説明

弾性ローラおよびその製造方法

【課題】発泡体層を用いて柔軟性を達成しつつ、圧縮永久変形性が良好な弾性ローラおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】導電性軸芯体と該導電性軸芯体の外周面上に発泡体層とを有し、該発泡体層の外周面上に被覆層を有する弾性ローラであって、該発泡体層は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムおよびノルボルネンゴムのうちの少なくとも1つの原料ゴムと、明細書中に定義される式1〜3で示される化合物のうちの少なくとも1つの化合物とを含むことを特徴とする弾性ローラ。この弾性ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性ローラおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられている現像ローラは、トナーへのストレスを軽減するために弾性層を有する構成が一般的である。しかし、現像ローラは、他の当接部材との静止状態での長期に亘って当接状態が継続する場合があり、かかる場合に、弾性層には容易に回復しない永久変形(Cセット)が生じることある。低圧縮永久変形性に関して、発泡体層が存在する場合には短繊維をゴム材料中に分散するなどして圧縮永久変形量を減少させる方法が特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−090627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら短繊維を用いた発泡弾性ローラの圧縮永久変形量の低減は、発泡体層が短繊維により、強く補強されてしまう場合があり、柔軟さを損なう場合がある。
そこで、本発明の目的は、発泡体層の柔軟性を達成しつつ、圧縮永久変形が生じ難い弾性ローラおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる弾性ローラは、導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の外周面上に発泡体層とを有し、該発泡体層の外周面上に被覆層を有する弾性ローラであって、該発泡体層は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムおよびノルボルネンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1つの原料ゴムと、下記式1〜3で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを含むことを特徴とする弾性ローラが提供される。
【0006】
【化1】

【0007】
(式(1)中、nは1または2を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素原子数3または4のアルキル基を表し、R3は炭素原子数7以上11以下のアルキル基を表す。)
【0008】
【化2】

【0009】
(式(2)中、tは0または1を表し、R4からR13は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1以上2以下のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基または炭素数1以上2以下のアルコキシ基を表す。)
【0010】
【化3】

【0011】
(式(3)中、R14は水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。mはメチレン基の個数を表し0以上18以下の整数を表す。式3の化合物の全炭素数は12以上20以下である。)
また本発明により、前記弾性ローラの製造方法であって、(1)該式1〜3で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、該原料ゴムとを混練して未架橋ゴム組成物を得る工程と、(2)該未架橋ゴム組成物で導電性軸芯体の周面を被覆し、該未架橋ゴム組成物を発泡および架橋させることにより該発泡体層を得る工程とを有することを特徴とする弾性ローラの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば発泡体層を用いて柔軟性を達成しつつ、圧縮永久変形性が良好な弾性ローラおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の弾性ローラの一形態の概略を示す模式的断面図である。
【図2】電流測定方法の説明図である。
【図3】本発明に係る電子写真画像形成装置の断面図である。
【図4】本発明に係る電子写真プロセスカートリッジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の弾性ローラを現像ローラとして用いた場合、ローラの圧縮永久変形や感光ドラム汚染による画像濃淡ムラや画像形成の繰り返しによるローラ電流値低下に起因する画像濃度低下が少なく、高品位の画像を得ることが可能である。
【0015】
<<弾性ローラ>>
本発明の弾性ローラは図1に示すように導電性軸芯体1と、導電性軸芯体1の外周面上に発泡体層2とを有し、発泡体層2の外周面上に被覆層3を有する構成となっている。
【0016】
<導電性軸芯体>
導電性軸芯体は、現像ローラや帯電ローラ、定着ローラなどの弾性ローラに従来用いられているものが使用可能である。
【0017】
<発泡体層>
本発明に用いる発泡体層は、後述の原料ゴムと、後述の式1〜3でそれぞれ表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物(以下場合により、網目形成成分と称す)とを含み、可塑剤を含まない。なお、発泡体層とは、気泡を含有する架橋ゴム層を意味する。また、発泡体層は、前記導電性軸芯体の外周面上に形成される。発泡体層は必ずしも導電性軸芯体の外周面に接している必要はなく、導電性軸芯体と発泡体層との間にプライマー処理層などを有しても良い。
【0018】
(原料ゴム)
発泡体層2に用いられる原料ゴムとしては、以下のものが挙げられる。エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エピクロロヒドリンゴム(CO)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)およびノルボルネンゴム(NOR)。これらの原料ゴムは液状でもかまわない。またこれらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。以降、上記原料ゴムに、網目形成成分と、必要に応じて導電剤、発泡剤等の各種添加剤とを加え混練したものを未架橋ゴム組成物と表現する。また、前記未架橋ゴム組成物を架橋させたものを架橋ゴムと本明細書中では表現する。
【0019】
(網目形成成分)
本発明に用いられる網目形成成分は、式1、式2および式3でそれぞれ表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である。
【0020】
【化4】

【0021】
(式(1)中、nは1または2を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素原子数3または4のアルキル基を表し、R3は炭素原子数7以上11以下のアルキル基を表す。)
【0022】
【化5】

【0023】
(式(2)中、tは0または1を表し、R4からR13は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1以上2以下のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基または炭素数1以上2以下のアルコキシ基を表す。)
【0024】
【化6】

【0025】
(式(3)中、R14は水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。mはメチレン基の個数を表し0以上18以下の整数を表す。式3の化合物の全炭素数は12以上20以下である。)
網目形成成分は、未架橋ゴム組成物及び架橋ゴム中で水素結合やファンデルワールス力などにより自己集合し、網目構造を形成する。この網目構造は先にも述べたように、水素結合やファンデルワールス力などの弱い結合により形成されているため、熱を加えると網目構造が破壊されるが冷却と共に再び自己集合し網目構造を形成する。これら網目構造を形成する網目形成成分を発泡体層に添加することにより以下のような効果が得られる。
【0026】
すなわち、画像形成の繰り返しによる電流値低下が少ない弾性ローラが得られる。画像形成の繰り返しによる電流値低下は、架橋ゴム中に分布しているカーボンブラックが通電や繰り返し応力により凝集することで生じるものと考えられる。発泡体層を形成するような気泡を含有する架橋ゴムである発泡ゴムは、非発泡ゴムに比べより応力による変形量が大きくなるため、カーボンブラックの凝集が起こりやすいと考えられる。しかし網目形成成分を発泡体層に添加することで可逆的網目構造が形成され、カーボンブラック分布の変化が低減される。それゆえ画像形成の繰り返しによる電流値低下が少ない弾性ローラが得られる。
【0027】
また、柔軟かつ圧縮永久変形性の良好な弾性ローラが得られる。一般的に弾性ローラをより柔軟にするには発泡体層の発泡倍率を上げることにより達成することが出来るが、発泡倍率を上げると架橋ゴムからなるセル壁が薄くなり、圧縮永久変形性への効果が低下する。前記発泡倍率とは、以下に示すように発泡前と発泡後の密度(g/cm3)を用いた式によって算出する。
【0028】
発泡倍率=(発泡前の密度)/(発泡後の密度)
しかし、網目形成成分からなる可逆的網目構造がセル壁である架橋ゴムを補強するため、セル壁が薄くても低圧縮永久変形性が得られる。それゆえ網目形成成分を発泡体層に添加すると柔軟かつ圧縮永久変形性の良好なローラが得られる。
【0029】
更には、硬度ムラが少ない弾性ローラが得られる。発泡ゴムは、配合された発泡剤を用いて加熱発泡させることでセルを形成し未架橋ゴム組成物を架橋する手法や、ミキサー等を用いて液状ゴム中に非反応性気体を混入し架橋する手法などで得られる。なお、非反応性気体としては、窒素や二酸化炭素、空気等が挙げられる。しかしセル形成時に、未架橋ゴム組成物に温度ムラ等が生じると粘度に差が生じ、均一なセル径を得ることが難しく、その結果硬度にムラが生じる。可逆的網目構造を形成する網目形成成分を発泡体層に添加することで、加熱時にも一定の粘度を維持することができるため、粘度ムラが少なくなり、加熱発泡時に細かく均一なセル径を得ることが出来る。
【0030】
前記発泡体層中の網目形成成分は、発泡体層中の原料ゴム100質量部に対し、複数ある場合は合計質量部で、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。添加質量部数が0.1質量部以上10質量部以下であれば、網目形成成分からなる可逆的網目構造が十分に容易に形成され、また発泡体層中の架橋ゴムへの良好な分散性を容易に得ることができる。そのため加熱発泡時に細かく均一なセル径が特に得られる上、網目構造による架橋ゴムの補強効果や、通電に伴うカーボンブラック分布の変化の抑制も優れ、硬度ムラが特に少なく、通電による電流値低下の差が特に少ない画像形成性の優れた弾性ローラが得られる。
【0031】
・式1に示される化合物
式1に示される化合物を構成するR1およびR2は、それぞれ独立して炭素原子数3または4のアルキル基を表し、R3は炭素原子数7以上11以下のアルキル基を表す。なお、R1、R2およびR3のアルキル基は、直鎖状のアルキル基であっても良いし、分岐状のアルキル基であっても良い。
【0032】
式1に示される化合物を構成するR1、R2およびR3が指定された炭素原子数未満の場合、式1の化合物を架橋ゴムに均一に分散させることが困難な場合がある。式1の化合物の架橋ゴムに対する分散性が低下すると弾性ローラ中に硬度ムラや画像形成の繰り返しによる電流値低下に差が生じやすく、画像弊害が生じる可能性が高くなる。また式1に示される化合物を構成するR1、R2およびR3が指定された炭素原子数を超える場合、自己集合効果が低下してしまい、十分な網目状構造を得ることが困難な場合がある。この場合、画像形成の繰り返しに伴う架橋ゴム中のカーボンブラック分布の変化の抑制や網目構造による架橋ゴムの補強効果が十分ではない上、細かく均一なセル径が得られ難い。
【0033】
式1のR1およびR2の炭素原子数がそれぞれ独立して3以上4以下のアルキル基を表し、R3の炭素原子数が7以上11以下のアルキル基を表す化合物であれば、以下の点に優れる。すなわち、分散性および自己集合効果が共に良好で、細かく均一なセル径が得られ、その化合物を用いて作製した弾性ローラは、圧縮永久変形および通電による電流値低下の抑制効果も優れる。
【0034】
式1に示される化合物のメチレン基の個数nは1または2である。メチレン基の個数nが1または2であれば、式1に示される化合物の原料となるグルタミン酸またはアスパラギン酸が入手容易かつ安価なため好ましい。
【0035】
式1に示される化合物は、例えば以下に示す方法で得ることができる。この方法とは、まず、水酸化ナトリウムなどの塩基性触媒下にグルタミン酸またはアスパラギン酸と脂肪酸ハライドとをショッテン・バウマン反応で反応させることによりN−アシル化グルタミン酸またはN−アシル化アスパラギン酸を得る。続いて、このN−アシル化グルタミン酸またはN−アシル化アスパラギン酸のカルボキシル基をエステル、酸ハライド、酸無水物等の反応性の高い活性基に変換した後アミンと反応させる。あるいは、このN−アシル化グルタミン酸およびN−アシル化アスパラギン酸などのN−アシルアミノ酸とアミンを加熱脱水することにより直接アミド化する。これらの方法等により式1に示す化合物を得ることが出来る。
【0036】
式1で表される化合物は、R1およびR2の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があるが、本発明には、このような不斉炭素に基づく光学異性体、ジアステレオマーなどの立体異性体、任意の立体異性体の混合物、あるいはラセミ体を用いてもよい。さらに式1で表される化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
・式2に示される化合物
式2に示される化合物を構成する置換基R4からR13は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1以上2以下のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基または炭素数1以上2以下のアルコキシ基を表す。前記置換基の置換位置はR4からR13において特に限定されない。なお、R4からR13のアルキル基は、直鎖状のアルキル基であっても良いし、分岐状のアルキル基であっても良い。式2に示される化合物の置換基R4からR13がそれぞれ上記の原子あるいは官能基以外の場合、自己集合性が低下し、細かく均一なセル径が得られ難く、圧縮永久変形および通電による電流値低下の抑制効果が少ない。
【0038】
式2に示される化合物の置換基R4からR13に置換されるアルキル基は炭素数1以上2以下である。炭素数が炭素数1以上2以下であれば、立体障害が少ないため自己集合性がよい。
【0039】
式2に示される化合物の置換基R4からR13に置換されるアルコキシ基は炭素数1以上2以下である。アルコキシ基の炭素数が1以上2以下であれば、立体障害が少ないため自己集合性がよい。式2に示される化合物のtは0もしくは1である。式2に示される化合物のtが2以上の場合、架橋ゴムに均一に分散することが困難であり、弾性ローラ中に硬度ムラや通電による電流値低下に差が生じやすく、画像弊害が生じる可能性が高くなる。
【0040】
式2に示される化合物は、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸触媒下にソルビトールまたはキシリトールと、少なくとも芳香環上にホルミル基を有する化合物またはそのホルミル基をジメチルアセタール化した化合物とを縮合させることで得ることが出来る。また、これら式2で示される化合物は単独であるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0041】
・式3に示される化合物
式3のR14は水素原子(H)または炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。なお、R14のアルキル基は、直鎖状のアルキル基であっても良いし、分岐状のアルキル基であっても良い。式3のmはメチレン基の個数であり、0以上18以下の整数を表す。また、式3で示される化合物の全炭素数は12以上20以下である。式3で示される化合物の全炭素数が12未満では自己集合性が弱く、十分な網目状構造を得られず、細かく均一なセル径が得られ難い上、網目構造による架橋ゴムの補強効果や、通電に伴うゴム中のカーボンブラック分布の変化の抑制が十分ではない。全炭素数が20よりも多い場合には弾性ローラ中への分散性が低下し、セル径が不均一に起因する硬度ムラや、通電による電流値低下に差が生じ、画像弊害を発生させることがある。式3で示される化合物としては、以下のものが挙げられる。ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシペンタデシル酸、ヒドロキシパルチミン酸、ヒドロキシマルガリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシノナデカン酸、ヒドロキシアラキジン酸。また、これらの化合物は1分子内にカルボキシル基とヒドロキシ基を有し、式3の構造を満たす範囲でヒドロキシ基の結合部位は限定されない。これらは一般に植物油、ロウ等を常法により加水分解、精製して得ることができる。また、これら式3で示される化合物は単独であるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0042】
(可塑剤)
本発明において用いられる発泡体層には可塑剤を含有させる必要はない。一般的に、可塑剤とは、原料ゴムの加工性向上や、架橋ゴムの柔軟化およびコスト低減のために添加される液状物の総称を意味する。可塑剤としては、例えば以下のものが挙げられる。パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマティック系オイル等の石油系可塑剤、ブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤、パインオイル、パインタール等の植物系油脂類。本発明においては上記に述べたように網目形成成分を発泡体層に含有させることにより、柔軟かつ圧縮永久変形性が良好な発泡体層が得られる。それゆえ柔軟化のために可塑剤を添加する必要がない。
【0043】
(各種添加剤)
本発明に用いることのできる発泡剤としては、例えば化学発泡剤が好適に用いられ、この化学発泡剤は有機系と無機系とに分類される。有機系の発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、バリウムアゾジカルボキシレート(Ba/AC)等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、4,4オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等のヒドラジン誘導体が挙げられる。無機系の発泡剤としては、重炭酸ナトリウム(重曹)、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。これらの発泡剤は単独で用いても2種類以上組み合わせても良い。発泡剤の添加量は前記原料ゴム100質量部に対して2質量部以上30質量部以下が好ましい。2質量部以上添加すれば発泡体層に柔軟さを容易に得ることができ、30質量部以下であれば機械的強度に優れる。
【0044】
特に本発明においては発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いることが好ましい。アゾジカルボンアミドは、分解温度・分解速度の調整が可能であり、ガス発生量も多く、分解生成物による汚染が少ないためである。発泡助剤としては、尿素系化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等の化合物が挙げられ、発泡剤に対応して添加することができる。さらに、前記発泡体層には、必要に応じて導電剤、充填剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤または加工助剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0045】
導電剤としては、以下のものが挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維、カーボンブラック、金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の導電性を有する金属化合物粉、または表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデンや、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウムを電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粉体。これらの導電剤中でも特にカーボンブラックが、性能、品質、コストの面から好適である。
【0046】
発泡体層に用いる未架橋ゴム組成物中に含まれる架橋剤としては、以下のものが挙げられる。テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、N,N’−ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物や硫黄。また、有機過酸化物系の架橋剤を使用することもできる。上記有機過酸化物系の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート。
【0047】
これら架橋剤の使用量の目安としては、発泡体層に使用する原料ゴム100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下である。
【0048】
架橋助剤としては、例えば以下の化合物が挙げられる。エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,2’−ビス−(4−メタクリロイルジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールリアクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、トリアジンジチオール、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ビスマレイミド。
【0049】
<<弾性ローラの製造方法>>
本発明の弾性ローラの製造方法は、後述する混練工程と、成形工程とを有する。また、混練工程と成形工程との間に後述する加熱工程を有することもできる。
【0050】
(混練工程)
本発明に用いる発泡体層の混練工程は、前記網目形成成分と、前記原料ゴムと、必要に応じて前記添加剤とを混練し、未架橋ゴム組成物を得る工程である。
【0051】
本発明に用いる添加剤及び網目形成成分の原料ゴムへの混練方法はバンバリーミキサーによる混練、ニーダ−による混練、2軸押出し機による混練、2本ロールによる混練などが使用可能であり、添加剤の種類や量によりこれらの方法から適宜選択される。
【0052】
なお本発明において、前記網目形成成分と原料ゴムとを混練する場合、網目形成成分を他の添加剤と同時に原料ゴム中に混練してもよい。また原料ゴム中に網目形成成分を混練する前に、沸点が100℃以下の溶剤である低沸点溶剤(液状)中に網目形成成分を溶解し、その溶液と原料ゴム及び必要に応じて各種添加剤とを混練し未架橋ゴム組成物を得るとより好ましい。低沸点溶剤とは、100℃以下の沸点を持つ溶剤であり、例えばエタノールおよびメチルエチルケトン等の有機溶剤が挙げられる。沸点が100℃以下の溶剤を用いた場合、未架橋ゴム組成物からの低沸点溶剤の除去が特に容易であると共に、低沸点溶剤の加熱除去時に未架橋ゴム組成物の発泡および架橋反応が進行することを容易に防ぐことができる。
【0053】
(成形工程)
本発明に用いる発泡体層の成形工程は、未架橋ゴム組成物を導電性軸芯体の外周面上に被覆させ、その未架橋ゴム組成物を発泡および架橋させることにより発泡体層を得る工程である。具体的には、未架橋ゴム組成物を押出機を用いて押し出し、加熱し発泡および架橋させることで発泡体層を成形する手法や、型内に未架橋ゴム組成物を充填し、発泡および架橋することで発泡体層を形成する手法などを用いることができる。なお発泡体層の作製後にその表面を研磨して形状を整えてもよい。
【0054】
(加熱工程)
添加剤のうちの少なくとも1つとして発泡剤を使用し、混練工程時に低沸点溶剤に網目形成成分を溶解し、その溶液と原料ゴム及び各種添加剤とを混練した場合、低沸点溶剤除去の観点から、混練工程と成形工程との間に、加熱工程を有することが好ましい。加熱工程とは、未架橋ゴム組成物を、その発泡剤の分解温度以下かつ未架橋ゴム組成物の架橋温度以下に加熱する工程である。加熱工程は、常圧もしくは減圧下で行うことができるが、低沸点溶剤の除去性及び未架橋ゴム組成物の加工性維持の観点から、減圧下で行うことが好ましい。本明細中で用いられる発泡剤の分解温度とは、発泡剤および発泡助剤が分解し気体を発生させる温度である。また未架橋ゴム組成物の架橋温度とは、スコーチタイム:t5が45分未満となる温度である。本明細中で用いられるスコーチタイム:t5とは、JIS K 6300の規定に準じてムーニースコーチ試験を行い、得られる値である。スコーチタイムはムーニー粘度計(島津社製)を用い円筒形のダイスに未架橋ゴム組成物を挿入し、ローターを回転させ、トルクを計測して求めることができる。
【0055】
なお本発明の実施例および比較例においては、未架橋ゴム組成物の架橋温度ではなく100℃でのスコーチタイム:t5を求めている。100℃におけるスコーチタイム:t5が45分以上であれば、未架橋ゴム組成物の架橋温度が100℃以上となるのは自明である。このため、100℃でのスコーチタイムt5が45分以上である実施例および比較例では、発泡剤の分解温度以下かつ100℃以下までは未架橋ゴム組成物を加熱することができる。
【0056】
低沸点溶剤に網目形成成分を溶解すると可逆的網目構造が形成されるが、未架橋ゴム組成物に比べ、低沸点溶剤は粘度が低いため、可逆的網目構造が形成されやすい。それゆえ網目形成成分を低沸点溶剤に溶解した後、その溶液に原料ゴムと必要に応じて各種添加剤とを混練し未架橋ゴム組成物を得た後、その低沸点溶剤を加熱除去あるいは減圧下加熱除去すると、網目形成成分からなる網目状構造物の形成が特に良好となる。その結果、より細かく均一なセル径が得られ、圧縮永久変形が少ない上、画像形成の繰り返しによる電流値低下の抑制効果も優れるため好ましい。
【0057】
<被覆層>
本発明の弾性ローラは発泡体層の外周面上に被覆層を有する。被覆層とは発泡体層の外周面上に存在する非発泡性の外周面を持つ少なくとも1つ以上の層のことを意味する。被覆層の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。また、無機被覆層を設けることもできる。無機被覆層の例としては、シリカ膜や炭素膜が挙げられる。シリカ膜としては、ケイ素原子と化学結合している炭素原子を含む酸化ケイ素膜であって、その酸化ケイ素膜中の全元素のうちのケイ素原子および酸素原子の占める合計元素数の割合が60%以上である膜が挙げられる。炭素膜としては高硬度、電気絶縁性、赤外線透過性を持つカーボン薄膜のダイヤモンドライクカーボン(DLC)が挙げられる。前記DLCの構造はC(炭素原子)を主骨格とし、かつ若干の水素原子を含有し,ダイヤモンドの共有結合(SP3混成軌道による結合)とグラファイトの共有結合(SP2混成軌道による結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造である。また被覆層は、発泡剤と発泡助剤とを除く、上述の発泡体層に含むことのできる各種添加剤を含有することができる。また各種添加剤の好ましい添加量範囲も発泡体層と同様である。
【0058】
被覆層の形成方法としては、以下のものが挙げられる。従来から知られている二層押出しによる発泡体層と被覆層の同時形成方法、射出成形や押出機を用いてチューブ形状に成形した被覆層を発泡体層に被覆する方法、ディップコート、スプレーコート、ロールコート等の湿式法、プラズマCVD法、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理的気相成長(PVD)法やプラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学的気相成長(CVD)法での乾式法。
【0059】
なお、発泡体層外周面上に被覆層を作製した後にこの被覆層表面を研磨して形状を整えてもよい。
【0060】
さらに二層以上の被覆層を持つ場合、被覆層間に剥離が生じないようにより密着性を向上させるために、1層目の被覆層の外周上を表面改質方法であるコロナ処理、フレーム処理、エキシマUV処理にて改質してもよい。なお、本発明の弾性ローラが、二層以上被覆層を有する場合、発泡体層および被覆層を全て同時に形成しても良いし、発泡体層と1層目の被覆層とを同時に形成した後に、残りの被覆層を形成しても良いし、各層を別々に形成しても良い。
【0061】
被覆層の厚みは、形成される被覆層の種類や形成方法により適宜選択することができる。
有機系の被覆層の場合には、その厚みは3μm以上1000μm以下であることが好ましい。3μm以上では均一な層厚を容易に得ることができ、1000μm以下の場合、弾性ローラの体積抵抗ムラの原因となることを容易に防ぐことができる。無機系の被覆層の厚みは0.01μm以上3μm以下が好ましい。その厚みが、0.01μm以上では、発泡体層への被覆が困難となることを容易に防ぎ、発泡体層の削れおよび磨耗が生じることを容易に防ぐことができる。その厚みが3μm以下の場合は、被覆層の割れが生じることを容易に防ぐことができる。
【0062】
図2は本発明の弾性ローラの通電による電流値低下を評価する測定方法を説明するための模式図である。直径40mmのSUSドラム6に現像ローラを当接させ芯金の両端露出部に各500gの荷重4、合計1kgの荷重をかける。この状態でローラを45rpmで回転させ、アース側に10kΩの内部抵抗7を配置し、DC電源8より100Vを2秒間印加した時の電流値をマルチメーター5にて0.1秒ごとに21点測定する。そして弾性ローラが一周する間の電流値の平均値を弾性ローラの電流値とする。
【0063】
<電子写真画像形成装置>
図3は本発明の弾性ローラを用いることが出来る電子写真画像形成装置の一例の概略図である。
感光ドラム9が矢印方向に回転し、感光ドラム9を帯電処理するための帯電ローラ16によって一様に帯電され、感光ドラム9に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光15により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム9に対して接触配置される現像ローラ10によってトナー12を付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム9上のトナー像は、バイアス電源22に接続された転写ローラ21によって記録媒体である紙26に転写される。紙26は給紙ローラ27により供給され、吸着ローラ28によって転写搬送ベルト24上に静電気的に付着させて搬送される。なお転写搬送ベルト24は駆動ローラ20、従動ローラ25、テンションローラー23に懸架されて設けられている。トナー像を転写された紙26は、定着装置19により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。一方、転写されずに感光ドラム9上に残存したトナーは、感光ドラム表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード18により掻き取られ廃トナー容器17に収納され、クリーニングされた感光ドラム9は上述作用を繰り返し行う。現像装置14は、一成分トナーとして非磁性トナーを収容した現像容器と、現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム9と対向設置された現像ローラ10とを備え、感光ドラム9上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0064】
<電子写真プロセスカートリッジ>
本発明の弾性ローラを用いることのできる電子写真プロセスカートリッジの一例の概略図を図4に示す。電子写真プロセスカートリッジには、現像ローラ10とトナー規制ブレード13、現像装置14、帯電ローラ16を有し、その他トナー塗布部材11、感光ドラム9も組みこんでもよい。また、前記カートリッジは、これらの部材が一体的に保持されてなるものであり、画像形成装置に着脱可能に設けられる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によってさらに本発明を詳細に説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【0066】
まず、式1の化合物の1種である化合物A〜E、およびその類似化合物であり、式1に該当せず網目形成成分ではない化合物F〜Hの合成方法を示す。
【0067】
[化合物Aの合成]
水酸化ナトリウム20gを180gの水に溶解した後、グルタミン酸ナトリウム一水和物95.5g(0.5モル)とアセトン100gとを加え溶液とした。その後、溶液を5℃に冷却し、ラウロイルクロライド109.4g(0.5モル)と20質量%水酸化ナトリウム水溶液105gとを同時に2時間かけて滴下し反応液を得た。反応液を80gの水で希釈し10℃に冷却し、95質量%硫酸63gを加え、得られた溶液の水層を除去し有機層を減圧濃縮して油状物質を得た。この油状物質をメタノール740gに溶解し、95質量%硫酸6.3gを加え10時間還流させた後、20℃まで冷却し、n−ブチルアミン8.9g(0.12モル)を加え、その液中のメタノールを減圧濃縮し、濃縮物質を得た。この濃縮物質をトルエン643gと、n−ブチルアミン271g(3.7モル)を加えて、80℃で10時間加熱撹拌し、冷却後これに水500g、95質量%硫酸130gを加えて、水層を除去し化合物Aが存在する有機層を得た。化合物Aが存在する有機層に水1000gを加えて、常圧で溶媒を除去し、析出した白色固体を吸引ろ過した。得られた白色個体を50℃で真空乾燥して化合物Aを得た。
【0068】
[化合物Bの合成]
化合物Aの合成に用いたラウロイルクロライドを2−エチルヘキサノイルクロライド81.3g(0.5モル)に変更した。それ以外は化合物Aの合成と同様の方法にて化合物Bを合成した。
【0069】
[化合物C〜Hの合成]
化合物Aの合成に用いたグルタミン酸ナトリウム一水和物とラウロイルクロライドとn−ブチルアミンとを後述の化合物C〜Hの構造に対応する同一モル数のアミノ酸とカルボン酸クロライドとアミンとに変更した。それ以外は化合物Aの合成と同様の方法にて化合物C〜Hを合成した。
【0070】
次に、式2の化合物の1種である化合物I〜P、およびその類似化合物であり、式2に該当せず網目形成成分ではない化合物Q〜Tの合成方法を示す。
【0071】
[化合物Iの合成]
ディーンスターク型分留管を備えた反応容器中に、トルエン500mlに加え、さらにソルビトール23.4g(0.13モル)とベンズアルデヒド27.6(0.26モル)とp−トルエンスルホン酸0.25gとを加え、6時間加熱還流を行った。加熱還流時、生成される水をディーンスターク型分留管にて分離した。加熱還流後20℃まで冷却し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、析出した白色個体を吸引ろ過した。得られた白色個体をエタノール500mlで洗浄し、吸引ろ過を行った。得られた白色個体を50℃で真空乾燥して化合物Iを得た。
【0072】
[化合物Jの合成]
化合物Iの合成に用いたベンズアルデヒドを4−メチルベンズアルデヒド31.2g(0.26モル)に変更した。それ以外は化合物Iの合成と同様の方法にて化合物Jを合成した。
【0073】
[化合物K〜Tの合成]
化合物Iの合成に用いたソルビトールとベンズアルデヒドとを後述の化合物K〜Tの構造に対応する同一モル数の多価アルコールと置換ベンズアルデヒドとに変更し、それ以外は化合物Iの合成と同様の方法にて化合物K〜Tを合成した。
【0074】
また、式3の化合物の1種である化合物U〜W、ならびにその類似化合物であり、式3に該当せず網目形成成分ではない化合物XおよびYは以下のものを用いた。
【0075】
[化合物U〜Y]
化合物U:12−ヒドロキシステアリン酸(式3の化合物の1種):和光純薬工業(株)製。
化合物V:2−ヒドロキシラウリン酸(式3の化合物の1種):シグマアルドリッチ社製。
化合物W:2−ヒドロキシアラキジン酸(式3の化合物の1種):シグマアルドリッチ社製。
化合物X:10−ヒドロキシデカン酸:シグマアルドリッチ社製。
化合物Y:22−ヒドロキシドコサン酸:INDOFINE Chemical社製。
【0076】
[実施例1]
[発泡体層用未架橋ゴム組成物の作製]
混練工程:原料ゴムとして、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)であるエスプレン505(商品名、住友化学社製)を100質量部、加工助剤として、ステアリン酸亜鉛を2質量部、導電剤として、MTカーボンブラックのサーマックスフローフォームN990(商品名、CANCAB社製)を30質量部、および、低沸点溶剤としてのエタノール(沸点:78.3℃)に溶解した化合物A(式1の化合物の1種)1質量部をニーダーにて混練した。続いて、これに架橋剤として、硫黄1質量部、架橋助剤として、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)であるノクセラーM(商品名、大内新興化学株式会社製)1質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)であるビニホールAC#3(商品名、永和化成工業社製、分解温度:208℃)5質量部、発泡助剤として尿素であるセルペーストA(商品名、永和化成工業社製、分解温度:112℃)5質量部をオープンロールにて混合し発泡体層用未架橋ゴム組成物を得た。
加熱工程:その後未架橋ゴム組成物を666Pa(5mmHg)の環境下30分間80℃に加熱した。
なお、100℃での発泡体層用未架橋ゴム組成物のスコーチタイムt5は、115分であった。
【0077】
[1層目の被覆層用未架橋ゴム組成物の作製]
原料ゴムとして、エチレン−プロピレン−ジエンゴムであるエスプレン505(商品名、住友化学社製)を100質量部、加工助剤として、ステアリン酸亜鉛を2質量部、導電剤として、MTカーボンブラックのサーマックッスフローフォームN990(商品名、CANCAB社製)30質量部をニーダーにて混練した。続いて、これに架橋剤として硫黄1質量部、架橋助剤として、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)であるノクセラーM(商品名、大内新興化学株式会社製)1質量部をオープンロールにて混合し、被覆層用未架橋ゴム組成物を得た。
【0078】
[発泡体層および1層目の被覆層の作製]
成形工程:得られた発泡体層用未架橋ゴム組成物と被覆層用未架橋ゴム組成物とを、二層押出し機を用いて、直径6mm、長さ252mmの円柱形の導電性軸芯体(硫黄複合快削鋼製、表面はニッケルメッキ)と一体となった円筒状の積層体を形成した。なお、発泡体層および被覆層の厚さの調節は各押出し機の回転数の比率を制御することで行った。次に、得られた円筒状の積層体を金型内に挿入し、160℃で架橋、および発泡を行い、発泡体層と被覆層とを同時に形成し弾性ローラを得た。ここで得られた弾性ローラを無作為に3箇所カッターにて切断し、その発泡体層断面に可視光(ハロゲンランプ)を照射して、光学顕微鏡(ライカマイクロシステム株式会社製、商品名:DMR HC金属顕微鏡)により倍率200倍にてセルの分布を観察した。その結果、セルは全体に均一に分布していた。
【0079】
[2層目の被覆層の作製]
ポリオールであるニッポラン5033(商品名、日本ポリウレタン社製)と硬化剤としてイソシアネートであるコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)とを合わせて100質量部とした。その際、両者の配合比率は[NCO]/[OH]のモル比の値が1.2となるようにした。[NCO]とはイソシアネート中のイソシアネート基のモル数であり、[OH]とはポリオール中の水酸基のモル数を示すものである。さらに、これに、導電剤として、カーボンブラックMA100(商品名、三菱化学社製)を30質量部添加した。上記原料混合物にメチルエチルケトンを加え、2層目の被覆層の膜厚が20μmとなるように固形分濃度を25質量%に調整した。それに平均粒径が16μmのウレタン樹脂粒子CFB−101−40(商品名、大日本インキ化学工業社製)を5質量部加え、均一分散、混合したものを2層目の被覆層の原料液とした。この樹脂原料液中に、得られた弾性ローラを浸漬してコーティングした後、引き上げて乾燥させ、160℃にて20分間加熱処理することで、層厚約20μmの2層目の被覆層を最外周に設けた弾性ローラを作製した。
【0080】
[圧縮永久変形性能(変形回復性)の評価]
得られた二層の被覆層を有する弾性ローラをカラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ現像ローラとして組み込み、温度40℃の恒温槽中に1ヶ月静置した。そして更に温度25℃の環境に1日静置した後、現像ローラをそのカートリッジから取り出し新しい電子写真プロセスカートリッジに組み込みLBP5400本体に取り付けた。そして、印字率100%濃度のベタおよび印字率50%濃度のハーフトーンの画像評価を以下の評価基準に基づき行った。弾性ローラの圧縮永久変形性の評価を表2に示す。
【0081】
・評価基準
A:圧接跡が画像上にみられないもの。
B:ベタ画像上に圧接跡が薄くみられるが、ハーフトーン画像上には圧接跡がみられないもの。
C:ベタ画像上に圧接跡が明確にみられ、ハーフトーン画像に圧接跡が薄くみられるもの。
D:ベタおよびハーフトーン画像上に圧接跡が明確にみられるもの。
【0082】
[感光ドラムの汚染性の評価]
得られた二層の被覆層を有する弾性ローラをカラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ現像ローラとして組み込み、温度40℃、相対湿度90%の恒温槽中に1ヶ月静置した。そして更に温度25℃、相対湿度50%の環境に1日静置した後、現像ローラをそのカートリッジから取り出し、新しい現像ローラを組み込みLBP5400本体に取り付けた。そして、印字率50%濃度のハーフトーンの画像評価を10枚出力し以下の基準に基づき行った。感光ドラムの汚染性の評価を表2に示す。
【0083】
・評価基準
A:ハーフトーン画像上に感光ドラム汚染による白い画像欠陥がない。
B:1枚目の出力画像には軽微な白い画像欠陥がみられるが、3枚通紙後には見られなくなる。
C:3枚目の出力画像には軽微な白い画像欠陥がみられるが、10枚通紙後には見られなくなる。
D:10枚出力後も白い画像欠陥がある。
【0084】
[通電による二層の被覆層を有する弾性ローラの電流値変化の評価]
得られた二層の被覆層を設けた弾性ローラをカラーレーザープリンターLBP5400(商品名、キヤノン社製)用の電子写真プロセスカートリッジへ現像ローラとして組み込みLBP5400本体に取り付け印字率50%濃度のハーフトーンの画像を形成した。その後プロセスカートリッジから弾性ローラを取り出し、図2に示した評価システムにて、印加電圧50vにて10分間通電を行い電流値低下を促進した。通電後の弾性ローラをカラーレーザープリンターLBP5400用の電子写真プロセスカートリッジへ現像ローラとして組み込みLBP5400本体に取り付け印字率5%の画像を5000枚形成した。その後印字率50%濃度のハーフトーンの画像を形成した。通電前後で形成した印字率50%濃度のハーフトーンの画像を見比べ、以下の評価基準に基づき評価を行った。評価結果を表2に示す。なお、通電による現像ローラの電流値変化に起因した画像不良とは、ハーフトーン画像上に現像ローラの回転ピッチに適合して濃度ムラ画像が発生するものである。
A:濃度ムラが未発生。
B:一部に軽微な濃度ムラが発生する。
C:全面に軽微な濃度ムラが発生する。
D:全面に濃度ムラが発生する。
【0085】
[実施例2]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の原料ゴムをNBRゴム((商品名)Nipol DN401:結合アクリロニトリル量18%、日本ゼオン社製)80質量部、および液状NBRゴム((商品名)Nipol 1312:結合アクリロニトリル量40.5%、日本ゼオン社製)20質量部に変更した。また、実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aの添加量を3質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0086】
[実施例3]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の原料ゴムをH−NBRゴム((商品名)Zetpol2020:結合アクリロニトリル量36.2%、日本ゼオン社製)100質量部に変更し、かつ化合物Aの添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0087】
[実施例4]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の原料ゴムをSBRゴム((商品名)Nipol NS116R、日本ゼオン社製)80質量部および液状SBRゴム((商品名)Poly− bd CS−15、出光石油化学社製)20質量部に変更した。また、実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aの添加量を7質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0088】
[実施例5]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の原料ゴムをブタジエンゴム((商品名)BR−150、宇部興産社製)80質量部および液状ブタジエンゴム((商品名)LIR−300、クラレ社製)20質量部に変更し、かつ化合物Aの添加量を5質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0089】
[実施例6]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の原料ゴムをIRゴム(商品名)Nipol IR2200、日本ゼオン社製)80質量部および液状IRゴム((商品名)LIR−50、クラレ社製)20質量部に変更した。また、実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aの添加量を3質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0090】
[実施例7]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の原料ゴムをエピクロロヒドリンゴム(CO)(商品名:Hydrin T3106、日本ゼオン社製)100質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0091】
[実施例8]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の原料ゴムをブチルゴム(IIR)(商品名:Butyl 065、日本ブチル社製)100質量部に変更し、かつ化合物Aの添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0092】
[実施例9]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の原料ゴムをクロロプレンゴム(CR)((商品名)ネオプレンWRT、昭和電気・デュポン社製)100質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0093】
[実施例10]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の原料ゴムをエチレン−プロピレン−ジエンゴム((商品名)エスプレン505、住友化学社製)60質量部、ノルボルネンゴム(NOR)((商品名)ノーソレックス、日本ゼオン社製)20質量部および液状IRゴム((商品名)LIR−50、クラレ社製)20質量部に変更した。また、実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aの添加量を0.1質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0094】
[実施例11〜14]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aの添加量を表2に記載したように変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0095】
[実施例15〜17]
実施例2〜4の各々について、発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物B(式1の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例2と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0096】
[実施例18〜21]
実施例5〜8の各々について、発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物CまたはD(いずれも式1の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例5と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0097】
[実施例22]
実施例9に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを化合物E(式1の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例9と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0098】
[実施例23]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物I(式2の化合物の1種)に変更し、その添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0099】
[実施例24]
実施例2に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更し、その添加量を1.5質量部に変更した。それ以外は実施例2と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0100】
[実施例25]
実施例3に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更し、その添加量を0.1質量部に変更した。それ以外は実施例3と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0101】
[実施例26]
実施例4に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更し、その添加量を3質量部に変更した。それ以外は実施例4と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0102】
[実施例27]
実施例5に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更し、その添加量を2質量部に変更した。それ以外は実施例5と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0103】
[実施例28]
実施例6に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更し、その添加量を2質量部に変更した。それ以外は実施例6と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0104】
[実施例29]
実施例7に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更し、その添加量を0.5質量部に変更した。それ以外は実施例7と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0105】
[実施例30]
実施例8に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更し、その添加量を0.2質量部に変更した。それ以外は実施例8と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0106】
[実施例31]
実施例9に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更し、その添加量を7質量部に変更した。それ以外は実施例9と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0107】
[実施例32]
実施例10に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更した。それ以外は実施例10と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0108】
[実施例33〜36]
実施例11〜14の各々について、発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Iに変更した。それ以外は実施例11〜14の各々と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0109】
[実施例37〜39]
実施例24〜26の各々について、発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Iを後述する化合物J(式2の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例24〜26の各々と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0110】
[実施例40]
実施例27に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Iを後述する化合物K(式2の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例27と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0111】
[実施例41]
実施例28に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Iを後述する化合物L(式2の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例28と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0112】
[実施例42]
実施例29に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Iを添加量は同じで後述する化合物M(式2の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例29と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0113】
[実施例43]
実施例30に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Iを後述する化合物N(式2の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例30と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0114】
[実施例44]
実施例31に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Iを後述する化合物O(式2の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例31と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
[実施例45]
実施例32に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Iを後述する化合物P(式2の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例32と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0115】
[実施例46]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物U(式3の化合物の1種)に変更し、その添加量を1.5質量部に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0116】
[実施例47]
実施例15に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Bを後述する化合物Uに変更し、その添加量を4質量部に変更した。それ以外は実施例15と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0117】
[実施例48]
実施例16に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Bを後述する化合物Uに変更し、その添加量を0.8質量部に変更した。それ以外は実施例16と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0118】
[実施例49]
実施例17に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Bを後述する化合物Uに変更し、その添加量を10質量部に変更した。それ以外は実施例17と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0119】
[実施例50]
実施例18に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Cを後述する化合物Uに変更し、その添加量を8質量部に変更した。それ以外は実施例18と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0120】
[実施例51]
実施例19に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Cを後述する化合物Uに変更し、その添加量を5質量部に変更した。それ以外は実施例19と同様にして弾性ローラを作製し、評価した。
【0121】
[実施例52]
実施例20に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Dを後述する化合物Uに変更し、その添加量を2質量部に変更した。それ以外は実施例20と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0122】
[実施例53]
実施例21に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Dを後述する化合物Uに変更し、その添加量を1質量部に変更した。それ以外は実施例21と同様にして弾性ローラを作製し、評価した。
【0123】
[実施例54]
実施例22に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Eを後述する化合物Uに変更し、その添加量を2質量部に変更した。それ以外は実施例22と同様にして弾性ローラを作製し、評価した。
【0124】
[実施例55]
実施例10に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Uに変更し、その添加量を0.2質量部に変更した。それ以外は実施例10と同様にして弾性ローラを作製し、評価した。
【0125】
[実施例56〜59]
実施例11〜14の各々について、発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを後述する化合物Uに変更した。それ以外は実施例11〜14の各々と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0126】
[実施例60]
実施例46に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Uを後述する化合物V(式3の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例46と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0127】
[実施例61]
実施例47に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Uを後述する化合物W(式3の化合物の1種)に変更した。それ以外は実施例47と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0128】
[実施例62]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aの添加量を0.5質量部に変更し、さらに後述する化合物Iを0.3質量部添加した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0129】
[実施例63]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aの添加量を0.5質量部に変更し、さらに後述する化合物Uを0.8質量部添加した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0130】
[実施例64]
実施例1に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを化合物Iに変更し、その添加量を0.3質量部に変更し、さらに化合物Uを0.8質量部添加した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0131】
[実施例65]
実施例62に用いた発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aの添加量を0.3質量部、化合物Iの添加量を0.1質量部に変更し、さらに化合物Uを0.5質量部添加した。それ以外は実施例62と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0132】
[実施例66]
実施例1の発泡体層用未架橋ゴム組成物の作製(混練工程)時、化合物Aを低沸点溶剤であるエタノールに溶解させずに使用し、得られた発泡体層用未架橋ゴムは加熱工程を行わずに次の成形工程に用いた。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0133】
[実施例67]
実施例1の発泡体層用未架橋ゴム組成物の作製後、未架橋ゴム組成物を減圧および加熱をせず、加熱工程を行わずに次の成形工程に用いた。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製、評価した。
【0134】
[実施例68]
実施例1の発泡体層用未架橋ゴム組成物の作製後、加熱工程において未架橋ゴム組成物を減圧せずに常圧で80℃に加熱し、次の成形工程に用いた。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製、評価した。
【0135】
[実施例69]
実施例1に用いた低沸点溶剤であるエタノールをメチルエチルケトン(沸点:79.5℃)に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0136】
[比較例1〜10]
実施例1〜10の各々について、発泡体層用未架橋ゴム組成物中の化合物Aを非添加とした。それ以外は実施例1〜10の各々と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
[比較例11〜17]
実施例1、2、3、26、27、29及び30について、化合物を表3に示したように、網目形成成分に該当しない化合物に変更した以外は各実施例と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0137】
[比較例18〜19]
実施例46における化合物Uを、網目形成成分に該当しない化合物Xまたは化合物Yに変更した以外は実施例46と同様の方法にて弾性ローラを作製し、評価した。
【0138】
以下に、上記実施例および比較例に用いた化合物AからHを示す。これらの化合物は、式1の化合物またはその類似化合物である。なお、その類似化合物は、式1の化合物には該当せず網目形成成分にも該当しない。
【0139】
【化7】

【0140】
化合物Aは、式1のnが2、R1が4、R2が4、およびR3が11を表す化合物である。
【0141】
【化8】

【0142】
化合物Bは、式1のnが2、R1が4、R2が4、およびR3が7を表す化合物である。
【0143】
【化9】

【0144】
化合物Cは、式1のnが2、R1が3、R2が4、およびR3が7を表す化合物である。
【0145】
【化10】

【0146】
化合物Dは、式1のnが2、R1が3、R2が3、およびR3が7を表す化合物である。
【0147】
【化11】

【0148】
化合物Eは、式1のnが1、R1が4、R2が4、およびR3が11を表す化合物である。
【0149】
【化12】

【0150】
化合物Fは、式1のnが1、R1が4、R2が4、およびR3が5を表す化合物であり、本発明に用いる網目形成成分に該当しない。
【0151】
【化13】

【0152】
化合物Gは、式1のnが2、R1が2、R2が2、およびR3が5を表す化合物であり、網目形成成分に該当しない。
【0153】
【化14】

【0154】
化合物Hは、式1のnが2、R1が7、R2が7、およびR3が15を表す化合物であり、網目形成成分に該当しない。
【0155】
以下に、上記実施例および比較例に用いた化合物IからTを示す。これらの化合物は、式2の化合物またはその類似化合物である。その類似化合物は、式2の化合物には該当せず網目形成成分にも該当しない。なお、表1にこれらの化合物の式2中のtおよびR4から13を示すが、化合物の置換基R4からR13のうちの記載が無いものは全て水素原子を表す。なお、表中のMeはメチル基、Etはエチル基、Prはノルマルプロピル基を示す。化合物Q、R、S、Tは網目形成成分に該当しない。
【0156】
【表1】

【0157】
以下に、上記実施例および比較例に用いた化合物UからYを示す。これらの化合物は、式3の化合物またはその類似化合物である。その類似化合物は、式3の化合物には該当せず網目形成成分にも該当しない。なお、化合物XおよびYは、網目形成成分に該当しない。
化合物U:12−ヒドロキシステアリン酸(式3の化合物の1種)
化合物V:2−ヒドロキシラウリン酸(式3の化合物の1種)
化合物W:2−ヒドロキシアラキジン酸(式3の化合物の1種)
化合物X:10−ヒドロキシデカン酸
化合物Y:22−ヒドロキシドコサン酸
上記実施例1〜69及び比較例1〜19について、発泡体層用未架橋ゴム組成物の100℃でのスコーチタイムおよび評価結果を下記表2〜3に示す。
【0158】
【表2】

【0159】
【表3】

【0160】
以上説明したように、本発明によれば、柔軟性かつ、感光ドラムへの汚染が少なく低圧縮永久変形性を有し通電による電流値低下が少ない弾性ローラ及び弾性ローラの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0161】
1 ・・・導電性軸芯体
2 ・・・発泡体層
3 ・・・被覆層
4 ・・・荷重
5 ・・・マルチメーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の外周面上に発泡体層とを有し、該発泡体層の外周面上に被覆層を有する弾性ローラであって、
該発泡体層は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムおよびノルボルネンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1つの原料ゴムと、下記式1〜3で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とを含むことを特徴とする弾性ローラ:
【化1】

(式(1)中、nは1または2を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素原子数3または4のアルキル基を表し、R3は炭素原子数7以上11以下のアルキル基を表す。)、
【化2】

(式(2)中、tは0または1を表し、R4からR13は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1以上2以下のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基または炭素数1以上2以下のアルコキシ基を表す。)、
【化3】

(式(3)中、R14は水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。mはメチレン基の個数を表し0以上18以下の整数を表す。式3の化合物の全炭素数は12以上20以下である。)。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性ローラの製造方法であって、
(1)下記式1〜3で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と該原料ゴムとを混練して未架橋ゴム組成物を得る工程と、
(2)該未架橋ゴム組成物で導電性軸芯体の周面を被覆し、該未架橋ゴム組成物を発泡および架橋させることにより該発泡体層を得る工程と、を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法:
【化4】

(式(1)中、nは1または2を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素原子数3または4のアルキル基を表し、R3は炭素原子数7以上11以下のアルキル基を表す。)、
【化5】

(式(2)中、tは0または1を表し、R4からR13は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1以上2以下のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基または炭素数1以上2以下のアルコキシ基を表す。)、
【化6】

(式(3)中、R14は水素原子または炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。mはメチレン基の個数を表し0以上18以下の整数を表す。式3の化合物の全炭素数は12以上20以下である。)。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−20443(P2012−20443A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158912(P2010−158912)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】