説明

強度と加工性の均一性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法

【課題】高強度と良好な加工性(伸びフランジ性、曲げ加工性)を兼ね備え、しかも引張強さが980MPa以上である強度と加工性の均一性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C :0.05%超0.13%以下、Si:0.3%以下、Mn:0.5%以上2.0%以下、P :0.025%以下、S :0.005%以下、N :0.0060%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.07%以上0.18%以下、V :0.13%超0.30%以下を、TiおよびVが0.25 < Ti+V ≦ 0.45(Ti、V:各元素の含有量(質量%))を満足するように含有し、且つ、固溶V:0.05%以上0.15%未満であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相の組織全体に対する面積率が95%以上であるマトリックスと、TiおよびVを含み平均粒子径が10nm未満である微細炭化物が分散析出し、該微細炭化物の組織全体に対する体積比が0.0050以上であり、Tiを含み粒子径が30nm以上である炭化物の全炭化物総数に占める個数の割合が10%未満である組織とを有する熱延鋼板とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用部品等の輸送機材、構造材等の素材に好適な、優れた加工性、特に優れた伸びフランジ性および曲げ特性を有し、且つ材質安定性にも優れた引張強さ(TS):980MPa以上の高張力熱延鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保全の観点からCO2排出量を削減すべく、自動車車体の強度を維持しつつその軽量化を図り、自動車の燃費を改善することが、自動車業界においては非常に重要な課題となっている。自動車車体の強度を維持しつつその軽量化を図るうえでは、自動車部品用の素材となる鋼板の高強度化により、鋼板を薄肉化することが有効である。そのため、近年、高張力鋼板が自動車部品に積極的に使用されており、自動車業界では、例えば、足回り部品用素材として、引張強さ(TS)が780MPa級以上、更には980MPa級以上の鋼板の適用が検討されつつある。
【0003】
一方、鋼板を素材とする自動車部品の多くは、プレス加工やバーリング加工等によって成形されるため、自動車部品用鋼板には優れた加工性(伸びフランジ性、曲げ加工性)を安定的に発現することが要求される。また、部分的に強度の異なる鋼板をプレス成形すると、強度に比例してスプリングバック量が変化し、部品がねじれる現象が起こる。そのため、所望の強度と寸法・形状精度を有する部品を得るためには、素材となる鋼板の強度と加工性を、鋼板の幅方向で均一にすることも極めて重要である。
【0004】
優れた加工性を確保しつつ鋼板の高強度化を図る技術に関し、例えば、特許文献1には、質量で、C:0.08〜0.20%、Si:0.001%以上0.2%未満、Mn:1.0%超3.0%以下、Al:0.001〜0.5%、V:0.1%超0.5%以下、Ti:0.05%以上0.2%未満およびNb:0.005〜0.5%を含有し、かつ、(式1)(Ti/48+Nb/93)×C/12≦4.5×10−5、(式2)0.5≦(V/51+Ti/48+Nb/93)/(C/12)≦1.5、(式3)V+Ti×2+Nb×1.4+C×2+Mn×0.1≧0.80の3式を満たし、残部Feおよび不可避的不純物からなり、平均粒子径5μm以下で硬度が250Hv以上のフェライトを70体積%以上含有する鋼組織を有し、880MPa以上の強度と降伏比0.80以上を有する高強度熱延鋼板に関する技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、mass%で、C:0.02%以上0.20%以下、Si:0.3%以下、Mn:0.5%以上2.5%以下、P:0.06%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.05%以上0.25%以下、V:0.05%以上0.25%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、実質的にフェライト単相組織であり、前記フェライト単相組織中には、大きさが20nm未満の析出物に含まれるTiが200mass ppm以上1750mass ppm以下、Vが150 mass ppm以上1750 mass ppm以下であり、固溶Vが200 mass ppm以上1750 mass ppm未満である組織を有することを特徴とする、加工後の伸びフランジ特性および塗装後耐食性に優れた高強度鋼板に関する技術が提案されている。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、鋼板に含まれる析出物を微細化(大きさ20nm未満)することにより鋼板の高強度化を図っている。また、特許文献2に記載の技術では、鋼板に含まれる析出物を微細なまま維持し得る析出物として、TiおよびVを含む析出物を用い、更に、鋼板に含まれる固溶V量を所望の範囲とすることにより、加工後の伸びフランジ特性の向上を図っている。そして、特許文献2に記載の技術によると、加工後の伸びフランジ性および塗装後耐食性に優れ、引張強さが780MPa以上である高強度熱延鋼板が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−161112号公報
【特許文献2】特開2009−052139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で提案された技術では、伸びフランジ性について検討されていない。そのため、特許文献1で提案された技術によると、780MPa以上の引張強さを確保しようとする場合、鋼板組織をフェライト相と硬質相との複合組織とすることが必要となるが、このような複合組織を有する鋼板にバーリング加工を施すと、フェライト/硬質相界面から亀裂が発生してしまう。すなわち、特許文献1で提案された技術では、780MPa以上、或いは更に980MPa以上の引張強さを確保しようとする場合、必ずしも十分な伸びフランジ性を得ることができないという問題がある。また、第二相(硬質相)の制御が難しく、均一な材質とすることが極めて困難である。
【0009】
一方、特許文献2で提案された技術によれば、20nm未満の析出物について規定することで、加工性(伸びおよび伸びフランジ性)に優れ且つ780MPa級程度までの強度を有する熱延鋼板を製造することができるとされている。しかしながら、析出物による鋼板の強化は、さらに微細な粒子径10nm未満の析出物が強化機構の主体となる。そのため、特許文献2で提案された技術のように、20nm未満の析出物について規定しただけでは十分な析出強化は得られず、引張強さ980MPa以上の強度とすることは困難である。また、20nm〜数nmの析出物が混在することで、析出物による強化量が不安定となり、鋼板幅方向の強度が均一とならないという問題がある。
【0010】
以上のように、従来技術では、安定した強度と優れた伸びフランジ性を有する高張力鋼板を得ることが極めて困難であった。
本発明は、上記した従来技術が抱える問題を有利に解決し、輸送機材や構造材、特に自動車部品用として好適な、980MPa以上の引張強さと良好な加工性(特に伸びフランジ性、曲げ加工性)を兼ね備え、しかも強度と加工性の均一性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明者らは、熱延鋼板の高強度化と伸びフランジ性、曲げ加工性等の加工性、および熱延鋼板幅方向の材質安定性に及ぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、以下のような知見を得た。
1)鋼板組織を転位密度が低い加工性に優れたフェライト単相組織とし、更に、微細炭化物を分散析出させて析出強化すると、熱延鋼板の強度が向上し、伸びフランジ性も良好になること。
2)加工性に優れるとともに引張強さ980MPa以上の高強度を有する熱延鋼板を得るためには、析出強化に有効な平均粒子径が10nm未満である微細炭化物を所望の体積比で分散析出させる必要があること。
3)析出強化に寄与する微細炭化物としては、強度確保等の観点からTiおよびVを含む炭化物が有効であること。
【0012】
4)熱延鋼板に、安定的な強度を付与するうえでは、析出強化に寄与しない粒子径30nm以上の炭化物を抑制することが有効であること。
5)熱延鋼板幅方向の強度を均一化するには、析出強化元素であるTi、Vの含有量を規定することで、鋼板の幅方向端部での組織変化を抑制して強度低下を抑制することが有効であること。
6)熱延鋼板に所定量の固溶Vが存在すると、鋼板の曲げ加工性が安定的に向上すること。
7)鋼板組織のマトリックスを実質的にフェライト単相とし、且つ、上記の如く10nm未満であるTiおよびVを含む微細炭化物を所望の体積比で分散析出させるためには、熱延鋼板製造時の巻取り温度を所定の温度に制御することが重要であること。
【0013】
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 質量%で、
C :0.05%超0.13%以下、 Si:0.3%以下、
Mn:0.5%以上2.0%以下、 P :0.025%以下、
S :0.005%以下、 N :0.0060%以下、
Al:0.1%以下、 Ti:0.07%以上0.18%以下、
V :0.13%超0.30%以下
を、TiおよびVが下記(1)式を満足するように含有し、且つ、固溶V:0.05%以上0.15%未満であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相の組織全体に対する面積率が95%以上であるマトリックスと、TiおよびVを含み平均粒子径が10nm未満である微細炭化物が分散析出し、該微細炭化物の組織全体に対する体積比が0.0050以上であり、Tiを含み粒子径が30nm以上である炭化物の全炭化物総数に占める個数の割合が10%未満である組織とを有し、引張強さが980MPa以上であることを特徴とする、強度と加工性の均一性に優れた高張力熱延鋼板。

0.25 < Ti+V ≦ 0.45 … (1)
(Ti、V:各元素の含有量(質量%))
【0014】
[2] [1]において、前記組成に加えてさらに、質量%でNb、Moのうちの1種または2種を合計で1%以下含有することを特徴とする高張力熱延鋼板。
【0015】
[3] [1]または[2]において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu、Sn、Ni、Ca、Mg、Co、As、Cr、W、B、Pb、Ta、Sbのいずれか1種以上を合計で1%以下含有することを特徴とする高張力熱延鋼板。
【0016】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、表面にめっき層を具えることを特徴とする高張力熱延鋼板。
【0017】
[5] 鋼素材に、粗圧延と仕上げ圧延からなる熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とするにあたり、
前記鋼素材を、質量%で、
C :0.05%超0.13%以下、 Si:0.3%以下、
Mn:0.5%以上2.0%以下、 P :0.025%以下、
S :0.005%以下、 N :0.0060%以下、
Al:0.1%以下、 Ti:0.07%以上0.18%以下、
V :0.13%超0.30%以下
を、TiおよびVが下記(1)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、前記仕上げ圧延の仕上げ圧延温度を880℃以上とし、前記冷却の平均冷却速度を10℃/s以上とし、前記巻き取りの巻取り温度を550℃以上700℃未満とすることを特徴とする、引張強さが980MPa以上であり、強度と加工性の均一性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法。

0.25 < Ti+V ≦ 0.45 … (1)
(Ti、V:各元素の含有量(質量%))
【0018】
[6] [5]において、前記組成に加えてさらに、質量%でNb、Moのうちの1種または2種を合計で1%以下含有することを特徴とする高張力熱延鋼板の製造方法。
【0019】
[7] [5]または[6]において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu、Sn、Ni、Ca、Mo、Co、As、Cr、W、B、Pb、Ta、Sbのいずれか1種以上を合計で1%以下含有することを特徴とする高張力熱延鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、加工性が良好であり且つ引張強さ980MPa以上の強度を有するとともに、材質安定性にも優れ、プレス時の断面形状が複雑な自動車部品用の素材として好適な高張力熱延鋼板を、工業的に安定して生産することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明鋼板の組織の限定理由について説明する。
本発明の熱延鋼板は、フェライト相が組織全体に対する面積率で95%以上であるマトリックスと、TiおよびVを含み平均粒子径が10nm未満である微細炭化物が分散析出し、該微細炭化物の組織全体に対する体積比が0.0050以上であり、Tiを含み粒子径が30nm以上である炭化物の全炭化物総数に占める個数の割合が10%未満である組織を有する熱延鋼板、或いは該熱延鋼板の表面にめっき層を具えた熱延鋼板である。
【0022】
フェライト相:組織全体に対する面積率で95%以上
本発明においては、熱延鋼板の加工性(伸びフランジ性)を維持する上でフェライト相の形成が必須となる。熱延鋼板の加工性の向上には、熱延鋼板の組織を、転位密度の低い延性に優れたフェライト相とすることが有効である。特に、伸びフランジ性の向上には、熱延鋼板の組織をフェライト単相とすることが好ましいが、完全なフェライト単相でない場合であっても、実質的にフェライト単相組織、すなわち、組織全体に対する面積率で95%以上がフェライト相であれば、上記の効果を十分に発揮する。したがって、フェライト相の組織全体に対する面積率は95%以上とする。好ましくは97%以上である。
【0023】
なお、本発明の熱延鋼板において、フェライト相以外の組織としては、セメンタイト、パーライト、ベイナイト相、マルテンサイト相、残留オーステナイト相等が挙げられ、これらの合計は組織全体に対する面積率で5%以下であれば許容される。
【0024】
TiおよびVを含む微細炭化物
TiおよびVを含む炭化物は、その平均粒子径が極めて小さい微細炭化物となる傾向が強い。そのため、熱延鋼板中に微細炭化物を分散析出させることにより熱延鋼板の高強度化を図る本発明においては、分散析出させる微細炭化物を、TiおよびVを含む微細炭化物とする。
【0025】
鋼板の高強度化を図る場合において、従来はVを含まないTi炭化物を用いることが主流であった。これに対し、本発明においては、TiとともにVを含む炭化物を用いることを特徴とする。
Tiは炭化物形成傾向が強いため、Vを含まない場合はTi炭化物が粗大化し易く、鋼板の高強度化への寄与度が低くなる。それゆえ、鋼板に所望の強度(引張強さ:980MPa以上)を付与するために、より多くのTiを添加してTi炭化物を形成することが必要となる。その一方で、Tiを過剰に添加すると、加工性(伸びフランジ性)の低下が懸念され、断面形状が複雑な足回り部品等の素材としても適用可能な優れた加工性が得られなくなる。
【0026】
一方、Vは、炭化物形成傾向がTiよりも低いため、炭化物の粗大化を抑制するうえで有効である。そこで、本発明においては、分散析出させる炭化物として、TiとともにVを含む複合炭化物を用いることとする。本発明においてTiおよびVを含む微細炭化物とは、それぞれ単独の炭化物が組織中に含まれるのではなく、一つの微細炭化物中にTiとVの双方が含まれる複合炭化物を指す。
【0027】
TiおよびVを含む微細炭化物の平均粒子径:10nm未満
熱延鋼板に所望の強度を付与する上では微細炭化物の平均粒子径が極めて重要であり、本発明においてはTiおよびVを含む微細炭化物の平均粒子径を10nm未満とする。
マトリックス中に微細炭化物が析出すると、その微細炭化物が、鋼板に変形が加わった際に生じる転位の移動に対する抵抗として作用することにより、熱延鋼板が強化される。その効果は微細炭化物が小さいほど顕著となり、
微細炭化物の平均粒子径を10nm未満とすると、上記の作用がより一層顕著となる。したがって、TiおよびVを含む微細炭化物の平均粒子径は10nm未満とする。より好ましくは5nm以下である。
【0028】
TiおよびVを含む微細炭化物の組織全体に対する体積比:0.0050以上
熱延鋼板に所望の強度(引張強さ:980MPa以上)を付与する上ではTiおよびVを含む微細炭化物の分散析出状態も極めて重要であり、本発明においては、TiおよびVを含み平均粒子径が10nm未満である微細炭化物の、組織全体に対する組織分率が体積比で0.0050以上となるように分散析出させる。この体積比が0.0050未満である場合には、たとえTiおよびVを含む微細炭化物の平均粒子径が10nm未満であっても、該微細炭化物の量が少ないため、所望の熱延鋼板強度(引張強さ:980MPa以上)を確実に確保することが困難となる。したがって、上記体積比は0.0050以上とする。好ましくは、0.0070以上である。
【0029】
なお、本発明において、TiおよびVを含む微細炭化物の析出形態として、主たる析出形態である列状析出のほか、ランダムに析出している微細炭化物が混在していても、なんら特性に影響を与えず、析出の形態は問わず、種々析出形態を併せて分散析出と称することとする。
【0030】
Tiを含み粒子径が30nm以上である炭化物の全炭化物総数に占める個数の割合:10%未満
鋼板中に、粒子径が30nm以上であるTiを含む炭化物が存在すると、鋼板強度が不安定になるとともに加工性(伸びフランジ性)も不安定となる。そのため、このような粗大な炭化物が多く存在すると、上記した本発明の効果が発現されない。したがって、粒子径が30nm以上であるTiを含む炭化物の全炭化物総数に占める個数の割合を10%未満とする。好ましくは5%以下である。
【0031】
次に、本発明熱延鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C :0.05%超0.13%以下
Cは、微細炭化物を形成し、鋼を強化する上で必須の元素である。C含有量が0.05%以下であると所望の組織分率の微細炭化物を確保することができず、980MPa以上の引張強さが得られなくなる。一方、C含有量が0.13%を超えると、強度が高くなりすぎ、加工性(伸びフランジ性、曲げ加工性)を損なう。したがって、C含有量は0.05%超0.13%以下とする。好ましくは0.07%以上0.11%以下である。
【0032】
Si:0.3%以下
Siは、固溶強化元素であり、鋼の高強度化に有効な元素である。しかしながら、Si含有量が0.3%を超えると、フェライト相からのC析出が促進され、粒界に粗大なFe炭化物が析出し易くなり、伸びフランジ性が低下する。また、Si含有量が過剰になると、鋼板のめっき性にも悪影響を及ぼす。したがって、Si含有量は0.3%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
【0033】
Mn:0.5%以上2.0%以下
Mnは、固溶強化元素であり、鋼の高強度化に有効な元素である。また、鋼のAr3変態点を低下させる元素である。Mn含有量が0.5%未満ではAr3変態点が高くなり、Tiを含む炭化物が十分に微細化されず、固溶強化量も十分でないため980MPa以上の引張強さが得られない。一方、Mn含有量が2.0%を超えると偏析が顕著になり、且つ、フェライト相以外の相、すなわち硬質相が形成され、伸びフランジ性が低下する。したがって、Mn含有量は0.5%以上2.0%以下とする。好ましくは1.0%以上1.8%以下である。
【0034】
P :0.025%以下
Pは、固溶強化元素であり鋼の高強度化に有効な元素であるが、P含有量が0.025%を超えると偏析が顕著になり伸びフランジ性が低下する。したがって、P含有量は0.025%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
【0035】
S :0.005%以下
Sは、熱間加工性(熱間圧延性)を低下させる元素であり、スラブの熱間割れ感受性を高めるほか、鋼中にMnSとして存在して熱延鋼板の加工性(伸びフランジ性)を劣化させる。また、鋼中にTiSを形成し、微細炭化物として析出するTiを減じる。そのため、本発明ではSを極力低減することが好ましく、0.005%以下とする。
【0036】
N :0.0060%以下
Nは、本発明においては有害な元素であり、極力低減することが好ましい。特にN含有量が0.0060%を超えると、鋼中に粗大な窒化物が生成することに起因して、伸びフランジ性が低下する。したがって、N含有量は0.0060%以下とする。
【0037】
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素である。このような効果を得るためには0.001%以上含有することが望ましいが、0.1%を超える含有は、伸びフランジ性を低下させる。このため、Al含有量はAl:0.1%以下とする。
【0038】
Ti:0.07%以上0.18%以下
Tiは、本発明において重要な元素のひとつである。Tiは、Vと複合炭化物を形成することにより、優れた加工性(伸びフランジ性)を確保しつつ鋼板の高強度化に寄与する元素である。Ti含有量が0.07%未満では、所望の熱延鋼板強度を確保することができない。一方、Ti含有量が0.18%を超えると、粗大なTiC(Tiを含む炭化物)が析出し易くなり、鋼板の強度が不安定となる。したがって、Ti含有量は0.07%以上0.18%以下とする。好ましくは0.10%以上0.16%以下である。
【0039】
V :0.13%超0.30%以下
Vは、本発明において重要な元素のひとつである。上記したように、Vは、Tiと複合炭化物を形成することにより、優れた伸びおよび伸びフランジ性を確保しつつ鋼板の高強度化に寄与する元素である。また、Vは、Tiと複合炭化物を形成して本発明鋼板の優れた機械的特性(強度)を安定的に発現させ、鋼板の材質均一性に寄与する極めて重要な元素である。V含有量が0.13%以下では、鋼板の強度、伸びフランジ性や材質均一性に悪影響を及ぼす粗大なTiCが生じ易くなる。一方、V含有量が0.30%超になると、強度が過剰に高くなり、加工性(伸びフランジ性)の低下を招く。したがって、V含有量は0.13%超0.30%以下とする。
【0040】
本発明の熱延鋼板は、TiおよびVを、上記した範囲で且つ(1)式を満足するように含有する。
0.25 < Ti+V ≦ 0.45 … (1)
(Ti、V:各元素の含有量(質量%))
上記(1)式は、鋼板に安定的な強度および加工性(伸びフランジ性、曲げ加工性)を付与するために満足すべき要件である。TiとVの合計含有量が0.25%以下になると、TiおよびVを含む微細炭化物の組織全体に対する体積比を0.0050以上とすることが困難となる。一方、TiとVの合計含有量が0.45%を超えると、鋼板強度が高くなり過ぎて加工性(伸びフランジ性)の低下を招く。そのため、本発明では、TiとVの合計含有量(%)を0.25%超0.45%以下とする。これにより、鋼板中に粗大なTiCが生成し難くなり、TiおよびVを含む微細炭化物が所望の体積比で生成することで、鋼板強度が安定し、加工性(伸びフランジ性、曲げ加工性)も安定化する。
【0041】
固溶V:0.05%以上0.15%未満
固溶Vは、主にフェライト粒界に固溶し、該粒界を強化することで、鋼板の加工性、特に曲げ加工性の向上に極めて有効に作用する。熱延鋼板に含有されるVのうち、固溶Vの含有量が0.05%未満である場合には上記の効果が十分に発現しない。一方、固溶Vの含有量が0.15%以上になると、所望の鋼板強度(引張強さ:980MPa以上)を確保するために必要なTiおよびVを含む微細炭化物が十分に得られなくなる。したがって、熱延鋼板に含有されるVのうち、固溶V量は0.05%以上0.15%未満とする。
【0042】
以上が、本発明における基本組成であるが、上記した基本組成に加えてさらにNb、Moのうちの1種または2種を合計で1%以下含有することができる。NbおよびMoは、TiおよびVとともに複合析出して複合炭化物を形成し、所望の強度を得ることに寄与するため、必要に応じて含有できる。このような効果を得るうえでは、NbおよびMoを合計で0.005%以上含有することが好ましい。しかし、過剰に含有すると伸びが劣化する傾向にあるため、Nb、Moのうちの1種または2種を合計量で1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.5%以下である。
【0043】
また、上記した基本組成に加えてさらに、Cu、Sn、Ni、Ca、Mg、Co、As、Cr、W、B、Pb、Ta、Sbのいずれか1種以上を合計で1%以下含有してもよい。好ましくは0.5%以下である。上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。
【0044】
また、本発明においては、上記の如き組織・組成を有する熱延鋼板の表面に、めっき層を具えてもよい。めっき層の種類は特に限定されず、電気めっき層、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層など、従前公知のものがいずれも適用可能である。
【0045】
次に、本発明の熱延鋼板の製造方法について説明する。
鋼素材に、粗圧延と仕上げ圧延からなる熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とする。この際、仕上げ圧延の仕上げ圧延温度を880℃以上とし、冷却の平均冷却速度を10℃/s以上とし、巻き取りの巻取り温度を550℃以上700℃未満とすることを特徴とする。また、このようにして得られた熱延鋼板にめっき処理を施してもよい。
【0046】
本発明において、鋼素材の溶製方法は特に限定されず、転炉、電気炉等、公知の溶製方法を採用することができる。また、溶製後、偏析等の問題から連続鋳造法によりスラブ(鋼素材)とするのが好ましいが、造塊−分塊圧延法、薄スラブ連鋳法等、公知の鋳造方法でスラブとしても良い。なお、鋳造後にスラブを熱間圧延するにあたり、加熱炉でスラブを再加熱した後に圧延しても良いし、所定温度以上の温度を保持している場合には、スラブを加熱することなく直送圧延しても良い。
【0047】
上記の如く得られた鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延を施すが、本発明においては、粗圧延前に鋼素材中の炭化物を溶解する必要がある。炭化物形成元素であるTiおよびVを含有する本発明においては、鋼素材の加熱温度を1150℃以上1300℃以下とすることが好ましい。先述のとおり、粗圧延前の鋼素材が、所定温度以上の温度を保持しており、鋼素材中の炭化物が溶解している場合には、粗圧延前の鋼素材を加熱する工程は省略可能である。なお、粗圧延条件については特に限定する必要はない。
【0048】
仕上げ圧延温度:880℃以上
仕上げ圧延温度の適正化は、熱延鋼板の伸びフランジ性および曲げ加工性の維持、並びに、仕上げ圧延の圧延荷重の低減化を図るうえで重要となる。仕上げ圧延温度が880℃未満であると、熱延鋼板表層の結晶粒が粗大粒となり、鋼板の加工性(伸びフランジ性、曲げ加工性)が損なわれる。したがって、仕上げ圧延温度は880℃以上とする。好ましくは900℃以上である。なお、仕上げ圧延温度が過剰に高くなると、鋼板表面の二次スケールによる疵が発生し易くなるため、仕上げ圧延温度は1000℃以下とすることが望ましい。
【0049】
平均冷却速度:10℃/s以上
仕上げ圧延終了後、仕上げ圧延温度から巻取り温度までの平均冷却速度が10℃/s未満であると、Ar3変態点が高くなり、TiおよびVを含む炭化物が十分に微細化されない。したがって、上記平均冷却速度は10℃/s以上とする。好ましくは30℃/s以上である。
【0050】
巻取り温度:550℃以上700℃未満
巻取り温度の適正化は、熱延鋼板の組織を、鋼板幅方向全域にわたり所望の組織、すなわち、フェライト相が組織全体に対する面積率で95%以上であるマトリックスと、TiおよびVを含み平均粒子径が10nm未満である微細炭化物が分散析出し、Tiを含み粒子径が30nm以上である炭化物を抑制した組織とするうえで、極めて重要である。
【0051】
巻取り温度が550℃未満であると、TiおよびVを含む微細炭化物が十分に析出しないため、所望の鋼板強度とすることができない。一方、巻取り温度が700℃以上になると、TiおよびVを含む微細炭化物の平均粒子径が大きくなってしまい、やはり所望の鋼板強度とすることができない。したがって、巻取り温度は550℃以上700℃未満とする。好ましくは600℃以上650℃以下である。
【0052】
また、本発明においては、以上のようにして得られた熱延鋼板に対してめっき処理を施し、熱延鋼板の表面にめっき層を形成してもよい。めっき処理の種類は特に限定されず、溶融亜鉛めっき処理、合金化溶融亜鉛めっき処理等のめっき処理を、従前公知の方法に従い施すことができる。
【0053】
以上のように、引張強さが980MPa以上で、断面形状が複雑な自動車部品用等の素材として好適な優れた加工性(伸びフランジ性、曲げ加工性)を有し、しかも均一且つ安定した材質を有する高張力熱延鋼板を製造するうえでは、TiおよびVを含み、平均粒子径が10nm未満である微細炭化物を、鋼板の幅方向全域にわたり分散析出させる必要がある。また、Tiを含み粒子径が30nm以上である炭化物の析出を、鋼板の幅方向全域にわたり抑制する必要がある。
本発明においては、熱延鋼板の素材となる鋼中のTi、V各々の含有量を規定するとともに、これらの合計含有量(Ti+V)を0.25%超0.45%以下に規定しており、Tiを含み粒子径が30nm以上である炭化物の析出が抑制され、平均粒子径が10nm未満である微細炭化物が十分に分散析出するような組成に制御されている。そのため、本発明によると、熱延鋼板を製造するに際し、仕上げ圧延終了後の冷却過程において材質が不安定となり易い鋼板幅方向端部にも、平均粒子径が10nm未満である微細炭化物を十分に分散析出させることが可能となる。すなわち、本発明によると、熱延鋼板の幅方向全域にわたって平均粒子径が10nm未満である微細炭化物を分散析出させることが可能となり、熱延鋼板の幅方向全域にわたり均一且つ良好な特性(引張強さ、伸びフランジ性、曲げ加工性)が付与される。
【実施例】
【0054】
表1に示す組成の溶鋼を通常公知の手法により溶製、連続鋳造して肉厚250mmのスラブ(鋼素材)とした。これらのスラブを、1250℃に加熱後、粗圧延および仕上げ圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却して巻取り、板厚2.3mm、板幅1400mmの熱延鋼板(表2の熱延番号:1〜24)とした。上記仕上げ圧延の仕上げ圧延温度、冷却の平均冷却速度(仕上げ圧延温度から巻取り温度までの平均冷却速度)および巻取り温度は、表2のとおりである。
続いて、上記のようにして得られた熱延鋼板の一部(表2の熱延番号:3,5,15)を、酸洗して表面スケールを除去したのち、焼鈍し(焼鈍温度:680℃、焼鈍温度における保持時間:120s)、溶融亜鉛めっき浴に浸漬し(めっき組成:0.1%Al-Zn、めっき浴温度:480℃)、片面当たり付着量45g/m2の溶融亜鉛めっき皮膜を熱延鋼板の両面に形成して溶融亜鉛めっき鋼板とした。更に、得られた溶融亜鉛めっき鋼板の一部(表2の熱延番号:5)については、合金化処理を行い(合金化温度:520℃)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
上記により得られた熱延鋼板(熱延鋼板、または溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板)から試験片を採取し、組織観察、析出物観察、化学分析、引張試験、穴拡げ試験、曲げ試験を行い、フェライト相の面積率、TiおよびVを含む微細炭化物の平均粒子径および体積比、Tiを含み粒子径30nm以上である炭化物の全炭化物総数に占める個数の割合、固溶V含有量、引張強さ、穴拡げ率(伸びフランジ性)、限界曲げ半径(曲げ加工性)を求めた。試験方法は次のとおりとした。
【0058】
(i)組織観察
得られた熱延鋼板から試験片を採取し、試験片の圧延方向断面を機械的に研磨し、ナイタールで腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率:3000倍にて撮影した組織写真(SEM写真)を用い、画像解析装置によりフェライト相、フェライト相以外の組織の種類、および、それらの面積率を求めた。
【0059】
(ii)析出物観察
得られた熱延鋼板から作製した薄膜を、透過型電子顕微鏡(TEM)によって倍率260000倍で観察し、TiおよびVを含む微細炭化物の平均粒子径と体積比を求めた。
TiおよびVを含む微細炭化物の粒子径は、260000倍での30視野の観察結果をもとに、画像処理で個々の粒子の面積を求め、円近似で粒子径を求めた。求めた各粒子の粒子径を算術平均し、平均粒子径とした。
TiおよびVを含む微細炭化物の体積比は、10%アセチルアセトン−1%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール溶液(AA溶液)を用いて地鉄を電解し、ろ過捕集した残渣の抽出残渣分析によりTiおよびVを含む炭化物の重量を求め、これをTiおよびVを含む炭化物の密度で割ることによって体積を求め、この体積を溶解した地鉄の体積で除することによって求めた。
TiおよびVを含む炭化物の密度はTiCの密度(4.25g/cm3)をTiC結晶のTi原子の一部がV原子で置換されているものとして補正し求めた。すなわち、抽出残渣分析によりTiおよびVを含む炭化物中のTiおよびVを測定し、Tiと置換しているVの割合を求め、TiとVの原子量を考慮して補正した。
【0060】
Tiを含み粒子径が30nm以上である炭化物の全炭化物総数に占める個数の割合(%)は、260000倍での30視野のTEM観察結果をもとに、炭化物の総数N(total)を求めるとともに画像処理で個々の炭化物粒子の面積を測定して円近似で粒子径を算出し、更に粒子径30nm以上である炭化物の個数N(30)を求め、N(30)/N(total)×100(%)により算出した。
【0061】
(iii)化学分析
得られた熱延鋼板から試験片を採取し、電解液中で溶解し、電解液を分析溶液として誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法、ICP質量分析、或いは原子吸収分析法で固溶V量を分析した。
【0062】
(iv)引張試験
得られた熱延鋼板の板幅中央部と1/4幅位置から、圧延方向に対して直角方向を引張方向とするJIS 5号引張試験片(JIS Z 2201)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行い、引張強さ(TS)を測定した。
【0063】
(v)穴拡げ試験
得られた熱延鋼板の板幅中央部と1/4幅位置から、試験片(大きさ:130mm×130mm)を採取し、該試験片にポンチにより初期直径d0:10mmφの穴を打ち抜き加工で形成した。これら試験片を用いて、穴拡げ試験を実施した。該穴に頂角:60°の円錐ポンチを挿入し、該穴を押し広げ、亀裂が鋼板(試験片)を貫通したときの穴の径dを測定し、次式で穴拡げ率λ(%)を算出した。
穴拡げ率λ(%)={(d−d0)/d0}×100
【0064】
(vi)曲げ試験
得られた熱延鋼板の板幅中央部と1/4幅位置から、試験片の長手方向が圧延方向に対して直角になるように幅50mm長さ100mmの曲げ試験片を採取し、JIS Z 2248の規定に準拠したVブロック法(曲げ角:90°)で曲げ試験を実施した。割れが発生しない最小の曲げ半径R(mm)を板厚t(mm)で除した値、R/tを、鋼板の限界曲げ半径として算出した。
得られた結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
本発明例の熱延鋼板は何れも、引張強さ980MPa以上の高強度と、穴拡げ率λ:40%以上、限界曲げ半径:0.9以下の優れた加工性を兼備し、優れた機械的特性を示した。しかも、本発明例の熱延鋼板は何れも、鋼板の板幅中心部(中央部)と1/4幅位置との強度差が15MPa以内、鋼板の板幅中心部(中央部)と1/4幅位置との穴拡げ率差が10%以内、限界曲げ半径差が0.15以下となり、機械的特性の安定性および材質均一性を示した。
一方、本発明の範囲を外れた比較例の熱延鋼板は、所望の引張強さ、或いは穴拡げ率、限界曲げ半径が得られていないか、鋼板幅方向での材質差が大きくなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C :0.05%超0.13%以下、 Si:0.3%以下、
Mn:0.5%以上2.0%以下、 P :0.025%以下、
S :0.005%以下、 N :0.0060%以下、
Al:0.1%以下、 Ti:0.07%以上0.18%以下、
V :0.13%超0.30%以下
を、TiおよびVが下記(1)式を満足するように含有し、且つ、固溶V:0.05%以上0.15%未満であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相の組織全体に対する面積率が95%以上であるマトリックスと、TiおよびVを含み平均粒子径が10nm未満である微細炭化物が分散析出し、該微細炭化物の組織全体に対する体積比が0.0050以上であり、Tiを含み粒子径が30nm以上である炭化物の全炭化物総数に占める個数の割合が10%未満である組織とを有し、引張強さが980MPa以上であることを特徴とする、強度と加工性の均一性に優れた高張力熱延鋼板。

0.25 < Ti+V ≦ 0.45 … (1)
(Ti、V:各元素の含有量(質量%))
【請求項2】
前記組成に加えてさらに、質量%でNb、Moのうちの1種または2種を合計で1%以下含有することを特徴とする、請求項1に記載の高張力熱延鋼板。
【請求項3】
前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu、Sn、Ni、Ca、Mg、Co、As、Cr、W、B、Pb、Ta、Sbのいずれか1種以上を合計で1%以下含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の高張力熱延鋼板。
【請求項4】
表面にめっき層を具えることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の高張力熱延鋼板。
【請求項5】
鋼素材に、粗圧延と仕上げ圧延からなる熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とするにあたり、
前記鋼素材を、質量%で、
C :0.05%超0.13%以下、 Si:0.3%以下、
Mn:0.5%以上2.0%以下、 P :0.025%以下、
S :0.005%以下、 N :0.0060%以下、
Al:0.1%以下、 Ti:0.07%以上0.18%以下、
V :0.13%超0.30%以下
を、TiおよびVが下記(1)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、前記仕上げ圧延の仕上げ圧延温度を880℃以上とし、前記冷却の平均冷却速度を10℃/s以上とし、前記巻き取りの巻取り温度を550℃以上700℃未満とすることを特徴とする、引張強さが980MPa以上であり、強度と加工性の均一性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法。

0.25 < Ti+V ≦ 0.45… (1)
(Ti、V:各元素の含有量(質量%))
【請求項6】
前記組成に加えてさらに、質量%でNb、Moのうちの1種または2種を合計で1%以下含有することを特徴とする、請求項5に記載の高張力熱延鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu、Sn、Ni、Ca、Mg、Co、As、Cr、W、B、Pb、Ta、Sbのいずれか1種以上を合計で1%以下含有することを特徴とする、請求項5または6に記載の高張力熱延鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2013−100572(P2013−100572A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244269(P2011−244269)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】