説明

弾性コーティングにおけるバインダーとしての水性複合粒子分散液の使用

本発明の主題は、ポリマー及び微粉無機固体から構成される粒子の水性分散液(水性複合粒子分散液)の、弾性コーティング、たとえば塗料、特にファサード塗料におけるバインダーとしての使用であり、この場合、水性複合粒子分散液の製造において、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散させ、少なくとも1つのラジカル重合開始剤を使用して少なくとも1つの100nm以下の平均粒径を有する分散した微細無機固体及び少なくとも1つの分散剤の存在下でラジカル水性乳化重合法にしたがって重合させ、エチレン性不飽和モノマーとして、エチレン性不飽和モノマーAを含み、必要ならば、0〜10質量%以下の1個のエポキシド基を有するエチレン性不飽和モノマーB(エポキシドモノマー)を含むモノマー混合物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー及び微細無機固体から構成される粒子の水性分散液(水性複合粒子分散液)の、塗料などの弾性コーティング、さらに具体的には、ファサード塗料におけるバインダーとしての使用であって、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散させることによって水性複合粒子分散液を製造し、少なくとも1つのラジカル重合開始剤を用いて、少なくとも1つの100nm以下の平均粒径を有する分散された微細無機固体及び少なくとも1つの分散剤の存在下でラジカル水性乳化重合法によって重合を実施し、そしてエチレン性不飽和モノマーとして、エチレン性不飽和モノマーA及び場合によって0〜10質量%以下のエポキシド基を含有するエチレン性不飽和モノマーB(エポキシドモノマー)を含むモノマーを使用することを含む使用を提供する。
【0002】
本発明はさらに、本発明の水性複合粒子分散液を含む弾性コーティング材料を提供し、またその製造及び使用、並びに前記コーティング材料を含む塗料、さらに詳細にはファサード塗料も提供する。水性複合粒子分散液ベースの本発明の弾性コーティング材料は、改善された汚染耐性、高い水蒸気透過性、及び良好な弾性が注目すべき点である。
【0003】
弾性コーティングは、高度の弾性を特徴とする。この性質を用いて、低温(−10℃)でも十分な亀裂架橋能を弾性コーティングに付与する。弾性コーティングのさらなる要件は、高い耐水性、良好な水蒸気透過性、及び高い耐汚染性である。ポリマーのガラス転移温度は、通常、モノマー組成によって−10℃より低い温度に調節される。低いガラス転移温度を有するポリマーは、汚染される傾向が増大している。このことは、ポリマーをより硬質かつより弾性にする(ガラス転移温度を上昇させる)架橋系を用いて防止することができる。最新技術は、たとえば金属塩架橋又はUV架橋である。その後にカルシウムイオンを添加すると、B.G.Bufkin及びJ.R.GraweによってJ.Coatings Tech.,1978 50(644),83に記載されているように、架橋が起こる。1つの可能な欠点は、増大した感水性である。UV架橋及び/又は日光架橋は、US3,320,198、EP10000、EP522789、EP1147139に記載されているように、ベンゾフェノン及びその誘導体の添加によって行われる。EP1845142は、AAEMを含有する分散液に光開始剤を添加することを記載している。
【0004】
高い弾性及び良好な水蒸気透過性を得るための他の可能性としては、たとえばUS5,066,520に記載されているようなシリコーンの使用が挙げられる。フルオロアクリレートを使用すると、疎水性の高いコーティングが得られ、これらは汚れもはじくことができる(EP890621)。
【0005】
本発明の目的は、十分な弾性及び耐水性と高い耐汚染性及び水蒸気透過性とを兼ね備える弾性コーティング材料を開発することであった。
【0006】
前記定義の水性複合粒子分散液をバインダーとして使ったコーティング系は、ポリマーフィルムの硬度によるポリマーフィルムの意外にも高い汚染耐性が注目に値する。同時に、水蒸気透過性は分散液中の無機フラクションによってよい影響を受ける。
【0007】
ポリマー及び微細無機固体から構成される複合粒子は、特に水性分散液(水性複合粒子分散液)の形態で一般的に公知である。これらは、複数の絡み合ったポリマー鎖からなるポリマーコイル、いわゆるポリマーマトリックスと、水性分散媒中分散相として存在する微細無機固体とから構成される、分散した分布の粒子を含む流体系である。複合粒子の中央径は、通例、10nm以上で1000nm以下の範囲、多くの場合10nm以上で400nm以下の範囲、しばしば50nm以上で300nm以下の範囲である。
【0008】
複合粒子並びに水性複合粒子分散液の形態のそれらの製造法及びその使用は当業者に公知であり、たとえば、刊行物US−A3,544,500、US−A4,421,660、US−A4,608,401、US−A4,981,882、EP−A104498、EP−A505230、EP−A572128、GB−A2227739、WO0118081、WO0129106、WO03000760並びにLong et al.,Tianjin Daxue Xuebao 1991,4,pages 10 to 15、Bourgeat−Lami et al.,Die Angewandte Makromolekulare Chemie 1996,242,pages 105 to 122、Paulke et al.,Synthesis Studies of Paramagnetic Polystyrene Latex Particles in Scientific and Clinical Applications of Magnetic Carriers,pages 69 to 76、Plenum Press,New York,1997、Armes et al.,Advanced Materials 1999,11,No.5,pages 408 to 410に開示されている。
【0009】
水性複合粒子分散液の製造は、有利には、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散させ、少なくとも1つのラジカル重合開始剤を用いて少なくとも1つの分散された微細無機固体及び少なくとも1つの分散剤の存在下でラジカル水性乳化重合法により重合させることによって実施する。
【0010】
本発明によれば、たとえば前記従来技術に従って得ることができるものを包含するすべての水性複合粒子分散液であって、0超及び10質量%以下、好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.5〜3質量%のエポキシドモノマーを含むモノマーを用いて製造されたものを用いることが可能である。このような水性複合粒子分散液及びそれらの製造法は、参照することにより本明細書で援用される、EP1838740に開示される。
【0011】
本発明によれば、エポキシドモノマーを含むモノマー混合物を使用して、WO03000760に開示されている手順により製造された水性複合粒子分散液を有利に使用できる。WO03000760に開示されているこの方法は、モノマー混合物を水性媒体中に分散し、少なくとも1つのラジカル重合開始剤を用いて少なくとも1つの分散された微細無機固体及び少なくとも1つの分散剤の存在下でラジカル水性乳化重合法によって重合し、
a)少なくとも1つの無機固体の安定な水性分散液を使用し(ここで、前記分散液は、少なくとも1つの無機固体の水性分散液基準で、1質量%以上の初期固体濃度で、その製造後1時間になお最初の分散固体の90質量%超を分散形態で含み、分散した固体粒子は100nm以下の中央径を有する)、
b)少なくとも1つの無機固体の分散した固体粒子が、塩化カリウム標準水溶液中、分散剤の添加開始前の水性分散媒のpHに対応するpHで、0でない電気泳動移動度を示し、
c)少なくとも1つのアニオン性、カチオン性及び非イオン性分散剤を水性固体粒子分散液に添加した後、モノマー混合物の添加を開始し、
d)モノマー混合物の全量の0.01〜30質量%を次に水性固体粒子分散液に添加し、少なくとも90%の変換率まで重合し
そして
e)その後、モノマー混合物の残量を重合条件下、消費率に応じて連続して添加する
点で区別される。
【0012】
少なくとも1つの無機固体の水性分散液に基づき、1質量%以上の初期固体濃度でその製造1時間後でも撹拌又は振盪せずに最初の分散した固体の90質量%超を分散形態で含む安定な水性分散液を形成し、100nm以下の中央径を有し、さらに、分散剤の添加開始前の水性反応媒のpHに対応するpHで0とは異なる電気泳動移動度を示す微細無機固体は全て、この目的に好適である。初期固体濃度及び1時間後の固体濃度の定量的測定並びに中央粒径の測定は、分析的超遠心分離法によって実施する(これに関しては、S.E.Harding et al., Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science,Royal Society of Chemistry,Cambridge,Great Britain 1992,Chapter 10,Analysis of Polymer Dispersions with an Eight−Cell−AUC−Multiplexer:High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques,W.Maechtle,paages 147 to 175を参照)。粒径について記載する値は、いわゆるd50値に相当する。
【0013】
電気泳動移動度の測定法は、当業者に公知である(たとえば、R.J.Hunter,Introduction to modern Colloid Science, chapter 8.4,pages 241 to 248,Oxford University Press,Oxford,1993及びK.Oka and K. Furusawa,in Electrical Phenomena at Interfaces,Surfactant Science Series,vol.76,chapter 8,pages 151 to 232,Marcel Dekker,New York,1998を参照)。水性反応媒体中に分散した固体粒子の電気泳動移動度は、市販の電気泳動装置、たとえばMalvern Instruments Ltd.製のZetasizer 3000を用い、20℃及び大気圧(1気圧=1.013バール)で測定する。このために、水性固体粒子分散液をpH中性の10ミリモル濃度(mM)の塩化カリウム水溶液(塩化カリウム標準溶液)で固体粒子濃度が約50〜100mg/lになるまで希釈する。通常の無機酸、たとえば、希塩酸若しくは硝酸、又は塩基、たとえば、希水酸化ナトリウム溶液若しくは水酸化カリウム溶液を用いて、測定試料を分散剤の添加開始前の水性反応媒体のpHに調節する。分散した固体粒子の電界中の移動は、いわゆる電気泳動光散乱によって検出する(たとえば、B.R.Ware and W.H.Flygare,Chem.Phys.Lett.1971,12,pages 81 to 85を参照)。電気泳動移動度の符号は、分散した固体粒子の移動方向、すなわち分散した固体粒子がカソードへと移動する場合は、それらの電気泳動移動度はプラスであり、反対にアノードへと移動する場合はマイナスである。
【0014】
分散した固体粒子の電気泳動度に一定の範囲で影響を及ぼすか又はこれを調節する適切なパラメータは、水性反応媒体のpHである。分散した固体粒子のプロトン化又は脱プロトン化により、電気泳動移動度は、酸性pH範囲(pH値<7)でプラスの方向に変化し、アルカリ性範囲(pH値>7)でマイナスの方向に変化する。WO03000760で開示される方法に適したpH範囲は、ラジカルにより開始される水性乳化重合を実施できる範囲内である。このpH範囲は、通例、pH1〜12であり、しばしばpH1.5〜11であり、多くの場合はpH2〜10である。
【0015】
水性反応媒体のpH値は、市販の酸、たとえば、希塩酸、硝酸若しくは硫酸、又は塩基、たとえば、希水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム溶液を用いて調節することができる。使用する酸又は塩基の一部又は全量を水性反応媒体に添加した後、少なくとも1つの微細無機固体を添加するのが有利であることが多い。
【0016】
WO03000760に開示されている方法にとって、100質量部のモノマー混合物基準で、1〜1000質量部の微細無機固体を使用し、前記pH条件下で分散した固体粒子が
・マイナスの符号の電気泳動移動度を有する場合、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、特に好ましくは0.1〜3質量部の少なくとも1つのカチオン性分散剤、0.01〜100質量部、好ましくは0.05〜50質量部、特に好ましくは0.1〜20質量部の少なくとも1つの非イオン性分散剤及び少なくとも1つのアニオン性分散剤を使用し、この場合、その量は、アニオン性分散剤のカチオン性分散剤に対する当量比が1より大きくなるようなものであるか、又は
・プラスの符号の電気泳動移動度を有する場合、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、特に好ましくは0.1〜3質量部の少なくとも1つのアニオン性分散剤、0.01〜100質量部、好ましくは0.05〜50質量部、特に好ましくは0.1〜20質量部の少なくとも1つの非イオン性分散剤及び少なくとも1つのカチオン性分散剤を使用し、この場合、その量は、カチオン性分散剤のアニオン性分散剤に対する当量比が1より大きくなるようなものである
ことが有利である。
【0017】
アニオン性分散剤のカチオン性分散剤に対する当量比とは、使用するアニオン性分散剤のモル数にアニオン性分散剤1モルあたり存在するアニオン性基の数をかけたものを、使用するカチオン性分散剤のモル数にカチオン性分散剤1モルあたり存在するカチオン性基の数をかけたもので割った比を意味すると解釈される。同じことが、カチオン性分散剤のアニオン性分散剤に対する当量比にも当てはまる。
【0018】
WO03000760にしたがって使用される少なくとも1つのアニオン性、カチオン性及び非イオン性分散剤の全量を、最初に水性固体分散液中に溶解させることができる。しかし、前記分散剤の一部のみをまず水性固体分散液中に溶解させ、そして残りの量をラジカル乳化重合中に連続して又はバッチごとに添加することも可能である。しかし、当該方法について重要なことは、アニオン性及びカチオン性分散剤の前記当量比が、ラジカル乳化重合前及びラジカル乳化重合中に電気泳動符号の関数として維持されることである。従って、前記pH条件下でマイナスの符号を有する電気泳動移動度を有する無機固体粒子を使用する場合、アニオン性分散剤のカチオン性分散剤に対する当量比は、全乳化重合中で1より大きくなければならない。相応して、プラスの符号を有する電気泳動移動度を有する無機固体粒子の場合は、カチオン性分散剤のアニオン性分散剤に対する当量比は、全乳化重合中で1より大きくなければならない。当量比が≧2、≧3、≧4、≧5、≧6、≧7、又は≧10の場合、2〜5の範囲の当量比が特に有利である。
【0019】
WO03000760に開示されている方法及び水性複合粒子分散液の製造に使用できる一般的に微細無機固体に関して、金属、金属化合物、例えば金属酸化物及び金属塩、並びに半金属及び非金属化合物が好適である。使用され得る微細金属粉末は、貴金属コロイド、例えばパラジウム、銀、ルテニウム、白金、金及びロジウム、並びにこれらを含む合金である。例として挙げることができる微細金属酸化物は、二酸化チタン(例えば、Hombitec(登録商標)の商標でSachtleben Chemie GmbHから市販)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)(例えば、Nyacol(登録商標)SNの商標でNyacol Nano Technologies, Inc.から市販)、アルミナ(例えば、Nyacol(登録商標)ALの商標でNyacol Nano Technologies,Inc.から市販)、酸化バリウム、酸化マグネシウム、様々な酸化鉄、例えば酸化鉄(II)(ウスタイト)、酸化鉄(III)(ヘマタイト)及び酸化鉄(II/III)(マグネタイト)、酸化クロム(III)、酸化アンチモン(III)、酸化ビスマス(III)、酸化亜鉛(例えば、Sachtotec(登録商標)の商標でSachtleben Chemie GmbHから市販)、酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(III)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、酸化銅(II)、酸化イットリウム(III)(例えば、Nyacol(登録商標)YTTRIAの商標でNyacol Nano Technologies, Inc.から市販)、酸化セリウム(IV)(例えば、Nyacol(登録商標)CEO2の商標でNyacol Nano Technologies, Inc.から市販)のアモルファス形態及び/又はそれらの異なる結晶変態ヒドロキシ酸化物、例えば、ヒドロキシチタン(IV)酸化物、ヒドロキシジルコニウム(IV)酸化物、ヒドロキシアルミニウム酸化物(例えば、Disperal(登録商標)の商標でSasol Germany GmbHから市販)及びヒドロキシ鉄(III)酸化物のアモルファス形態及び/又はそれらの異なる結晶変態である。アモルファス形態及び/又はそれらの異なる結晶構造で存在する以下の金属塩を原則として本発明の方法で使用することができる:硫化物、例えば硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、二硫化鉄(II)(黄鉄鉱)、硫化スズ(II)、硫化スズ(IV)、硫化水銀(II)、硫化カドミウム(II)、硫化亜鉛、硫化銅(II)、硫化銀、硫化ニッケル(II)、硫化コバルト(II)、硫化コバルト(III)、硫化マンガン(II)、硫化クロム(III)、硫化チタン(II)、硫化チタン(III)、硫化チタン(IV)、硫化ジルコニウム(IV)、硫化アンチモン(III)、硫化ビスマス(III)、水酸化物、例えば水酸化スズ(II)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸鉛(IV)、炭酸塩、例えば炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸ジルコニウム(IV)、炭酸鉄(II)、炭酸鉄(III)、オルトリン酸塩、例えばオルトリン酸リチウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸亜鉛、オルトリン酸マグネシウム、オルトリン酸アルミニウム、オルトリン酸スズ(III)、オルトリン酸鉄(II)、オルトリン酸鉄(III)、メタリン酸塩、例えばメタリン酸リチウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸アルミニウム、ピロリン酸塩、例えばピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸亜鉛、ピロリン酸鉄(III)、ピロリン酸スズ(II)、リン酸アンモニウム、例えばリン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸亜鉛アンモニウム、ヒドロキシルアパタイト[Ca5{(PO43OH}]、オルトケイ酸塩、例えばオルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III),オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)、オルトケイ酸ジルコニウム(IV)、メタケイ酸塩、例えばメタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸亜鉛、層状ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムアルミニウム及びケイ酸ナトリウムマグネシウム、特に自然に剥離する形態、例えばOptigel(登録商標)SH(Suedchemie AGの商標)、Laponite(登録商標)RD及びLaponite(登録商標)GS(Rockwood Specialties Inc.の商標)、アルミン酸塩、例えばアルミン酸リチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸亜鉛、ホウ酸塩、例えばメタホウ酸マグネシウム、オルトホウ酸マグネシウム、シュウ酸塩、例えばシュウ酸カルシウム、シュウ酸ジルコニウム(IV)、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸亜鉛、シュウ酸アルミニウム、酒石酸塩、例えば酒石酸カルシウム、アセチルアセトネート、例えばアルミニウムアセチルアセトネート、鉄(III)アセチルアセトネート、サリチル酸塩、例えばサリチル酸アルミニウム、クエン酸塩、例えばクエン酸カルシウム、クエン酸鉄(II)、クエン酸亜鉛、パルミチン酸塩、例えばパルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸塩、例えばラウリン酸カルシウム、リノール酸塩、例えばリノール酸カルシウム、オレイン酸塩、例えばオレイン酸カルシウム、オレイン酸鉄(II)又はオレイン酸亜鉛。
【0020】
本発明に従って使用できる実質的な半金属化合物としては、アモルファス形態及び/又は様々な結晶構造で存在するシリカを挙げることができる。本発明に適したシリカは、商業的に入手可能であり、例えば、Aerosil(登録商標)(Evonik Industries AGの商標)、Levasil(登録商標)(HC Starck GmbHの商標)、Ludox(登録商標)(DuPontの商標)、Nyacol(登録商標)(Nyacol Nano Technologies,Inc.の商標)及びBindzil(登録商標)(Eka Chemicalsの商標)及びSnowtex(登録商標)(Nissan Chemical Industries,Ltd.の商標)として入手することができる。本発明に適した非金属化合物は、例えば、コロイド状グラファイト又はダイアモンドである。
【0021】
特に好適な微細無機固体は、20℃、大気圧でのその水中溶解度が1g/l以下、好ましくは0.1g/l以下、特に0.01g/l以下のものである。シリカ、アルミナ、酸化スズ(IV)、酸化イットリウム(III)、酸化セリウム(IV)、酸化ヒドロキシアルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、オルトケイ酸塩、たとえばオルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III)、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)、オルトケイ酸ジルコニウム(IV)、メタケイ酸塩、たとえばメタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸亜鉛、層状ケイ酸塩、たとえばケイ酸ナトリウムアルミニウム及びケイ酸ナトリウムマグネシウム、特に自然に剥離する形態のもの、たとえば、Optigel(登録商標)SH、Saponit(登録商標)、Laponite(登録商標)RD及びLaponite(登録商標)GS、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II/III)、二酸化チタン、水酸リン灰石、酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群から選択される化合物が特に好適である。
【0022】
少なくとも1つの微細無機固体は、好ましくは、シリカ、アルミナ、酸化ヒドロキシアルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II/III)、酸化スズ(IV)、酸化セリウム(IV)、酸化イットリウム(III)、二酸化チタン、水酸リン灰石、酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群から選択される。
【0023】
ケイ素含有化合物、たとえば焼成及び/又はコロイド状シリカ、シリカゾル及び/又は層状ケイ酸塩が特に好適である。これらのケイ素含有化合物は、マイナスの符号を有する電気泳動移動度を有する。
【0024】
Aerosil(登録商標)、Levasil(登録商標)、Ludox(登録商標)、Nyacol(登録商標)及びBindzil(登録商標)ブランド(シリカ)、Disperal(登録商標)ブランド(酸化ヒドロキシアルミニウム)、Nyacol(登録商標)ALブランド(酸化アルミニウム)、Hombitec(登録商標)ブランド(二酸化チタン)、Nyacol(登録商標)SNブランド(酸化スズ(IV))、Nyacol(登録商標)YTTRIAブランド(酸化イットリウム(III))、Nyacol(登録商標)CEO2ブランド(酸化セリウム(IV))及びSachtotec(登録商標)ブランド(酸化亜鉛)の市販化合物も本発明の方法で有利に用いることができる。
【0025】
複合粒子の製造に使用可能な微細無機固体は、水性反応媒体中に分散した固体粒子が100nm以下の中央粒径を有する様なものである。その分散粒子が0nm超であるが90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下又は10nm以下の平均粒径及びその間の全ての値を有する微細無機固体が有効に使用される。60nm以下の粒径を有する微細無機固体が有利に使用される。粒径は、分析的超遠心分離法によって測定する。
【0026】
微細固体のアクセシビリティは、通例当業者に公知であり、たとえば、沈降反応又は気相での化学反応によって有効である(これに関しては、E.Matijevic,Chem.Mater.1993,5,pages 412 to 426;UIImann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,vol.A 23,pages 583 to 660,Verlag Chemie,Weinheim,1992;D.F.Evans,H.Wennerstroem in The Colloidal Domain,pages 363 to 405,Verlag Chemie,Weinheim,1994及びR.J.Hunter in Foundations of Colloid Science,vol.I,pages 10 to 17,Clarendon Press,Oxford,1991を参照)。
【0027】
安定な固体分散液の製造は、多くの場合、水性媒体中、微細無機固体の合成において直接実施する、または微細無機固体を水性媒体中に分散させることによって実施する。微細無機固体の製造経路に応じて、これは、たとえば沈降若しくは焼成シリカ、アルミナなどの場合は直接、又はたとえば、分散器若しくは超音波ソノトロードなどの好適な補助装置を用いてのいずれかで可能である。
【0028】
その水性固体分散液が、微細無機固体の水性分散液に基づき、1質量%以上の初期固体濃度で、その製造の1時間後又は沈降した固体を撹拌若しくは振盪することにより、さらに撹拌若しくは振盪せずに、分散した形態で最初の分散した固体の90質量%超を含み、その分散した固体粒子が100nm以下の直径を有する微細無機固体が、水性複合粒子分散液の製造に好適である。60質量%以下の初期固体濃度が一般的である。しかし、それぞれの場合に微細無機固体の水性分散液に基づき、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、及び2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上又は5質量%以上、並びにそれらの値の間の全ての値の初期固体濃度を有利に使用することもできる。水性複合粒子分散液の製造においては、モノマー混合物100質量部に基づき、しばしば1〜1000質量部、通例5〜300質量部、多くの場合10〜200質量部の少なくとも1つの微細無機固体を使用する。有利には、モノマー混合物100質量部に基づき、10〜50質量部、特に有利には25〜40質量部の少なくとも1つの微細無機固体を使用する。
【0029】
水性複合粒子分散液の製造において、微細無機固体粒子及びモノマー液滴の両方並びに分散液中に形成された複合粒子を水性相中に維持し、かくして生成した水性複合粒子分散液の安定性を保証する分散剤が、一般的に同時に使用される。好適な分散剤は、ラジカル水性乳化重合を実施するのに通常用いられる保護コロイド及び乳化剤である。
【0030】
好適な保護コロイドは、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961,pages 411 to 420で詳述されている。
【0031】
好適な中性の保護コロイドは、たとえばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、並びにセルロース誘導体、デンプン誘導体及びゼラチン誘導体である。
【0032】
好適なアニオン性保護コロイド、すなわち、分散効果を有するその成分が少なくとも1つの負電荷を有する保護コロイドは、たとえば、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸並びにそれらのアルカリ金属塩、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、4−スチレンスルホン酸及び/又はマレイン酸無水物を含むコポリマー、並びにそれらのアルカリ金属塩、並びにポリスチレンなどの高分子化合物のスルホン酸のアルカリ金属塩である。
【0033】
好適なカチオン性保護コロイド、すなわち、分散効果を有するその成分が少なくとも1つの正電荷を有する保護コロイドは、たとえば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミノ基を有するアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを含むホモポリマー及びコポリマーの窒素でプロトン化及び/又はアルキル化された誘導体である。
【0034】
もちろん、乳化剤及び/又は保護コロイドの混合物を使用することもできる。多くの場合、保護コロイドとは異なり、通常、相対分子量が1500未満の乳化剤のみを分散剤として使用する。界面活性物質の混合物を使用する場合、個々の成分は、もちろん互いに相溶性でなければならず、疑わしい場合、数回の予備実験によってこれをチェックすることができる。好適な乳化剤の概要は、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg−Thieme−Verlag, Stuttgart,1961,pages 192 to 208に記載されている。
【0035】
通常の非イオン性乳化剤は、たとえば、エトキシ化モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール及びトリアルキルフェノール(エトキシ化度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)並びにエトキシ化脂肪族アルコール(エトキシ化度:3〜80;アルキル基:C8〜C36)である。これらの例は、BASF AGのLutensol(登録商標)Aブランド(C1214脂肪族アルコールエトキシレート、エトキシ化度:3〜8)、Lutensol(登録商標)AOブランド(C1315−オキソアルコールエトキシレート、エトキシ化度:3〜30)、Lutensol(登録商標)ATブランド(C1618脂肪族アルコールエトキシレート、エトキシ化度:11〜80)、Lutensol(登録商標)ONブランド(C10−オキソアルコールエトキシレート、エトキシ化度:3〜11)及びLutensol(登録商標)TOブランド(C13−オキソアルコールエトキシレート、エトキシ化度:3〜20)である。
【0036】
通常のアニオン性乳化剤は、たとえばアルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化アルカノールの硫酸モノエステル(エトキシ化度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)及びエトキシ化アルキルフェノール(エトキシ化度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。
【0037】
さらに、一般式I
【化1】

(式中、R1及びR2はH原子又はC4〜C24アルキルであり、同時にH原子ではなく、A及びBは、アルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンであり得る)の化合物は、さらなるアニオン性乳化剤として好適であることが証明されている。一般式Iにおいて、R1及びR2は、好ましくは6〜18個の炭素原子、特に6、12及び16個の炭素原子を有する直線状若しくは分岐アルキル基、又は−Hであり、R1及びR2は両方ともが同時にH原子ではない。A及びBは、好ましくはナトリウム、カリウム又はアンモニウムであり、ナトリウムが特に好ましい。A及びBがナトリウムであり、R1が12個の炭素原子を有する分岐アルキル基であり、R2がH原子又はR1である化合物Iが特に有利である。50〜90質量%の割合のモノアルキル化生成物を有する工業用混合物、たとえば、Dowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Companyの商標)がしばしば用いられる。化合物Iは、一般的に、たとえばUS−A4269749から公知であり、市販されている。
【0038】
好適なカチオン性乳化剤は、通例、C6〜C18−アルキル、C6〜C18−アルアルキル−又は複素環基を有する第1、第2、第3又は第4級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩、及びアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩である。ドデシルアンモニウムアセテート又は対応するヒドロクロリド、様々な2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルのクロリド又はアセテート、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムスルフェート及びN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド及びGemini界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロミドを例として挙げることができる。多くのさらなる例は、H.Stache,Tensid−Taschenbuch,Carl−Hanser−Verlag,Munich,Vienna 1981及びMcCutcheon’s, Emulsifiers & Detergents,MC Publishing Company,Glen Rock,1989に記載されている。
【0039】
それぞれの場合で水性複合粒子分散液の全量に基づき、0.1〜10質量%、多くの場合0.5〜7.0質量%、しばしば1.0〜5.0質量%の分散剤が、水性複合粒子分散液の製造に用いられることが多い。乳化剤、特に非イオン性及び/又はアニオン性乳化剤が好ましく用いられる。WO03000760に開示されている製造法においては、アニオン性、カチオン性及び非イオン性乳化剤が分散剤として使用される。
【0040】
本発明にとって、エチレン性不飽和モノマーA並びに0質量超%及び10質量%以下の少なくとも1つのエポキシド基を有するエチレン性不飽和モノマーB(エポキシドモノマー)からなるモノマー混合物を、本発明にしたがって使用可能な水性複合粒子分散液の製造に使用可能であることが重要である。
【0041】
好適なモノマーAとしては、とりわけ、特に、簡単な方法でラジカル重合に付すことができるエチレン性不飽和モノマー、たとえば、エチレン、ビニル芳香族モノマー、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン又はビニルトルエン、ビニルアルコールと1〜18個のC原子を有するモノカルボン酸とのエステル、たとえばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルn−ブチレート、ビニルラウレート及びビニルステアレート、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などの好ましくは3〜6個の炭素原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノ及びジカルボン酸と、1〜12個、好ましくは1〜8個、特に1〜4個の炭素原子を有するアルカノールとのエステル、たとえば特にアクリル酸及びメタクリル酸メチル、エチル、n−ブチル、イソブチル及び2−エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル又はマレイン酸−ジ−n−ブチル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、たとえばアクリロニトリル、並びにC4〜8−共役ジエン、たとえば1,3−ブタジエン及びイソプレンである。前記モノマーは、通例、本発明の方法によって重合されるモノマーAの合計量に基づき、通常、50質量%以上、80質量%以上又は90質量%以上の割合を占める主モノマーを形成する。通例、これらのモノマーは、標準的条件(20℃、大気圧)下で中程度から低度の水溶解度のみ有する。
【0042】
ポリマーマトリックスのフィルムの内部強度を通常増大させるさらなるモノマーAは、通常、少なくとも1つのヒドロキシル基、N−メチロール若しくはカルボニル基、又は少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する。これらの例は、2個のビニル基を有するモノマー、2個のビニリデン基を有するモノマー並びに2個のアルケニル基を有するモノマーである。二価アルコールとα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とのジエステルが特に有利であり、中でもアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。2個の非共役エチレン性不飽和二重結合を有するこのようなモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、たとえばエチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート及びエチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、及び1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、並びにジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレート又はトリアリルイソシアヌレートである。C1〜C8−ヒドロキシアルキルメタクリレート及びアクリレート、たとえばn−ヒドロキシエチル、n−ヒドロキシプロピル又はn−ヒドロキシブチルアクリレート及びメタクリレート、並びにジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリレート又はメタクリレートなどの化合物もこれに関して特に重要である。本発明によると、前記モノマーは、重合されるモノマーAの合計量に基づき、5質量%まで、特に0.1〜3質量%、好ましくは0.5〜2質量%の量で重合に使用される。
【0043】
シロキサン基を有するエチレン性不飽和モノマー、たとえばビニルトリアルコキシシラン、たとえばビニルトリメトキシシラン、アルキルビニルジアルコキシシラン、アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン、又はメタクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン、たとえば、アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン又はメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランもモノマーAとして使用できる。これらのモノマーは、それぞれの場合でモノマーAの合計量に基づき、5質量%まで、多くの場合0.01〜3質量%、さらに多くの場合0.05〜1質量%の合計量で使用することができる。本発明によれば、前記シロキサン基を含むモノマーAは、それぞれの場合、重合されるモノマーAの合計量に基づき、有利には、0.01〜5質量%、特に0.01〜3質量%、好ましくは0.05〜1質量%の合計量で使用される。前記シロキサン基を含むエチレン性不飽和モノマーを、他のモノマーAの前、他のモノマーAと同時、又は他のモノマーAより後に計り入れ得ることが重要である。
【0044】
少なくとも1つの酸基及び/又はその対応するアニオンのいずれかを含むエチレン性不飽和モノマーAS或いは、少なくとも1つのアミノ、アミド、ウレイド又はN−複素環基及び/又はそれらの窒素でプロトン化又はアルキル化されたそのアンモニウム誘導体を含むエチレン性不飽和モノマーANをモノマーAとしてさらに使用することができる。モノマーAS又はモノマーANの量は、重合されるモノマーAの合計量に基づき、10質量%まで、多くの場合0.1〜7質量%、しばしば0.2〜5質量%である。
【0045】
少なくとも1つの酸基を有するエチレン性不飽和モノマーをモノマーASとして使用する。酸基は、たとえば、カルボキシル、スルホ、硫酸、リン酸及び/又はホスホン酸基である。このようなモノマーASの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸、並びにn−ヒドロキシアルキルアクリレート及びn−ヒドロキシアルキルメタクリレートのリン酸モノエステル、たとえば、ヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレート又はn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルである。しかし、本発明によれば、少なくとも1つの酸基を有する前記エチレン性不飽和モノマーのアンモニウム塩及びアルカリ金属塩を使用することもできる。ナトリウム及びカリウムがアルカリ金属として特に好適である。これらの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸のアンモニウム、ナトリウム及びカリウム塩、並びにヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレート又はn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルの一及び二アンモニウム、一及び二ナトリウム塩及び一及び二カリウム塩である。
【0046】
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸がモノマーASとして好ましく使用される。
【0047】
少なくとも1つのアミノ、アミド、ウレイド又はN−複素環基及び/又はそれらの窒素でプロトン化又はアルキル化されたアンモニウム誘導体を含むエチレン性不飽和モノマーをモノマーANとして使用する。
【0048】
少なくとも1つのアミノ基を含むモノマーANの例は、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノ−n−ブチルアクリレート、4−アミノ−n−ブチルメタクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート(たとえばArkemaからNorsocryl(登録商標)TBAEMAとして市販されている)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(たとえば、ArkemaからNorsocryl(登録商標)ADAMEとして市販されている)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(たとえば、ArkemaからNorsocryl(登録商標)MADAMEとして市販されている)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジイソプロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−tert−ブチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−tert−ブチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジイソプロピルアミノ)プロピルアクリレート及び3−(N,N−ジイソプロピルアミノ)プロピルメタクリレートである。
【0049】
少なくとも1つのアミド基を含むモノマーANの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、及びN−シクロヘキシルアクリルアミド、さらにはN−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクタムである。
【0050】
少なくとも1つのウレイド基を含むモノマーANの例は、N,N’−ジビニルエチレン尿素及び2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレート(たとえば、ArkemaからNorsocryl(登録商標)100として市販されている)である。
【0051】
少なくとも1つのN−複素環基を含むモノマーANの例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール及びN−ビニルカルバゾールである。
【0052】
以下の化合物がモノマーANとして好適に使用される:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド及び2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレート。水性反応媒体のpHに応じて、前記窒素含有モノマーANの一部の量又は全量は、窒素でプロトン化された第4級アンモニウム形態で存在してもよい。
【0053】
2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド(たとえば、ArkemaからNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT MC80として市販されている)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド(たとえば、ArkemaからNorsocryl(登録商標)MADQUAT MC75として市販されている)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド(たとえば、ArkemaからNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT BZ80として市販されている)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド(たとえば、Elf AtochemからNorsocryl(登録商標)MADQUAT BZ75として市販されている)、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド及び3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリドを、窒素で第4級アルキルアンモニウム構造を有するモノマーANの例として挙げることができる。もちろん、対応するブロミド及びスルフェートも前記クロリドの代わりに使用することができる。
【0054】
2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド及び2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリドが好ましく使用される。
【0055】
もちろん、前記エチレン性不飽和モノマーAS又はANの混合物を使用することもできる。重要なことは、WO03000760の場合、少なくとも1つのアニオン性分散剤の一部の量または全量は、マイナスの符号を有する電気泳動移動度を有する分散固体粒子が存在する場合、当量の少なくとも1つのモノマーASによって置換することができ、少なくとも1つのカチオン性分散剤の一部の量または全量は、プラスの符号を有する電気泳動移動度を有する分散固体粒子が存在する場合、当量の少なくとも1つのモノマーANで置換することができることである。
【0056】
特に有利には、モノマーAの組成は、それら単独の重合後、そのガラス転移温度が100℃以下、好ましくは60℃以下、特に以下20℃、しばしば−60℃以上、多くの場合−50℃以上又は−30℃以上であるポリマーが得られるように選択される。
【0057】
通常、ガラス転移温度の測定は、DIN53765(示差走査熱量測定、20K/分、中点測定)に従って実施する。
【0058】
Fox(T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.1956 [Ser.II]1,pages 123及びUllmann’s Encyclopaedie der technischen Chemie,vol.19,page 18,4th edition,Verlag Chemie,Weinheim,1980)にしたがって、以下は最大でも低架橋度のコポリマーのガラス転移温度Tgの良好な近似式である:
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+....xn/Tgn
(式中、x1、x2、....xnは、モノマー1、2、....nの質量分率であり、Tg1、Tg2、....Tgnは、それぞれの場合、モノマー1、2、....nのうちの1つのみから構成されるポリマーのガラス転移温度(ケルビン度)である)。ほとんどのモノマーのホモポリマーのT値は既知であり、たとえばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th edition,vol.A21,page 169,Verlag Chemie,Weinheim,1992に記載されており;さらなるホモポリマーのガラス転移温度の情報源は、たとえばJ.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook,1st Ed.,J.Wiley,New York,1966;2nd Ed.J.Wiley,New York,1975及び3rd Ed.J.Wiley,New York,1989に記載されている。
【0059】
少なくとも1つのエポキシド基を有する全てのエチレン性不飽和化合物をモノマーB(エポキシドモノマー)として用いることができる。しかし、特に、少なくとも1つのエポキシドモノマーは、たとえば、US−A5,763,629に開示されているように、1,2−エポキシ−3−ブテン、1,2−エポキシ−3−メチル−3−ブテン、グリシジルアクリレート(2,3−エポキシプロピルアクリレート)、グリシジルメタクリレート(2,3−エポキシプロピルメタクリレート)、2,3−エポキシブチルアクリレート、2,3−エポキシブチルメタクリレート、3,4−エポキシブチルアクリレート及び3,4−エポキシブチルメタクリレート並びに対応するアルコキシ化、特にエトキシ化及び/又はプロポキシ化グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートからなる群から選択される。もちろん、本発明によれば、エポキシドモノマーの混合物を使用することもできる。グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートがエポキシドモノマーとして好ましく用いられる。
【0060】
モノマーの全量に基づき、エポキシドモノマーの量は、0超及び10質量%以下である。しばしばエポキシドモノマーの全量は、それぞれの場合、モノマーの全量に基づき、0.01質量%以上、0.1質量以上%若しくは0.5質量%以上、多くの場合0.8質量%以上、1質量%以上若しくは1.5質量%以上、又は8質量%以下、7質量%以下又は6質量%以下、多くの場合5質量%以下、4質量%以下若しくは3質量%以下である。エポキシドモノマーの量は、それぞれの場合、モノマーの全量に基づき、好ましくは0.1質量%以上で5質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上で3質量%以下である。
【0061】
従って、重合されるモノマー混合物は、95質量%以上で99.9質量%以下、特に好ましくは97質量%以上で99.5質量%以下のモノマーA並びに0.1質量%以上で5質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上で3質量%以下のエポキシドモノマーからなる。
【0062】
重要なことは、本発明によれば、エポキシドモノマーをモノマーAとの混合物として使用することである。しかし、エポキシドモノマーを水性重合媒体中にモノマーAと別々に及び同時に計り入れることもできる。エポキシドモノマーを重合媒体中に1回以上のバッチごとで、又は一定若しくは変動流速で連続して計り入れることができる。しかし、通例、エポキシドモノマーをモノマーAとともにモノマー混合物として重合媒体中に供給する。
【0063】
有利には、重合されるモノマー混合物は、これから得られるポリマーが100℃以下、好ましくは60℃以下又は40℃以下、特に30℃以下又は20℃以下、及びしばしば−60℃以上又は−40℃以上、多くの場合−30℃以上のガラス転移温度を有し、従って水性複合粒子分散液が(場合により通常のフィルム形成助剤の存在下で)簡単な操作で微細無機固体を含むポリマーフィルム(複合フィルム)に変換され得るように選択される。
【0064】
ラジカル重合によって、本発明に従って使用可能な水性複合粒子分散液を製造するために好適なラジカル重合開始剤は、ラジカル水性乳化重合を開始することができる全てのものである。これらは原則として過酸化物及びアゾ化合物の両方であり得る。もちろん、レドックス開始剤系も好適である。使用される過酸化物は、原則として、無機過酸化物、たとえば過酸化水素又はペルオキソ二硫酸塩、たとえばペルオキソ二硫酸の一若しくは二アルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩たとえば、それらの一及び二ナトリウム、一及び二カリウム若しくはアンモニウム塩、又は有機過酸化物、たとえばアルキルヒドロペルオキシド、たとえば、tert−ブチル、p−メンチル又はクミルヒドロペルオキシド、並びに過酸化ジアルキル又はジアリール、たとえば過酸化ジ−tert−ブチル又はジクミルであり得る。基本的に、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2’−アゾビス(アミジノプロピル)ジヒドロクロリド(AIBA、Wako ChemicalsのV−50に相当)をアゾ化合物として使用する。基本的に、前記過酸化物はレドックス開始剤系の酸化剤として好適である。低酸化状態を有する硫黄化合物、たとえばアルカリ金属亜硫酸塩、たとえば、亜硫酸カリウム及び/又はナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、たとえば亜硫酸水素カリウム及び/又はナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、たとえばメタ重亜硫酸カリウム及び/又はナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩、たとえばホルムアルデヒドスルホキシル酸カリウム及び/又はナトリウム、アルカリ金属塩、特に脂肪族スルフィン酸のカリウム及び/又はナトリウム塩、並びにアルカリ金属硫化水素塩、たとえば、硫化水素カリウム及び/又はナトリウム、多価金属塩、たとえば硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、リン酸鉄(II)、エンジオール、たとえばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾイン及び/又はアスコルビン酸、並びに還元糖、たとえばソルボース、グルコース、フルクトース及び/又はジヒドロキシアセトンを対応する還元剤として使用することができる。通例、使用されるラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物の全量に基づき、0.1〜5質量%である。
【0065】
0〜170℃の全範囲が、微細無機固体の存在下でのラジカル水性重合反応の反応温度として好適である。通例、50〜120℃、しばしば60〜110℃、多くの場合70℃以上から100℃までの温度を使用する。ラジカル水性乳化重合は、1バール(絶対)未満、1バール、又は1バール超の圧力で実施することができ、100℃超かつ170℃までの重合温度が可能である。好ましくは、易揮発性モノマー、たとえばエチレン、ブタジエン又はビニルクロリドを超大気圧下で重合させる。圧力は、1.2、1.5、2、5、10、または15バールであってよく、又はそれより高い値も想定され得る。乳化重合を減圧下で実施する場合、950ミリバール、しばしば900ミリバール、多くの場合850ミリバール(絶対)の圧力が確立される。有利には、ラジカル水性重合を1気圧(絶対)、不活性ガス雰囲気下、たとえば窒素またはアルゴン下で実施する。
【0066】
水性反応媒体は、原則として少量の水溶性有機溶媒、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、さらにはアセトンなどを含み得る。しかし、重合反応は好ましくはこのような溶媒の非存在下で実施する。
【0067】
前記成分に加えて、重合によって得られるポリマーの分子量を減少または制御するために、ラジカル連鎖移動化合物も場合により水性複合粒子分散液の製造法において使用することができる。実質的に脂肪族及び/又は芳香族脂肪族ハロゲン化合物、たとえば、n−ブチルクロリド、n−ブチルブロミド、n−ブチルヨージド、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、ブロモホルム、ブロモトリクロロメタン、ジブロモジクロロメタン、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル、臭化ベンジル、有機チオ化合物、たとえば第1、第2又は第3脂肪族チオール、たとえば、エタンチオール、n−プロパンチオール、2−プロパンチオール、n−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、n−ペンタンチオール、2−ペンタンチオール、3−ペンタンチオール、2−メチル−2−ブタンチオール、3−メチル−2−ブタンチオール、n−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、3−ヘキサンチオール、2−メチル−2−ペンタンチオール、3−メチル−2−ペンタンチオール、4−メチル−2−ペンタンチオール、2−メチル−3−ペンタンチオール、3−メチル−3−ペンタンチオール、2−エチルブタンチオール、2−エチル−2−ブタンチオール、n−ヘプタンチオール及びその異性化合物、n−オクタンチオール及びその異性化合物、n−ノナンチオール及びその異性化合物、n−デカンチオール及びその異性化合物、n−ウンデカンチオール及びその異性化合物、n−ドデカンチオール及びその異性化合物、n−トリデカンチオール及びその異性化合物、置換チオール、たとえば、2−ヒドロキシエタンチオール、芳香族チオール、たとえばベンゼンチオール、又はオルト、メタ、若しくはパラメチルベンゼンチオール、並びにPolymer Handbook 3rd edtition,1989,J.Brandrup and E.H.Immergut,John Wiley & Sons, section II, pages 133 to 141に記載されている全てのさらなる硫黄化合物、さらには脂肪族及び/又は芳香族アルデヒド、たとえばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及び/又はベンズアルデヒド、不飽和脂肪酸、たとえばオレイン酸、非共役二重結合を有するジエン、たとえばジビニルメタン又はビニルシクロヘキサン、又は容易に抽出可能な水素原子を有する炭化水素、たとえばトルエンを使用する。しかし、妨害しない前記ラジカル連鎖移動化合物の混合物を使用することもできる。場合により使用されるラジカル連鎖移動化合物の合計量は、重合されるモノマーの合計量に基づき、通例、5質量%以下、多くの場合3質量%以下、しばしば1質量%以下である。
【0068】
本発明の方法によって得られる水性複合粒子分散液は、通常、1〜70質量%、しばしば5〜65質量%、多くの場合10〜60質量%の全固体含有量を有する。
【0069】
様々な方法によって得られる複合粒子は、特にWO03000760に開示されている方法によれば一般に、10nm以上で1000nm以下の範囲、しばしば50nm以上で400nm以下の範囲、そして多くの場合50nm以上で200nm以下の範囲の中央粒径を有する。中央複合粒径の測定は、分析的超遠心分離法(これに関しては、S.E.Harding et al., Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science,Royal Society of Chemistry,Cambridge,Great Britain 1992,Chapter 10,Analysis of Polymer Dispersions with an Eight−Cell−AUC−Multiplexer:High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques,W.Maechtle,pages 147 to 175を参照)によっても実施される。記載した値は、いわゆるd50値に相当する。その複合粒子が50nm以上で300nm以下、好ましくは200nm以下、特に150nm以下の中央粒径を有するこのような複合粒子分散液が弾性コーティングにおける使用に好適である。
【0070】
様々な方法によって得られる複合粒子は様々な構造を有し得る。複合粒子は、1以上の微細固体粒子を含み得る。微細固体粒子は、ポリマーマトリックスによって完全に包囲されていてもよい。しかし、微細固体粒子の一部がポリマーマトリックスによって包囲され、別の部分はポリマーマトリックスの表面上に配置されることも可能である。もちろん、微細固体粒子の大部分がポリマーマトリックスの表面上に結合していることも可能である。
【0071】
通常、様々な方法によって得られる複合粒子は、それぞれの場合、複合粒子(ポリマー量と固体粒子量の合計に相当する)に基づき、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、25質量%以上又は30質量%以上の微細無機固体含有量を有する。その複合粒子が10質量以上%及び60質量%以下、特に有利には25質量%以上で50質量%以下の範囲の微細無機固体含有量を有する水性複合粒子分散液を本発明に従って有利に使用する。
【0072】
前記水性複合粒子分散液は、有利には弾性コーティング組成物におけるバインダーとして好適である。
【0073】
本発明の弾性コーティング組成物は、従って水性複合粒子分散液を含み、水性複合粒子分散液の製造において、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散させることによって水性複合粒子分散液を製造し、少なくとも1つのラジカル重合開始剤を使用し、100nm以下の平均粒径を有する少なくとも1つの分散された微細無機固体及び少なくとも1つの分散剤の存在下でラジカル水性乳化重合法によって重合を実施し、エチレン性不飽和モノマーA及び場合により0質量%から10質量%以下の少なくとも1つのエポキシド基含有エチレン性不飽和モノマーB(エポキシドモノマー)を用いることを含む。
【0074】
この明細書に関して、弾性コーティング組成物は、複合粒子分散液をバインダーとして含む全ての水性配合物を包含する。
【0075】
弾性コーティング組成物は、建物を湿気及び他の風化効果から確実に保護することを目的とする。これらは、従って、たとえばファサード塗料などの塗料において用いられる。
【0076】
本発明は、従って、本発明の弾性コーティング材料を含む塗料、及びファサード塗料をさらに提供する。
【0077】
本発明の塗料は、既知の方法で、成分をこの目的のために通常使用される混合装置中でブレンドすることによって製造する。顔料、水及び任意の補助剤から水性ペースト又は分散液を製造し、それからポリマーバインダー、すなわち、一般的に水性ポリマー分散液を顔料ペースト又は顔料分散液と混合するのが適切であると判明している。
【0078】
本発明の弾性コーティング組成物は、湿潤状態で
i.10〜98質量%、好ましくは25〜80質量%、さらに好ましくは35〜70質量%の水性複合粒子分散液、
ii.0〜60質量%、好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは5〜30質量%の1以上の無機フィラー、
iii.0〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2.5質量%の1以上の増粘剤、
iv.0〜5質量%、好ましくは1〜3質量%、さらに好ましくは0〜1質量%の1以上の顔料、及び
v.0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜5質量%のさらなる補助剤、たとえば殺生物剤、顔料分散剤、フィルム形成助剤及び消泡剤
を含む。
【0079】
好適な無機フィラー(ii)の例としては、アンダルサイト、シリマナイト、カイヤナイト、ムライト、ピロフィライト、オモゴライト(Omogolit)又はアロファンのフィラー粒子が挙げられる。さらに好適なのは、アルミン酸ナトリウム、ケイ酸塩ベースの化合物、たとえばケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム又はシリカ(Aerosil)である。同様に好適なのは、ケイ質土、硫酸カルシウム(石膏)(燃料ガス脱硫プラント由来のものではなく、無水物、半水化物又は二水和物の形態のもの)、石英粉、シリカゲル、沈降又は天然の硫酸バリウム、二酸化チタン、ゼオライト、白榴石、正長石、黒雲母、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、イノケイ酸塩、フィロケイ酸塩及びテクトケイ酸塩の群、低溶解度硫酸塩の群、たとえば石膏、無水石膏、重晶石、及びカルシウム鉱物、たとえば方解石又はチョーク(CaCO3)である。
【0080】
前記無機材料は、個別に又は混合物で使用することができる。さらに好適な材料は、沈降若しくは天然カオリン、タルク、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウム(耐火分類の調整用)、酸化亜鉛並びにジルコニウム塩である。軽量フィラー(中空セラミックマイクロビーズ、中空ガラスビーズ、発泡ガラスビーズ又は他の軽量フィラー(Omega−Minerals製の種類のもの))の添加により、寸法安定性及び密度などのパラメータに影響を及ぼしうる。
【0081】
好適な無機フィラーは、Omyaの製品Omyacarb(登録商標)及びMondo Mineralsの製品Finntalc(登録商標)、World Mineralsの製品Celite(登録商標)及びOptimat(商標)、Evonik Industries AGの製品Aerosil(登録商標)、Kronosの製品Kronos(登録商標)、Milleniumの製品Tiona(登録商標)、Huntsmanの製品TIOXIDE(登録商標)、Du−Pont de Nemoursの製品Ti−Pure(登録商標)である。
【0082】
増粘剤iii.は、一般的に、水を吸収し、その際膨張する、又は分子間格子構造を形成する、高分子化合物である。有機増粘剤は、最終的に粘稠性真溶液又はコロイド溶液に変わる。
【0083】
アクリル酸及びアクリルアミド系増粘剤(たとえば、Collacral(登録商標)HP)、カルボキシル基含有アクリル酸エステルコポリマー、たとえばLatekoll(登録商標)D、PU増粘剤(たとえば、Collacral(登録商標)PU75)、セルロース及びそれらの誘導体、並びに天然の増粘剤、たとえばベントナイト、アルギネート又はデンプンも使用することができる。
【0084】
増粘剤(iii.)は、0〜5質量%、好ましくは0.1〜2.5質量%の量で使用する。
【0085】
顔料(iv.)の目的は、弾性コーティング組成物を着色することである。これは、有機顔料及び/又は無機顔料、たとえば酸化鉄を用いて行う。顔料は、0〜5質量%、好ましくは0〜1質量%の量で使用する。要するに、弾性コーティング組成物は、実質的に、水性複合粒子分散液を含む。さらなる補助剤v.を水性分散液に簡単な方法で添加することができる。
【0086】
さらなる補助剤(v.)としては、たとえば、真菌及び細菌侵襲を防止するための保存料、開口時間及び機械的性質に影響を及ぼすための溶媒、たとえばブチルグリコール、たとえば湿潤挙動を改善するための分散助剤が挙げられ、その例としては、顔料分散剤(Pigmentverteiler(登録商標))NL(BASF Aktiengesellschaft、独国)、乳化剤(Emulphor(登録商標)OPS25、Lutensol(登録商標)TO89)、防霜剤(エチレングリコール、プロピレングリコール)が挙げられる。さらなる可能な補助剤としては、架橋剤、接着促進剤(アクリル酸、シラン、アジリジン)又は消泡剤(製品Lumiten(登録商標))が挙げられる。
【0087】
実施例
実施例1(35%SiO2、70:30)
還流冷却器、温度計、機械的攪拌器並びに計量装置を備えた2lの四口フラスコ中、20〜25℃(室温)、1バール(絶対)、窒素雰囲気下で撹拌(200回転/分)しながら、429.4gのNyacol(登録商標)2040及び、続いて2.5gのメタクリル酸と12gの水酸化ナトリウムの10質量%水溶液との混合物を5分間にわたって添加した。その後、撹拌された反応混合物を15分にわたって、10.4gの非イオン性界面活性剤Lutensol(登録商標)AT18(BASF SEの商標、18エチレンオキシド単位を有するC1618脂肪族アルコールエトキシレート)の20質量%濃度水溶液と混合した。続いて、60分にわたって、288gの脱イオン水中溶液中0.83gのN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を反応混合物中に計り入れた。次に、反応混合物を80℃の反応温度まで加熱した。
【0088】
平行して、フィード1(93.7gのメチルメタクリレート(MMA)、218.8gのn−ブチルアクリレート(n−BA)、6.5gのグリシジルメタクリレート(GMA)、及び0.5gのメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)からなるモノマー混合物)、並びにフィード2(3.8gのペルオキソ二硫酸ナトリウム、11.5gの水酸化ナトリウムの10質量%濃度溶液及び280gの脱イオン水からなる開始剤溶液)を調製した。
【0089】
続いて、反応温度で撹拌した反応混合物を5分にわたり2つの独立したフィードラインによって21.1gのフィード1及び57.1gのフィード2と混合した。その後、反応混合物を反応温度で1時間撹拌した。続いて、反応混合物を0.92gのDowfax(登録商標)2A1の45質量%濃度水溶液と混合した。2時間にわたり、同時に開始して、フィード1及びフィード2の残りを連続して反応混合物中に計り入れた。その後、反応混合物をさらに1時間反応温度で撹拌した後、室温まで冷却した。
【0090】
このようにして得られた水性複合粒子分散液は、水性複合粒子分散液の合計質量基準で、35.5質量%の固体含有量を有していた。
【0091】
実施例2(35%SiO2、80:20)
実施例1と同様であるが、フィード1中のMMA及びnBAの量を62.5gのMMA及び250.0gのnBAに変更した。
【0092】
結果:
固形分:35.3%
pH=9
フィルム厚:0.50±0.01mm
吸水率(24時間):5.51±0.20%
23℃での引張強度(N/mm2):6.50±0.17
0℃での引張強度:9.30±1.16
23℃での破断点伸び:161±13%
0℃での破断点伸び:157±12%
【0093】
実施例3(30%SiO2、80:20)
実施例2と同様であるが、初期装入物中、341.8gのNyacol(登録商標)2040を52.6gの水で希釈した。
【0094】
固形分:35.2%
pH=9.0
フィルム厚:0.50±0.01mm
吸水率(24時間):4.87±0.08%
23℃での引張強度(N/mm2):5.30±0.27
0℃での引張強度:8.90±0.32
23℃での破断点伸び:224±29%
0℃での破断点伸び:224±30%
【0095】
塗料配合物
【表1】

【0096】
実施例2から得られた分散液を含む塗料配合物
固形分=38.0
フィルム厚:0.36±0.00mm
吸水率(24時間):13.4±0.1%
23℃での引張強度(N/mm2):3.30±0.03
0℃での引張強度:5.20±0.21
−10℃での引張強度:9.6±0.27
23℃での破断点伸び:84±5%
0℃での破断点伸び:116±12%
−10℃での破断点伸び:52±9%
水蒸気透過性:Sd値=0.2
【0097】
実施例3から得られた分散液を含む塗料配合物
固形分=41.7
フィルム厚:0.38±0.00mm
吸水率(24時間):13.7±0.21%
23℃での引張強度(N/mm2):2.70±0.04
0℃での引張強度:4.70±0.33
−10℃での引張強度:8.0±0.15
23℃での破断点伸び:109±6%
0℃での破断点伸び:194±9%
−10℃での破断点伸び:86±4%
水蒸気透過性:Sd値=0.3
【0098】
pHはDIN53785に従って測定した。装置は、Methromから得たpH計Titroprocessor 682であった。約50mlの試料を100mlのガラス製ビーカーに入れる。続いて試料をサーモスタット中、23±1℃に調整した。ガラス電極は3モル濃度KCl溶液中、最もよい状態で保存される。測定前に、ポリマー分散液で数回すすぎ、次いで試料に浸漬する。装置のディスプレー上のポインターの位置が一定状態になったらpHを読み取る。3回測定を実施し、それぞれ新しい分散液試料を測定する。
【0099】
引張強度及び破断点伸びは、DIN53455及びDIN53504に従って測定した。引張強度[N/mm2]は、試験開始時の試料断面積[mm2]に対する最大張力[N]であり;破断荷重[N]は、破断時の引張応力である。破断点伸びvR[%]は、試料のもとの長さL0[mm]に対する最大伸びL[mm]である。引張試験を用いて、伸び応力下での分散液フィルムの機械的挙動を評価する。これらの値により、特に異なる温度で測定される場合、たとえばこれらの分散液を用いて製造された塗料の裂架橋特性に関する結論が引き出される。液体標本から、約500μmのフィルム厚を有するフィルムを、フィルムケーシングプレート(材料:Teflon、Lupolen)中に設置し製造する。フィルム厚を、Mitutuyo、商品コード7305から得た装置を用いて0.01mmの精度で検証した。これらのフィルムから、試験温度ごとに少なくとも5個の試料ロッドに穿孔し(DIN53504に準拠したS2標準試験ロッド(ダンベル型、長さ70mm、幅4mm)について鉄を穿孔する)、それらの平均フィルム厚を測定する。試料の幅について、パンチングブレードの寸法(4mm)を推定する。これらの試料ロッドは、収縮ひび割れ、内部亀裂、切り欠き、気泡又は他の欠陥がなかった。試料を28日間23℃、0℃及び−10℃、並びに相対湿度50%で保存する。試料を次に、引張速度があらかじめ選択可能で、力変換器、及び長さの変化を測定するための手段を有する引張試験器(Zwick製、固定長さ40mm)中に固定する。試料ロッドを引張試験機のクランプ中に固定し、次いで200mm/分の引張速度で破断点まで伸張する。
【0100】
水蒸気透過性は、prEN1062−2及びISO DIS7783に従って測定した。水蒸気透過性(WWD)は、試料面積1m2にわたって1日[24時間]あたりに拡散する水蒸気量[g]の尺度である。
【0101】
【数1】

【0102】
水蒸気透過性WWDは、異なる質量及び時間の単位を使用して、水蒸気拡散流密度iとも呼ばれる:
【数2】

【0103】
Fickの第1則に従い、水蒸気拡散流密度iを使用して水蒸気拡散係数δを計算する。これは、面積及び時間に対して水蒸気分圧勾配の作用のもとで厚さsを有する試料を通って拡散する水蒸気量の尺度である。
【0104】
【数3】

【0105】
拡散係数δの逆数を拡散透過抵抗と呼ぶ。拡散抵抗数δは、試料及び空気の透過抵抗の比として計算される。これは、試料の拡散透過抵抗が同じ厚さ及び同じ温度の空気の静止層より何倍大きいかを示す。
【0106】
【数4】

【0107】
δ=試料中の水蒸気の拡散係数[kg/(mhPa)]
δL=空気中の水蒸気の拡散係数[kg/(mhPa)]
δLは次のように計算することができる:
【数5】

p=試験空間中の平均空気圧[hPa]
p0=標準条件下での大気圧=1013.25[hPa]
D=水蒸気の気体定数=462[Nm/kg・K]
T=試験温度
【0108】
水蒸気拡散等価空気層厚さsd[m]は、厚さsの試料と同じ拡散透過抵抗を有するために空気の静止層が有すべき厚さを示す。
d=μ・S
【0109】
式[1]及び[2]を代入して次の式を得る。
【数6】

p1=試料上の水蒸気分圧[Pa]
p2=試料下の水蒸気分圧[Pa]
K=δL24000(p1−p2
【0110】
この試験法は、水蒸気透過性を重力測定法により測定するカップ法と呼ばれるものを記載する。このために、試料で密封したカップ中で、所定の水蒸気分圧p1を設定し、異なる水蒸気分圧p2を有する空間中で保存する。これは、以下の装置を用いて実施した:秤量範囲400g、精度1mgの分析用天秤、測定セル、キャスティング装置、並びに23±1℃、相対湿度50±2.5%の環境に調節された空間。各コーティングの少なくとも3つの平行試料を試験した。基材は、ISO4793に準拠したP16型のガラスフリットであり、Schott:孔隙率4に対応する。直径90mm、厚さ7.5mm、全試験面積50cm2である。試料を標準条件下(23℃、相対湿度50%)下で28日間保存した。23℃で93%の相対湿度に関して、測定セルを飽和リン酸二水素アンモニウム溶液(未溶解塩を沈殿として含む)で約20mmの高さまで満たした。約70℃の温度で、80質量部の50〜55℃パラフィン及び20質量部のOppanol(登録商標)B15の混合物を、キャスティング装置を用いて設置し、気密性ボンドでコーティングされたフリットを測定セルに固定する。コーティングは50%相対湿度側に面している。試験条件(50%相対湿度及び23℃)下で少なくとも24時間の調節時間後、このようにして製造した測定セルの質量変化を記録する。このために、試料を24時間間隔で秤量する(m1〜mi)。拡散等価空気層厚さsd[m]を水蒸気透過性WWDから計算する(式[3])。
【0111】
【数7】

【0112】
基材上にコーティングがあるため、測定されたsd値はなお基材による寄与を含み、実際の水蒸気拡散等価空気層厚さsdを計算するためには、基材によるこの寄与を差し引く必要がある(空試料)。
d(コーティング)=sd(試料)−sd(基材)
【0113】
フィルムの吸水率をDIN53495にしたがって測定した。吸水率Wは、水を24時間保存した後のポリマーフィルムによって吸収される水の量である。吸水率(%)の報告は、測定開始時のフィルムの質量に関連する。吸水率Wを測定するため、2つの試料を24時間後に水から取り出し、2枚の糸屑のない濾紙間または相応の布間で付着する水を除去する。試料を精度1mgまで秤量する(m1)。
【0114】
吸水率を次のように計算する:
【数8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及び微細無機固体から構成される粒子の水性分散液(水性複合粒子分散液)を、弾性コーティング、たとえば塗料、さらに詳細にはファサード塗料におけるバインダーとして用いる使用。
【請求項2】
エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散させ、100nm以下の平均粒径を有する少なくとも1つの分散した微細無機固体及び少なくとも1つの分散剤の存在下、少なくとも1つのラジカル重合開始剤を用いてラジカル水性乳化重合法により重合を実施し、その際、前記エチレン性不飽和モノマーとして、エチレン性不飽和モノマーA及び場合により0%〜10質量%以下のエポキシド基を含有するエチレン性不飽和モノマーB(エポキシドモノマー)を含むモノマー混合物を使用することで、水性複合粒子分散液が製造される、請求項1に記載の水性複合粒子分散液の使用。
【請求項3】
塗料におけるバインダーとして用いる、請求項1又は2に記載の水性複合粒子分散液の使用。
【請求項4】
ファサード塗料におけるバインダーとして用いる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性複合粒子分散液の使用。
【請求項5】
前記複合粒子分散液が0.5〜3質量%のモノマーBを含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性複合粒子分散液の使用。
【請求項6】
前記モノマーAの組成を、モノマーA単独の重合により、100℃以下のガラス転移温度を有するポリマーが得られるように選択する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性複合粒子分散液の使用。
【請求項7】
重合される前記モノマー混合物が、95質量%以上で99.9質量%以下のモノマーA及び0.1質量%以上で5質量%以下のモノマーBを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性複合粒子分散液の使用。
【請求項8】
重合される前記モノマー混合物を、これから得られるポリマーのガラス転移温度が100℃以下になるように選択する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性複合粒子分散液の使用。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のバインダーを含む塗料。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のバインダーを含むファサード塗料。
【請求項11】
湿潤状態で
i. 10〜98質量%の水性複合粒子分散液、
ii. 0〜60質量%の1以上の無機フィラー、
iii. 0〜5質量%の1以上の増粘剤、
iv. 0〜5質量%の1以上の顔料、及び
v. 0〜20質量%のさらなる補助剤、たとえば殺生物剤、顔料分散剤、フィルム形成助剤及び消泡剤
を含む、弾性コーティング材料。

【公表番号】特表2012−501381(P2012−501381A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525523(P2011−525523)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061281
【国際公開番号】WO2010/026138
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】