説明

強誘電性液晶パネル

【課題】セグメント表示を行う強誘電性液晶パネルにおいて、セグメント表示の周囲において、初期の配向状態で白表示または黒表示のいずれかの表示が得られて、その表示の単安定性が得られる液晶パネルを提供する。
【解決手段】一対の基板のそれぞれ内側に、セグメント形状のセグメント電極と対向電極とを備え、強誘電性液晶を用いた強誘電性液晶パネルであって、セグメント電極と対向電極の上には、それぞれ配向膜を設け、セグメント電極と配向膜との間、または対向電極と配向膜の間のどちらか一方にのみ絶縁膜を設ける。また、セグメント電極の周囲または対向電極の周囲には電気的に閉鎖されているダミー電極を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電性を有する液晶を用いた強誘電性液晶パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電性を有するカイラルスメスチック液晶などの強誘電性液晶を用いた液晶パネルは電界の変化に対する応答速度が速いこと、また、双安定性の特性を有することから様々な分野での利用が期待されてきている。
【0003】
強誘電性液晶パネルで、例えば、マトリックス表示を行う強誘電性液晶表示パネルは、一般に、第1の基板と第2の基板にストライプ状(帯状)の走査電極と信号電極をそれぞれ形成し、その上面側に絶縁膜と配向膜を積層して設け、走査電極と信号電極を直交するようにして対向して配置した間隙に強誘電性液晶を封止し、上下面に偏光板を配設した構成をとっている。
【0004】
このような構成にあっては、電圧を印加した状態では、走査電極と信号電極が対向している部位の領域、つまり、画素領域にあっては白表示または黒表示の表示制御することができるが、走査電極と信号電極が対向していない部位の領域、つまり、画素外領域にあっては、電圧が印加されないため、白と黒が混在して不均一な表示色が現れて画質を低下させる問題を有していた。
【0005】
そして、この問題はマトリックス表示を行う強誘電性液晶表示パネルに限らず、セグメント表示を行う強誘電性液晶表示パネルにあっても同様であった。
【0006】
この問題を解決する従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された構成や特許文献2に開示された構成などが挙げられる。
【0007】
特許文献1に開示された従来技術を図4を用いて説明する。なお、図4は説明しやすいようにその主旨を逸脱しないように書き直しした断面図を示したものである。
【0008】
図4において、1は情報電極、2は走査電極、3は無機コーティング膜、4は電極間隙、11a,11bは基板、12a,12bはショート防止膜、13a,13bは配向制御膜、14a,14bは偏光板、15は封止材、16は液晶である。
【0009】
図4に示された強誘電性液晶パネルの構成は、ガラス板やプラスチック板などからなる透明な基板11a、11bの内面にITO膜からなる情報電極1、走査電極2を設けている。情報電極1と走査電極はストライプ状に形成しており、重なり合うとマトリックス構造をなす。また、基板11a上に設けた複数の情報電極1のそれぞれの間隙4及び両端の情報電極1の外側には微粒子を含有する無機コーティング膜3を設けている。なお、図4には図示されてはいないが、基板11b上に設けた走査電極2側においても同様に無機コーティング膜3を設けている。つまり、各画素を取り囲む画素外領域に無機コーティング膜3を設けた構成をとっている。
【0010】
また、基板11a上の情報電極1及び無機コーティング膜3上にはショート防止膜12aと配向制御膜13aを積層して設け、基板11b上の走査電極2及び無機コーティング膜3(図示していない)上にもショート防止膜12bと配向制御膜13bを積層して設けている。そして、カイラルスメスチック液晶からなる強誘電性液晶16を封止材15を介して封入した構成をとっている。また、上下の基板11a、11bの外側には偏光板14
a、14bを配設した構成をとっている。
【0011】
特許文献1によれば、各画素を取り囲んで画素外領域に微粒子を含有する無機コーティング膜を設けることにより、画素外領域において、画素内と異なる液晶の配向状態が形成されて、黒ドメインと白ドメインの両ドメインの混在がなくなり、混在による画面上のざらつきが解消されるとされている。
【0012】
次に、特許文献2に示された強誘電性液晶パネルの構成は、電極を設けた第1の絶縁基板上に表面エネルギーの極性成分の大きい薄膜と配向膜を積層して設け、電極を設けた第2の絶縁基板上に表面エネルギーの極性成分の小さい薄膜と配向膜を積層して設け、強誘電性液晶を封止した構成をとるものである。
【0013】
表面エネルギーの極性成分の大きい薄膜はアルミナ,酸化珪素,窒化珪素などの材料で形成し、表面エネルギーの極性成分の小さい薄膜はポリイミド,ポリアクリロニトリル,ポリアミック酸などの材料で形成するとされている。
【0014】
特許文献2によれば、表面エネルギーの極性成分の大きい薄膜と表面エネルギーの極性成分の小さい薄膜との間に自発分極を有する液晶分子を挟むことによって、電極に電位のない状態では液晶分子の持つ自発分極の方向はセル極性方向と一致し、電界を生じるような電位を電極にかけた場合は電界の大きさに応じて液晶分子の持つ自発分極の方向は電極より発生した電界の向きと一致するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−84389号公報(第3−4頁、第1図)
【特許文献2】特開昭63−158521号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
例えば、表示形状の電極を任意の形に形成して駆動するセグメント表示を強誘電性液晶パネルで行う場合、セグメント表示用の電極の周囲には、白又は黒表示にするための周囲用の電極を設ける必要があった。しかし、前述の従来技術を用いることによって、配向状態を制御すれば、周囲用の電極を設けず白又は黒状態に規制することが可能になる。しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2に示された構成は、本願発明の発明者が様々な実験を行った結果、周囲の画素外領域が広範囲に及ぶ場合には、初期の配向状態(電圧を一度も印加しない状態)を白又は黒状態に規制することが充分に行えないことが確認された。つまり、マトリクス表示のような電極間の隙間が狭いときには、良好に行われる配向制御も、広範囲となるセグメント表示の周囲等では、初期の配向状態で白表示または黒表示において単安定性を得ることが困難であった。 なお、ここで単安定性とは、強誘電性液晶分子はチルト角を持った円錐(コーン)の稜線に沿って回転移動するが、電圧無印加時において、液晶分子の状態がコーン上のいずれかひとつの状態で安定化している状態をいう。
【0017】
また、特許文献1に示された構成はショート防止膜の他に無機コーティング膜を設けた構成をとり、特許文献2に示された構成は表面エネルギーの極性成分の大きい薄膜と表面エネルギーの極性成分の小さい薄膜とを設けた構成をとるため、コスト面では製作コストが非常に高くなるという問題も有する。
【0018】
本発明は、セグメント表示を行う液晶表示パネルにあっても、初期の配向状態で白表示または黒表示において単安定性をもたらす強誘電性液晶パネルを提供することを目的とす
るものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の強誘電性液晶パネルは、一対の基板のそれぞれの内側に電極を備え、一対の基板間に強誘電性液晶を配置した強誘電性液晶パネルであって、それぞれの電極の上には、配向膜を設け、一対の基板のうち、一方の基板又は他方の基板のいずれかの基板にのみ、前記電極と前記配向膜との間に絶縁膜を設け、一対の基板のうち、一方の基板にのみ電極が配置され、該配置された箇所に対応して、他方の基板には電気的に閉鎖されているダミー電極が設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、一方の基板に配置された電極は、セグメント電極であり、セグメント電極はセグメント電極に電圧を印加するための配線電極を有し、配線電極を設けた基板に対向する基板には、配線電極に対応した箇所にもダミー電極が設けられていることを特徴とする。また、ダミー電極は、対向する基板上の隣り合う電極同士にまたがることがないように配置すること特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、一対の基板のうち、一方の基板にセグメント表示を行うためのセグメント電極を設け、他方の基板に対向電極を設けた強誘電性液晶パネルにおいて、一対の基板のどちらか一方の基板にのみ配向膜と電極との間に絶縁膜を設ける。ただし、セグメント電極または対向電極のいずれか一方の電極のみが配置されている箇所には、対向した基板上の位置にダミー電極を配置させる。このことにより、絶縁膜の有無以外は上下基板の構成が対象となるために、絶縁膜の有無の非対称性によって生じる微弱な電界を良好に発生させることが出来、それによって自発分極を有する液晶分子の極性方向が揃えられて、セグメント表示周囲における表示に寄与しない領域が広範囲に及ぶ場合であっても、単安定性が良好に行われる。
【0022】
また閉鎖されたダミー電極、即ち、電流が流れないダミー電極をセグメント電極の周囲または対向電極の周囲に設けることで、液晶パネル内にごく微弱な電気的な偏りを発生させ、この電気的な偏りが自発分極を有する液晶分子の極性方向を揃えて、画素外領域が広範囲であっても、表示の単安定性が向上し、初期の配向状態で白表示または黒表示のいずれかの表示を選択的に得ることができる。以上の作用によって、本発明の強誘電性液晶パネルは、画素外領域での白色、黒色の混色が無くなると同時に、初期の配向状態での白表示または黒表示において単安定性が得られる。
【0023】
またこのときに、ダミー電極は対向する基板上の隣り合うセグメント電極間にまたがる事がないように配置する。このように配置することによって、ダミー電極とセグメント電極間に電界が発生して、セグメント電極間に位置する液晶分子をスイッチングさせることがなく、液晶を注入した直後の状態(単安定状態)を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る強誘電性液晶パネルの模式的に示した要部断面図である。
【図2】図1におけるセグメント電極と対向電極の形状パターンを模式的に示した平面図で、図2(a)はセグメント電極の形状パターンの平面図、図2(b)は対向電極の形状パターンの平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る強誘電性液晶パネルのセグメント電極と対向電極のパターンを模式的に示した平面図で、図3(a)はセグメント電極の形状パターンの平面図、図3(b)は対向電極の形状パターンの平面図である。
【図4】特許文献1に記載された強誘電性液晶パネルの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施形態の説明:図1、図2]
最初に、本実施形態に係る強誘電性液晶パネルについて、図1、図2を用いて説明する。なお、図1は本実施形態に係る強誘電性液晶パネルの模式的に示した要部断面図で、8の字の表示をなすセグメント表示部分を縦方向に切断した状態の断面図を示している。また、図2は図1におけるセグメント電極と対向電極の電極パターンを模式的に示した平面図で、図2(a)はセグメント電極の電極パターンの平面図、図2(b)は対向電極の電極パターンの平面図を示している。なお、図2(a)、図2(b)は複数並んでいるセグメント電極、及びその対向電極を1つだけ取り出して描いた電極パターン図である。
【0026】
本実施形態に係る強誘電性液晶パネル20の構成は、図1に示すように、透明なガラス板からなる上基板21と下基板22の一対の基板を主要構成部品にして構成している。そして、上基板21の内側には、セグメント形状のセグメント電極31、制御用電極34a、34b、ダミー電極37h、37iなどの電極を設け、下基板22の内側には、対向電極32、制御用電極35a、35bなどの電極を設けている。なお、これらの電極は錫をドープした酸化インジウムのITO(Indium Tin Oxide)膜からなり、その形状などについては図2を用いて後述する。
【0027】
上基板21のセグメント電極31、制御用電極34a、34b、ダミー電極37h、37iなどの電極の面上には絶縁膜23を設け、更に、その絶縁膜23上に上配向膜24を設けている。また、一方の下基板22の対向電極32、制御用電極35a、35bなどの電極の面上には下配向膜25を設け、下基板22側には絶縁膜を設けていない。そして、上基板21と下基板22を一定の間隙を設けて対向して配置し、その間隙の中にカイラルスメスチック液晶なる強誘電性液晶26を封止材27でもって封入した構成をなしている。また、上基板21の外面(図中においては上面にあたる面)には上偏光板28を設け、下基板22の外面(図中においては下面にあたる面)には下偏光板29を設けた構成をなしている。
【0028】
絶縁膜23は、本実施形態においては、SiO材料を用いて形成しているが、SiO以外の材料としてはTiO,Al,Siなどの材料も好適に利用することができる。絶縁膜23の材料としては誘電率の高い材料を用いるのが好ましい。この絶縁膜23は真空蒸着法やスパッタリング法又はPVD法もしくは印刷により概ね500Å位の厚みに形成している。
【0029】
また、絶縁膜23は、本実施形態においては、上基板21側のセグメント電極31などの電極と上配向膜24との間に設けているが、特にこの構成に限るものではなく、下基板22側の対向電極32などの電極と下配向膜25との間に設けた構成にしても良い。
【0030】
絶縁膜23をセグメント電極31などの電極と上配向膜24との間、または対向電極32などの電極と下配向膜25との間のどちらか一方にのみ設ける。この絶縁膜を設けることを除いて、両基板とも同じ膜構成とした場合には、絶縁膜があるか否かで液晶セル内のごく微弱な電気的な偏りが発生し、この電界により自発分極を有する液晶分子の極性方向を揃えて、初期の配向状態で白表示または黒表示のいずれかの表示を選択的に得ることができるようになる。従って、セグメント電極、あるいは対向電極のいずれか一方の電極のみが配置されている箇所には、両基板が絶縁膜を除いて同じ膜構成となるように、電極がないところに対応して、画素外領域において、ダミー電極を配置する。このような構成を実施することによって白表示または黒表示の単安定性が良好に得られるようになる。
【0031】
なお、図1において、20a、20bは強誘電性液晶パネル20の図中左右両端の側面
を表している。20aは図中左側の側面で、強誘電性液晶26の注入孔(図示していない)がある側の側面を示している。一方、20bは図中右側の側面で、側面20aの反対側の側面を示している。側面20aに近い方に制御用電極34a、35aを対向させて設けており、側面20bに近い方に制御用電極34b、35bを対向させて設けている。これは、液晶材料の注入されている隅の部位の所は、液晶分子の配向が乱れ易いため、強制的に制御用電極を設けて画像を白表示または黒表示のいずれかの色に表示する方法を取っているものである。
【0032】
次に、図2を用いて、上基板21の内側に設けたセグメント電極などの電極と、下基板22の内側に設けた対向電極32などの電極について説明する。図2(a)において、上基板21の内側に設けたセグメント電極31は7つの分割されたセグメント電極31a、31b、31c、31d、31e、31f、31gから構成されており、見た目に略8の字形の数字を示す形状をなしている。なお、これらの7つのセグメント電極にはそれぞれ電気導通を図る配線電極が設けられているが、図2(a)においては、その配線電極は省略している。
【0033】
また、上基板21の内側には、セグメント電極31以外に、強誘電性液晶パネル20の両側面20a、20b側にあって封止材27の内側に、白または黒のいずれかの色表示に制御する制御用電極34a、34bを設けている。図中においては、端面20a側にある制御用電極を34aとし、端面20b側にある制御用電極を34bとしている。
【0034】
また、上基板21の内側には、セグメント電極31、制御用電極34a、34b以外に、ダミー電極37h、37iを設けている。このダミー電極37h、37iは、図2(a)において斜線で示すように、セグメント電極31a、31b、31c、31dによって囲まれた内部にダミー電極37hを、セグメント電極31d、31e、31f、31gによって囲まれた内部にダミー電極37iを設けている。つまり、セグメント表示の内側にあって、何も表示の無い領域にダミー電極37h、37iを設けている。
【0035】
このように、ダミー電極37h、37iは7つのセグメント電極31の内側で、対向基板の対向電極のみが配置されている箇所に対応した位置に設けている。また、このダミー電極37h、37iは電気導通が行われない閉鎖された電極で、電気導通用の配線電極は持っていない。従って、このダミー電極37h、37iは電極のパターンだけを形成したもので、電気導通のしない電極である。
【0036】
次に、図2(b)において、下基板22の内側に設けた対向電極32は、上基板21に設けた7つのセグメント電極31と対向する位置に設けられている。セグメント電極31と対向していることから対向電極と呼称している。この対向電極32は、大きく分けると、9個の小さい対向電極32a、32b、32h、32c、32d、32e、32i、32f、32gから構成されている。そして、それぞれの対向電極は順次繋がった形状で形成されている。対向電極32aは上基板21のセグメント電極31aに対向しており、対向電極32bは上基板21のセグメント電極31bに対向している。このようにして順次、対向電極32c、32d、32e、32f、32gはそれぞれ上基板21のセグメント電極31c、31d、31e、31f、31gと対向している。
【0037】
また、対向電極32の中で、対向電極32hと対向電極32iは相隣り合う対向電極を接続するために設けている電極である。つまり、対向電極32hは対向電極32bと対向電極32cとを接続し、対向電極32iは対向電極32eと対向電極32fとを接続している電極で、下基板22側にのみ形成している電極である。
【0038】
対向電極32h、32iに対向する上基板21の内側の位置には、ダミー電極37h、
37iが設けてあって、対向電極32hとダミー電極37hとが対向し、対向電極32iとダミー電極37iとが対向している。つまり、上基板21のセグメント電極31が配置されていないところに設けたダミー電極37h、37iは、下基板22に設けた対向電極32h、32iに対向する位置である。つまり、セグメント電極と対向電極のいずれか一方の電極のみが配置されている箇所に対応して、対向した基板上位置にダミー電極は配置される。
【0039】
また、下基板22の内側には、上基板21に設けた制御用電極34a、34bと対向する位置に、制御用電極35a、35bを設けている。上基板21の制御用電極34a、34bと下基板22の制御用電極35a、35bに電圧を印加することで、白表示または黒表示のいずれかの色表示に制御している。
【0040】
下基板22の内側に設けた制御用電極35a、35b、並びに、対向電極32a、32b、32h、32c、32d、32e、32i、32f、32gは全て接続していて、コモン電極としての働きをなしている。
【0041】
本実施形態では上記した電極構成を取る。上述したようにセグメント電極31の配置していない箇所であって、対向電極32h、32iと対向する位置に閉鎖したダミー電極37h、37iを設けることによって、絶縁膜の有無以外に上下の液晶セル構造が対称なために、上下基板の絶縁膜の有無の非対称が微弱な電気的な偏りを生じ、これにより液晶分子を任意の一定方向に配向させる、いわゆる単安定状態を発生させることが可能となる。セグメント電極31と対向電極32に電圧を印加したとき、ITO膜からなるダミー電極37h、37iの部位は誘電率が変動して電界強度が増し、それによって自発分極を有する液晶分子の極性方向が揃えられて、白表示または黒表示の単安定性が良くなる効果を得ることができる。
【0042】
次に、セグメント電極の一部である配線電極について、図3を用いて説明する。図3は本実施形態に係る強誘電性液晶パネルのセグメント電極と対向電極の形状パターンを模式的に示した平面図で、図3(a)はセグメント電極の形状パターンの平面図、図3(b)は対向電極の形状パターンの平面図である。なお、本実施形態におけるセグメント電極と対向電極は、複数並んでいるセグメント電極の内の一番端にあって、外部との接続端子の役割をなす配線電極と接続している位置にあるセグメント電極と、その対向電極のパターンを取り上げているものである。また、前述の図2で示した構成は同一符号を付して説明する。
【0043】
最初に、セグメント電極側の電極パターンを示した図3(a)において、先の図2(a)に示したセグメント電極の形状パターンと相異するところは、7つに分割されているセグメント電極のそれぞれに電気導通を図る配線電極を設けた構成のみが異なるものである。また、対向電極側の電極パターンを示した図3(b)において、前述の図2(b)に示した対向電極の形状パターンと相異するところは、対向電極の周囲にあって、セグメント電極の配線電極と対向する位置にダミー電極を設けた構成のみが異なるものである。
【0044】
具体的には、図3(a)に示すように、上基板21の内側に設けられた7つに分割されたセグメント電極31a、31b、31c、31d、31e、31f、31gのそれぞれの電極には電気導通を図る配線電極が接続している。セグメント電極31aには配線電極33aが接続し、セグメント電極31bには配線電極33bが接続しており、以下順次セグメント電極31c、31d、31e、31f、31gにはそれぞれ配線電極33c、33d、33e、33f、33gが接続している。また、2つの制御用電極34a、34bにおいても、同様に、配線電極36a、36bが接続している。
【0045】
これらの配線電極33a、33b、33c、33d、33e、33f、33g、及び配線電極36a、36bの形状パターンは強誘電性液晶パネルの端(図中においては右端)にまで延設されて、外部と電気的接続を図るための端子の役割も果たしている。
【0046】
また、図3(b)に示すように、対向電極32の周囲には、斜線で示した7個のダミー電極38a、38b、38c、38d、38e、38f、38gが設けられている。ダミー電極38aは図3(a)で示した配線電極33aと対向する位置にあって、閉鎖した電極パターンをなす。また、ダミー電極38bも閉鎖した電極パターンをなし、図3(a)で示した配線電極33bと対向する位置にある。同様にして、ダミー電極38c、38d、38e、38f、38gはそれぞれ配線電極33c、33d、33e、33f、33gと対向する位置に設けていて、閉鎖した電極パターンの形状を取っている。このように、7個のダミー電極は7個の配線電極と1対1の関係で対応し、それぞれ対向する位置に設けている。
【0047】
またこのとき、ダミー電極38a、38b、38c、38d、38e、38f、38gは、対向する基板上の隣り合うセグメント電極同士、この図では、隣り合う配線電極33a、33b、33c、33d、33e、33f、33g同士にまたがることがないように配置する。このように配置することによって、配線電極間に横方向の電界が発生して、配線電極間に位置する液晶分子をスイッチングさせることがなく、液晶を注入した直後の状態(単安定状態)を保持することが可能となる。
【0048】
また、図3(b)において、制御用電極35aには外部と電気的接続を取る配線電極39aを設けている。制御用電極35a、35b、及び対向電極32は接続しているので、一箇所の配線電極39aでもって外部との電気導通を図っている。
【0049】
本実施形態においては、図3(a)に示すように、7つの分割されたセグメント電極の内側に、対向電極32に対向したダミー電極37h、37iを設け、更に、図3(b)に示すように、対向電極32の外側の周囲に、配線電極33a、33b、33c、33d、33e、33f、33gに対向したダミー電極38a、38b、38c、38d、38e、38f、38gを設けた構成をなす。
【0050】
このような構成を取ることによって、セグメント表示の周囲は、前述の本実施形態で得られた効果と同じ効果が得られる。つまり、セグメント表示の周囲は、初期の配向状態で、白表示または黒表示のいずれかの表示を得ることができ、白表示または黒表示の単安定性を得ることができる。
【0051】
また、本実施形態では、対向電極をセグメント電極の形状にあわせた形状とし、基板上に対向電極を設けない領域をあえて形成したが、対向電極を基板の全面に形成するいわゆるベタ電極とし形成しても良い。その場合には、ベタ電極の対向電極のみが配置してある箇所に対応して、対向する基板上、つまり、セグメント電極を形成した基板上におけるセグメント電極を形成していない領域にダミー電極を設ける。このような構成であっても、同等の効果が得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
20 強誘電性液晶パネル
20a、20b 側面
21 上基板
22 下基板
23 絶縁膜
24 上配向膜
25 下配向膜
26 強誘電性液晶
27 封止材
28 上偏光板
29 下偏光板
31、31a、31b、31c、31d、31e、31f、31g セグメント電極
32、32a、32b、32c、32d、32e、32f、32g、32h、32i 対向電極
33a、33b、33c、33d、33e、33f、33g、36a、36b、39a
配線電極
34a、34b、35a、35b 制御用電極
37h、37i、38a、38b、38c、38d、38e、38f、38g ダミー電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板のそれぞれの内側に電極を備え、前記一対の基板間に強誘電性液晶を配置した強誘電性液晶パネルであって、
それぞれの前記電極の上には、配向膜を設け、
前記一対の基板のうち、一方の基板又は他方の基板のいずれかの基板にのみ、前記電極と前記配向膜との間に絶縁膜を設け、
前記一対の基板のうち、一方の基板にのみ前記電極が配置され、該配置された箇所に対応して、他方の基板には電気的に閉鎖されているダミー電極が設けられていることを特徴とする強誘電性液晶パネル。
【請求項2】
前記一方の基板に配置された前記電極は、セグメント電極であり、該セグメント電極は該セグメント電極に電圧を印加するための配線電極を有し、前記配線電極を設けた基板に対向する基板には、前記配線電極に対応した箇所にも前記ダミー電極が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶パネル。
【請求項3】
前記ダミー電極は、対向する基板上の隣り合う電極同士にまたがることがないように配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の強誘電性液晶パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−133002(P2012−133002A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283225(P2010−283225)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】