説明

弾性ローラ、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置

【課題】柔軟性を達成し、ブリードの抑制が良好で、硬度の温度依存性が小さく、画像形成に優れた弾性ローラ、電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性軸芯体、弾性層および表面層を有する弾性ローラにおいて、該弾性層が、分子内にポリアルキレン構造及びシロキサン構造を有するシロキサン変性ゴムと、シリコーン油と、を含有していることを特徴とする弾性ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性ローラ、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置においては、現像ローラや帯電ローラとして弾性層を有する弾性ローラが用いられている。その理由としては、感光体ドラムとの当接部においてトナーに過度のストレスが加わることを避けられること、感光体ドラムとのニップ幅を十分に確保できること等が挙げられる。特許文献1には現像ローラの弾性層に炭化水素系の軟化剤を含有させることで弾性層を低硬度化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−240742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの検討によれば、上記従来例には以下のような課題があった。すなわち、炭化水素系の軟化剤は一般に粘度の温度依存性が大きい。そのため、環境によって弾性ローラの弾性が変化してしまうことがあった。一方、シリコーン油は炭化水素系の軟化剤と比較して、粘度の温度依存性が小さい。しかし、ポリアルキレン構造を有する原料ゴムに対しては相溶性が低いため、当該原料ゴムを含む弾性層の軟化剤として使用することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、柔軟性を達成しつつ、ブリード抑制が良好で、画像形成に優れた弾性ローラを提供することにある。またこの様な性能を備えた弾性ローラを現像ローラとして用いた電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性ローラは、導電性軸芯体、弾性層および表面層を有する弾性ローラにおいて、該弾性層が、分子内にポリアルキレン構造及び一般式(1)で示されるシロキサン構造を有するシロキサン変性ゴムと、シリコーン油と、を含有していることを特徴とする。
【化1】

(一般式(1)中、mは1から20の整数であって、R1及びR2は各々独立して飽和炭化水素基、水素原子あるいは不飽和炭化水素基である。)
【0007】
また、本発明に係る電子写真プロセスカートリッジは、現像ローラと感光体ドラムとを有し、これらが一体化して、電子写真画像形成装置の本体に脱離可能に構成されている電子写真プロセスカートリッジであって、該現像ローラが上記の弾性ローラであることを特徴とする。更に、本発明に係る電子写真画像形成装置は、現像ローラと感光体ドラムとを有している電子写真画像形成装置において、該現像ローラが上記の弾性ローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柔軟性、ブリードの抑制に優れ、画像形成に優れた弾性ローラが提供できる。またこの様な性能を備えた弾性ローラを現像ローラとして用いた電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の弾性ローラの概略断面図である。
【図2】現像ローラの抵抗ムラ評価の測定方法を示す図である。
【図3】本発明の電子写真画像形成装置の概略構成断面図である。
【図4】本発明の電子写真プロセスカートリッジの概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは上記した課題に対し検討を重ねてきた。その結果、ポリアルキレン構造を主鎖に有する架橋ゴムに下記一般式(1)で示すシロキサン構造をグラフトさせた変性ゴムに対してシリコーンオイルを添加した場合、当該シリコーンオイルのブリードを抑制できることを見出した。これは、当該変性ゴムとシリコーンオイルとの相溶性が向上するためであると考えられる。そのため、上記の変性ゴムに対してシリコーンオイルを添加して軟化させたゴムで弾性層を形成した場合、当該弾性層はシリコーンオイルのブリードが抑制され、かつ、温度変化に対する硬度変化の程度が少ない弾性層となる。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る弾性ローラは、図1に示すように導電性軸芯体1上に弾性層2を有し、更にその外周に表面層3を有する。弾性層は外部からの応力により変形するが、応力が除かれれば元の形状に戻る性質を有する。弾性層はシロキサン変性ゴムとシリコーン油を含む素材によって構成されている。シロキサン変性ゴムは、分子内にポリアルキレン構造及び一般式(1)で示されるシロキサン構造を有する。ポリアルキレン構造を有するゴムはセット性や成形加工性に優れており、例えば以下のものが挙げられる。エチレンープロピレンゴム、エチレンープロピレンージエンゴム、イソプレンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)。これらの中でも、特にエチレンープロピレン−ジエンゴムはその構造からシリコーンオイルとの混練性やセット性に優れており、好適である。
【0012】
エチレン−プロピレン−ジエンゴムの構成成分であるジエンモノマーとしては、エチリデンノルボルネン、ヘキサジエン、オクタジエンが挙げられる。なかでも、エチリデンノルボルネンを使用して製造されるエチレン−プロピレン−ジエンゴムは、架橋速度が速く、しかも物性のバランスがとれている点から好ましい。また、このエチレン−プロピレン−ジエンゴムのヨウ素価は、導電剤の分散による抵抗ムラ及び弾性層の弾性の観点から10以上40以下のものが適している。なお、ヨウ素価の異なる2種以上のエチレン−プロピレン−ジエンゴムを混合して用いてもよい。
【0013】
シロキサン変性ゴムは、一般式(1)に示されるシロキサン構造を有している。ゴム成分中に一般式(1)のシロキサン構造を導入することでシリコーン油との相溶性が向上し、弾性層中からのシリコーン油のブリードを抑制することができる。一般式(1)において、mが20よりも大きいとシロキサン変性ゴムが脆くなり、繰り返し画像形成により現像ローラが磨耗してしまう場合がある。
【化2】

(一般式(1)中、mは1から20の整数であって、R1及びR2は各々独立して飽和炭化水素基、水素原子あるいは不飽和炭化水素基である。)
【0014】
一般式(1)中のR1及びR2は、各々独立して水素原子、メチル基またはビニル基であることが好ましい。弾性層中におけるシロキサン変性ゴムの含有量は1.0質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に用いられるシリコーン油は数平均分子量Mnが2000以上150000以下であることが好ましい。2000以上ではシリコーン油が移動拡散しにくく、150000以下の場合は柔軟な弾性層を得ることが可能となる。また、弾性層中におけるシリコーン油の含有量は10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。該シリコーン油の弾性層中の含有量が10質量%以上であれば柔軟な弾性層を得ることが可能であり、50質量%以下の場合、シリコーンオイルのブリ―ドを抑制することができる。なお、シリコーン油の数平均分子量は25℃で回転型粘度計にて測定されるが、測定に際しては、予め数平均分子量がわかっているシリコーンオイルを用いて検量線が作成される。
【0016】
弾性層の好ましい厚さは1mm以上5mm以下である。1mm以上とすることで弾性層としての機能を十分に果たし、トナーの劣化を抑制できる。また、5mm以下とすることで成形加工性が安定し、形状不良の低減が図られる。また、弾性層は単層構成或いは2層以上の積層構成とすることができる。
【0017】
弾性層には、必要に応じて、無変性のゴム、導電剤、充填剤、増量剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤又は加工助剤等の各種添加剤を使用することができる。無変性のゴムとしては以下のものが挙げられる。エチレンープロピレンゴム、エチレンープロピレンージエンゴム、イソプレンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)。その中でもシロキサン変性ゴムとの相溶性の観点から、上記シロキサン変性ゴムのベースポリマーと同じゴムを用いることが好ましい。即ち、弾性層は無変性のエチレン−プロピレン−ジエンゴムを含んでいることが好ましい。特に弾性層は無変性のエチレン−プロピレン−ジエンゴムを20質量%以上30質量%以下含んでいることが好ましい。
【0018】
導電剤としては、例えば以下のものが挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属粉体や繊維、カーボンブラック。これらの導電剤の中では特にカーボンブラックが、性能、品質、コストの面から好適である。充填剤または増量剤としては、公知の物が使用可能であり、例えば以下のものが挙げられる。乾式シリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤。これらの充填剤または増量剤の表面を有機珪素化合物、例えば、ポリジオルガノシロキサン等で処理して疎水化してもよい。
【0019】
架橋剤としては、以下のものが挙げられる。テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、N,N′−ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物や硫黄。また、以下の有機過酸化物系の架橋剤を使用することもできる。tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート。
【0020】
架橋助剤としては、例えば以下の化合物が挙げられる。エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、2,2'-ビス-(4-メタクリロイルジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジビニルベンゼン、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、トリアジンジチオール、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ビスマレイミド。
【0021】
これら架橋剤、架橋助剤の総使用量としては、弾性層に使用する架橋前の変性ゴム、未変性ゴムの合計100質量部に対して、通常0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。架橋剤、架橋助剤の総使用量が0.01質量部以上であれば、架橋による網目鎖を得ることが可能であり、10質量部以下であれば、網目鎖が多すぎずに、柔軟な弾性層を得ることができる。
【0022】
酸化防止剤としては、以下のものが挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤。また、老化防止剤としては、フェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩類を挙げることができる。加工助剤としては公知の材料が使用可能であり、ステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸、あるいは脂肪酸の金属塩やエステル等が挙げられる。
【0023】
これら添加剤は公知の混練方法によってゴム成分に混練される。混練方法としては、バンバリーミキサーによる混練、ニーダーによる混練、押出成形機による混練、2本ロールによる混練が使用可能であり、添加剤の種類や量により適宜選択される。弾性層は、従来から知られている押出成形法、射出成形法の如き成型方法によって形成または製造することができる。
【0024】
次に表面層について説明する。本発明の弾性ローラは弾性層の外周上に表面層を有している。この表面層は有機系または無機系の素材で形成されている。表面層の厚みは、形成される表面層の種類や形成方法により適宜選択される。また、表面層は1層あるいは2層以上の構成とすることができる。表面層を形成する場合、弾性層と表面層の剥離が生じず、より密着性を向上させるために、弾性層の外周上をコロナ処理、フレーム処理、エキシマUV処理等によって表面改質を行うことができる。
【0025】
有機系の表面層としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂で形成された表面層が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂;フッ素樹脂;スチレン系樹脂;ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコ−ン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0026】
無機系の表面層としては、シリカ膜や炭素膜が挙げられる。シリカ膜としてはO―Si―O構造を主骨格とし、さらに表面層におけるケイ素原子と酸素原子の占める存在比が0.60以上であり、O−Si−Oの主骨格以外にSi−H及びSi−Cの化学結合を有するものが挙げられる。炭素膜としては高硬度、電気絶縁性、赤外線透過性を持つカーボン薄膜のダイヤモンドライクカーボン(DLC)が挙げられる。DLCの構造は炭素原子を主骨格とし、かつ若干の水素原子を含有し,ダイヤモンド結合(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造である。
【0027】
有機系の表面層の場合、その厚みは3μm以上100μm以下であることが好ましい。3μm以上であれば、耐久性が確保でき、100μm以下であればトナーの劣化が抑制可能な現像ローラを得ることができる。無機系の表面層の場合、その厚みは0.01μm以上3μm以下であることが好ましい。0.01μm以上であれば、弾性層の保護が可能であり、3μm以下であれば、表面層の割れ等も抑制可能で耐久性に優れた現像ローラを得ることができる。
【0028】
表面層は、ディップコート、スプレーコート、ロールコートの如き塗工方法によって形成することができる。または多層押出成形やチューブ被覆などの方法やプラズマCVD法の如き公知の方法を用いることも可能である。
【0029】
本発明に使用される弾性ローラの導電性軸芯体としては、公知のものが使用可能であり、その材料は十分な強度を有し、且つ導電性を有すればよい。例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケルなどの金属や合金、炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の剛直で導電性を示す材料が挙げられる。合金鋼としては、ステンレス鋼,ニッケルクロム鋼,ニッケルクロムモリブテン鋼,クロム鋼,クロムモリブテン鋼,Al,Cr,Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。更に防錆対策として軸芯体材料にめっき、酸化処理を施すことができる。形状としては棒状体又はパイプ状体のものが使用できる。また、弾性層との密着性を向上させる目的で、必要に応じて、その表面にプライマー処理層を形成してもよい。導電性軸芯体の外径は通常直径4mm以上直径20mm以下の範囲である。
【0030】
本発明における現像方法において使用されるトナーとしては、粉砕トナー、重合トナーなど従来からこの分野で使用される公知のトナーが挙げられる。
【0031】
次に本発明の弾性ローラを現像ローラとして使用する電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置について説明する。本発明の電子写真プロセスカートリッジは、前記現像ローラと、感光体ドラムとを有し、また、これらが一体化して、電子写真画像形成装置の本体に脱離可能に装着されて画像形成を行う電子写真プロセスカートリッジである。
【0032】
図4において、感光体ドラム9は、帯電ローラ16によって一様に帯電され、露光手段であるレーザー光15により、感光体ドラム表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、感光体ドラムに対して接触配置される現像装置14によってトナー像として可視化される。トナー12は現像ローラ10とトナー供給用ローラ11及び現像ローラ10とトナーの層厚の規制部材13との間をすり抜ける形で通過していき、感光体ドラム上に付着する。こうして感光体ドラム上に形成された潜像は可視化される。トナー供給用ローラとしては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体上にレーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ10へのトナー供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。例えば、軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの弾性ローラを用いることができる。
【0033】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光体ドラム上のトナー像は、転写部材である転写ローラ21によって記録媒体である紙に転写される。トナー像を転写された紙26は、定着装置19により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。一方、転写されずに感光体ドラム上に残存したトナーは、クリーニングブレード18により掻き取られ廃トナー容器17に収納される。一方、クリーニングされた感光体ドラム9は前記の動作を繰り返す。
【0034】
図4の電子写真プロセスカートリッジは、現像ローラ10と規制部材13、現像装置14、帯電ローラ16及び感光体ドラム9を有し、その他トナー供給用ローラ11、廃トナー容器17、クリーニングブレード18も組みこんでもよい。これらの部材が一体的に保持されてなるものであり、画像形成装置に着脱可能に設けられる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によってさらに本発明を詳細に説明する。実施例中のシリコーンオイルについてはSH200(商品名、東レダウコーニング社製)を用い、分子量については、各実施例中に記載の分子量となるように分子量の異なるグレードをブレンドし調整したものを用いた。また、原材料に特に記載が無い場合においては、市販の高純度品を使用した。
【0036】
[実施例1]
[弾性層の形成]
まず、本実施例に用いるシロキサン変性ゴムを製造した。すなわち、下記表1−1に記載の材料をニーダーを用いて温度200℃で15分間混練して反応させ、下記構造式Aで示される基をグラフトさせた変性エチレン−プロピレン−ジエンゴムを製造した。当該変性EPDMに下記構造式Aで示される構造が導入されたことは、1H NMRで確認した。
【化3】

【0037】
【表1】

【0038】
次いで、表1−2に示した材料(1)〜(5)をニーダーを用いて混練した。更に材料(6)及び(7)を添加してオープンロールにて混合して未加硫ゴム組成物を得た。
【表2】

【0039】
得られた未加硫ゴム組成物をベント式ゴム押出機(D=50mm L/D=16 EM技研社製)を用いてチューブ状に押出した。その後、加硫缶を用いた加圧水蒸気により160℃で30分間の一次加硫を行い、外径14mm、内径5.5mm、長さ250mmのゴムチューブを得た。次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形の導電性軸芯金(硫黄複合快削鋼製、表面はニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部232mmにケムロック459X(商品名、ロード社製)をプライマーとして塗布したものに、前述のゴムチューブを圧入した。圧入後、熱風炉にて160℃で2時間の二次加硫と接着処理した。この加硫後のローラのゴム両端部を切り落とし、ゴム部分の長さを232mmとした後、ゴム部分をGC80の砥石を使用して回転研磨機にて研磨加工し、導電性軸芯体の外側に弾性層を配置した。
【0040】
[表面層の形成]
ポリオールとしてニッポラン5033(商品名、日本ポリウレタン社製)、硬化剤としてイソシアネートのコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を使用し、[NCO]/[OH]のモル比の値が1.2となるように混合した。これらの混合物の固形分の合計100質量部に対して、カーボンブラックMA100(商品名、三菱化学社製)を30質量部添加した。更にメチルエチルケトンを加え、固形分20質量%に調整し、平均粒径が16μmのウレタン樹脂粒子CFB−101−40(商品名、大日本インキ化学工業社製)を5質量部加え、混合したものを表面層の原料液とした。前記弾性層付きの導電性軸芯体をこの原料液中に浸漬した後に引き上げて弾性層の外周にコーティング層を形成した。次いでこれを乾燥させ、160℃にて20分間加熱処理することで、厚み約20μmの表面層が弾性層の外周に形成された弾性ローラを得た。このようにして得られた弾性ローラを現像ローラとして使用して、以下の各種評価を実施した。
【0041】
[抵抗ムラの評価]
図2に示すような測定装置を使用し、室温20℃、相対湿度50%RH環境下にて直径Φ40mmのSUSドラム6に現像ローラを当接させ軸芯金の両端露出部に500gの荷重をかける。この状態で現像ローラ10を45rpmで回転させ、導電性芯体よりDC100Vを2秒間印加した時の抵抗値をマルチメーター5にて0.1秒ごとに21点測定する。そして現像ローラが一周する間の電気抵抗値の最大値と最小値を測定し、その比(最大値/最小値)を現像ローラの抵抗値ムラとし、評価を以下の基準にて行った。
A:1.1倍未満。
B:1.1倍以上1.2倍未満。
C:1.2倍以上2.0倍未満。
D:2.0倍以上3.0倍未満。
E:3.0倍以上。
【0042】
[ブリードの評価]
現像ローラを温度40℃、湿度95%の恒温恒湿槽中に1週間放置したあとで取り出し、カラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込んだ。そしてこのカートリッジをLBP5400本体に取り付け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で印字率50%のハーフトーン画像を10枚出力した。その画像に該現像ローラの周期にブリードに起因する白い画像欠陥の有無について以下の基準にて評価した。
A:画像上にブリードの影響による白い画像欠陥がない。
B:1枚目の出力画像には軽微な白い画像欠陥がみられるが、2枚通紙以降には見られない。
C:1枚目の出力画像に白い画像欠陥がみられるが、2枚通紙以降軽微で5枚目以降は見られない。
D:10枚出力後も僅かに白い画像欠陥がある。
E:10枚出力後も白い画像欠陥がある。
【0043】
[削れ、耐久性の評価]
現像ローラの中央部の外径d1を予め測定した後、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽中にてLBP5400用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込んだ。その後、印字率2%濃度の画像をA4サイズの用紙(キヤノンカラーレーザーコピアペーパー;坪量81.4g/m2、厚さ92μm、白色度92%)に出力し、3000枚出力した。その後、現像ローラに付着したトナーをエタノールで拭取り、長手中央部の外径d2を測定し、d1とd2の外径差を削れ量として、画像出力前後の削れ量を以下の基準にて評価した。
A:現像ローラに削れがみられない。
B:現像ローラの端部に極軽微な削れがあるが、問題なし。
C:現像ローラの端部に削れがあるが、画像領域には問題なし。
D:現像ローラの画像領域に削れがみられ、画像不良がみられる。
【0044】
[セットの評価]
現像ローラをLBP5400用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込んだ。これを、温度40℃、湿度95%の恒温恒湿槽中で30日放置した。この後に、温度20℃、相対湿度50%の環境へ移動し一日放置し、このカートリッジをLBP5400本体に搭載しハーフトーン画像をA4サイズの用紙(キヤノンカラーレーザーコピアペーパー;坪量81.4g/m2、厚さ92μm、白色度92%)に印刷した。得られた画像を目視で検査し、ブレード圧接跡の画像への影響を下記の基準に基づき評価した。尚、ハーフトーン画像は濃度計X−Rite530(商品名、X−Rite社製)を用いた測定による濃度が0.7である画像を使用した。
A:圧接跡の画像不良がみられない。
B:圧接跡の画像不良が軽微に見られる。
C:圧接跡の画像不良が見られる。
D:圧接跡の画像不良が顕著に見られる。
【0045】
[濃度ムラの評価]
得られた現像ローラを温度30℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽中にてLBP5400用の電子写真プロセスカートリッジへ組み込んだ。その後、ハーフトーン画像をA4サイズの用紙(キヤノンカラーレーザーコピアペーパー;坪量81.4g/m2、厚さ92μm、白色度92%)に印刷し、目視にてムラの有無を確認した。尚、ハーフトーン画像は濃度計X−Rite530(商品名、X−Rite社製)を用いた測定による濃度が0.7である画像を使用した。
A:濃度ムラはみられない。
B:濃度ムラが極軽微。
C:濃度ムラが軽微。
D:濃度ムラがある。
【0046】
[実施例2〜6]
実施例1の材料(1)におけるベースゴムにグラフトさせた構造(構造式A)を、下記一般式(2)で示され、かつ、R1、R2及びmを下記表2に示した構造に変えた以外は実施例1と同様にして弾性ローラを製造し評価した。
【化4】

【0047】
【表3】

【0048】
[実施例7〜15]
実施例2の弾性層材料に更に材料(8)として下記表3に示した量の無変性のEPDMを加えた。また、材料(1)、(4)及び(5)を表3に示したように変更した。それら以外は実施例2と同様にして弾性ローラを製造し評価した。結果を表3に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
[実施例16〜25]
実施例1の弾性層材料の材料(1)、(2)、(4)及び(5)の使用量を表5に示したように変更した。それ以外は実施例1と同様にして弾性ローラを製造し評価した。結果を表4に示す。
【表5】

【0051】
[実施例26〜35]
実施例7の弾性層材料の(1)、(2)、(4)、(5)及び(8)を下記表5に示した様に変更した。それ以外は実施例7と同様にして弾性ローラを製造し評価した。結果を表5に示す。
【表6】

【0052】
[実施例36〜41]
実施例1の弾性層材料の(1)、(2)、(4)及び(5)を下記表6に示した様に変更した。それ以外は実施例1と同様にして弾性ローラを製造し評価した。結果を表6に示す。
【表7】

【0053】
[実施例42−52]
実施例7の弾性層材料において(1)、(8)、(4)及び(5)を下記表7に示した様に変更し、また、表面層として下記の方法でシリカ膜を形成させた。それ以外は実施例1と同様にして弾性ローラを製造し評価した。結果を下記表7に示す。
〔シリカ膜の形成〕
平行平板のプラズマCVD装置内に弾性層を電極との距離を50mmとなるように設置した後、真空ポンプを用いて真空チャンバー内を0paに減圧した。その後、混合ガス(流量:ヘキサメチルジシロキサン蒸気20sccm、酸素100sccm、及びアルゴンガス22.5sccm)を、真空チャンバー内に導入し、真空チャンバー内の圧力が1.0Paになるように調整した。圧力が一定になった後、高周波電源により周波数が13.56MHz、70wの電力を、長さが300mmで放電部の総面積が120cm2となる平板電極に供給し電極間にプラズマを発生させた。真空チャンバー内に設置した弾性層を有するローラは30rpmで回転させて、300秒間処理を行い厚み約500nmのシリカ膜を表面層として形成した。
【表8】

【0054】
[比較例1]
実施例1の弾性層材料の(1)を無変性のエチレンープロピレンージエンゴム(商品名:エスプレン505、住友化学社製)に変更した。それ以外は実施例1と同様にして弾性ローラを製造し評価した。比較例1の評価結果を下記表8に示す。
【表9】

【符号の説明】
【0055】
1 ・・・導電性軸芯体
2 ・・・弾性層
3 ・・・表面層
4 ・・・荷重
5 ・・・マルチメーター
6 ・・・SUSドラム
7 ・・・内部抵抗
8 ・・・DC電源
9 ・・・感光体ドラム
10 ・・・現像ローラ
11 ・・・トナー塗布部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体、弾性層および表面層を有する弾性ローラにおいて、該弾性層が、分子内にポリアルキレン構造及び一般式(1)で示されるシロキサン構造を有するシロキサン変性ゴムと、シリコーン油と、を含有していることを特徴とする弾性ローラ。
【化1】

(一般式(1)中、mは1から20の整数であって、R1及びR2は各々独立して飽和炭化水素基、水素原子あるいは不飽和炭化水素基である。)
【請求項2】
前記R1及びR2が各々独立してメチル基、水素原子またはビニル基である請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記シロキサン変性ゴムがエチレン−プロピレン−ジエンゴムである請求項1または2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
現像ローラと感光体ドラムとを有し、これらが一体化して、電子写真画像形成装置の本体に脱離可能に構成されている電子写真プロセスカートリッジであって、
該現像ローラが請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項5】
現像ローラと感光体ドラムとを有している電子写真画像形成装置において、該現像ローラが請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−118112(P2011−118112A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274597(P2009−274597)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】