弾性を有するチューブの内径測定方法、測定装置
【課題】弾性を有するチューブの高精度な内径測定方法を実現する。
【解決手段】弾性を有するチューブ50を外径方向から圧縮軸21を用いて圧縮すること、チューブ50の圧縮変位量を、変位センサー25を用いて測定すること、チューブ50の圧縮荷重を荷重検出器20を用いて測定すること、圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の変化の変曲点を解析処理装置30で検出することを含み、変曲点における圧縮変位量を内径測定値とする。
【解決手段】弾性を有するチューブ50を外径方向から圧縮軸21を用いて圧縮すること、チューブ50の圧縮変位量を、変位センサー25を用いて測定すること、チューブ50の圧縮荷重を荷重検出器20を用いて測定すること、圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の変化の変曲点を解析処理装置30で検出することを含み、変曲点における圧縮変位量を内径測定値とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性を有するチューブの内径測定方法、および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、慢性疾患患者のQOL(Quality of Life)の向上実現のために、様々な携帯型医療機器の開発が進められている。携帯型医療機器の一つとして、治療等で使用される薬液投与ポンプがある。薬液投与ポンプの一例としては、放射状に配設された複数のフィンガーを蠕動運動させることによって、弾性を有するチューブを薬液の流動方向上流側から下流側に向かって圧閉と開放とを繰り返すとによって、チューブ内の薬液を送液し、患者に注入させるものがある(特開2008−259518号広報)。
【0003】
このような薬液投与ポンプでは、薬液の投与量は高精度に管理されなければならない。特に、糖尿病治療のインスリン投与においては、インスリン投与量は厳格に管理する必要があるとされている。上述した薬液投与ポンプでは、薬液を流動するチューブの内径の大小によって薬液の送液量が変動することから、チューブの内径を高精度に管理することが要求される。また、衛生面、製品安全性を考慮すると、チューブの内外壁に異物が付着することを防ぐ必要があり、旧来からチューブ内径の測定方法として用いられていた破壊測定方法は適さず、異物が発生しにくい非破壊測定方法が求められている。また、破壊測定を用いる場合は、被測定チューブを実使用することができないという課題があった。そこで、非破壊測定方法が求められている。
【0004】
貫通孔の内径の非破壊測定方法としては、貫通孔の一方の端部から光束を入射させ、貫通孔内壁面で反射された光を受光し、その結像位置を観測して貫通孔の内径を測定する光干渉法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、X線CT(Computed Tomography)を用いて、被検査物の断層像を撮影し、その撮影像を用いて貫通孔のような内部寸法を測定することが可能なX線CT装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、貫通孔の一方方向から平行光を照射し、貫通孔を透過した画像をCCDカメラで取得し、画像処理によって貫通孔の内径を測定することができる内径測定装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−35518号公報
【特許文献3】特開2010−139454号公報
【特許文献4】特開2008−281497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1は、被測定対象である貫通孔の内壁面で反射された光の結像を観測するものであることから被測定物の材質によっては、内壁面を光が透過してしまうことや、反射光が減衰して明確に結像しないことが考えられ、正確な内径測定ができないという課題がある。また、湾曲したチューブなどの内径測定は困難である。
【0007】
また、特許文献2では、X線CTを用いて、被測定物の断層像で内径測定を行うことが可能であるが、高度な画像処理技術が必要になることと、X線CT装置は高価であり、X線を取り扱うための資格や、設置場所の制限等が要求されるという課題を有する。
【0008】
また、特許文献3は、被測定対象である貫通孔を透過した画像をCCDカメラで取得するため、チューブのように測定する貫通孔の長さが長い場合の測定には不向きであり、また、チューブの長さ方向の中間位置における内径測定は不可能であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
本発明の一つの形態例に係る弾性を有するチューブの内径測定方法は、弾性を有するチューブを外径方向から圧縮軸を用いて圧縮することと、前記チューブの圧縮変位量を、変位センサーを用いて測定することと、前記チューブの圧縮荷重を、荷重検出器を用いて測定することと、前記圧縮変位量の変化に対する前記圧縮荷重の変化の変曲点を検出することと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本形態例によれば、チューブを圧縮開始(圧縮荷重0)してから、チューブを圧閉するまでの間は、圧縮変位量と圧縮荷重の関係はほぼ比例の関係にあり、チューブを圧閉した時点で、圧縮変位量に対する圧縮荷重が急激に増加する。つまり、圧縮変位量と圧縮荷重との相関関係をグラフ化してみると、圧閉した瞬間に変曲点が発生する。発明者らは、この変曲点における圧縮変位量がチューブ内径と高精度に一致することを見いだした。従って、この変曲点を検出することによって、弾性を有するチューブの内径を正確に測定することができる。
【0012】
また、このような測定方法によれば、チューブの端部近傍の他、長さ方向中間の任意位置の内径測定を行うことができ、湾曲したチューブの内径測定も可能である。
【0013】
さらに、変曲点を検出したところで圧縮を解除すれば、チューブの断面形状は初期状態に復帰することから、内径測定をしたチューブをポンプ等の実機に組み込んで使用することができる。また、ポンプ等にチューブを組み込んだ状態で測定することも可能である。
【0014】
さらに、前記チューブの内径をd0、前記圧縮軸の外径をdpとするとき、d0に対するdpの比が、dp/d0=1.74±0.2の範囲内にあることが好ましい。
ここで、チューブ内径d0は、設計値である。
【0015】
チューブ内径d0と圧縮軸外径dpの比が1.52より小さい場合には、圧縮軸がチューブにめり込んでしまうことにより、圧縮される部分に応力が集中し、圧縮荷重に対して圧縮変位量が大きくなり、内径が大きくなったように測定される傾向がある。また、チューブ内径d0と圧縮軸外径dpの比が1.94より大きい場合には、チューブ断面の広い範囲を圧縮することにより圧縮変位量に対する変曲点が早く出現するため、内径が小さくなったように測定される傾向がある。
従って、チューブ内径d0と圧縮軸外径dpの比をdp/d0=1.74±0.2の範囲内にすることにより、チューブ内径を正確に測定することができる。
【0016】
また、前記圧縮軸によるチューブ圧縮速度が、100μm/sec±10μm/secの範囲内にあることが好ましい。
【0017】
圧縮速度が90μm/sec以下の場合には、圧縮変位量と圧縮荷重の変化が小さくなるため、変曲点位置が明確に出現しにくくなり、内径測定値のばらつき大きくなる。また、圧縮速度が110μm/sec以上の場合には、変曲点位置における圧縮荷重が大きく現れる傾向があり、内径測定値のばらつきが発生する。そこで、圧縮速度を100μm/sec±10μm/secの範囲内にすることで、圧縮速度が遅い場合、および速い場合における内径測定値のばらつきを排除し、正確な内径測定を行うことができる。
【0018】
また、チューブ50は、束ねて運搬する場合があり、断面形状が真円でなく楕円に変形する可能性がある。そのため、内径測定時のチューブ50の載置角度によっては測定値が異なることが予測される。そこで、各測定位置において方向だけでなく、周方向に90度回転させて測定し、二方向の平均値を測定とすることがより好ましい。
【0019】
また、本発明の1形態例に係る測定装置は、前記チューブを保持し、X方向およびY方向に移動可能なXYテーブルと、前記XYテーブルのXY平面に対して垂直方向に移動可能なZ軸テーブルと、前記Z軸テーブルに装着される荷重検出器と、前記荷重検出器に装着され、前記チューブを圧縮する圧縮軸と、前記チューブの圧縮変位量を測定する変位センサーと、前記荷重検出器と前記変位センサーの検出値を用いて、前記圧縮変位量の変化に対する前記圧縮荷重の変化の変曲点を検出し、前記チューブの内径測定値を出力する解析処理装置と、を有することを特徴とする。
ここで、解析処理装置としては、例えば、PC(Personal computer)を用いることができる。
【0020】
本形態例による測定装置によれば、荷重検出器(例えば、歪み計)と変位センサーによってチューブの圧縮荷重と圧縮変位量とを同時に測定して、解析処理装置で変曲点を見出し、変曲点における圧縮変位量からチューブ内径を算出し、出力する。荷重検出器や変位検出器は、一般に良く用いられるものであり、小型で低価格な測定器を提供できる。また、特に操作に関わる特殊な資格、設置場所等の制約もなく、容易に、しかも正確な内径測定を実現できる。
【0021】
また、上記測定装置の他の形態例としては、複数の前記圧縮軸を離間して併設させ、複数の前記圧縮軸それぞれの移動に対応して検出可能な前記荷重検出器と前記変位センサーとが、設けられていることが好ましい。
【0022】
このような測定装置の1例として、荷重検出器と変位センサーをチューブの長さ方向に複数備える構成にすれば、1本のチューブにおいて複数位置の内径を同時に測定可能となり、他の1例として径方向に複数配設すれば、複数のチューブの内径測定を同時に測定することが可能になり、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】測定装置の1実施例を示す構成説明図。
【図2】測定方法を模式的に示す説明図。
【図3】内径測定位置を示すチューブ外観図。
【図4】圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の関係を示すグラフ。
【図5】チューブの圧縮変形状態を示す観測図。
【図6】FEM解析の結果を示す変位状態図。
【図7】圧縮軸の外径dpの違いによるチューブ圧縮変形状態を示す観測図。
【図8】FEM解析により求めた応力の分布図。
【図9】測定ポイントと圧縮軸外径と内径測定の精度の関係を示すグラフ。
【図10】圧縮軸外径に対するチューブ内径の割合(dp/d0)と、測定精度の関係を示すグラフ。
【図11】チューブ径を小さくしたときの圧縮軸外径に対するチューブ内径の割合(dp/d0)と、測定精度の関係を示すグラフ。
【図12】dp/d0と測定精度の関係をFEM解析した結果を表すグラフ。
【図13】圧縮速度と測定精度の関係を示すグラフ。
【図14】他の実施例に係る測定装置の1例示す構成説明図。
【図15】他の実施例に係る測定装置の1例示す構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(測定装置)
【0025】
まず、測定装置について説明する。
図1は、測定装置の1実施例を示す構成説明図である。測定装置1は、測定装置本体10と、解析処理装置30と、インターフェース部40とから構成されている。
測定装置本体10は、弾性を有するチューブ50(以降、単にチューブ50と表す)を保持し、X方向およびY方向に移動可能なXYテーブル11と、XYテーブル11のXY平面に対して垂直方向(Z方向)に移動可能なZ軸テーブル12と、Z軸テーブルに装着される荷重検出器20と、荷重検出器20に装着され、チューブ50を圧縮する圧縮軸21と、チューブ50の圧縮変位量を測定する変位センサー25と、から構成されている。
【0026】
XYテーブル11は、X軸方向およびY軸方向に移動可能であって、チューブ50と圧縮軸21との平面位置を調整する。XYテーブル11の移動は、手動で直接移動させても、操作ハンドルを用いて手動で行っても、モーター等の駆動手段を用いて行ってもよい。XYテーブル11には、チューブ50を保持する溝11aが形成されており、圧縮軸21によってチューブ50を圧縮する際に、チューブ50の変形を妨げない逃げ溝11bが設けられている。
【0027】
圧縮軸21は、チューブ50との接触端面は円形であって、荷重検出器20のZ方向(矢印方向)への移動に連動しチューブ50を圧縮する。このときの圧縮荷重を荷重検出器20でリアルタイムに検出し解析処理装置30に出力する。
【0028】
Z軸テーブル12は、図示しないモーターによって所定の速度でZ軸方向に移動可能であり、荷重検出器20(圧縮軸21)を取り付けた状態で、チューブ50を圧縮する方向、あるいは、圧縮を解除する方向に移動させる。
【0029】
変位センサー25は、Z軸テーブル12とは独立して図示しない固定部材に取り付けられており、端子部26の先端部がZ軸テーブル12の基台に常時、当接している。従って、Z軸テーブル12の移動量を検出することができる。Z軸テーブル12と荷重検出器20(圧縮軸21を含んで)は固定されており連動することから、Z軸テーブル12の移動量を圧縮軸21がチューブ50を押しつぶしていく際の圧縮変位量として検出し、検出結果を解析処理装置30に出力する。
【0030】
解析処理装置30は、演算部、記憶部、駆動制御部、表示部および入力部を有し、本例ではPCである。演算部では、荷重検出器20および変位センサー25から、それぞれ出力される圧縮荷重と圧縮変位量を用いて解析処理を行い、チューブ内径の測定結果を表示部に表示する。また、被測定対象物であるチューブ50の個別識別番号、Z軸テーブル12の駆動速度(チューブの圧縮速度)、測定日、測定時間等を入力部から入力し、測定結果と対応付けできるようにしておく。
【0031】
解析処理装置30では、荷重検出器20の検出値(圧縮荷重)と変位センサー25の検出値(圧縮変位量)を用いて、圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の変化の変曲点(詳しくは後述する)を検出して、チューブ内径として出力する。従って、圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の変化をグラフ化して表示すれば、なお分かりやすい。記憶部は、上述した入力データや、測定結果を保存すると共に、Z軸テーブルの駆動制御や、解析処理に関わるワークプログラムが格納されている。
【0032】
測定装置本体10と解析処理装置30とは、インターフェース40を介して接続されている。インターフェース40は、荷重検出器20および変位センサー25の検出値は共に電圧値として出力されるため、これら検出値を解析処理可能なデータに変換する機能と、荷重検出器20および変位センサー25の検出値に含まれるノイズを除去するフィルター機能と、を有する。
(測定方法)
【0033】
続いて、上述した測定装置1を用いた弾性を有するチューブ50の内径測定方法について図面を参照して説明する。
図2は、測定方法を模式的に示す説明図である。まず、チューブ50をチューブ50の中心と圧縮軸21の断面中心が一致する位置となるように、XYテーブル11を移動させる。そして、圧縮軸21を所定の速度でチューブ50を圧縮する方向に移動させながら、荷重検出器20によって圧縮荷重をリアルタイムで検出すると共に、変位センサー25によって圧縮変位量を測定する。なお、変異させる前のチューブ50の内径(設計値)をd0(mm)、外径をD0(mm)、圧縮軸21の外径をdp(mm)、圧縮軸21の移動速度をVp(μm/sec)で表す。図2で示したように測定の準備をし、チューブ50の圧縮変位量と圧縮荷重の関係を実測した。
なお、チューブ50の圧縮位置(測定位置)を図3に示す。
【0034】
図3は、内径測定位置を示すチューブ外観図である。本例では、チューブ長を100mmとし、チューブ先端部近傍を測定ポイント(1)、先端部から10mm離れた位置を測定ポイント(2)、先端部から50mm離れた位置を測定ポイント(3)、他方の先端部から10mm離れた位置を測定ポイント(4)とし、各測定ポイントにおいて、図2に示す状態と、さらに、チューブ50を周方向に90度回転させて測定し、その平均値を測定結果とした。
【0035】
図4は、圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の関係を示すグラフである。横軸に圧縮変位量、縦軸に圧縮荷重を表している。なお、チューブ50の材質は、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料を用い、チューブ外径D0=2.5mm、チューブ内径d0=1.15mmとし、圧縮軸21の外径をdp=0.4mm、dp=2.0mm、dp=5.0mmの3種類とした。また、圧縮軸21の移動速度Vp(チューブ50の圧縮速度に言い換える事ができる)は、100μm/secで一定とした。なお、測定装置1を用いて測定を行うことにあわせて、圧縮変位量とチューブ50の変位状態を観察した。
【0036】
図4に示すように、圧縮軸21の外径が0.4mm、2.0mm、5.0mmのいずれにおいても圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の変化は、ほぼ直線で近似可能な範囲(つまり、比例の関係にある範囲)と、急激に勾配が変化する範囲があることが分かる。つまり、変曲点が存在する。
【0037】
Aポイントでは、圧縮軸21がチューブ50に接触した瞬間であって、圧縮変位量は「0」である。Bポイントでは、圧縮変位量は概ね1.0mm、グラフの変曲点であるCポイントは、チューブ50の内壁面が完全に接触した位置である。つまり、チューブ内径を閉塞した状態である。また、変曲点を超えた位置のDポイントでは、圧閉閉塞された状態から更に圧縮を継続した状態である。なお、Aポイントに至る前の図示範囲外では、圧縮軸21がチューブ50に接触していない状態なので、圧縮荷重は「0」で一定であるため、圧縮荷重の発生開始位置(Aポイント)とは分離できる。
このことについて、観測した場合とFEM(Finite Element Method)解析の結果とを参照して検証する。
【0038】
図5は、チューブの圧縮変形状態を示す観測図であり、図6は、FEM解析による圧縮変形状態を示している。チューブ50の外径D0を2.5mm、内径d0を1.15mm、圧縮軸21の外径を2.0mmとした。なお、測定位置を測定ポイント(3)とした。図5、図6それぞれにおいて(a)はAポイント、(b)はBポイント、(c)はCポイント、(d)はDポイント(図4、参照)を表している。図5、図6共に、Aポイント、Bポイント、CポイントおよびDポイントの各ポイントのチューブ50の圧縮変形状態は、ほぼ一致しており、圧縮変位量に対するチューブ50の圧縮変形状態を確認できる。
【0039】
図4に戻ってみると、dp=0.4mmの場合には変曲点が存在せず、dp=2.0mmの場合とdp=5.0mmの場合とでは、直線の勾配が異なることと、変曲点の位置が異なっていることが分かる。また、圧縮軸21の外径dpが大きくなるに従い圧縮変量に対する圧縮荷重は大きくなり、変曲点(Cポイント位置)が明確に出現することが分かる。ここで、dp=2.0mmの場合の変曲点における圧縮変位量は1.15mmであって、設計値であるチューブ内径d0と一致し、この条件で測定すれば、正確なチューブ内径を測定することが可能であることを示している。
【0040】
また、dp=5.0mmの場合の変曲点(Cポイント)における圧縮変位量は、dp=2.0の場合よりも小さい測定結果となっている。
以上のことは、チューブ内径d0に対する圧縮軸外径dpの大小によって測定値が異なることを示している。
そこで、圧縮軸21の外径dpの違いによるチューブ50の圧縮状態を観察し、適切な圧縮軸外径dpを検証する。
【0041】
図7は、圧縮軸の外径dpの違いによるチューブ圧縮変形状態を示す観測図、図8は、FEM解析により求めた応力の分布を表している。なお、図7、図8共に、(a)はdp=0.4mm、(b)はdp=2.0mm、(c)はdp=5.0mmの場合を表している。
【0042】
図7(a)に示すように、dp=0.4mmの場合には、圧縮軸21の周囲が盛り上がり、圧縮軸21がチューブ50にめり込む状態となる。このとき、図8(a)に示すように、圧縮軸21の先端部に応力が集中している。つまり、圧縮荷重に対して圧縮変位量が大きくなることからチューブ内径の測定値は、設計値d0よりも大きくなる傾向を示すことが推測できる。
【0043】
dp=2.0mmの場合には、図7(b)、図8(b)で示すように、圧縮軸21がチューブ50をほぼ均等に圧縮しており、応力集中もないことから測定値と設計値のチューブ内径d0がほぼ一致する。
【0044】
dp=5.0mmの場合には、図7(c)、図8(c)で示すように、チューブ50の肉部を強く圧縮しており、この部分で応力集中がみられる。つまり、圧縮変位量に対して圧縮荷重が大きくなることからチューブ内径の測定値は設計値d0よりも小さくなる傾向を示すことが推測できる。このことは、チューブ内径d0に対して圧縮軸外径dpが測定精度に影響することを示している。
【0045】
次に、測定位置と圧縮軸外径と内径測定の精度の関係について説明する。
図9は、測定位置と圧縮軸外径と内径測定の精度の関係を示すグラフである。横軸に圧縮軸外径dp(mm)、縦軸に測定精度(%)を表す。なお、チューブ内径(設計値)d0=1.15mm、チューブ外径D0=2.5mm。圧縮速度Vp=100μm/secとした。測定位置は、図3に示す4箇所とする。
また、測定値をdnとするとき、測定精度を次式で表す。
測定精度(Accuracy)=(d0−dn)/d0×100(%)
【0046】
図9に示すように、測定精度は、測定位置によってばらつきがみられるが、必ずしも共通の傾向は発現せず、圧縮軸外径dp=2.0mmのときに、どの測定位置においても、±2%の範囲にある。また、圧縮軸外径dpが小さくなるほど測定値dnがd0よりも大きくなり、圧縮軸外径dpが大きくなるほど測定値dnがd0よりも小さくなることを示しており、前述した観測図(図7、参照)およびFEM解析結果(図8、参照)を裏付けている。送液量は、目的によって様々であり、チューブ内径も送液量によって変化させる場合がある。そこで、チューブ内径d0と圧縮軸外径dpの関係をその割合で捉え、測定精度との相関を検証する。
【0047】
図10は、圧縮軸外径に対するチューブ内径の割合(dp/d0)と、測定精度の関係を示すグラフである。横軸に圧縮軸外径とチューブ内径の比dp/d0を表し、縦軸に測定精度(%)を表している。なお、測定条件は、上記図9にて説明した測定条件にしている。図10から、dp/d0=1.74のときに測定精度(Accuracy)が±2%の範囲にあることを示している。
ここで、本例のチューブ50をインスリン投与のための薬液投与ポンプに用いる場合には、インスリン投与量は厳密な精度管理が要求される。投与量はチューブの流動断面積に比例することから、チューブ内径の精度は±2%以下にすることが望ましい。よって、dp/d0=1.74にすれば、チューブ内径の測定精度を±2%以下に抑えることが可能となる。
【0048】
なお、上記測定結果は、チューブ外径D0=2.5mm、チューブ内径1.15mmの場合について説明したが、他のチューブサイズでも同じデータが得られるか検証する。
図11は、チューブ径を小さくしたときの圧縮軸外径に対するチューブ内径の割合(dp/d0)と、測定精度の関係を示すグラフである。横軸にdp/d0、縦軸に精度(Accuracy %)を表している。チューブ外径D0=1.2mm、チューブ内径d0=0.55としたとき、圧縮軸21の外径dpを変化させて検証した。図示(A)はdp=0.6m(dp/d0=1.09)、図示(B)はdp=0.95mm(dp/d0=1.73)、図示(C)はdp=1.0mm(dp/d0=1.82)である。
【0049】
図11に示すように、dp/d0=1.73の場合の測定精度は0.6%である。また、dp/d0=1.09の場合の測定精度は2.5%であり目標値の2%の範囲外であった。dp/d0=1.82の場合の測定精度は0.9%であり目標値を満足している。dp/d0=1.82は狙いの中心値1.74に対して+0.2の範囲にあることから、チューブ径を変化させても、dp/d0=1.74±0.2の範囲に圧縮軸外径dpを設計すればよいことが検証できた。
【0050】
次に、dp/d0をさらに細かく分割して測定精度を検証した結果について説明する。
図12は、dp/d0と測定精度の関係をFEM解析した結果を表すグラフである。図12に示すように、dp/d0=1.74のときに+1%の測定精度、dp/d0=3.91、およびdp/d0=4.35のときに+2%の測定精度が得られている。しかしながら、dp/d0=3.91、dp/d0=4.35にした場合には、図4に示す実測結果では、dp=5.0mm(dp/d0=4.35)では、測定値dnが設計値d0よりも小さくなることが示されている。また、図8(c)に示す観測図に示すように、押しつぶされた部分に応力集中が発生して、圧縮荷重を除去しても元の形状に復帰しないことが考えられることから、測定したチューブ50を実機に組み込んで使用することはできないと判断できる。
【0051】
以上、図10および図11から、圧縮軸外径dpとチューブ内径d0の比dp/d0を、1.74±0.2に設定すれば、測定精度±2%以下を実現することができる。また、好ましくは1.74±0.1にすれば、測定精度±1%以下を実現できる。
【0052】
なお、以上説明した測定条件のうち、圧縮速度Vpは100μm/secで一定としたが、圧縮速度Vpも測定精度に影響がある。そこで、圧縮速度Vpと測定速度の関係について説明する。
図13は、圧縮速度と測定精度の関係を示すグラフである。横軸に圧縮速度Vp(μm/sec)、縦軸に測定精度(Accuracy %)を表す。なお、図中、Maximumは測定値の最大値、Averageは平均値、Minimumは最小値を表している。図12から、圧縮速度Vpを、Vp=100μm/sec±10μm/secの範囲内にすれば、測定精度が最もよく、ばらつきを小さくすることができることが分かる。
【0053】
以上説明したように、チューブ50を圧縮開始(圧縮荷重0)してから、圧閉するまでの間は、圧縮変位量と圧縮荷重の関係はほぼ比例の関係にあり、チューブ50を圧閉した時点で、圧縮変位量に対する圧縮荷重が急激に増加する。つまり、圧縮変位量と圧縮荷重との相関関係をグラフ化してみると、圧閉した瞬間に変曲点が発生する。この変曲点における圧縮変位量と設計値d0とが高精度に一致する。従って、この変曲点を検出することによって、弾性を有するチューブ50の内径を正確に測定することができる。
また、このような測定方法によれば、チューブ50の端部近傍の他、長さ方向中間の任意位置の内径測定を行うことができるという効果がある。
【0054】
また、チューブ内径(設計値)d0と圧縮軸外径dpの比をdp/d0=1.74±0.2の範囲内に設定することにより、d0に対する測定精度を2%以下に抑えることができる。さらに、dp/d0=1.74±0.1の範囲内に設定することにより、d0に対する測定精度を1%以下に抑えることができる。なお、圧縮軸外径dpをdp/d0=1.74±0.2の範囲内に設定すれば、圧縮時に応力集中は発生しないので、内径測定したチューブ50をそのまま実機に組み込み実使用が可能となり、チューブの非破壊内径測定を実現できる。
【0055】
また、圧縮軸21による圧縮速度Vpを、100μm/sec±10μm/secの範囲内することがより好ましい。圧縮速度Vpが90μm/sec以下の場合には、圧縮変位量に対する圧縮荷重の変化が小さく表れるため、変曲点位置が明確に出現しにくくなり、内径測定値のばらつき大きくなる。また、圧縮速度が110μm/sec以上の場合には、変曲点位置における圧縮荷重が設計値dpより大きく表れることから、内径測定値のばらつきが発生する。そこで、圧縮速度を100μm/sec±10μm/secの範囲内にすることで、圧縮速度が遅い場合、および速い場合における内径測定値のばらつきを抑え、正確な内径測定を行うことができる。
【0056】
また、本例に係る本形態例による測定装置1によれば、荷重検出器20と変位センサー25によってチューブ50の圧縮荷重と圧縮変位量とを同時に測定して、解析処理装置30で変曲点を見出し、変曲点における圧縮変位量からチューブ内径を算出するものである。荷重検出器20や変位検出器25は、一般に良く用いられるものであり、小型化で低価格な測定装置1を提供できる。また、前述した従来例のX線CT装置のような、操作に関わる特殊な資格、設置場所等の制約も必要なく、容易に、しかも正確な内径測定を実現できる。
(測定装置の他の実施例)
【0057】
続いて、本発明の測定装置の他の実施例について図面を参照して説明する。
図14、図15は、他の実施例に係る測定装置の一部を示す構成説明図である。本実施例は、複数の圧縮軸21を離間して併設させ、複数の圧縮軸それぞれの移動に対応して検出可能な荷重検出器20と前記変位センサー25とが、設けられていることを特徴とする。
図14に示す測定装置は、複数のチューブ内径を同時に測定するものであり、測定するチューブ数に合わせた数の測定部を有している。図14では、4本のチューブの場合を図示しているが、この数は限定されるものではない。
【0058】
具体的には、XYテーブル11上に、4本のチューブ50を配置し、それぞれのチューブに対して測定部101〜測定部104が備えられ、各測定部には、荷重検出器20と変位センサー25が備えられている。ここで用いられる荷重検出器20と変位センサー25は、前述した実施例の構成(図1、図2、参照)と同じであり、測定部毎に独立して内径測定ができるように構成される。なお、内径測定の方法も同じである。
【0059】
なお、XYテーブル11には、各チューブを所定位置で保持する溝11aによって位置規制されている。また、圧縮軸21がチューブ50を圧縮する位置には、チューブ50の変形を妨げない逃げ溝11bが設けられている。
【0060】
また、解処理装置およびインターフェースも前述した実施例に係る解処理装置30とインターフェース40を用いることができるが、両者共に、複数の測定結果を処理できるように構成され、解析処理装置30の表示部は、複数のチューブに対応する測定結果を表示可能に設定される。
【0061】
図15に示す測定装置は、一本のチューブにおいて、複数個所の内径測定を同時に行えるようにするものであって、測定部101〜測定部104の構成は、図14に示す測定部と同じ構成である。なお、測定位置は、図3を参照して設定すればよい。ここで、各測定位置は、チューブ50の長さ方向に沿って所定の間隔を有して併設されている。この間隔は、チューブ50を圧縮させたときに、隣り合う圧縮部の変位に影響がでない程度の間隔とし、FEM解析(図6または図8を参照)によって、あらかじめ適切な距離を設定しておくとよい。なお、XYテーブル11には、チューブ50を保持する溝11aが形成されており、圧縮軸21によってチューブ50を圧縮する位置に、チューブ50の変形を妨げない逃げ溝11bが設けられている。
【0062】
図14に示したように、複数の各チューブに対応する測定部(荷重検出器20および変位センサー25)を備えることにより、同時に複数のチューブの内径測定を可能になり、生産性を向上させることができる。
【0063】
また、図15に示すたように、チューブ50の長さ方向に沿って測定部(荷重検出器20および変位センサー25)を配設すれば、長いチューブの場合には、一本のチューブにおける内径のばらつきを検出することが可能で、薬液投与ポンプ等に用いる場合の信頼性をより高めることができる。
【0064】
なお、図示は省略するが、図14に示す構成と、図15に示す構成とを、組み合わせることができる。このようにすれば、生産性向上と、信頼性向上の両方を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の内径測定方法、および測定装置は、薬液投与ポンプに用いられるチューブの内径測定の他に、分析装置や製造装置等において微量な液体または気体を高精度に送液するために用いられる弾性を有するチューブの高精度な内径測定に応用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…測定装置、20…荷重検出器、21…圧縮軸、25…変位センサー、50…チューブ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性を有するチューブの内径測定方法、および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、慢性疾患患者のQOL(Quality of Life)の向上実現のために、様々な携帯型医療機器の開発が進められている。携帯型医療機器の一つとして、治療等で使用される薬液投与ポンプがある。薬液投与ポンプの一例としては、放射状に配設された複数のフィンガーを蠕動運動させることによって、弾性を有するチューブを薬液の流動方向上流側から下流側に向かって圧閉と開放とを繰り返すとによって、チューブ内の薬液を送液し、患者に注入させるものがある(特開2008−259518号広報)。
【0003】
このような薬液投与ポンプでは、薬液の投与量は高精度に管理されなければならない。特に、糖尿病治療のインスリン投与においては、インスリン投与量は厳格に管理する必要があるとされている。上述した薬液投与ポンプでは、薬液を流動するチューブの内径の大小によって薬液の送液量が変動することから、チューブの内径を高精度に管理することが要求される。また、衛生面、製品安全性を考慮すると、チューブの内外壁に異物が付着することを防ぐ必要があり、旧来からチューブ内径の測定方法として用いられていた破壊測定方法は適さず、異物が発生しにくい非破壊測定方法が求められている。また、破壊測定を用いる場合は、被測定チューブを実使用することができないという課題があった。そこで、非破壊測定方法が求められている。
【0004】
貫通孔の内径の非破壊測定方法としては、貫通孔の一方の端部から光束を入射させ、貫通孔内壁面で反射された光を受光し、その結像位置を観測して貫通孔の内径を測定する光干渉法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、X線CT(Computed Tomography)を用いて、被検査物の断層像を撮影し、その撮影像を用いて貫通孔のような内部寸法を測定することが可能なX線CT装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、貫通孔の一方方向から平行光を照射し、貫通孔を透過した画像をCCDカメラで取得し、画像処理によって貫通孔の内径を測定することができる内径測定装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−35518号公報
【特許文献3】特開2010−139454号公報
【特許文献4】特開2008−281497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1は、被測定対象である貫通孔の内壁面で反射された光の結像を観測するものであることから被測定物の材質によっては、内壁面を光が透過してしまうことや、反射光が減衰して明確に結像しないことが考えられ、正確な内径測定ができないという課題がある。また、湾曲したチューブなどの内径測定は困難である。
【0007】
また、特許文献2では、X線CTを用いて、被測定物の断層像で内径測定を行うことが可能であるが、高度な画像処理技術が必要になることと、X線CT装置は高価であり、X線を取り扱うための資格や、設置場所の制限等が要求されるという課題を有する。
【0008】
また、特許文献3は、被測定対象である貫通孔を透過した画像をCCDカメラで取得するため、チューブのように測定する貫通孔の長さが長い場合の測定には不向きであり、また、チューブの長さ方向の中間位置における内径測定は不可能であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
本発明の一つの形態例に係る弾性を有するチューブの内径測定方法は、弾性を有するチューブを外径方向から圧縮軸を用いて圧縮することと、前記チューブの圧縮変位量を、変位センサーを用いて測定することと、前記チューブの圧縮荷重を、荷重検出器を用いて測定することと、前記圧縮変位量の変化に対する前記圧縮荷重の変化の変曲点を検出することと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本形態例によれば、チューブを圧縮開始(圧縮荷重0)してから、チューブを圧閉するまでの間は、圧縮変位量と圧縮荷重の関係はほぼ比例の関係にあり、チューブを圧閉した時点で、圧縮変位量に対する圧縮荷重が急激に増加する。つまり、圧縮変位量と圧縮荷重との相関関係をグラフ化してみると、圧閉した瞬間に変曲点が発生する。発明者らは、この変曲点における圧縮変位量がチューブ内径と高精度に一致することを見いだした。従って、この変曲点を検出することによって、弾性を有するチューブの内径を正確に測定することができる。
【0012】
また、このような測定方法によれば、チューブの端部近傍の他、長さ方向中間の任意位置の内径測定を行うことができ、湾曲したチューブの内径測定も可能である。
【0013】
さらに、変曲点を検出したところで圧縮を解除すれば、チューブの断面形状は初期状態に復帰することから、内径測定をしたチューブをポンプ等の実機に組み込んで使用することができる。また、ポンプ等にチューブを組み込んだ状態で測定することも可能である。
【0014】
さらに、前記チューブの内径をd0、前記圧縮軸の外径をdpとするとき、d0に対するdpの比が、dp/d0=1.74±0.2の範囲内にあることが好ましい。
ここで、チューブ内径d0は、設計値である。
【0015】
チューブ内径d0と圧縮軸外径dpの比が1.52より小さい場合には、圧縮軸がチューブにめり込んでしまうことにより、圧縮される部分に応力が集中し、圧縮荷重に対して圧縮変位量が大きくなり、内径が大きくなったように測定される傾向がある。また、チューブ内径d0と圧縮軸外径dpの比が1.94より大きい場合には、チューブ断面の広い範囲を圧縮することにより圧縮変位量に対する変曲点が早く出現するため、内径が小さくなったように測定される傾向がある。
従って、チューブ内径d0と圧縮軸外径dpの比をdp/d0=1.74±0.2の範囲内にすることにより、チューブ内径を正確に測定することができる。
【0016】
また、前記圧縮軸によるチューブ圧縮速度が、100μm/sec±10μm/secの範囲内にあることが好ましい。
【0017】
圧縮速度が90μm/sec以下の場合には、圧縮変位量と圧縮荷重の変化が小さくなるため、変曲点位置が明確に出現しにくくなり、内径測定値のばらつき大きくなる。また、圧縮速度が110μm/sec以上の場合には、変曲点位置における圧縮荷重が大きく現れる傾向があり、内径測定値のばらつきが発生する。そこで、圧縮速度を100μm/sec±10μm/secの範囲内にすることで、圧縮速度が遅い場合、および速い場合における内径測定値のばらつきを排除し、正確な内径測定を行うことができる。
【0018】
また、チューブ50は、束ねて運搬する場合があり、断面形状が真円でなく楕円に変形する可能性がある。そのため、内径測定時のチューブ50の載置角度によっては測定値が異なることが予測される。そこで、各測定位置において方向だけでなく、周方向に90度回転させて測定し、二方向の平均値を測定とすることがより好ましい。
【0019】
また、本発明の1形態例に係る測定装置は、前記チューブを保持し、X方向およびY方向に移動可能なXYテーブルと、前記XYテーブルのXY平面に対して垂直方向に移動可能なZ軸テーブルと、前記Z軸テーブルに装着される荷重検出器と、前記荷重検出器に装着され、前記チューブを圧縮する圧縮軸と、前記チューブの圧縮変位量を測定する変位センサーと、前記荷重検出器と前記変位センサーの検出値を用いて、前記圧縮変位量の変化に対する前記圧縮荷重の変化の変曲点を検出し、前記チューブの内径測定値を出力する解析処理装置と、を有することを特徴とする。
ここで、解析処理装置としては、例えば、PC(Personal computer)を用いることができる。
【0020】
本形態例による測定装置によれば、荷重検出器(例えば、歪み計)と変位センサーによってチューブの圧縮荷重と圧縮変位量とを同時に測定して、解析処理装置で変曲点を見出し、変曲点における圧縮変位量からチューブ内径を算出し、出力する。荷重検出器や変位検出器は、一般に良く用いられるものであり、小型で低価格な測定器を提供できる。また、特に操作に関わる特殊な資格、設置場所等の制約もなく、容易に、しかも正確な内径測定を実現できる。
【0021】
また、上記測定装置の他の形態例としては、複数の前記圧縮軸を離間して併設させ、複数の前記圧縮軸それぞれの移動に対応して検出可能な前記荷重検出器と前記変位センサーとが、設けられていることが好ましい。
【0022】
このような測定装置の1例として、荷重検出器と変位センサーをチューブの長さ方向に複数備える構成にすれば、1本のチューブにおいて複数位置の内径を同時に測定可能となり、他の1例として径方向に複数配設すれば、複数のチューブの内径測定を同時に測定することが可能になり、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】測定装置の1実施例を示す構成説明図。
【図2】測定方法を模式的に示す説明図。
【図3】内径測定位置を示すチューブ外観図。
【図4】圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の関係を示すグラフ。
【図5】チューブの圧縮変形状態を示す観測図。
【図6】FEM解析の結果を示す変位状態図。
【図7】圧縮軸の外径dpの違いによるチューブ圧縮変形状態を示す観測図。
【図8】FEM解析により求めた応力の分布図。
【図9】測定ポイントと圧縮軸外径と内径測定の精度の関係を示すグラフ。
【図10】圧縮軸外径に対するチューブ内径の割合(dp/d0)と、測定精度の関係を示すグラフ。
【図11】チューブ径を小さくしたときの圧縮軸外径に対するチューブ内径の割合(dp/d0)と、測定精度の関係を示すグラフ。
【図12】dp/d0と測定精度の関係をFEM解析した結果を表すグラフ。
【図13】圧縮速度と測定精度の関係を示すグラフ。
【図14】他の実施例に係る測定装置の1例示す構成説明図。
【図15】他の実施例に係る測定装置の1例示す構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(測定装置)
【0025】
まず、測定装置について説明する。
図1は、測定装置の1実施例を示す構成説明図である。測定装置1は、測定装置本体10と、解析処理装置30と、インターフェース部40とから構成されている。
測定装置本体10は、弾性を有するチューブ50(以降、単にチューブ50と表す)を保持し、X方向およびY方向に移動可能なXYテーブル11と、XYテーブル11のXY平面に対して垂直方向(Z方向)に移動可能なZ軸テーブル12と、Z軸テーブルに装着される荷重検出器20と、荷重検出器20に装着され、チューブ50を圧縮する圧縮軸21と、チューブ50の圧縮変位量を測定する変位センサー25と、から構成されている。
【0026】
XYテーブル11は、X軸方向およびY軸方向に移動可能であって、チューブ50と圧縮軸21との平面位置を調整する。XYテーブル11の移動は、手動で直接移動させても、操作ハンドルを用いて手動で行っても、モーター等の駆動手段を用いて行ってもよい。XYテーブル11には、チューブ50を保持する溝11aが形成されており、圧縮軸21によってチューブ50を圧縮する際に、チューブ50の変形を妨げない逃げ溝11bが設けられている。
【0027】
圧縮軸21は、チューブ50との接触端面は円形であって、荷重検出器20のZ方向(矢印方向)への移動に連動しチューブ50を圧縮する。このときの圧縮荷重を荷重検出器20でリアルタイムに検出し解析処理装置30に出力する。
【0028】
Z軸テーブル12は、図示しないモーターによって所定の速度でZ軸方向に移動可能であり、荷重検出器20(圧縮軸21)を取り付けた状態で、チューブ50を圧縮する方向、あるいは、圧縮を解除する方向に移動させる。
【0029】
変位センサー25は、Z軸テーブル12とは独立して図示しない固定部材に取り付けられており、端子部26の先端部がZ軸テーブル12の基台に常時、当接している。従って、Z軸テーブル12の移動量を検出することができる。Z軸テーブル12と荷重検出器20(圧縮軸21を含んで)は固定されており連動することから、Z軸テーブル12の移動量を圧縮軸21がチューブ50を押しつぶしていく際の圧縮変位量として検出し、検出結果を解析処理装置30に出力する。
【0030】
解析処理装置30は、演算部、記憶部、駆動制御部、表示部および入力部を有し、本例ではPCである。演算部では、荷重検出器20および変位センサー25から、それぞれ出力される圧縮荷重と圧縮変位量を用いて解析処理を行い、チューブ内径の測定結果を表示部に表示する。また、被測定対象物であるチューブ50の個別識別番号、Z軸テーブル12の駆動速度(チューブの圧縮速度)、測定日、測定時間等を入力部から入力し、測定結果と対応付けできるようにしておく。
【0031】
解析処理装置30では、荷重検出器20の検出値(圧縮荷重)と変位センサー25の検出値(圧縮変位量)を用いて、圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の変化の変曲点(詳しくは後述する)を検出して、チューブ内径として出力する。従って、圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の変化をグラフ化して表示すれば、なお分かりやすい。記憶部は、上述した入力データや、測定結果を保存すると共に、Z軸テーブルの駆動制御や、解析処理に関わるワークプログラムが格納されている。
【0032】
測定装置本体10と解析処理装置30とは、インターフェース40を介して接続されている。インターフェース40は、荷重検出器20および変位センサー25の検出値は共に電圧値として出力されるため、これら検出値を解析処理可能なデータに変換する機能と、荷重検出器20および変位センサー25の検出値に含まれるノイズを除去するフィルター機能と、を有する。
(測定方法)
【0033】
続いて、上述した測定装置1を用いた弾性を有するチューブ50の内径測定方法について図面を参照して説明する。
図2は、測定方法を模式的に示す説明図である。まず、チューブ50をチューブ50の中心と圧縮軸21の断面中心が一致する位置となるように、XYテーブル11を移動させる。そして、圧縮軸21を所定の速度でチューブ50を圧縮する方向に移動させながら、荷重検出器20によって圧縮荷重をリアルタイムで検出すると共に、変位センサー25によって圧縮変位量を測定する。なお、変異させる前のチューブ50の内径(設計値)をd0(mm)、外径をD0(mm)、圧縮軸21の外径をdp(mm)、圧縮軸21の移動速度をVp(μm/sec)で表す。図2で示したように測定の準備をし、チューブ50の圧縮変位量と圧縮荷重の関係を実測した。
なお、チューブ50の圧縮位置(測定位置)を図3に示す。
【0034】
図3は、内径測定位置を示すチューブ外観図である。本例では、チューブ長を100mmとし、チューブ先端部近傍を測定ポイント(1)、先端部から10mm離れた位置を測定ポイント(2)、先端部から50mm離れた位置を測定ポイント(3)、他方の先端部から10mm離れた位置を測定ポイント(4)とし、各測定ポイントにおいて、図2に示す状態と、さらに、チューブ50を周方向に90度回転させて測定し、その平均値を測定結果とした。
【0035】
図4は、圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の関係を示すグラフである。横軸に圧縮変位量、縦軸に圧縮荷重を表している。なお、チューブ50の材質は、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料を用い、チューブ外径D0=2.5mm、チューブ内径d0=1.15mmとし、圧縮軸21の外径をdp=0.4mm、dp=2.0mm、dp=5.0mmの3種類とした。また、圧縮軸21の移動速度Vp(チューブ50の圧縮速度に言い換える事ができる)は、100μm/secで一定とした。なお、測定装置1を用いて測定を行うことにあわせて、圧縮変位量とチューブ50の変位状態を観察した。
【0036】
図4に示すように、圧縮軸21の外径が0.4mm、2.0mm、5.0mmのいずれにおいても圧縮変位量の変化に対する圧縮荷重の変化は、ほぼ直線で近似可能な範囲(つまり、比例の関係にある範囲)と、急激に勾配が変化する範囲があることが分かる。つまり、変曲点が存在する。
【0037】
Aポイントでは、圧縮軸21がチューブ50に接触した瞬間であって、圧縮変位量は「0」である。Bポイントでは、圧縮変位量は概ね1.0mm、グラフの変曲点であるCポイントは、チューブ50の内壁面が完全に接触した位置である。つまり、チューブ内径を閉塞した状態である。また、変曲点を超えた位置のDポイントでは、圧閉閉塞された状態から更に圧縮を継続した状態である。なお、Aポイントに至る前の図示範囲外では、圧縮軸21がチューブ50に接触していない状態なので、圧縮荷重は「0」で一定であるため、圧縮荷重の発生開始位置(Aポイント)とは分離できる。
このことについて、観測した場合とFEM(Finite Element Method)解析の結果とを参照して検証する。
【0038】
図5は、チューブの圧縮変形状態を示す観測図であり、図6は、FEM解析による圧縮変形状態を示している。チューブ50の外径D0を2.5mm、内径d0を1.15mm、圧縮軸21の外径を2.0mmとした。なお、測定位置を測定ポイント(3)とした。図5、図6それぞれにおいて(a)はAポイント、(b)はBポイント、(c)はCポイント、(d)はDポイント(図4、参照)を表している。図5、図6共に、Aポイント、Bポイント、CポイントおよびDポイントの各ポイントのチューブ50の圧縮変形状態は、ほぼ一致しており、圧縮変位量に対するチューブ50の圧縮変形状態を確認できる。
【0039】
図4に戻ってみると、dp=0.4mmの場合には変曲点が存在せず、dp=2.0mmの場合とdp=5.0mmの場合とでは、直線の勾配が異なることと、変曲点の位置が異なっていることが分かる。また、圧縮軸21の外径dpが大きくなるに従い圧縮変量に対する圧縮荷重は大きくなり、変曲点(Cポイント位置)が明確に出現することが分かる。ここで、dp=2.0mmの場合の変曲点における圧縮変位量は1.15mmであって、設計値であるチューブ内径d0と一致し、この条件で測定すれば、正確なチューブ内径を測定することが可能であることを示している。
【0040】
また、dp=5.0mmの場合の変曲点(Cポイント)における圧縮変位量は、dp=2.0の場合よりも小さい測定結果となっている。
以上のことは、チューブ内径d0に対する圧縮軸外径dpの大小によって測定値が異なることを示している。
そこで、圧縮軸21の外径dpの違いによるチューブ50の圧縮状態を観察し、適切な圧縮軸外径dpを検証する。
【0041】
図7は、圧縮軸の外径dpの違いによるチューブ圧縮変形状態を示す観測図、図8は、FEM解析により求めた応力の分布を表している。なお、図7、図8共に、(a)はdp=0.4mm、(b)はdp=2.0mm、(c)はdp=5.0mmの場合を表している。
【0042】
図7(a)に示すように、dp=0.4mmの場合には、圧縮軸21の周囲が盛り上がり、圧縮軸21がチューブ50にめり込む状態となる。このとき、図8(a)に示すように、圧縮軸21の先端部に応力が集中している。つまり、圧縮荷重に対して圧縮変位量が大きくなることからチューブ内径の測定値は、設計値d0よりも大きくなる傾向を示すことが推測できる。
【0043】
dp=2.0mmの場合には、図7(b)、図8(b)で示すように、圧縮軸21がチューブ50をほぼ均等に圧縮しており、応力集中もないことから測定値と設計値のチューブ内径d0がほぼ一致する。
【0044】
dp=5.0mmの場合には、図7(c)、図8(c)で示すように、チューブ50の肉部を強く圧縮しており、この部分で応力集中がみられる。つまり、圧縮変位量に対して圧縮荷重が大きくなることからチューブ内径の測定値は設計値d0よりも小さくなる傾向を示すことが推測できる。このことは、チューブ内径d0に対して圧縮軸外径dpが測定精度に影響することを示している。
【0045】
次に、測定位置と圧縮軸外径と内径測定の精度の関係について説明する。
図9は、測定位置と圧縮軸外径と内径測定の精度の関係を示すグラフである。横軸に圧縮軸外径dp(mm)、縦軸に測定精度(%)を表す。なお、チューブ内径(設計値)d0=1.15mm、チューブ外径D0=2.5mm。圧縮速度Vp=100μm/secとした。測定位置は、図3に示す4箇所とする。
また、測定値をdnとするとき、測定精度を次式で表す。
測定精度(Accuracy)=(d0−dn)/d0×100(%)
【0046】
図9に示すように、測定精度は、測定位置によってばらつきがみられるが、必ずしも共通の傾向は発現せず、圧縮軸外径dp=2.0mmのときに、どの測定位置においても、±2%の範囲にある。また、圧縮軸外径dpが小さくなるほど測定値dnがd0よりも大きくなり、圧縮軸外径dpが大きくなるほど測定値dnがd0よりも小さくなることを示しており、前述した観測図(図7、参照)およびFEM解析結果(図8、参照)を裏付けている。送液量は、目的によって様々であり、チューブ内径も送液量によって変化させる場合がある。そこで、チューブ内径d0と圧縮軸外径dpの関係をその割合で捉え、測定精度との相関を検証する。
【0047】
図10は、圧縮軸外径に対するチューブ内径の割合(dp/d0)と、測定精度の関係を示すグラフである。横軸に圧縮軸外径とチューブ内径の比dp/d0を表し、縦軸に測定精度(%)を表している。なお、測定条件は、上記図9にて説明した測定条件にしている。図10から、dp/d0=1.74のときに測定精度(Accuracy)が±2%の範囲にあることを示している。
ここで、本例のチューブ50をインスリン投与のための薬液投与ポンプに用いる場合には、インスリン投与量は厳密な精度管理が要求される。投与量はチューブの流動断面積に比例することから、チューブ内径の精度は±2%以下にすることが望ましい。よって、dp/d0=1.74にすれば、チューブ内径の測定精度を±2%以下に抑えることが可能となる。
【0048】
なお、上記測定結果は、チューブ外径D0=2.5mm、チューブ内径1.15mmの場合について説明したが、他のチューブサイズでも同じデータが得られるか検証する。
図11は、チューブ径を小さくしたときの圧縮軸外径に対するチューブ内径の割合(dp/d0)と、測定精度の関係を示すグラフである。横軸にdp/d0、縦軸に精度(Accuracy %)を表している。チューブ外径D0=1.2mm、チューブ内径d0=0.55としたとき、圧縮軸21の外径dpを変化させて検証した。図示(A)はdp=0.6m(dp/d0=1.09)、図示(B)はdp=0.95mm(dp/d0=1.73)、図示(C)はdp=1.0mm(dp/d0=1.82)である。
【0049】
図11に示すように、dp/d0=1.73の場合の測定精度は0.6%である。また、dp/d0=1.09の場合の測定精度は2.5%であり目標値の2%の範囲外であった。dp/d0=1.82の場合の測定精度は0.9%であり目標値を満足している。dp/d0=1.82は狙いの中心値1.74に対して+0.2の範囲にあることから、チューブ径を変化させても、dp/d0=1.74±0.2の範囲に圧縮軸外径dpを設計すればよいことが検証できた。
【0050】
次に、dp/d0をさらに細かく分割して測定精度を検証した結果について説明する。
図12は、dp/d0と測定精度の関係をFEM解析した結果を表すグラフである。図12に示すように、dp/d0=1.74のときに+1%の測定精度、dp/d0=3.91、およびdp/d0=4.35のときに+2%の測定精度が得られている。しかしながら、dp/d0=3.91、dp/d0=4.35にした場合には、図4に示す実測結果では、dp=5.0mm(dp/d0=4.35)では、測定値dnが設計値d0よりも小さくなることが示されている。また、図8(c)に示す観測図に示すように、押しつぶされた部分に応力集中が発生して、圧縮荷重を除去しても元の形状に復帰しないことが考えられることから、測定したチューブ50を実機に組み込んで使用することはできないと判断できる。
【0051】
以上、図10および図11から、圧縮軸外径dpとチューブ内径d0の比dp/d0を、1.74±0.2に設定すれば、測定精度±2%以下を実現することができる。また、好ましくは1.74±0.1にすれば、測定精度±1%以下を実現できる。
【0052】
なお、以上説明した測定条件のうち、圧縮速度Vpは100μm/secで一定としたが、圧縮速度Vpも測定精度に影響がある。そこで、圧縮速度Vpと測定速度の関係について説明する。
図13は、圧縮速度と測定精度の関係を示すグラフである。横軸に圧縮速度Vp(μm/sec)、縦軸に測定精度(Accuracy %)を表す。なお、図中、Maximumは測定値の最大値、Averageは平均値、Minimumは最小値を表している。図12から、圧縮速度Vpを、Vp=100μm/sec±10μm/secの範囲内にすれば、測定精度が最もよく、ばらつきを小さくすることができることが分かる。
【0053】
以上説明したように、チューブ50を圧縮開始(圧縮荷重0)してから、圧閉するまでの間は、圧縮変位量と圧縮荷重の関係はほぼ比例の関係にあり、チューブ50を圧閉した時点で、圧縮変位量に対する圧縮荷重が急激に増加する。つまり、圧縮変位量と圧縮荷重との相関関係をグラフ化してみると、圧閉した瞬間に変曲点が発生する。この変曲点における圧縮変位量と設計値d0とが高精度に一致する。従って、この変曲点を検出することによって、弾性を有するチューブ50の内径を正確に測定することができる。
また、このような測定方法によれば、チューブ50の端部近傍の他、長さ方向中間の任意位置の内径測定を行うことができるという効果がある。
【0054】
また、チューブ内径(設計値)d0と圧縮軸外径dpの比をdp/d0=1.74±0.2の範囲内に設定することにより、d0に対する測定精度を2%以下に抑えることができる。さらに、dp/d0=1.74±0.1の範囲内に設定することにより、d0に対する測定精度を1%以下に抑えることができる。なお、圧縮軸外径dpをdp/d0=1.74±0.2の範囲内に設定すれば、圧縮時に応力集中は発生しないので、内径測定したチューブ50をそのまま実機に組み込み実使用が可能となり、チューブの非破壊内径測定を実現できる。
【0055】
また、圧縮軸21による圧縮速度Vpを、100μm/sec±10μm/secの範囲内することがより好ましい。圧縮速度Vpが90μm/sec以下の場合には、圧縮変位量に対する圧縮荷重の変化が小さく表れるため、変曲点位置が明確に出現しにくくなり、内径測定値のばらつき大きくなる。また、圧縮速度が110μm/sec以上の場合には、変曲点位置における圧縮荷重が設計値dpより大きく表れることから、内径測定値のばらつきが発生する。そこで、圧縮速度を100μm/sec±10μm/secの範囲内にすることで、圧縮速度が遅い場合、および速い場合における内径測定値のばらつきを抑え、正確な内径測定を行うことができる。
【0056】
また、本例に係る本形態例による測定装置1によれば、荷重検出器20と変位センサー25によってチューブ50の圧縮荷重と圧縮変位量とを同時に測定して、解析処理装置30で変曲点を見出し、変曲点における圧縮変位量からチューブ内径を算出するものである。荷重検出器20や変位検出器25は、一般に良く用いられるものであり、小型化で低価格な測定装置1を提供できる。また、前述した従来例のX線CT装置のような、操作に関わる特殊な資格、設置場所等の制約も必要なく、容易に、しかも正確な内径測定を実現できる。
(測定装置の他の実施例)
【0057】
続いて、本発明の測定装置の他の実施例について図面を参照して説明する。
図14、図15は、他の実施例に係る測定装置の一部を示す構成説明図である。本実施例は、複数の圧縮軸21を離間して併設させ、複数の圧縮軸それぞれの移動に対応して検出可能な荷重検出器20と前記変位センサー25とが、設けられていることを特徴とする。
図14に示す測定装置は、複数のチューブ内径を同時に測定するものであり、測定するチューブ数に合わせた数の測定部を有している。図14では、4本のチューブの場合を図示しているが、この数は限定されるものではない。
【0058】
具体的には、XYテーブル11上に、4本のチューブ50を配置し、それぞれのチューブに対して測定部101〜測定部104が備えられ、各測定部には、荷重検出器20と変位センサー25が備えられている。ここで用いられる荷重検出器20と変位センサー25は、前述した実施例の構成(図1、図2、参照)と同じであり、測定部毎に独立して内径測定ができるように構成される。なお、内径測定の方法も同じである。
【0059】
なお、XYテーブル11には、各チューブを所定位置で保持する溝11aによって位置規制されている。また、圧縮軸21がチューブ50を圧縮する位置には、チューブ50の変形を妨げない逃げ溝11bが設けられている。
【0060】
また、解処理装置およびインターフェースも前述した実施例に係る解処理装置30とインターフェース40を用いることができるが、両者共に、複数の測定結果を処理できるように構成され、解析処理装置30の表示部は、複数のチューブに対応する測定結果を表示可能に設定される。
【0061】
図15に示す測定装置は、一本のチューブにおいて、複数個所の内径測定を同時に行えるようにするものであって、測定部101〜測定部104の構成は、図14に示す測定部と同じ構成である。なお、測定位置は、図3を参照して設定すればよい。ここで、各測定位置は、チューブ50の長さ方向に沿って所定の間隔を有して併設されている。この間隔は、チューブ50を圧縮させたときに、隣り合う圧縮部の変位に影響がでない程度の間隔とし、FEM解析(図6または図8を参照)によって、あらかじめ適切な距離を設定しておくとよい。なお、XYテーブル11には、チューブ50を保持する溝11aが形成されており、圧縮軸21によってチューブ50を圧縮する位置に、チューブ50の変形を妨げない逃げ溝11bが設けられている。
【0062】
図14に示したように、複数の各チューブに対応する測定部(荷重検出器20および変位センサー25)を備えることにより、同時に複数のチューブの内径測定を可能になり、生産性を向上させることができる。
【0063】
また、図15に示すたように、チューブ50の長さ方向に沿って測定部(荷重検出器20および変位センサー25)を配設すれば、長いチューブの場合には、一本のチューブにおける内径のばらつきを検出することが可能で、薬液投与ポンプ等に用いる場合の信頼性をより高めることができる。
【0064】
なお、図示は省略するが、図14に示す構成と、図15に示す構成とを、組み合わせることができる。このようにすれば、生産性向上と、信頼性向上の両方を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の内径測定方法、および測定装置は、薬液投与ポンプに用いられるチューブの内径測定の他に、分析装置や製造装置等において微量な液体または気体を高精度に送液するために用いられる弾性を有するチューブの高精度な内径測定に応用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…測定装置、20…荷重検出器、21…圧縮軸、25…変位センサー、50…チューブ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するチューブを外径方向から圧縮軸を用いて圧縮することと、
前記チューブの圧縮変位量を、変位センサーを用いて測定することと、
前記チューブの圧縮荷重を、荷重検出器を用いて測定することと、
前記圧縮変位量の変化に対する前記圧縮荷重の変化の変曲点を検出することと、
を含むことを特徴とする弾性を有するチューブの内径測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性を有するチューブの内径測定方法において、
前記チューブの内径をd0、前記圧縮軸の外径をdpとするとき、
d0に対するdpの比が、dp/d0=1.74±0.2の範囲内にあること、
を特徴とする弾性を有するチューブの内径測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の弾性を有するチューブの内径測定方法において、
前記圧縮軸によるチューブ圧縮速度が、100μm/sec±10μm/secの範囲内にあること、
を特徴とすることを特徴とする弾性を有するチューブの内径測定方法。
【請求項4】
前記チューブを保持し、X方向およびY方向に移動可能なXYテーブルと、
前記XYテーブルのXY平面に対して垂直方向に移動可能なZ軸テーブルと、
前記Z軸テーブルに装着される荷重検出器と、
前記荷重検出器に装着され、前記チューブを圧縮する圧縮軸と、
前記チューブの圧縮変位量を測定する変位センサーと、
前記荷重検出器と前記変位センサーの検出値を用いて、前記圧縮変位量の変化に対する前記圧縮荷重の変化の変曲点を検出し、前記チューブの内径測定値を出力する解析処理装置と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測定装置において、
複数の前記圧縮軸を併設させ、
複数の前記圧縮軸それぞれの移動に対応して検出可能な前記荷重検出器と前記変位センサーとが、設けられていることを特徴とする測定装置。
【請求項1】
弾性を有するチューブを外径方向から圧縮軸を用いて圧縮することと、
前記チューブの圧縮変位量を、変位センサーを用いて測定することと、
前記チューブの圧縮荷重を、荷重検出器を用いて測定することと、
前記圧縮変位量の変化に対する前記圧縮荷重の変化の変曲点を検出することと、
を含むことを特徴とする弾性を有するチューブの内径測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性を有するチューブの内径測定方法において、
前記チューブの内径をd0、前記圧縮軸の外径をdpとするとき、
d0に対するdpの比が、dp/d0=1.74±0.2の範囲内にあること、
を特徴とする弾性を有するチューブの内径測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の弾性を有するチューブの内径測定方法において、
前記圧縮軸によるチューブ圧縮速度が、100μm/sec±10μm/secの範囲内にあること、
を特徴とすることを特徴とする弾性を有するチューブの内径測定方法。
【請求項4】
前記チューブを保持し、X方向およびY方向に移動可能なXYテーブルと、
前記XYテーブルのXY平面に対して垂直方向に移動可能なZ軸テーブルと、
前記Z軸テーブルに装着される荷重検出器と、
前記荷重検出器に装着され、前記チューブを圧縮する圧縮軸と、
前記チューブの圧縮変位量を測定する変位センサーと、
前記荷重検出器と前記変位センサーの検出値を用いて、前記圧縮変位量の変化に対する前記圧縮荷重の変化の変曲点を検出し、前記チューブの内径測定値を出力する解析処理装置と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測定装置において、
複数の前記圧縮軸を併設させ、
複数の前記圧縮軸それぞれの移動に対応して検出可能な前記荷重検出器と前記変位センサーとが、設けられていることを特徴とする測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−189436(P2012−189436A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52942(P2011−52942)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、経済産業省、地域イノベーション創出研究開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、経済産業省、地域イノベーション創出研究開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]