強磁性絶縁電線及びワイヤーハーネス
【課題】電線をテープ巻等の結束材を使用せずに束ねることが可能であり、クランプ等の他の部材なしに車両等への取り付けが可能である絶縁電線及びワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】絶縁体3が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなり、磁石化した強磁性絶縁電線11を用いて、該強磁性体絶縁電線11自身の磁力により、複数本の強磁性絶縁電線11を束ねてワイヤーハーネス10を構成した。
【解決手段】絶縁体3が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなり、磁石化した強磁性絶縁電線11を用いて、該強磁性体絶縁電線11自身の磁力により、複数本の強磁性絶縁電線11を束ねてワイヤーハーネス10を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強磁性絶縁電線及びワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に用いられるワイヤーハーネス100は、図10に示すように、複数の電線101を組み合わせて、電線101を束ねて構成されている。このワイヤーハーネス100に用いられる電線101は、一般に、銅線やアルミニウム等の導体102の周囲が、樹脂皮膜等の絶縁体103により被覆されているものである。
【0003】
上記ワイヤーハーネス100の電線を束ねるためには、例えばテープ等の結束材104を用いて、電線101の周囲を巻まわしている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
またワイヤーハーネス100を車両等の所定の位置に組み付ける場合、図11(a)に示すように、クランプ110等の取り付け部材を使用してワイヤーハーネス100を車両111に固定している(例えば特許文献2参照)。
【0005】
またワイヤーハーネス100は、図11(b)に示すように、ホットメルト接着剤112を使用して、車両111に接着して固定する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−217357号公報
【特許文献2】特開平10−201058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、ワイヤーハーネス100を製造する場合、製造工程では電線を束ねるために、テープ等の結束材(拘束部材ということもある)104が必要となる。また、ワイヤーハーネス製造工程では、テープ等を巻く作業が必要であり、作業に手間がかかるという問題があった。
【0008】
また従来、ワイヤーハーネス100を車両111に組み付ける工程では、クランプ110やホットメルト接着剤112等の、ワイヤーハーネス100以外の取り付け部材が必要となる。また、クランプ110を使用する場合は、クランプ110の車両111等への取り付け作業が必要であり、取り付けに手間がかかるという問題があった。また、ホットメルト接着剤112を使用する場合は、ホットメルト接着剤を塗る作業が必要であり、作業に手間がかかり、ホットメルト接着剤塗布装置等が必要となるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、電線をテープ巻等の結束材を使用せずに束ねることが可能であり、クランプ等の他の部材なしに車両等への取り付けが可能である絶縁電線及びワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の強磁性絶縁電線は、少なくとも絶縁体が強磁性体からなることを要旨とするものである。
【0011】
上記強磁性絶縁電線において、前記強磁性体が、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料を用いることができる。
【0012】
上記強磁性絶縁電線において、前記強磁性体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石を用いることができる。
【0013】
上記強磁性絶縁電線は、前記絶縁体が、樹脂又はゴムからなるバインダー中に強磁性体の粉末が分散されているものを用いることができる。
【0014】
本発明のワイヤーハーネスは、少なくとも絶縁体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなる強磁性絶縁電線を用いて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであることを要旨とするものである。
【0015】
上記ワイヤーハーネスにおいて、少なくとも絶縁体が、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料からなる強磁性絶縁電線を、前記永久磁石からなる強磁性絶縁電線と組み合わせて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであるように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の強磁性絶縁電線は、少なくとも絶縁体が強磁性体からなるので、強磁性体に永久磁石を用いた場合、磁石化した電線とすることができ、それ自体で複数の電線を束ねることができる。また強磁性体に高透磁率材料を用いた場合は、上記の磁石化した電線に吸引されるようにすることができる。
【0017】
本発明のワイヤーハーネスは、少なくとも絶縁体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなる強磁性絶縁電線を用いて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであるから、強磁性絶縁電線どうしが吸引しあうことで自発的に束ねられた状態とすることができる。
【0018】
本発明のワイヤーハーネスは、従来のワイヤーハーネスのように、テープや接着剤等の結束材や、ホットメルト接着剤塗布装置等が不要であり、部品点数を削減することができる。
【0019】
更に本発明のワイヤーハーネスは、複数の強磁性絶縁電線どうしが吸引しあうので、結束材を用いて絶縁電線をひと纏めにする手間が省けるため、ハーネス組立工数を低減することができる。
【0020】
更に本発明のワイヤーハーネスは、車両等に配索する場合、永久磁石化したワイヤーハーネスを車体等に直接接合して固定することができるので、接着剤やクランプ等の取り付け作業が不要となるので、ハーネス配索作業の工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の強磁性絶縁電線の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の強磁性絶縁電線の態様を示す断面図である。
【図3】(a)、(b)は本発明の強磁性絶縁電線の態様を示す断面図である。
【図4】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図5】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図6】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図7】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図8】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図9】本発明のワイヤーハーネスの使用例を示す断面図である。
【図10】従来のワイヤーハーネスを示す断面図である。
【図11】(a)、(b)は従来のワイヤーハーネスの使用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の絶縁電線の一例を示す断面図である。図1に示す強磁性絶縁電線1は、導体2が、強磁性体からなる絶縁体3により被覆されているものである。
【0023】
図1に示す強磁性絶縁電線1は、導体2が単線から構成されている。強磁性絶縁電線1は、導体2が複数の素線の集合体により構成されていてもよい。図2、は強磁性電線の他の態様を示す断面図である。図2の強磁性絶縁電線は、導体2が複数(7本)の素線21から構成されている。上記素線の集合体は、単なる集合体、あるいは撚り線からなる集合体のいずれでもよい。
【0024】
絶縁体3は、強磁性体として強い磁気作用を有する材料が用いられる。絶縁体3を構成する強磁性体の具体的な材料としては、絶縁性を有すると共に、それ自身同士や、他の強磁性体を吸い寄せることができる永久磁石、或いは永久磁石に吸い寄せられる高透磁率材料等を用いることができる。これらの材料としては、樹脂やゴム等のバインダー樹脂中に鉄、ニッケル、コバルト、又はこれらの金属を含む合金等の強磁性体の粉末(磁性粉末ということもある)を分散した所謂ボンド磁石、プラスチック磁石、ゴム磁石等が挙げられる。
【0025】
絶縁体3の上記バインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、PPS樹脂、合成ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA、EMA、EEA、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、PET、PBT、PVC、PVDF、PVDC、塩素化ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー、スチレン系エラストマー等が挙げられる。
【0026】
絶縁体3に永久磁石を用いた強磁性絶縁電線1(磁石化した強磁性絶縁電線ということもある)は、その電線自体が磁石化するため、後述するワイヤーハーネスとして用いた場合に、他の高透磁率材料を絶縁体3として用いた絶縁電線を吸い寄せて一体化することができる。
【0027】
絶縁体3の材料に用いられる上記永久磁石は、最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である高保持力材料が用いられる。更に好ましい絶縁体3の最大エネルギー積は3kJ/m3以上である。
【0028】
このような最大エネルギー積が〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上の高保持力材料としては、磁性粉末として、マルテンサイト鋼、Fe−Cr−Co、アルニコ、ストロンチウムフェライト(SrO・6Fe2O3)、バリウムフェライト(BaO・6Fe2O3)等のフェライト、サマリウムコバルト(Sm2Co17)等の希土類コバルト、ネオジウム鉄、サマリウム鉄窒素等の希土類鉄等が挙げられる。
【0029】
絶縁体3として高透磁率材料を用いた強磁性絶縁電線1は、上記の磁石化した強磁性絶縁電線に吸引される。以下、高透磁率材料を用いた強磁性絶縁電線を、磁石に吸引される強磁性絶縁電線ということもある。磁石に吸引される強磁性絶縁電線の絶縁体3に用いられる高透磁率材料は、比透磁率(μr)が2以上である。更に好ましい絶縁体3の高透磁率材料は、比透磁率(μr)が10以上である。尚、比透磁率μrは、下記式(1)で表わされる、材料の透磁率μと真空の透磁率μ0との比である。
μr=μ/μ0 ・・・(1)
【0030】
このような比透磁率(μr)が2以上である導体2の高透磁率材料に用いられる磁性粉末としては、電磁軟鉄、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Co−V、Fe−Si−Al等の鉄及び鉄系合金、Fe−Ni、Fe−Ni−Mn、Fe−Ni−Mo、Fe−Ni−Cr−Cu、Fe−Ni−Nb等のパーマロイ系合金、Mn−Zn系、Ni−Zn系、Cu−Zn系等のフェライト化合物、Fe−B−Si−C、Fe−B−Si等のアモルファス化合物等が挙げられる。
【0031】
上記態様の強磁性絶縁電線1は、絶縁体3に強磁性体を用い、導体2に非強磁性体を用いたものである。本発明の強磁性絶縁電線1は、導体2として強磁性体を用いて構成してもよい。
【0032】
導体2に非強磁性体を用いる場合、導体2は、アルミニウム、銅、それらの合金等の一般に用いられる絶縁電線の導体を用いることができる。
【0033】
導体2に強磁性体を用いる場合、導体2は、例えば最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である高保持力材料を用いることができる。上記高保持力材料は、絶縁体3において高保持力材料として例示した磁性体を用いることができる。
【0034】
また導体2は、強磁性体として、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料を用いることができる。上記高透磁率材料は、絶縁体3において比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料として例示した磁性体を用いることができる。
【0035】
また導体2は、比抵抗が、1μΩm以下であることが好ましい。更に好ましい導体2の比抵抗は、0.5μΩm以下である。
【0036】
図3(a)〜(b)は本発明の強磁性絶縁電線の他の態様を示す断面図である。本発明の強磁性絶縁電線1は、図3(a)、(b)に示すように、導体2と補助線材4を絶縁体3により被覆して構成してもよい。図3(a)に示すように、強磁性絶縁電線1は、補助線材4を導体2と並列に配置して、周囲を強磁性体からなる絶縁体3により被覆して構成することができる。
【0037】
また図3(b)に示すように、強磁性絶縁電線1は、補助線材4を導体2の中心に配置して、複数の導体2が該補助線材4の周囲を囲むように配置して、周囲を強磁性体からなる絶縁体3により被覆して構成してもよい。
【0038】
上記補助線材4としては、例えば、SUS線等からなる電線補強用のテンションメンバや、強磁性体を用いて電線に強磁性を付与するための強磁性線材等を用いることができる。このような補助線材4を用いて本発明の強磁性絶縁電線1を構成する場合、少なくとも絶縁体3が強磁性体により構成されていればよい。すなわち、強磁性絶縁電線1は、絶縁体3のみ、絶縁体3と導体2、絶縁体3と補助線材4、導体2と絶縁体3と補助線材4のいずれかの組み合わせで強磁性体から構成することができる。
【0039】
補助線材4を強磁性体により構成する場合、補助線材4は、例えば比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料や、最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である永久磁石等を用いることができる。
【0040】
補助線材4に高透磁率材料として、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料や、最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である永久磁石を用いる場合、上記した絶縁体3で例示した磁性材料等が用いられる。尚、補助線材4は導体2や絶縁材3の材料とは異なり、導電性や絶縁性のない高透磁率材料、永久磁石等でも制限なく使用できる。
【0041】
以下、本発明のワイヤーハーネスについて説明する。図4〜図9は、本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。図4に示すワイヤーハーネス10は、強磁性絶縁電線11を2本組み合わせて、2本の絶縁電線が束ねられているものである。2本の強磁性電線11、11は、非強磁性体からなる導体2が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である永久磁石からなる絶縁体3aで被覆されて磁石化している強磁性電線である。
【0042】
図4に示すワイヤーハーネス10は、強磁性絶縁電線11、11が磁石化しているから、互いが引き合い、束ねる際にテープ等の結束材を使用する必要がない。またワイヤーハーネス10を作製する際に、テープ巻等の結束材を装着する作業も不要である。
【0043】
図5に示すワイヤーハーネス10は、2本の強磁性絶縁電線11、12から構成されている。一方の絶縁電線11は、非強磁性体からなる導体2の周囲が、最大エネルギー積〔(BH)max〕2kJ/m3以上の絶縁体3aで被覆されて磁石化した強磁性絶縁電線11である。他方の絶縁電線12は、非強磁性体からなる導体2が比透磁率(μr)が2以上の絶縁体3bにより被覆されて、磁石に吸引される強磁性絶縁電線12である。
【0044】
図5に示すワイヤーハーネス10は、磁石化した強磁性絶縁電線11に、磁石に吸引される強磁性絶縁電線12が磁化して吸引されるので、結束材を使用せずに、二本の強磁性絶縁電線11、12を束ねることができる。
【0045】
図6に示すワイヤーハーネス10は、上記の磁石化した強磁性絶縁電線11を2本と、上記の磁石に吸引される強磁性絶縁電線12を1本組み合わせて構成したものである。磁石化した強磁性絶縁電線11は、非強磁性体からなる導体2の周囲が、最大エネルギー積〔(BH)max〕2kJ/m3以上の絶縁体3aで被覆されたものである。磁石に吸引される強磁性絶縁電線12は、非強磁性体からなる導体2が比透磁率(μr)が2以上の絶縁体3bにより被覆されているものである。
【0046】
図6に示すワイヤーハーネス10は、磁石に吸引される強磁性絶縁電線12が、2本の磁石化した強磁性絶縁電線11に吸引されるので、結束材なしでも電線を束ねてワイヤーハーネスを構成することができる。
【0047】
図7に示すワイヤーハーネス10は、上記の磁石化した強磁性絶縁電線11を22本組み合わせて構成したものである。上記強磁性絶縁電線11は、非強磁性体からなる導体2の周囲が最大エネルギー積〔(BH)max〕2kJ/m3以上の絶縁体3aで被覆されたものである。
【0048】
図7に示すワイヤーハーネス10は、磁石化した強磁性絶縁電線11、11・・・同士が磁力で引き合い、一体化している。このようにワイヤーハーネス10は、結束材を使用することなく、複数の絶縁電線が束ねられている。本発明のワイヤーハーネス10は、図7に示すように、磁石化した強磁性絶縁電線11を3本以上組み合わせて構成してもよい。
【0049】
図8に示すワイヤーハーネス10は、上記の磁石化した強磁性絶縁電線11を10本と、上記の磁石に吸引される強磁性絶縁電線12を11本組み合わせて、合計21本の強磁性絶縁電線により構成したものである。上記強磁性絶縁電線11は、非強磁性体からなる導体2の周囲が最大エネルギー積〔(BH)max〕2kJ/m3以上の絶縁体3aで被覆されたものである。上記強磁性絶縁電線12は、非強磁性体からなる導体2が比透磁率(μr)が2以上の絶縁体3bにより被覆されたものである。
【0050】
図8に示すワイヤーハーネス10は、磁石化した強磁性絶縁11に磁石に吸引される強磁性絶縁電線12が吸引されることにより、全体が一体化している。ワイヤーハーネス10は、結束材なしで全体が束ねられている。本発明のワイヤーハーネス10は、図8に示すように、2本以上の磁石化した強磁性電線11と、2本以上の磁石に吸引される強磁性絶縁電線12を組み合わせて構成してもよい。
【0051】
図9は本発明のワイヤーハーネスの使用例を示す断面図である。図9に示すワイヤーハーネス10は、最大エネルギー積が2kJ/m3以上の導体2aを絶縁体で被覆した強磁性絶縁電線11を21本を束ねたものである。このワイヤーハーネス10は、強磁性絶縁電線11自体の磁力により束ねられているものである。図9に示すように、ワイヤーハーネス10は、鉄板等により形成されている自動車の車体20に、磁力により固定される。このようにワイヤーハーネス10は、各強磁性絶縁電線11自体の磁力により、車体20に固定することができる。そのため従来のワイヤーハーネスのように、クランプ、ホットメルト接着剤、両面テープ等のワイヤーハーネスを固定するための固定部材が不要である。
【0052】
この場合、ワイヤーハーネス10は、図8に示すように磁石化した強磁性絶縁電線11と磁石に吸引される強磁性絶縁電線12を組み合わせたものを用いてもよい。また、車体20等のワイヤーハーネスを固定するための所定の位置に、磁石を配置して貼り付けでおけば、その位置にワイヤーハーネス10を固定することが容易である。
【0053】
本発明のワイヤーハーネスは、自動車用ワイヤーハーネスとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1
導体(銅線)の周囲をストロンチウムフェライトを練りこんだ塩素化ポリエチレンからなる絶縁体により被覆して絶縁電線を得た。この電線を21本用いて図7に示すようにワイヤーハーネス10を構成した。上記電線の最大エネルギー積〔(BH)max〕は3kJ/m3であった。このワイヤーハーネスは各電線の磁力により結束されていて、その電線結束性は良好であった。
【0056】
比較例1
実施例1の電線の絶縁体をポリエチレンに変えた絶縁電線を準備した。上記絶縁電線の最大エネルギー積〔(BH)max〕は0.5kJ/m3未満であった。この電線を用いて実施例1と同様にしてワイヤーハーネスを構成しようとしたが、ワイヤーハーネスだけでは結束することができず、電線結束性は不良であった。
【符号の説明】
【0057】
1 強磁性絶縁電線
2 導体
3 強磁性体からなる絶縁体
3a 最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の絶縁体
3b 比透磁率(μr)が2以上の絶縁体
10 ワイヤーハーネス
11 磁石化した強磁性絶縁電線
12 磁石に吸引される強磁性絶縁電線
【技術分野】
【0001】
本発明は、強磁性絶縁電線及びワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に用いられるワイヤーハーネス100は、図10に示すように、複数の電線101を組み合わせて、電線101を束ねて構成されている。このワイヤーハーネス100に用いられる電線101は、一般に、銅線やアルミニウム等の導体102の周囲が、樹脂皮膜等の絶縁体103により被覆されているものである。
【0003】
上記ワイヤーハーネス100の電線を束ねるためには、例えばテープ等の結束材104を用いて、電線101の周囲を巻まわしている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
またワイヤーハーネス100を車両等の所定の位置に組み付ける場合、図11(a)に示すように、クランプ110等の取り付け部材を使用してワイヤーハーネス100を車両111に固定している(例えば特許文献2参照)。
【0005】
またワイヤーハーネス100は、図11(b)に示すように、ホットメルト接着剤112を使用して、車両111に接着して固定する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−217357号公報
【特許文献2】特開平10−201058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、ワイヤーハーネス100を製造する場合、製造工程では電線を束ねるために、テープ等の結束材(拘束部材ということもある)104が必要となる。また、ワイヤーハーネス製造工程では、テープ等を巻く作業が必要であり、作業に手間がかかるという問題があった。
【0008】
また従来、ワイヤーハーネス100を車両111に組み付ける工程では、クランプ110やホットメルト接着剤112等の、ワイヤーハーネス100以外の取り付け部材が必要となる。また、クランプ110を使用する場合は、クランプ110の車両111等への取り付け作業が必要であり、取り付けに手間がかかるという問題があった。また、ホットメルト接着剤112を使用する場合は、ホットメルト接着剤を塗る作業が必要であり、作業に手間がかかり、ホットメルト接着剤塗布装置等が必要となるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、電線をテープ巻等の結束材を使用せずに束ねることが可能であり、クランプ等の他の部材なしに車両等への取り付けが可能である絶縁電線及びワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の強磁性絶縁電線は、少なくとも絶縁体が強磁性体からなることを要旨とするものである。
【0011】
上記強磁性絶縁電線において、前記強磁性体が、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料を用いることができる。
【0012】
上記強磁性絶縁電線において、前記強磁性体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石を用いることができる。
【0013】
上記強磁性絶縁電線は、前記絶縁体が、樹脂又はゴムからなるバインダー中に強磁性体の粉末が分散されているものを用いることができる。
【0014】
本発明のワイヤーハーネスは、少なくとも絶縁体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなる強磁性絶縁電線を用いて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであることを要旨とするものである。
【0015】
上記ワイヤーハーネスにおいて、少なくとも絶縁体が、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料からなる強磁性絶縁電線を、前記永久磁石からなる強磁性絶縁電線と組み合わせて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであるように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の強磁性絶縁電線は、少なくとも絶縁体が強磁性体からなるので、強磁性体に永久磁石を用いた場合、磁石化した電線とすることができ、それ自体で複数の電線を束ねることができる。また強磁性体に高透磁率材料を用いた場合は、上記の磁石化した電線に吸引されるようにすることができる。
【0017】
本発明のワイヤーハーネスは、少なくとも絶縁体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなる強磁性絶縁電線を用いて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであるから、強磁性絶縁電線どうしが吸引しあうことで自発的に束ねられた状態とすることができる。
【0018】
本発明のワイヤーハーネスは、従来のワイヤーハーネスのように、テープや接着剤等の結束材や、ホットメルト接着剤塗布装置等が不要であり、部品点数を削減することができる。
【0019】
更に本発明のワイヤーハーネスは、複数の強磁性絶縁電線どうしが吸引しあうので、結束材を用いて絶縁電線をひと纏めにする手間が省けるため、ハーネス組立工数を低減することができる。
【0020】
更に本発明のワイヤーハーネスは、車両等に配索する場合、永久磁石化したワイヤーハーネスを車体等に直接接合して固定することができるので、接着剤やクランプ等の取り付け作業が不要となるので、ハーネス配索作業の工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の強磁性絶縁電線の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の強磁性絶縁電線の態様を示す断面図である。
【図3】(a)、(b)は本発明の強磁性絶縁電線の態様を示す断面図である。
【図4】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図5】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図6】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図7】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図8】本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【図9】本発明のワイヤーハーネスの使用例を示す断面図である。
【図10】従来のワイヤーハーネスを示す断面図である。
【図11】(a)、(b)は従来のワイヤーハーネスの使用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の絶縁電線の一例を示す断面図である。図1に示す強磁性絶縁電線1は、導体2が、強磁性体からなる絶縁体3により被覆されているものである。
【0023】
図1に示す強磁性絶縁電線1は、導体2が単線から構成されている。強磁性絶縁電線1は、導体2が複数の素線の集合体により構成されていてもよい。図2、は強磁性電線の他の態様を示す断面図である。図2の強磁性絶縁電線は、導体2が複数(7本)の素線21から構成されている。上記素線の集合体は、単なる集合体、あるいは撚り線からなる集合体のいずれでもよい。
【0024】
絶縁体3は、強磁性体として強い磁気作用を有する材料が用いられる。絶縁体3を構成する強磁性体の具体的な材料としては、絶縁性を有すると共に、それ自身同士や、他の強磁性体を吸い寄せることができる永久磁石、或いは永久磁石に吸い寄せられる高透磁率材料等を用いることができる。これらの材料としては、樹脂やゴム等のバインダー樹脂中に鉄、ニッケル、コバルト、又はこれらの金属を含む合金等の強磁性体の粉末(磁性粉末ということもある)を分散した所謂ボンド磁石、プラスチック磁石、ゴム磁石等が挙げられる。
【0025】
絶縁体3の上記バインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、PPS樹脂、合成ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA、EMA、EEA、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、PET、PBT、PVC、PVDF、PVDC、塩素化ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー、スチレン系エラストマー等が挙げられる。
【0026】
絶縁体3に永久磁石を用いた強磁性絶縁電線1(磁石化した強磁性絶縁電線ということもある)は、その電線自体が磁石化するため、後述するワイヤーハーネスとして用いた場合に、他の高透磁率材料を絶縁体3として用いた絶縁電線を吸い寄せて一体化することができる。
【0027】
絶縁体3の材料に用いられる上記永久磁石は、最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である高保持力材料が用いられる。更に好ましい絶縁体3の最大エネルギー積は3kJ/m3以上である。
【0028】
このような最大エネルギー積が〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上の高保持力材料としては、磁性粉末として、マルテンサイト鋼、Fe−Cr−Co、アルニコ、ストロンチウムフェライト(SrO・6Fe2O3)、バリウムフェライト(BaO・6Fe2O3)等のフェライト、サマリウムコバルト(Sm2Co17)等の希土類コバルト、ネオジウム鉄、サマリウム鉄窒素等の希土類鉄等が挙げられる。
【0029】
絶縁体3として高透磁率材料を用いた強磁性絶縁電線1は、上記の磁石化した強磁性絶縁電線に吸引される。以下、高透磁率材料を用いた強磁性絶縁電線を、磁石に吸引される強磁性絶縁電線ということもある。磁石に吸引される強磁性絶縁電線の絶縁体3に用いられる高透磁率材料は、比透磁率(μr)が2以上である。更に好ましい絶縁体3の高透磁率材料は、比透磁率(μr)が10以上である。尚、比透磁率μrは、下記式(1)で表わされる、材料の透磁率μと真空の透磁率μ0との比である。
μr=μ/μ0 ・・・(1)
【0030】
このような比透磁率(μr)が2以上である導体2の高透磁率材料に用いられる磁性粉末としては、電磁軟鉄、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Co−V、Fe−Si−Al等の鉄及び鉄系合金、Fe−Ni、Fe−Ni−Mn、Fe−Ni−Mo、Fe−Ni−Cr−Cu、Fe−Ni−Nb等のパーマロイ系合金、Mn−Zn系、Ni−Zn系、Cu−Zn系等のフェライト化合物、Fe−B−Si−C、Fe−B−Si等のアモルファス化合物等が挙げられる。
【0031】
上記態様の強磁性絶縁電線1は、絶縁体3に強磁性体を用い、導体2に非強磁性体を用いたものである。本発明の強磁性絶縁電線1は、導体2として強磁性体を用いて構成してもよい。
【0032】
導体2に非強磁性体を用いる場合、導体2は、アルミニウム、銅、それらの合金等の一般に用いられる絶縁電線の導体を用いることができる。
【0033】
導体2に強磁性体を用いる場合、導体2は、例えば最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である高保持力材料を用いることができる。上記高保持力材料は、絶縁体3において高保持力材料として例示した磁性体を用いることができる。
【0034】
また導体2は、強磁性体として、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料を用いることができる。上記高透磁率材料は、絶縁体3において比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料として例示した磁性体を用いることができる。
【0035】
また導体2は、比抵抗が、1μΩm以下であることが好ましい。更に好ましい導体2の比抵抗は、0.5μΩm以下である。
【0036】
図3(a)〜(b)は本発明の強磁性絶縁電線の他の態様を示す断面図である。本発明の強磁性絶縁電線1は、図3(a)、(b)に示すように、導体2と補助線材4を絶縁体3により被覆して構成してもよい。図3(a)に示すように、強磁性絶縁電線1は、補助線材4を導体2と並列に配置して、周囲を強磁性体からなる絶縁体3により被覆して構成することができる。
【0037】
また図3(b)に示すように、強磁性絶縁電線1は、補助線材4を導体2の中心に配置して、複数の導体2が該補助線材4の周囲を囲むように配置して、周囲を強磁性体からなる絶縁体3により被覆して構成してもよい。
【0038】
上記補助線材4としては、例えば、SUS線等からなる電線補強用のテンションメンバや、強磁性体を用いて電線に強磁性を付与するための強磁性線材等を用いることができる。このような補助線材4を用いて本発明の強磁性絶縁電線1を構成する場合、少なくとも絶縁体3が強磁性体により構成されていればよい。すなわち、強磁性絶縁電線1は、絶縁体3のみ、絶縁体3と導体2、絶縁体3と補助線材4、導体2と絶縁体3と補助線材4のいずれかの組み合わせで強磁性体から構成することができる。
【0039】
補助線材4を強磁性体により構成する場合、補助線材4は、例えば比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料や、最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である永久磁石等を用いることができる。
【0040】
補助線材4に高透磁率材料として、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料や、最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である永久磁石を用いる場合、上記した絶縁体3で例示した磁性材料等が用いられる。尚、補助線材4は導体2や絶縁材3の材料とは異なり、導電性や絶縁性のない高透磁率材料、永久磁石等でも制限なく使用できる。
【0041】
以下、本発明のワイヤーハーネスについて説明する。図4〜図9は、本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。図4に示すワイヤーハーネス10は、強磁性絶縁電線11を2本組み合わせて、2本の絶縁電線が束ねられているものである。2本の強磁性電線11、11は、非強磁性体からなる導体2が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が、2kJ/m3以上である永久磁石からなる絶縁体3aで被覆されて磁石化している強磁性電線である。
【0042】
図4に示すワイヤーハーネス10は、強磁性絶縁電線11、11が磁石化しているから、互いが引き合い、束ねる際にテープ等の結束材を使用する必要がない。またワイヤーハーネス10を作製する際に、テープ巻等の結束材を装着する作業も不要である。
【0043】
図5に示すワイヤーハーネス10は、2本の強磁性絶縁電線11、12から構成されている。一方の絶縁電線11は、非強磁性体からなる導体2の周囲が、最大エネルギー積〔(BH)max〕2kJ/m3以上の絶縁体3aで被覆されて磁石化した強磁性絶縁電線11である。他方の絶縁電線12は、非強磁性体からなる導体2が比透磁率(μr)が2以上の絶縁体3bにより被覆されて、磁石に吸引される強磁性絶縁電線12である。
【0044】
図5に示すワイヤーハーネス10は、磁石化した強磁性絶縁電線11に、磁石に吸引される強磁性絶縁電線12が磁化して吸引されるので、結束材を使用せずに、二本の強磁性絶縁電線11、12を束ねることができる。
【0045】
図6に示すワイヤーハーネス10は、上記の磁石化した強磁性絶縁電線11を2本と、上記の磁石に吸引される強磁性絶縁電線12を1本組み合わせて構成したものである。磁石化した強磁性絶縁電線11は、非強磁性体からなる導体2の周囲が、最大エネルギー積〔(BH)max〕2kJ/m3以上の絶縁体3aで被覆されたものである。磁石に吸引される強磁性絶縁電線12は、非強磁性体からなる導体2が比透磁率(μr)が2以上の絶縁体3bにより被覆されているものである。
【0046】
図6に示すワイヤーハーネス10は、磁石に吸引される強磁性絶縁電線12が、2本の磁石化した強磁性絶縁電線11に吸引されるので、結束材なしでも電線を束ねてワイヤーハーネスを構成することができる。
【0047】
図7に示すワイヤーハーネス10は、上記の磁石化した強磁性絶縁電線11を22本組み合わせて構成したものである。上記強磁性絶縁電線11は、非強磁性体からなる導体2の周囲が最大エネルギー積〔(BH)max〕2kJ/m3以上の絶縁体3aで被覆されたものである。
【0048】
図7に示すワイヤーハーネス10は、磁石化した強磁性絶縁電線11、11・・・同士が磁力で引き合い、一体化している。このようにワイヤーハーネス10は、結束材を使用することなく、複数の絶縁電線が束ねられている。本発明のワイヤーハーネス10は、図7に示すように、磁石化した強磁性絶縁電線11を3本以上組み合わせて構成してもよい。
【0049】
図8に示すワイヤーハーネス10は、上記の磁石化した強磁性絶縁電線11を10本と、上記の磁石に吸引される強磁性絶縁電線12を11本組み合わせて、合計21本の強磁性絶縁電線により構成したものである。上記強磁性絶縁電線11は、非強磁性体からなる導体2の周囲が最大エネルギー積〔(BH)max〕2kJ/m3以上の絶縁体3aで被覆されたものである。上記強磁性絶縁電線12は、非強磁性体からなる導体2が比透磁率(μr)が2以上の絶縁体3bにより被覆されたものである。
【0050】
図8に示すワイヤーハーネス10は、磁石化した強磁性絶縁11に磁石に吸引される強磁性絶縁電線12が吸引されることにより、全体が一体化している。ワイヤーハーネス10は、結束材なしで全体が束ねられている。本発明のワイヤーハーネス10は、図8に示すように、2本以上の磁石化した強磁性電線11と、2本以上の磁石に吸引される強磁性絶縁電線12を組み合わせて構成してもよい。
【0051】
図9は本発明のワイヤーハーネスの使用例を示す断面図である。図9に示すワイヤーハーネス10は、最大エネルギー積が2kJ/m3以上の導体2aを絶縁体で被覆した強磁性絶縁電線11を21本を束ねたものである。このワイヤーハーネス10は、強磁性絶縁電線11自体の磁力により束ねられているものである。図9に示すように、ワイヤーハーネス10は、鉄板等により形成されている自動車の車体20に、磁力により固定される。このようにワイヤーハーネス10は、各強磁性絶縁電線11自体の磁力により、車体20に固定することができる。そのため従来のワイヤーハーネスのように、クランプ、ホットメルト接着剤、両面テープ等のワイヤーハーネスを固定するための固定部材が不要である。
【0052】
この場合、ワイヤーハーネス10は、図8に示すように磁石化した強磁性絶縁電線11と磁石に吸引される強磁性絶縁電線12を組み合わせたものを用いてもよい。また、車体20等のワイヤーハーネスを固定するための所定の位置に、磁石を配置して貼り付けでおけば、その位置にワイヤーハーネス10を固定することが容易である。
【0053】
本発明のワイヤーハーネスは、自動車用ワイヤーハーネスとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1
導体(銅線)の周囲をストロンチウムフェライトを練りこんだ塩素化ポリエチレンからなる絶縁体により被覆して絶縁電線を得た。この電線を21本用いて図7に示すようにワイヤーハーネス10を構成した。上記電線の最大エネルギー積〔(BH)max〕は3kJ/m3であった。このワイヤーハーネスは各電線の磁力により結束されていて、その電線結束性は良好であった。
【0056】
比較例1
実施例1の電線の絶縁体をポリエチレンに変えた絶縁電線を準備した。上記絶縁電線の最大エネルギー積〔(BH)max〕は0.5kJ/m3未満であった。この電線を用いて実施例1と同様にしてワイヤーハーネスを構成しようとしたが、ワイヤーハーネスだけでは結束することができず、電線結束性は不良であった。
【符号の説明】
【0057】
1 強磁性絶縁電線
2 導体
3 強磁性体からなる絶縁体
3a 最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の絶縁体
3b 比透磁率(μr)が2以上の絶縁体
10 ワイヤーハーネス
11 磁石化した強磁性絶縁電線
12 磁石に吸引される強磁性絶縁電線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも絶縁体が強磁性体からなることを特徴とする強磁性絶縁電線。
【請求項2】
前記強磁性体が、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料を用いたことを特徴とする請求項1記載の強磁性絶縁電線。
【請求項3】
前記強磁性体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石を用いたことを特徴とする請求項1記載の強磁性絶縁電線。
【請求項4】
前記絶縁体が、樹脂又はゴムからなるバインダー中に強磁性体の粉末が分散されているものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の強磁性絶縁電線。
【請求項5】
少なくとも絶縁体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなる強磁性絶縁電線を用いて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項6】
少なくとも絶縁体が比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料からなる強磁性絶縁電線を、前記少なくとも絶縁体が最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなる強磁性絶縁電線と組み合わせて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであることを特徴とする請求項5記載のワイヤーハーネス。
【請求項1】
少なくとも絶縁体が強磁性体からなることを特徴とする強磁性絶縁電線。
【請求項2】
前記強磁性体が、比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料を用いたことを特徴とする請求項1記載の強磁性絶縁電線。
【請求項3】
前記強磁性体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石を用いたことを特徴とする請求項1記載の強磁性絶縁電線。
【請求項4】
前記絶縁体が、樹脂又はゴムからなるバインダー中に強磁性体の粉末が分散されているものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の強磁性絶縁電線。
【請求項5】
少なくとも絶縁体が、最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなる強磁性絶縁電線を用いて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項6】
少なくとも絶縁体が比透磁率(μr)が2以上の高透磁率材料からなる強磁性絶縁電線を、前記少なくとも絶縁体が最大エネルギー積〔(BH)max〕が2kJ/m3以上の永久磁石からなる強磁性絶縁電線と組み合わせて、複数本の強磁性絶縁電線が束ねられているものであることを特徴とする請求項5記載のワイヤーハーネス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−234638(P2012−234638A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100635(P2011−100635)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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