説明

強靱遮光紙

【課題】1枚の紙であって、紙の厚みが薄くても遮光効果を備え、紙の両面に印刷が可能であり、反対側の印刷面が透けて見えないようにし、紙の両面を用いて広告効果を上げ、通常の紙と同様にインクジェットプリンターやレーザープリンターなどのあらゆるプリンターで印刷を可能とする強靭遮光紙の提供。
【解決手段】遮光紙本体10を、第1の紙材11と、第2の紙材12及び第1、第2の紙材11、12との間に介装した遮光シート13とで構成する。遮光シート13は、フィルム14の片面あるいは両面にアルミを蒸着させたアルミ蒸着層15を形成する。遮光シート13により光の透過を防止し、表面側の印刷部分が裏面側から透けるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度を有し、且つ遮光機能を備えた強靱遮光紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自店が販売している商品の宣伝や、店内で販売している飲食物の値段などを窓ガラスに貼って表示しているのは良く見かける光景である。図7はお店の窓ガラス5の内側に例えば、値段を書いた紙53を貼っている場合を示しており、外からコーヒーなどの値段が分かるようにしている。この場合、雨で紙53が汚れたり、剥がれたりすることがないように窓ガラス5の内側に貼っている。
【0003】
一方、お店の中に入った人に広告として紙53の他方の面に印刷したくても、昼間など外が明るい場合には、図8に示すように、紙53の文字等が裏面側に逆向きに透けて見えるために、紙53の裏面(お店の中側)に印刷をしても該印刷面(広告面)と反対側の透けて見えている部分が重なって見えて広告効果を十分に発揮することができない。
自店が販売している商品の宣伝を行なう場合でも、表面に宣伝用の印刷をしても、店内からは表面の文字等が透けて見えるために、やはり、裏面には何も印刷をせずに、白紙の状態となっている。
【0004】
図9及び図10は、電車内でよく見られる吊り広告を示しており、取付器具1の一対の挟持片2、3にて両面が広告面となるように2枚の広告用紙51が挟持されて吊設されている。広告用紙51は2枚が合わされて吊設されるために裏面は印刷されておらず、表面だけが広告用の写真や文字が印刷されている。
【0005】
広告用紙51の下端は開放されて自由端となっているために、車内の温度や湿度により図10に示すようにカールする場合がある(図10のA部参照)。かかる場合では、吊り広告は下から見るために、広告を全面的に見ることが出来ず、広告効果を損なうことになる。
この広告用紙51がカールするのを防ぐ方法としては、広告用紙51の厚みを厚く(坪量を大きく)することで、カールするのをある程度防ぐことができる。
【0006】
しかしながら、広告用紙51の坪量を大きくすると、広告用紙51のコストが高くなるという問題が生じる。また、通常は、2枚の広告用紙51を重ね合わせて取付器具1の挟持片2、3に挟持させるので、広告用紙51がずれたりする場合もあり、そのため、重ね合わせた広告用紙51がずれないように慎重に取付器具1に取り付ける必要があり、取り付けの作業性が悪いという問題もある。
また、広告用紙51がカールするのを防止したり、裏面側に印刷部分が透けないようにするために広告用紙51や図7に示す紙53の厚みを厚くした場合には、一般的なプリンターでは印刷が出来ない場合も生じてくる。
【0007】
そこで、本発明者たちは、広告用紙51がカールするのを防止したり、裏面側に印刷内容が透けないようにしたのを既に特許出願している。下記に示す特許文献1がそうである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2010−129655
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1では、紙を二つ折りして間に空間部を形成することで、紙がカールするのを防止したり、表面に印刷した部分が裏面側に透けて見えないようにしている。しかしながら、紙が立体的になって取り扱いが不便となったり、また、上下に異なった向きで印刷をする必要があり、印刷がしにくいという問題があった。さらには、1枚の紙の両面に印刷が出来ず、紙を有効に使用できない。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、少なくとも以下の目的を持った強靱遮光紙を提供するものである。
(1)1枚の紙であって、紙の厚みが薄くても遮光効果を備えていること。
(2)紙の両面に印刷が可能であり、反対側の印刷面が透けて見えないようにし、紙の両面を用いて広告効果を上げること。
(3)通常の紙と同様にインクジェットプリンターやレーザープリンターなどのあらゆるプリンターで印刷が可能とすること。
(4)通常の紙と同様に成型性、折り曲げ適正があること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の請求項1に記載の強靱遮光紙では、第1の紙材11と、第2の紙材12と、前記第1、第2の紙材11、12との間に介装させた遮光シート13とで遮光紙本体10を構成していることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の強靱遮光紙では、前記遮光シート13は、フィルム14と、このフィルム14の片面または両面にアルミを蒸着させたアルミ蒸着層15とで構成していることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の強靱遮光紙では、前記第1の紙材11及び第2の紙材12の坪量を、18g/m2 〜100g/m2 の範囲とし、前記フィルム14の厚みを12μm〜25μmとしていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の強靱遮光紙によれば、第1の紙材11と、第2の紙材12と、前記第1、第2の紙材11、12との間に介装させた遮光シート13とで遮光紙本体10を構成しているものであり、前記遮光シート13により、光の透過を防止することができ、遮光紙本体10の表面に印刷しても裏面側からは印刷部分が透けて見えることはない。また、遮光紙本体10の両面に広告等を印刷することができ、しかも、インクジェットプリンターやレーザープリンターなどのあらゆるプリンターにて印刷できるので、印刷費用を抑えることができる。すなわち、遮光紙本体10を1枚の紙として、紙の厚みが薄くても遮光効果を有しているものである。
また、遮光紙本体10を、第1の紙材11、遮光シート13及び第2の紙材12の3層構造としているので、強度を維持することができ、容易には破けにくい構造となっている。さらには、本遮光紙本体10を吊り広告に用いても3層構造としているので、温度、湿度に対しても従来のようにカールすることがなく、広告効果を一層向上させることができる。また、1枚の遮光紙本体10の両面に広告を印刷しても裏面側から透けることもなく、吊り広告に用いた場合には、広告効果を一層上げることができる。しかも、遮光紙本体10を1枚だけのため、取付器具1への装着も容易であり、取り付け作業性を向上させることができる。
【0015】
請求項2に記載の強靱遮光紙によれば、前記遮光シート13は、フィルム14と、このフィルム14の片面または両面にアルミを蒸着させたアルミ蒸着層15とで構成しているので、1層のみアルミ蒸着層15を設けた遮光シート13の場合でもアルミ蒸着層15により光の透過を防止することができ、遮光紙本体10の表面に印刷しても裏面側からは印刷部分が透けて見えることはない。また、2層のアルミ蒸着層15を設けた遮光シート13を介装させた遮光紙本体10では、光を完全に遮光することができ、印刷面が裏面側から透けて見えることは全くない。そのため、本発明の遮光紙本体10においては、両面に広告等を印刷することができ、しかも、一般的なプリンターにて印刷できるので、印刷費用を抑えることができる。
【0016】
請求項3に記載の強靱遮光紙によれば、前記第1の紙材11及び第2の紙材12の坪量を、18g/m2 〜100g/m2 の範囲とし、前記フィルム14の厚みを12μm〜25μmとしているので、遮光紙本体10は通常の紙と同様に成型性、折り曲げ適正を有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態における遮光紙本体の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における遮光紙本体の分解拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における遮光シートの他の例を示す遮光紙本体の分解拡大断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における遮光紙本体の折り曲げ性を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態における遮光紙本体を窓ガラスに貼った状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における遮光紙本体を吊り広告に用いた場合を示す図である。
【図7】従来例の紙を窓ガラスに貼っている状態を示す図である。
【図8】従来例の紙を窓ガラスに貼った場合の問題点を示す説明図である。
【図9】従来例の広告用紙を用いた吊り広告を示す図である。
【図10】従来例の広告用紙を用いた吊り広告における問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の遮光紙本体10の平面図を示し、図2はこの遮光紙本体10の分解拡大断面図を示している。そして、この遮光紙本体10は、第1の紙材11と、第2の紙材12と、この第1、第2の紙材11、12の間に介装される遮光シート13とで構成されている。
そして、上記遮光シート13は、フィルム14と、このフィルム14のどちらかの面にアルミを蒸着させたアルミ蒸着層15とで構成されている。
【0019】
図3は遮光シート13の他の実施形態を示し、この実施形態ではフィルム14の両面にアルミをそれぞれ蒸着させて、該フィルム14の両面にそれぞれアルミ蒸着層15、15を形成したものである。
【0020】
上記第1の紙材11及び第2の紙材12の材料として一般的な紙材であれば良く、坪量としては、18g/m2 〜100g/m2 である。また、フィルム14のフィルムの厚みとしては、12μm〜25μmのものを用いている。
【0021】
第1の紙材11及び第2の紙材12の坪量が18g/m2 以下では強度が不足し、また101g/m2 以上では厚みが厚くなりすぎてプリンターで印刷ができない恐れがある。そのため、坪量は18g/m2 〜100g/m2 の範囲が好適例である。
また、フィルム14の厚みを12μm以下の場合では、強靱性が劣り、また26μm以上では経済的効果が乏しい。
【0022】
1層のアルミ蒸着層15もしくはフィルム14の両面にアルミ蒸着層15を設けた遮光シート13の両面に第1の紙材11及び第2の紙材12を貼合して遮光紙本体10を形成するので、第1の紙材11及び第2の紙材12の坪量としては、遮光紙本体10が一般的なプリンターにて印刷可能は厚みとしている。
【0023】
第1の紙材11、遮光シート13及び第2の紙材12とを貼合する方法としては、例えば水性ラミネート法、ドライラミネート法があり、もちろん貼合が可能であれば他の方法でも良い。
【0024】
遮光紙本体10の両面の第1の紙材11、第2の紙材12は通常の紙材なので、一般に市販されているインクジェットプリンターや、レーザープリンターなどのあらゆるプリンターにて印刷(モノクロ、カラー)が可能であり、小さな飲食店や事務所などにおいても任意のポスターなどを両面に簡単に印刷することができる。
また、第1の紙材11及び第2の紙材12は一般的な紙材なので、遮光紙本体10を製造するに際しては、巻取原紙さえ調達することで、どのような原紙でも遮光紙本体10の製造が可能であり、しかも、低コストに製造することができる。
【0025】
遮光紙本体10の大きさは任意に形成できるものであり、1層のみアルミ蒸着層15を設けた遮光シート13の場合でもアルミ蒸着層15により光の透過を防止することができ、遮光紙本体10の表面に印刷しても裏面側からは印刷部分が透けて見えることはない。また、2層のアルミ蒸着層15を設けた遮光シート13を介装させた遮光紙本体10では、光を完全に遮光することができ、印刷面が裏面側から透けて見えることは全くない。
そのため、本発明の遮光紙本体10においては、両面に広告等を印刷することができ、しかも、一般的なプリンターにて印刷できるので、印刷費用を抑えることができる。
【0026】
また、第1の紙材11及び第2の紙材12の厚みを薄くしても、フィルム14の片面あるいは両面にアルミ蒸着層15を設けた遮光シート13を介装させた3層構造としているので、強度を維持することができ、容易には破けにくい構造となっている。
【0027】
さらに、遮光紙本体10を、第1の紙材11、遮光シート13及び第2の紙材12の3層構造としているにも関わらず、第1の紙材11、第2の紙材12の坪量や遮光シート13のフィルム14の厚みを上述した範囲としていることで、図4に示すように、遮光紙本体10を通常の用紙のように容易に折り曲げることができる。これにより成型性構造を備えているものである。
【0028】
上述のように、本遮光紙本体10は遮光性を備えているので、図7に示すように表面に値段を書いて窓ガラス5に貼った場合でも、図5に示すように、遮光紙本体10の裏面には異なる文章、写真等を印刷しても表面の文字等が透けて見えることはなく、表面と裏面に印刷をした遮光紙本体10を有効に使用することができて、広告効果を上げることができる。また、遮光紙本体10の両面を有効に使用できるので、費用を抑えることができる。
【0029】
また、本遮光紙本体10を図6に示すように吊り広告に用いても、該遮光紙本体10は第1の紙材11、遮光シート13及び第2の紙材12の3層構造としているので、温度、湿度に対しても従来のようにカールすることがなく、吊り広告に用いた場合には、広告効果を一層上げることができる。
また、1枚の遮光紙本体10の両面に広告を印刷しても裏面側から透けることもなく、吊り広告に用いた場合には、広告効果を一層上げることができる。しかも、遮光紙本体10を1枚だけのため、取付器具1への装着も容易であり、取り付け作業性を向上させることができる。
【0030】
本実施形態における遮光紙本体10の用途としては、上述したように広告用の用紙の他に、ポスター、重要書類、地図、壁紙が好適例である。
【符号の説明】
【0031】
10 遮光紙本体
11 第1の紙材
12 第2の紙材
13 遮光シート
14 フィルム
15 アルミ蒸着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の紙材(11)と、第2の紙材(12)と、前記第1、第2の紙材(11)(12)との間に介装させた遮光シート(13)とで遮光紙本体(10)を構成していることを特徴とする強靱遮光紙。
【請求項2】
前記遮光シート(13)は、フィルム(14)と、このフィルム(14)の片面または両面にアルミを蒸着させたアルミ蒸着層(15)とで構成していることを特徴とする請求項1に記載の強靱遮光紙。
【請求項3】
前記第1の紙材(11)及び第2の紙材(12)の坪量を、18g/m2 〜100g/m2 の範囲とし、前記フィルム(14)の厚みを12μm〜25μmとしていることを特徴とする請求項2に記載の強靱遮光紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−77424(P2012−77424A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225295(P2010−225295)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(595004115)株式会社 彩響舎 (13)
【出願人】(398016980)株式会社いちはら (17)
【出願人】(000249230)有限会社大三紙工社 (5)
【Fターム(参考)】