説明

弾性コネクタ

【課題】絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部12と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部13と、ベース部12を補強する硬質材でなる補強芯材14とを一体に備えており、接続部材間に挟持されて、これら接続部材どうしを相互に導通接続する柱状の弾性コネクタ11について、実装する接続部材間が比較的離れた場合であっても座屈し難い技術を提供すること。
【解決手段】
ベース部12に被覆された補強芯材14を有する形状保持部位17と、補強芯材14を設けない導通部13を有する弾性接続部位16とを導電方向に積層して構成することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末機、ノートパソコンなどの情報機器、小型オーディオプレーヤー、小型ディスプレーなどのAV機器、その他の電子機器の内部に組み込まれ、回路基板どうしの間、回路基板と電子部品との間、または機器の外装部品に設けられる導通部と回路基板との間などの種々の接続部品間を含む接続部材間の電気的接続に用いられる弾性コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板と電子部品の間などを電気的に接続する弾性コネクタには、その一例として図5や図6で示す弾性コネクタ1がある。この弾性コネクタ1は、絶縁性のゴム状弾性体でなる外周部2と、その内側に設けられる弾性導通部3とで円柱体に形成され、その両端面1a,1aに弾性導通部3が露出して、円柱体の管軸方向に導電性を有する部材である。この弾性コネクタ1の弾性導通部3には、ゴム状弾性体中に磁性導電体が配合されたものが用いられている。
【0003】
こうした弾性コネクタ1を電子機器に取付けるには、はんだ付けや機械的接合などの固定手段を用いる必要がなく、対向する接点(電極)にそれぞれ端面1aを接触し圧接することで両接点を簡単に接続することができる。そして外周部2で機器外部からの振動や衝撃を吸収することができ、位置ずれによる接触不良を起こし難くすることができる。さらには、弾性導通部3の摩耗や放電を防止することができ、確実な電気的接続を実現することができる。
【0004】
この弾性コネクタ1は、例えば、特開2003−257542号公報に開示されている。また、複数の弾性導通部が形成されて異方導電性シートとされた例が、例えば、特開2005−178092号公報に開示されている。こうした弾性導通部を設けた弾性コネクタ1や異方導電性シートは、効率的な生産、簡易的な作業、高い歩留まりなどを実現できることから金型成形によって製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−257542号公報
【特許文献2】特開2005−178092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした柱状の弾性コネクタ1は、その底面に比べて高さが十分に低い場合には、安定的に配置することができるが、底面に比べて高さが高い、背の高い形状となると、圧縮時に弾性コネクタ自身が座屈し、回路基板から外れ易くなるだけでなく、接続部材との接触面が傾き導通不良となるおそれがある。
そのため、弾性コネクタを保持するホルダを回路基板または筐体等の接続部材側に設けて、そのホルダ内に弾性コネクタをはめ込む改良がなされているが、マウンターによる搬送で弾性コネクタを回路基板にセットするため、ホルダ内に弾性コネクタをはめ込むことは困難であった。また、マウンターによらずに手作業でセットする場合も同様であった。さらに、筐体等の接続部材側にホルダを含めて設計するにはスペース上の課題や設計上の制約があり、ホルダを簡単には設けることができないといった欠点があった。
【0007】
以上のような従来技術を背景としてなされたのが本発明である。すなわち、本発明の目的は、弾性コネクタを実装する接続部材間が比較的離れた場合であっても座屈し難い弾性コネクタを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく以下に構成する弾性コネクタを提供する。
すなわち、絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部と、ベース部を補強する硬質材でなる補強芯材とを一体に備えており、接続部材間に挟持されて、これら接続部材どうしを相互に導通接続する柱状の弾性コネクタについて、補強芯材は環状の鍔部を有するハット形状の金属板からなり、導通部はその一端が補強芯材の頂部と連通しており、ベース部は補強芯材と導通部のそれぞれの外周面を被覆しており、導通部の他端と前記金属板の鍔部が接続部材に接触可能であって、ベース部に被覆された導通部が補強芯材を設けた部分から突出する弾性接続部位と、補強芯材を有する形状保持部位とを構成することを特徴とする弾性コネクタである。
【0009】
絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部と、ベース部を補強する硬質材でなる補強芯材とを一体に備えたため、回路基板や筐体等の接続部材間が比較的離れている場合であっても、接続部材側にホルダ等の余分な部位を設けることなく、座屈し難い弾性コネクタとすることができる。
補強芯材が環状の鍔部を有するハット形状の金属板からなるため、この補強芯材を設けた部分はベース部を補強することができるとともに、導通部と連通して導通させることができる。また、ハット形状の内側を中空とすることで軽量な弾性コネクタとすることができる。環状の鍔部を有するため、この環状の鍔部を露出させることで、ハンダ付け面とすることができる。さらに、ハット形状の頂部を有するため導通部の端部と十分な導通接続を行うことができる。
【0010】
導通部はその一端を金属製の補強芯材の頂部と連通することができるため、導通部と補強芯材とを導通させることが可能となる。これにより、接続部材との接点を補強芯材とすることができ、弾性コネクタの一端にハンダ付けすることが可能となる。
ベース部は補強芯材と導通部のそれぞれの外周面を被覆しているため、所定の端面以外では導電部分が被覆され他部品との絶縁状態を確保することができる。また、補強芯材と導通部とをベース部で一体にすることができる。
導通部の他端と金属板の鍔部が接続部材に接触可能であるため、金属製の補強芯材を導電部分として担わせることができる。
【0011】
ベース部に被覆された導通部が補強芯材を設けた部分から突出する弾性接続部位を構成するため、このベース部に被覆された導通部の部分は圧縮を受けると伸縮することができ、接続部材間に圧着させて、確実な導通を図ることができる。また、補強芯材を有する形状保持部位を構成するため、形状保持部位の部分では圧縮を受けても伸縮させないことができる。そのため、弾性コネクタの必要以上の伸縮を防止し、弾性コネクタ自体の座屈を防止することができる。
【0012】
また、絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部と、ベース部を補強する硬質材でなる補強芯材とを一体に備えており、接続部材間に挟持されて、これら接続部材どうしを相互に導通接続する柱状の弾性コネクタについて、補強芯材は円筒状の硬質板からなり、導通部はその円筒内を貫通しており、ベース部は導通部の外周面と補強芯材の外周面を被覆しており、さらに補強芯材を設けた一端側には金属箔層を有しており、導通部の一端と前記金属箔層が接続部材に接触可能であって、ベース部に被覆された導通部が補強芯材を設けた部位から突出する弾性接続部位と、補強芯材を有する形状保持部位とを構成することを特徴とする弾性コネクタを提供する。
【0013】
補強芯材が円筒状の硬質板からなるため、導通部を被覆するベース部の中に補強芯材を含ませることができる。そのため、導通部における導電体の配向状態に影響を与えることなくベース部を補強することができる。換言すれば、導通部は補強芯材と交差せず、補強芯材の円筒内を貫通することができるため、補強芯材の影響を受けずに導通状態を保持することができる。
ベース部は導通部の外周面と補強芯材の外周面を被覆するため、所定の端面以外では導電部分が被覆され他部品との絶縁状態を確保することができる。また、補強芯材と導通部とをベース部で一体にすることができる。
さらに補強芯材を設けた一端側には金属箔層を設けたため、金属箔層にハンダ付けすることが可能であり、導通部の一端と前記金属箔層が接続部材に接触可能であるため、金属製の金属箔層を導電部分として担わせることができる。
【0014】
ベース部に被覆された導通部が補強芯材を設けた部位から突出する弾性接続部位を構成するため、このベース部に被覆された導通部の部分は圧縮を受けると伸縮することができ、接続部材間に圧着させて、確実な導通を図ることができる。
また、この補強芯材を設けた部位が形状保持部位を構成するため、形状保持部位の部分では圧縮を受けても座屈させないことができる。
【0015】
硬質材を樹脂材とすることができる。硬質材を樹脂材としたため、金属板を用いる場合に比べて軽く、製造も容易である。また、導通部以外の絶縁性が確実になる。
また、ベース部で導通部と補強芯材との間隙を埋めることができる。ベース部が導通部と補強芯材との間隙を埋めていると、接続部材間に挟まれた際に補強芯材がある形状保持部位も収縮することができる。そのため、補強芯材があっても補強芯材が無い場合と同様に弾性コネクタが持つ柔軟性を維持することができる。
【0016】
絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部と、ベース部を補強する金属材でなる補強芯材とを一体に備えており、接続部材間に挟持されて、これら接続部材どうしを相互に導通接続する柱状の弾性コネクタについて、補強芯材は金属塊からなり、導通部はその一端が補強芯材の頂部と連通しており、ベース部は補強芯材と導通部のそれぞれの外周面を被覆しており、導通部の他端と前記金属塊の底部が接続部材に接触可能であって、ベース部に被覆された導通部が補強芯材を設けた部分から突出する弾性接続部位と、補強芯材を有する形状保持部位とを構成することを特徴とする弾性コネクタを提供する。
補強芯材を金属塊で構成したため、補強強度の強い弾性コネクタを得ることができる。また、重心が安定して倒れにくく、ハンダ付けがし易い弾性コネクタである。
【0017】
そして、絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部と、ベース部を補強する硬質材でなる補強芯材とを一体に備えており、接続部材間に挟持されて、これら接続部材どうしを相互に導通接続する柱状の弾性コネクタについて、ベース部に被覆された補強芯材を有する形状保持部位と、補強芯材を設けないベース部に被覆された導通部を有する弾性接続部位とが導電方向に積層して構成されることを特徴とする弾性コネクタを提供する。
【0018】
ベース部に被覆された補強芯材を有する形状保持部位と、補強芯材を設けないベース部に被覆された導通部を有する弾性接続部位とが導電方向に積層して構成されるため、弾性接続部位で適度に圧縮を受けて伸縮し確実な導通を図ることができるとともに、形状保持部位で形状を保ち、弾性コネクタ自体の座屈を防止することができる。
【0019】
弾性接続部位の高さが、弾性コネクタの高さに対して5%〜50%とすることができる。弾性接続部位の高さを、弾性接続部位と形状保持部位の両方の高さを加えた弾性コネクタの高さに対して5%〜50%としたため、接続対象部材間の離間程度にかかわらず適度な圧縮が可能な弾性コネクタとすることができ、座屈を起こさずに確実な導通接触を図れる弾性コネクタである。
【0020】
底面の外径に対し高さが2倍以上の長さを有する弾性コネクタとすることができる。
底面の外径に対し高さが2倍以上の長さを有するため、幅狭な実装空間にあって、接続対象部材間が離れていても座屈させずに確実な導通を行うことができる。
【0021】
弾性接続部位の高さは、0.5mm〜5.0mmとすることができる。
弾性接続部位の高さを、0.5mm〜5.0mmとしたため、接続対象部材間の間隙に応じて最良の弾性接続部位の長さを選択することができ、確実な導通接合を行わしめることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の弾性コネクタによれば、実装する接続部材間が離れており、圧縮による導通を図っても座屈し難い弾性コネクタである。また、確実な導通接続が可能な弾性コネクタである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の弾性コネクタを示す断面図である。
【図2】第2実施形態の弾性コネクタを示す断面図である。
【図3】第1実施形態の変形例である弾性コネクタを示す断面図である。
【図4】第2実施形態の変形例である弾性コネクタを示す断面図である。
【図5】従来の弾性コネクタを示す斜視図である。
【図6】図5の弾性コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態で共通する材質、構成、機能、製造方法等については重複説明を省略する。
【0025】
第1実施形態〔図1〕
第1実施形態の弾性コネクタ11を図1の断面図で示す。この弾性コネクタ11は、ベース部12と、導通部13と、補強芯材14とを一体に備えている。
補強芯材14は環状の鍔部14aを有するハット形状の金属板からなる。導通部13は、ここでは磁性導電体が導電方向である上下方向に数珠繋ぎに配向しており、導通部13の一端13aが補強芯材14の頂部14bと連通し、他端13bは弾性コネクタ11の表面に露出している。ベース部12はゴム状弾性体でなり補強芯材14と導通部13のそれぞれの外周面14c,13cを被覆している。そして、導通部13の他端13bと金属板の鍔部14aが接続部材(図示せず)に接触可能となっている。
そして、こうした構造からなる弾性コネクタ11は、ベース部12に被覆された導通部13が補強芯材14を設けた部分から突出した部位を弾性接続部位16とし、補強芯材14を設けた部位を形状保持部位17とする2部位に分けることができる。
【0026】
導通部13は、ゴム状基材に分散させた導電粒子(導電体)が導通方向に数珠繋ぎに配向しており、導電路となる部位である。導電体の材質には、金属、セラミックなどによる粒子状、繊維状、細線状のものが挙げられる。導電体に磁性導電体を用いる場合は、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、フェライト、またはそれらを多く含む合金などが挙げられる。他にも良導電性の金、銀、白金、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄、パラジウム、コバルト、クロムなどの金属類、ステンレス、真鍮などの合金類、樹脂、絶縁性セラミックなどからなる粉末や細線を磁性導電体でめっきしたもの、あるいは磁性導電体に良導電性の金属をめっきしたものなどを用いることができる。
また、他の導通部13の構成として、絶縁性のゴム状基材に導電体を均一分散させた導電ゴムとすることができる。この場合の導電体の材質としては、良電性の金属、樹脂、セラミック、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0027】
ベース部12は、絶縁性のゴム状弾性体でなり、導通部13や補強芯材14を被覆して、導通部13と補強芯材14とを一体化させているほか、導電接点となる導通部13や補強芯材14の露出部分以外の部分を外部と絶縁している。
このベース部12の材質には、絶縁性でゴム弾性を有する熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマーが使用できる。例えば、天然ゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスリホンゴム、ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ化系熱可塑性エラストマー、イオン架橋系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。後述するように金型中で加熱硬化する場合は熱硬化性ゴムが好ましく、なかでも耐熱性の高いシリコーンゴム、フッ素ゴムがより好ましい。
【0028】
補強芯材14は、弾性コネクタ11に強度をもたらし形状保持部位17を形成する主な構成要素となる。本実施形態では、銅板、鉄板等の金属板をハット形状に形成している。そして、頂部14bは導通部13の一端13aと接している。また、鍔部14aが弾性コネクタ11の端部に露出し、回路基板上にハンダ付け可能となっている。ハット形状の内部は、中空になっており、弾性コネクタ11自体の荷重を軽くしている。また、導通部13の製造には金型に設けた磁性ピンによる磁場配向を利用するが、ハット形状の内部に磁性ピンを挿入することができるので、磁性導電粒子の配列がより確実な導通部13を製造することができる。
【0029】
こうした弾性コネクタ11は、導通部13と補強芯材14の境界を基準にして、弾性接続部位16と形状保持部位17とに分けることができ、図面上方の導通部13側が、補強芯材14を設けた部分から突出する弾性接続部位16を構成し、図面下方の補強芯材14側が形状保持部位17を構成している。
【0030】
弾性接続部位16の高さは、弾性接続部位16と形状保持部位17の両方の高さを加えた弾性コネクタ11の高さに対して5%〜50%とすることができる。5%より低いと接続対象部材間にこの弾性コネクタを保持する際に弾性接続部位16の収縮が十分ではなく、導通不良を起こす可能性がある。また、50%を超えると、弾性接続部位16が座屈してしまい、形状保持部位17を設ける意味が薄れることになる。
【0031】
弾性コネクタ11の形状は柱状であるが、柱形の底面の外径に対し、柱形の高さを2倍以上の長さとすることができる。形状保持部位17が無い従来の弾性コネクタであれば外径に対する高さを2倍以上の長さとすると、座屈をするおそれが生じるのに対し、形状保持部位17を設けていることで座屈の心配が無いからである。
また、弾性接続部位の高さは0.5mm〜5.0mmとすることができる。0.5mmより低いと補強芯材14の成形が困難になり、5.0mmを超えると実装した際の安定感が失われるからである。
【0032】
弾性コネクタ11の製造の一例を説明する。
磁性導電体を分散した液状ゴムを金型のキャビティー内に注入し、このキャビティー内に磁力を印加して分散している磁性導電体をキャビティー内の一部に集めて配向させる。その後、液状ゴムを硬化して導通部13と導通部13の外周面13cを被覆するベース部12とを得る。一方で、平板状の金属板をハット形状に成形して補強芯材14を得る。そして、導通部13を備えるベース部12にこの補強芯材14をはめ込んで一体化し、略円柱状の弾性コネクタ11を得る。
【0033】
第2実施形態〔図2〕
第2実施形態の弾性コネクタ21を図2の断面図で示す。この弾性コネクタ21は、補強芯材24が円筒状の樹脂板でなることや、導通部23が補強芯材24の円筒内にも及ぶこと、それに底面21aに金属箔層25を備えること等が第1実施形態の弾性コネクタ11と異なるが、ベース部22と導通部23、補強芯材24が一体に形成されている点は第1実施形態の弾性コネクタ11と同じである。
【0034】
本実施形態では、補強芯材24は円筒状の樹脂板からなる。導通部23は、補強芯材24の円筒内を貫通し、その一端23aは金属箔層25と連通し、他端23bは弾性コネクタ21の表面に露出している。ベース部22は導通部23の外周面23cを被覆し、また、補強芯材24の内周面24dと外周面24cの両面を被覆している。そして、補強芯材24を設けた一端21a側に金属箔層25を有している。この金属箔層25は、導通部23の一端23aに接触するだけでなく、補強芯材24の底面も覆う広面積に形成されている。そして、導通部23の他端23bと金属箔層25が接続部材(図示せず)に接触可能となっている。
こうした弾性コネクタ21は、補強芯材24の頂部24bを基準にして、図面上方が補強芯材24を設けた部分から導通部23が突出する弾性接続部位26を構成しており、また、図面下方の補強芯材24を設けた部分が形状保持部位27を構成している。
【0035】
弾性接続部位26の高さや全体に対する割合、弾性コネクタ21の高さ等も第1実施形態の弾性コネクタ11と同様にすることができる。
【0036】
弾性コネクタ21の製造の一例を説明する。
樹脂を円筒状に成形し金型にインサートする。そして、磁性導電体を分散した液状ゴムをこの金型のキャビティー内に注入する。磁力を印加して分散している磁性導電体を集めて磁場配向させた後、液状ゴムを硬化させると、導通部23の外周面23cを被覆し、補強芯材24の内周面24dおよび外周面24cを被覆して、導通部23、補強芯材24と一体となったベース部22を得る。最後に補強芯材24の底面に金属箔層25を固着することで導通部23と金属箔層25が接触した略円柱状の弾性コネクタ21を得る。
【0037】
弾性コネクタ21は、弾性コネクタ11と比較すると、導通部23とその導通部23を被覆するベース部22が形状保持部位27をも貫いている点で相違する。そのため、接続部材間で弾性コネクタ21が圧着させる場合に、その押圧力を受けて形状保持部位27も収縮することができる。そのため、弾性接続部位26や従来の補強芯材を有しない弾性コネクタが持つ柔軟性を維持することができる。
なお、本実施形態では補強芯材として樹脂板を用いているが金属板を用いることも可能である。
【0038】
変形例1〔図3〕
第1実施形態の変形例として、補強芯材として用いた金属板14に代えて金属塊34を用いることができる。この金属塊34を用いた弾性コネクタ31を図3の断面図で示す。弾性コネクタ31では、第1実施形態の弾性コネクタ11と同様に補強芯材である金属塊34のの外周面34cをベース部32で被覆しているが、弾性コネクタ11と異なり、金属塊34の外周面34cの一部は被覆されずに外部に露出している。
また、金属塊34の頂部34bが導通部13に連通する一方で、金属塊34の底部34eが接続部材に接触可能となっている。
【0039】
この弾性コネクタ31の製造は、第1実施形態の弾性コネクタ11と同様に行うことができるが、導通部13の製造に際し、磁性ピンを金属塊34の外側に置かざるを得ないので、金属塊34自体が磁化されて磁性ピンの代わりとなる必要がある。
弾性コネクタ31によれば、金属塊34を用いているため、金属板14を用いた弾性コネクタ11に比較して強固であり、また、底部34eの面積が広くなるためハンダ付けが容易になる。さらに、重心が安定し取扱いが容易である。しかしながら、金属部分の容積が増えるためコストが上がり、また、重くなるといった不都合がある。
【0040】
変形例2〔図4〕
第2実施形態の変形例として、補強芯材24として用いた円筒状の樹脂板と導通部23との間に隙間を設けずに両者が接触するように構成することができる。こうした弾性コネクタ41を図4の断面図で示す。
また、この弾性コネクタ41では、補強芯材24の外周面24cの一部はベース部42に被覆されずに外部に露出している点で異なる。
弾性コネクタ41の製造も弾性コネクタ21と同様に行うことができる。
【0041】
弾性コネクタ41によれば、補強芯材24と導通部23との間を隙間なく構成することができるため、補強芯材24の内径を小さくすることができ、これにより弾性コネクタ41全体を小さくすることができる。また、弾性コネクタ41全体を小さくしても弾性コネクタ21よりも補強芯材24と金属箔層25との固着面積を広く取ることができるので金属箔層25を剥がれ難くすることができる。
また、補強芯材24の外周面24cの一部を外表面に露出させ、その露出させた部分を金属箔層25との接触箇所である補強芯材24の底部24eとしたため、金属箔層25の端部を補強芯材24と固着することができるので、金属箔層25の端部が折れ曲がり難い。
【実施例】
【0042】
第1実施形態で示した図1の形状の弾性コネクタ(11)を製造した。導通部(13)には磁性導電粒子である鉄粉を配向させ、補強芯材(14)には厚みが0.2mmの銅板を用い、ベース部(12)にはシリコーンゴムを用いた。そして、弾性コネクタ(11)の底面(11a)の外径を2.5mm、導通部(13)が露出する側の弾性コネクタ(11)の外径を2.0mm、露出する導通部(13)の外径を1.0mm、弾性コネクタ(11)の高さを5mm、弾性接続部位(16)の高さを1.5mm、形状保持部位(17)の高さを3.5mm、補強芯材(14)の中空の内径を0.8mmとした。
【0043】
また、第2実施形態で示した図2の形状の弾性コネクタ(21)を製造した。導通部(23)には磁性導電粒子である鉄粉を配向させ、補強芯材(24)には厚みの平均値を0.5mmとする液晶ポリマー(LCP)である樹脂板を用い、ベース部(12)にはシリコーンゴムを用いた。また、金属箔層(25)には厚みが70μmの銅箔を用いた。そして、弾性コネクタ(21)の底面(21a)の外径を2.5mm、導通部(23)が露出する側の弾性コネクタ(21)の外径を2.0mm、露出する導通部(23)の外径を1.0mm、弾性コネクタ(21)の高さを5mm、弾性接続部位(26)の高さを1.5mm、形状保持部位(27)の高さを3.5mmとした。
【0044】
上記の実施形態や実施例の説明は本発明の一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成要素の適宜変更や組み合わせ、形状、大きさ、材質を変化させることは可能であって、こうした変更等も本発明の技術的思想の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 弾性コネクタ(従来技術)
1a 端面
2 外周部
3 弾性導通部
11,21,31,41 弾性コネクタ
11a,21a,31a,41a 底面(一端)
12,22 ベース部
13,23 導通部
13a,23a 一端
13b,23b 他端
13c,23c 外周面
14,24,34 補強芯材
14a 鍔部
14b,24b,34b 頂部
14c,24c,34c 外周面
14d,24d 内周面
24e,34e 底部
16,26 弾性接続部位
17,27 形状保持部位
25 金属箔層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部と、ベース部を補強する硬質材でなる補強芯材とを一体に備えており、接続部材間に挟持されて、これら接続部材どうしを相互に導通接続する柱状の弾性コネクタにおいて、
補強芯材は環状の鍔部を有するハット形状の金属板からなり、導通部はその一端が補強芯材の頂部と連通しており、ベース部は補強芯材と導通部のそれぞれの外周面を被覆しており、導通部の他端と前記金属板の鍔部が接続部材に接触可能であって、
ベース部に被覆された導通部が補強芯材を設けた部分から突出する弾性接続部位と、補強芯材を有する形状保持部位とを構成することを特徴とする弾性コネクタ。
【請求項2】
絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部と、ベース部を補強する硬質材でなる補強芯材とを一体に備えており、接続部材間に挟持されて、これら接続部材どうしを相互に導通接続する柱状の弾性コネクタにおいて、
補強芯材は円筒状の硬質板からなり、導通部はその円筒内を貫通しており、ベース部は導通部の外周面と補強芯材の外周面を被覆しており、さらに補強芯材を設けた一端側には金属箔層を有しており、導通部の一端と前記金属箔層が接続部材に接触可能であって、
ベース部に被覆された導通部が補強芯材を設けた部位から突出する弾性接続部位と、補強芯材を有する形状保持部位とを構成することを特徴とする弾性コネクタ。
【請求項3】
硬質材が樹脂材である請求項2記載の弾性コネクタ。
【請求項4】
ベース部が導通部と補強芯材との間隙を埋めている請求項2または請求項3記載の弾性コネクタ。
【請求項5】
絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部と、ベース部を補強する金属材でなる補強芯材とを一体に備えており、接続部材間に挟持されて、これら接続部材どうしを相互に導通接続する柱状の弾性コネクタにおいて、
補強芯材は金属塊からなり、導通部はその一端が補強芯材の頂部と連通しており、ベース部は補強芯材と導通部のそれぞれの外周面を被覆しており、導通部の他端と前記金属塊の底部が接続部材に接触可能であって、
ベース部に被覆された導通部が補強芯材を設けた部分から突出する弾性接続部位と、補強芯材を有する形状保持部位とを構成することを特徴とする弾性コネクタ。
【請求項6】
絶縁性のゴム状弾性体でなるベース部と、導電方向に導電体が数珠繋ぎに配向する導通部と、ベース部を補強する硬質材でなる補強芯材とを一体に備えており、接続部材間に挟持されて、これら接続部材どうしを相互に導通接続する柱状の弾性コネクタにおいて、
補強芯材を有する形状保持部位と、ベース部に被覆された導通部を有し補強芯材を有しない弾性接続部位とが導電方向に積層して構成されることを特徴とする弾性コネクタ。
【請求項7】
弾性接続部位の高さが、弾性コネクタの高さに対して5%〜50%である請求項1〜請求項6何れか1項記載の弾性コネクタ。
【請求項8】
底面の外径に対し高さが2倍以上の長さを有する請求項1〜請求項7何れか1項記載の弾性コネクタ。
【請求項9】
弾性接続部位の高さが0.5mm〜5.0mmである請求項1〜請求項8何れか1項記載の弾性コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate