説明

弾性ローラ、現像装置及び画像形成装置

【課題】 分散性、硬度、抵抗安定性が良く、電圧依存性の小さい弾性ローラ、この弾性ローラを備えた現像装置及び画像形成装置を提供することである。
【解決手段】 軸芯体の外周面に少なくとも1層以上が形成されたローラの、そのいずれか1つ以上の層において、主成分がゴム又は樹脂であり、該層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する分布曲線の半値幅(ΔD50)の比(ΔD50/Dst)が1.40以下の条件を満たすものであることを特徴とする弾性ローラ、該弾性ローラを備えた現像装置及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ローラに関し、より具体的には、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の受信装置等、画像形成に電子写真方式を採用した装置(以降、電子写真装置と総称する)において主に使用される弾性ローラ、並びに、その弾性ローラを用いた現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等、その画像形成に電子写真方式を利用する電子写真装置では、その画像形成工程において、各種の目的にあった弾性ローラが利用されている。例えば、一成分現像方式の電子写真装置では、感光体表面に形成された静電潜像を現像剤により顕像化する工程、すなわち、現像工程では、その表面に現像剤が担持されている現像ローラを、潜像担持体としての感光体表面に圧接させて、現像剤を移動させる方法が利用されている。その他、画像形成工程において、直接あるいは間接的に感光体表面と当接又は圧接する形態で使用される弾性ローラとしては、接触帯電型の帯電器において利用される帯電ローラがある。また、現像された感光体表面の現像剤からなる画像(トナー像)をコピー用紙等の転写紙上に転写する工程においても、感光体表面の帯電と異なる極性に帯電する転写ローラが利用される。
【0003】
これら弾性ローラは、ゴム材料として液状ゴム、固形ゴム、発泡ゴム等を用い、円筒型内での型成形、各形状の型に入れて熱加硫した後の研磨加工、押出し成形、研磨加工等を経て円筒状に成形されているものが多く用いられている。この弾性ローラの弾性体層は、その弾性部材を感光体に対して所定の接触幅をもって圧接する必要があり、変形し易く、同時に変形回復性(セット回復性)にも優れ、かつ半導電領域といわれる電気抵抗特性が求められる。導電性を付与させる手段としては、導電性フィラー、具体的にはカーボンブラックを用いることがある。その場合、カーボンブラックの分散性制御が難しく、抵抗特性の安定性(環境依存性、電圧依存性)を十分に得ることが難しい。
【0004】
また、電子写真プロセスでは、画像の高画質化やフルカラー化に伴い、画像を形成する現像剤(トナー)は粒径が微細化し、その他にも、画質に影響を与える感光体周辺のゴムローラの抵抗特性、非常にバラツキの小さいものが要求されている。
【0005】
しかしながら、電気抵抗特性の良いゴムローラを安定して得ることは難しい。電気抵抗精度の良いローラを安定的に作製する方法の1つとして、イオン導電系の材料を使用する方法がある。しかし、イオン導電系材料は比較的高価であり、製法上の制約もあり、あまり好ましくない。よって、カーボンブラックが添加されたゴム材料を用いて電気抵抗精度の良いローラを作製する方法が多く検討されてきており、従来より、様々な提案がなされている。しかしながら、カーボンブラックを用いた導電性付与の場合には、分散された状態におけるカーボンブラック凝集体同士の距離のバラツキがあるため、印加電圧により弾性ローラの体積抵抗が大きく異なる、すなわち電圧依存性が高いローラとなり易い。このような特性を有する弾性ローラを現像ローラとして用いた場合、ローラの一部において電流が流れ易くなるため、濃度ムラが目立つ等、良質な画像が得られ難くなる場合があった。そこで近年、カーボンブラックの粒径やストラクチャーに注目し、その種類や量を好ましい範囲に規定する方法や、分散性を良くする混合方法が開示されている。
【0006】
本発明者らは、特許文献1において、被膜された樹脂層に、DBP吸油量が80〜110ml/100g、DBP吸油量/窒素比表面積の比が0.012ml/m以下及び揮発分/窒素比表面積の比が2.0×l0−4g/m以下であるカーボンブラックを用いることにより、カーボンブラックの添加された被膜用樹脂溶液における分散性と安定性を改善し、被膜時に低い弾性率と高い導電性を併せ持つ樹脂層を形成し、セット性能に優れ、均一な高い導電性を有する現像ローラとなることを開示している。
【特許文献1】特開2002−257130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子写真装置に使用される弾性ローラの要求性能は、電子写真装置の高速化、画質の高品位化に伴って、より高度なものとなってきており、更なる向上が一層求められている。特に弾性ローラの抵抗特性において、各箇所のおける抵抗特性の均一性だけでなく、抵抗の電圧依存性の更なる向上が求められている。
【0008】
本発明は、このような弾性ローラにおける課題を解決することを目的とするものである。特に、本発明の目的は、分散性、硬度、抵抗安定性が良く、電圧依存性の小さい弾性ローラを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、上記弾性ローラを備えた現像装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従って、軸芯体の外周面に少なくとも1層以上が形成されたローラの、そのいずれか1つ以上の層において、主成分がゴム又は樹脂であり、該層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する分布曲線の半値幅(ΔD50)の比(ΔD50/Dst)が1.40以下の条件を満たすものであることを特徴とする弾性ローラが提供される。
【0011】
本発明に従って、上記弾性ローラを備えた現像装置及び画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明によって、電圧依存性の小さい弾性ローラを提供することが可能となった。また、本発明の弾性ローラを現像ローラとして用いた場合には、画像の濃淡に関わらず均質な画像を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究・検討を進めた。弾性ローラにおいて、いずれかもしくは複数の層にカーボンブラックを用いて導電性を付与した層がある場合に、そのカーボンブラックの分散性を制御することにより、ローラ抵抗の電圧依存性が良くなる傾向があり、良好な画像が得られることが確認された。しかしながら、画質の高品位化の中では十分なレベルといえず、更なる高画質化、すなわち、ローラ抵抗の電圧依存性が更に良くする必要がある。また、更なる分散状態の安定化のために分散剤を添加したが、大幅な良化を得られず、逆に、潜像担持体への汚染性等の不具合も確認された。
【0014】
そこで、弾性ローラの材料に用いるカーボンブラックの特性、具体的には粒度分布を規定することにより、分散性、硬度、抵抗安定性が良化することを見出した。カーボンブラックの粒度分布を特定の範囲に揃えることにより、カーボンブラック間距離が揃うと考えられ、ローラ抵抗の電圧依存性が小さくなることが確認された。
【0015】
本発明者らは、上記の知見を基に、更なる研究を進め、軸芯体の外周面に少なくとも1層以上が形成されたローラの、そのいずれか1つ以上の層において、主成分がゴム又は樹脂成分からなり、該層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する分布曲線の半値幅(ΔD50)の比(ΔD50/Dst)が1.40以下の条件を満たす場合、電圧依存性の小さい弾性ローラが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。この弾性ローラは、例えば、電子写真方式を用いた画像形成装置における現像ローラ、帯電ローラ及び転写ローラとして好適な特性を有する。更には、この弾性ローラを現像ローラとして用いた場合には、画像の濃淡に関わらず均質な画像を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
現像ローラとは、電子写真方式による静電潜像を形成するための潜像担持体と、現像剤を薄膜状に担持しつつ該潜像担持体の表面に対向して当接もしくは圧接した状態で、前記現像剤を該潜像担持体に形成された静電潜像に供給して該静電潜像を現像するための弾性ローラである。
【0017】
帯電ローラとは、前記潜像担持体の表面に当接又は圧接した状態での電圧印加により該表面に接触帯電を行うための弾性ローラである。
【0018】
転写ローラとは、該潜像担持体に該転写紙を挟んで対向して設けられ、前記潜像担持体の帯電と異なる極性での帯電を行うための弾性ローラである。
【0019】
以下に、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0020】
図1と図2に、本発明の弾性ローラに関する構造の一例を模式的に図示する。図1及び図2に例示の弾性ローラ1は、中心に軸芯体として、通常、金属等の導電性材料で形成される軸芯金11を有し、ローラ層として、軸芯金11の外周面上に弾性体層(基層)12が固定され、この弾性体層12の外周面に樹脂層(表層)13を積層した構造を有する。ここでは、上記のような軸芯体の外周面に二層で構成されてなる弾性ローラで説明する。
【0021】
本発明の弾性ローラの場合、弾性層12と樹脂層13のいずれか又は両方の層において、該層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する分布曲線の半値幅(ΔD50)の比(ΔD50/Dst)が1.40以下の条件を満たすことを特徴とするが、ここでは、弾性層12が相当するものとして説明する。
【0022】
軸芯体11としては、円柱状又は中空円筒状の形状を有し、金属等の導電性材料で形成される軸芯体を用いることができる。なお、かかる弾性ローラが電気的に絶縁された状態で利用される場合(例えば、加圧ローラや搬送ローラ)には、使用に際して、弾性ローラに加わる外力に対して、その軸芯体の形状を堅固に保持できる限り、軸芯体は非導電性材料で形成されていてもよい。また、かかる弾性ローラが電気的なバイアスを印加して、あるいは、接地されて、使用される場合であっても、軸芯体全体を導電性材料で構成する代わりに、主体は、非導電性材料で形成し、その表面に所望の導電性を満足する導電性処理、例えば、良導性の被覆層による被覆を施した構造のものを用いることもできる。
【0023】
電子写真装置に利用される現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラは、電気的なバイアスを印加して、又は、接地されて、使用されるのが一般的であるので、軸芯体を導電性の基体、所謂軸芯金11の形態とする。例えば、帯電ローラ用の弾性ローラでは、軸芯金11は支持部材であることは勿論であるが、帯電部材の電極として機能するものであり、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属又は合金、あるいは、クロムやニッケル等で鍍金処理を施した鉄、合成樹脂等、少なくともその外周面は、その上に形成されるローラ層に所定の電圧を印加するに十分な導電性の材質で構成する。電子写真装置に利用される現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラにおいては、軸芯体である導電性基体の外径は、通常4〜10mmの範囲とされる。
【0024】
基層となる弾性体層12は柔軟性を有するものであり、原料主成分としてゴムを用いた成型体として形成したものを用いることができる。弾性体層12の原料主成分のゴムとしては、従来より弾性ローラに用いられている種々のゴムを用いることができる。具体的には、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等のゴム材料から選択して用いることができる。所望の弾性体硬度やローラにおける所望とする特性を与える限り、これらの材料は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのゴム材料に種々の添加剤等を必要に応じて配合して弾性体層を成形することができる。添加剤としては、弾性ローラの個別的な用途に合わせて、弾性体層自体に要求される機能に必要な成分、例えば、導電剤、非導電性充填剤等、また、ゴム成型体とする際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤等、各種の添加剤を主成分のゴム材料に適宜配合することができる。これらの添加量も、目的とする用途において要求される特性等に応じて選択することができる。
【0025】
弾性体層に導電性を付与する目的に添加する、導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼等の各種導電性金属、又は合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質等の微粉末を用いることができる。これらの内、カーボンブラックは、比較的容易に入手でき、また、主成分のゴム材料の種類に依らず、良好な帯電性が得られるため、好適に利用できる。主成分のゴム材料中に、微粉末状の導電剤を分散させる手段としては、従来から利用される手段、例えば、ロールニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、サンドグラインダー、ペイントシェーカー等を、主成分のゴム材料に応じて適宜利用すればよい。
【0026】
本説明は、弾性層12が本発明の該層に相当する例を示しているため、カーボンブラックが添加されている必要がある。弾性層12が該層に相当しない場合には、特に制限はない。
【0027】
該層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する分布曲線の半値幅(ΔD50)の比(ΔD50/Dst)が1.40以下の条件を満たしているのが適当である。ΔD50/Dstが1.4を超えると、カーボンブラックの粒度分布が広く、安定した抵抗状態を得ることが難しくなる。
【0028】
該層からカーボンブラック成分を取り出し単離する方法としては、一般的に用いられる方法を用いればよい。一例を挙げると、弾性層12からゴムを切り出し、1〜2mm角程度に細かくしたゴム片を、ロータリーキルンを用いて窒素気流下で一定時間にわたり高温加熱することでゴム成分を分解し、その残渣よりカーボンブラック成分を回収する。温度と時間は、ゴムの種類や量等に応じで選択すればよく、例えば、シリコーンゴムであれば、750℃で15分間も加熱すれば充分に分解できる。ゴム成分は、炭化水素及び/又はオイルに分解される。同じくシリコーンゴムでは、−Si−O−骨格を有するため、SiO成分が残渣となる場合がある。よって回収された残渣には、カーボンブラック成分の他に、シリカ、石英、タルク等の無機添加剤、シリコーンゴムから生成するSiO成分等が含まれるが、これらは比重の違いから容易に分離することが出来る。仮に混合物の状態であっても、遠心沈降方式の粒度分布計に測定する場合には、比重差から区別することが可能である。
【0029】
次に、遠心沈降分析によるカーボンブラックアグリゲートサイズの分析法、及びストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)、及び分布曲線の半値幅(ΔD50)の求め方を示す。
【0030】
遠心沈降分析によるカーボンブラックアグリゲートサイズの分析法
測定装置:高速ディスク遠心法超微粒子粒度分析計
測定装置名:BI−DCP
(BROOKHAVEN INSTRUMENTS CORPORATION社製)
測定方法:JIS K 6218に基づいて乾燥したカーボンブラック試料を少量の界面活性剤(ノニデットP−40:商品名)を加えよく練ってペースト状にしたのち20容量%エタノール水溶液と混合し、カーボンブラック濃度200mg/lの分散液を作製し、超音波ホモジナイザーで十分に分散させ試料とする。前記装置の回転数を8,000rpmに設定し、スピン液(純水、24℃)を10.0ml加えた後、1.0mlのバッファー液(20容量%エタノール水溶液、24℃)を注入する。次いで24℃のカーボンブラック分散液0.5mlを注入し、測定を開始する。カーボンブラック分散液を加えてからの経過時間と吸光度の分布曲線より各時間tに対応するストークス相当径(D)を下記数式(1)により算出する。
【0031】
【数1】

【0032】
数式(1)において、ηは溶媒の粘度、ωはディスク回転数、Δρはカーボンブラック粒子と溶媒の密度差、Riはカーボンブラック分散液注入点の半径、Rdは吸光度測定点までの半径である。分布曲線における最多頻度値でのストークス相当径をDstモード径(nm)(Dst)とし、最多頻度値の50%頻度に相当する大小2点のストークス相当径の差(半値幅)をΔD50(nm)とする。
【0033】
また、前記カーボンブラックのストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する90%粒子径(D90)の比(D90/Dst)が1.20以上2.40以下の条件を満たすものであることが好ましい。D90/Dstが1.20未満のものは、製造することが現実的でなく、仮に製造した場合には現状では高コストとなり好ましくない。一方、D90/Dstが2.40を超えると、カーボンブラックの比較的大きな凝集体が多く存在することになり、局所的な不良を生じ易くなり、好ましくない。
【0034】
更に、前記カーボンブラック成分のDBP吸油量は、40〜110ml/100gであることが好ましい。ここで、DBP吸油量は、JIS K6217(1997)の9項A法記載の方法で測定され、カーボンブラック100g当たりに吸収されるジブチルフタレート(DBP)のmlで表示される。
【0035】
また、前記カーボンブラック成分の添加量としては、前記該層を形成するゴム又は樹脂100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましい。更には、10〜30質量部であることがより好ましい。
【0036】
ここでカーボンブラックの質量部を求める際の、「ゴム成分」とは、例えば、シリコーンゴム、他ゴムとのブレンドの場合は、そのゴムやそのモノマー成分、硬化剤成分、架橋剤成分等のゴムそのものや、それを構成する成分でゴム層の弾性層形成成分として主体をなす成分を基準とし、導電剤、非導電性充填剤等の添加剤は、含まないものとする。
【0037】
本発明に用いることが出来るカーボンブラックは一般に市販されているもの、及びそれを分級したもの、又は製造メーカーにて試作されたもの等が挙げられ、いずれも本発明の範囲を満足すれば、好ましく用いられる。もしくは、既にカーボンブラックが配合されたゴムを用いた場合でも、同様に本発明の範囲を満足すれば、好ましく用いられる。
【0038】
本発明においては、概層から取り出し単離したカーボンブラック成分を分析した範囲につき示しており、本発明の効果を見出す最適な方法である。配合前のカーボンブラックを同様に分析しても、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)、分布曲線の半値幅(ΔD50)、90%粒子径(D90)、DBP吸油量といった特性値を得ることが出来るが、実際に配合した後に、概層から取り出し単離したカーボンブラック成分を分析した値とは必ずしも一致せず、配合方法によっては大きく変化する場合もある。よって、前述の通り、概層から取り出し単離したカーボンブラック成分を分析した値を用いることが好ましい。
【0039】
しかしながら、配合方法等による変化傾向を掴めば、配合前のカーボンブラック特性値から、概層から取り出し単離したカーボンブラック成分を分析した値をある程度予測することは出来る。よって、配合するカーボンブラックの特性値を、本発明の範囲には変化量を加味した値にて選択し配合等することにより、本発明を達成することも可能である。
【0040】
なお、カーボンブラックのDst、△D50、D90、DBP吸油量といった値は、製造装置/条件によってコントロールすることが出来る。また、製造されたカーボンブラックを分級(粗粉カット)等することにより、更にコントロールすることも出来る。
【0041】
図4に、一般的なカーボンブラック製造炉の模式図の一例を示す。
【0042】
カーボンブラック製造炉(反応炉)4は、大きく分けて燃焼域41、原料油導入位置42、後部反応域43に分けることが出来、そのプロセスは、燃焼域41において、高温燃焼ガス流に原料の炭化水素を導入し、原料油導入位置42において、分解反応によりカーボンブラックに転化させ、後部反応域43において、水冷により反応を停止するポイントを設けている。
【0043】
少し具体的に図を説明すると、燃焼域41においては、燃料油44と空気45を導入し混合燃焼させる。燃料油44の例としては、ガス状又は液状の燃料炭化水素が一般的であり、水素、一酸化炭素、天然ガス、石炭ガス、石油ガス並びに重油等の石油系液体燃料、クレオソート油等の石炭系液体燃料が使用される。また、空気45は、空気でなくとも酸素含有ガスであればよく、酸素又はそれらの混合物等も用いられる。これらを混合燃焼させ、高温燃焼ガスを形成させる燃焼条件は、例えば1500℃〜1900℃の範囲で制御される。反応域で得られた高温燃焼ガス流の方向に対し垂直に設けたバーナーから原料油46を噴霧し、熱分解させてカーボンブラックを得る。図4では、バーナー(原料油46を噴霧するノズル)を垂直に図示したが、高温燃焼ガス流の方向に対し並行に設けた製造炉も一般的である。バーナーは断面となる周方向に複数配置されることが一般的である。また、原料油の導入位置では、反応効率を向上させるために絞り部を設けるのが一般的である。原料油46としては、アントラセン等の芳香族炭化水素油、クレオソート油等の石油系炭化水素油、EHEオイル(エチレンボトム)、FCCオイル(流動接触分解残渣)等の石油系重質油が使用される。後部反応域43では、反応停止水47をスプレー等することにより、高温反応ガスを800℃〜1000℃に低下させる。原料を導入してから反応停止までの時間は、5〜30ms程度と、極めて短時間で行われる。
【0044】
カーボンブラックの様々な種類は、一般的なカーボンブラック製造装置において、燃焼条件、高温燃焼ガス流速、原料油の導入条件、反応停止時間の諸条件を制御することによって製造することができる。その具体的な例としては、原料油導入位置、原料油へのアルカリ金属(カリウム)の添加量、導入総空気量、原料油導入量、原料油導入圧及び温度、反応停止用冷却水導入位置、燃料導入量等の条件を調整することが挙げられる。
【0045】
カーボンブラックの基本特性として主なものは、粒子径とストラクチャーであり、粒子径とストラクチャーのレベルによりカーボンブラックの品種の分類が行われている。
【0046】
粒子径(比表面積)を制御する方法としては、原料油46を導入する燃焼ガス流の温度が相対的に低くすることで、粒子径は大きくなる。逆に、燃焼ガス流の温度を相対的に高くすることで粒子径は小さくなる。燃焼ガス流の温度は、原料油導入量と総空気導入量との比率を変化させる等により行うことが挙げられる。
【0047】
ストラクチャー(DBP吸油量で示される特性)は、原料油46が微細な液滴に凝縮して核の前駆体を形成し、これらの核が粒子に成長し、更に粒子相互の衝突により形成される粒子凝集体の大きさ、すなわちアグリゲートの大きさで評価される。核の形成速度を高め、粒子相互の衝突頻度を高めることによりストラクチャーは成長することより、ストラクチャー(DBP吸油量)を制御する方法としては、燃焼ガス流中への原料油46の導入量を多くして、熱分解過程における原料炭化水素の存在割合(燃焼ガス流中の炭素源濃度)を上げることで、ストラクチャー(DBP吸油量)は高くなる。逆に、燃焼ガス流中の原料油濃度を下げれば、ストラクチャー(DBP吸油量)は低くなる。
【0048】
アグリゲート径(Dst)を制御する方法としては、原料油46の導入位置、すなわち、バーナー(原料油を噴霧するノズル)の位置を上流側にすることによりアグリゲート径(Dst)は大きくなる。通常、アグリゲートの代表径(Dst)はストラクチャーの低下と共に低下するが、原料油の噴霧位置を上流側にすることによりこの低下の程度を抑えられる。
【0049】
アグリゲート分布(例えば、D50等)を制御する方法としては、導入する原料油の噴霧状態と導入燃料量を調節することにより行われる。導入原料油46の温度及び圧力を高くしたり、ノズルの形状を改良、もしくは周方向のノズル本数増やす等により、噴霧状態を良くする、つまり、液滴の大きさをより均一にさせること等により、アグリゲート分布は相対的に狭く、すなわちシャープなものとなる。また、導入燃料量を増加することでも、アグリゲート分布は相対的に狭くなる。
【0050】
その他、弾性体層に導電性を付与する手段として、導電剤と共に、導電性高分子化合物を添加する手法も利用できる。もちろん、弾性層12が該層に相当しない場合には、導電剤に代えて用いることも出来る。例えば、導電性高分子化合物としては、ホストポリマーとして、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェニン、ポリ(p−フェニレンオキシド)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(p−フェレンビニレン)、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)、ポリビニルカルバゾール、ポリジアセチレン、ポリ(N−メチル−4−ビニルピリジン)、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリ(フェニレンエーテルスルフォン)等を使用し、これらにドーパントして、AsF、I、Br、SO、Na、K、ClO、FeCl、F、Cl、Br、I、Kr等の各イオン、Li、TCNQ(7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)等をドープしたものが利用できる。
【0051】
ゴム成型体中に添加可能な非導電性充填剤としては、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0052】
ゴム成型体を作製する際に利用される、架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びp−クロロベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができる。例えば、液状シリコーンゴムを用いる際には、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを架橋成分として、白金系触媒を用いて、ゴム成分相互の架橋が図られる。
【0053】
なお、弾性ローラを現像ローラとして用いる場合は、当接する際に均一なニップ幅を確保し、かつ、好適なセット回復性を満たすためには、弾性体層の厚さは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上である。なお、作製される弾性ローラの外径精度を損なわない限り、弾性体層の厚さに特に制限はないものの、一般に、弾性体層の厚さを過度に厚くすると、ゴム成型体の作製コストを適正な範囲に抑えることが難しく、これらの実用上の制約を考慮すると、弾性体層の厚さは、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下である。従って、弾性体層の厚さは、0.5〜6.0mmの範囲に選択する構成とすることが好ましく、1.0〜5.0mmの範囲に選択する構成とすることがより好ましい。また、弾性体層の厚さは、その硬度に応じて適宜選択されるものである。
【0054】
弾性体層12の硬度(Asker−C)は、15°〜70°の範囲に選択することが好ましい。硬度(Asker−C)が、15°未満では、ゴム弾性が得られ難くなり、一方、70°を超える場合には、適切なニップ幅を得ることが難しくなってしまう。より好ましくは、弾性体層を形成するゴム成型体の硬度(Asker−C)は、15°〜55°の範囲である。
【0055】
前述の通り、弾性体層12の外周面に樹脂層(表層)13が積層されている。もちろん、本発明の範囲であれば、樹脂層13に相当する層がなく、弾性層12のみで構成されている弾性ローラでも構わない。
【0056】
表層となる樹脂層13を形成する成分としては、特に限定されるものではないが、自己膜補強性やトナー帯電性等の観点から特にポリアミド樹脂やウレタン樹脂、又はウレア樹脂等が好ましく用いられる。
【0057】
ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド12・12及びそれらのポリアミドの異種モノマー間の重縮合から得られるポリアミド等が挙げられ、作業性の面からアルコール可溶性のものが好んで用いられている。例えば、ポリアミドの3元共重合体や4元共重合体の分子量を調整したもの、又はポリアミド6やポリアミド12をメトキシメチル化し、アルコールや水に可溶性としたものが挙げられる。
【0058】
ウレタン樹脂としてはポリイソシアネートを含む、1液型や2液型が挙げられ、必要に応じてエポキシ樹脂やメラミン樹脂を架橋剤として用いてもよい。またウレタン樹脂としては、例えばカーボンブラックをポリウレタンプレポリマー中に配合し、プレポリマーを架橋反応させる方法で得たものや、ポリオールに導電性材料を配合し、このポリオールをワン・ショット法にてポリイソシアネー卜と反応させる方法で得たもの等が挙げられる。
【0059】
この場合、ポリウレタンを得る際に用いられるポリヒドロキシル化合物としては、一般の軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に用いられるポリオール、例えば、末端にポリヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及び両者の共重合物であるポリエーテルポリエステルポリオールが挙げられるほか、ポリブタジエンポリオールやポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール、ポリオール中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる所謂ポリマーポリオール等の一般的なポリオールを使用することができる。また、イソシアネート化合物としては、同様に一般的な軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に使用されるポリイソシアネート、即ち、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの混合物や変性物、例えば部分的にポリオール類と反応させて得られるプレポリマー等が用いられる。特に、弾性体層を低硬度化する目的でポリイソシアネートの混合比率を低くしてもよい。
【0060】
ウレタン樹脂やポリアミド樹脂、及び他の変性樹脂の1種又は2種以上を混合して用いることもでき、現像を行うシステムに応じて適宜選択して用いることにより、その現像システムに適したトナー帯電量を得ることができる。
【0061】
更に、表層としての樹脂層13を成膜性良く形成するために、弾性ローラの個別的な用途に合わせて、樹脂層自体に要求される機能に必要な成分、例えば、導電剤、非導電性充填剤等、また、弾性層12の外周に成膜積層する際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤等、各種の添加剤を主成分の樹脂材料に適宜配合することができる。なお、導電剤や非導電性充填剤等の添加剤は、先に弾性体層に含有可能な添加剤として例示したもの等から、主成分の樹脂材料に応じて、適宜選択することができる。また、その添加量は、形成される樹脂層の特性を本発明の効果を発揮する範囲内に維持する限り、添加目的に応じて、適宜選択することができる。
【0062】
本説明は、弾性層12が本発明の該層に相当する例を示しているため、樹脂層13については特に制限はない。
【0063】
しかしながら、異なる構成で樹脂層13が本発明の該層に相当する場合には、弾性層12の導電性付与がカーボンブラックによってなされ、該層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する分布曲線の半値幅(ΔD50)の比(ΔD50/Dst)が1.40以下の条件を満たすことが必要である。
【0064】
また、前記カーボンブラックのストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する90%粒子径(D90)の比(D90/Dst)が1.20以上2.40以下の条件を満たすものであることが好ましい。
【0065】
更に、前記カーボンブラック成分のDBP吸油量は、40〜110ml/100gであることが好ましい。
【0066】
前記カーボンブラック成分の添加量としては、前記層を形成するゴム又は樹脂100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましい。弾性層12に用いる場合と異なり、薄膜となることの多い樹脂層13においては、カーボンブラックの種類や、ベースとなる樹脂(ゴム)の種類にもよるが比較的多く添加することが出来る。例えば、ウレタン樹脂をベースとした場合には、15〜50質量部であることが好ましい。更には、20〜40質量部であることがより好ましい。
【0067】
ここでカーボンブラックの質量百分率を求める際の、「樹脂成分」とは、ウレタン樹脂のポリオール、ジイソシアネート、他樹脂とのブレンドの場合は、その樹脂やそのモノマー成分、硬化剤成分、架橋剤成分等の樹脂そのものやそれを構成する成分で樹脂層の被膜形成成分として主体をなす成分を基準とし、導電剤、非導電性充填剤等の添加剤は、含まないものとする。
【0068】
樹脂層13の弾性率は、被膜性、耐久性が実用上得られれば、特に制限されることはない。樹脂層13は、弾性体層12の変形に対する高い追従性を示すことが望まれ、従って、樹脂層を形成する樹脂膜体の硬度及び弾性率は低い方が好ましい。
【0069】
なお、樹脂層13の厚さは、十分な耐摩耗性を確保するために、2μm以上に選択することが好ましい。一方、現像ローラ、帯電ローラ及び転写ローラ等では、導電性を有する弾性ローラとされ、その際、均一な導電性を実現するために、樹脂層の厚さは、100μm以下に留めることが好ましい。また、樹脂層の厚さを、2μm未満とする場合には、弾性体層表面に所望の薄い膜厚では均一に塗布・形成することが難しく、一方、樹脂層の硬度は、弾性体層の硬度より高いため、100μmを超える膜厚とすると、弾性ローラ全体の変形性に対する影響が大きくなり好ましくない。また、樹脂層の厚さは、上記の範囲でその硬度等に応じて適宜選択されればよい。本発明の樹脂層の厚さは、ローラより切り出したサンプルにより、断面を光学顕微鏡等により観察することにより測定し求めたものである。
【0070】
樹脂層13の形成には、樹脂膜体の原料となる樹脂原料を液状として、弾性体層表面に塗布し、その後、樹脂膜体とする方法を利用することができる。この樹脂原料の塗布方法は、特に限定されないが、エアスプレー、ロールコート、カーテンコート又はディッピング等の方法により、樹脂原料を所望の厚さで、弾性体層表面に均一に塗布する。その後、樹脂膜体とするため、必要に応じ、加熱処理を行う場合がある。
【0071】
以上、弾性体層12及び樹脂層13を軸芯体11上にこの順に積層した2層構造の弾性ローラについて説明したが、本発明にかかる弾性ローラにおける軸芯体外周上の層構成は3層以上の多層構成を有するものであってもよい。例えば、弾性体層12と樹脂層13の間に、別の樹脂層を設けた弾性ローラや、弾性体層12自体が複数の層で構成される弾性ローラが挙げられる。
【0072】
どのような構成においても、最外層としての表層(樹脂層13)の機能が十分に得られる、つまり、本発明の効果が得られれば問題はない。
【0073】
以上に説明した様に、本発明の弾性ローラは、電圧依存性の小さく安定したものとなる。この利点から、本発明の弾性ローラは、電子写真装置等における、現像ローラ、帯電ローラ及び転写ローラ等の弾性ローラとして好適に使用できる。特に、現像ローラに用いた場合には、画像の濃淡に関わらず均質な画像を得ることが可能である。更に、利用される電子写真装置自体、高速化され、プロセス速度、すなわち、感光体表面の速度が増す条件において、前記の利点は一層顕著なものとなる。
【0074】
図3は、本発明の弾性ローラを現像ローラとして用いた現像装置、及び弾性ローラを現像ローラ、帯電ローラ、あるいは転写ローラの少なくとも1つ以上として用いた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0075】
この画像形成装置では、潜像担持体としての感光ドラム21が矢印Aの方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電装置22によってそこを通過した感光ドラム21の領域が一様に帯電され、更にこの帯電領域において、静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱自在なプロセスカートリッジ(不図示)に保持される現像装置2によって現像剤たるトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化(顕在化)される。
【0076】
現像には、露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像等の方式が利用できる。可視化された感光ドラム21上のトナー像(画像)は、転写ローラ29によって紙等の転写紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。転写ローラ29は、感光ドラム21のトナー像を保持する領域に、転写紙33をその裏面から押当てて、トナー像を転写紙の表面に転写させるもので、感光ドラムのトナー像を保持する領域と逆に帯電していることで、トナー像の転写が促進される。転写紙33の感光ドラム21の表面への押し当ては、感光ドラム21と転写ローラ29とが接触している部分に、これらの回転に伴って、転写紙33が自動的に挿入されることにより達成される。
【0077】
一方、転写されずに感光ドラム上21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21に対して上記のプロセスを繰り返すことで、同一画像のコピーや、新たな画像の転写を行うことができる。
【0078】
図示した例では、現像装置2は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像装置34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての現像ローラ25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0079】
尚、現像ローラ25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置2においては、弾性を有する補助ローラ26が、現像容器34内で、弾性ブレード27の現像ローラ25表面との当接部に対し現像ローラ25の回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。補助ローラ26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨンやポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ25へのトナー28の供給及び未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。本実施形態においては、芯金上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの補助ローラ26を用いた。
【0080】
この補助ローラ26の現像ローラ25に対する当接幅としては、1〜8mmが有効であり、また、現像ローラ25に対してその当接部において相対速度を持たせることが好ましく、本実施形態においては、当接幅を3mmに設定し、弾性ローラ26の周速として現像動作時に50mm/s(現像ローラ25との相対速度は130mm/s)となるように駆動手段(不図示)により所定タイミングで回転駆動させている。
【0081】
本発明にかかる弾性ローラは、感光ドラム21の表面のクリーニングされた領域に当接又は圧接してこの領域を帯電するための帯電ローラ22や、感光体ドラム21のトナー像を保持する領域に当接又は圧接して配置される転写ローラ29としても好適に利用できる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。ここでは、上記のような軸芯体の外周面に二層で構成されてなる弾性ローラにおいて、弾性層が概層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する分布曲線の半値幅(ΔD50)の比(ΔD50/Dst)が1.40以下の条件を満たすものとしている。これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、実施例によって、何ら限定されるものではない。実施例に示す手法で作製される弾性ローラは、例えば、現像ローラ等の現像部材、帯電ローラや転写ローラ等の帯電部材、これら各種の個別的な用途において、電子写真装置等で使用される弾性ローラとして好適に使用できる。
【0083】
[実施例1]弾性ローラ1
軸芯体としてニッケル鍍金を施したステンレス製の芯金(φ6mm)の外周面に、更に接着剤を塗布、焼き付けしたものを用いた。この軸芯体を金型に配置し、原料ゴムとして、液状のシリコーンゴム(末端ビニル基封鎖の直鎖状ポリジメチルシロキサンと、1つのビニル基を有する分岐ポリシロキサンセグメントと、二官能性のジメチルシロキサンを有する直鎖状オイルセグメントとからなるブロックポリマーとからなるポリシロキサン混合物に、架橋剤として1分子中にケイ素結合水素原子を2個以上有したオルガノシロキサンと白金系触媒を加え、混合した付加型シリコーンゴム組成物)100質量部、無機微粉体である耐熱性付与剤としてシリカ粉体10質量部、石英粉末50質量部、導電性付与剤とカーボンブラックA(GPF相当)を20質量部添加し、を混合し、液状ゴムコンパウンドを調製しこれを金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、金型を120℃で10分間加熱、冷却した後に脱型した後、200℃で30分間加熱してシリコーンゴムを加硫硬化し、厚み3mmの弾性体層を軸芯体の外周に設けたローラを作製した。
【0084】
実施例1に用いたカーボンブラックAを始め、他の実施例と比較例に用いたカーボンブラックの配合前の分析値を表1に示した。表1は、配合したカーボンブラックに関するものであり、本発明の範囲とは直接関係ないものである。
【0085】
次に、ポリオール(ニッポラン5037;商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)の固形分100質量部に対し、硬化剤としてイソシアネート(コロネートL;商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)の固形分12質量部、導電剤としカーボンブラック(MA11;商品名、三菱化学製)を30質量部添加し、メチルエチルケトンを主溶剤として用い、十分に撹拌して、均一な固形分11%の有機溶剤混合溶液となるよう調整した。この塗料溶液中に、上記ローラを浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥させ、142℃にて30分間加熱処理することで、約18μmの表面層を弾性体層の外周に設けた弾性ローラ1を作製した。
【0086】
このようにして作製した弾性ローラ1の基層(弾性層12)から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する分布曲線の半値幅(ΔD50)の比(ΔD50/Dst)は、1.38であった。
【0087】
[実施例2]弾性ローラ2
導電材の種類をカーボンブラックB(ISAF相当)に変更し、添加量を18質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ2を作製した。作製した弾性ローラ2の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、1.19であった。
【0088】
[実施例3]弾性ローラ3
導電材の種類をカーボンブラックC(GPF相当)に変更し、添加量を22質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ3を作製した。作製した弾性ローラ3の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、0.78であった。
【0089】
[実施例4]弾性ローラ4
導電材の種類をカーボンブラックD(HAF相当)に変更し、添加量を20質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ4を作製した。作製した弾性ローラ4の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、0.70であった。
【0090】
[実施例5]弾性ローラ5
導電材の種類をカーボンブラックE(ISAF相当)に変更し、添加量を16質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ5を作製した。作製した弾性ローラ5の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、1.07であった。
【0091】
[実施例6]弾性ローラ6
導電材の種類をカーボンブラックF(SRF相当)に変更し、添加量を46質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ6を作製した。作製した弾性ローラ6の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、1.33であった。
【0092】
[実施例7]弾性ローラ7
導電材の種類をカーボンブラックG(HAF相当)に変更し、添加量を20質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ7を作製した。作製した弾性ローラ7の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、1.38であった。
【0093】
[実施例8]弾性ローラ8
導電材の種類をカーボンブラックH(ISAF相当)に変更し、添加量を12質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ8を作製した。作製した弾性ローラ8の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、1.27であった。
【0094】
[比較例1]弾性ローラ9
導電材の種類をカーボンブラックI(HAF相当)に変更し、添加量を20質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ9を作製した。作製した弾性ローラ9の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、2.68であった。
【0095】
[比較例2]弾性ローラ10
導電材の種類をカーボンブラックJ(ISAF相当)に変更し、添加量を30質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ10を作製した。作製した弾性ローラ10の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、1.76であった。
【0096】
[比較例3]弾性ローラ11
導電材の種類をカーボンブラックK(GPF相当)に変更し、添加量を24質量部とした以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ11を作製した。作製した弾性ローラ11の弾性層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ΔD50/Dstは、1.43であった。
【0097】
[特性の評価]
以上の様にして得られた弾性ローラを現像ローラとして実機に組み込み、各種の評価を行った。
<ローラ抵抗の測定及び電圧依存性の評価>
10V印加、100V印加にてローラ抵抗を測定し、その変化割合から電圧依存性を評価した。表1においては、便宜的に、0.40桁以下のものを◎、0.40を超え0.60桁以下のものを○、0.60を超えるものを×とした。
<画像品質の評価>
画像品質の評価は、1000枚プリント前後において、ベタ黒画像と、ハーフトーン(HT)画像という色合いの異なる2種類の画像をプリントし、その画像の品質、特に濃度ムラに着目して評価した。良好なものを◎、問題がないものを〇、やや濃淡が確認されるものを△、明らかにムラや著しい画像不良が確認されるものを×とした。
<総合評価>
以上、総合評価としては、ベタ黒、ハーフトーンの画像品質、及びその他不具合の発生がないかを判断し、画像レベルが良好なものを◎、画像レベルいずれにも問題がないものを〇、問題の生じたものを×とした。
【0098】
上記の基準に基づき評価した結果を、表2に示した。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
表2に示すとおり、実施例1〜8では、付着性、耐久性いずれの性能にも問題はなかった。その中でも実施例2、3、4、は、特に良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の弾性ローラの全体構成の一例を模式的に示す図ある。
【図2】本発明の弾性ローラにおける、ローラ層の二層構造を模式的に示す断面図ある。
【図3】本発明の弾性ローラを備えた現像装置を用いた画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図4】カーボンブラック製造炉の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
1…弾性ローラ
2…現像装置
3…画像形成装置
11…軸芯体
12…弾性体層(基層)
13…樹脂層(表層)
21…感光ドラム
22…帯電装置
23…レーザー光
25…現像ローラ
26…補助ローラ
27…弾性ブレード
28…トナー
29…転写ローラ
30…クリーニングブレード
31…廃トナー容器
32…定着装置
33…紙
34…現像容器
4…カーボンブラック製造炉
41…燃焼域
42…原料油導入位置
43…後部反応域
44…燃料油
45…空気
46…原料油(ノズル)
47…反応停止水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体の外周面に少なくとも1層以上が形成されたローラの、そのいずれか1つ以上の層において、主成分がゴム又は樹脂であり、該層から取り出し単離したカーボンブラック成分を遠心沈降分析により測定したアグリゲート特性で、ストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する分布曲線の半値幅(ΔD50)の比(ΔD50/Dst)が1.40以下の条件を満たすものであることを特徴とする弾性ローラ。
【請求項2】
前記カーボンブラック成分のストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(Dst)に対する90%粒子径(D90)の比(D90/Dst)が1.20以上2.40以下の条件を満たすものである請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記カーボンブラック成分のDBP吸油量が40〜110ml/100gである請求項1又は2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
前記カーボンブラック成分が、前記層を形成するゴム又は樹脂100質量部に対して、10〜50質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の弾性ローラを備えていることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の弾性ローラを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−184446(P2006−184446A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376595(P2004−376595)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】