに接着し合う第1樹脂材料層3と第2樹脂材料層4の端面が同一樹脂材料同士である必要も無いし、逆に同じでも良い。
【0035】
上記各実施例においては、各被覆層は第1樹脂材料層による一層構成であるが、中間層の第2樹脂材料層が飛散しないように被覆する目的を達成する範囲においては複数層により構成されるものでも良い。また、この場合、両面の被覆層2は同一の層構成としなくてもよいことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施例に係る2種類の強化積層板の断面図である。
【図2】一種類の上記強化積層板の製造例を示す説明図である。
【図3】他の一種類の上記強化積層板の製造例を示す説明図である。
【図4】上記一種類の強化積層板と飛行体との関係を示す説明図である。
【図5】上記他の一種類の強化積層板と飛行体との関係を示す説明図である。
【図6】従来の強化積層板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 中間層
1A 上層
1B 下層
2 被覆層
3 第1樹脂材料層
4 第2樹脂材料層
b1 飛行体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層と、該中間層の上下各表面に一体状に被着された被覆層とを備えた積層板であって、前記中間層は外部からの運動エネルギーを主に自身の弾性変形や塑性変形により吸収する第1樹脂材料層と、前記運動エネルギーを主に自身の脆性破砕により吸収する第2樹脂材料層とを交互に積み重ねた層であって、互いを重ね合わせた境界面は、前記被覆層の面に対して傾斜されており、かつ中間層の表面に出現する第1樹脂材料層と第2樹脂材料層の端面は前記被覆層により被覆されていることを特徴とする強化積層板。
【請求項2】
前記傾斜角度が、上下方向に対し略、30度〜60度の範囲内の大きさであることを特徴とする請求項1記載の強化積層板。
【請求項3】
前記被覆層は第1樹脂材料層と同質の樹脂材料の層を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の強化積層板。
【請求項4】
前記第1樹脂材料層がポリカーボネートで形成され、前記第2樹脂材料層がアクリルで形成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の強化積層板。
【請求項5】
前記中間層は、前記境界面が第1の傾斜角度である層と、前記境界面が第2の傾斜角度である層を有し、前記第1と第2の傾斜角度は、被覆層の表面の垂線に対して互いに反対側の傾斜であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の強化積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−286062(P2009−286062A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143329(P2008−143329)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(399034253)株式会社レニアス (21)
【Fターム(参考)】