弾性ナノ複合材料マトリックスを含むセーム調極細織布−不織布の製造方法
【課題】含浸されるポリウレタンへの染色、洗濯堅牢性および摩擦堅牢性を改良すること。
【解決手段】(a)合成極細繊維から選択される極細繊維と、(b)エラストマー/薄層状クレーナノ複合材料マトリックスとを含んでなり、前記薄層状クレーが、親油性薄層状クレーおよび官能化された親油性薄層状クレーから選択される複合材料を開示する。この複合材料から出発して得られる、染色された起毛織布−不織布である複合材料。合成繊維がポリエステル、ポリアミド、およびアクリロニトリルから選択される。含浸されるエラストマーがポリウレタン、ポリウレタン−尿素であること。
【解決手段】(a)合成極細繊維から選択される極細繊維と、(b)エラストマー/薄層状クレーナノ複合材料マトリックスとを含んでなり、前記薄層状クレーが、親油性薄層状クレーおよび官能化された親油性薄層状クレーから選択される複合材料を開示する。この複合材料から出発して得られる、染色された起毛織布−不織布である複合材料。合成繊維がポリエステル、ポリアミド、およびアクリロニトリルから選択される。含浸されるエラストマーがポリウレタン、ポリウレタン−尿素であること。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、極細繊維状部分とエラストマー/薄層状クレー、好ましくはポリウレタン/薄層状クレーのナノ複合材料マトリックスとを含んでなり、この薄層状クレーが、親油性クレーおよび官能化された親油性クレーから選択される、複合材料に関する。
【0002】
本発明は、上記の複合材料を出発材料として得られる起毛織布−不織布および染色した起毛織布−不織布にも関する。
【背景技術】
【0003】
上記極細繊維のポリウレタン成分は、布地用の他の重合体、例えばポリエステルやナイロン程容易に染色できないことが知られている。さらに、染色した後、これらのポリウレタン材料は、水洗および摩擦に対する染料の安定性が乏しい。
【0004】
ポリウレタンマトリックスの染色性を増加させるための試みがなされている。例えば、欧州特許第EP−A−0662981号および特公平6−207381号には、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリアミド(ナイロン6またはナイロン6−6)および第3級アミン単位を鎖中に含むポリウレタン−尿素を基材とし、この第3級アミン単位が、ポリウレタンを形成するポリオールポリエステルの一部である、極細繊維を使用して製造された、起毛織布−不織布(以下、極細繊維不織布ともいう。)の製造が開示されている。従って、極細繊維不織布は、極細繊維状成分において(分散染料で)染色されるだけではなく、ポリウレタン成分においても、反応性染料(それ自体を、ポリウレタン鎖中に存在するアミンおよびアミド基に化学結合することができる)、酸性染料、予備含金属染料(それ自体を、イオン系および配位結合の形成により、結合させることができる)を使用して染色される。
【0005】
しかしながら、この技術には、ポリウレタンの処方による欠点がある。鎖中のアミン基が、実際、ポリウレタンの合成中に好ましくない塩基性触媒反応効果を引き起こすことがある。
【特許文献1】欧州特許第EP−A−0662981号
【特許文献2】特公平6−207381号
【発明の概要】
【0006】
ここで、合成に影響を及ぼさずに、染料分子を安定して固定することができるので、該欠点を解決する製法が見出された。
【0007】
最後に、本発明の製法は、先行技術の製法よりはるかに簡単であり、染料のみならず、他の種類の添加剤、例えばUV安定剤、難燃剤、防汚添加剤、も、より安定して固定することができる。
【0008】
そこで、本発明は、合成極細繊維から選択される極細繊維とエラストマー/薄層状クレーのナノ複合材料マトリックスとを含んでなり、前記薄層状クレーが、親油性薄層状クレーおよび官能化された親油性薄層状クレーから選択される、複合材料の製造方法であって、
(a)海島型構造を有する極細繊維を製造し、続いて、該極細繊維から出発して極細繊維状フェルトを形成する工程、および
(b)前記極細繊維状フェルトを、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を不活性溶剤中に入れた分散液、または官能化された、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を不活性溶剤中に入れた分散液で含浸させ、続いて凝固させて、本発明の複合材料を得る工程、
を含んでなる方法に関する。
【0009】
極細繊維に関する限り、これらの材料は、ポリスチレン系極細繊維(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド(例えばナイロン6、ナイロン6−6およびナイロン12)、ポリアクリロニトリル、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリアミドナイロン6およびナイロン6−6、より好ましくはポリエチレンテレフタレートから選択される。
【0010】
好ましい実施態様では、エラストマーはポリウレタンである。
【0011】
用語「ポリウレタン」は、可撓性部分(軟質部分)および合成部分(硬質部分)からなる重合体を意味する。
【0012】
可撓性部分は、下記の物質を基剤とする重合体鎖でよい。
・ポリエーテル、例えばポリテトラメチレングリコールジオール(PTMG)、ポリエチレングリコールジオール(PEG)、ポリプロピレングリコールジオール(PPG)から誘導されるポリエーテル。
・ポリエステル、例えばアジピン酸のエステル、例えばポリヘキサメチレンアジペートジオール(PHA)、ポリ(3−メチルペンタメチレン)アジペートジオール(PMPA)、またはポリネオペンチルアジペートジオール(PNA)。他のポリエステルは、環状分子、例えばカプロラクトンの開環により製造できる(これによってジオールポリカプロラクトン、略してPCL、を得る)。
・ポリカーボネート、例えばポリヘキサメチレンカーボネートジオール(PHC)、ポリペンタメチレンカーボネートジオール(PPMC)、ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオール(PMPC)、ポリテトラメチレンカーボネートジオール(PTMC)、それらの混合物および共重合体。
【0013】
上記のポリエーテルおよびポリエステルの共重合により形成されるポリエステル、ならびにポリエステルおよびポリカーボネートの共重合により得られるポリエステル−コ−ポリカーボネートも、可撓性部分として使用できる。
【0014】
例でポリウレタンの合成に使用するポリオールは、通常、数平均分子量が1000〜3000、好ましくは1750〜2250である。
【0015】
剛性部分とは、重合体鎖の、有機ジイソシアネート、例えばメチレン−ビス−(4−フェニルイソシアネート)(MDI)またはトルエンジイソシアネート(TDI)と、ジアミンもしくはグリコール鎖との反応から誘導される部分を意味する。実際、ポリウレタン合成の完了を、ジアミンで行い、ポリウレタン−尿素が得られるか、またはグリコールで行い、文字通りポリウレタンが得られることは良く知られている。
【0016】
ポリウレタン−尿素の製造における連鎖延長剤(chain extender)として使用できるジアミンは、脂肪族物質の中では、エチレンジアミン(EDA)、1,3−シクロヘキサンジアミン(1,3−CHDA)、1,4−シクロヘキサンジアミン(1,4−CHDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、1,3−プロピレンジアミン(1,3−PDA)、2−メチルペンタメチレンジアミン(MPDA)、1,2−プロピレンジアミン(1,2−PDA)、およびそれらの混合物である。連鎖延長剤として使用する芳香族ジアミンの典型的な例は、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、メチレン−ビス(4−フェニルアミン)(MPA)、2,4−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン、2,4−ジアミノ−3,5−ジ(メチルチオ)トルエンである。該脂肪族および/または芳香族ジアミンは、それ自体で加えるか、または対応するイソシアネートと水との反応により、その場で発生させることができる。ポリウレタンにおける適切な意味での連鎖延長は、ジオール、例えばエチレングリコール、テトラメチレングリコールおよび関連する混合物、でも得ることができる。最後に、連鎖延長は、ジカルボン酸、例えばマロン酸、コハク酸およびアジピン酸で行うこともできる。
【0017】
ポリウレタンおよびポリウレタン尿素の製造に使用される反応は、通常、非プロトン性不活性溶剤、例えばジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、の中で行われる。上記の製造は、当業者には良く知られている。
【0018】
用語「剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料」は、ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素(以下、特に指示がない限り、一般的な用語「ポリウレタン」とも呼ぶ)と、挿入された、または薄片状に剥離された構造が形成されるまで、緊密に混合した薄層状親油性クレーの分散物に関する。
【0019】
用語「薄層状親油性クレー」は、薄層上に陰電荷および層間空間に無機陽イオンを有し、層間の間隔およびこれらの化学種中に挿入される重合体の相容性を増大させるために、該陽イオンが有機「オニウム」イオンで置換されている、薄層状ケイ酸塩(フィロケイ酸塩)を意味する。
【0020】
薄層状ケイ酸塩は、層間に、水分子、アルコール、ケトン、脂肪族、環状または芳香族アミン、もしくは他の極性物質を取り込み、その結果、膨潤することができる。
【0021】
薄層状ケイ酸塩は、三重層構造を有することもでき、その際、各薄層は、シリカを基剤とする二つの四面体層間に位置する、マグネシウムまたはアルミニウムを基剤とする八面体層からなる。
【0022】
薄層状ケイ酸塩の例は、スメクチッククレー、例えばモンモリロン石、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、エクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、バーミキュル石、ソーコナイト、マガダイト(magadite)、ケニアタイト(keniatite)、または上記クレーの置換体または誘導体、および関連する混合物である。好ましい薄層状クレーは、モンモリロン石、ベントナイトおよび関連する混合物から選択される。
【0023】
薄層状親油性クレー中に存在する「オニウム」イオンは、第1級、第2級、第3級または第4級アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、イミダゾリニウム化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物、から選択される。「オニウム」化合物の好ましい例は、タロウ−アルキル−ビス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、タロウ−アルキル−ビス(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウムイオン、(タロウ水素化アルキル)2−エチルヘキシルジメチルアンモニウムイオン、ビス(タロウ水素化アルキル)ジメチルアンモニウムイオン、ビス(タロウ水素化アルキル)メチルアンモニウムイオン、および(タロウ水素化アルキル)ベンジルジメチルアンモニウムイオンである。
【0024】
用語「タロウ」は、ウシおよび/またはヒツジの脂肪組織に由来する脂肪物質を意味する。タロウは、グリセリドの形態で、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、およびリノール酸を、少量の他の脂肪酸およびコレステロールと共に含む。タロウの最も知られている特徴は、その凝固点が40〜46℃であることである。用語タロウ−アルキルまたは水素化タロウ−アルキルは、商業的用語であり、通常、タロウに由来するC16〜C18アルキル基の混合物を意味する。
【0025】
市販されてもいる薄層状親油性クレー(従って、有機「オニウム」イオンを含む)の典型的な例は、タロウ−ベンジルジメチルアンモニウム陽イオンまたは(タロウ水素化)ベンジルジメチルアンモニウム陽イオンを含む親油性モンモリロン石である。
【0026】
薄層状親油性クレー層間距離が少なくとも17Åである。該距離は、X線回折により効率的に測定することができる。
【0027】
官能化された親油性クレーに関する限り、これらの物質は、一般式(I)を有する化合物から選択された一種以上の化合物との反応により、官能化を行った上記の親油性クレーである。
(X−R)nSi(−O−R’)p(R”)m (I)
式中、nは1〜3であり、mは0〜2であり、p≧1の条件下でp=4−n−mであり、
Rは、アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアリール基および対応するハロゲン化された物質から選択され、2〜30個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を有し、その際、少なくとも一個の水素原子がXにより置換されているか、またはRXは、UV安定化分子、ラジカル吸収剤または酸化防止剤に由来する残基であり、該残基は、一般式(I)の化合物中に存在するケイ素原子に、好ましくはウレイック(−NHCONH−)またはウレタン(−OCONH−)結合を通して、結合しており、
R’は、1〜6、好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R”は、Hおよび1〜6個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ−アルキル基から選択され、
Xは、−OH、−SH、−S−M+、−O−M+、−NHR1、エポキシド生成物、−N=C=O、−COOR1、ハロゲン、不飽和炭化水素、から選択され、M+は、Li+、Na+、K+から選択された金属陽イオンであり、R1は、水素原子、または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Xは、好ましくは−NH2、エポキシド生成物およびアルコールから選択され、上記の基は染色可能である。
【0028】
上記の官能化処理により、X基で官能化された親油性クレーを得ることができる。化合物(I)中に存在するO−R’基のために、事実、化合物(I)のアルコキシ−シラン基と薄層のOH表面との間の反応により、共有結合(X−R−Si−O−薄層)を形成し、−R−X基をケイ酸塩薄層に固定することができるので、特に安定している。該官能化は、非プロトン性極性溶剤、例えばDMF、中、温度60〜90℃で、8〜12時間で行うことができる。
【0029】
この官能化ならびにポリウレタン/親油性クレーおよびポリウレタン/官能化された親油性クレーナノ複合材料に関しては、Milan PolytechniqueおよびAlcantara SpAの連名による同時係属特許出願中に、より詳細に記載されている。
【0030】
いずれの場合も、親油性クレー自体または官能化された親油性クレーの量は、ポリウレタン単独に対して1〜12重量%、好ましくはポリウレタンに対して1〜6重量%である。
【0031】
本発明の方法の第一工程、すなわち海島型構造を有する極細繊維の製造およびそれに続く、該極細繊維から出発して極細繊維状フェルトの製造、は、当業者には周知の技術、例えば欧州特許第EP−A−0584511号、米国特許第US−A−3,716,614号および第US−A−3,531,368号に記載されている技術により行う。本発明で使用する極細繊維の島成分は、ヤーン番手が、起毛織布−不織布を、例えば外被表面に使用する場合0.3〜0.01デニール、好ましくは0.18〜0.1デニールであり、起毛織布−不織布を、例えば材料の軽さがより高いことを必要とする服地に使用する場合0.07〜0.01デニールである。極細繊維状フェルトに、熱水に可溶な結合剤、例えばポリビニルアルコール、を先ず含浸させ、続いてそこから海洋成分を上記特許中に記載の公知の方法により抽出する。
【0032】
工程(b)は、工程(a)の後に得られた極細繊維状フェルトに、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料または剥離した薄層状官能化親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料の溶液または分散液を含浸させ、続いてこれを凝固させることからなる。一実施態様では、工程(a)で製造された極細繊維状フェルトを、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料または剥離した薄層状官能化親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料の溶液または分散液中への一連の浸漬により、含浸させる。次いで、水中または水と非プロトン性溶剤、例えばDMF溶液中で、例えば20〜50℃の温度で凝固させる。この目的は、ポリウレタンナノ複合材料マトリックスを極細繊維に固定することである。都合上、我々は、工程(b)の後で得られた製品を「原料」と呼ぶ。
【0033】
本発明は、染色した起毛織布−不織布の製造方法であって、
(i)上記工程(b)の後で得た「原料」から出発し、厚さ約1mmのシートを製造し、前記切断シートの表面を研磨する工程、
(ii)工程(i)で製造したシートを、極細繊維状成分および/またはエラストマー状成分を染色することにより、染色する工程、および
(iii)所望により続いて行なう仕上げ処理
を含んでなる方法にも関する。
【0034】
上記の起毛織布−不織布は、ナノ複合材料エラストマー状マトリックスの量が10〜40重量%、好ましくは18〜35重量%である。
【0035】
工程(i)では、上記の工程(b)に記載するようにして製造した原料を、厚さ約1mmのシートに切断し、続いて前記切断シートの表面を研磨し、極細繊維状のふさを立てる。工程(i)は、公知の方法、例えば上記の特許に記載されている方法により行う。
【0036】
工程(ii)では、工程(i)で製造したシートを染色する。薄層状親油性クレーをポリウレタンマトリックス中に取り入れる(親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を形成する)場合、染色処理(工程ii)は、負に帯電した薄層とイオン系結合を形成し得る特殊な染料(塩基性染料)またはクレーの層間空間中に存在する「オニウム」イオンとイオン系結合を形成し得る特殊な染料(酸性染料)を使用して行うのが好ましい。
【0037】
官能化された薄層状親油性クレーをポリウレタンマトリックス中に取り入れる(官能化された親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を形成する)場合、染色処理(工程ii)は、反応性染料と呼ばれる、官能化されたクレー上に存在する官能基と共有結合を形成できる特殊な染料を使用して行うのが好ましい。このように結合された反応性染料は、極細繊維不織布をそのナノ複合材料マトリックス中で染色し、染色された極細繊維不織布に、水洗浄および石鹸−水洗浄の際の染料脱色に対する特に高い耐性を与えることができる。
【0038】
極細繊維がポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT))である場合、工程(ii)は、一つ以上の工程で行うことができる。極細繊維状成分の個別染色は、分散染料のような染料を使用し、エラストマー状成分の個別染色は、様々な種類の染料で行うことができる。親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料エラストマー状マトリックスが「オニウム」イオンを含み、クレーの薄層が最終的に負電荷を有する場合、酸性または塩基性染料を使用するのが好ましい。エラストマー状マトリックスが官能化された親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を含む場合、反応性染料を使用するのが好ましい。
【0039】
ポリエステル極細繊維を使用し、着色顔料で全体染色する場合、ナノ複合材料エラストマー状成分単独の染色に対応して、単一工程における極細繊維不織布の染色も可能である。
【0040】
反対に、極細繊維がポリアミド(例えばナイロン6、ナイロン6−6またはナイロン12)製である場合、単一染色工程を行うことができ、該工程は、複合材料の成分の両方(極細繊維およびナノ複合材料エラストマー状マトリックス)の染色を意図しており、この場合、反応性染料または酸性染料を使用する。反対に、極細繊維の染色に分散染料を使用するには、2工程製法(極細繊維およびポリウレタンナノ複合材料マトリックスの染色による)が必要である。
【0041】
染色した製品の光に対する高い安定性を確保するための、分散染料に好ましい化学構造はアントラキノン型である。
【0042】
該染色した製品の安定性は、染色工程の際にUV安定剤を使用することにより、さらに増加させることができ、UV安定剤は、染料と共に極細繊維に浸透することにより、染料自体の光分解に対する高い耐性を確保することができる。UV安定剤による同様の処理は、完成した製品に対しても、仕上げ処理により行うことができる。
【0043】
ポリエステル極細繊維の染色サイクルの第一染色工程では、繊維を、水溶性が低い染料(分散染料)、および染料を分散させ、繊維中への浸透性を促進する界面活性剤を含み、染料を繊維自体の内側に浸透させるのに好適なpH条件を有する水分散液と接触させる。ポリエステルをそのガラス転移温度より上に加熱し、染料が内側に拡散し易くなるように、通常は100〜140℃の温度を選択する。
【0044】
他方、ナノ複合材料マトリックスを染色するサイクルは、クレー上および分散染料上に存在する反応基の性質に応じて、該極細繊維状複合材料を20〜100℃の様々な温度および4〜10のpH値に合わせることにより、行うことができる。染色工程の持続時間も、染料の種類、および官能化されている場合、クレー上に存在する官能基、およびマトリックスの形態(高または低多孔度)によって異なる。持続時間は、通常、20分から1〜2時間である。
【0045】
染色処理に加えて、その後に仕上げ処理を行い、さらに特殊な特性、例えば柔らかな感触、を与えることができる。仕上げ処理の種類の中で、完成した製品の処理、例えば、他の基材との結合、印刷、エンボス加工、張り合わせ、射出成形および熱成形、を、温度250℃までの加熱下で、該処理を加熱下で行うのに厳密に必要な時間、行う可能性も考えられる。
【0046】
親油性クレー自体または反応性官能基の導入により官能化されたクレーを使用することにより、他の様々な利点を得ることもできる。本発明の方法により、染料のみならず、他の種類の添加剤、例えばUV安定剤、難燃剤、防汚添加剤、も、これらの材料が、使用する官能化された親油性クレー上に存在する反応性官能基に、または親油性クレー自体を変性する「オニウム」イオンと結合し得る、という条件下で、より安定して(すなわち共有結合の形成により)固定することができる。
【0047】
本発明の方法には、極細繊維状複合材料の剛性をあまり増加させないという特徴がある。この特性は、全く予期せぬことであり、製品が変化していないという感覚的特性、すなわちこの種の製品に特に高く評価される特性を維持するのに、特に重要であることが立証される。
【0048】
本発明の方法により、官能化された親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を形成する前に式(I)を有する化合物に、あるいは、複合材料のエラストマー状マトリックスがポリウレタン/親油性クレーナノ複合材料またはポリウレタン/官能化された親油性クレーナノ複合材料からなるという条件下で、染色していない、またはすでに染色した複合材料極細繊維状織−不織布に、直接固定することにより、極細繊維状複合材料上に添加剤(例えば、UV安定剤および防汚剤)を導入することができる。
【実施例】
【0049】
下記の例は、本発明をより深く理解するために記載する。
【0050】
材料の説明
下記の例では、極細繊維の製造にポリエチレンテレフタレート(以下、PET)、エラストマー状マトリックスとしてポリウレタン(以下、PU)およびアンモニウム陽イオンで変性したクレーを、それ自体で、または反応性官能基を含む懸垂鎖で官能化された形態(本発明)で、使用する。
【0051】
PET極細繊維は、海島型の2成分複合紡糸により製造し、その際、本方法の(a)項の説明に記載した特許に広範囲に例示した方法により、PET(島成分)をポリスチレン(海洋成分)の存在下で紡糸する。これらの例で使用するPUは、4,4’メチレン−ビス−(フェニルイソシアネート)(以下、MDI)から出発し、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、MDF)中での合成により、製造した芳香族ポリウレタンであり、その際、MDIとジオール重合体(以下、ポリオール)の反応により得たプレポリマーを、上記特許(欧州特許第EP−A−0584511号、第EP−A−1323859号)にすでに記載したように、水を加えて延長する。使用するポリオールは、PU1として定義するポリウレタンにはPHC(MW2,000)およびPNA(MW2,000)、PU2として定義するポリウレタンにはPTMG(MW2,000)およびPCL(MW2,000)である。
【0052】
使用するクレーは、層間金属陽イオンを第4級アンモニウム塩で置換することにより変性したモンモリロン石である。特に、市販のモンモリロン石Dellite(登録商標)43B(Laviosa Chimica Mineraria SpA)を使用した。Dellite(登録商標)43Bは、タロウベンジルジメチルアンモニウムイオンを含む親油性モンモリロン石である。
【0053】
分散染料Rosso Dianix(登録商標)EFB(Disperse Red 60)、Dystarから市販、およびGiallo Terasil(登録商標)4G(Disperse Yellow 211)、Cibaから市販、を極細繊維の染色に使用し、酸性染料Rosso Telon(登録商標)FI(Acid Red 337)および塩基性染料Rosa Astrazon(登録商標)FG(Basic Red 13)、Dystarから市販、および反応性染料Cibacron(登録商標)Navy FN-B(Reactive Blue 238)およびBlue Lanasol(登録商標)3R(Reactive Blue 50)、Cibaから市販、をナノ複合材料マトリックスの染色に使用した。例で使用した反応性染料はCiba製のTinuvin(登録商標)213である。安定化添加剤Irganox(登録商標)1010およびTinuvin(登録商標)326もCiba製である。
【0054】
例1 ポリウレタン−尿素系ポリエステルPU1の製造(塊状重合したもの)
共に分子量が2,000であるPHC266gおよびPNA114gを、窒素加圧した2.5リットル反応器中、65℃で、攪拌しながら、MDI139.4gと、イソシアネート/ジオールのモル比2.9/1で反応させた。反応開始から3時間後、こうして得られたプレポリマーを温度45℃に冷却し、含水量0.03%のDMFで、遊離NCO含有量1.46%で25%プレポリマーの溶液が得られるまで希釈した。温度を45℃に維持し、DBA3.1gおよび水5.9gをDMF117.5gに溶解させた液を5分間かけて徐々に加え、分子量43,000のポリウレタン−ポリ尿素を形成した。温度を65℃に上げた後、反応器をさらに8時間攪拌し、最後に、経時的に安定した、20℃における粘度21,000mPa.secのポリウレタン−尿素溶液が得られた。
【0055】
例2 ポリウレタン−尿素系ポリエステルPU1の製造(重合は溶液中で行う)
予備重合反応をDMFの存在下で行う以外は、例1と同じ手順に従った。共に分子量が2,000であるPHC266gおよびPNA114gを、窒素加圧した2.5リットル反応器中、45℃で、攪拌しながら、MDI139.6gと、イソシアネート/ジオールのモル比2.9/1で、含水量0.03%のDMFの存在下で反応させ、プレポリマーの30%溶液を得た。試薬接触から3時間後、NCO含有量1.66%の希釈されたプレポリマーが得られた。次いで、DBA3.1gおよび水5.9gをDMF305gに溶解させた液を10分間かけて徐々に加え、分子量43,000のポリウレタン−ポリ尿素を形成した。温度を65℃に上げた後、反応器をさらに8時間攪拌し、最後に、経時的に安定した、20℃における粘度20,000mPa.secのポリウレタン−尿素溶液が得られた。
例3 ポリウレタン−尿素系ポリエーテル/ポリエステルPU2の製造
共に分子量が2,000であるPTMG285gおよびPCL95gを、窒素加圧した2.5リットル反応器中、65℃で、攪拌しながら、MDI134gと、イソシアネート/ジオールのモル比2.8/1で反応させた。反応開始から3時間後、こうして得られたプレポリマーを温度45℃に冷却し、含水量0.03%のDMFで、遊離NCO含有量1.39%で25%プレポリマーの溶液が得られるまで希釈した。温度をなお45℃に維持し、DBA8.6gおよび水5.1gをDMF119gに溶解させた液を5分間かけて徐々に加え、分子量15,000のポリウレタン−ポリ尿素を形成した。温度を65℃に上げた後、反応器をさらに8時間攪拌し、最後に、経時的に安定した、20℃における粘度23,000mPa.secのポリウレタン−尿素溶液が得られた。
【0056】
例4 ポリウレタン/クレーナノ複合材料の溶液挿入方法による製造
磁気攪拌機を備えた2リットルビーカー中にDellite(登録商標)43Bを7g秤量して採り、DMF150gを加えた。この分散液を2〜3時間攪拌し、次いで、ポリウレタンPU1またはPU2843gのDMF溶液、重合体16.6重量%(例1〜3参照)、を加えた。溶液をさらに12〜14時間攪拌してから使用した。こうして形成された分散液は、重合体14重量%および重合体に対してクレー5重量%を含み、総乾燥分含有量が14.74%であった。
【0057】
例5 ナノ複合材料ポリウレタン/アミノ基、エポキシ基で官能化され、UV安定剤を含むか、または他の種類の官能基で官能化されたクレーの製造、溶液挿入方法を使用する
例4に記載する手順と同じ手順を採用するが、今回は、市販の親油性クレー自体の代わりに、官能化されたDellite(登録商標)43Bクレーを使用し、官能化されたクレーを、DMF中に分散させる前に、およびいずれの場合も、ポリウレタンのDMF溶液を分散したクレーに加える前に、細かく粉末化させるように注意した。こうして得られた分散液は、原料の製造に使用するまで、攪拌していなければならない。Ciba製のUV安定剤Tinuvin(登録商標)213から出発して、UV安定剤を含む官能化されたDellite(登録商標)43Bクレーを製造した。官能化されたクレーの製造方法は、AlcantaraおよびMilan Polytechniqueの連名による同時係属特許出願中に記載されている。
【0058】
例6 原料極細繊維不織布の製造
ポリスチレンマトリックス中のPET極細繊維(0.10〜0.11デニール)からなる、下記の特性、すなわち3.8デニール、長さ51mm、5捲縮/cm、伸張比2.5/1、を有するフロック繊維を製造する。特に、この繊維は、ポリエチレンテレフタレート極細繊維57重量部、ポリスチレンマトリックス40重量部およびポリスチレンマトリックス中に含まれるポリエチレングリコール3重量部から製造されている。
【0059】
断面で観察すると、この繊維は、ポリスチレンマトリックス中に包み込まれたPET極細繊維16本が存在することを示している。原料フェルトは、フロック繊維を使用して製造し、これを針−打ち抜き加工にかけ、密度0.185g/cm3を有する針−打ち抜き加工されたフェルトを形成する。この針−打ち抜き加工されたフェルトをポリビニルアルコール20重量%水溶液中に浸漬し、次いで乾燥させる。続いて、このように処理した針−打ち抜き加工されたフェルトを、トリクロロエチレン中に、繊維のポリスチレンマトリックスが完全に溶解するまで浸漬し、PET極細繊維製の織−不織布を形成する。次いで、こうして形成された織−不織布を乾燥させ、D1フェルトと呼ばれる中間製品を得る。
【0060】
例1〜5で製造したエラストマー溶液を、Irganox(登録商標)1010を5.1gおよびTinuvin(登録商標)326を15.4g含むDMFで希釈し、14重量%溶液を形成した。こうして製造した溶液のフィルムを水中凝固させることにより、高多孔度を有する重合体が得られる。
【0061】
フェルトD1を例1〜5のエラストマー溶液中に浸漬し、このように含浸させた織−不織布を、先ず一対のロール間に通して絞り、続いて温度40℃に維持した水浴中に1時間浸漬する。こうして得られた凝固したシートを80℃に加熱した水浴中に通し、残留溶剤およびポリビニルアルコールを抽出する。乾燥後、ナノ複合エラストマー状マトリックス32%を含む複合材料極細繊維状シートが得られるので、これを厚さ1mmのシートに切断し、研磨にかけ、ふさを立てる。その後の染色処理に即かけられる厚さ0.8mmの原料極細繊維状織−不織布が得られる。
【0062】
例7 分散染料による極細繊維状織−不織布の染色
例6で製造した原料を、分散染料Rosso Dianix EFBを原料の合成極細繊維状織−不織布に対して0.3重量%の量で含む水性染料浴中、120℃で1時間操作することにより、染色にかける。処理の後、仕上がった、染色された合成シャモアレザーが得られ、これを塩基性環境中、還元条件下で、ハイドロサルファイトでさらに処理し、過剰の固定されていない染料を除去した後、染料の、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する耐性の評価試験にかける。
【0063】
下記の表に示す、染色した極細繊維不織布に関する評価は、下記のように行った。
a)試験試料(洗浄用の多繊維フェルトおよび摩擦用の布地)に対する染料の放出に関する限り、汚れをグレー尺度ISO105A03との比較で評価する。
b)試験前後の試料の色合い変化に関する限り、ISO105A02グレー尺度を使用する。
c)適切なグレー尺度を使用する標準的なコントラストにより、評価5は色合いまたは色移りに変化が無いことに対応し、1の評価は、使用するグレー尺度に現れる最大コントラストに対応する。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
例8 酸性染料による、極細繊維不織布(ポリウレタン/クレーナノ複合材料で含浸)のエラストマー状成分の染色
原料を、例6に記載するように、全体染色したPETから出発し、例4で製造したポリウレタン/クレーナノ複合材料を使用して製造した。ポリウレタンナノ複合材料マトリックスの染色は、酸性染料Rosso FL Telonを原料極細繊維不織布に対して3重量%の量で含むpH7の水性染色浴中、80℃で45分間操作することにより行う。
【0067】
処理の後、ポリウレタン部分で染色された極細繊維不織布が得られ、これを、界面活性剤を使用し、65℃で20分間洗浄し、過剰の固定されていない染料を除去した後、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
例9 塩基性染料による、極細繊維不織布(ポリウレタン/クレーナノ複合材料で含浸)のエラストマー状成分の染色
原料を、例6に記載するように、全体染色したPETから出発し、例4で製造したポリウレタン/クレーナノ複合材料を使用して製造した。ポリウレタンナノ複合材料マトリックスの染色は、塩基性染料Astrazon Rosa FGを原料の合成極細繊維状織−不織布に対して3重量%の量で含むpH4.5の水性染色浴中、80℃で1時間操作することにより行う。
【0070】
処理の後、ポリウレタン部分で染色された極細繊維不織布が得られ、これを、界面活性剤を使用し、65℃で20分間洗浄し、過剰の染料を除去し、仕上げを行った後、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
例10 反応性染料による、極細繊維不織布の官能化されたナノ複合材料マトリックスの染色
原料を、例6に記載するように、全体染色したPETから出発し、例5で製造した、ナノ複合材料ポリウレタン/アミノ基で官能化されたクレーを使用して製造した。
【0073】
エラストマー状ナノ複合材料マトリックスの染色は、反応性染料Cibacron(登録商標)Navy FN-Bを使用し、下記の条件下で行う。
1.原料製品を、NaCl60g/lを含む、3%染料の食塩水溶液を使用し、80℃で30分間処理、および
2.染料の反応性形態を除去できるNa2CO3 18g/lの溶液を加えて得られる、60℃における原料製品の染色。
【0074】
処理の後、ポリウレタン部分で染色された極細繊維不織布が得られ、これを、界面活性剤を使用し、80℃で20分間洗浄し、過剰の固定されていない染料を除去した後、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
同様に、原料の別の部分を、ナノ複合エラストマー状マトリックスで、反応性染料Lanasol(登録商標)Blue 3Rで、pH8.5の3%染料水溶液ヲ使用し、80℃で1時間染色した。
【0077】
処理の後、ポリウレタン部分で染色された極細繊維不織布が得られ、これを、界面活性剤を使用し、80℃で20分間洗浄し、過剰の固定されていない染料を除去した後、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0078】
【表6】
【0079】
反応性染料による染色は、全体染色したPETから出発し、例6に記載するようにして、ただし、ポリウレタン/エポキシド基を含む官能化されたクレーのナノ複合材料マトリックス(例5に記載するようにして製造した)を使用して製造した極細繊維不織布にも行った。反応性染料で染色処理する前に、水性アルカリ性環境で行うエポキシ環を開くための処理(pH10、温度80℃で20分間)を行い、染料の洗浄および摩擦に対する耐性に関して、前の結果と類似の結果を得た。
【0080】
例11 極細繊維不織布の、反応性染料(官能化されたナノ複合材料マトリックス)および分散染料(繊維)による染色
例5に記載するようにして製造したエラストマー状ナノ複合材料ポリウレタン/アミノ基で官能化されたクレーを使用し、例6に記載するようにして製造した原料を、そのナノ複合材料エラストマー状マトリックスで、Cibacron Navy FN-Bを使用し、前の例ですでに説明したように染色した。
【0081】
染色された原料を、界面活性剤を使用し、80℃で20分間洗浄し、固定されていない染料を除去した後、その繊維成分を、分散染料Rosso Dianix E-FBを使用し、例7ですでに説明した条件下で染色した。ナノ複合材料エラストマー状マトリックスを反応性染料で、および繊維成分を分散染料で染色した後、得られた原料製品は、繊維の色とエラストマー状マトリックスの色の間の中間色を有する(バイオレット色が得られる)。次いで、染色した極細繊維不織布を、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0082】
【表7】
【0083】
例12 ナノ複合材料PU2/UV安定剤で官能化されたクレーを使用する、極細繊維不織布の原料製品の製造
例5に記載するようにして製造されたエラストマー状ナノ複合材料PU2/UV安定剤で官能化されたクレーで、例6に記載するようにして、原料製品を製造したが、この場合、含浸溶液で添加剤Tinuvin' 326(UV安定剤)の添加を省略する。
【0084】
例13 ポリウレタン/UV安定剤で官能化されたクレーのナノ複合材料を含む原料製品の促進UVエージング試験
繊維およびナノ複合材料PU2/例12のUV安定剤で官能化されたクレーを基材とする原料製品中に導入された安定剤の効果を評価するために、比較試料として、UV安定剤Tinuvin(登録商標)326を添加せずに製造したPU2自体の原料製品を使用し、極細繊維不織布の試料をUV促進エージング試験にかけた。採用した条件は、規格DIN75202(PV1303)に規定される条件、特に
・チャンバー相対湿度=20±10%
・照射=60W/m2(積算300〜400nm)
・黒色パネル温度=100±3℃
・チャンバー温度=65±3℃
・露出持続時間=1Fakra(10MJ/m2)
である。
【0085】
クレーに結合した安定剤を含む原料製品は、添加剤を含まない比較試料よりも黄変度がはるかに低いので、この試験に対する耐性がはるかに高く、優れた物理的−機械的特性を有することが立証される。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、極細繊維状部分とエラストマー/薄層状クレー、好ましくはポリウレタン/薄層状クレーのナノ複合材料マトリックスとを含んでなり、この薄層状クレーが、親油性クレーおよび官能化された親油性クレーから選択される、複合材料に関する。
【0002】
本発明は、上記の複合材料を出発材料として得られる起毛織布−不織布および染色した起毛織布−不織布にも関する。
【背景技術】
【0003】
上記極細繊維のポリウレタン成分は、布地用の他の重合体、例えばポリエステルやナイロン程容易に染色できないことが知られている。さらに、染色した後、これらのポリウレタン材料は、水洗および摩擦に対する染料の安定性が乏しい。
【0004】
ポリウレタンマトリックスの染色性を増加させるための試みがなされている。例えば、欧州特許第EP−A−0662981号および特公平6−207381号には、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリアミド(ナイロン6またはナイロン6−6)および第3級アミン単位を鎖中に含むポリウレタン−尿素を基材とし、この第3級アミン単位が、ポリウレタンを形成するポリオールポリエステルの一部である、極細繊維を使用して製造された、起毛織布−不織布(以下、極細繊維不織布ともいう。)の製造が開示されている。従って、極細繊維不織布は、極細繊維状成分において(分散染料で)染色されるだけではなく、ポリウレタン成分においても、反応性染料(それ自体を、ポリウレタン鎖中に存在するアミンおよびアミド基に化学結合することができる)、酸性染料、予備含金属染料(それ自体を、イオン系および配位結合の形成により、結合させることができる)を使用して染色される。
【0005】
しかしながら、この技術には、ポリウレタンの処方による欠点がある。鎖中のアミン基が、実際、ポリウレタンの合成中に好ましくない塩基性触媒反応効果を引き起こすことがある。
【特許文献1】欧州特許第EP−A−0662981号
【特許文献2】特公平6−207381号
【発明の概要】
【0006】
ここで、合成に影響を及ぼさずに、染料分子を安定して固定することができるので、該欠点を解決する製法が見出された。
【0007】
最後に、本発明の製法は、先行技術の製法よりはるかに簡単であり、染料のみならず、他の種類の添加剤、例えばUV安定剤、難燃剤、防汚添加剤、も、より安定して固定することができる。
【0008】
そこで、本発明は、合成極細繊維から選択される極細繊維とエラストマー/薄層状クレーのナノ複合材料マトリックスとを含んでなり、前記薄層状クレーが、親油性薄層状クレーおよび官能化された親油性薄層状クレーから選択される、複合材料の製造方法であって、
(a)海島型構造を有する極細繊維を製造し、続いて、該極細繊維から出発して極細繊維状フェルトを形成する工程、および
(b)前記極細繊維状フェルトを、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を不活性溶剤中に入れた分散液、または官能化された、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を不活性溶剤中に入れた分散液で含浸させ、続いて凝固させて、本発明の複合材料を得る工程、
を含んでなる方法に関する。
【0009】
極細繊維に関する限り、これらの材料は、ポリスチレン系極細繊維(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド(例えばナイロン6、ナイロン6−6およびナイロン12)、ポリアクリロニトリル、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリアミドナイロン6およびナイロン6−6、より好ましくはポリエチレンテレフタレートから選択される。
【0010】
好ましい実施態様では、エラストマーはポリウレタンである。
【0011】
用語「ポリウレタン」は、可撓性部分(軟質部分)および合成部分(硬質部分)からなる重合体を意味する。
【0012】
可撓性部分は、下記の物質を基剤とする重合体鎖でよい。
・ポリエーテル、例えばポリテトラメチレングリコールジオール(PTMG)、ポリエチレングリコールジオール(PEG)、ポリプロピレングリコールジオール(PPG)から誘導されるポリエーテル。
・ポリエステル、例えばアジピン酸のエステル、例えばポリヘキサメチレンアジペートジオール(PHA)、ポリ(3−メチルペンタメチレン)アジペートジオール(PMPA)、またはポリネオペンチルアジペートジオール(PNA)。他のポリエステルは、環状分子、例えばカプロラクトンの開環により製造できる(これによってジオールポリカプロラクトン、略してPCL、を得る)。
・ポリカーボネート、例えばポリヘキサメチレンカーボネートジオール(PHC)、ポリペンタメチレンカーボネートジオール(PPMC)、ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオール(PMPC)、ポリテトラメチレンカーボネートジオール(PTMC)、それらの混合物および共重合体。
【0013】
上記のポリエーテルおよびポリエステルの共重合により形成されるポリエステル、ならびにポリエステルおよびポリカーボネートの共重合により得られるポリエステル−コ−ポリカーボネートも、可撓性部分として使用できる。
【0014】
例でポリウレタンの合成に使用するポリオールは、通常、数平均分子量が1000〜3000、好ましくは1750〜2250である。
【0015】
剛性部分とは、重合体鎖の、有機ジイソシアネート、例えばメチレン−ビス−(4−フェニルイソシアネート)(MDI)またはトルエンジイソシアネート(TDI)と、ジアミンもしくはグリコール鎖との反応から誘導される部分を意味する。実際、ポリウレタン合成の完了を、ジアミンで行い、ポリウレタン−尿素が得られるか、またはグリコールで行い、文字通りポリウレタンが得られることは良く知られている。
【0016】
ポリウレタン−尿素の製造における連鎖延長剤(chain extender)として使用できるジアミンは、脂肪族物質の中では、エチレンジアミン(EDA)、1,3−シクロヘキサンジアミン(1,3−CHDA)、1,4−シクロヘキサンジアミン(1,4−CHDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、1,3−プロピレンジアミン(1,3−PDA)、2−メチルペンタメチレンジアミン(MPDA)、1,2−プロピレンジアミン(1,2−PDA)、およびそれらの混合物である。連鎖延長剤として使用する芳香族ジアミンの典型的な例は、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、メチレン−ビス(4−フェニルアミン)(MPA)、2,4−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン、2,4−ジアミノ−3,5−ジ(メチルチオ)トルエンである。該脂肪族および/または芳香族ジアミンは、それ自体で加えるか、または対応するイソシアネートと水との反応により、その場で発生させることができる。ポリウレタンにおける適切な意味での連鎖延長は、ジオール、例えばエチレングリコール、テトラメチレングリコールおよび関連する混合物、でも得ることができる。最後に、連鎖延長は、ジカルボン酸、例えばマロン酸、コハク酸およびアジピン酸で行うこともできる。
【0017】
ポリウレタンおよびポリウレタン尿素の製造に使用される反応は、通常、非プロトン性不活性溶剤、例えばジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、の中で行われる。上記の製造は、当業者には良く知られている。
【0018】
用語「剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料」は、ポリウレタンまたはポリウレタン−尿素(以下、特に指示がない限り、一般的な用語「ポリウレタン」とも呼ぶ)と、挿入された、または薄片状に剥離された構造が形成されるまで、緊密に混合した薄層状親油性クレーの分散物に関する。
【0019】
用語「薄層状親油性クレー」は、薄層上に陰電荷および層間空間に無機陽イオンを有し、層間の間隔およびこれらの化学種中に挿入される重合体の相容性を増大させるために、該陽イオンが有機「オニウム」イオンで置換されている、薄層状ケイ酸塩(フィロケイ酸塩)を意味する。
【0020】
薄層状ケイ酸塩は、層間に、水分子、アルコール、ケトン、脂肪族、環状または芳香族アミン、もしくは他の極性物質を取り込み、その結果、膨潤することができる。
【0021】
薄層状ケイ酸塩は、三重層構造を有することもでき、その際、各薄層は、シリカを基剤とする二つの四面体層間に位置する、マグネシウムまたはアルミニウムを基剤とする八面体層からなる。
【0022】
薄層状ケイ酸塩の例は、スメクチッククレー、例えばモンモリロン石、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、エクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、バーミキュル石、ソーコナイト、マガダイト(magadite)、ケニアタイト(keniatite)、または上記クレーの置換体または誘導体、および関連する混合物である。好ましい薄層状クレーは、モンモリロン石、ベントナイトおよび関連する混合物から選択される。
【0023】
薄層状親油性クレー中に存在する「オニウム」イオンは、第1級、第2級、第3級または第4級アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、イミダゾリニウム化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物、から選択される。「オニウム」化合物の好ましい例は、タロウ−アルキル−ビス(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、タロウ−アルキル−ビス(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウムイオン、(タロウ水素化アルキル)2−エチルヘキシルジメチルアンモニウムイオン、ビス(タロウ水素化アルキル)ジメチルアンモニウムイオン、ビス(タロウ水素化アルキル)メチルアンモニウムイオン、および(タロウ水素化アルキル)ベンジルジメチルアンモニウムイオンである。
【0024】
用語「タロウ」は、ウシおよび/またはヒツジの脂肪組織に由来する脂肪物質を意味する。タロウは、グリセリドの形態で、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、およびリノール酸を、少量の他の脂肪酸およびコレステロールと共に含む。タロウの最も知られている特徴は、その凝固点が40〜46℃であることである。用語タロウ−アルキルまたは水素化タロウ−アルキルは、商業的用語であり、通常、タロウに由来するC16〜C18アルキル基の混合物を意味する。
【0025】
市販されてもいる薄層状親油性クレー(従って、有機「オニウム」イオンを含む)の典型的な例は、タロウ−ベンジルジメチルアンモニウム陽イオンまたは(タロウ水素化)ベンジルジメチルアンモニウム陽イオンを含む親油性モンモリロン石である。
【0026】
薄層状親油性クレー層間距離が少なくとも17Åである。該距離は、X線回折により効率的に測定することができる。
【0027】
官能化された親油性クレーに関する限り、これらの物質は、一般式(I)を有する化合物から選択された一種以上の化合物との反応により、官能化を行った上記の親油性クレーである。
(X−R)nSi(−O−R’)p(R”)m (I)
式中、nは1〜3であり、mは0〜2であり、p≧1の条件下でp=4−n−mであり、
Rは、アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアリール基および対応するハロゲン化された物質から選択され、2〜30個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を有し、その際、少なくとも一個の水素原子がXにより置換されているか、またはRXは、UV安定化分子、ラジカル吸収剤または酸化防止剤に由来する残基であり、該残基は、一般式(I)の化合物中に存在するケイ素原子に、好ましくはウレイック(−NHCONH−)またはウレタン(−OCONH−)結合を通して、結合しており、
R’は、1〜6、好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R”は、Hおよび1〜6個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ−アルキル基から選択され、
Xは、−OH、−SH、−S−M+、−O−M+、−NHR1、エポキシド生成物、−N=C=O、−COOR1、ハロゲン、不飽和炭化水素、から選択され、M+は、Li+、Na+、K+から選択された金属陽イオンであり、R1は、水素原子、または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Xは、好ましくは−NH2、エポキシド生成物およびアルコールから選択され、上記の基は染色可能である。
【0028】
上記の官能化処理により、X基で官能化された親油性クレーを得ることができる。化合物(I)中に存在するO−R’基のために、事実、化合物(I)のアルコキシ−シラン基と薄層のOH表面との間の反応により、共有結合(X−R−Si−O−薄層)を形成し、−R−X基をケイ酸塩薄層に固定することができるので、特に安定している。該官能化は、非プロトン性極性溶剤、例えばDMF、中、温度60〜90℃で、8〜12時間で行うことができる。
【0029】
この官能化ならびにポリウレタン/親油性クレーおよびポリウレタン/官能化された親油性クレーナノ複合材料に関しては、Milan PolytechniqueおよびAlcantara SpAの連名による同時係属特許出願中に、より詳細に記載されている。
【0030】
いずれの場合も、親油性クレー自体または官能化された親油性クレーの量は、ポリウレタン単独に対して1〜12重量%、好ましくはポリウレタンに対して1〜6重量%である。
【0031】
本発明の方法の第一工程、すなわち海島型構造を有する極細繊維の製造およびそれに続く、該極細繊維から出発して極細繊維状フェルトの製造、は、当業者には周知の技術、例えば欧州特許第EP−A−0584511号、米国特許第US−A−3,716,614号および第US−A−3,531,368号に記載されている技術により行う。本発明で使用する極細繊維の島成分は、ヤーン番手が、起毛織布−不織布を、例えば外被表面に使用する場合0.3〜0.01デニール、好ましくは0.18〜0.1デニールであり、起毛織布−不織布を、例えば材料の軽さがより高いことを必要とする服地に使用する場合0.07〜0.01デニールである。極細繊維状フェルトに、熱水に可溶な結合剤、例えばポリビニルアルコール、を先ず含浸させ、続いてそこから海洋成分を上記特許中に記載の公知の方法により抽出する。
【0032】
工程(b)は、工程(a)の後に得られた極細繊維状フェルトに、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料または剥離した薄層状官能化親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料の溶液または分散液を含浸させ、続いてこれを凝固させることからなる。一実施態様では、工程(a)で製造された極細繊維状フェルトを、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料または剥離した薄層状官能化親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料の溶液または分散液中への一連の浸漬により、含浸させる。次いで、水中または水と非プロトン性溶剤、例えばDMF溶液中で、例えば20〜50℃の温度で凝固させる。この目的は、ポリウレタンナノ複合材料マトリックスを極細繊維に固定することである。都合上、我々は、工程(b)の後で得られた製品を「原料」と呼ぶ。
【0033】
本発明は、染色した起毛織布−不織布の製造方法であって、
(i)上記工程(b)の後で得た「原料」から出発し、厚さ約1mmのシートを製造し、前記切断シートの表面を研磨する工程、
(ii)工程(i)で製造したシートを、極細繊維状成分および/またはエラストマー状成分を染色することにより、染色する工程、および
(iii)所望により続いて行なう仕上げ処理
を含んでなる方法にも関する。
【0034】
上記の起毛織布−不織布は、ナノ複合材料エラストマー状マトリックスの量が10〜40重量%、好ましくは18〜35重量%である。
【0035】
工程(i)では、上記の工程(b)に記載するようにして製造した原料を、厚さ約1mmのシートに切断し、続いて前記切断シートの表面を研磨し、極細繊維状のふさを立てる。工程(i)は、公知の方法、例えば上記の特許に記載されている方法により行う。
【0036】
工程(ii)では、工程(i)で製造したシートを染色する。薄層状親油性クレーをポリウレタンマトリックス中に取り入れる(親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を形成する)場合、染色処理(工程ii)は、負に帯電した薄層とイオン系結合を形成し得る特殊な染料(塩基性染料)またはクレーの層間空間中に存在する「オニウム」イオンとイオン系結合を形成し得る特殊な染料(酸性染料)を使用して行うのが好ましい。
【0037】
官能化された薄層状親油性クレーをポリウレタンマトリックス中に取り入れる(官能化された親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を形成する)場合、染色処理(工程ii)は、反応性染料と呼ばれる、官能化されたクレー上に存在する官能基と共有結合を形成できる特殊な染料を使用して行うのが好ましい。このように結合された反応性染料は、極細繊維不織布をそのナノ複合材料マトリックス中で染色し、染色された極細繊維不織布に、水洗浄および石鹸−水洗浄の際の染料脱色に対する特に高い耐性を与えることができる。
【0038】
極細繊維がポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT))である場合、工程(ii)は、一つ以上の工程で行うことができる。極細繊維状成分の個別染色は、分散染料のような染料を使用し、エラストマー状成分の個別染色は、様々な種類の染料で行うことができる。親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料エラストマー状マトリックスが「オニウム」イオンを含み、クレーの薄層が最終的に負電荷を有する場合、酸性または塩基性染料を使用するのが好ましい。エラストマー状マトリックスが官能化された親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を含む場合、反応性染料を使用するのが好ましい。
【0039】
ポリエステル極細繊維を使用し、着色顔料で全体染色する場合、ナノ複合材料エラストマー状成分単独の染色に対応して、単一工程における極細繊維不織布の染色も可能である。
【0040】
反対に、極細繊維がポリアミド(例えばナイロン6、ナイロン6−6またはナイロン12)製である場合、単一染色工程を行うことができ、該工程は、複合材料の成分の両方(極細繊維およびナノ複合材料エラストマー状マトリックス)の染色を意図しており、この場合、反応性染料または酸性染料を使用する。反対に、極細繊維の染色に分散染料を使用するには、2工程製法(極細繊維およびポリウレタンナノ複合材料マトリックスの染色による)が必要である。
【0041】
染色した製品の光に対する高い安定性を確保するための、分散染料に好ましい化学構造はアントラキノン型である。
【0042】
該染色した製品の安定性は、染色工程の際にUV安定剤を使用することにより、さらに増加させることができ、UV安定剤は、染料と共に極細繊維に浸透することにより、染料自体の光分解に対する高い耐性を確保することができる。UV安定剤による同様の処理は、完成した製品に対しても、仕上げ処理により行うことができる。
【0043】
ポリエステル極細繊維の染色サイクルの第一染色工程では、繊維を、水溶性が低い染料(分散染料)、および染料を分散させ、繊維中への浸透性を促進する界面活性剤を含み、染料を繊維自体の内側に浸透させるのに好適なpH条件を有する水分散液と接触させる。ポリエステルをそのガラス転移温度より上に加熱し、染料が内側に拡散し易くなるように、通常は100〜140℃の温度を選択する。
【0044】
他方、ナノ複合材料マトリックスを染色するサイクルは、クレー上および分散染料上に存在する反応基の性質に応じて、該極細繊維状複合材料を20〜100℃の様々な温度および4〜10のpH値に合わせることにより、行うことができる。染色工程の持続時間も、染料の種類、および官能化されている場合、クレー上に存在する官能基、およびマトリックスの形態(高または低多孔度)によって異なる。持続時間は、通常、20分から1〜2時間である。
【0045】
染色処理に加えて、その後に仕上げ処理を行い、さらに特殊な特性、例えば柔らかな感触、を与えることができる。仕上げ処理の種類の中で、完成した製品の処理、例えば、他の基材との結合、印刷、エンボス加工、張り合わせ、射出成形および熱成形、を、温度250℃までの加熱下で、該処理を加熱下で行うのに厳密に必要な時間、行う可能性も考えられる。
【0046】
親油性クレー自体または反応性官能基の導入により官能化されたクレーを使用することにより、他の様々な利点を得ることもできる。本発明の方法により、染料のみならず、他の種類の添加剤、例えばUV安定剤、難燃剤、防汚添加剤、も、これらの材料が、使用する官能化された親油性クレー上に存在する反応性官能基に、または親油性クレー自体を変性する「オニウム」イオンと結合し得る、という条件下で、より安定して(すなわち共有結合の形成により)固定することができる。
【0047】
本発明の方法には、極細繊維状複合材料の剛性をあまり増加させないという特徴がある。この特性は、全く予期せぬことであり、製品が変化していないという感覚的特性、すなわちこの種の製品に特に高く評価される特性を維持するのに、特に重要であることが立証される。
【0048】
本発明の方法により、官能化された親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を形成する前に式(I)を有する化合物に、あるいは、複合材料のエラストマー状マトリックスがポリウレタン/親油性クレーナノ複合材料またはポリウレタン/官能化された親油性クレーナノ複合材料からなるという条件下で、染色していない、またはすでに染色した複合材料極細繊維状織−不織布に、直接固定することにより、極細繊維状複合材料上に添加剤(例えば、UV安定剤および防汚剤)を導入することができる。
【実施例】
【0049】
下記の例は、本発明をより深く理解するために記載する。
【0050】
材料の説明
下記の例では、極細繊維の製造にポリエチレンテレフタレート(以下、PET)、エラストマー状マトリックスとしてポリウレタン(以下、PU)およびアンモニウム陽イオンで変性したクレーを、それ自体で、または反応性官能基を含む懸垂鎖で官能化された形態(本発明)で、使用する。
【0051】
PET極細繊維は、海島型の2成分複合紡糸により製造し、その際、本方法の(a)項の説明に記載した特許に広範囲に例示した方法により、PET(島成分)をポリスチレン(海洋成分)の存在下で紡糸する。これらの例で使用するPUは、4,4’メチレン−ビス−(フェニルイソシアネート)(以下、MDI)から出発し、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、MDF)中での合成により、製造した芳香族ポリウレタンであり、その際、MDIとジオール重合体(以下、ポリオール)の反応により得たプレポリマーを、上記特許(欧州特許第EP−A−0584511号、第EP−A−1323859号)にすでに記載したように、水を加えて延長する。使用するポリオールは、PU1として定義するポリウレタンにはPHC(MW2,000)およびPNA(MW2,000)、PU2として定義するポリウレタンにはPTMG(MW2,000)およびPCL(MW2,000)である。
【0052】
使用するクレーは、層間金属陽イオンを第4級アンモニウム塩で置換することにより変性したモンモリロン石である。特に、市販のモンモリロン石Dellite(登録商標)43B(Laviosa Chimica Mineraria SpA)を使用した。Dellite(登録商標)43Bは、タロウベンジルジメチルアンモニウムイオンを含む親油性モンモリロン石である。
【0053】
分散染料Rosso Dianix(登録商標)EFB(Disperse Red 60)、Dystarから市販、およびGiallo Terasil(登録商標)4G(Disperse Yellow 211)、Cibaから市販、を極細繊維の染色に使用し、酸性染料Rosso Telon(登録商標)FI(Acid Red 337)および塩基性染料Rosa Astrazon(登録商標)FG(Basic Red 13)、Dystarから市販、および反応性染料Cibacron(登録商標)Navy FN-B(Reactive Blue 238)およびBlue Lanasol(登録商標)3R(Reactive Blue 50)、Cibaから市販、をナノ複合材料マトリックスの染色に使用した。例で使用した反応性染料はCiba製のTinuvin(登録商標)213である。安定化添加剤Irganox(登録商標)1010およびTinuvin(登録商標)326もCiba製である。
【0054】
例1 ポリウレタン−尿素系ポリエステルPU1の製造(塊状重合したもの)
共に分子量が2,000であるPHC266gおよびPNA114gを、窒素加圧した2.5リットル反応器中、65℃で、攪拌しながら、MDI139.4gと、イソシアネート/ジオールのモル比2.9/1で反応させた。反応開始から3時間後、こうして得られたプレポリマーを温度45℃に冷却し、含水量0.03%のDMFで、遊離NCO含有量1.46%で25%プレポリマーの溶液が得られるまで希釈した。温度を45℃に維持し、DBA3.1gおよび水5.9gをDMF117.5gに溶解させた液を5分間かけて徐々に加え、分子量43,000のポリウレタン−ポリ尿素を形成した。温度を65℃に上げた後、反応器をさらに8時間攪拌し、最後に、経時的に安定した、20℃における粘度21,000mPa.secのポリウレタン−尿素溶液が得られた。
【0055】
例2 ポリウレタン−尿素系ポリエステルPU1の製造(重合は溶液中で行う)
予備重合反応をDMFの存在下で行う以外は、例1と同じ手順に従った。共に分子量が2,000であるPHC266gおよびPNA114gを、窒素加圧した2.5リットル反応器中、45℃で、攪拌しながら、MDI139.6gと、イソシアネート/ジオールのモル比2.9/1で、含水量0.03%のDMFの存在下で反応させ、プレポリマーの30%溶液を得た。試薬接触から3時間後、NCO含有量1.66%の希釈されたプレポリマーが得られた。次いで、DBA3.1gおよび水5.9gをDMF305gに溶解させた液を10分間かけて徐々に加え、分子量43,000のポリウレタン−ポリ尿素を形成した。温度を65℃に上げた後、反応器をさらに8時間攪拌し、最後に、経時的に安定した、20℃における粘度20,000mPa.secのポリウレタン−尿素溶液が得られた。
例3 ポリウレタン−尿素系ポリエーテル/ポリエステルPU2の製造
共に分子量が2,000であるPTMG285gおよびPCL95gを、窒素加圧した2.5リットル反応器中、65℃で、攪拌しながら、MDI134gと、イソシアネート/ジオールのモル比2.8/1で反応させた。反応開始から3時間後、こうして得られたプレポリマーを温度45℃に冷却し、含水量0.03%のDMFで、遊離NCO含有量1.39%で25%プレポリマーの溶液が得られるまで希釈した。温度をなお45℃に維持し、DBA8.6gおよび水5.1gをDMF119gに溶解させた液を5分間かけて徐々に加え、分子量15,000のポリウレタン−ポリ尿素を形成した。温度を65℃に上げた後、反応器をさらに8時間攪拌し、最後に、経時的に安定した、20℃における粘度23,000mPa.secのポリウレタン−尿素溶液が得られた。
【0056】
例4 ポリウレタン/クレーナノ複合材料の溶液挿入方法による製造
磁気攪拌機を備えた2リットルビーカー中にDellite(登録商標)43Bを7g秤量して採り、DMF150gを加えた。この分散液を2〜3時間攪拌し、次いで、ポリウレタンPU1またはPU2843gのDMF溶液、重合体16.6重量%(例1〜3参照)、を加えた。溶液をさらに12〜14時間攪拌してから使用した。こうして形成された分散液は、重合体14重量%および重合体に対してクレー5重量%を含み、総乾燥分含有量が14.74%であった。
【0057】
例5 ナノ複合材料ポリウレタン/アミノ基、エポキシ基で官能化され、UV安定剤を含むか、または他の種類の官能基で官能化されたクレーの製造、溶液挿入方法を使用する
例4に記載する手順と同じ手順を採用するが、今回は、市販の親油性クレー自体の代わりに、官能化されたDellite(登録商標)43Bクレーを使用し、官能化されたクレーを、DMF中に分散させる前に、およびいずれの場合も、ポリウレタンのDMF溶液を分散したクレーに加える前に、細かく粉末化させるように注意した。こうして得られた分散液は、原料の製造に使用するまで、攪拌していなければならない。Ciba製のUV安定剤Tinuvin(登録商標)213から出発して、UV安定剤を含む官能化されたDellite(登録商標)43Bクレーを製造した。官能化されたクレーの製造方法は、AlcantaraおよびMilan Polytechniqueの連名による同時係属特許出願中に記載されている。
【0058】
例6 原料極細繊維不織布の製造
ポリスチレンマトリックス中のPET極細繊維(0.10〜0.11デニール)からなる、下記の特性、すなわち3.8デニール、長さ51mm、5捲縮/cm、伸張比2.5/1、を有するフロック繊維を製造する。特に、この繊維は、ポリエチレンテレフタレート極細繊維57重量部、ポリスチレンマトリックス40重量部およびポリスチレンマトリックス中に含まれるポリエチレングリコール3重量部から製造されている。
【0059】
断面で観察すると、この繊維は、ポリスチレンマトリックス中に包み込まれたPET極細繊維16本が存在することを示している。原料フェルトは、フロック繊維を使用して製造し、これを針−打ち抜き加工にかけ、密度0.185g/cm3を有する針−打ち抜き加工されたフェルトを形成する。この針−打ち抜き加工されたフェルトをポリビニルアルコール20重量%水溶液中に浸漬し、次いで乾燥させる。続いて、このように処理した針−打ち抜き加工されたフェルトを、トリクロロエチレン中に、繊維のポリスチレンマトリックスが完全に溶解するまで浸漬し、PET極細繊維製の織−不織布を形成する。次いで、こうして形成された織−不織布を乾燥させ、D1フェルトと呼ばれる中間製品を得る。
【0060】
例1〜5で製造したエラストマー溶液を、Irganox(登録商標)1010を5.1gおよびTinuvin(登録商標)326を15.4g含むDMFで希釈し、14重量%溶液を形成した。こうして製造した溶液のフィルムを水中凝固させることにより、高多孔度を有する重合体が得られる。
【0061】
フェルトD1を例1〜5のエラストマー溶液中に浸漬し、このように含浸させた織−不織布を、先ず一対のロール間に通して絞り、続いて温度40℃に維持した水浴中に1時間浸漬する。こうして得られた凝固したシートを80℃に加熱した水浴中に通し、残留溶剤およびポリビニルアルコールを抽出する。乾燥後、ナノ複合エラストマー状マトリックス32%を含む複合材料極細繊維状シートが得られるので、これを厚さ1mmのシートに切断し、研磨にかけ、ふさを立てる。その後の染色処理に即かけられる厚さ0.8mmの原料極細繊維状織−不織布が得られる。
【0062】
例7 分散染料による極細繊維状織−不織布の染色
例6で製造した原料を、分散染料Rosso Dianix EFBを原料の合成極細繊維状織−不織布に対して0.3重量%の量で含む水性染料浴中、120℃で1時間操作することにより、染色にかける。処理の後、仕上がった、染色された合成シャモアレザーが得られ、これを塩基性環境中、還元条件下で、ハイドロサルファイトでさらに処理し、過剰の固定されていない染料を除去した後、染料の、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する耐性の評価試験にかける。
【0063】
下記の表に示す、染色した極細繊維不織布に関する評価は、下記のように行った。
a)試験試料(洗浄用の多繊維フェルトおよび摩擦用の布地)に対する染料の放出に関する限り、汚れをグレー尺度ISO105A03との比較で評価する。
b)試験前後の試料の色合い変化に関する限り、ISO105A02グレー尺度を使用する。
c)適切なグレー尺度を使用する標準的なコントラストにより、評価5は色合いまたは色移りに変化が無いことに対応し、1の評価は、使用するグレー尺度に現れる最大コントラストに対応する。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
例8 酸性染料による、極細繊維不織布(ポリウレタン/クレーナノ複合材料で含浸)のエラストマー状成分の染色
原料を、例6に記載するように、全体染色したPETから出発し、例4で製造したポリウレタン/クレーナノ複合材料を使用して製造した。ポリウレタンナノ複合材料マトリックスの染色は、酸性染料Rosso FL Telonを原料極細繊維不織布に対して3重量%の量で含むpH7の水性染色浴中、80℃で45分間操作することにより行う。
【0067】
処理の後、ポリウレタン部分で染色された極細繊維不織布が得られ、これを、界面活性剤を使用し、65℃で20分間洗浄し、過剰の固定されていない染料を除去した後、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
例9 塩基性染料による、極細繊維不織布(ポリウレタン/クレーナノ複合材料で含浸)のエラストマー状成分の染色
原料を、例6に記載するように、全体染色したPETから出発し、例4で製造したポリウレタン/クレーナノ複合材料を使用して製造した。ポリウレタンナノ複合材料マトリックスの染色は、塩基性染料Astrazon Rosa FGを原料の合成極細繊維状織−不織布に対して3重量%の量で含むpH4.5の水性染色浴中、80℃で1時間操作することにより行う。
【0070】
処理の後、ポリウレタン部分で染色された極細繊維不織布が得られ、これを、界面活性剤を使用し、65℃で20分間洗浄し、過剰の染料を除去し、仕上げを行った後、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
例10 反応性染料による、極細繊維不織布の官能化されたナノ複合材料マトリックスの染色
原料を、例6に記載するように、全体染色したPETから出発し、例5で製造した、ナノ複合材料ポリウレタン/アミノ基で官能化されたクレーを使用して製造した。
【0073】
エラストマー状ナノ複合材料マトリックスの染色は、反応性染料Cibacron(登録商標)Navy FN-Bを使用し、下記の条件下で行う。
1.原料製品を、NaCl60g/lを含む、3%染料の食塩水溶液を使用し、80℃で30分間処理、および
2.染料の反応性形態を除去できるNa2CO3 18g/lの溶液を加えて得られる、60℃における原料製品の染色。
【0074】
処理の後、ポリウレタン部分で染色された極細繊維不織布が得られ、これを、界面活性剤を使用し、80℃で20分間洗浄し、過剰の固定されていない染料を除去した後、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
同様に、原料の別の部分を、ナノ複合エラストマー状マトリックスで、反応性染料Lanasol(登録商標)Blue 3Rで、pH8.5の3%染料水溶液ヲ使用し、80℃で1時間染色した。
【0077】
処理の後、ポリウレタン部分で染色された極細繊維不織布が得られ、これを、界面活性剤を使用し、80℃で20分間洗浄し、過剰の固定されていない染料を除去した後、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0078】
【表6】
【0079】
反応性染料による染色は、全体染色したPETから出発し、例6に記載するようにして、ただし、ポリウレタン/エポキシド基を含む官能化されたクレーのナノ複合材料マトリックス(例5に記載するようにして製造した)を使用して製造した極細繊維不織布にも行った。反応性染料で染色処理する前に、水性アルカリ性環境で行うエポキシ環を開くための処理(pH10、温度80℃で20分間)を行い、染料の洗浄および摩擦に対する耐性に関して、前の結果と類似の結果を得た。
【0080】
例11 極細繊維不織布の、反応性染料(官能化されたナノ複合材料マトリックス)および分散染料(繊維)による染色
例5に記載するようにして製造したエラストマー状ナノ複合材料ポリウレタン/アミノ基で官能化されたクレーを使用し、例6に記載するようにして製造した原料を、そのナノ複合材料エラストマー状マトリックスで、Cibacron Navy FN-Bを使用し、前の例ですでに説明したように染色した。
【0081】
染色された原料を、界面活性剤を使用し、80℃で20分間洗浄し、固定されていない染料を除去した後、その繊維成分を、分散染料Rosso Dianix E-FBを使用し、例7ですでに説明した条件下で染色した。ナノ複合材料エラストマー状マトリックスを反応性染料で、および繊維成分を分散染料で染色した後、得られた原料製品は、繊維の色とエラストマー状マトリックスの色の間の中間色を有する(バイオレット色が得られる)。次いで、染色した極細繊維不織布を、湿式摩擦(AATCC8−2001)、石鹸洗浄(AATCC61−2001)およびドライクリーニングに対する染料耐性の評価試験にかけ、その値を下記の表に示す。
【0082】
【表7】
【0083】
例12 ナノ複合材料PU2/UV安定剤で官能化されたクレーを使用する、極細繊維不織布の原料製品の製造
例5に記載するようにして製造されたエラストマー状ナノ複合材料PU2/UV安定剤で官能化されたクレーで、例6に記載するようにして、原料製品を製造したが、この場合、含浸溶液で添加剤Tinuvin' 326(UV安定剤)の添加を省略する。
【0084】
例13 ポリウレタン/UV安定剤で官能化されたクレーのナノ複合材料を含む原料製品の促進UVエージング試験
繊維およびナノ複合材料PU2/例12のUV安定剤で官能化されたクレーを基材とする原料製品中に導入された安定剤の効果を評価するために、比較試料として、UV安定剤Tinuvin(登録商標)326を添加せずに製造したPU2自体の原料製品を使用し、極細繊維不織布の試料をUV促進エージング試験にかけた。採用した条件は、規格DIN75202(PV1303)に規定される条件、特に
・チャンバー相対湿度=20±10%
・照射=60W/m2(積算300〜400nm)
・黒色パネル温度=100±3℃
・チャンバー温度=65±3℃
・露出持続時間=1Fakra(10MJ/m2)
である。
【0085】
クレーに結合した安定剤を含む原料製品は、添加剤を含まない比較試料よりも黄変度がはるかに低いので、この試験に対する耐性がはるかに高く、優れた物理的−機械的特性を有することが立証される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)合成極細繊維から選択される極細繊維と、
b)エラストマー/薄層状クレーのナノ複合材料マトリックスと
を含んでなり、
前記薄層状クレーが、親油性薄層状クレーおよび官能化された親油性薄層状クレー
から選択されるものである、複合材料。
【請求項2】
前記極細繊維が、ポリエステル、ポリアミド、およびポリアクリロニトリルを基材とする極細繊維から選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記エラストマーが、ポリウレタン、ポリウレタン−尿素、およびそれらの混合物から選択されるものであり、
前記極細繊維がポリエステルから選択されるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記極細繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン6−6、およびナイロン12を基材とする極細繊維から選択されるものである、請求項2に記載の複合材料。
【請求項5】
前記極細繊維が、ポリエチレンテレフタレートを基材とする極細繊維から選択されるものである、請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記親油性薄層状クレー自体または官能化された親油性薄層状クレーが、ポリウレタン単独に対して1〜12重量%である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記親油性薄層状クレー自体または官能化された親油性薄層状クレーが、ポリウレタンに対して1〜6重量%である、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記薄層状クレーが、スメクチッククレー、例えばサポナイト、バイデライト、モンモリロン石、ノントロナイト、エクトライト、バーミキュル石、スチーブンサイト、ベントナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニアタイト、および膨潤マイカ、から選択されるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
前記薄層状クレーがモンモリロン石から選択されるものである、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記親油性薄層状クレーが、前記クレーの薄層間に「オニウム」イオンを含む薄層状クレーから選択されるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記「オニウム」イオンが、アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、イミダゾリニウム化合物またはホスホニウム化合物から選択されるものである、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
前記「オニウム」イオンが、タロウベンジルジメチルアンモニウムイオンおよび(水素化タロウ)ベンジルジメチルアンモニウムイオンから選択されるものである、請求項10に記載の複合材料。
【請求項13】
前記官能化された親油性薄層状クレーが、NHR、SH、エポキシド、アルコール、COOR、不飽和炭化水素、およびスルホン酸から選択される極性基を含む官能化された親油性薄層状クレーから選択されるものである(式中、Rは、水素および1〜10個、好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるものである)、請求項10に記載の複合材料。
【請求項14】
前記官能化された親油性薄層状クレーが、NH2、SH、エポキシド、およびアルコールから選択される、染色可能な極性基を含む官能化された親油性薄層状クレーから選択されるものである、請求項13に記載の複合材料。
【請求項15】
前記ポリウレタン/親油性薄層状クレーナノ複合材料マトリックスが、カチオンまたはアニオン染料により染色できるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項16】
前記ポリウレタン/官能化された親油性薄層状クレーナノ複合材料マトリックスが、カチオンもしくはアニオン染料または反応性染料で染色できるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項17】
前記極細繊維状部分が、着色染料で全体が染色されたポリエステル極細繊維を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項18】
前記官能化された親油性薄層状クレーが、酸化防止剤、ラジカル吸収剤、およびUV安定剤の分子に由来する残基を含む官能化された親油性薄層状クレーから選択されるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項19】
請求項1に記載の複合材料の製造方法であって、
(a)海島型構造を有する極細繊維を製造し、続いて、前記極細繊維から出発して極細繊維状フェルトを形成する工程、および
(b)前記極細繊維状フェルトを、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を不活性溶剤中に入れた分散液、または官能化された、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を不活性溶剤中に入れた分散液で含浸させ、続いて凝固させ工程
を含んでなる、方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の複合材料から出発して製造される、染色された起毛織布−不織布。
【請求項21】
請求項20に記載の起毛織布−不織布の製造方法であって、
(i)請求項19に記載の工程(b)の最後に得た「原料」から出発し、厚さ約1mmのシートを製造し、前記切断シートの表面を研磨する工程、
(ii)前記工程(i)において製造したシートを、極細繊維状成分および/またはエラストマー状成分を染色することにより、染色する工程、および
(iii)所望により続いて行なう仕上げ処理工程、
を含んでなる、方法。
【請求項22】
前記極細繊維成分が、製品の使用分野に応じて、ヤーン番手0.3〜0.01デニール、好ましくは0.18〜0.1デニール、または0.07〜0.01デニールを有する、請求項20に記載の染色された起毛織布−不織布。
【請求項23】
前記ナノ複合材料エラストマー状マトリックスが、10〜40重量%の量で存在する、請求項20に記載の起毛織布−不織布。
【請求項24】
前記ナノ複合材料エラストマー状マトリックスが、18〜35重量%の量で存在する、請求項23に記載の起毛織布−不織布。
【請求項25】
前記工程(i)の最後に得られた、研磨した原料シートを、分散染料、アニオン染料、カチオン染料、および反応性染料から選択される染料を使用して、ポリウレタンマトリックスのみ染色を行う、請求項21に記載の起毛織布−不織布の製造方法。
【請求項26】
前記工程(i)の最後に得られた、研磨した原料シートを、アニオン染料もしくはカチオン染料または反応性染料を使用して、ナノ複合材料ポリウレタンマトリックスのみ染色を行い、ポリエステルからなる極細繊維成分を着色染料で全体の染色を行う、請求項21に記載の起毛織布−不織布の製造方法。
【請求項1】
a)合成極細繊維から選択される極細繊維と、
b)エラストマー/薄層状クレーのナノ複合材料マトリックスと
を含んでなり、
前記薄層状クレーが、親油性薄層状クレーおよび官能化された親油性薄層状クレー
から選択されるものである、複合材料。
【請求項2】
前記極細繊維が、ポリエステル、ポリアミド、およびポリアクリロニトリルを基材とする極細繊維から選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記エラストマーが、ポリウレタン、ポリウレタン−尿素、およびそれらの混合物から選択されるものであり、
前記極細繊維がポリエステルから選択されるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記極細繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン6−6、およびナイロン12を基材とする極細繊維から選択されるものである、請求項2に記載の複合材料。
【請求項5】
前記極細繊維が、ポリエチレンテレフタレートを基材とする極細繊維から選択されるものである、請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記親油性薄層状クレー自体または官能化された親油性薄層状クレーが、ポリウレタン単独に対して1〜12重量%である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記親油性薄層状クレー自体または官能化された親油性薄層状クレーが、ポリウレタンに対して1〜6重量%である、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記薄層状クレーが、スメクチッククレー、例えばサポナイト、バイデライト、モンモリロン石、ノントロナイト、エクトライト、バーミキュル石、スチーブンサイト、ベントナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニアタイト、および膨潤マイカ、から選択されるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
前記薄層状クレーがモンモリロン石から選択されるものである、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記親油性薄層状クレーが、前記クレーの薄層間に「オニウム」イオンを含む薄層状クレーから選択されるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記「オニウム」イオンが、アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、イミダゾリニウム化合物またはホスホニウム化合物から選択されるものである、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
前記「オニウム」イオンが、タロウベンジルジメチルアンモニウムイオンおよび(水素化タロウ)ベンジルジメチルアンモニウムイオンから選択されるものである、請求項10に記載の複合材料。
【請求項13】
前記官能化された親油性薄層状クレーが、NHR、SH、エポキシド、アルコール、COOR、不飽和炭化水素、およびスルホン酸から選択される極性基を含む官能化された親油性薄層状クレーから選択されるものである(式中、Rは、水素および1〜10個、好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるものである)、請求項10に記載の複合材料。
【請求項14】
前記官能化された親油性薄層状クレーが、NH2、SH、エポキシド、およびアルコールから選択される、染色可能な極性基を含む官能化された親油性薄層状クレーから選択されるものである、請求項13に記載の複合材料。
【請求項15】
前記ポリウレタン/親油性薄層状クレーナノ複合材料マトリックスが、カチオンまたはアニオン染料により染色できるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項16】
前記ポリウレタン/官能化された親油性薄層状クレーナノ複合材料マトリックスが、カチオンもしくはアニオン染料または反応性染料で染色できるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項17】
前記極細繊維状部分が、着色染料で全体が染色されたポリエステル極細繊維を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項18】
前記官能化された親油性薄層状クレーが、酸化防止剤、ラジカル吸収剤、およびUV安定剤の分子に由来する残基を含む官能化された親油性薄層状クレーから選択されるものである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項19】
請求項1に記載の複合材料の製造方法であって、
(a)海島型構造を有する極細繊維を製造し、続いて、前記極細繊維から出発して極細繊維状フェルトを形成する工程、および
(b)前記極細繊維状フェルトを、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を不活性溶剤中に入れた分散液、または官能化された、剥離した薄層状親油性クレー/ポリウレタンナノ複合材料を不活性溶剤中に入れた分散液で含浸させ、続いて凝固させ工程
を含んでなる、方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の複合材料から出発して製造される、染色された起毛織布−不織布。
【請求項21】
請求項20に記載の起毛織布−不織布の製造方法であって、
(i)請求項19に記載の工程(b)の最後に得た「原料」から出発し、厚さ約1mmのシートを製造し、前記切断シートの表面を研磨する工程、
(ii)前記工程(i)において製造したシートを、極細繊維状成分および/またはエラストマー状成分を染色することにより、染色する工程、および
(iii)所望により続いて行なう仕上げ処理工程、
を含んでなる、方法。
【請求項22】
前記極細繊維成分が、製品の使用分野に応じて、ヤーン番手0.3〜0.01デニール、好ましくは0.18〜0.1デニール、または0.07〜0.01デニールを有する、請求項20に記載の染色された起毛織布−不織布。
【請求項23】
前記ナノ複合材料エラストマー状マトリックスが、10〜40重量%の量で存在する、請求項20に記載の起毛織布−不織布。
【請求項24】
前記ナノ複合材料エラストマー状マトリックスが、18〜35重量%の量で存在する、請求項23に記載の起毛織布−不織布。
【請求項25】
前記工程(i)の最後に得られた、研磨した原料シートを、分散染料、アニオン染料、カチオン染料、および反応性染料から選択される染料を使用して、ポリウレタンマトリックスのみ染色を行う、請求項21に記載の起毛織布−不織布の製造方法。
【請求項26】
前記工程(i)の最後に得られた、研磨した原料シートを、アニオン染料もしくはカチオン染料または反応性染料を使用して、ナノ複合材料ポリウレタンマトリックスのみ染色を行い、ポリエステルからなる極細繊維成分を着色染料で全体の染色を行う、請求項21に記載の起毛織布−不織布の製造方法。
【公開番号】特開2007−162203(P2007−162203A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−180243(P2006−180243)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(503134594)アルカンタラ、ソシエタ、ペル、アチオニ (3)
【氏名又は名称原語表記】ALCANTARA S.P.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180243(P2006−180243)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(503134594)アルカンタラ、ソシエタ、ペル、アチオニ (3)
【氏名又は名称原語表記】ALCANTARA S.P.A.
【Fターム(参考)】
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