説明

強誘電性液晶(FLC)ポリマー

強誘電性液晶ホスト材料と少量のポリマー添加剤を有するシステムを提供する。一実施形態において、ポリマー添加剤はシステムの物性を向上する。一実施形態において、システムをFLC用途に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2009年1月30日に出願された米国仮出願第61/148,907号の優先権を主張するものであり、その全部をここに参照して援用する。
【0002】
連邦政府から資金援助を受けた研究または開発であることの宣言
本発明は、アメリカ国立科学財団から与えられた中小企業技術移転プログラム第IIP‐0741216号助成金によってなされた。アメリカ合衆国政府は、この発明において、所定の権利を有する。
【0003】
本発明は、一般に液晶に関し、更に詳細には強誘電性液晶に関する。
【背景技術】
【0004】
強誘電性液晶(FLC)は、ディスプレイ市場において現在年間$830億を占めるネマティック液晶に取って代わる可能性を有する(非特許文献1)。ネマティックLCDと比較したFLCの有利な点は、より速いスイッチング速度、劇的な低消費電力、そしてよりすぐれた解像度である。
【0005】
小さいセルギャップに拘束された際にFLCの構造体から発生する自発分子分極は、表示装置において活用し得る独自の特徴をもたらす。この閉じ込めにおいて、わずか数ボルトの低い電界がFLCを反対分極方向の二つの等しく安定な状態間でオンオフすることができる(図2(b))。これは通常双安定と呼ばれる。これに対し、ネマティックディスプレイは一般に“オン”状態を維持するための電界を必要とする。その結果、FLCディスプレイを動作するのに必要な電力は、ネマティックディスプレイに必要なものより非常に少ない。能動切替を両方向に用いるため、FLCは一方向のみに能動的に駆動し得る(また数十ミリ秒で“オフ”状態に受動的に緩和する)ネマティックディスプレイより数百倍も早くオンオフすることができる。
【0006】
FLCはまた、その作用モードにより可能となった非常に薄いギャップにより高い解像度を示す。透過モードにおいて、これらギャップは通常ネマティックLCDの4ないし8μmと比較して2μm未満の厚さである。反射型FLCディスプレイにおいては、このギャップを半分だけ減じ、1μm未満の厚みとなる。それゆえ、5μmもの小さいピクセルが明示される。FLCの他の有利な点は、180度の視野角である(ネマティックディスプレイのように分子が画面と同じ面でオンオフし、その面の中や外でないために入手し得る)。
【0007】
FLCディスプレイの製造上の困難な点のほとんどは、ディバイス内部のナノ構造の制御に帰着することができる。分子は自発的に層(スメクティック相)を編成する。しかしながら、これは分子を強誘電性にするには不十分である。分子の長軸は、層法線に対し所望の傾きを有しなければならない(図2(c))。仮に分子の長軸が層法線に沿って単純に向く場合、層の面に自発双極子がない。傾きだけでは強誘電性を帯びるには十分でない。これらはまたキラルでなければならないので、分子は層の面に逆方向の双極子を持つ二つの異なった傾斜状態を区別することができる。しかし、層に双極子成分を有することは、再び巨視的に強誘電性物質を与えるに十分ではない。隣接する層がその双極子を同じ方向に向けるように強いることは自由エネルギーを要するので、システムは双極子の“螺旋階段”配列をとる傾向があり、その結果巨視的な双極子にならない。層を促してその双極子の単一で均一な配向に一致するようにすることは、薄いギャップへの閉じ込めを必要とするので、表面効果はバルク効果と同程度に重要になる。分子がセルの壁面に平行な状態になるような強力な誘引を有するように表面を合わせることにより、二つの明白な配向を他のすべてに対し有利に働かせることができる(“螺旋階段”のほとんどの階段を除去するので、双極子がそれぞれをキャンセルする選択肢をもはや有しない)。そのような見識は液晶の分野においては常識である、すなわち“表面安定化強誘電性液晶”(SSFLC)の概念は1980年にノエル クラークとセヴァン レイガーウォールによって提唱された。SSFLCに関する重大な発見がなされてから20年以上が経過し、より多くの知的財産が特許になるにつれて、この分野の現在のルネッサンスにつながった。したがって、理想的なFLCディスプレイの層構造は、“ブックシェルフ構造”であり、ここで層がセルの壁面に対し直角になり、層中の分子が平均してセルの壁面に平行に配向される(図2(a))。次いで、LCダイレクターが層法線に対し必要な傾きを満たす二つの明白な配向の一つにおいて表面と平行に配列するように強いられる(図2(b)、(c))。完全なブックシェルフ配列の結果、電界を利用してダイレクター配向を二つの“許された”配向のどちらか一方へ“すばやく入れる”ことができる。電界を排除した後、ダイレクターは再配向しない(図2(c))ので、電圧印加を停止する場合安定である。しかしながら、SSFLCの発見から間もなく、“ブックシェルフ構造”を達成することは容易でないことが明らかになった。
【0008】
実際には、FLC層がブックシェルフ配向と異なって対称に傾いた二つのタイプの層で山形にしばしば配向される(非特許文献4)(図3)。これはFLC装置にとって重大な問題である。その理由は、ブックシュルフ構造なしに双安定性を得ることが困難であるからである。確かに、現在市販の僅かなFLC装置は双安定でなく、連続的に印加された電界を使用して分子を選ばれた光学軸状態に保持するので、FLCの大きな利点の一つ、すなわち低消費電力が生かされていない(非特許文献5)。ジグザグ欠陥は山形層構造形成の可視的兆候である。異なる山形方向を有するドメインの境界は、FLCセルを直交偏光子により観察する際に“光の漏れ”、すなわち輝線をもたらす(図1)。かかる光学的欠陥は、装置をディスプレイとして無用にする。前述の問題を解決しょうとして多くの努力がなされてきた。
【0009】
一つのアプローチとしては、層をブックシュルフ構造へ強制する配向層として斜めに配置されたアモルファスシリコンを使用する方法がある。不幸にも、シリコンを真空室内で堆積しなければならないので、当該方法は高価で、また様々なタイプのセル形状に適用することが困難である。他の方法として、高電圧、低周波数の電界を不所望な“山形構造”を有するセルに印加して擬似的なブックシェルフ構造に誘導する方法が挙げられるが、これらセルは山形構造のセルよりスイッチング速度が緩徐である。擬似的なブックシェルフ層構造は熱力学的に誘起されないので、セルを他のLC相へ加熱するならば、配列が失われる。
【0010】
FLCホストにおける現場重合が別の方法であり、文献に記載されている(非特許文献6、7、8)。この方法では、LCをセルに装荷する際に重合用の反応性またはイオン性種が存在し、その後当該種を重合するのにUV照射工程が要求される(装置内で有機材料の同時損失を伴う)。他の方法では、ポリマーがホストとから分離した相を形成し、LC層の光学的均一性を低下させる。前述した不利な点に加えて、従来の方法は作動電圧やスイッチング速度に悪影響していた。現場重合を含む方法は、長年の試行錯誤にもかかわらず商品化に至っていない。
【発明の概要】
【0011】
従来の強誘電性液晶(“FLC”)ホスト物質と少量のポリマー添加剤とを含むシステムを通常提供する。より具体的には、ポリマー添加剤は本明細書にさらに記載するような側鎖型液晶ポリマーである。ポリマー添加剤はFLCホスト中に少量(実施形態では0.01ないし5重量%)で存在する。一実施形態において、一つ以上のポリスチレン末端基が側鎖型液晶ポリマーに化学的に結合する。一実施形態においては、ポリスチレン末端基が側鎖型液晶ポリマーに化学的に結合しない。“ポリマー添加剤”、“ドーパント”及び“側鎖型液晶ポリマー”並びにこれら用語の他のバリエーションを本明細書中で互換的に使用する。強誘電性液晶ホストおよび側鎖型液晶ポリマーは同時に本明細書で用いるような“強誘電性液晶組成物”である。
【0012】
出願人は理論に束縛されることを望むものではないが、ポリマー添加剤はFLCホストに可溶で、処理によりFLCホストと一緒に配向秩序の変化を受け、山形形態として生ずるせん断変形に耐えるものと思われる。ポリマー添加剤は、任意のポリマー、スペーサー及び液晶、又はFLCホストへの導入により所望の効果をもたらす他の基を含むことができる。側鎖型液晶ポリマーに有用なポリマー、スペーサーおよび液晶の具体例を本明細書に示し、説明する。本発明の一態様において、側鎖型液晶ポリマーを重合し、次いでFLCホストに添加する。本発明の一態様において、ポリマー添加剤を含むFLCホストのスイッチング速度はポリマー添加剤無しのFLCホストのスイッチング速度と同程度に早い(5%以内)か、又はそれよりも早い。一実施形態において、本明細書に記載のFLC組成物は双安定スイッチングを示す。一実施形態において、ポリマー添加剤を含むFLC組成物の光学的立ち上がり時間は、ポリマー添加剤無しのFLCホストの光学的立ち上がり時間とほぼ等しい(5%以内)か又はそれより少ない。本発明の一態様において、FLCホストへのポリマー添加剤の添加は、セルまたは装置中の混合物のコントラストを向上する。本発明の一態様において、FLCホストへのポリマー添加剤の添加は、セル又は装置中のFLC組成物の欠陥を低減し、ジグザグ欠陥がその一例である。本発明の一態様において、本明細書に記載のFLC組成物を含む装置の応答速度は、ここに記載したように、ポリマー添加剤を含有しない装置の応答速度と比較して改善される。本発明の一態様において、本発明のFLC組成物はここに記載した効果の一つ以上を有する。
【0013】
本発明は、カメラのファインダーやホームシアターのような小型・大型のディスプレイや装置を含む本発明のFLC組成物を用いた液晶セルや装置を含む。これらセルおよび装置の製造と使用は当業者に周知である。
【0014】
本発明の一態様において、本明細書に記載したポリマー添加剤は、FLC組成物中にFLCホストから分離した相を形成しない。本発明の一態様において、ポリマー添加剤中のポリマーがチオールスペーサーまたはシロキサンスペーサーを通じて液晶に連結される。これらスペーサーの合成や使用は当業界で既知である。本発明の一態様において、ポリマー添加剤に用いる液晶基は双極子を有しない。本発明の一態様において、ポリマー添加剤に用いる液晶基は双極子を有する。
【0015】
より具体的には、本発明の一態様で提供するものは、強誘電性液晶ホスト及び0.01ないし5重量%の側鎖型液晶ポリマーを含む強誘電性液晶組成物であり、ここで該側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX1):
【化1】

(式中のPXはポリマー、Wはスペーサー、LCは液晶である)を有する。一実施形態において、PXはポリチオレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びポリブタンジエンからなる群から選択される。これらPXポリマーの繰り返し単位を以下に示す。一実施形態において、Wはシロキサンまたはチオール含有スペーサーである。一実施形態において、LCはFLCホストの成分中の基の少なくとも一部を含む。
【0016】
一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーは下記の構造(FX2)を有し、
【化2】


式中のPXは、
【化3】

、[‐(CH‐CH‐S)‐]、[‐(NH‐CH‐C(=O))‐]、[‐(‐C(=O)‐N‐C(=O))‐]、[‐(Si(CH)‐O)‐]、[‐(CH‐CH(C(O)=O)‐]、[‐(CH‐C(CH)(C(O)=O)‐]、[‐(CHCH)‐]、[‐(CH(CHCH))‐]、又は[‐(CH‐CH(CHCH))‐]であり、それぞれのPXにおけるnは独立して50ないし10000の整数であり、
Wは‐(O)‐(CR1314‐(O)‐FX‐(O)‐(CR1516‐(O)‐であり、ここでx及びyはそれぞれ独立して0から20までの整数であり、
FXは‐S‐、‐S(=O)‐、‐O‐、‐C(=O)‐、
【化4】

、及び
【化5】

から選択したスペーサーであり、ここでqは0から10までの整数、tは1から10までの整数、各bは独立して0または1であり、R、 R、 R 及び Rはそれぞれ独立して任意に置換されたC−Cアルキルから選択され、当該任意の置換基は一つ以上のハロゲンであり、R13、R14、R15及び R16はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、Lはそれぞれ独立して‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐C=C‐、‐C≡C‐、‐(CH‐及び単結合から選択され、uは1から10の整数であり、
及びRはそれぞれ独立して
【化6】


【化7】

、及び
【化8】

から選択され、ここでX、 X、 X 及びXは独立して水素、ハロゲン、メトキシ、C‐Cアルキル又は -CNから選択され、この場合(a)各Z及び各YがCHであるか、又は(b)各ZがN、各YがCHであるか、若しくは(c)各YがN、各ZがCHであり、
及び Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン及び‐(O)‐(CH‐CHであり、ここでpは0から20までの整数、vは0又は1であり、
30 及び R31は独立して水素又はハロゲンである。本明細書に記載したそれぞれのPXは、適当な末端基を含む。この基はすべて明確に示されていないが、当該分野でありふれている。
【0017】
一実施形態において、LC中の任意の環は、その環のCを置換する一つ以上のヘテロ原子を含むことができる。一実施形態において、LC中の任意の環は、本明細書に記載し、当業界で既知のハロゲン、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ及び他の置換基を含む一つ以上の任意の置換基を含むことができる。一実施形態において、LCは一つ以上縮合環を含むことができる。一実施形態において、LCは一つ以上の縮合五員環若しくは六員環又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0018】
一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、
【化9】

の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、[‐(CH‐CH‐S)‐]の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、[‐(NH‐ CH‐C(=O)‐]の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、[‐(‐C(=O)‐N‐ C(=O))‐]の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、[‐(Si(CH)‐O)‐]の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、[‐(CH‐CH(C(O)=O)‐]の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、[‐(CH‐C(CH)(C(O)=O)‐]の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、[‐(CH‐CH(CHCH))‐]の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、[‐(CHCH)‐]の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のPXは、[‐(CH(CHCH))‐]の式を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数である。
【0019】
一実施形態において、PXのあらゆる可能性におけるnは100から5,000までの整数である。一実施形態において、PXのあらゆる可能性におけるnは500から1,000までの整数である。
【0020】
一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中の各Lは独立して‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐(CH‐及び単結合からなる群から選択され、ここでuが1から10までの整数であり、Wは‐(CH‐FX‐(CH‐でり、x及びyはそれぞれ独立して0から20までの整数であり、
FXは‐S‐、
【化10】


、及び
【化11】


から選択したスペーサーであり、ここでqは0から10までの整数、tは1から10までの整数であり、
、 R、 R及び Rはそれぞれ独立して水素、及びC1−C6アルキルから選択され、
PXは構造
【化12】


を有するポリマーであり、ここでnは50から10,000までの整数であり、
及びRはそれぞれ独立して
【化13】


及び
【化14】


から選択され、ここでX、X、X及びXは独立して水素、ハロゲン又は−CNであり、この場合(a)各Z及び各YがCHであるか、又は(b)各ZがNであり、各YがCHであるか、若しくは(c)各YがNであり、各ZがCHであり、R及びRは独立してpが0から20までの整数、vが0又は1である‐(O)‐(CH‐CHであり、R30及びR31はそれぞれ独立して水素又はハロゲンである。
【0021】
一実施形態において、強誘電性液晶組成物中の側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX3)を有し、
【化15】


ここでnは200から1,000までの整数である。
【0022】
一実施形態において、強誘電性液晶組成物中の側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX4)を有する。
【化16】

【0023】
一実施形態において、強誘電性液晶組成物中の側鎖型液晶ポリマーにおけるL‐Rが、
【化17】

である場合、XとR11は、これらが結合した環上の炭素原子とともに五員環を形成するので、LCが構造
【化18】


を有し、ここで各Rは独立してC1−C6アルキルである。
【0024】
強誘電性液晶組成物の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマー中のLCが下記の構造
【化19】


を有し、ここで各Rが独立してC1−C6アルキルである。
【0025】
強誘電性液晶組成物の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX5)、(FX6)、(FX7)、又は(FX8)を有し、
【化20】


式中のArはフェニル、ピリミジン、ピリジン及び環中に任意のO又はSヘテロ原子を有するシクロヘキシルから選択され、wは0から3の整数であり、R20、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立して‐H、‐F、‐Cl、‐Br、‐CN、‐CF3、‐OCF3、‐OCH3、任意の置換基が一つ以上のハロゲンであるC1‐C6の任意に置換されたアルキル及びC1−C6アルコキシであり、RGは以下の群から選択され、
【化21】


及び
【化22】


ここでR25はC1‐C6アルキル又はC1−C6アルコキシであり、PXは
【化23】

、[‐(CH‐CH‐S)‐]、[‐(NH‐CH‐C(=O))‐]、[‐(‐C(=O)‐N‐C(=O))‐]、[‐(Si(CH)‐O)‐]、[‐(CH‐CH(C(O)=O)‐]、[‐(CH‐C(CH)(C(O)=O)‐]、[‐(CHCH)‐]、[‐(CH(CHCH))‐]又は[‐(CH‐CH(CHCH))‐]であり、各PXのnは独立して50ないし10000の整数であり、
Wは‐(O)‐(CR1314‐(O)‐FX‐(O)‐(CR1516‐(O)‐であり、x及びyはそれぞれ独立して0から20までの整数であり、
FXは‐S‐、‐S(=O)‐、‐O‐、‐C(=O)‐、
【化24】

、及び
【化25】

から選択されたスペーサーであり、
qは0から10までの整数、tは1から10までの整数であり、
それぞれのbは独立して0又は1であり、またR、R、R及びRはそれぞれ独立して任意の置換基が一つ以上のハロゲンである任意に置換されたC1−C6アルキルから選択され、
13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立して水素又はハロゲンであり、R27はC1−C20アルキル、C1−C20アルコキシ、ハロゲン、水素、‐Q(CH(CFCF又は‐Q(CH(SiMe)(CH(CFCFであり、ここでQはO、S、CO、CO2、又は単結合であり、それぞれf及びgは独立して0から10までの整数であり、
各Tは独立してCH又はNであり、TがCHのときは、Tをハロゲン、‐CF3、OCF3、‐CN、‐OCH3又はCH3で任意に置換し、
は、
【化26】

及び
【化27】

から選択され、
、X、X、及びXは独立してH又はハロゲンであり、この場合(a)各Z及び各YがCHであるか、又は(b)各ZがNであり、各YがCHであるか、若しくは(c)各YがNであり、各ZがCHであり、
及びRは独立して‐(O)‐(CH‐CHであり、pは0から20の整数であり、vは0又は1であり、
は、
【化28】

又は
【化29】

であり、ここでX、X、X及びXは独立してH又はハロゲンであり、この場合(a)各Z及び各YがCHであるか、又は(b)各ZがNであり、各YがCHであるか、若しくは(c)各YがNであり、各ZがCHであり、
各Lは独立して‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐C=C‐、‐C≡C‐、‐(CH‐及び単結合から選択され、uは1から10までの整数である。
【0026】
強誘電性液晶組成物の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーは下記の構造(FX9)、(FX10)又は(FX9A)を有し、
【化30】


【化31】


ここでnは500ないし1,000の整数、aは5ないし9の整数である。
【0027】
式(FX5)−(FX10)を含む本明細書に記載したあらゆる式の強誘電性液晶組成物の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーのPXは、nが50から10,000までの整数である構造
【化32】

を有するポリマーである。
【0028】
一実施形態において提供される強誘電性液晶組成物は、強誘電性液晶ホスト及び0.01ないし5重量%の側鎖型液晶ポリマーを含み、ここで側鎖型液晶ポリマーが構造(FX11)
【化33】


を有し、この場合PXはポリマー、Wはスペーサー、LCは液晶、EGはポリスチレン末端基であり、各iは独立して0又は1である。この実施形態では、一つ以上のポリスチレン末端ポリマーがポリマー添加剤に含まれる。式(FX11)の別の実施形態では、各iは0である。式(FX11)の別の実施形態では、一つのiは1であり、他方のiは0である。式(FX11)の別の実施形態では、各iは1である。
【0029】
一つの実施形態で提供される強誘電性液晶組成物は、強誘電性液晶ホスト及び0.01ないし5重量%の側鎖型液晶ポリマーを含み、この場合側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX11A)
【化34】


を有し、ここで変数は上記で定義したとおりである。
【0030】
また示される強誘電性液晶組成物において、側鎖型液晶ポリマーは下記の構造(FX12)を有し、
【化35】


ここで各iは0又は1であり、
各EGは、
【化36】

であり、dは独立して100から1,000までの整数であり、各R10、R11及びR12は水素、ハロゲン又は−CNであり、
PXは、
【化37】

、[‐(CH‐CH‐S)‐]、[‐(NH‐CH‐C(=O))‐]、[‐(‐C(=O)‐N‐C(=O))‐]、[‐(Si(CH)‐O)‐]、[‐(CH‐CH(C(O)=O)‐]、[‐(CH‐C(CH)(C(O)=O)‐]、[‐(CHCH)‐]、[‐(CH(CHCH))‐]又は[‐(CH‐CH(CHCH))‐]であり、それぞれのPXのnは独立して50ないし10,000であり、
Wは、‐(O)‐(CR1314‐(O)‐FX‐(O)‐(CR1516‐(O)‐であり、x及びyはそれぞれ独立して0から20までの整数であり、
FXは、‐S‐、‐S(=O)‐、‐O‐、‐C(=O)‐、
【化38】

、及び
【化39】

から選択されるスペーサーであって、
qは0から10までの整数、
tは1から10までの整数、各bは独立して0または1であり、
、R、R及びRは独立して任意の置換基が一つ以上のハロゲンである任意に置換されたC1−C6アルキルから選択され、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立して水素又はハロゲンであり、各Lは、‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐C=C‐、‐C≡C‐、‐(CH‐及び単結合から選択され、uは1から10の整数であり、
及びRはそれぞれ独立して
【化40】


【化41】

、及び
【化42】

から選択され、ここでX、X、X及びXは独立して水素、ハロゲン、メトキシ、C1−C3アルキル、又は−CNであり、この場合(a)各Z及び各YがCHであるか、又は(b)各ZがNであり、各YがCHであるか、若しくは(c)各YがNであり、各ZがCHであり、
及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン及び‐(O)‐(CH‐CHであり、pは0から20の整数、vは0又は1であり、
30及びR31はそれぞれ独立して水素又はハロゲンである。
【0031】
一実施形態においてはまた、本明細書に記載した強誘電性液晶組成物を提供し、この場合側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX12A)を有し、
【化43】


ここで変数は式(FX12)で記載したようなものである。
【0032】
本明細書に記載した各式の一実施形態として、強誘電性液晶組成物の側鎖型液晶ポリマー中のPXが構造
【化44】

を有しているポリマーであり、nは50から10,000の整数である態様を提供する。
【0033】
また、本明細書に記載したような強誘電性液晶組成物を示し、この場合側鎖型液晶ポリマーは下記の構造(FX13)構造を有し、
【化45】


ここで各dは独立して100から1,000までの整数、nは50から10,000までの整数である。本発明の特定の態様において、この構造(FX13)及びPXの各側鎖にポリスチレン末端基を有する他の構造が、ポリスチレン末端基を有していないポリマー添加剤及びPXに結合した一つのポリスチレン末端基を有するポリマー添加剤に対する比較として使用される。
【0034】
一実施形態においてはまた、本明細書に記載したような強誘電性液晶組成物を提供し、この場合側鎖型液晶ポリマーは下記の構造(FX14)を有し、
【化46】


ここでdは100から1,000までの整数、nは50から10,000までの整数である。
【0035】
本発明の一態様では、下記の構造(FX14A)構造を有する側鎖型液晶ポリマー添加剤が提供され、
【化47】


ここで変数は式(FX12)で定義されたようなものである。
【0036】
本発明の一態様において、本明細書に記載した側鎖型液晶ポリマーは、強誘電性液晶ホストが強誘電性である温度で該強誘電性液晶ホストに可溶である。本発明の一態様において、構造FX2を有する化合物及び本明細書で具体的に同定された他のすべての化合物は、これら化合物を別々に請求するための支持を与えるように別々に記載される。
【0037】
一態様においてはまた、二つの対向電極面と、その間に配置した本明細書に記載の強誘電性液晶組成物とを備える光学装置を提供するもので、該光学装置は側鎖型液晶ポリマーを含有しない光学装置と比較して優れたコントラストを有する。
【0038】
また一態様において、強誘電性液晶ホストを該強誘電性液晶ホストに可溶な0.01ないし5重量%の側鎖型液晶ポリマーと接触させることを備える強誘電性液晶組成物の製造方法を提供する。
【0039】
本発明の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーが1重量%未満の濃度で強誘電性液晶組成物中に存在する。本発明の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーが5重量%未満の濃度で強誘電性液晶組成物中に存在する。本発明の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーは0.1重量%未満の濃度で強誘電性液晶組成物中に存在する。一実施形態では、ポリマーPXのnが50ないし5,000の整数である。本発明の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーは30,000g/molないし3,000,000g/molの分子量を有しており、全ての中間の値と範囲がその中にある。本発明の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーは30,000g/molないし50,000g/molの分子量を有する。本発明の一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーは1,000,000g/molないし3,000,000g/molの分子量を有する。
【0040】
本明細書に用いるような“可溶性の側鎖型液晶ポリマー”及び他の表現の形式は、側鎖型液晶ポリマーがホスト及び側鎖型液晶ポリマーの均一な組成物を形成し、相分離層またはその一部がないことを意味する。本発明の一態様において、本発明の側鎖型液晶ポリマーは可溶性側鎖型液晶ポリマーである。可溶性側鎖型液晶ポリマーの少なくとも一部分をホストにより少なくともある温度及び濃度条件下で溶媒和する。本発明において、側鎖型液晶ポリマー及びホスト間の会合は物理的な会合であり、液晶ポリマー及びホスト間の化学的結合ではない。末端基のない本発明の一態様においては、側鎖型液晶ポリマー基間の物理的な架橋はない。
【0041】
一実施形態において、LCは一つ以上の芳香族若しくは非芳香族の六員環を有する核を含み、当該環はその中の一つ以上のヘテロ原子と、アルキル、アルコキシ及びハロゲンを含む一つ以上の置換基と、本明細書に記載した構造、及びアルキルシラン、パーフルオロアルキルシラン並びにシリルフルオロ尾部を含む一つ以上の尾とを含むことができる。
【0042】
本明細書に用いるような置換基若しくは基又はその他の基のあらゆるグルーピングは、いかなる目的に対しても請求項における基の一つ以上の員の包含又は除外を含む基の一つ以上の員の包含又は除外を可能にすることを意図するものである。
【0043】
本明細書に使用するように、側鎖型液晶ポリマーが強誘電性液晶ホストに“可溶”であるか又は“溶媒和可溶される”場合、これは側鎖型液晶ポリマーの少なくとも一部がホストにより溶媒和されることを意味する。一実施形態において、液晶基が強誘電性液晶ホストに可溶である。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーがある温度で強誘電性液晶ホストに可溶であり、またそれ以外の温度では可溶でない。一実施形態において、側鎖型液晶ポリマーはホストに可逆的に可溶である。
【0044】
本明細書に用いるような“ポリマー添加剤”は、骨格、スペーサー及びそれらに結合したメソゲンを含む。本明細書に用いるような“FLCホスト”は特定の適用に関与する温度でキラルスメクティック相を形成する低分子の混合物を含む。本明細書に用いるような“コア”は重要な特性(限定しないが、形状、大きさ、分極率、分極子の大きさ及び分極子の配向)に寄与するメソゲンの中心部を指す。一実施形態において、LCはメソゲンである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】FLCセルの処理中頻繁に発生し、装置の有用性を低下させる“ジグザグ欠陥”の光学顕微鏡写真を示す。
【図2】(a)は双安定FLCのスメクティック層の最適な配置が本棚の本のようになることを示し、(b)は、二つの安定状態が反対方向を向く分極子を有し、セルをある状態から他の状態へオンオフするためにセルへ低い電圧の短い印加を可能となすことを示すブックシェルフ配列の側面図であり、(c)はスイッチングが装置の平面で光学軸を再配向してディスプレイ中で利用されるFLC電気光学効果もたらすことを示す平面図である。
【図3】(非強誘電性の)スメクティックA(SmA)相のブックシュルフ配列を生成する製造工程が既知であることを示す。残念なことに、技術的に重要な(強誘電性)スメスティックC*(SmC*)相に冷却をすると、所望の配列構造が不安定になり、“シェベロン欠陥”を形成するセルの中央部で交わる二つの配向に分割する。この構造変化は、配向する全ての層が単一のブックシュルフ配向を示すSmA相の単一ピークからに配向していることを示し、またであることは、所望のブックシュルフ配向に対し同等で反対の角度に回転する二つの集団を示すSmC*相の二つのピークに変化するX線回折のパターン(右図)によって明らかである。
【図4】(a)は非制御冷却後の純粋なFLCホストがジグザグ欠陥を示すことを表し、(b)は1.5%サイド・オン型SGLCPを有するFLCホストがジグザグ欠陥ではなく線状欠陥のみをもたらすことを示し、(c)はブトキシベンゾアートSGLCP構造を示し、(d)はFLCホストに溶解した1.5%の107PBSC6PPC10(ポリマー4)であり、図中の円はセルを均一な厚さにするのに用したスペーサーボールである。
【図5】(a)は、純粋なFLCホストがFLC装置の典型的な操作方式である直流平衡な両極性パルス下で光透過率を典型的な単安定のFLCスイッチングの平方波駆動下での光透過率の1/3より多くまで減ずることを示す。(b)は、FLCホストへの1.5%ポリマーの添加が双安定挙動を提供するブックシェルフ配向の痕跡であるFLCセルにおけるほとんどのスイッチング角度の保持をもたらすことを示す。(c)は、多くのパルス周波数で、サイド・オン型添加剤(FLCに1.5%)が透過した光の約80%を保持することを示す。
【図6】記載したそれぞれの連結タイプが様々なスペーサー長を有する側鎖基に影響を受けやすいことを示す。(a)はチオレン結合から作成した狭く柔軟なリンカーを示し、(b)および(c)はシロキサン結合から作成し、シロキサン結合の長さが増加するにつれて嵩だかになるリンカーを示す。
【図7】(a)は正味の双極子を有しない対称側鎖基を示し、(b)はFLCの配列に対する平行双極子の効果を目標とする側鎖基を示す。
【図8】(a)はフェニルピリミジン(FLCホストコアに合致するコア)を側鎖基に導入する効果を目標とする正味の双極子がない二つの対称な側鎖基を示す。(b)は双極子の大きさを目標とした非対称のフェニルピリミジンコアを示す。
【図9】ポリマー添加剤を含有するFLC混合物の電気光学(EO)的な特徴を示す。
【図10】(a)は1.5%のポリマー2が欠陥を抑制することを示し、(b)は1.5%のポリマー3が明らかに不溶性で、欠陥を抑制しないことを示し、(c)は1.5%のポリマー4が“スキニージグザグ”を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
いかなる特定の理論に束縛されることなく、本発明に関する基本的な原理又は機構の信念又は理解に対する議論がここに存在することができる。いかなる説明又は仮説の根本原理に関わらず、本発明の実施形態はそれにもかかわらず効力があり、有益であることができると認識される。
【0047】
一般に、本明細書で用いる用語やフレーズは、標準的な教科書、論文及び当業者に既知の技術常識を参照することにより見出し得る当業界で認識されている意味を有する。定義は、本発明の文脈においてその特定の用途を明確にするために規定される。
【0048】
本明細書で使用されているように、表現“に対応する基”又は”基“は明確に示唆される種であり、例えば一つ以上の置換基を任意に融資、限定しないが電子供与性基、電子吸引性基及び/又は他の基を含む共有結合構造に付加、列挙された基の一価、二価及び多価のラジカル、例えば芳香環又は複素環芳香族ラジカルを含むラジカルを包含する。
【0049】
本明細書で用いる“アルキル”基は直鎖、分岐及び環状のアルキル基を含む。アルキル基は、1ないし30の炭素原子を有しているものを含む。アルキル基は、1ないし3の炭素原子を有する短鎖アルキル基を含む。アルキル基は、4ないし10の炭素原子を有する中鎖アルキル基を含む。アルキル基は、10以上の炭素原子、特に10ないし30の炭素原子を有する長鎖アルキル基を含む。アルコキシ基は、酸素への結合によって変性されたアルキル基であり、式R‐Oにより表すことができ、またアルキルエーテル基と称することもできる。アルコキシ基を例示するならば、以下のものに限られないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ及びヘプトキシが挙げられる。アルコキシ基は置換アルコキシ基を含み、この場合基のアルキル部分をアルキル基の記述に関連してここに規定されるように置換する。ここで用いるMeO‐はCHO−を指す。
【0050】
アリール基は、一つ以上の五員数又は六員数の芳香族又は複素芳香族環を有する基を含む。ヘテロアリール基は、環中に一つ以上のヘテロ原子(N、O又はS)を有するアリール基である。アリール基は、一つ以上の縮合芳香環を含むことができる。複素芳香族環は、一つ以上のN、O又はS原子を環中に含むことができる。複素芳香族環は、一、二又は三つの窒素を有するもの、一又は二つの酸素を有するもの、一又は二つの硫黄を有するもの、又は、一、二若しくは三つのN、O又はSの組み合わせを含むことができる。アリール基は任意に置換される。置換アリール基は、特にアルキル又はアルケニル基で置換されたものを含み、後者の基も同様に任意に置換し得る。具体的なアリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ピリジニル基及びナフチル基を含み、全ての基は任意に置換される。置換アリール基は、全てがハロゲン化又は一部がハロゲン化されたアリール基を含み、例えば一つ以上の水素を一つ以上のフッ素原子、塩素原子、臭素原子及び/又はヨウ素原子で置換したアリール基である。置換アリール基は、全てがフッ素化又は一部がフッ素化されたアニール基を含み、例えば一つ以上の水素を一つ以上のフッ素原子で置換しアリール基である。
【0051】
あらゆる基の任意の置換は、一つ以上の次の置換基:‐CN基、‐OCH、‐CF、‐CFCF、‐CHCF、CH、NO、CHR、CHOR、ここでRはC1−C3までのアルキル、及び当業界で既知の他の置換基での置換を含む。
【0052】
ポリマー骨格又はLC側鎖基の中のいずれの水素を重水素に置換できる。
【0053】
本明細書で用いる用語“ハロ”又は“ハロゲン”は、フッ素(‐F)、塩素(‐Cl)、臭素(‐Br)又はヨウ素(‐I)のようなハロゲン基を指す。
【0054】
当業界で習慣及び周知なように、ここに示した式中の水素原子は常に明確に示されていない。
【0055】
文脈が明らかでない限り、本明細書中及び添付の請求項に使用されるような単数形の形式“a”、“an”及び“the”は複数形の参照も含むとする。従って、例えば、“項目”の参照は、複数の項目及びその当業者に既知の等価物を含む。また同様に、用語“a”(若しくは“an”)、“一つ以上”および“少なくとも一つ”は本明細書で互換的に使用し得る。用語"備える"、"含む"及び"有する"は互換的に使用し得ることも留意されるべきである。
【0056】
一つ以上の置換基を有する本明細書中に記載した基のいずれについて、かかる基は、立体的に非実用的及び/又は合成的に不可能な任意の置換基又は置換様式を含まないものと理解される。さらに、本発明の化合物は、該化合物の置換に起因する全て立体異性体を含む。
【0057】
本発明の化合物は、一つ以上のキラル中心を有することができる。従って、本発明はラセミ混合物、ジアステレオマーと、エナンチオマーと、一つ以上の立体異性体に豊富な混合物とを含むことを意図する。記載され請求される本発明の範囲は、化合物のラセミ形態並びに個々のエナンチオマーやそれらの非ラセミ混合物も包含する。
【0058】
本発明の化合物や式を当業界で既知の液晶ディスプレイ装置に用いることができる。セルの製造や使用を含む液晶ディスプレイ装置の製造法や使用法は当業界で周知である。
【0059】
本発明は下記の実施例でさらに説明し、これら例は例証として提供するもので、いずれの方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0060】
本明細書に記載したポリマー添加剤で配向品質が大幅に改善されて高いコントラストのLC装置となることが発見された。
【0061】
現場重合の代わりに、FLCに可溶なポリマー添加剤をここで用いる。具体的には、側鎖型液晶ポリマー(SGLCP)、すなわちペンダント型液晶基を有し、LCホスト(溶媒)とともに配向秩序の変化を受け得るポリマーを使用する。所定のLCホストに関して、本明細書に記載した方法を使用してペンダント型側鎖がLC相に溶解性を付与するように設計される。ネマティック溶媒において、少量のポリマーはスイッチ速度に対しほんの僅かな効果を有し、ポリマーとLC(非特許文献9)との間で配向性結合という結果になる。しかしながら、スメクティック系では、スイッチングが層の移動なしで層内で発生する。従って、スイッチングがポリマーを破壊せずに生起するので、FLCのスイッチング速度は速いままである。本発明の態様において、ポリマー添加剤はスメクティックC相へ“ショック冷却”(10秒未満)された場合でもジグザグ欠陥を低減する。本効果は、2種類のLCポリマードーパント、すなわちエンド・オン型及びサイド・オン型SGLCPポリマーにより誘導することができる。
【0062】
30,000 g/モルから3,000,000 g/モルの分子量を有するポリマーは、別の実施形態で特に有用である。分子鎖の短いポリマーは所望の効果を生ずるが、これはより多くのポリマーを必要とし、経済性が低い使用になる。ポリマーの分子鎖が長くなるほど、FLCホストへの可溶が少なくなり、ポリマーは相分離を受ける場合がある。最適な分子量は側鎖基の化学構造やFLCホストの組成を含む変数に依存する。
【0063】
一実施形態において、試験したサイド・オン型ポリマーは1,200,000 g/モル(約400反復単位の重合度)の分子量を有していた。
【0064】
本発明の一態様において、ポリマーの部分を当該ポリマーの他の部分又は他のポリマーで架橋しない。本発明の一態様において、ポリマーはポリオキセタンでない。本発明の一態様において、ポリマーはポリエチレンである。本発明の一態様において、ポリマーはポリブタジエンである。本発明の一態様において、明細書に記載したあらゆる側鎖型液晶ポリマーの任意の部分の組成を当該側鎖型液晶ポリマーの他の部分の組成と組合わせて、請求項への内包又は除外の目的のために明白に示されるような範囲まで個々に開示するのを意図した異なる側鎖型液晶ポリマーを形成することができる。例えば、PXとして本明細書で規定した任意の基を、記載した任意のスペーサーW及び任意の液晶LCと組合わせて、該組合せが明確に示されない場合でも、本発明に有用な側鎖型液晶ポリマーを形成することができる。
【0065】
本発明の材料や装置は、液晶が組み込まれたポリマーの“ミクロンドメイン”を含有しない。むしろ、本発明の材料や装置は、液晶により可溶化したポリマーを有する液晶を備える。本発明の側鎖型液晶ポリマーは液晶ホストと相溶性があり、また少なくとも実質的に均質である。
【0066】
本発明の化合物及び方法において、側鎖型液晶ポリマーは強誘電性液晶ホストと接触した後で重合されず、強誘電性液晶ホストと接触する前に重合される。
【0067】
本明細書で用いる“側鎖型液晶ポリマー”は、結合した液晶基を有するポリマーである。当該液晶基及びポリマーを液晶基の末端部位に付加する(生成した構造をエンド・オン型SGLCPと呼ぶ)か、又は液晶基は当該液晶基の内部位置でポリマーに付加する(生成した構造をサイド・オン型SGLCPと呼ぶ)ことができる。
【0068】
本明細書で用いる“液晶組成物”又は表現の他の変形は、液晶ホスト材料と、ホストに少なくともある温度と濃度でホスト可溶なポリマー添加剤との組み合わせである。
【0069】
本発明の側鎖型液晶ポリマー及び液晶ホストへ言及した際の本明細書で用いる“溶解”又は”可溶“は、側鎖型液晶ポリマーが液晶ホストから相分離しないことを意味する。それゆえ、側鎖型液晶ポリマーは液晶ホストとともに配向秩序の変化を受けることができる。
【0070】
本明細書で用いる“単結合”は、2個の基が互いに直接結合することを意味する。例えば、環を単結合で置換基に結合するときは、環と置換基の間には介在する基がない。
【0071】
本明細書で用いるような分子の一部分として用いるときの置換基から出ている直線の使用は当該分野で標準であり、炭素単位末端化があることを必ずしもない付加した他の置換基があることを示す。例えば、
【化48】

の基において、解釈が化学的使用に合致しない限り、フェニル環に結合した直線は、付加した‐CH末端基又は‐CH‐リンカーがあることを意味せず、むしろ、当該基が分子中の他の基に付加される。
【化49】

の基において、反復単位を終端化する二つの直線は炭素単位(‐CH基)であることを意味し、反復単位を垂直に出る直線は他の基への付加を意味する。この使用法は当業界で標準である。
【0072】
本発明の一実施形態において、本発明の側鎖型液晶ポリマーは共重合体又はブロック共重合体ではなく、一つのポリマー基のみを有し、一般に一実施形態では“PX”として指定される。スペーサー基中の反復単位は、分子を共重合体又はブロック共重合体から区別するとの関連でポリマーと考えられない。
【実施例1】
【0073】
一例として、フェニルピリミジンと、フッ素化ターフェニルと、部分的フッ素化テイル部のフェニルピリミジン並びにフェニルピリジンとから主としてなる所定のFLCマトリックス TM10000に可溶な1.5%のサイド・オン型ブトキシベゾエートSGLCP(図4(c)、nは400である)を使用して本発明を立証した。当該ホストの物性は以下の通りである。
Ps=−27nC/cm2
I 105 N 99 A 92 C −30 X
粘度=90mpas
傾き角=24°
【0074】
この低い濃度で、ポリマー添加剤はホストFLCの相転移温度(SC温度範囲の低下はない)に不利な効果を有しない。光学顕微鏡法は、純粋なFLCホスト中で一般的なジグザグ欠陥が1.5重量%のサイド・オン型ポリマーを添加した際になくなることを示す(図4(a)と4(b))。留意すべきは、特別な熱履歴を使用しないことである。サンプルをあらゆる温度制御なしに大気状態まで単純に冷却された。この顕著なジグザグ欠陥の抑制は添加剤それ自身により与えられた。添加剤は、冷却中の“完全な”熱均一性の必要性(それはFLCディスプレイを非常に小さいサイズに制限し、バッチ処理を必要としてきた)を排除し、また穏やかな冷却の必要性(バッチ処理における長いサイクル時間によってFLCディスプレイのコストに加わった)を排除する。
【0075】
有害なジグザグ欠陥(図4(a))の代わりに見られるものは、セルのスペーサーに由来する問題の少ない針状欠陥(図4(b))である。かかるタイプの欠陥は、より大きなジグザグ欠陥より光の漏洩が著しく少ない。さらに、セルを充填する速度を縮めてスペーサーの通った跡に生ずる障害を最小限にする(セル壁面間の正確なスペースに維持するためにセル中にばらばらに分配される単分散の球体)ことによりこれらを排除することができる。
【0076】
電気光学試験は、サイド・オン型SGLCPを使用したFLCポリマー混合物におけるジグザグ欠陥のないことが単にセル全体にわたり単一な山形を常に有するためではないことを示唆する。山形欠陥の存在に関する単純な光学試験は、双安定性スイッチングの試験とすることであり、つまりブックシェルフ構造でないFLCは双安定でない。この場合、純粋なFLCそれ自身で調製されたセルは双安定でなく、つまり、パルスが全ての双極子を一方向に配列した後、パルスをオフ状態にすると、所望の配列が数ミリ秒以内に失われる(図5(a)の左)。これに対し、同じプロトコル及び同じFLCを使用し、単純に1.5%のSGLCPの添加で調整されたセルは、明らかに双安定性スイッチングを示す(図5(b)、右)。実際に、典型的なビデオ駆動周波数である60Hzを含む試験した全てのパルス周波数で、ポリマーをドープしたFLCは、ON配向に“入る”際に伝送された光の約80%を保持する。これら実験に使用したサイド・オン型ポリマーを図4(c)に示し、ここでn=400である。実験に使用したエンド・オン型ポリマーを構造FX10で示す。
【0077】
より低いジグザグ欠陥と顕著な双安定性が、スイッチ速度の減少なしに当該ポリマーによって、達成される。光学的立ち上がり時間(伝送強度の変化の10%から90%への転移の時間)は、1.5重量%のポリマー量の存在によりあまり変わらない(表1)。
【表1】

立ち上がり時間の改善を示す追加のデーターを本明細書の他のいずれかに挙げる。
【0078】
FLCホストの特性の改善は、本実験のもっとも単純なポリマー構造で達成された。LC中でナノスケール構造への自発的自己集合するコイル状LCジブロックとの直接比較において、ホモポリマーはジグザグ欠陥を抑制するのにより有効で、FLCにより可溶であることが明らかになった。
【0079】
エンド・オン型ポリマーはまた、試験した濃度でジグザグ欠陥を抑制する(図4(D))。本発明の一態様において、エンド・オン型ポリマーは、単一山形方向を助長し、ジグザグ欠陥の抑制につながると考えられる。
【0080】
本例に記載した実験を実施するために、同一濃度(1.5重量%)のサイド・オン型ホモポリマーとサイド・オン型ジブロックポリマーとの混合物(溶液)を作製した。それらセルの0.4μmセルを、詳細に後述するような光学偏光顕微鏡法で観察した。ジグザグ欠陥はジブロックで見られ、ホモポリマーでは見られなかった。
【実施例2】
【0081】
異なる液晶基とポリマーで作製したFLC
ポリマーをドープした双安定性FLC装置の開発において、FLCのホモポリマー安定化の理論的な理解を記載し、またポリマーやFLCホストのライブラリーでの構造/活性の関連研究を記載し、ブックシェルフ安定性、耐久性、双安定性及び傾き角の改良の定量的な評価を行った。
【0082】
液晶基を当該分野で知られた方法により合成するか、又は存在する物質から作成する。これら液晶基をここに記載し、当業界で既知の方法を用いて異なる長さのポリマー骨格に結合する。FLC混合物を所望の相順で作成する。構造活性関係を、溶解性、配列、LC相及び双安定性に対するポリマー設計の効果を評価し、また溶解性、配列及び耐久性に対するFLC相順の効果を評価することにより求める。材料分析は、小角X線解析、電気光学解析、衝撃及び圧力感度試験を含む方法を使用して行われた。ライフタイム測定を行う。また、実験室用および工業用プロトタイプの双安定なポリマーをドープしたFLC装置を作成する。これらの要旨をここに更に述べる。
1.材料
A.ホスト
【0083】
本発明の側鎖型液晶ポリマーをあらゆる従来のFLCホストとともに用いることができる。ホストの組成と調製は当業界で知られている。いくつかの特別な例をここに挙げるが、可能性のあるホストを限定することを意図せず、単に例示しているだけである。
フェニルピリミジンホスト
【化50】


組成:
【表2】

【0084】
この混合物は、相図I70SmA54SmC12Xを有する式になる。下記のネマティック誘導化合物20%を上記のフェニルピリミジン混合物へ添加すると、
【化51】


ネマティック相が導入されて、相図:I88N75SmA70SmC‐12Xを有する混合物になる。
【0085】
下記に示すフッ素化キラル添加剤15%を添加すると、
【化52】

【0086】
下記の特性を有するFLC混合物(MX40010)を提供する。
I86N73SmA66SmC‐22X
Ps = 15 nC/cm2(23℃)
粘度 = 82 mpas
傾き角 = 25度
【0087】
キラルテイル部をFLCコア部に結合することにより形成した多くの異なるキラル添加剤は、自然分極化を混合物に提供して、早いスイッチング速度特性を付与する。そのようなテイル部とコア部の例は以下の通りである。
キラルテイル部:
【化53】


メソゲンFLCコア部:
【化54】

【0088】
Krauseらによる米国特許第4871472号(1989年10月3日発行)に記載されたFLCホストを本明細書に記載しポリマードーパントとともに使用することもできる。
ホストの例1:
3%の2‐p‐ヘキシルオキフェニル‐5‐ヘプチルピリミジンと、
3%の2‐p‐ヘプチルオキシフェニル‐5‐ヘプチルピリミジンと、
3%の2‐p‐オクチルオキシフェニル‐5‐ヘプチルピリミジンと、
3%の2‐p‐ノニルオキシフェニル‐5‐ヘプチルピリミジンと、
7%の2‐p‐ヘキシルオキシ‐5‐ノニルピリミジンと、
23%の2‐p‐ノニルオキシフェニル‐5‐ノニルピリミジンと、
28%のr‐1‐シアノ‐1‐ブチル‐cis‐4‐(4’‐オクチルオキシビフェニル‐4‐イル)シクロヘキサンと、
14%のr‐l‐シアノ‐l‐ヘキシル‐cis‐4‐(4’‐ヘプチルビフェニル‐4イン)シクロヘキサンと、
6%のr‐1‐シアノ‐1‐(4‐ペンチルシクロヘキシル)‐cis‐4‐(4‐ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサンと、
10%の4‐[3‐クロロ‐4‐オクチルオキシベンゾイルオキシ]‐4’‐(2‐5クロロ‐3‐メチルブチリルオキシ)‐ビフェニルとからなる液晶相は、SC78°SA83°Ch102°I 及び20nC/cm2の自発分極Psを有する。
ホストの例2:
3%の2‐p‐ヘキシルオキシフェニル‐5‐ヘプチルピリミジンと、
3%の2‐p‐ヘプチルオキシフェニル‐5‐ヘプチルピリミジンと、
3%の2‐p‐オクチルオキシフェニル‐5‐へプチルピリミジンと、
3%の2‐p‐ノニルオキシルフェルニ‐5‐ヘプチルピリミジンと、
7%の2‐p‐ヘキシルオキシフェニル‐5‐ノニルピリミジンと、
23%の2‐p‐ノニルオキシフェニル‐5‐ノニルピリミジンと、
28%のr‐l‐シアノ‐l‐ブチル‐cis‐4‐(4’‐オクチルオキシビフェニル‐4‐イル)シクロヘキサンと、
14%のr‐l‐シアノ‐l‐ブチル‐cis‐4‐(4’‐オクチルオキシビフェニル‐4イル)シクロヘキサンと、
6%のr‐l‐シアノ‐l‐(4‐ペンチルシクロヘキシル)‐cis‐4‐(4‐ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサンと、
10%の4‐[3‐シアノ‐4‐オクチルベンゾイルオキシ]‐4’‐(2‐クロロ‐3メチルブチリルオキシ)-ビフェニルとからなる液晶相は、SC75°SA78°Ch98°I 及び18 nC/cm2の自発分極Psを有する。
【0089】
フッ素化ターフェニル系に基づくFLCホストの他の例を以下に示す。
【化55】

【0090】
ターフェニル混合物を等量で優れた低粘度ホストに配合してI118N105SmA95SmC‐22Xの相図を付与することができる。
【0091】
5%のキラルエポキシエステル
【化56】

を添加して得られた混合物MX40018は、下記の特性を示した。
I112N108SmA90SmC―25X
a Ps = 34 nC/cm2
粘度64 mpas
傾き角22度
5Vでの立ち上がり時間120 μs
【0092】
FLC混合物の形成用のスメクティックCホスト材料を示す他のチャートを以下に示す。
【表3】

引用文献:Kelly and O’Neill.第一章,“Liquid Crystal for electro Optic Applications”, H. S. Nalwa編集Handbook of Advanced Electronic and Photonic Materials and Devices, Academic Press出版、 2000年、第7巻:Liquid Crystals, Display and Laser Materials
B.ポリマードーパント
【0093】
本明細書に記載した一連のポリマーは、溶解性、光学特性、耐久性並びに双安定性に対する分子量、スペーサー長、側鎖基双極子の強度並びに方向及び側鎖基の剛性の影響を調査することができる。この情報は、一実施形態において最大の商業的成功へのポリマーFLC混合物の最適化を可能にする。
C.分子量
【0094】
より長いポリマー鎖は、ポリマーのより少ない濃度で所望の材料特性強化を付与するならば、さらに少ないポリマー添加剤をディスプレイスクリーンに使用することができる。ここに記載し、また検討された方法を使用して、異なる分子量のポリマーや異なる長さの骨格やスペーサーをドーパントに使用することができる。異なる分子量のポリマーは、異なる回転半径(“Rg”)、すなわち異なる断面積を有する。
D.スペーサー長と種類
【0095】
側鎖基をポリマーに結合するスペーサー基の長さと柔軟性は、鎖骨格とメソゲン側鎖基との間の配向性結合に大きな影響を有することができる。例えば、短いスペーサーとサイド・オン型連結は、ネマティックLCに溶解する際、ポリマーを扁長(“葉巻型”形状)な立体配座にする。スメクティックホストにおいて、このことは、平均して複数の層を横断する細長い軸で層に垂直に配向するための分子鎖を生じ得る。骨格長を一定に保持しながらスペーサー長を増すことによって、ポリマー立体配座の伸長度を減ずることができる。
【0096】
スペーサーの立体配座効果に加えて、スペーサーの長さは、液晶やスペーサーがそれ自体スメクティック層を形成するホスト分子に対し位置づける手段に影響を与えることができる。したがって、スペーサー長はポリマーの溶解性やポリマー骨格の配列に連結するペンダント型液晶の配列の両方に影響を与える。興味のあるスペーサー長は短いもの(例えば〜C4H8〜)から長いもの(例えば〜C12H24〜)までの範囲である。異方性と秩序がしばしば奇偶効果の影響を受けるため、炭素スペーサーの偶数奇数に関心がある(例えば、〜C5H10〜または〜C7H14〜)。一実施形態において、本明細書に記載した式と構造におけるスペーサー“W”のxとyは同じである。一実施形態において、スペーサー“W”のxとyは異なる。一実施形態において、スペーサー“W”のxとyは偶数の整数である。一実施形態において、スペーサー“W”のxとyは奇数の整数である。一実施形態において、スペーサー“W”のx+yは奇数の整数である。一実施形態において、スペーサー“W”のx+yは偶数の整数である。
【0097】
本明細書に記載し、当業界で既知の方法を用いて、側鎖基をポリマーに結合する。ポリマーへの側鎖基のシロキサン結合やチオールエン結合を使用することができる(非特許文献17)。シロキサンリンカーはチオールエーテルリンカーより嵩高で、ポリマーの立体配座や力学を変える。これら有利な結合技術を用いて、特定のLC混合物に対する薄い“ロウ質”のスペーサー(図6(a)参照)と嵩高スペーサー(図6(b)及び(c)参照)との効果を最適化する。
E.側鎖基の極性、大きさ及び方向
【0098】
実施例1に記載したポリマーの側鎖基は対称な分子であるので、正味の双極子モーメントを有しない(図7(a))。きわめて単純な変更(スキーム1(b))を元の化学構造(スキーム1(a))に使用すると、ブトキシベンゾエートポリマーに非常に似た非対称側鎖基を合成することができる。側鎖基の双極子は、FLCへの溶解性に限らず、ジグザグ欠陥の抑制、双安定性の強化及び衝撃安定化を含む性能の基準に基づいて選択することができる。
【化57】

スキーム1.(a)対称側鎖基及び(b)非対称側鎖基を(c)フェニル、ビフェニル、及びフェニルピリミジンコア部から合成するための反応スキーム
【0099】
一般に、非対称の分子は対称分子よりもFLCに一層可溶である。双極子モーメントの導入は、LCダイレクターに対する制御を可能とし、したがってFLCの配向を制御することができる。これは、ポリマーの双極子とFLCホストの双極子との間の共同効果を示す。双極子モーメントの大きさへの効果は、フェニルピリミジン側鎖基のような他の側鎖基を使用して検討することができる(図8を参照)。窒素の側鎖基への添加は、分極率の大きさを増大する。FLCホストそれ自体は、フェニルピリミジンコア部を有する多くの成分を含有するので、この例ではより高い溶解性と、側鎖基およびホスト間の相互作用とがある。これら側鎖基は、本明細書に記載し、当業界で既知の方法を使用して容易に合成される。一例として、対称なフェニルピリミジン側鎖基は、非対称のフェニルピリミジン側鎖基とビフェニル側鎖基の両方と比較し、強双極子並びにフェニルピリミジンコアそれ自体の影響の分析を行うことができる。
【0100】
双極子の大きさに加えて、双極子の方向を制御することができる(スキーム2)。ターフェニルポリマーはフッ素置換の量を変えて合成される。これはまた、市販の化合物からの単純な合成であり、側鎖基の長軸に直角な双極子モーメントを持つ側鎖基を提供する。この一連のポリマーは、用途に応じて様々な配列方向に加工することが可能となる。
【化58】

スキーム2.側鎖基及び“柔軟な”ジ(エチルフェニル)フェニルコア部の長軸に直角な双極子を有する剛直なターフェニルの合成。
F.側鎖基の剛性
【0101】
対称的に架橋したジ‐(エチルフェニル)ベンゼンのような上記側鎖基の全てより剛性の低いコア部を合成することができる(スキーム2)。
G.FLC‐ポリマーの形成
【0102】
ブックシェルフ構造、双安定性及びコントラストを最適化すると同時に、ポリマー添加剤の必要量を最小化しながらポリマーFLC混合物を形成する。本発明の添加剤を、異なる相順序を持ったFLCホストとともに使用することができる(本明細書の以下といずれか他を参照)。
【0103】
工業的に入手可能なFLC組成物を使用して、異なる相順を有するFLCホスト混合物が等方相からSmC相、すなわち等方相からSmC(I‐C)、SmAからSmC(I‐A‐C)及びコレステリックからSmAからSmC相(I‐N‐A‐C)へと冷却することにより作製することができる。同じ相順を有するが、著しく異なったコア構造を有するFLCホストは、異なった最適添加剤構造を有することができる。FLC分曲率、複屈折およびSGLCPとの混和性のような因子が最適なSGLCP構造に影響する。
【0104】
処理の観点から、I‐CFLC混合物は、等方相からセマクティックC相を形成すると、層が即座にブックシェルフ構造を形成する有利な点を有する。しかしながら、“摩擦方向”は層の独自の配向を付与せず、ドメインの2つの集団が形成し、またドメインの退化混合物が一般にディスプレイに無用となる。ポリマーを用いて、一の状態を他の状態に対しバイアスすることができる。例えば、ブックシェルフ構造のモノドメインを形成して、I‐C相順の全ての利益を認識することができる。
【0105】
典型的な混合物(I‐SmA‐SmC*)の第二の部類は、SmA相からSmC*相になる。SmA相を等方相から形成する際に層が形成されるが、通常相を最初に形成する際秩序の欠如によりあまり好ましくない配向を伴う。SmC*相に冷却すると、一方向のみの傾きが形成され、ディスプレイに有用な構造をもたらす。SmA相の存在はまた、混合物をSmC相へ冷却すると層の収縮を生じる。これは、単に層によじれの形成をもたらす空間保持機構である。もしよじれが全て同じ方向(すなわち山形のモノドメイン)に向いているならば、大規模な欠陥は形成されない。しかしながら、山形がスペーサーボール又はディスプレイのシール端縁付近の接着層のような欠陥点付近で逆方向に向いてジグザク欠陥をもたらすのがより典型的である。配列の質や層中のねじれ形成に対するポリマードーパントの影響を研究する。
【0106】
典型的なFLC混合物の最終の部類は、SmC相上にあるSmA相上にネマティック相を含む。ネマティック相の導入は、全てのロッド形状の分子が同じ方向に配列する傾向がある以外、自由流動油のように動きの制度が最小であるため、配列の質を大きく改善する。I‐A‐Cの場合と同様にジグザグが形成されるので、この部類におけるブックシュルフ挙動へのあらゆる改善は非常に歓迎されるもので、増強されたFLC性能をもたらす。
2.材料評価
A.小角散乱(SAS)X線分析
【0107】
層間隔対温度の実験を行って、各ポリマーが本当に誘導するブックシェルフ物性のレベルを定量化する。小角X線による層間隔研究を行う。これは、ブックシェルフ構造が達成された確認を与える。将来の工業化および製造条件の決定に重要な温度の層挙動への影響を研究する。それらの研究が層間隔寸法についての情報を与えるため、X線研究はまた観察されたブックシェルフ安定化の機構への鍵となる見識をあたえる。もしポリマーが分子傾動によって生じたスペースを満たすために新しい層が核となるのを助けることによって山形形成を抑制するのであれば、これはX線回折ピークから直接観察される。
B.光学的及び電気光学的評価
【0108】
光学的及び電気光学的研究は、構造−活性関係の研究の骨格である。光学偏光顕微鏡法を用いて、欠陥を特徴付け、傾き角や複屈折を求める。実施例1に用いたポリマーの性能に基づいて、本明細書に記載した混合物は、もし存在するとしても、微量の欠陥を有する。これは生成するディスプレイのコントラストに直接的なインパクトがある。これはまた、高いコントラスト材料に相当する。傾き角をポリマーの添加前後に試験し、22.5°の理想的な傾きに近い傾き角を示す混合物を選択する。混合物の複屈折を評価して、ポリマーの添加による減少がないこと確実にする。
【0109】
電気光学的測定は、整列した試験セルを方形波または直流パルスでそれぞれ駆動し、セル中の光透過への影響を観察することによりポリマーの立ち上がり時間や双安定への影響を決定するための方法を与える。特有の内部双極子を有するポリマーの添加は、配列、従って双安定性への影響を増やすべきである。
C.寿命試験
【実施例3】
【0110】
FLCポリマー混合物の寿命安定性を決定するために、整列したFLCセルに対する加速エージング試験を行うことができる。セルに極限温度間の温度サイクルや急な速度での温度サイクルを施して、材料のエージングをシミュレーションする。
実施例3.実験法と合成法
表2は、使用した添加ドーパントを示す。
【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

材料と器具類
【0111】
4‐(5‐デシルピリミジン‐2‐イン)フェノールを、LC Vision from Roman Dabrowski‘s laboratory at the Military Institute in Warsawから購入した。他の全ての試薬をシグマアルドリッチ社から99%の純度で入手し、使用する。1.07×10 g/モルで狭い分子量分布(多分散度指数1.07)のポリブタジエン(98%、1、2―含量)がProcter and Gamble社 のSteven Smith博士によって合成された。H NMRスペクトルがVarian Mercury 500MHzスペクトロメーターを使用して得られ、CDClにより記録し、テトラメチルシランに言及された。ポリマー分子量の測定値を、Waters社の示差屈折率検出器(λ=930nm)に接続した4本のPLgel 10μm分析用カラム(Polymer Labs、10から10オームストロング細孔径)中を0.9ml/分で溶出する25℃のテトラヒドロフラン溶媒(THF)を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより得た。分子量測定値はポリスチレン標準を用いる較正に基づいて分析される。
【0112】
相挙動や欠陥の特徴化は、Nikon製の三眼ヘッドOptiphot顕微鏡を用いる光学偏光顕微鏡法により検討した。電界をLC Vision社製LCAS装置波形発生器の機能により作り出し、電気光学的挙動をThorn labsの DET10A光検知器とHP 54503A デジタルオシロスコープにより記録した。
サイド・オン型ポリマーの合成
【0113】
サイド・オン型ホモポリマー(1)は、横方向に結合したブトキシベンゾエート側鎖基(以下に示す)を有する。これとジブロック共重合体を、ポリスチレン末端ブロックとSGLCPブロック内の同じ側鎖基で合成した。
【化59】

エンド・オン型SGLCPホモポリマーの合成
シランカップリング用のビニル末端フェニルピリミジンの合成
【0114】
異なったスペーサー長を有するビニル基末端のフェニルピリミジンを、1,2ポリブタジエンへのシロキサンカップリング用の4‐(5‐デシルピリミジン‐2‐イル)フェノールから合成した。この合成の一般的な手順は次の通りである。4‐(5‐デシルピリミジン‐2‐イル)フェノール(1.89g、6.05ミリモル)、ブロモアルケン(7‐ブロモヘプト‐1‐エン、8‐ブロモオクト‐1‐エン又は10‐ブロモドデカ‐1‐エン、8ミリモル)及びCSCO(2.56g、8ミリモル)を40mlのジメチルホルムアミド中室温で一晩攪拌し、薄膜クロマトグラフィーで観察してエーテルにほぼ定量的に変換された(スキーム3)。反応混合物を50mlのジクロロメタンで三回抽出した。有機抽出物を水で三回洗浄し、MgSOで乾燥した。粗生成物を95%の熱エタノールで再結晶して、分析的に純粋な白い結晶の5‐デシル‐2‐(4‐(ヘプト‐6‐エニルオキシ)フェニル)ピリミジン、5‐デシル‐2‐(4‐(オクト‐7‐エニルオキシ)フェニル)ピリミジン、5‐デシル‐2‐(4‐(デカ‐9‐エニルオキシ)フェニル)ピリミジン(それぞれ1.20g、2.09g、1.69gで、全収率の48.0%、83.6%、66.02%)を得た。
【化60】


スキーム3.エンド・オン型フェニルピリミジンメソゲン側鎖基のWilliamsonエーテル合成
シランカップリングと1,2ポリブタジエン機能化
【0115】
シロキサン結合基をヒドロシラン化(以下に示す)によりアルケン末端フェニルピリミジンメソゲンに付加する。下記は、一つのビニル末端メソゲンを使用する合成を記述する一般的な手順である。十倍超の1,1,3,3‐テトラメチルジシロキサン(TMDS)(3ml、17ミリモル)とメソゲン、例えばC8PPC10V(0.693g、xx 1.69ミリモル)を20mlの無水トルエンに溶解した。少量の白金触媒(PC072ジビニル白金のキシレン錯体、United Chemical Technologies、 Bristol PA)を加え、混合物を50℃で2日間攪拌した。この反応を薄層クロマトグラフィーで観察し、完了した際に溶媒と過剰量のTMDSを80℃で真空下で蒸発し、生成物(SiC8PPC10)を無水のカラムクロマトグラフィーにより精製した(0.639g、収率69.1%)。
【化61】

スキーム4.先ずビニル末端メソゲン、次に1,2‐ポリブタジエンへのシロキサンカップリング。
【0116】
次いで、シロキサン結合メソゲンをプラチナ触媒ヒドロシロキサン化により1,2−ポリブタジエンのペンダントビニル基に付加した(スキーム4)。ポリブタジエン(0.035g、0.6ミリモル)を不活性雰囲気下で10mlの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解した。1.5倍超の新しく精製したSiC8PPC10と少量の白金触媒(PC085、シクロビニル白金のビニルメチルシロキサン錯体、United Chemical Technologies、 Bristol、PA)と混合物を50℃で4から6日間加熱した。反応の進行をH NMRで観察した。反応が終了した際、過剰のスチレンで急冷し、50℃で一晩加熱し、その後ポリマー(2と3)を真空下で5ml溶媒になるまで蒸発により精製し、その後10ppmBHTを含有する冷メタノールでTHF溶液からの沈殿を繰り返し、続いて室温で真空乾燥して一定量とした。
チオールエンカップリング用のベンゾイル保護チオールの合成
【0117】
ベンゾイル保護チオールを、1,2‐ポリブタジエンへのチオールエンカップリング用4‐(5‐デシルポリミジン‐2‐イル)フェノールから合成した。4‐(5‐デシルピリミジン‐2‐イル)フェノール(1.89g、6.05ミリモル)と、1‐ブロモ‐6‐クロロ‐ヘキサン(1.57g、8ミリモル)と、CSCO(2.56g、8ミリモル)とを40mlのジメチルホルムアミド中室温で一晩攪拌して、エーテルにほぼ定量的に変換された(スキーム4)。反応混合物を50mlのジクロロメタンで3回抽出した。有機抽出物を水で3回洗浄し、MgSOで乾燥した。粗生成物を95%の熱エタノールで再結晶して、2‐(4‐(5‐クロロヘキシルオキシ)フェニル)‐5‐デシルピリミジンの分析的に純粋な白い結晶(1.92g、収率76.56%)を得た。
【0118】
その後、2(4−(5−クロロヘキシルオキシ)フェニル)−5−デシルピリジンをチオ安息香酸(0.6g、4ミリモル)および炭酸水素ナトリウム(0.35g、4ミリモル)と反応させ、40℃で一晩攪拌した(スキーム5)。反応混合物を酢酸エチルで3回抽出し、3回水洗し、MgSOで乾燥した。その後、粗ピンク色固体を95%の熱エタノールで再結晶し、分析的に純粋なピンク色の針状結晶(2.2045、収率85.1%)を得た。
【化62】

スキーム5.保護チオールメソゲンフェニルピリミジン側鎖基の合成
チオエステル開裂と1,2‐ポリブタジエン機能化
【0119】
ベンゾイル保護チオール中のチオエステルを開裂し、生成したチオール末端メソゲンをラジカル開始チオールエンカップリングにより1,2‐ポリブタジエンに結合した。まずチオエステル(1g、1.9ミリモル)をヒドラジンモノクロライド(0.13g、1.9ミリモル)と酢酸ナトリウム(0.13g、1.9ミリモル)を有する25‐75mlのDMFに溶解した。反応混合物をアルゴンガスで10分間パージし、室温で6時間攪拌した。チオール生成物を30mlのクロロホルムで抽出し、3回水洗し、10mlのクロロホルムに溶解した1,2PB(0.03g、0.6ミリモル)およびAIBN(50mg)を含有するフラスコに移した。その後、この混合物を2回の凍結−融解サイクルで脱ガスし、一晩55℃で反応させた。次いで、最終ポリマー生成物(4)を真空下で5mlの溶媒になるまで蒸発させることにより精製し、続いて10ppmBHTを含有する冷メタノールでTHF溶液から沈殿を繰り返し、室温で真空乾燥して一定量とした。
【化63】

【0120】
スキーム6. チオエステルのチオールへの開裂、続いて1,2‐ポリブタジンでの直接的なラジカル触媒チオールエンカップリング。
シクロヘキシル環の例
【0121】
下記の分子を、当業界で既知の合成法を用いて作成し、側鎖型液晶ポリマーとして本発明の方法に使用することができ、ここで“ポリマー”は本明細書に示した構造のPXである。
【化64】



ポリマーFLC溶液
【0122】
ポリマーを10成分のフェニルピリミジンFLCホストに溶解した。ホストは、ほとんどフェニルピリミジンメソゲンに基づいた10成分の共晶混合物である。この混合物は、幅広いSc温度範囲(室温より低い温度から95℃)と、利用可能な等方性化温度(115℃)と、S(95℃‐104℃)およびネマティック相(104℃−115℃)の小さな窓とを有する。ポリマーを等方相へ繰り返し反復加熱することにより溶解し、続いて遠心分離および渦混合した。相転移温度を光学偏光顕微鏡とホットステージにより求めた。
光学と電気光学測定
【0123】
ポリマーFLC溶液を、摩擦したポリイミド表面と処理で処理し、透明ITO電極を含有する0.4μm試験セルに、セルと混合物とをFLC等方性転移の温度以上に加熱し、混合物をセル中に流動させることにより充填した。その後、セルを空気中で室温まで“ショック冷却“した、すなわち、緩徐な冷却とセルの温度勾配の制御に特別な取り組みをしなかった。
【0124】
立ち上がり時間およびコントラストを、5V又は8Vの100Hz方形波でセルを起動することにより求めた。セルを光学偏光顕微鏡中に交差極及び頂部に取り付けた光検知器とともに入れた。光検知器をオシロスコープに連結した。立ち上がり時間は、方形波によって発生した光透過に関する透過率10%から90%に要した時間として算出される一方、コントラストは、最も明るい状態の電圧(顕微鏡中サンプルセルのない交差極で“真っ黒な状態”に標準化され、従って可能な限り暗くなるように組み立てた)を暗い状態の電圧(またもっとも暗い状態に標準化されている)で割ることにより算出された。
【0125】
双安定性は、同一セルを100Hzおよび20HzのDC平衡双極子パルスで起動し、スイッチングパルスの停止後の透過率損を対応する周波数の方形波に対して観察することにより測定された。
【0126】
傾き角は、まずオン状態に配向するのに必要な回転角、その後オフ状態にするのに必要な回転角を偏光フィルターで測定することで求めた。この数値は円錐角であり、その後2で割って傾き角を得た。
結果
FLCマトリックス中の溶解性
【0127】
FLCマトリックス中のポリマーの溶解性について若干知られて、この研究に対し第一で、重要な基準がある。低濃度では、使用されたポリマー群はFLCホストにほとんどが可溶である。1.5%のポリマー1、すなわちサイド・オン型SGLCPはFLCマトリックスに可溶である。この低い濃度で、ポリマーはFLCホストの相転移温度に悪影響が無い(Sc温度範囲の低下はない)。このポリマーのホスト中の溶解性は、FLCシステム用に特別に設計されてないため、本方法の幅広い実用性を示す。分子的に設計されたシロキサン結合フェニルピリミジンポリマーのうち、7―炭素スペーサーのフェニルピリミジン2は1.5および0.75重量%の両方で可溶であったが、8―炭素スペーサーのフェニルピリミジン3はいずれの重量%でも不溶であった。これらのポリマーは、スペーサーの炭素が一つだけ異なるが、その分子量、転換率、メゾゲン核はまったく同じであるので、スペーサー長がポリマーの溶解性および偶奇効果の発現に大きな影響を有するが、高いPDIをすでに有し、時間とともに架橋したポリマー、そしてFLC中の3の非架橋溶液を達成し得ることは同じように可能性が高いことである。チオール結合フェニルピリミジンポリマー4は全ての試験濃度で可溶だった。これら結果は、溶解性がきわめて一般的であることを示す。
サイド・オン型ポリマー1
【0128】
光学偏光顕微鏡法は、純粋なFLCホストで一般的なジグザグ欠陥が1.5重量%のポリマー1を添加する際に無くなることを示す(データ示さず)。特別な熱履歴を使用しない。すなわち、サンプルをあらゆる温度制御なしに単純に大気状態まで冷却した。この顕著なジグザグ欠陥の抑制は、添加剤それ自身によって発現したことが明らかである。従って、この添加剤は冷却中の“完全な”熱均一性の必要性(FLCディスプレイを非常に小さいサイズに制限し、バッチ処理を必要とする要因)を排除し、また緩徐な冷却の必要性(バッチ処理における長いサイクル時間によってFLCディスプレイのコストに加えた)を排除する。
【0129】
ジグザグ欠陥(図1)の代わりに、ポリマーFLC混合物中に観察されるものは、セルのスペーサー(セル中にばらばらに分布して壁面間の正確な空間を維持する単分散の球体)で充填方向に発生するように見える針状欠陥である。かかるタイプの欠陥は、大きいジグザグ欠陥より光の漏洩が非常に少なく、さらにセルを充填する比率又は方向を改良してスペーサーの通った跡に生じた障害を最小限にすることによりこれらを取り除くことができる。
【0130】
光学試験は、FLCポリマー混合物にジグザグ欠陥がないことが単一山形方向をセル全体にわたって有することによらないことを示唆する。山形欠陥の存在に関する単純な光学試験は、双安定スイッチングを検討をすることである。すなわち、ブックシェエルフ構造でないFLCは双安定ではない。実際、純粋なFLCそれ自体内に調製したセルはあまり双安定でなく、パルスが全ての双極子を一方向に整列させた後、これをオフにすると、平均60%を超える透過率がミリ秒以内に失われ(図5(A))、これは単安定スイッチングの典型である。一方、同じ手順および同じFLCを用いるが、単に1.5%のサイド・オン型SGLCPを添加して調製したセルは明らかに双安定スイッチングを示す(図5(B)、右)。実際、典型的なビデオ起動周波数である60Hzを含む試験した全てのパルス周波数で、ポリマーをドープしたFLCはON配向に“置く”際に約80%の光透過率を保持する。
【0131】
表3.ポリマーFLC混合物の光学分析。コントラスト比はサンプルと濃度の間で異なるが、いくつかのサンプルは純粋なFLCよりも良好なコントラスト比を有する。スイッチング速度の目安である立ち上がり時間および傾き角は、ポリマーの存在により大きな影響を受けないように見られる。
【表8】

【0132】
ジグザグ欠陥の減少と大幅な双安定性は、スイッチング速度又は傾斜角の損失なしにポリマーにより付与される。光学的な立ち上がり時間(透過光強度の10%から90%を転移する時間)と傾斜角は、一般にポリマー1のあらゆる濃度の存在によっても大きく変化することは無い(表1)。
エンド・オン型ポリマー2、3及び4
【0133】
光学偏光顕微鏡法は、1.5%のポリマー2がジグザグ欠陥を抑制する一方、1.5%のポリマー3やポリマー4は抑制しないことを示す(図10)。しかしながら、ポリマー4のほかの濃度はジグザグ欠陥を抑制する(表4)。
【表9】

【0134】
エンド・オン型フェニルピリミジンポリマーは、純粋なFLCホストよりも若干多い双安定性を示す(表4)。一般に、FLCに可溶で、バルク中のジグザグ欠陥を抑制することが可能であり、増強した双安定性に必要であるが十分な基準でないのが明白であることに注意しなければならないことは興味深いことである。低濃度のサイド・オン型ポリマー(1)や高濃度のチオール結合したエンド・オン型ポリマー(4)は両方とも可溶で、ジグザグ欠陥を抑制するが、純粋なFLCに対する双安定性の向上を示さない。他の興味深い外れ値は1.5%の8炭素スペーサーシロキサン結合したポリマー3であり、FLCに可溶と思われなかったにもかかわらず、ジグザグ欠陥形成を抑制し、若干双安定性が向上した。
【表10】

ジブロック共重合体
【0135】
前述のホモポリマーに加えて、2セットのサイド・オン型ジブロック共重合体及びトリブロック共重合体を検討した。これらブロック共重合体は、ホモポリマーよりはるかに難溶性であり、実際トリブロック共重合体(側鎖型液晶ポリマーおよび2つのポリスチレン末端基を有する)はFLCホストにまったく溶けなかった。ジブロック共重合体(側鎖型液晶ポリマーおよび1つのポリスチレン末端基を有する)はFLCに溶解し得るので、本発明の一態様である。両方のジブロック共重合体が1.5%の濃度のときに、混合物はあまり双安定性を示さず、若干遅いか又は同等の立ち上がり時間と、より低い傾斜角を示した。低い濃度が好ましく、特に0.5重量%以下である。
【0136】
ジブロック共重合体はFLC安定化対する大部分の従来の研究に類似してLC内でナノスケール構造に自発的に組み込まれるが、ホモポリマーとのつき合わせ比較は、ホモポリマーがジグザグ欠陥を抑制するのに一層有効で、FLCへより可溶であることが明らかになった。したがって、意外にも、最大の成功が利用可能な最も単純なポリマー構造で達成された。
可能性のある機構
【0137】
光学偏光顕微鏡法および上記電気光学効果に基づくと、システムをスメクティックA相からスメクティックC相へ冷却すると、ポリマー1は山形を形成すると生起するせん断変形に耐え、速度論的に山形形成を妨げ、その結果として新しい層の核化を促進し、一般的に緩徐なプロセスであると推測される。山形状態やブックシェルフ状態が大まかに熱力学的に等価であると仮定すると、速度論的に好ましい層核化がブックシェルフ構造への永久再配向につながる。
【0138】
一方、エンド・オン型ポリマー2、3及び4はジグザグ欠陥を抑制しているように思われるが、これらは双安定性増強がより少ないことを示す。もしこれらポリマーがFLCを促進して単一山形方向へ緩和するならば、このことはジグザグ欠陥や双安定性の全般的欠如を説明する。
【実施例4】
【0139】
ポリマー添加剤およびFLCを用いる電気光学的試験
FLC混合物DNP‐02(LCV200‐120とも呼ばれる)における3種類のポリマー添加剤LCV20118、LCV20119、LCV20120(LC Vision、 boulder、Colorado、USA))の効果を検討した。添加剤の構造を以下に示す。
【表11】

【表12】

【0140】
FLCホスト混合物DNP‐02は、工業的なディスプレイ製品に使用される標準的なホストFLC混合物より著しく低速であるが、FLC添加剤の比較検討用の優れたホストとして役立つ。全てのポリマー添加剤の濃度をそれぞれ0.5%および1.0重量%とした。標準的な試験セルをこれらFLC混合物で作成し、その電気光学的(EO)特性(光学的立ち上がり時間に対する電圧、光透過率に対する電圧)を評価した。
【0141】
LCV20118の検討によると、驚くべきことに、E‐O性能が濃度に反比例であることを見出した。電圧を一定、すなわち3.0Vで保持する場合、光透過率(スループット)を21%だけ向上する。濃度を0.5%まで下げると、透過率は29%まで向上する。応答速度効果はより明白である。3Vのとき、FLCホストのスイッチング速度は1600μsである。1%のLCV20118を添加すると、立ち上がり時間が46%向上し、1100μsになる。濃度を0.5%に下げると、速度をさらに550μsに向上し、ホスト混合物と比較し2.9倍向上する。
【0142】
LCV20119の場合、3Vのとき、1%での光スループットはFLCホストとほとんど同じである。濃度を半分の0.5%にした場合、スループットを31%だけ向上する。立ち上がり時間の挙動は、LC20118と類似し、1%濃度で23%向上し1300μsになり、さらに0.5%濃度でスイッチング速度が700μs(2.3倍)に向上した。
【0143】
最後に、1%のLCV20120の添加は、光スループットをおおよそ3倍低下する。興味深いことに、濃度を0.5%に下げると、この傾向が逆転し、15%のスループット向上をもたらす。類似の傾向は、LCV20120の立ち上がり時間において見られる。1%での立ち上がり時間は1500μsで、ホストと比較して僅かに向上される一方、ドーパント濃度を0.5%に下げると、立ち上がり時間が2.7倍の600μsに劇的に向上する。
【実施例5】
【0144】
一実施態様において、本発明は強誘電性液晶(FLC)におけるジグザグ欠陥の形成を低減する方法を提供するもので、少量の側鎖型液晶ポリマー(SGLCP)ドーパントをFLCに導入することを備える。一実施形態において、SGLCPドーパントの量が1%である。一実施形態において、FLCホストをスメクティックC相にショック冷却する。一実施形態において、SGLCPドーパントはエンド・オン型SGLCPポリマー又はサイド・オン型SGLCPポリマーである。一実施形態において、SGLCPドーパントはサイド・オン型ブトキシベンゾエートSGLCPである。一実施形態において、サイド・オン型ブトキシベンゾエートSGLCPを1.5%の量で導入する。一実施形態において、本明細書に記載した方法により得た強誘電性液晶(FLC)を提供する。一実施形態において、本明細書に記載したFLCを備えるディスプレイを提供する。一実施形態において、強誘電性液晶(FLC)におけるジグザグ欠陥の形成を低下させるためのポリマードーパントを提供するもので、該ポリマードーパントがFLCに溶解するポリマーである。一実施形態において、ポリマードーパントは本明細書に記載したような側鎖型液晶ポリマー(SGLCP)である。
参照とバリエーションによる取り込みに関する記述
【0145】
この出願書類全体のすべての参考文献は、例えば特許文献、それは発行され若しくは付与された特許又は同等物を含むものであり、同等物とは、特許出願公報、そして非特許文献、又は他の情報源の文献であるが、参照により個々に取り込まれているかのように、ここにその全部が参照により本明細書に組み込まれており、それぞれの参照の程度はこの出願の少なくとも部分的に矛盾したものではない(例えば、部分的に矛盾がある参考文献は、その参考文献のある程度に矛盾のある部分を除き、参考文献として取り込まれている)。
【0146】
本明細書中で採用されている用語や表現は、説明の用語として使用されており制限の用語として使用されていなく、また示されていたり説明されていたりする特性の対応する言葉またはそれらの部分を除き、用語や表現の使用に意図はなく、しかし、請求されている発明の範囲内で様々な変更は可能性があると認識されている。従って、以下のように理解されるべきであり、それは、本発明は好ましい実施形態、典型的な実施形態、及び任意の特性によって特別に公開されてきたにもかかわらず、本明細書中で開示されている観念の変更や変化は当業者によって頼りにされており、また、このような変更や変化は添付の請求の範囲により定義される本発明の範囲内で考慮されるものである。本明細書で規定されている明確な実施形態は、発明の有用な実施形態の例であり、当業者にとって、多くのバリエーションの装置、装置構成材、本明細書に記載されている方法の手段を用いて本発明は実行されることができることは明らかである。当業者にとって明らかであることは、本明細書に記載の手法に有益な手法や装置は多くの任意の組成、及び生産工程の要素や工程を含むことができる。
【0147】
一群の置換基が本明細書で開示されているときは、全ての基の個々の要素及び下位の基は独立して開示されていると理解され、それらには基の構成要素のいずれの異性体、エナンチオマー及びジアステレオマーが含まれる。マーカッシュグループまたは他のグループ化が本明細書中で使用されるとき、基のすべての個々の要素や基の全ての組合せや可能性のある副組合せ、開示されている中に独立して含まれるものと意図される。化合物が本明細書中で化合物の特定の異性体、エナンチオマー、又はジアステレオマーが、例えば、分子式又は物質名においてそのように明記されていない説明がされているとき、その説明は記載されている化合物の各異性体、エナンチオマーであり、又は任意の組み合わせを含むことを意図している。追加的に、特記の無い限り、本明細書に開示された化合物の全ての同位体の変形は開示によって包含されることが意図されるわけではない。例えば、開示されている分子中の一つ以上のいずれかの水素は重水素又は三重水素と置き換えることができると理解されるだろう。分子の同位体の変形は、分子の分析において、及び、分子又はその使用に関連する化学や生物学の研究においては標準として一般的には利用されている。そのような同位体の変形の作製の方法は、当該分野で知られている。化合物の具体名は典型的であることを意図され、当業者は同じ化合物に異なった命名することができると知られている。
【0148】
本明細書中に記載された分子やそれらの塩の全ての可能なイオンの形態は、本明細書の開示に個別に含まれていることが意図されている。
【0149】
本明細書中に記載又は例示されている構成の全ての構築又は組み合わせは、特に断りの無い限り、本発明を実施するために使用できる。
【0150】
例えば、温度範囲、時間範囲、又は配合若しくは濃度の範囲、全ての中間体の範囲や部分範囲のような範囲が仕様で与えられるたびに、同様に、与えられた範囲を含む全ての個々の値は、開示されたものに含まれることを意図されている。本明細書の記載に含まれている範囲若しくは部分範囲における任意の部分範囲又は個々の値は、請求項の範囲から除かれることができると理解されるだろう。
【0151】
明細書に記載されている全ての特許及び刊行物は、その発明の属する技術分野における当業者の技術水準を示している。
【0152】
本明細書中で使用される、“備える”は“含む”、“含有する”または“特徴付けられる”と同義であり、包括的な又は制約が無く、そして追加の説明されていない要素又は方法の工程を除外しない。本明細書中で使用される、“からなる”は、請求項の構成において特定されていないいずれの要素、工程、又は原料を除外する。本明細書中で使用される“から主としてなる”は、請求項に記載の基礎的で新しい種類の特性に実質的に影響を及ぼさない物質または工程を除外しない。本明細書中の各事例において、用語の“備える”、“から主としてなる” 、“からなる”はいずれも他の2つの用語に置き換えられることができる。例示的に適切に本明細書に記載した発明は、任意の要素又はいくつかの要素の欠如の下で、本明細書に開示されていない制限又はいくつかの制限の欠如の下で実施されることができる。
【0153】
当業者は、出発物質、試薬、合成方法、精製方法、分析方法、及び具体的に例示された以外の機器を、過度の実験に依拠することなく、本発明の実施において用いることができることを理解するであろう。任意のそのような物質や方法の、全ての技術的に知られた機能的等価物は、本発明に含まれることを意図されている。採用されている用語や表現は、記載された用語や制限の無い用語として使用されており、そして、示され記載された特性又はそれらの部分の任意の等価物を除くような用語や表現の使用について意図されていなく、しかし、様々な変更は発明の請求の範囲内において可能性がある。従って、以下のように理解されるべきであり、それは、本発明は好ましい実施形態、及び任意の特性によって特別に公開されてきたにもかかわらず、本明細書中で開示されている観念の変更や変化は当業者によって頼りにされており、また、このような変更や変化は添付の請求の範囲により定義される本発明の範囲内で考慮されるものである。主張され、また、権限を付与する開示を文献に記載されている、任意の組成物又は化合物は、請求の範囲に含まれることが意図されておらず、また、特定の立証は、化合物を除外する又は請求の範囲から化合物の分類することを提供されることを意図している。
【0154】
下記の出版物を含めて記載されている刊行物の開示は、本明細書においてその全体が参照により組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0155】
【特許文献1】米国特許第6821455号明細書
【特許文献2】米国特許第7008675号明細書
【特許文献3】米国特許第7179509号明細書
【特許文献4】米国特許第4904066号明細書
【特許文献5】米国特許第5313320号明細書
【特許文献6】米国特許第4896292号明細書
【特許文献7】米国特許第5422036号明細書
【特許文献8】米国特許第6132819号明細書
【特許文献9】米国特許第6583838号明細書
【特許文献10】米国特許第5321533号明細書
【特許文献11】米国特許第6133975号明細書
【特許文献12】米国特許第5138010号明細書
【特許文献13】米国特許第5397503号明細書
【特許文献14】特開平02‐116824号公報
【特許文献15】英国特許出願公開第02274652号明細書
【特許文献16】国際公開第99/32576号
【0156】
【非特許文献1】Display Search, Sept. 2007.
【非特許文献2】Shimada, T.; Kimura, M.: Kobayashi, S.; “Electro−optic bistability of ferroelectric liquid crystal cell prepared using obliquely evaporated sio films,” Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1991 , 201 , 133.
【非特許文献3】Yumiko Takahashi, Atsuo Iida, Yoichi Takanishi, Toyokazu Ogasawara, Michi Nakata, Ken Ishikawa, and Hideo Takezoe, “Dynamic local−layer response of surface−stabilized ferroelectric liquid crystals to a high electric field by time−resolved x−ray microdiffraction,” Phys. Rev. E 2003, 67, 051706.
【非特許文献4】Rieker, T.P. ; Clark, N.A.; Smith, G.S.; Parmar, D.S.; Sirota, E. B.; Safinya, C.R. “Chevron local layer structure in surface−stabilized ferroelectric smectic−C cells,” Phys. Rev. Lett. 1987, 59, 2658−61.
【非特許文献5】Ajlun, C, “Stamp−Sized Ferroelectric LCD Can Power 50−in. TV Screens” Electronic Design, 2000, 48, 26.
【非特許文献6】Murashige, T; Fujikake, H; Sata, H; Kikuchi, H; Kurita, T; Sato, F; “Polymer Alignment Behavior with Molecular Switching of Ferroelectric Liquid Crystal, J. J. Apl. Phys. 2007, 46, 2, L37−J39.
【非特許文献7】Lee, K; Soo, S−W; Lee, S−D; “Fast linear electro−optical switching properties of polymer−dispersed ferroelectric liquid crystals.”Applied Physics Letters, 1994, 64, 6, pp.718−720, XP000422877.
【非特許文献8】Fujikake, H; Aida, T; Yonal, J; Kikuchi, H; Kawakita, M; Takizawa, K; “Rigid formation of aligned polymer fiber network in Ferrolelectric Liquid Crystal.” J. J. Apl. Phys. 1999, 38, 1, 5212−5213.
【非特許文献9】Kempe, M. D.; Scruggs, N. R.; Verduzco, R.; Lal, J.; Kornfield, J.A.; “Self−assembled liquid crystalling gels designed from the bottom up,” Nature Materials, 2004, 3, 177.
【非特許文献10】Shimada, T.; Kimura, M.: Kobayashi, S.; “Electro−optic bistability of ferroelectric liquid crystal cell prepared using obliquely evaporated sio films,” Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1991 , 201, 133.
【非特許文献11】McConnell, G. A.; Gast, A. P. “Melting of ordered arrays and shape transitions in highly concentrated diblock copolymer solutions,” Macromolecules 1997, 30, 435.
【非特許文献12】Yumiko Takahashi, Atsuo Iida, Yoichi Takanishi, Toyokazu Ogasawara, Michi Nakata, Ken Ishikawa, and Hideo Takezoe, Dynamic local−layer response of surface−stabilized ferroelectric liquid crystals to a high electric field by time−resolved x−ray microdiffraction, Phys. Rev. E 2003, 67, 051706.
【非特許文献13】Kempe, M; Kornfield, J.A.; “Shear alignment behavior of nematic solutions induced by ultralong sidegroup liquid crystal polymers,” Phys. Rev. Let. 2003, 90, 11.
【非特許文献14】Kempe, M. Rheology and dynamics of side−group liquid crystalline polymers in nematic solvents [Ph.D Thesis]. Pasadena: California Institute of Technology, 2003, June 09; available from: http://etd.caltech.edu.clsproxy.library.caltech.edu/etd/available/etd−07202003−103429/.
【非特許文献15】Zhao, Y.; Jamieson, A.M.; Olsen, B. G; et al., “Conformation of comb−like liquid crystal polymers in isotropic solution probed by small−angle neutron scattering: J. of Pol. Sci Part B: Polymer Physics 2006, 44, 17, 2412−2424.
【非特許文献16】Marcelja, S, “Chain ordering in liquid crystals. I. Even−odd effect” J. Chem. Phys. 1974, 60, 9, 3599.
【非特許文献17】David, R.L.A; Kornfield. J.A., “Facile, efficient routes to diverse protected thiols and to their deprotection and addition to create functional polymers by thiol−ene coupling,” Macromolecules; 2008, 41, 4, 1151−1161.
【非特許文献18】Kempe, Nature Materials, 2004, 3, 177−182.
【非特許文献19】Palffy−Muhoray, Nature Materials, 2004, 3, 139−140.
【非特許文献20】Xia, JACS, 2009, 131 , 18525−18532.
【非特許文献21】Lee, Appl. Phys. Lett, 1994, 64, 718

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電性液晶ホスト及び0.01ないし5重量%の側鎖型液晶ポリマーを含む強誘電性液晶組成物であって、該側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX1);
【化1】


を有し、ここでPXがポリマー、Wがスペーサー、LCが液晶である強誘電性液晶組成物。
【請求項2】
前記側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX2)を有し、
【化2】


式中のPXは、
【化3】

、[‐(CH‐CH‐S)‐]、[‐(NH‐CH‐C(=O))‐]、[‐(‐C(=O)‐N‐C(=O))‐]、[‐(Si(CH)‐O)‐]、[‐(CH‐CH(C(O)=O)‐]、[‐(CH‐C(CH)(C(O)=O)‐]、[‐(CHCH)‐]、[‐(CH(CHCH))‐]、又は[‐(CH‐CH(CHCH))‐]であり、各PXのnは独立して50から10000の整数であり、
Wは‐(O)‐(CR1314‐(O)‐FX‐(O)‐(CR1516‐(O)‐であり、x及びyはそれぞれ独立して0から20までの整数であり、
FXは‐S‐、‐S(=O)‐、‐O‐、‐C(=O)‐、
【化4】

、及び
【化5】

から選択したスペーサーであり、qは0から10の整数、tは1から10の整数、各bは独立して0または1、R、R、R及びRはそれぞれ独立して任意に置換されたC‐Cのアルキルから選択され、当該任意の置換基は一つ以上のハロゲンであり、
13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、
各Lは独立して‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐C=C‐、‐C≡C‐、‐(CH‐、及び単結合から選択され、uは1から10の整数であり、
及びRはそれぞれ独立して
【化6】


【化7】

、及び
【化8】

から選択され、X、X、X及びXは独立して水素、ハロゲン、メトキシ、C‐Cアルキル又は-CNから選択され、ここで(a)各Z及び各YがCHであるか、又は(b)各ZがNで、各YがCHであるか、又は(c)各YがNで、各ZがCHであり、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン及び‐(O)‐(CH‐CHであり、pは0から20までの整数、vは0又は1であり、
30及びR31は独立して水素又はハロゲンである請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項3】
前記側鎖型液晶ポリマーPXが式
【化9】

を有するポリマーであり、nは50から10,000の整数である請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項4】
前記側鎖型液晶ポリマーの各Lは独立して‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐(CH‐、及び単結合から選択され、uは1から10までの整数であり、Wは‐(CH‐FX‐(CH‐であり、x及びyはそれぞれ独立して0から20の整数であり、
FXは‐S‐、
【化10】

、及び
【化11】

から選択したスペーサーであり、qは0から10の整数、tは1から10の整数であり、
、R、R及びRはそれぞれ独立して水素及びC1-C6のアルキルから選択され、
PXは構造
【化12】

を有するポリマーであり、nは50から10,000の整数であり、
及びRは独立して
【化13】

及び、
【化14】

から選択され、X、X、X及びXは独立して水素、ハロゲン又は‐CNであり、ここで(a)各Z及び各YがCHであるか、又は(b)各ZがNで、各YがCHであるか、又は(c)各YがNで、各ZがCHであり、
及び Rは独立して−(O)−(CH−CHであり、pは0から20の整数、vは0又は1であり、
30 及びR31はそれぞれ独立して水素又はハロゲンである請求項2に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項5】
前記側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX3):
【化15】


を有し、nは200から1,000の整数である請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項6】
前記側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX4)を有する請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【化16】

【請求項7】
前記側鎖型液晶ポリマーにおいて、L‐R
【化17】

である場合、XとR11は、これらが結合したる環上の炭素原子とともに五員環を形成するので、FCが構造
【化18】

を有し、各Rは独立してC1−C6のアルキルである請求項2に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項8】
前記側鎖型液晶ポリマーにおいて、LCが構造
【化19】

を有し、各Rは独立してC1‐C6のアルキルである請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項9】
前記側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX5)、(FX6)、(FX7)又は(FX8)を有し、
【化20】


式中のArはフェニル、ピリミジン、ピリジン及び任意のO又はSヘテロ原子を環内に有するシクロヘキシルから選択され、
wは0から3の整数であり、
R20、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立して‐H、‐F、‐Cl、‐Br、‐CN、‐CF3、‐OCF3、‐OCH3、任意の置換基が一つ以上のハロゲンであるC1‐C6の任意に置換されたアルキル及びC1‐C6のアルコキシであり、
RGは以下に示す基からなる群から選択され、
【化21】


及び

【化22】


25はC1‐C6のアルキル又はC1‐C6のアルコキシであり、
PXは
【化23】

、[‐(CH‐CH‐S)‐]、[‐(NH‐CH‐C(=O))‐]、[‐(‐C(=O)‐N‐C(=O))‐]、[‐(Si(CH)‐O)‐]、[‐(CH‐CH(C(O)=O)‐]、[‐(CH‐C(CH)(C(O)=O)‐]、[‐(CHCH)‐]、[‐(CH(CHCH))‐]、又は[‐(CH‐CH(CHCH))‐]であり、PXのnは独立して50ないし10000の整数であり、
Wは‐(O)‐(CR1314‐(O)‐FX‐(O)‐(CR1516‐(O)‐であり、x及びyはそれぞれ独立して0から20までの整数であり、
FXは‐S‐、‐S(=O)‐、‐O‐、‐C(=O)‐、
【化24】

及び
【化25】

から選択したスペーサーであり、qは0から10の整数、tは1から10の整数であり、
各bは独立して0又は1であり、
、R、R及びRはそれぞれ独立して任意の置換基が一つ以上のハロゲンであるC1‐C6の任意に置換されたアルキルから選択され、
13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立して水素又はハロゲンであり、
27はC1‐C20のアルキル、C1‐C20のアルコキシ、‐Q(CH(CFCF又は‐Q(CH(SiMe)(CH(CFCFであり、QはO、S、CO、CO2、又は単結合であり、各f及びgは独立して0から10の整数であり、
各Tは独立してCH又はNであり、
TがCHのときは、Tはハロゲン、‐CF3、OCF3、‐CN、‐OCH3、又はCH3で任意に置換され、

【化26】

及び
【化27】

から選択され、X、X、X及びXは独立してH又はハロゲンであり、ここで(a)各Z及び各YがCHであるか、又は(b)各ZがNで、各YがCHであるか、又は(c)各YがNで、各ZがCHであり、
及びRは独立して‐(O)‐(CH‐CHであり、pは0から20の整数で、vは0又は1であり、

【化28】

又は
【化29】

であり、X、X、X及びXは独立してH又はハロゲンであり、ここで(a)各Z及び各YがCHであるか、又は(b)各ZがNで、各YがCHであるか、又は(c)各YがNで、各ZがCHであり、
各Lは独立して‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐C=C‐、‐C≡C‐、‐(CH‐、及び単結合から選択され、uは1から10までの整数である請求項1に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項10】
前記側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX9)、(FX10)又は(FX9A):
【化30】


を有し、nは500ないし1,000の整数で、aは5ないし9の整数である請求項9に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項11】
前記側鎖型液晶ポリマーにけるPXが構造
【化31】

を有し、nが50から10,000の整数である請求項9に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項12】
強誘電性液晶ホスト及び0.01ないし5重量%の側鎖型液晶ポリマーを含む強誘電性液晶組成物であって、該側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX11)を有し、
【化32】


ここでPXがポリマー、Wがチオール又はシロキシ含有スペーサー、LCが液晶、EGがポリスチレン末端基であるEGであり、一つのiが0及び一つのiが1である強誘電性液晶組成物。
【請求項13】
前記各iが0である請求項12に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項14】
前記一つのiが1で、一つのiが0である請求項12に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項15】
前記側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX12A)を有し、
【化33】


ここでiは1であり、
EGが
【化34】

であり、dが独立して100から1000の整数であり、各R10、R11及びR12が独立して水素、ハロゲン又は‐CNであり、
PXが
【化35】

、[‐(CH‐CH‐S)‐]、[‐(NH‐CH‐C(=O))‐]、[‐(‐C(=O)‐N‐C(=O))‐]、[‐(Si(CH)‐O)‐]、[‐(CH‐CH(C(O)=O)‐]、[‐(CH‐C(CH)(C(O)=O)‐]、[‐(CHCH)‐]、[‐(CH(CHCH))‐]、又は[‐(CH‐CH(CHCH))‐]であり、各PXのnが独立して50ないし10000の整数であり、
Wは‐(O)‐(CR1314‐(O)‐FX‐(O)‐(CR1516‐(O)‐であり、x及びyがそれぞれ独立して0から20の整数であり、
FXは-S‐、‐S(=O)‐、‐O‐、‐C(=O)‐、
【化36】

、及び
【化37】

から選択したスペーサーであり、qが0から10の整数、tが1から10の整数であり、
各bが独立して0又は1であり、
、R、R及びRがそれぞれ独立して任意の置換基が一つ以上のハロゲンであるC1‐C6の任意に置換されたアルキルであり、
13、R14、R15及びR16がそれぞれ独立して水素又はハロゲンであり、
各Lが独立して‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐C=C‐、‐C≡C‐、‐(CH‐、及び単結合から選択され、前記uが1から10の整数であり、
及びRがそれぞれ独立して
【化38】


【化39】

、及び
【化40】

から選択され、X、X、X及びXが独立して水素、ハロゲン、メトキシ、C1‐C3のアルキル又は‐CNであり、ここで(a)各Z及び各YがCHであるか、(b)各ZがNで、各YがCHであるか、(c)各YがNで、各ZがCHであり、
及びRが水素、ハロゲン及び‐(O)‐(CH‐CHであり、pが0から20の整数で、vが0または1であり、
30及びR31がそれぞれ独立して水素又はハロゲンである請求項12に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項16】
前記側鎖型液晶ポリマーのPXが構造
【化41】

を有するポリマーであり、nが50から10,000の整数である請求項12に記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項17】
前記側鎖型液晶ポリマーが下記の構造(FX14)
【化42】

を有し、dが100から1000の整数、nが50から10,000の整数である請求項12に記載した強誘電性液晶組成物。
【請求項18】
前記側鎖型液晶ポリマーが強誘電性液晶ホストに、該強誘電性液晶ホストが強誘電性である温度で可溶である前記請求項のいずれかに記載の強誘電性液晶組成物。
【請求項19】
二つの対向電極面と、その間に配置した前記請求項のいずれかに記載の強誘電性液晶組成物とを備えてなる光学装置であって、側鎖型液晶ポリマーを含有しない光学装置と比較して優れたコントラストを有することを特徴とする光学装置。
【請求項20】
強誘電性液晶ホストを、該強誘電性液晶ホストに可溶な0.01ないし5重量%の側鎖型液晶ポリマーと接触させることを備える強誘電性液晶組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【公表番号】特表2012−516383(P2012−516383A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548277(P2011−548277)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022329
【国際公開番号】WO2010/088333
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(301059570)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (14)
【出願人】(511187317)エルシー ヴィジョン エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】LC VISION, LLC
【Fターム(参考)】