説明

強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法、異方性磁石、ボンド磁石及び圧粉磁石

【課題】 本発明は、特に微粒子の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法において、金属ハイドライド、金属ハライド、金属ボロハイドライドから選ばれる少なくとも1種以上の化合物と鉄化合物とを混合し、熱処理して得られる金属鉄と窒素含有化合物とを混合し、次いで、熱処理することを特徴とする強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法であり、該製造方法によって得られた強磁性窒化鉄粒子粉末を用いた異方性磁石、ボンド磁石及び圧粉磁石である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に微粒子の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在、ハイブリッド自動車や電気自動車、エアコンや洗濯機などの家電など身近ながらパワー・トルクが必要なモーター用の磁石としてNd−Fe−B系磁性粉末・成形体が用いられている。しかしながら、Nd−Fe−B系磁石材料としての磁石としての理論限界は目前である。
【0003】
さらに、格安の原料コストやアイソトープ元素含有率の低さなどに魅了され希土類元素原料の輸入は中国に大きく偏っており、いわゆる“中国リスク”として大きな問題になっている。そのため、レアアースを含まないFe16などのFe−N系の化合物が注目されている。
【0004】
Fe−N系の化合物のうちα”−Fe16は窒素を固溶するマルテンサイトやフェライトを長時間アニールした場合に晶出する準安定化合物として知られている。このα”−Fe16の結晶はbct構造であり、大きな飽和磁化を持つ巨大磁気物質として期待されている。しかしながら、準安定化合物といわれるように、この化合物を単離した粉末として化学的に合成された報告は極めて少ない。
【0005】
これまで、α”−Fe16単相を得るために、蒸着法、MBE法(分子線エピタキシー法)、イオン注入法、スパッタ法、アンモニア窒化法などの様々な方法が試みられた。しかし、より安定なγ‘−FeNやε−Fe2〜3Nの生成とともに、マルテンサイト(α’−Fe)やフェライト(α−Fe)様金属の共晶が起き、α”−Fe16単一化合物を単離して製造することに困難を伴う。一部、α”−Fe16単一化合物を薄膜として得ているが、薄膜では磁性材料への適用に限界があり、より幅の広い用途展開には不向きである。
【0006】
α”−Fe16に関する既存技術として、下記技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−340023号公報
【特許文献2】特開2000−277311号公報
【特許文献3】特開2009−84115号公報
【特許文献4】特開2008−108943号公報
【特許文献5】特開2008−103510号公報
【特許文献6】特開2007−335592号公報
【特許文献7】特開2007−258427号公報
【特許文献8】特開2007−134614号公報
【特許文献9】特開2007−36027号公報
【特許文献10】特開2009−249682号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.Takahashi,H.Shoji,H.Takahashi,H.Nashi,T.Wakiyama,M.Doi,and M.Matsui, J.Appl.Phys., Vol.76, pp.6642−6647,1994.
【非特許文献2】Y.Takahashi,M.Katou,H.Shoji,and M.Takahashi, J.Magn.Magn.Mater., Vol.232, p.18−26, 2001.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1〜11及び非特許文献1及び2記載の技術では、未だ十分とは言い難いものである。
【0010】
即ち、特許文献1には、表面酸化被膜が存在する鉄粒子を還元処理した後、窒化処理してFe16を得ることが記載されているが、最大エネルギー積を高くすることは考慮されていない。また、窒化反応が長時間にわたるものであり、工業的とは言い難い。
【0011】
また、特許文献2には、酸化鉄粉末を還元処理して金属鉄粉末を生成し、得られた金属鉄粉末を窒化処理してFe16を得ることが記載されているが、磁気記録媒体用磁性粒子粉末として用いられるものであり、高い最大エネルギー積BHmaxを有すべく硬磁性材料として好適とは言い難いものである。
【0012】
また、特許文献3〜9では、フェライトに変わる磁気記録材料用の極大磁気物質として記載されているが、α”−Fe16単相は得られておらず、より安定なγ‘−FeNやε−Fe2〜3N、マルテンサイト(α’−Fe)やフェライト(α−Fe)様金属が混相として生成している。
【0013】
また、特許文献10では、添加元素が必須としながらも、その必要性について細かく議論されておらず、且つ、得られる生成物の磁気特性について、高い最大エネルギー積BHmaxを有すべく硬磁性材料として好適とは言い難いものである。
【0014】
非特許文献1〜2には、薄膜でのα”−Fe16単相を得ることに成功しているが、薄膜では適用に限界があり、より幅の広い用途展開には不向きである。また、汎用の磁性材料とするには生産性や経済性に問題がある。
【0015】
そこで、本発明では、特に微粒子の強磁性窒化鉄(Fe16)粒子粉末、該強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下の本発明によって解決することができる。
【0017】
即ち、本発明は、強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法において、平均粒子長軸長が5〜300nmの金属鉄と窒素含有化合物とを混合し、次いで、熱処理することを特徴とする強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法である(本発明1)。
【0018】
本発明は、本発明1記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法において、金属鉄として、金属ハイドライド、金属ハライド、金属ボロハイドライドから選ばれる少なくとも1種以上の化合物と鉄化合物とを混合し、次いで、熱処理して得られる金属鉄を用いた強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法である(本発明2)。
【0019】
本発明は、本発明1又は2記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法において、金属鉄として、20nm以下の厚みでシリカ被覆されている金属鉄を用いた強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法である(本発明3)。
【0020】
本発明は、本発明1〜3のいずれかに記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法によって得られた強磁性窒化鉄粒子粉末からなる異方性磁石である(本発明4)。
【0021】
本発明は、本発明1〜3のいずれかに記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法によって得られた強磁性窒化鉄粒子粉末を含有するボンド磁石である(本発明5)。
【0022】
本発明は、本発明1〜3のいずれかに記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法によって得られた強磁性窒化鉄粒子粉末を含有する圧粉磁石である(本発明6)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法は、容易に強磁性窒化鉄粒子粉末、特に微粒子の強磁性窒化鉄粒子粉末を得ることができるので、強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、平均粒子長軸長が5〜300nmの金属鉄と窒素含有化合物とを混合し、次いで、熱処理して強磁性窒化鉄粒子粉末を得るものである。
【0025】
まず、本発明に用いる金属鉄について述べる。
【0026】
本発明における金属鉄原料は、平均粒子長軸長が5〜300nmである。5nm未満の金属鉄では粒子表面界面に接する鉄原子が多く存在するため、強磁性窒化鉄粒子粉末としても、大きな磁化は期待できない。平均粒子長軸長が300nmを超えると窒化が進みにくく、金属鉄やFeNなどが混在するようになる。好ましい平均粒子長軸長は5〜275nm、より好ましくは6〜265nmである。
【0027】
本発明に係る強磁性窒化鉄粒子粉末を得るための金属鉄原料は、ポリオール法、IBM法、ミセル/逆ミセル法、沈澱法などを用いて製造することができ、特に限定はされない。また、鉄化合物を水素等にて還元して得てもよい。
【0028】
例えば、本発明における金属鉄原料は、金属ハイドライド、金属ハライド、金属ボロハイドライドから選ばれる少なくとも1種以上の化合物(還元剤)と鉄化合物とを混合し、熱処理することで得られる。これら還元剤の具体的な例としては、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、カルシウムハイドライド、マグネシウムハイドライド、ナトリウムハイドライド、カリウムハイドライド、リチウムハイドライド、チタンハイドライド、ジルコニウムハイドライドなどの金属ハイドライド、マグネシウムボロハイドライド、ナトリウムボロハイドライドなどの金属ハライド、又は、イソプロピルマグネシウムハライド、ガリウムハライド、インジウムハライド、スズハライド、亜鉛ハライド、カドニウムハライド、銅ハライド、ニッケルハライド、マンガンハライド、ナトリウムアルミニウムハイドライドなどの金属ボロハイドライドが挙げられる。これら還元剤は一種類で使用してもよく、また二種類以上を合わせて使用してもよい。二種類以上の還元剤を使用する際の比率は特に限定されない。
【0029】
上記鉄化合物としては、α−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOH、α−Fe、β−Fe、Fe、γ−Fe、シュウ酸鉄、酢酸鉄、硝酸鉄など特に限定されない。また、異種類で使用してもよく、二種類以上を合わせて使用してもよい。二種類以上を用いる場合の各化合物の比率は特に限定されない。形状は特に限定されないが、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、六面体状、八面体状などいずれでもよい。
【0030】
オキシ水酸化鉄を用いる場合は、必要により、脱水処理を行う場合、脱水処理の温度は80〜350℃が好ましい。80℃未満では脱水はほとんど進行しない。350℃を超える場合、次の還元処理において、低温で金属鉄粒子粉末を得ることが難しくなる。より好ましい脱水処理温度は85〜300℃である。
【0031】
還元剤は粉末として金属鉄粒子粉末と乾式混合されている状態がよく、予め乳鉢などで金属鉄粒子粉末と還元剤とを粉砕・混合することが好ましい。
【0032】
また、特に還元剤に水成分が含まれている場合や水分の吸着が激しい場合には、予め乾燥やプレ熱処理することが好ましい。
【0033】
金属鉄粒子粉末と還元剤との混合比率は特に限定されないが、金属鉄粒子粉末に対する重量比で0.5〜20、好ましくは、0.8〜10である。
【0034】
還元剤の純度は特に限定されない。還元剤の有効性とコストを考え合わせると、例えば、50〜99%、好ましくは60〜96%である。
【0035】
金属鉄粒子粉末と還元剤との混合物を熱処理する方法としては、静置式、流動式のどちらでもよく、密閉容器内で行うことが好ましい。研究室レベルであれば例えばガラス管に金属鉄粒子粉末と還元剤との混合物を封入させる手法が考えられる。また、パイロットスケールであれば、金属管に金属鉄粒子粉末と還元剤との混合物を封入させ流動させながら熱処理する方法もある。
【0036】
金属鉄粒子粉末と還元剤との混合物の熱処理温度は50〜280℃である。熱処理温度は還元剤の種類や添加量、金属化合物が個々に持つ還元温度によって決めればよく、好ましくは80〜275℃、より好ましくは100℃〜250℃である。また、熱処理の時間は、好ましくは0.5h〜7day、より好ましくは、1h〜3dayである。
【0037】
本発明における金属鉄は、シリカによって被覆されていてもよい。シリカ被覆厚は20nm以下である。好ましくは、17nm以下である。
【0038】
本発明に用いる窒素含有化合物は、尿素、アンモニア水、塩化アンモニウム、硝酸、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ピペラジン、アニリン、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムアミドなどの固体又は液体であり、特に限定されない。これら窒素含有化合物は一種類で使用してもよく、また二種類以上を合わせて使用してもよい。二種類以上の窒素含有化合物を使用する際の比率は特に限定されない。
【0039】
本発明に係る強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法は、平均粒子長軸長が5〜300nmの金属鉄と窒素含有化合物とを200℃以下で熱処理し、その後洗浄する工程を経るものである。
【0040】
金属鉄と窒素含有化合物との混合物の熱処理温度が200℃を超えるとFeNなどの別の相と混在するようになる。好ましくは100〜200℃、より好ましくは100〜190℃である。処理時間は特に限定されないが、好ましくは3〜120h、より好ましくは3〜100hである。
【0041】
洗浄は特に限定されないが、脱水したエタノールやメタノールなどを用いるとよい。洗浄溶媒量は特に限定されないが、強磁性窒化鉄粒子粉末1gに対して100ml以上使用すればよい。洗浄方法は特に限定されないが、ヌッチェ、プレスフィルター、ガラスフィルター、遠心分離器を利用した洗浄法などを利用すればよい。乾燥は、自然乾燥、真空乾燥、(真空)凍結乾燥、エバポレータなど適宜利用すればよい。
【0042】
本発明に係る製造方法によって得られた強磁性窒化鉄粒子粉末の平均長軸長が5〜300nmである。形状は特に限定されないが、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、六面体状、八面体状いずれでもよい。ここで、平均長軸長とは、一次粒子の形状に由来する長手側の長さを表し、球状では直径を意味する。必要な平均長軸長はその用途によって適宜選択することができる。
【0043】
本発明に係る強磁性窒化鉄粒子粉末は、シリカによって被覆されていてもよい。シリカ被覆厚は20nm以下である。好ましくは、17nm以下である。
【0044】
本発明の製造方法によって得られた強磁性窒化鉄粒子粉末について述べる。
【0045】
本発明で得られた強磁性窒化鉄粒子粉末は、メスバウアースペクトルデータよりFe16化合物相が80%以上で構成されることが好ましい。メスバウアーでは、Fe16が生成される場合、内部磁場が330kOe以上の鉄サイトのピークが確認され、特に特徴的なのは、395kOe近傍のピークが現れることである。
一般には他相が多いと、ソフト磁石としての特性が強く表れてしまうために、強磁性ハード磁石材料としては不向きとなる。しかしながら、本発明では、強磁性ハード磁石材料として十分な特性を発揮できる。
【0046】
強磁性窒化鉄粒子粉末は、粒子コアはFe16であり粒子外殻にFeOが存在するものであり、粒子のコアより外殻に向けFe16/FeOというシンプルな構造から構成されることが好ましい。Fe16とFeOはトポタクティックに接合しており、結晶学的に連続していることが好ましい。この外殻の酸化膜にはFeやFe、α−Feが含まれていてもよい。Fe16粒子が低純度であるとこれらの不純物が含まれることもあるが、高純度化によりFeOのみとなる。FeO膜厚は5nm以下であり、好ましくは4nm以下である。Fe16の高純度化に伴い、このFeO膜厚は薄くなる。FeO膜厚は、特に限定されないが、薄ければ薄いほど粒子に含まれるFe16体積分率が向上するため望ましい。FeO膜厚の下限値は特に限定されないが0.5nm程度である。
【0047】
本発明で得られた強磁性窒化鉄粒子粉末表面のFeOの体積分率は、FeO体積/粒子全体体積において、25%以下であることが好ましい。Fe16を高純度化することでFeOの体積分率は減少する。より好ましいFeOの体積分率は23%以下であり、更に好ましくは3〜20%である。
【0048】
本発明で得られた強磁性窒化鉄粒子粉末は、保磁力Hが1.5kOe以上、5Kでの飽和磁化σは150emu/g以上であることが好ましい。飽和磁化値σ及び保磁力Hが前記範囲未満の場合、硬磁性材料として磁気特性が十分とは言い難い。より好ましくは保磁力Hが1.6kOe以上、飽和磁化値σが180emu/g以上である。
【0049】
本発明で得られた強磁性窒化鉄粒子粉末は、格子定数より求められる窒化率が8〜13mol%であることが好ましい。Fe16という化学組成式より求められる11.1mol%が最適である。より好ましい窒化率は8.5〜12.5mol%、更により好ましくは9.0〜12mol%である。
【0050】
本発明で得られた強磁性窒化鉄粒子粉末のBET比表面積は5.0〜40m/gであることが好ましい。BET比表面積が5m/g未満では窒化率が低くなり、結果としてFe16の生成率が低下し、所望の保磁力や飽和磁化が得られない。40m/gを超えると、所望とする飽和磁化値が得られない。より好ましいBET比表面積は5.5〜38m/g、更により好ましくは6.0〜35m/gである。
【0051】
次に、本発明に係る異方性磁石について述べる。
【0052】
本発明に係る異方性磁石の磁気特性は目的とする用途に応じて所望の磁気特性(保磁力、残留磁束密度、最大エネルギー積)となるように調整すればよい。
【0053】
磁気的な配向をさせる方法は特に限定されない。例えばガラス転移温度以上温度においてEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合)樹脂にメスバウアースペクトルよりFe16化合物相が80%以上で構成される強磁性窒化鉄粒子粉末を分散剤などとともに混練して成形し、ガラス転移温度を超えた付近の温度で所望の外部磁場をかけて、磁気的配向を促せばよい。または、ウレタン等の樹脂と有機溶剤と該強磁性窒化鉄粒子粉末をペイントシェーカーなどで強く混合・粉砕したインクをブレードやRoll−to−Roll法によって樹脂フィルムに塗布印刷し、素早く磁場中を通して、磁気的な配向をさせればよい。また、RIP(Resin Isostatic Pressing)を用いて、より高密度に、且つ、結晶磁気異方性を最大限に活かした磁気配向を行ってもよい。強磁性窒化鉄粒子粉末に予めシリカやアルミナ、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモンなどの絶縁被覆を行ってもよい。絶縁被覆の方法は特に限定されることなく、溶液中で粒子表面電位を制御することで吸着させる方法や、CVDなどで蒸着してもよい。
【0054】
次に、本発明におけるボンド磁石用樹脂組成物について述べる。
【0055】
本発明におけるボンド磁石用樹脂組成物は、本発明に係る強磁性窒化鉄粒子粉末を結合剤樹脂中に分散してなるものであって、該強磁性窒化鉄粒子粉末を85〜99重量%含有し、残部が結合剤樹脂とその他添加剤とからなる。
【0056】
強磁性窒化鉄粒子粉末に予めシリカやアルミナ、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモンなどの絶縁被覆を行ってもよい。絶縁被覆の方法は特に限定されることなく、溶液中で粒子表面電位を制御することで吸着させる方法や、CVDなどで蒸着してもよい。
【0057】
前記結合剤樹脂としては、成形法によって種々選択することができ、射出成形、押し出し成形及びカレンダー成形の場合には熱可塑性樹脂が使用でき、圧縮成形の場合には、熱硬化性樹脂が使用できる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン(PA)系、ポリプロピレン(PP)系、エチレンビニルアセテート(EVA)系、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系、液晶樹脂(LCP)系、エラストマー系、ゴム系等の樹脂が使用でき、前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、フェノール系等の樹脂を使用することができる。
【0058】
なお、ボンド磁石用樹脂組成物を製造するに際して、成形を容易にしたり、磁気特性を十分に引き出したりするために、必要により、結合剤樹脂の他に可塑剤、滑剤、カップリング剤など周知の添加物を使用してもよい。また、フェライト磁石粉末などの他種の磁石粉末を混合することもできる。
【0059】
これらの添加物は、目的に応じて適切なものを選択すればよく、可塑剤としては、それぞれの使用樹脂に応じた市販品を使用することができ、その合計量は使用する結合剤樹脂に対して0.01〜5.0重量%程度が使用できる。
【0060】
前記滑剤としては、ステアリン酸とその誘導体、無機滑剤、オイル系等が使用でき、ボンド磁石全体に対して0.01〜1.0重量%程度が使用できる。
【0061】
前記カップリング剤としては、使用樹脂とフィラーに応じた市販品が使用でき、使用する結合剤樹脂に対して0.01〜3.0重量%程度が使用できる。
【0062】
本発明におけるボンド磁石用樹脂組成物は、強磁性窒化鉄粒子粉末を結合剤樹脂と混合、混練してボンド磁石用樹脂組成物を得る。
【0063】
前記混合は、ヘンシェルミキサー、V字ミキサー、ナウター等の混合機などで行うことができ、混練は一軸混練機、二軸混練機、臼型混練機、押し出し混練機などで行うことができる。
【0064】
次に、本発明に係るボンド磁石について述べる。
【0065】
ボンド磁石の磁気特性は目的とする用途に応じて所望の磁気特性(保磁力、残留磁束密度、最大エネルギー積)となるように調整すればよい。
【0066】
本発明におけるボンド磁石は、前記ボンド磁石用樹脂組成物を用いて、射出成形、押出成形、圧縮成形又はカレンダー成形等の周知の成形法で成形加工した後、常法に従って電磁石着磁やパルス着磁することにより、ボンド磁石とすることができる。
【0067】
次に、本発明における焼結磁石について述べる。
【0068】
本発明における焼結磁石は、強磁性窒化鉄粒子粉末を圧縮成形及び熱処理すればよい。磁場や圧縮成形の条件は、特に限定されず、作製する圧粉磁石の要求値になるよう調整すればよい。例えば、磁場は1〜15T、圧縮成形圧力は1.5〜15ton/cmが挙げられる。成形機器は特に限定されないが、CIPやRIPを用いてもよい。成形体の形状や大きさは用途に合わせて選択すればよい。
【0069】
強磁性窒化鉄粒子粉末に予めシリカやアルミナ、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモンなどの絶縁被覆を行ってもよい。絶縁被覆の方法は特に限定されることなく、溶液中で粒子表面電位を制御することで吸着させる方法や、CVDなどで蒸着してもよい。
【0070】
滑剤としては、ステアリン酸とその誘導体、無機滑剤、オイル系等が使用でき、ボンド磁石全体に対して0.01〜1.0重量%程度を使用してもよい。
【0071】
結着剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、PPS、液晶ポリマー、PEEK、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフタールアミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂あるいはこれらの混合物をボンド磁石全体に対して0.01〜5.0重量%程度を使用してよい。
【0072】
熱処理は連続炉やRF高周波炉など適宜選べばよい。熱処理条件は特に限定されない。
【0073】
次に、本発明に係る圧粉磁石について述べる。
【0074】
本発明に係る圧粉磁石は、得られた強磁性窒化鉄粒子粉末を磁場中で圧縮成形すればよい。磁場や圧縮成形の条件は、特に限定されず、作製する圧粉磁石の要求値になるよう調整すればよい。例えば、磁場は1.0〜15T、圧縮成形圧力は1.5〜15ton/cmが挙げられる。成形機器は特に限定されないが、CIPやRIPを用いてもよい。成形体の形状や大きさは用途に合わせて選択すればよい。
【0075】
強磁性窒化鉄粒子粉末に予めシリカやアルミナ、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモンなどの絶縁被覆を行ってもよい。絶縁被覆の方法は特に限定されることなく、溶液中で粒子表面電位を制御することで吸着させる方法や、CVDなどで蒸着してもよい。
【0076】
滑剤としては、ステアリン酸とその誘導体、無機滑剤、オイル系等が使用でき、ボンド磁石全体に対して0.01〜1.0重量%程度を使用してもよい。
【0077】
結着剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、PPS、液晶ポリマー、PEEK、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフタールアミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂あるいはこれらの混合物をボンド磁石全体に対して0.01〜5.0重量%程度を使用してよい。
【実施例】
【0078】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0079】
試料の比表面積値は、窒素によるB.E.T.法により測定した。
【0080】
鉄化合物、金属鉄、強磁性窒化鉄粒子のサイズは透過型電子顕微鏡(日本電子(株)、JEM−1200EXII)を用いて測定した。粒子120個をランダマイズに選び粒子サイズを計測して平均値を求めた。
【0081】
出発原料及び得られた強磁性窒化鉄粒子粉末の構成相は、粉末X線回折装置(XRD、(株)BRUKER製、D8 ADVANCE)による同定と、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)、JEM−2000EX)、電子線分光型超高分解能電子顕微鏡(HREM、日立ハイテク、HF−2000)を用いた電子線回折(ED)を行い決定した。XRD測定は、グローブボックス中で強磁性窒化鉄粒子粉末をシリコングリースに混ぜた試料の測定を行った。
【0082】
得られた強磁性窒化鉄粒子粉末の磁気特性は、物理特性測定システム(PPMS+VSM、日本カンタム・デザイン(株))を用いて室温(300K)にて、0〜9Tの磁場中で測定した。別に5K〜300Kまでの磁化率の温度依存性の評価も行った。
【0083】
実施例1
<金属鉄の調整>
撹拌子で撹拌している180℃のオレイルアミン(金属鉄重量比10倍)を添加したケロシン溶媒 50mlに、ペンタカルボニル鉄ガスを30ml/minにて10分間流入させ、1h保持することで、平均粒子長軸長(=直径)9.7nmの球状金属鉄粒子を得た。これをグローブボックス中で遠心分離後、メタノール洗浄して金属鉄のペーストを得た。
【0084】
<シリカ被覆>
次に、脱水したシクロヘキサン(試薬)48.75g、TEOS(テトラエトキシシラン、試薬)0.4gの溶媒に、この金属鉄固形分15mg相当のペースト、Igepal CO−520(試薬)3.65gを入れ、よくかき混ぜた。続いて、0.525mlの28wt%アンモニア水(試薬)を添加し、室温(25℃)にて28hスターラー撹拌を行った。その後、グローブボックス中で遠心分離後、メタノール洗浄した。得られた試料はXRDで金属鉄であり、シリカ被覆厚は13nmであった。
【0085】
<強磁性窒化鉄粒子粉末の調整>
上記のシリカ被覆した金属鉄粒子0.8gと塩化アンモニウム2.5g、ナトリウムアミド2.5gを、グルーブボックス中でめのう乳鉢にて軽く混合し、ガラス管に真空封入した。続いて、電気炉にこれを入れ、130℃にて48hの熱処理を行い、急冷して取り出した。再びグローブボックスに入れ、ガラス管より試料を取り出して、メタノール洗浄・遠心分離器での処理を十分行い不純物を除去した。
【0086】
<得られた試料の分析・評価>
得られた試料はXRDより強磁性窒化鉄Fe16単相であった。強磁性窒化鉄粒子の平均粒子長軸長(=直径)は9.7nmであり、シリカ被覆厚は13nmであった。また、強磁性窒化鉄部分の5Kでの飽和磁化は磁場14.5kOeにて214emu/gであった。
【0087】
実施例2
四ツ口セパラブルフラスコにアルゴンガスを500ml/minにて流通させながら、エチレングリコール0.25L、粒状苛性ソーダ7.2g、オレイルアミン0.67g、鉄アセチルアセトナト6.39g、白金アセチルアセトナト0.15gを入れ、撹拌しながら125℃まで昇温した。1h保持した後、185℃まで昇温して、2.5h保持した。その後、室温まで冷却した。分液ロートに脱水ヘキサン250mlを用意して、これに反応させた試料を移した。外部より超音波をあてながらよく振ることで、生成したナノ粒子がエチレングリコールからヘキサン溶媒に移るようにした。ナノ粒子の移ったヘキサンを50mlのビーカーに移し、ドラフト内で自然乾燥した。得られたナノ粒子粉末はγ−Feであり、平均粒子長軸長16nmのほぼ球状粒子であった。
【0088】
次にこのγ−Fe5gとカルシウムハイドライド(試薬)85gを軽く混合した後、真空引きできるステンレス製容器に入れて真空にした。これを電気炉にて200℃で25h熱処理し、グローブボックスへ移した。メタノールで不純物を十分洗浄し、乾燥して金属鉄粉末を得た。
【0089】
この金属鉄粉末0.8gと塩化アンモニウム3.5g、ナトリウムアミド1.0g、尿素0.5gを、グローブボックス中でめのう乳鉢にて軽く混合し、ガラス管に真空封入した。続いて、電気炉にこれを入れ、135℃にて30hの熱処理を行い、急冷して取り出した。再びグローブボックスに入れ、ガラス管より試料を取り出して、メタノール洗浄・遠心分離器での処理を十分行い不純物を除去した。
【0090】
得られた試料はXRDより強磁性窒化鉄Fe16単相であった。強磁性窒化鉄粒子の平均粒子長軸長(=直径)は13nmであった。また、強磁性窒化鉄粒子粉末の5Kでの飽和磁化は磁場14.5kOeにて206emu/gであった。
【0091】
実施例3
塩化第二鉄6水塩27.05gをビーカーに秤取り純水で500mlとした。これに尿素2.12gを加えて、室温で30min撹拌した。次にこの溶液を閉鎖系の圧力耐性容器に移して撹拌翼にて200rpmで撹拌子ながら85℃にて3.5h反応した。これをヌッチェで濾別分離し、試料1gに対して純水30ml相当の純水でよく洗浄した。得られた試料は、平均粒子長軸長130nmの針状アカガナイトであった。40℃で1晩乾燥させ、水素気流中で282℃にて2h還元し、グローブボックス中に取り出した。得られた試料は平均長軸長123nmのα−Fe単相であった。
【0092】
この金属鉄粉末2gと塩化アンモニウム5.0g、ナトリウムアミド1.0gをグローブボックス中で軽く混合し、ガラス管に真空封入した。続いて、電気炉にこれを入れ、145℃にて18hの熱処理を行い、急冷して取り出した。再びグローブボックスに入れ、ガラス管より試料を取り出して、メタノール洗浄・遠心分離器での処理を十分行い不純物を除去した。
【0093】
得られた試料はXRDより強磁性窒化鉄Fe16単相であった。強磁性窒化鉄粒子の平均粒子長軸長は123nmであった。また、強磁性窒化鉄粒子粉末の5Kでの飽和磁化は磁場14.5kOeにて218emu/gであった。
【0094】
比較例
塩化第一鉄4水塩180gを2Lの純水に溶解させて22℃とした。空気を10L/min流通させて10分後に11.16gの苛性ソーダを溶かした209mlの水溶液を20分かけてゆっくりと加え、pHは7.0であった。1時間後、pH6.7となった反応溶液の100mlを300mlガラスビーカーに移し、室温にて、撹拌子を300rpmで回転させ24h反応した。これをヌッチェで濾別分離し、試料5gに対して純水200ml相当の純水でよく洗浄した。
【0095】
得られた試料は、平均粒子長軸長2700nm、アスペクト比45.0、比表面積83.2m/gの針状レピドクロサイト粒子であった。120℃で1晩乾燥させ、続けて350℃で1hの熱処理を行った。瑪瑙乳鉢を用いたライカイ機で1h粉砕した。さらに振動篩で180μm以下の凝集粒子のみを抽出した。
【0096】
続いて、還元処理を水素気流中で260℃にて3h行った。さらに窒素ガスと水素ガスの混合モル比が3:1の混合ガスを全量で10L/min流しながら、148℃で9h窒化処理を行った。その後、アルゴンガスを流通させて室温まで降温し、アルゴンガス供給を止めて、窒素置換を3hかけて行った。次いで、直結しているグローブボックスに試料を取り出た。
【0097】
得られた粒子粉末はXRDよりα−Fe金属だけで、強磁性窒化鉄の生成は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法において、平均粒子長軸長が5〜300nmの金属鉄と窒素含有化合物とを混合し、次いで、熱処理することを特徴とする強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法において、金属鉄として、金属ハイドライド、金属ハライド、金属ボロハイドライドから選ばれる少なくとも1種以上の化合物と鉄化合物とを混合し、次いで、熱処理して得られる金属鉄を用いた強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法において、金属鉄として、20nm以下の厚みでシリカ被覆されている金属鉄を用いた強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法によって得られた強磁性窒化鉄粒子粉末からなる異方性磁石。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法によって得られた強磁性窒化鉄粒子粉末を含有するボンド磁石。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の強磁性窒化鉄粒子粉末の製造方法によって得られた強磁性窒化鉄粒子粉末を含有する圧粉磁石。

【公開番号】特開2013−69926(P2013−69926A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208189(P2011−208189)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】