説明

強靭化剤を有する再生熱可塑性物質

熱可塑性樹脂組成物であって、a)50から92重量パーセントの再生熱可塑性物質(ここで、前記再生熱可塑性物質は、ポリアミド66、ポリアミド6、およびポリアミド66とポリアミド6との繰り返し単位を有するコポリマーからなる群から選択される、少なくとも60重量パーセントの再生ポリアミドを含む);および8から30重量パーセントのポリマー強靭化剤(ここで、前記ポリマー強靭化剤は、少なくとも1種の酸ポリマー強靭化剤を含み、前記ポリマー強靭化剤は、前記熱可塑性組成物中にブレンドする前に約10から約90mgKOH/gの平均計算酸価を有する)を含む、熱可塑性樹脂組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ポリアミド66およびポリマー強靭化剤を含む再生熱可塑性物質の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の再生利用は、潜在的に費用効率が高く、様々な成型熱可塑性部品への資源効果的な経路である。再生熱可塑性物質は、多くの供給源に由来し得る。より豊富であまり高価でない供給源の一つは、製造廃棄物などのカーベット由来のポリアミド6,6であり、後工業的(post industrial)ポリアミド66(PI PA66)または消費後(post consumer)再生利用ポリアミド6,6(PCR PA66)と呼ばれる。
【0003】
ポリアミドPCR PA66により、PA66の純粋ストリームを作り出す困難さのために、後工業的PA66と同様に、未使用のポリアミド66(PA66)を置き換え得る製品を作り出す課題が提起されることはよく知られている。
【0004】
市場には、60%から99%のナイロン含有量の範囲の純度を有するポリアミドPCR PA66が存在する。このポリマー供給源は、強化用途に成功裏に使用されてきた。例えば、米国特許第6756412号明細書には、繊維強化熱可塑性複合材が開示されている。
【0005】
PCR PA66は一般に、ポリプロピレン(PP)、炭酸カルシウム材、カルボキシル化スチレン/ブタジエンラテックス、およびその他の不純物などのPCR中の混入物質の有害作用のために、ISO 179に従って23℃で7KJ/m2を超える強靭性を必要とする無補強用途に有用でなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノッチ付きシャルピーで測定して、7KJ/m2を超える強靭性を有するPCR PA66から製造され得る強靭化樹脂が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
熱可塑性樹脂組成物であって、
a)50から92重量パーセントの再生熱可塑性物質(ここで、前記再生熱可塑性物質は、ポリアミド66、ポリアミド6、およびポリアミド66とポリアミド6との繰り返し単位を有するコポリマーからなる群から選択される、少なくとも60重量パーセントの再生ポリアミドを含み;ならび前記再生熱可塑性物質は、純粋ポリアミド66の少なくとも60%の窒素含有量を有し、前記窒素含有量は、窒素燃焼分析決定法により決定される);
b)8から30重量パーセントのポリマー強靭化剤(ここで、前記ポリマー強靭化剤は、少なくとも1種の酸ポリマー強靭化剤を含み、前記ポリマー強靭化剤は、前記熱可塑性組成物中にブレンドする前に約10から約90mgKOH/gの平均計算酸価を有する);
c)0から42重量パーセントの未使用ポリアミド66および/または後工業的ポリアミド66;ならびに
d)離型剤、流動増進剤、熱安定剤、静電防止剤、発泡剤、潤滑剤、可塑剤、ならびに着色剤および顔料からなる群から選択される、0から10重量パーセントの添加剤;
を含み、
ここで、a)、b)、c)およびd)の重量パーセントは、熱可塑性樹脂組成物の全重量に基づく、熱可塑性樹脂組成物が開示される。
【0008】
上に開示されたとおりの成分a)〜d)を溶融ブレンドし、それからペレットまたは成形物品を形成する工程を含む、熱可塑性物質の再生利用のための方法がさらに開示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この熱可塑性組成物は、再生熱可塑性ポリアミドを含み、前記再生熱可塑性ポリアミドは、ポリアミド66、ポリアミド6、およびポリアミド66とポリアミド6との繰り返し単位を有するコポリマーからなる群から選択される、少なくとも60重量パーセントの再生ポリアミドを含み;前記再生熱可塑性ポリアミドは、純粋ポリアミド66の少なくとも60%の窒素含有量を有し、前記窒素含有量は、窒素燃焼分析決定法により決定される。好ましくは、前記再生ポリアミドは、ポリアミド66から本質的になる。好ましくは、前記再生ポリアミドは、少なくとも90重量パーセント、より好ましくは少なくとも98重量パーセントのポリアミド66を含む。ポリアミド66は、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド)を指す。ポリアミド6は、ポリ(カプロラクタム)を指す。
【0010】
再生熱可塑性ポリアミドは、好ましくは、再生カーペットおよび/またはカーペット繊維に由来する。熱可塑性組成物において有用な再生熱可塑性ポリアミドの供給源は、消費後再生利用(PCR)ポリアミドと呼ばれる。
【0011】
PCRポリアミドは、少なくとも60重量パーセントのポリアミドを含み;その残りの重量パーセントは、ポリプロピレン、ゴム、充填剤、および/またはカーペットに通常使用されるその他の添加剤からなる。
【0012】
ここで、PCRポリアミド内のポリアミド重量パーセントは、本明細書で開示されるとおりに、窒素決定法によりPCRポリアミドの窒素含有量を測定し、その決定した窒素重量%を純粋ポリアミド66標準物のものと比較することによって決定される。
【0013】
PCRポリアミドは、少なくとも、90重量パーセント、および98重量パーセントのポリアミド66を含むことができ;残りの重量パーセントは、ポリプロピレン、ゴム、充填剤、および/またはカーペットで通常使用されるその他の添加剤からなる。
【0014】
好適なPCR材料は、ASTM D789法で決定して、少なくとも30の相対粘度を有する。
【0015】
熱可塑性樹脂組成物は、(b)8から30重量パーセントのポリマー強靭化剤を含み、前記ポリマー強靭化剤は、反応性酸基を有する少なくとも1種の酸ポリマー強靭化剤を含み、前記ポリマー強靭化剤は、前記熱可塑性組成物中にブレンドする前に、約10から約90mgKOH/gの平均計算酸価を有する。
【0016】
本明細書で使用される場合の「酸ポリマー強靭化剤」という用語は、ポリアミドと反応し得る、ゴムに結合した酸基を有するゴムを指す。このような酸基は、小分子を既存のポリマー上にグラフトすることによってポリマー強靭化剤に「結合させる」ことができるか、または酸コポリマーは、所望の酸基を含有するモノマーを他のモノマーと共重合させることによって調製することができる。グラフトの一例として、遊離のラジカルグラフト技術を用いて、無水マレイン酸を、炭化水素ゴム(エチレン/プロピレンコポリマーなど)上にグラフトさせ得る。得られたグラフトポリマーは、それに結合したカルボン酸無水物および/またはカルボキシル基を有する。酸コポリマーの一例は、エチレンと、カルボン酸基を含む(メタ)アクリレートモノマーとのコポリマーである。本明細書で(メタ)アクリレートによって、その化合物が、アクリレート、メタアクリレート、またはこれらの2種の混合物であり得ることが意味される。
【0017】
好ましくは、少なくとも1種の酸ポリマー強靭化剤は、a)無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/α−オレフィン;b)無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/α−オレフィン/ジエン(EPDM)ターポリマー;c)無水マレイン酸でグラフトされたスチレン/エチレン−ブチレン/スチレントリブロック(SEBS)からなるブロックポリマー;d)酸コポリマー、およびe)これらの組合せからなる群から選択される。
【0018】
本明細書で使用される場合の「酸コポリマー」という用語は、α−オレフィン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、および場合によって、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステルなどの他の適切なコモノマーの共重合単位を含むポリマーを指す。
【0019】
酸コポリマーは、2から10個の炭素を有するα−オレフィンの共重合単位、および前駆体酸コポリマーの全重量に基づいて、約2から約30重量%、約5から25重量%、または約10から約25重量%の、3から8個の炭素を有するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を含む。
【0020】
好適なα−オレフィンコモノマーには、限定されるものではないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、スチレンなど、およびこれらのα−オレフィンの2種以上の混合物が含まれる。
【0021】
好適なα,β−エチレン性不飽和カルボン酸コモノマーには、限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、モノメチルマレイン酸、およびこれらの酸コモノマーの2種以上の混合物が含まれる。好ましくは、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸から選択される。
【0022】
酸コポリマーは、2から10個、もしくは好ましくは3から8個の炭素を有する不飽和カルボン酸、またはこれらの誘導体などの他のコモノマーの共重合単位をさらに含んでもよい。好適な酸誘導体には、酸無水物、アミド、およびエステルが含まれる。エステルが好ましい。不飽和カルボン酸の好ましいエステルの具体例には、限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリ酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)ベヘニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジメチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびこれらの2種以上の混合物が含まれる。好ましい好適なコモノマーの例には、限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。しかし、好ましくは、酸コポリマーは、いずれの有意な量でも他のコモノマーを組み込まない。
【0023】
酸コポリマーは、ASTM法D1238に従って190℃および2.16kgで測定して、約10から約1000g/10分、または約20から約500g/10分、または約40から約300g/10分、または約50から約250g/10分のメルトフローレート(MFR)を有し得る。
【0024】
ポリマー強靭化剤は、2種以上のポリマーの混合物を含んでもよく、これらの少なくとも1種は、上に開示されたとおりの酸ポリマー強靭化剤を含有しなければならない。その他のものは、このような酸官能基を含んでも、含まなくてもよい。例えば、本明細書で記載される組成物に用いられる好ましいポリマー強靭化剤は、無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/オクテンコポリマーおよびプラストマーポリエチレン(Engage(登録商標)8180など)の混合物を含む。本明細書で記載される組成物に用いられる別の好ましいポリマー強靭化剤は、無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/プロピレン/ヘキサジエンターポリマーおよびプラストマーポリエチレン(Engage(登録商標)8180など)の混合物を含む。Engage(登録商標)8180は、Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)から入手できるエチレン/1−オクテンコポリマーである。
【0025】
「ポリマー強靭化剤」という用語は、非官能性ポリマー強靭化剤と呼ばれる、酸ポリマー強靭化剤以外のポリマーも含む。非官能性ポリマー強靭化剤は、酸ポリマー強靭化剤に対して希釈剤として作用し、限定されるものではないが、エチレン/α−オレフィンコポリマー、エチレン/α−オレフィン/ジエン(EPDM)ターポリマー、スチレン/エチレン−ブタジエン/スチレントリブロック(SEBS)からなるブロックポリマー、ポリウレタンゴム、コポリエーテルエステル、および3から10個の炭素を有する不飽和カルボン酸のエステルの共重合単位を含むエチレンコポリマーを含み得る。これらの非官能性ポリマー強靭化剤中の繰返し単位として有用な不飽和カルボン酸とα−オレフィンとの好適なエステルは、酸ポリマー強靭化剤について上に開示されたものと同じである。
【0026】
ポリマー強靭化剤は、前記熱可塑性組成物中にブレンドする前に、約10から約90mgKOH/gポリマー強靭化剤の平均計算酸価を有する。他の実施形態において、ポリマー強靭化剤は、約10から約60mgKOH/g、約10から40mgKOH/g、または約15から60mgKOH/gポリマー強靭化剤の平均計算酸価を有する。酸価は、1グラムの試料中の酸を中和するのに必要とされるKOHのミリグラムの量として定義される。
【0027】
ポリマー強靭化剤の平均計算酸価は、ポリマー強靭化剤を構成している酸ポリマー強靭化剤および非官能性ポリマー強靭化剤の計算酸価を重量平均することによって決定され得る。
【0028】
例えば、2重量%のアクリル酸(AA)繰返し単位を有する酸コポリマーの計算酸価は、以下のとおりに決定され得る:
2重量%のコポリマーは、0.02gAA/gコポリマーとして表すことができる;0.02gAA/72g/モルAA=2.78×10-4モルAA;これは、これから2.78×10-4モルAA/1gコポリマーと表すことができる;1モルのKOH(MW56)は、1モルのAAを中和する;したがって、(2.78×10-4モルAA/1gコポリマー)×56g/モルKOH×1000mg/g=15.6mgKOH/1gコポリマー。
【0029】
同様の計算を用いて、アクリル酸コポリマーの様々な重量%について以下の表が作成され得る。
【0030】
【表1】

【0031】
2重量%の無水マレイン酸(MAH、MW98)繰返し単位でグラフトされたコポリマーの計算酸価は、以下のとおりに決定され得る:
2重量%のグラフトは、0.02gMAH/gコポリマーと表すことができる;0.02gMAH/98g/モルMAH=2.04×10-4モルMAH;これは、これから2.04×10-4モルMAH/1gコポリマーとして表すことができる;2モルのKOH(MW56)は、1モルのMAHを中和する;したがって、(2.04×10-4モルMAH/1gコポリマー)×56g/モルKOH×1000mg/g=22.9mgKOH/1gコポリマー。
【0032】
【表2】

【0033】
他の酸官能基化コポリマーは、同様の方法を用いて計算され得る。
【0034】
ポリマー強靭化剤を構成する、それぞれの酸ポリマーおよび非官能性ポリマー強靭化剤の重量分率は、ポリマー強靭化剤の全重量に基づいて決定される。それぞれの酸ポリマーおよび非官能性ポリマーの強靭化剤について計算した酸価×重量分率の合計が、そのポリマー強靭化剤についての平均計算酸価である。非官能性ポリマー強靭化剤の酸価は、定義によってゼロであることが留意されるべきである。
【0035】
別の実施形態において、ポリマー強靭化剤の酸価は、滴定法により実験的に決定され得る。
【0036】
熱可塑性樹脂組成物は、0から42重量パーセントの未使用PA66ポリアミドおよび/または後工業的PA66を含み得る。後工業的PA66は、製造プロセスで用いられているが、消費者にはさらされていない物質を指す。後工業的PA66の供給源の一つは、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.,Wilmington,DEから入手できる、98重量パーセントを超えるポリアミド66からなるNRMAMB樹脂である。
【0037】
熱可塑性樹脂組成物は、離型剤(例えば、ジステアリン酸アルミニウム、[AlSt]、流動増進剤(例えば、無水フタル酸、アジピン酸、テレフタル酸)、熱安定剤(例えば、ハロゲン化カリウム/CuI/AlStのトリブレンドおよびヒンダードフェノール)、静電防止剤、発泡剤、潤滑剤、可塑剤、ならびに着色剤および顔料からなる群から選択される、0から10重量パーセントの添加剤を含み得る。
【0038】
熱可塑性樹脂組成物は、ISO 179法に従って、少なくとも7KJ/m2、好ましくは8KJ/m2、10KJ/m2、11KJ/m2の、23℃におけるノッチ付きシャルピーを有する。
【0039】
1つの実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、繊維性強化剤をまったく有さず、別の実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、ガラス繊維が存在しない。熱可塑性樹脂組成物は、上に開示されたとおりの範囲の成分a)〜d)から本質的になり得る。
【0040】
熱可塑性樹脂組成物は、ポリマー成分のすべてが適切に混合され、非ポリマー成分のすべてがポリマーマトリックス中に適切に分散している、溶融ブレンドによる混合物である。
【0041】
別の実施形態は、熱可塑性物質を再生利用する方法であって、
a)50から92重量パーセントの再生熱可塑性物質(ここで、前記再生熱可塑性物質は、ポリアミド66、ポリアミド6、およびポリアミド66とポリアミド6との繰返し単位を有するコポリマーからなる群から選択される、少なくとも60重量パーセントの再生利用ポリアミドを含み;ならびにここで、前記再生熱可塑性物質は、純粋ポリアミド66の少なくとも60%の窒素含有量を有し、前記窒素含有量は、窒素燃焼分析決定法によって決定される);
b)8から30重量%のポリマー強靭化剤(ここで、前記ポリマー強靭化剤は、少なくとも1種の酸ポリマー強靭剤を含み、前記ポリマー強靭化剤は、前記熱可塑性組成物中にブレンドする前に約10から約90mgのKOH/gの平均計算酸価を有する);
c)0から42重量パーセントの、未使用のポリアミド66および/または後工業的ポリアミド66;ならびに
d)離型剤、流動増進剤、熱安定剤、静電防止剤、発泡剤、潤滑剤、可塑剤、ならびに着色剤および顔料からなる群から選択される、0から10重量パーセントの添加剤;
を溶融ブレンドし、
ここで、a)、b)、c)およびd)の重量パーセントは、熱可塑性樹脂組成物の全重量に基づく、工程;ならびに
前記溶融ブレンドからペレットまたは成形物品を形成する工程
を含む、方法である。
【0042】
この方法における前記再生利用ポリアミドについて選択は、熱可塑性樹脂組成物について上に述べたのと同じである。
【0043】
任意の溶融ブレンド法が、本発明のポリマー成分および非ポリマー成分を混合するために使用され得る。例えば、ポリマー成分および非ポリマー成分は、溶融混合機、例えば、単軸スクリュー押出機もしくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、単軸スクリューまたは二軸スクリューニーダー、またはバンバリー混合機中に供給することができ;その添加工程は、同時にすべての成分を添加、またはバッチで段階的に添加することであってもよい。ポリマー成分および非ポリマー成分が、バッチで段階的に添加される場合、ポリマー成分および/または非ポリマー成分の一部が最初に添加され、次いで、適切に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分および非ポリマー成分とともに溶融混合される。複数のオリフィスを通して溶融ブレンドの押出しにより、ペレットを与えるために細断され得るストランドがもたらされる。
【0044】
別の実施形態は、上に開示されたとおりの熱可塑性樹脂組成物を含む成形物品である。成形物品は、射出成形、ブロー成形および押出成形物品を含む。
【実施例】
【0045】
方法
配合(Compounding)および成形方法
表1で「側部供給(side fed)」と示された成分を押出機のバレル番号6で加えた以外は;表1に記載した組成物を、200ポンド/時間の供給速度で300〜330rpmにおいて適度によく作動するスクリュー運転(moderately hard working screw run)に適合した40mm共回転二軸スクリュー押出機の後部に供給した。未使用(ポリアミド66と呼ばれる)または後工業的PA66を使用した場合(C−1およびC−2)は、バレル温度は280℃に、PCRポリアミド66を使用した場合(実施例1、2、3ならびにC−3およびC−4)は、320℃に設定した。実施例1、2および3についてのハンドメルト温度(hand melt temperature)は、それぞれ、305℃、306℃、および272℃であった。比較例C−1、C−2、C−3およびC−4についてのハンドメルト温度は、それぞれ、285℃、277℃、268℃、および272℃であった。
【0046】
実施例1〜2および比較実施例C1〜C3は、重量パーセント基準で、87重量%のポリアミド66(公称)、11重量%のポリマー強靭化剤、および約1.0重量%の添加剤を含んだ。実施例3および比較実施例C4は、8重量%のポリマー強靭化剤を含んだ。各実施例における酸ポリマー強靭化剤対非官能性ポリマー強靭化剤(APT:N−FP)の比は、表1に記載する。
【0047】
試料調製および物理的試験
組成物は、押出機を出た後、ペレット化した。窒素を流すこと(nitrogen bleed)によってペレットを一晩乾燥させた後、ペレットを、デマーグ(Demag)#2射出成形機において溶融温度287〜293℃および成形温度77〜83℃で射出成形して、4mmのISO多目的バーを得た。このバーを、箔を裏張りしたプラスチック製バッグ中に真空密封して、それらが切断されるまで、成形乾燥(DAM)状態で保存し、ISO 179法に従って調整後、試験片を23℃でノッチ付きシャルピーについて試験した。
【0048】
引張強度、破断時伸び、および引張係数を、23℃および50mm/分の歪み速度(室温での)においてISO 527−1/−2により引張試験機で、成形乾燥で試験した。
【0049】
窒素決定法
この方法は、ナイロンおよび他の原料中の窒素の直接測定に適用できる。窒素%について、計算は、PA66のN含有量に基づく(理論上12.38% N)。純粋ポリアミド66標準物の例は、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)から入手できるZytel(登録商標)101樹脂である。方法の計算を用いて、ナイロン重量%、および/または窒素重量%として結果を報告することができる。
【0050】
再生熱可塑性ペレットは、850〜950℃でLECO炉において燃焼させる。燃焼ガスはろ過され、水蒸気は除去され、酸化窒素は、還元炉においてN2ガスに還元される。熱伝導率検出を用いて、生成したN2ガスを検出および定量する。分析器は、配合樹脂ペレット(PA66)のベースナイロン特性を用いて標準化する。ゴム強靭化剤および他の非ナイロン成分は、窒素に寄与しないので、ベースナイロン標準物に対して検出窒素の測定された減少は、非ナイロン含有量濃度に比例する。
【0051】
材料
潤滑剤は、Chemtura Corporation(199 Benson Rd,Middlebury,CT 06749)から購入したステアリン酸アルミニウムを指す。
【0052】
Engage(登録商標)8180エラストマーは、Dow Chemical Company(Midland,Michigan,USA)から入手できるエチレン/1−オクテンコポリマーからなる非官能性ポリマー強靭化剤である。
【0053】
Copper HS Aは、Shepherd Chemical Co.(Shepherd Norwood,4900 Beech Street,Norwood,Ohio 45212)から購入した、7部のヨウ化カリウム、1部のヨウ化第一銅および0.5部のジステアリン酸アルミニウムからなる熱安定剤である。
【0054】
Copper HS Bは、Shepherd Chemical Co.(Shepherd Norwood,4900 Beech Street,Norwood,Ohio 45212)から購入した、7部の臭化カリウム、1部のヨウ化第一銅および0.5部のジステアリン酸アルミニウムからなる熱安定剤である。
【0055】
C−Black 1は、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)により提供されるZYTFE3800ブラック濃縮物を指す。
【0056】
C−Black 2は、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)により提供されるZYTFE31003カーボンブラック濃縮物を指す。
【0057】
PA:ALDSは、PolyAd Services,Inc.(4170 Shoreline Drive,Earth City,MO 63045)から供給される、9部の無水フタル酸および1部のステアリン酸アルミニウムを含有するブレンドを指す。
【0058】
アジピン酸は、Invista,Inc.(Orange,TX)により供給された。
【0059】
テレフタル酸は、Amoco Chemicals(Naperville,IL)により供給された。
【0060】
酸ポリマー強靭化剤−1(APT−1)は、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)より提供される、2.0重量%の無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/オクタンコポリマーである。
【0061】
Fusabond(登録商標)P613樹脂は、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)から入手できる、無水マレイン酸官能基化ポリプロピレン樹脂を指す。
【0062】
ポリアミド66は、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)から入手できる、Zytel(登録商標)ZYT101 NC010ポリアミド66樹脂を指す。
【0063】
後工業的PA66は、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE)から入手できる、98重量パーセントを超えるポリアミド66からなるNRMAMBを指す。
【0064】
PCR−1ポリアミド66は、Shaw Industries(330 Brickyard Rd.,Dalton,GA 30720)から入手できる、消費後再生カーペット由来の、97重量パーセントの窒素分析に基づくポリアミド66含有量を有する、N−66S−B消費後再生ポリアミド66を指す。
【0065】
PCR−2ポリアミド66は、Columbia Recycling Corp.(Dalton,GA 30722)から入手できる、消費後再生カーペット由来の、75重量パーセントの窒素分析に基づくポリアミド66含有量を有する、消費後再生ポリアミド66を指す。
【0066】
実施例1および実施例2により、10mgKOH/gを超える酸価をもつポリマー強靭化剤を有する組成物が、高いノッチ付きシャルピーkJ/m2衝撃強度を示すことが示される。PCRポリアミドおよびポリマー強靭化剤の同じレベルを有するが、ポリマー強靭化剤は10mgKOH/g未満を有する、比較実施例3は、かなり少ないノッチ付きシャルピーkJ/m2衝撃強度を示す。
【0067】
実施例3により、約60重量%のポリアミドのPCRを有し、および10mgKOH/gを超える酸価のポリマー強靭化剤を有する組成物は、高いノッチ付きシャルピーkJ/m2衝撃強度を示すことが示される。PCRポリアミドおよびポリマー強靭化剤の同レベルを有するが、ポリマー強靭化剤が10mgKOH/g未満を有する比較実施例4は、かなり少ないノッチ付きシャルピーkJ/m2衝撃強度を示す。
【0068】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物であって、
a)50から92重量パーセントの再生熱可塑性物質(ここで、前記再生熱可塑性物質は、ポリアミド66、ポリアミド6、およびポリアミド66とポリアミド6との繰り返し単位を有するコポリマーからなる群から選択される、少なくとも60重量パーセントの再生ポリアミドを含み;ならびに前記再生熱可塑性物質は、純粋ポリアミド66標準物の少なくとも60%の窒素含有量を有し、前記窒素含有量は、窒素燃焼分析決定法により決定される);
b)8から30重量パーセントのポリマー強靭化剤(ここで、前記ポリマー強靭化剤は、少なくとも1種の酸ポリマー強靭化剤を含み、前記ポリマー強靭化剤は、前記熱可塑性組成物中にブレンドする前に約10から約90mgKOH/gの平均計算酸価を有する);
c)0から42重量パーセントの未使用ポリアミド66および/または後工業的ポリアミド66;ならびに
d)離型剤、流動増進剤、熱安定剤、静電防止剤、発泡剤、潤滑剤、可塑剤、ならびに着色剤および顔料からなる群から選択される、0から10重量パーセントの添加剤;
を含み、
ここで、a)、b)、c)およびd)の重量パーセントは、前記熱可塑性樹脂組成物の全重量に基づく、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記再生ポリアミドが、ポリアミド66から本質的になる、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記再生熱可塑性物質が、少なくとも90重量パーセントのポリアミド66を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸ポリマー強靭化剤が、A)無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/α−オレフィン;B)無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/α−オレフィン/ジエン(EPDM)ターポリマー;C)無水マレイン酸でグラフトされたスチレン/エチレン−ブチレン/スチレントリブロック(SEBS)からなるブロックポリマー;D)酸コポリマー、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形物品。
【請求項6】
熱可塑性物質を再生利用する方法であって、
a)50から92重量パーセントの再生熱可塑性物質(ここで、前記再生熱可塑性物質は、ポリアミド66、ポリアミド6、およびポリアミド66とポリアミド6との繰返し単位を有するコポリマーから選択される、少なくとも60重量パーセントの再生ポリアミドを含み;ならびに前記再生熱可塑性物質は、純粋ポリアミド66標準物の少なくとも60%の窒素含有量を有し、前記窒素含有量は、窒素燃焼分析決定法によって決定される);
b)8から30重量%のポリマー強靭化剤(ここで、前記ポリマー強靭化剤は、少なくとも1種の酸ポリマー強靭剤を含み、前記ポリマー強靭化剤は、前記熱可塑性組成物中にブレンドする前に約10から約90mgKOH/gの平均計算酸価を有する);
c)0から42重量パーセントの、未使用ポリアミド66および/または後工業的ポリアミド66;ならびに
d)離型剤、流動増進剤、熱安定剤、静電防止剤、発泡剤、潤滑剤、可塑剤、ならびに着色剤および顔料からなる群から選択される、0から10重量パーセントの添加剤;
を溶融ブレンドする工程であって、
ここで、a)、b)、c)およびd)の重量パーセントは、前記熱可塑性樹脂組成物の全重量に基づく、工程;ならびに
前記溶融ブレンドからペレットまたは成形物品を形成する工程
を含む、方法。
【請求項7】
前記再生ポリアミドが、ポリアミド66から本質的になる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記再生熱可塑性物質が、少なくとも90重量パーセントのポリアミド66を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記酸ポリマー強靭化剤が、A)無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/α−オレフィン;B)無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/α−オレフィン/ジエン(EPDM)ターポリマー;C)無水マレイン酸でグラフトされたスチレン/エチレン−ブチレン/スチレントリブロック(SEBS)からなるブロックポリマー;D)酸コポリマー、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2013−521343(P2013−521343A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555188(P2012−555188)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/026275
【国際公開番号】WO2011/106667
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】