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強化繊維含有樹脂パネル及び建造物補強方法
説明

強化繊維含有樹脂パネル及び建造物補強方法

【課題】 コンクリートや木材からなるビルや戸建住宅、トンネル、橋脚などの外壁や基礎等に、繊維シートと硬化性樹脂を固着してこれらの建造物を補強する際に、作業現場における作業状況によらずに所定の補強強度を望むことが可能で、補強作業が容易な繊維強化材と建造物補強方法を提供すること。
【解決手段】 強化繊維をシート状にした強化繊維シートと硬化性樹脂とを含んでなる強化繊維含有樹脂パネルを用い、建造物と強化繊維含有樹脂パネルおよびこれらを固着するパネル接着剤にて一体化して建造物を補強した。強化繊維にアラミド繊維を用い、強化繊維含有樹脂パネル中の硬化性樹脂と、パネル接着剤とを同種の樹脂、同種の強化繊維が含まれる材料にて製造した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートや木材等からなるビルや戸建住宅、トンネル、橋脚などの外壁や基礎等に固着してこれらの建造物を補強する際に用いる強化繊維含有樹脂パネルと、その強化繊維含有樹脂パネルを用いた建造物補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや戸建住宅等の外壁、基礎部分、柱部分等のコンクリートや木材からなる部分の劣化や腐食に対する防護策として、ひび割れ等の欠損部分に硬化性樹脂からなる補強剤を充填しつつ補強対象物の表面に補強剤を塗布する方法が行われている。こうした方法は、水分の建造物内への進入を防止するという面では効果的であるが、補強剤自体が樹脂からなるため、セメント製補強剤に比べてその強度が劣っており建造物自体の補強にはあまり寄与しないものであった。そこで、補強剤の強度向上のため、ロックウールやガラス繊維などの短繊維を含んだ補強剤が開発されており、こうした補強剤は、特開2003−213136号公報(特許文献1)や特開2003−213938号公報(特許文献2)などに記載されている。
【0003】
また、長繊維を束ねた繊維シートを用いた建造物補強方法も知られている。まず、補強の対象となるコンクリートや木材表面についた泥、ホコリ、ゴミ等をワイヤーブラシで取り除き、また水分が付着していればウエス等で拭き取って乾燥させる。そして、塗装やパテ塗り、スプレー等で樹脂塗膜を建造物表面に形成し、その樹脂が硬化する前に、ガラス繊維などの長繊維を束ねた繊維シートを樹脂塗膜に貼り付ける。そして、貼り付けた繊維シート中の気泡を脱泡ローラーで追い出しながら建造物表面と密着させる。この脱泡処理を行うことにより、下塗りの樹脂塗膜を繊維シートに含浸させる。それから、さらにその表面に液状樹脂を上塗りし、しばらく放置することで樹脂塗膜を硬化させる。この建造物補強方法では繊維シートを用いることで、長繊維を樹脂中に含んだ繊維強化プラスチックの状態を作り出して、建造物の補強を行っている。
【特許文献1】特開2003−213136号公報
【特許文献2】特開2003−213938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
繊維シートを用いた建造物補強方法は、補強剤単独で建造物を補強するよりも強度向上を望むことができる。しかしながら、現場で繊維シートと樹脂とを一体化するため、繊維シートの取扱いが不便で、脱泡作業に手間がかかるといった問題がある。また、樹脂の塗りむらや、脱泡が不十分であると、求める補強強度が出にくいといった問題もある。
【0005】
そこで本発明は、建造物の強度向上に寄与し、作業が容易な建造物補強方法と、それに用いる繊維強化材を得ることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために本発明は、コンクリートや木材からなるビルや戸建住宅、トンネル、橋脚などの外壁や基礎等に固着してこれらの建造物を補強する強化繊維含有樹脂パネルであって、強化繊維をシート状にした強化繊維シートと硬化性樹脂とを含んでなる強化繊維含有樹脂パネルを提供する。強化繊維含有樹脂パネルは、強化繊維シートと硬化性樹脂とを含んでなるため、最適な状態で強化繊維シートと硬化性樹脂とを一体化しておくことができる。そのため、作業現場や作業者によらずに常に安定した強度を発揮することができる。こうした強化繊維含有樹脂パネルに含まれる強化繊維としてはアラミド繊維が好ましい。アラミド繊維は高強度、高弾性率であり、軽量であるため、建造物の補強という効果を発揮し易いからである。
【0007】
強化繊維含有樹脂パネルに含まれる強化繊維シートが、複数の強化繊維を束ねた繊維束を一方向または二方向に編んだ強化繊維シートとすることができる。複数の強化繊維を束ねた繊維束を有するため、複数の繊維を用いながら製造が容易である。また、繊維束を一方向または二方向に編んでいるため、繊維の長さ方向の強度が高い強化繊維含有樹脂パネルとすることができる。即ち、繊維束を一方向に編んだ強化繊維含有樹脂パネルでは、少なくともその繊維束の長さ方向の強度を高くすることができ、また、繊維束を二方向に編んだ強化繊維含有樹脂パネルでは、異方性を有することなく強化繊維含有樹脂パネルの強度を高くすることができる。
【0008】
強化繊維含有樹脂パネルは、少なくとも一面側にざらつきを有する粗面として形成することができる。少なくとも一面側にざらつきを有する粗面とすれば、被着体との接着力が高まり、建造物の強度向上に寄与することができる。
【0009】
一面側に表出する硬化性樹脂と、他面側に表出する硬化性樹脂とが異なる樹脂でなる強化繊維含有樹脂パネルとすることができる。 一面側に表出する硬化性樹脂と、他面側に表出する硬化性樹脂とが相違しているため、建造物の表面に表れる硬化性樹脂を、外部からの視認性や触感、耐候性等に優れた樹脂とし、他面側の補強対象部と固着する側に表れる硬化性樹脂を固着力の高い樹脂として、建造物の強度向上に寄与することができる。
【0010】
強化繊維含有樹脂パネルの少なくとも一端側に硬化性樹脂が含浸されていない樹脂未含浸部を有する強化繊維含有樹脂パネルとすることができる。少なくとも一端側に硬化性樹脂が含浸されていない樹脂未含浸部を有するため、樹脂未含浸部では硬化性樹脂が存在しない分だけ厚みを薄くすることができる。それにより、強化繊維含有樹脂パネルどうしを積層して用いる場合であっても、樹脂未含浸部どうしを積層することで、強化繊維含有樹脂パネルどうしの積層による厚肉化を避けることができ、補強対象部と強化繊維含有樹脂パネルを隙間無く貼り付けることができる。
【0011】
強化繊維含有樹脂パネルは配向方向が交差する少なくとも2以上の強化繊維シートが、少なくとも一部において積層しているものとすることができる。配向方向が交差する少なくとも2以上の強化繊維シートが、少なくとも一部において積層しているため、積層部分の強度を向上させることができる。これにより、構造的に曲げモーメントが最大となるような部分に貼着する強化繊維含有樹脂パネルにおいては、予め積層部分を形成しておくことで、弱い部分を部分的に強化して強度向上に寄与することができる。
【0012】
本発明はまた、コンクリートや木材からなるビルや戸建住宅、トンネル、橋脚などの外壁や基礎等の補強対象部に樹脂パネルを固着してこれらの建造物を補強する建造物補強方法であって、予め、強化繊維シートに硬化性樹脂を含浸させた所定の強化繊維含有樹脂パネルを準備し、補強対象部表面か強化繊維含有樹脂パネルの表面の少なくとも何れか一方に、補強対象部と強化繊維含有樹脂パネルとを固着するパネル接着剤を塗布した後、強化繊維含有樹脂パネルを補強対象部に押圧貼付し、補強対象部とパネル接着剤、強化繊維含有樹脂パネルを一体化して建造物を補強する建造物補強方法を提供する。
【0013】
強化繊維シートに硬化性樹脂を含浸させた所定の強化繊維含有樹脂パネルを準備し、補強対象部表面か強化繊維含有樹脂パネルの表面の少なくとも何れか一方に、補強対象部と強化繊維含有樹脂パネルとを固着するパネル接着剤を塗布した後、強化繊維含有樹脂パネルを補強対象部に押圧貼付し、補強対象部とパネル接着剤、強化繊維含有樹脂パネルを一体化して建造物を補強するため、常に所定の強度向上を望むことができる。すなわち、所定の強化繊維含有樹脂パネルを用いるため、繊維シートを用いる場合に比べて、作業現場での施工状況によらずに常に建造物の強度向上を望むことができる。
【0014】
強化繊維含有樹脂パネルの少なくとも一面側にざらつきを有する粗面が形成されており、その一面側を補強対象部に押圧貼付する建造物補強方法とすることができる。ざらつきを有する粗面を補強対象部に押圧貼付するため、補強対象部が起伏のある表面を有していても、強化繊維含有樹脂パネルとの固着力が弱まることを抑制でき、建造物の強度向上に寄与することができる。
【0015】
2以上の強化繊維含有樹脂パネルを交差させ、パネル接着剤を挟んで積層する工程を含むことができる。2以上の強化繊維含有樹脂パネルを交差させ、パネル接着剤を挟んで積層する工程を含むため、強化繊維含有樹脂パネル中の強化繊維の方向性によらずに、建造物の強度向上を図ることができる。
【0016】
パネル接着剤が、強化繊維含有樹脂パネルに含まれる硬化性樹脂と同種の樹脂と、強化繊維含有樹脂パネルに含まれる強化繊維と同種の短繊維と、を含む接着剤を利用することができる。強化繊維含有樹脂パネルに含まれる硬化性樹脂と同種の樹脂と、強化繊維含有樹脂パネルに含まれる強化繊維と同種の短繊維と、を含むパネル接着剤を用いたため、強化繊維含有樹脂パネルとパネル接着剤との固着力を高めることができる。ここで「同種」とは、硬化性樹脂にエポキシ系樹脂を用いた場合にパネル接着剤にエポキシ系樹脂を用いる場合のように、基本構造や官能基に同じものを含むものどうしをいい、全く同じでも良い。
【0017】
強化繊維含有樹脂パネルが、少なくとも一端側に硬化性樹脂が含浸されていない樹脂未含浸部を有するものであり、その樹脂未含浸部どうしを重ね合わせて、補強対象部とパネル接着剤、強化繊維含有樹脂パネルを一体化して建造物を補強することができる。少なくとも一端側に硬化性樹脂が含浸されていない樹脂未含浸部どうしの重ね合わせを行うため、硬化性樹脂が存在しない分だけ厚みを薄くすることができる。それにより、強化繊維含有樹脂パネルどうしを積層して用いる場合であっても、強化繊維含有樹脂パネルどうしの積層による厚肉化を避けることができる。また、施工後において、かかる樹脂未含浸部における硬化性樹脂分に対する強化繊維シートの割合が高まるため、建造物の強度向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の強化繊維含有樹脂パネルや建造物補強方法によれば、建造物の強度向上に寄与することができる。また、作業現場での作業が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態について以下に詳細に説明する。本発明は、ビルや戸建住宅、トンネル、橋脚などの外壁や、基礎等のコンクリートや木材からなる部分の劣化や腐食による強度低下からこれらの建造物を守り、建造物の強度を向上させるため所定の強化繊維含有樹脂パネル(以下、単に「パネル」ともいう)を建造物の外壁等に固着するものである。
【0020】
図1には、巻物状に形成したこのパネル1の外観図と、その一部拡大斜投影図を示す。パネル1は、強化繊維2をシート状にした強化繊維シート3と、硬化性樹脂4とを含んでなり、強化繊維シート3に硬化性樹脂4を含浸するとともに、強化繊維シート3の両面を硬化性樹脂4で被覆したものである。強化繊維シートは、引っ張り強度や弾性率が高い強化繊維をシート状に形成したものであって、シートの形態は織布であっても不織布であっても良く、また、織布の場合は、種々の編み方で編んだシートを含むものである。複数の強化繊維を同軸方向に束ねた一方向繊維シートや、複数の強化繊維を一方向とこれに異なる他方向の二方向に束ねてクロスさせた二方向繊維シート、束ねた強化繊維どうしを粗くクロスさせて繊維束間に空隙を持たせたメッシュ状繊維シートなどが例示できる。
【0021】
強化繊維シートは、強化繊維自体を編んでシート状にすることができる他、強化繊維を複数本束ねて、強化繊維以外の別の繊維とともに編んでシート状にすることもできる。例えば、強化繊維を一方向、即ち縦糸にし、その強化繊維と同じ強化繊維や相違する別の繊維を横糸やメッシュ状にして編むことで一方向繊維シートが得られる。また、二方向繊維シートは、縦方向に束ねた強化繊維と、横方向に束ねた強化繊維とをそれ自体で編んでも良いし、縦方向束ねた強化繊維と横方向に束ねた強化繊維とを、それとは別の繊維で結びつけることで二方向繊維シートが得られる。
【0022】
強化繊維の材質としては、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、チタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維等の無機繊維や有機繊維などの各種繊維が挙げられ、これらの繊維は単独でも混合しても用いることができる。
【0023】
こうした繊維の中では、アラミド繊維が電気を通さず、磁化しない点で好ましい。また、炭素繊維やガラス繊維に比べても比重が軽く軽量で補強剤自体の重量を低く抑えることができ、作業が容易になる点で好ましい。
【0024】
硬化性樹脂は、熱硬化型、光硬化型や紫外線硬化型、湿気硬化型、加圧硬化型など、硬化させる手段は問わず種々の反応条件で硬化する硬化性樹脂を用いることができる。これらの樹脂には、エポキシ系、フェノール系、ポリウレタン系、ポリエステル系、シリコーン系、シアノアクリーレート系等の各種樹脂が挙げられる。これらの中では、湿気硬化型や光硬化型などの樹脂は、低温で早く硬化させることができ、生産効率を高めたり、生産が安価にできる点で好ましい。エポキシ樹脂は、樹脂自体の強度が高く、また、パネル接着剤の原材料としても用いられることから、建造物補強効果やパネル接着剤との接着性向上の観点から好ましい樹脂である。
【0025】
なお、硬化性樹脂自体の硬度を高めるために、強化繊維シートとは別に、種々の添加剤を混合しても良い。例えば、ヤシ繊維、ビニロン、ナイロン、ポリエステル、アラミドなどの有機繊維や、アルミ繊維、ガラス繊維、ロックウールなどの無機繊維、シリカなどの無機粉末などの短繊維を含有させることができる。これらの中でも、アラミド短繊維を添加すると、同量の他の有機繊維や無機繊維を混入させた場合に比べて強度増大が認められる点で好ましい。
【0026】
添加するアラミド繊維などの有機繊維の長さは1.5mm〜25mm、太さは10μm〜0.1mmとすることが好ましい。1.5mmより短いと強度の向上効果が不十分であり、25mmを超えると樹脂中への分散が困難である。また、太さが10μmより細いか0.1mmより太いものは添加量に対する強度の増加効果に乏しい。
【0027】
また、硬化性樹脂には必要に応じて着色顔料や体質顔料、表面調整剤、消泡剤、分散剤、可塑剤、溶剤、硬化触媒、染料、湿潤剤、レベリング剤等を適宜添加してもよい。着色顔料を加えたものは、建造物の補強だけでなく、パネルに装飾性を付与する点で好ましい。
【0028】
パネルの一形態として、硬化性樹脂を硬化させた状態のパネルとすることができる。作業現場で硬化性樹脂の硬化を行う必要がないため、作業現場での条件に左右されることなく、事前に最適の条件で硬化させることができ、所望の強度や弾性率を有するパネルを製造することができるからである。また、パネルの別の形態としては、硬化性樹脂を未硬化の状態のパネルとすることができる。未硬化であるためパネル自体に相当程度の柔軟性があり、補強対象部表面の起伏に追随させて貼付させることができるという利点がある。硬化性樹脂未硬化パネルとするためには、加熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂など、日常の環境下では硬化しにくい材質の硬化性樹脂を用いることが好ましい。保存時に硬化してしまうおそれが少ないからである。そのため、日常の環境下でも硬化し易い材質の硬化性樹脂を用いる場合には、未硬化のまま保存する工夫が必要である。例えば湿気硬化型の場合は、パネルの表面に保護シートを貼付しておき、湿気からパネル表面を保護するようにしておくことができる。
【0029】
パネルの大きさ、形状は補強対象となる建造物の補強対象部に応じて適宜その形状や大きさを選択することができるが、さまざまな建造物に対して加工し易いように、汎用品として、強化繊維の長手方向Lに連続した巻物とした帯状パネル(図1)とし、強化繊維の長手方向に対する直交方向Wの長さを9cm〜11cm、25cm〜35cm、45cm〜55cm程度の3種類ほど準備しておくことが好ましい。現場で長手方向の長さを所望の長さにカッターで切断して調整することができるからである。また、長さ方向に長尺で連続する帯状パネルを巻物状にすれば場所をとらずに保存でき、パネル表面に汚れが付着しにくい点で好ましい。あるいはまた、建造物角の種々の形状に合わせて、パネル平面を平板状やL字状、コ字状、C字状、半円状に形成することもできるし、パネル断面を平板状やL字状、コ字状、C字状、半円状に形成することもできる。
【0030】
強化繊維シートに硬化性樹脂を含浸させてパネルが得られるが、補強対象部の形状や大きさに応じて、パネルの形状や大きさだけでなく、含浸の程度を変えることができる。平坦な補強対象部に施工する場合には、強化繊維シートの全体に硬化性樹脂が含浸し、かつ、表面が平滑なパネルとすることができる。しかしながら、補強対象部の表面に起伏がある場合には、補強対象部との密着性を高めるために、パネルの両面S1,S2のうち、少なくともその一面側S1をざらつきを有する粗面として形成することが好ましい。
【0031】
パネル表面の粗面化は、粗面上で強化繊維シートの硬化性樹脂を含浸させたり、強化繊維シートの表面状態が損なわれない程度に硬化性樹脂を薄く含浸させたりすることで形成できる。また、粗面となる側の面までは硬化性樹脂が含浸しない状態として形成することができる。
【0032】
こうしたパネルは、図2で示すパネル11のように、パネルの全体に強化繊維シートが含まれている場合の他、パネルから強化繊維シートの一部がむき出しになったもの、換言すれば、強化繊維シートの一部に硬化性樹脂を含浸させないパネルとすることができる。その一例として、例えば図3〜図6で示すように、パネルの少なくとも一端側に硬化性樹脂が含浸されていない樹脂未含浸部5,6を有するものとしても良い。図3で示すパネル12は、その長手方向の両端に樹脂未含浸部5,5を設けたものであり、図4で示すパネル13はその長手方向の一端に樹脂未含浸部5を設けたものであり、図5で示すパネル14はその短手方向の両端に樹脂未含浸部6,6を設けたものであり、図6で示すパネル15はその短手方向と長手方向の全ての端に樹脂未含浸部5,6を設けたものである。補強対象部表面が広面積に渡る場合には、複数枚のパネル11,12,13,14,15の一部分を重ねて施行する必要があるが、樹脂未含浸部5,6の無いパネル11どうしを重ねると、その重なり部分が厚くなることで、重なり部分の近傍はパネル11の厚み分だけ補強対象部(被着体)から浮き上がった空隙が生じてしまう場合があり、建造物の強度向上の妨げとなる場合がある。これに対し、樹脂未含浸部5,6を有すれば、パネル12,13,14,15どうしを重ねる場合に、その重なり部分を樹脂未含浸部5,6とし、樹脂未含浸部5,6の重なり部分にパネル接着剤を塗布して硬化させれば、前記空隙は生じないし、かかる部分は強化繊維シートの比率が高まって強度上も好ましいものとなるからである。
【0033】
またパネルは、その一面側が補強対象部に固着し、その他面側が建造物の表面に現れるため、パネルの一面側に表出する硬化性樹脂をパネル接着剤と接着し易い硬化性樹脂とし、他面側に表出する硬化性樹脂を外部からの視認性や触感、耐候性等に優れた硬化性樹脂とすることができる。こうした場合には、強化繊維含有樹脂パネルの一面側と他面側に表出する硬化性樹脂の種類が異なるものとなっても良い。
【0034】
また、変形を受けやすい部位に貼付するパネルは、配向方向が交差する少なくとも2以上の強化繊維シートが積層しているパネルを用いることにより、積層部分の強度を向上させて、変形を受けやすい部位のさらなる強化が可能である。
【0035】
次にパネルの製造方法を説明する。表面が平滑な平板上に液状の硬化性樹脂を予め塗布した上に強化繊維シートを載せ、さらにその上に硬化性樹脂を載せてから平板で押圧する。こうして、表裏両面が平らで平滑なパネルを得ることができる。もちろん平板に代えてロール上を通過させることで同様の効果を得ることもできる。また、少なくとも一面側にざらつきを有する粗面として形成する場合には、上記工程において、平板上に硬化性樹脂を塗布せずに強化繊維シートを載せ、所定量の硬化性樹脂を該強化繊維シートの表面に塗布して平板で押圧することで得られる。こうして得られたパネルは、一面側が強化繊維シート表面のざらつきに起因した粗面として形成される。こうした方法以外にも、パネルの表面に表出する硬化性樹脂を物理的に目荒らしして凹凸面を形成することもできる。
【0036】
次に、パネルを用いた建造物補強方法について説明する。補強の対象となる建造物の表面についた泥、ホコリ、ゴミ等をワイヤーブラシ等で取り除く。水分が付着していることもあるので、泥等を取り除いた後、ウエス等でその表面を拭くことが好ましい。そして、パネル接着剤を塗布する。パネル接着剤は、補強対象部とパネルを固着するものである。したがって、補強対象部とパネルとを固着する性質を有する樹脂材などから形成することができるが、このパネル接着剤にも、上述のパネル製造用の硬化性樹脂を用いることができる。特に、パネル接着剤が、パネルに含まれる硬化性樹脂と同種の樹脂と、パネルに含まれる強化繊維と同種の短繊維と、を含むことが好ましい。こうすることで、パネル接着剤自体の強度を高めることができるとともに、パネルとパネル接着剤との固着力を高めることができる。そのため、建造物の補強効果がさらに向上する。特にパネルの硬化性樹脂とパネル接着剤にエポキシ樹脂を用い、パネルの強化繊維シートにアラミド長繊維を、パネル接着剤の添加剤にアラミド短繊維を含有させた場合には、他の樹脂や繊維の組み合わせに比べて、補強効果を高めることができる。また、樹脂未含浸部を有するパネルの樹脂未含浸部にこうしたパネル接着剤を用いると、パネル接着剤中の短繊維が樹脂未含浸部の長繊維に接触し、長繊維と短繊維が混じり合った繊維強化複合材が形成されるため、補強効果が高い。
【0037】
パネル接着剤の塗布は、塗装やパテ塗り、スプレー等、パネル接着剤の粘度などの性状に合わせて適宜選択する。パネル接着剤が完全には固まらないうちに、適当な大きさに準備しておいたパネルをパネル接着剤の上に貼り付ける。表面にざらつきを有するパネルの場合には、そのざらつきを有する面を補強対象部に貼り付ける。なお、パネル接着剤とパネルとの密着性を高めるために、パネルの貼り付け面にパネル接着剤を塗布しても良い。パネルは補強対象部に押しつけて充分に密着させる。こうした作業を繰り返して、補強対象部の表面にパネルを貼り付けていく。但し、パネルの一部分を重ねて貼り付ける場合には、パネルどうしの重なり面にもパネル接着剤を塗布しておく。また、補強強度を高めるなどの要求に応じて、複数枚のパネルを積層することもできる。パネルどうしを向きを変えて交差させるなどして重ねることにより、重ならない部分に隙間が生じる場合には、その隙間をパネル接着剤で埋めるようにしておく。その後、パネルを硬化させて建造物の補強は完了する。
【0038】
上記工程において、パネルに含有される硬化性樹脂が未硬化の状態にあるパネルを用いるときは、熱硬化型樹脂の場合は加熱押圧具を押しつけ、紫外線硬化型樹脂の場合は紫外線を照射するなど、硬化のタイプ毎に応じた硬化手段を施してパネルに含まれる硬化性樹脂を硬化させる。
【0039】
外壁などの目立つ場所に施工するような場合には、パネルとパネルの境界部分が表出しないように、また補強効果を高めるため、パネルの端やパネル全体をパネル接着剤で上塗りしておくことが好ましい。また、パネル接着剤が固化するまでの間にガラス粒や、砂粒、アルミ粉、セラミック粉のような装飾材を施工面に散布することにより、施工面の質感を変化させることができる。装飾材の粒径は、直径φ=0.01〜0.1mmが好ましく、滑り止め材の添加量は、樹脂量の20%〜30%が好ましい。さらに、パネル接着剤とは異なる上塗り剤を塗布して装飾や耐候性向上を図ることもできる。
【0040】
本発明を適用しうる建造物は、コンクリート製、木製の建造物が主であるが、これらの材質に限られず、タイルや人工大理石などを用いたものに対しても優れた補強効果を発揮する。また、ビル、戸建住宅などのような建物の外壁や基礎、柱等の建物自体に限られず、浴室、洗面所、トイレの土台周り等の建物に用いられる部材に対しても適用可能である。
【実施例】
【0041】
実施例1:
(1)パネルの製造: アラミド繊維シート(東レ・デュポン社製「AK−60(商品名)」)の両面にエポキシ樹脂(コーシンハウスケアリング社製「パワーアラスト(商品名)」の主剤と硬化剤とを混合したもの)を塗布、硬化させて、幅約10cm、長さ約30cm、厚みが約1.2mmであり一面側が平滑で他面側にざらつきのある試料1のパネル(21)と、この試料1と比べて長さだけが異なり約50cmである試料2のパネル(22)を得た。このパネル(21,22)は、図2で表されるような樹脂未含浸部のない外観を有している。
【0042】
(2)戸建て住宅の基礎の補強: 図7で示すように、戸建て住宅の基礎(23)に設けられた通風口(24)の周囲を上記試料1のパネル(21)と試料2のパネル(22)を用いて補強した。まず、通風口(24)の周囲のコンクリート製の基礎(23)と木製の土台(25)をワイヤーブラシでこすり、泥やホコリを取り除き、ウエスで水分を拭き取った。次に、エポキシ樹脂(コーシンハウスケアリング社製「パワーアラスト(商品名)」の主剤と硬化剤とを混合したもの)でなるパネル接着剤を、ワイヤーブラシで擦った通風口(24)の周囲に塗布した。そして、その上に通風口(24)の横縁に沿ってまずパネル(22)を建物と水平に貼り合わせ、次にパネル(22)の端にパネル接着剤を塗布した後、パネル(21)を通風口(24)の縦縁に沿って建物と垂直に貼り合わせた。さらに、パネル(21)やパネル(22)の縁と基礎(23)や土台(25)の境界には、パネル接着剤を塗布した。こうして、通風口(24)の周囲を補強することで戸建て住宅の基礎(23)を補強した。補強後の通風口(24)周辺の正面図を図7(A)に、その断面図を図7(B)に示す。
【0043】
実施例2:
実施例1で用いたパネル(21,22)に代えて、図4で示すような、帯状の両端に硬化性樹脂を含有しない樹脂未含浸部(5)を有する試料3のパネル(31)と、試料4のパネル(32)を用いて実施例1と同様に戸建て住宅の基礎の補強を行った。パネル(31,32)はその両端に樹脂未含浸部(5)を有する点を除き、それぞれパネル(21,22)と同じである。パネル(31,32)はその両端には硬化性樹脂を含浸させずに、それ以外はパネル(21,22)と同様の方法にて、同様の材料を用いて製造した。基礎(23)や土台(25)とパネル(31,32)の固着の方法も実施例1とほぼ同じであるが、本実施例では、パネル(31)とパネル(32)のそれぞれの樹脂未含浸部(5)どうしを図8に示すように貼り合わせており)、パネル(31)とパネル(32)のそれぞれの樹脂未含浸部(5,5)の重複部分(33)にもパネル接着剤を塗布した。
【0044】
実施例1の建造物補強方法では、パネル(21)とパネル(22)の重なり部分の近傍で、若干基礎(23)や土台(25)とパネル(21)の隙間が生じており、パネル接着剤で埋めていたが、実施例2の建造物補強方法では、パネル(31)とパネル(32)との重複部分(33)に硬化性樹脂が無いため、両パネル(31,32)の重なりによる盛り上がりがなく、基礎(23)や土台(25)とパネル(31,32)との間に隙間は全く生じなかった。
【0045】
実施例3:
(1)パネルの製造: 試料1のパネル(21)と同一の材料、方法にて、図1で示すような幅約10cm、長さ50mの帯状で巻物とした、実施例1のパネル(21)とは長さが異なる試料5のパネル(41)を製造した。
【0046】
(2)トンネルの壁面の補強: トンネル内の壁面(42)を試料5のパネル(41)を用いて補強した。まず、実施例1と同じ材料、方法にて、トンネルの壁面(42)から泥やホコリを取り除き、水分を拭き取り、その表面にパネル接着剤を塗布した。次に、図9で示すように、アーチ状のトンネルの壁面(42)の一端(42a)にパネル(41)の端をあてがい、アンカーボルトとナットで、パネル(41)の端(41a)をトンネルの壁面(42)の一端(42a)に固定した。パネル(41)は、巻きを緩めて巻物から引き出しながらアーチ状のトンネルの壁面(42)に向けて押圧し、接着させた。この際、パネル(41)には水平に戻ろうとする弾性力が働くため、パネル(41)の一端をトンネルの壁面(42)に固定しておけば、パネルの他端である巻物の引き出し部分を通じて押圧するだけで、容易にパネル(41)全体をトンネルの壁面(42)全体に押し当てることができる。それから、パネル(41)の他端側を巻物から切断し、パネル(41)を壁面(42)に押圧した状態のまま、パネル(41)の他端もトンネルの壁面(42)にアンカーボルトとナットで固定した。こうした作業を繰り返して、トンネルの長さ方向にパネル(41)の貼り付けを進めていった。なお、パネル接着剤を、パネル貼り付け面の全体に塗布した後、順次、パネル(41)を貼り付けていっても良い。作業中、パネル(41)を押し当て、パネル接着剤を充填しても、空隙ができてしまうような突出部分に対しては、その突出部分を避けてパネル(41)を貼り付けるとともに、その突出部分を囲むように短く切ったパネル(41)を交差させて突出部分の周囲に貼り付けた。こうして、トンネル内の壁面(42)にパネル(41)を固着することでトンネルを補強した。
【0047】
(3)橋脚の補強: パネル(41)を用いて円柱状の橋脚(51)の補強を行った。橋脚(51)の縦方向に上述のパネル接着剤を用いてパネル(41)を貼り付けた後に、橋脚の横方向にもパネル(41)を貼り付けた。こうして橋脚(51)の補強を行った。なお、図10では、橋脚(51)の右半分に、縦方向にパネル(41)を接着した状態を、左半分に、横方向にパネル(41)を接着した状態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態である強化繊維含有樹脂パネルの外観図と、その領域Rの拡大斜投影図である。
【図2】図1の帯状状態から所定長さを切り出した強化繊維含有樹脂パネルの平面図である。
【図3】本発明の別の実施形態である強化繊維含有樹脂パネルの平面図である。
【図4】本発明の別の実施形態である強化繊維含有樹脂パネルの平面図である。
【図5】本発明の別の実施形態である強化繊維含有樹脂パネルの平面図である。
【図6】本発明の別の実施形態である強化繊維含有樹脂パネルの平面図である。
【図7】本発明の強化繊維含有樹脂パネルを施工した一実施形態を示し、分図(A)は建造物基礎に設けられた通風口周辺の正面図であり、分図(B)は分図(A)のSA−SA線断面図である。
【図8】本発明の別の実施形態である強化繊維含有樹脂パネルの樹脂未含浸部どうしを重ねた状態の平面図である。
【図9】強化繊維含有樹脂パネルのトンネル内壁への貼り付け工程を示す模式図である。
【図10】強化繊維含有樹脂パネルの橋脚への貼り付け状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 強化繊維含有樹脂パネル
2 強化繊維
3 強化繊維シート
4 硬化性樹脂
5,6 樹脂未含浸部
11,12,13,14,15 強化繊維含有樹脂パネル
21,22 強化繊維含有樹脂パネル
23 基礎
24 通風口
25 土台
31,32 強化繊維含有樹脂パネル
33 (樹脂未含浸部の)重複部分
41 強化繊維含有樹脂パネル
41a (強化繊維含有樹脂パネルの)一端
42 (トンネル)壁面
42a (壁面の)一端
51 橋脚


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートや木材からなるビルや戸建住宅、トンネル、橋脚などの外壁や基礎等に固着してこれらの建造物を補強する強化繊維含有樹脂パネルであって、
強化繊維をシート状にした強化繊維シートと硬化性樹脂とを含んでなる強化繊維含有樹脂パネル。
【請求項2】
強化繊維がアラミド繊維である請求項1記載の強化繊維含有樹脂パネル。
【請求項3】
強化繊維シートが、複数の強化繊維を束ねた繊維束を一方向または二方向に編んだ強化繊維シートである請求項1または請求項2記載の強化繊維含有樹脂パネル。
【請求項4】
少なくとも一面側がざらつきを有する粗面として形成されている請求項1〜請求項3何れか1項記載の強化繊維含有樹脂パネル。
【請求項5】
一面側に表出する硬化性樹脂と、他面側に表出する硬化性樹脂とが異なる樹脂である請求項1〜請求項4何れか1項記載の強化繊維含有樹脂パネル。
【請求項6】
少なくとも一端側に硬化性樹脂が含浸されていない樹脂未含浸部を有する請求項1〜請求項5何れか1項記載の強化繊維含有樹脂パネル。
【請求項7】
配向方向が交差する少なくとも2以上の強化繊維シートが、少なくとも一部において積層している請求項1〜請求項6何れか1項記載の強化繊維含有樹脂パネル。
【請求項8】
コンクリートや木材からなるビルや戸建住宅、トンネル、橋脚などの外壁や基礎等の補強対象部に樹脂パネルを固着してこれらの建造物を補強する建造物補強方法であって、
予め、強化繊維シートに硬化性樹脂を含浸させた請求項1〜請求項7何れか1項記載の強化繊維含有樹脂パネルを準備し、
補強対象部表面か強化繊維含有樹脂パネルの表面の少なくとも何れか一方に、補強対象部と強化繊維含有樹脂パネルとを固着するパネル接着剤を塗布した後、強化繊維含有樹脂パネルを補強対象部に押圧貼付し、補強対象部とパネル接着剤、強化繊維含有樹脂パネルを一体化して建造物を補強する建造物補強方法。
【請求項9】
強化繊維含有樹脂パネルの少なくとも一面側にざらつきを有する粗面が形成されており、その一面側を補強対象部に押圧貼付する請求項8記載の建造物補強方法。
【請求項10】
2以上の強化繊維含有樹脂パネルを交差させ、パネル接着剤を挟んで積層する工程を含む請求項8または請求項9記載の建造物補強方法。
【請求項11】
パネル接着剤が、強化繊維含有樹脂パネルに含まれる硬化性樹脂と同種の樹脂と、強化繊維含有樹脂パネルに含まれる強化繊維と同種の短繊維と、を含む請求項8〜請求項10何れか1項記載の建造物補強方法。
【請求項12】
強化繊維含有樹脂パネルが、少なくとも一端側に硬化性樹脂が含浸されていない樹脂未含浸部を有するものであり、その樹脂未含浸部どうしを重ね合わせて、補強対象部とパネル接着剤、強化繊維含有樹脂パネルを一体化して建造物を補強する請求項8〜請求項11何れか1項記載の建造物補強方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−297807(P2008−297807A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145150(P2007−145150)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(506159367)株式会社 サクセス (1)
【Fターム(参考)】