説明

弾性ローラの製造方法、弾性ローラ及び画像形成装置

【課題】レーザープリンタ、複写機、ファクシミリ装置などに使用される電子写真方式の画像形成装置に用いられる弾性ローラであり、経時的な収縮の少ない、プリンタや複写機の高速化、長寿命化に対応する弾性ローラ、その製造方法、それを用いた画像形成装置の提供。
【解決手段】ゴムコンパウンドを一次加熱処理することにより発泡体からなる粗弾性層を軸体外周に形成する工程、前記粗弾性層を二次加熱処理した後に、前記粗弾性層を整形加工して整形弾性層とする工程、及び前記整形弾性層を三次加熱処理して弾性層を形成する工程を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法、その方法により得られる弾性ローラ及び前記弾性ローラを有する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性ローラの製造方法、弾性ローラ及び画像形成装置に関し、詳しくはレーザープリンタ等の例えば電子写真方式による画像形成装置に用いることができ、記録体たとえば記録紙を搬送ずれすることなしに、高品質の画像を形成することのできる弾性ローラの製造方法、その製造方法により製造された弾性ローラ及びその弾性ローラを使用する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、複写機、ファクシミリ装置などには、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、感光ドラムに形成した潜像をトナーによって現像し、このトナー像を記録体に転写して画像を形成する。記録体に転写されたトナー像はそのままでは記録体に定着していないので、定着ローラを備えた定着装置によってトナー像を記録体上に圧着、固定し、完全な文字、図形等の画像とする。この定着ローラの機能は、定着ベルト及び加圧ローラと協働して記録体を挟みつけて搬送しながら、その間に記録体上のトナーを加熱加圧してトナーの被覆層に含まれる樹脂を溶融して、トナー中のカーボンや顔料を溶融した樹脂と共に圧着することにより記録体上に定着させることである。
【0003】
このため、定着ローラにはトナーを圧着する圧力と、樹脂の溶融定着のための熱が常にかかっている。さらに、記録体をおよそ100mm/秒の速度で搬送させて上記の定着操作を行うため、定着ローラは弾力性があり加圧ローラとの当接面にへこみが生じるようになっている。なお、この定着ローラと加圧ローラとの接触部分をニップと称することがある。このニップにより、搬送されてきた記録体が定着ローラ上に十分な時間接して、トナー中の樹脂が溶融し、記録体上に文字、図形等の画像を定着させることができる。このため、「鉄製の芯金の外周に液状シリコーンや発泡シリコーンなどによる弾性体層を有する構造に形成された」弾性ローラが使用されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−189389号公報
【0005】
通常使われているプリンタ等の画像形成装置は連続式印刷ではなく、A4用紙、B4用紙といった記録体を一枚ずつ断続的に印刷する。そのため、画像形成装置に使用されるほとんどのローラは、定着ローラを含めて断続的に動いている。最近は、プリンタや複写機の印刷の高速化が進み、記録体の搬送速度は100mm/秒を超えるようになってきた。そのため、定着ローラには加圧回転、停止による強い加速度が何万回と掛ってくる。例えば、10万枚印刷可能なプリンタでは合計15万回の回転、停止サイクルの負荷に耐えられる定着ローラが必要である。定着ローラの場合、弾性層は、十分な弾性を確保するため発泡体である場合が多いが、このような過酷な負荷に耐えることが要望されている。特に、加熱加圧状態に長時間曝されるので弾性層の収縮が問題となる。弾性層が収縮すると定着ローラの直径が小さくなり、この状態でプリンタを作動させると、定着ローラの周速が遅くなり、定着ローラにより搬送される記録体例えば印刷用紙の搬送速度が遅くなる。その結果として、記録体に形成される画像の品質が低下する。さらには、給紙ローラにおける記録体の搬送と定着ローラにおける記録体の搬送とにタイミングのずれを生じることなどが原因となって、画像形成装置内で紙詰まりが起こってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、画像形成装置の高速化、長寿命化に対応することができ、たとえば画像形成装置内における加熱によっても弾性層の外径変化率が小さくて寸法安定性のある定着ローラとしても使用することのできる弾性ローラの製造方法、その製造方法により製造された弾性ローラ及びこの弾性ローラを備えた画像形成装置の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、ゴムコンパウンドを一次加熱処理することにより発泡体からなる粗弾性層を軸体外周に形成する工程、前記粗弾性層を二次加熱処理した後に、整形加工して整形弾性層とする工程、及び前記整形弾性層を三次加熱処理して弾性層を形成する工程を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法であり、
請求項2は、前記三次加熱処理が、前記整形弾性層を150〜300℃で10分〜24時間加熱処理することである前記請求項1に記載の弾性ローラの製造方法であり、
請求項3は、前記請求項1又は2に記載の弾性ローラの製造方法により製造された弾性ローラであって、前記弾性層は180℃、5時間の加熱後における圧縮永久歪が10%以下であることを特徴とする弾性ローラであり、
請求項4は、前記請求項1又は2に記載の弾性ローラの製造方法により製造された弾性ローラであって、前記弾性層は、その外径変化率が0.9%以下あることを特徴とする弾性ローラであり、
請求項5は、前記弾性層が、シリコーンゴムを有して成る請求項4に記載の弾性ローラであり、
請求項6は、前記弾性層は、その低分子シロキサン含有量が8000ppm以下である前記請求項5に記載の弾性ローラであり、
請求項7は、請求項3〜6のいずれか一項に記載の弾性ローラを備えて成ることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によると、整形弾性層を三次加熱処理することにより、レーザープリンタ、複写機、ファクシミリ装置などに組み込まれている電子写真方式の画像形成装置にたとえば定着ローラとして好適に使用することができる弾性ローラを、容易に製造することができる。この発明の製造方法により製造された弾性ローラは特定の圧縮永久歪及び外径変化率を有しているので、この弾性ローラが定着ローラである場合、その定着ローラは、弾力性、耐熱性などのトナーの定着性能に係わる機能を低下させることなく、定着ローラの収縮性を改善して記録体の詰まり等のトラブルをなくすことができる。さらに、収縮性が改善されたこの定着ローラを装備することで、画像形成装置の寿命を延ばすことができる。したがって、本発明により、たとえば定着ローラとして好適な、記録体の搬送トラブルがなく、高品質の画像を形成することのできる弾性ローラを提供することができる。また、本発明によると、前記弾性ローラを、加熱処理により簡易に製造することのできる弾性ローラの製造方法を提供することができる。本発明によると、本発明に係る弾性ローラを組み込むことにより、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の製造方法により製造することのできる弾性ローラの一例を示す斜視図である。図1に示す弾性ローラ1は、金属製の軸体2と、その外周面に形成され、かつ円筒状の発泡体である弾性層3とを備えて成る。
【0010】
本発明に係る弾性ローラは、その弾性層の圧縮永久歪が10%以下、好ましくは5%以下であることが好ましい。
【0011】
弾性層の圧縮永久歪が10%を超えると、たとえばこの弾性ローラに接する対向ローラの押圧力により弾性層が受けて生じた変形が元の形状に迅速に復帰しなくなり、変形したまま弾性ローラが回転することにより、たとえば記録体の搬送に支障を生じることがある。ここで弾性ローラの圧縮永久歪は、以下のようにして測定することができる。この測定の方法は、JIS K 6200を参考にしてこの出願人が独自に開発した測定方法であり、したがって、以下に説明する測定法は、「圧縮永久歪の信越ポリマー測定法」と称されることができる。先ず、研磨により直径を29mmにして成る弾性ローラの周側面であって、弾性ローラの軸線方向に沿う3点にマーキングをし、その位置での弾性ローラの外径をレーザー測定機により常温下で測定する。図4(A)に示されるように、このときの弾性ローラ1の外径は、Dである。図3に示されるように、弾性ローラにおけるマーキング部分が圧縮板30,30に接触するように、弾性ローラ1を圧縮板30,30で挟持し、この状態で弾性ローラ1を圧縮治具31で締め付ける。なお、スペーサ32の厚み(上部の圧縮板30に接するスペーサ32の上端面から下部の圧縮板30に接触するスペーサ32の下端面までの長さ)は25mmであり、圧縮治具で締め付ける程度は、圧縮板を相互に4mm近接移動させる程度である。前記圧縮治具で弾性ローラを締め付けた状態で、圧縮治具を180℃の乾燥機に入れて5時間そのまま加熱する。5時間が経過した後に、乾燥機から前記圧縮治具を取り出し、直ちに圧縮治具から弾性ローラを取り外し、取り外された弾性ローラを常温で18時間放置する。放置時間が経過してから、弾性ローラにおける弾性層のマーキングした部位3点の外径(図4(B)に示される長さD)をレーザー測定機により常温下で測定する。弾性層の圧縮永久歪(D)を、[(D−D)/(D−25)]×100〔%〕の式に従って算出する。この圧縮永久歪(Dx)は、弾性ローラにおける弾性層を180℃で5時間圧縮加熱し、次いで常温にて18時間開放放置するという熱履歴に暴露したときの、弾性層の圧縮永久歪を示す。この発明に係る弾性ローラは、弾性層の圧縮永久歪が10%以下であると、この弾性ローラを組み込んでなる画像形成装置は、高品質の画像を記録体に形成することができ、また記録体の搬送トラブルを生じることが極めて少なくなる。
【0012】
本発明に係る弾性ローラは、外径変化率が0.9%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。外径変化率が0.9%を超えると、たとえばこの弾性ローラと対向ローラとの接触におけるニップ幅が十分に取れなくなり、ニップ幅が不十分のまま弾性ローラが回転することにより、たとえば記録体の搬送に支障を生じることがある。
【0013】
弾性ローラの外径変化率については、以下のようにして測定することができる。この測定の方法は、この出願人が独自に開発した測定方法であり、したがって、以下に説明する測定法は、「外径変化率の信越ポリマー測定法」と称されることができる。図5に示される耐久性試験装置70を用いて、試験をする。この耐久性試験装置70は、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた外部ヒータ73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼、SUS304)製ローラを用いた。弾性ローラを、試験ローラ装着部74のベアリングに装着し、図5に示されるように、押圧力調整手段75を操作して、装着した弾性ローラ76を加熱ローラ71に圧接し、加熱ローラ71と弾性ローラ76との圧接部において、弾性ローラ76における弾性層が内部に3mm凹陥するように、弾性ローラ76を固定する(すなわち、弾性ローラ76の外径と加熱ローラ71の外径の和よりも3mm短くなるように、弾性ローラ76の中心軸と加熱ローラ71の中心軸との距離dを調節する。)。次いで、外部ヒータ73及び内部ヒータ72を起動し、加熱ローラ71の表面温度を180℃に調節する。その後、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により、回転速度130rpmで8時間連続稼動し、弾性ローラ76における弾性層の凹陥状態を解除後、弾性ローラ76を常温で24時間放置する。24時間放置後の弾性ローラの外径寸法Aをレーザー測定機により常温下で測定する。耐久試験前の弾性ローラの外径寸法Aに対する外径変化率Aを「A=(A−A)/A×100〔%〕」の式に準じて算出する。
【0014】
また、この発明に係る弾性ローラにおける弾性層は、後述するゴムコンパウンドを用いて、軸体の外周面に形成されている。この弾性層は、その内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層であり、画像形成装置に用いられる各種ローラに応じて、セルの大きさ、及びその間隔等が決定される。例えば、弾性ローラを定着ローラとして使用する場合には、加圧ローラに圧接されて弾性層が変形するように、弾性ローラの弾性層は発泡体とされるのが、高品質の画像を形成することができる点で、好ましい。この場合には、弾性層に有する複数のセルは、他のセルに接することのない、又は連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接し、又は連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。
【0015】
前記ゴムコンパウンドとしては、シリコーンゴムコンパウンド、ウレタンゴムコンパウンド、及びフッ素ゴムコンパウンド等を挙げることができる。これらの中でもシリコーンゴムコンパウンドが好ましい。
【0016】
弾性層がシリコーンゴムコンパウンドを用いて形成される場合、その低分子シロキサン含有量が8000ppm以下、特に5000ppm以下であるのが好ましい。低分子シロキサン含有量が8000ppm以下であると、この弾性ローラをたとえば画像形成装置内で駆動すると画像形成装置内の熱によっても弾性層の収縮の度合いが小さくなり、長期間にわたって弾性ローラを画像形成装置内で駆動しても、弾性層の直径が小さくなることによりたとえば記録体の搬送に支障を来たすことがない。逆に弾性層内の低分子シロキサン含有量が8000ppmを越えると、画像形成装置内で弾性ローラが長期間にわたって駆動される場合に、弾性層の収縮が生じて記録体の搬送に支障が生じることがある。低分子シロキサン含有量の測定については、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)を用いて測定することが可能である。尚、本発明でいう低分子シロキサンとは、D単位が3〜20個の範囲のものである。
【0017】
低分子シロキサン含有量は、弾性ローラから切り出した、弾性層を略1mm角の立方体に刻んだもの1gをヘキサンに24時間浸漬し、得られた抽出液をガスクロマトグラフィーで分析することで得られる。
【0018】
この弾性ローラは、本発明の弾性ローラの製造方法により製造される。本発明においては、ゴムコンパウンドを一次加熱処理することにより円筒状の発泡体からなる粗弾性層を軸体外周に形成する。つまり、前記軸体とこの軸体の外周に形成された発泡体である粗弾性層とで、成形体が形成される。次いで、この成形体を二次加熱処理を行い、整形加工して整形弾性層とし、整形弾性層を三次加熱処理する。本発明の方法によると、三次加熱処理をして形成される弾性層は例えば圧縮永久歪が10%以下になると共に外径変化率が0.9%以下という所望の範囲内に維持されるので、このような弾性層を有する本発明の弾性ローラは記録体の搬送特性が安定し、したがって本発明の弾性ローラは例えば定着ローラ、転写ローラ、給紙ローラ等として使用する場合に搬送速度に狂いがなくなって搬送物例えば記録体の紙詰まり等を起こすことが極めて少なくなり、しかも記録体の搬送ずれが僅少となるので高品質の画像を形成することができる。
【0019】
前記軸体は、画像形成装置等に装備可能な構造を有し、かつ弾性ローラの芯材としての機能を有する。軸体における弾性層により被覆される部位の形状としては、通常の場合、円筒形及び円柱形等を挙げることができる。軸体を形成する材料としては、鋼、ステンレス、銅、リン青銅、及び洋白などの金属、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、及び尿素樹脂等の樹脂、並びに金属又は樹脂とガラス繊維及び/又は炭素繊維等の強化材との繊維強化プラスチックなどの複合材等が挙げられる。軸体を形成する材料が絶縁体であるときは、軸体と同様の形状を有する絶縁体の表面に金属等の導電性材料で被覆層を形成することにより、導電性の軸体を得ることができる。
【0020】
前記シリコーンゴムコンパウンドとしては、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材と、及び各種の添加剤とを含有するシリコーンゴム組成物を挙げることができる。
【0021】
このビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後の工程で、発泡剤及び架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独又は二種以上を混合して用いることができる。
【0022】
前記シリカ系充填剤としては、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材のシリコーンゴム組成物における配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、通常5〜100質量部であるのがよい。
【0023】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材と及び各種の添加剤とを含有するシリコーンゴムコンパウンドは、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」等として容易に入手することができる。
【0024】
この発明における弾性層は、前記シリコーンゴムコンパウンドと、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、さらに必要に応じて加えられる発泡剤、反応制御剤とを含有する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を用いて好適に形成することができる。
【0025】
この付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサー、ドウニキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練することにより、得ることができる。
【0026】
前記付加反応架橋剤としては、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環状、分枝状のいずれであってもよい。好適なオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で示され、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個のケイ素原子結合水素原子を有するものが好適に用いられる。
bcSiO(4-b-c)/2 (1)
但し、式(1)において、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。
【0027】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とから成る共重合体などが挙げられる。
【0028】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物における前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。
【0029】
前記付加反応触媒としては、例えば、周期律表第9族又は第10族の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、所謂触媒量で十分であり、通常、周期律表第9族又は第10族の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9族又は第10族の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを超えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。
【0030】
前記発泡剤としては、前記シリコーンゴムコンパウンドを発泡させることができる限り種々の発泡剤を使用することができ、また、従来から発泡ゴムに用いられる発泡剤をも使用することができる、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。
【0031】
この発明における弾性層における発泡状態としては独立セルで形成されてなるのが好ましい。その場合、好適な弾性層を形成するために好適な発泡剤としては、有機系発泡剤が好適である。好適な発泡剤としては、具体的には、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の含有量は、発泡剤の種類によって相違するが、弾性層のアスカーC硬度が30〜50、好ましくは35〜45となるように調整するのがよい。アスカーC硬度が前記範囲内にある弾性層とするための発泡剤の含有量は、具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜10質量部であるのがよい。発泡剤の含有量が、0.1質量部未満であると、形成される弾性層に十分なセルを形成することができないことがあり、一方、10質量部を超えると、シリコーンゴム発泡体としての形態を維持することができなくなり、弾性層の機械的強度が低下することがある。発泡剤として、ジメチル−1,1'−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)を選択する場合には、その含有量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが特によい。
【0032】
前記反応制御剤としては、公知の反応制御剤を制限なく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。
【0033】
前記各種の添加剤として、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン等の分散剤、及び、得られるシリコーン発泡ゴムから成る弾性層のアスカーC硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
【0034】
この発明における弾性層はシリコーンゴムコンパウンドを付加反応または有機過酸化物により発泡させることにより製造され、しかもこの発明の目的を阻害しない限り、前記付加反応触媒とともに有機過酸化物架橋剤を使用することができる。
【0035】
前記有機過酸化物架橋剤は、例えば単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。
【0036】
前記シリコーンゴム組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどのゴム混練り機を用いて均一に混合することにより得ることができる。
【0037】
本発明の弾性ローラの製造方法においては、前記軸体外周に、一次加熱処理により形成された発泡体からなる粗弾性層を形成して成る成形体を製造する。通常は、接着層又はプライマー層が形成された軸体と共に、前記のようにして調製した付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、押出成形する。
【0038】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の押出成形は、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含まれるゴム、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴムが架橋するのに十分な条件で行われればよく、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含まれる発泡剤が分解又は発泡するのに十分な条件で行われればよい。例えば、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の押出成形は、赤外線加熱炉又は熱風炉等の加熱炉、乾燥機等の加熱機等により、通常、100〜500℃、特に200〜400℃、加熱時間は数分以上1時間以下、特に5〜30分間、加熱すること、すなわち一次加熱処理をすることにより、行われる。
【0039】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の発泡体からなる粗弾性層を軸体の外周に有する成形体は、続いて二次加熱が行われる。二次加熱は、前記条件で架橋された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物をより確実に架橋させる工程である。二次加熱は、例えば、前記の条件で押出成形されてなる付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、さらに、押出成形された状態のままで、例えば、180〜250℃、好ましくは190〜230℃で、1〜24時間、好ましくは3〜10時間にわたって、又は、金型を用いて、例えば、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、5分以上24時間以下、好ましくは10分以上10時間以下にわたって、二次加熱されることによって、行われる。
【0040】
本発明の方法では、前記二次加熱後に整形加工が行われる。本発明における整形加工によって、整形弾性層の軸線方向に直交する断面が、前記軸線方向に沿って同じ円形となるように、二次加熱後の粗弾性層が整形加工される。この整形加工は、二次加熱後の粗弾性層の表面を切削し、研削し、及び研磨し等のいずれか、またはこれらの組合せにより、行われる。この二次加熱後の粗弾性層の表面を切削、研削、又は研磨する装置として、例えば円筒研削盤を挙げることができる。この整形加工により、二次加熱後の粗弾性層の表面に形成されることのある薄皮状の被膜も除去されることが、できる。また、この整形加工により、二次加熱後の粗弾性層にバリ等の異物があればその異物が除去される。このような異物の除去を達成するためには、例えばバリ取り機を好適に採用することができる。また、二次加熱後の粗弾性層の軸線長さを所定長さにするために二次加熱後の粗弾性層の両端部が切断除去される。この切断除去には、例えばサイドカット機が好適に採用される。かくして、所定の円形断面及び軸線長さを有する整形弾性層を有する整形弾性ローラが、得られる。
【0041】
本発明の方法においては、得られる整形弾性層を三次加熱処理する。整形弾性層を三次加熱処理する際の温度は、通常の場合、150〜300℃であり、好ましくは180〜250℃であり、特に好ましくは190〜230℃である。加熱時間は、通常の場合、10分〜24時間であり、好ましくは30分〜5時間である。この三次加熱処理は前記整形加工と組み合わされていることが好ましい。前記整形加工により二次加熱後の粗弾性層の周面が研削、研磨乃至切削されることにより、二次加熱によって生成した発泡剤等の分解生成物の蒸発、揮散、乃至揮発を妨げていた二次加熱後の粗弾性層の表面状態、例えば粗弾性層の周面に形成された硬質の被膜が除去されてしまうので、この三次加熱により、前記分解生成物の蒸発、揮散乃至揮発が容易に行われる。また、シリコーンゴム組成物の架橋反応もほぼ完全に実行されることになる。したがって、整形加工及びこの三次加熱処理により得られる弾性層は、圧縮永久歪が10%以下となり、外径変化率が0.9%以下となる。このような特性を有する弾性層を有する弾性ローラが、本発明により製造される。
【0042】
この発明の方法により製造される弾性ローラは、電子写真方式の画像形成装置に採用することができる。画像形成装置の一例を図2に示す。
【0043】
図2に示されるように、この発明に係る画像形成装置10は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体11例えば感光体と、像担持体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11を帯電させる帯電手段12例えば帯電ローラと、像担持体11の上方に設けられ、像担持体11に静電潜像を形成する露光手段13と、像担持体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11に一定の層厚で現像剤14を供給し、静電潜像を現像する現像手段15と、像担持体11の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体11から被転写体16例えば転写紙上に転写する転写手段17例えば転写ローラと、被転写体16の搬送方向の下流に設けられ、被転写体16に転写された現像剤14(静電潜像)を定着させる定着手段18例えば定着装置と、被転写体16に転写されず像担持体11に残留した現像剤14及び/又は像担持体11に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段19とを備えている。すなわち、像担持体11は、その回転方向において、上流側から順に、クリーニング手段19、帯電手段12、露光手段13、現像手段15及び転写手段17によって、各作用を受ける。
【0044】
前記像担持体11は、従来公知の像担持体を用いることができ、少なくともその表面に設けられる感光層は、例えば、有機系、アモルファスシリコン、Se系合金又はこれらを組み合わせた材料等を用いて形成される。像担持体11が円筒状の場合は、像担持体11は、アルミニウム又はアルミニウム合金を押出し成型した後、表面に感光層等を形成する方法等の公知の製法により製造することができる。また、ベルト状の像担持体を用いることも可能である。前記帯電手段12は、像担持体11を帯電させることができればよく、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器、コロトロン帯電器等の帯電器を用いることができる。これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。前記露光手段13は、露光により像担持体11に静電潜像を形成することができればよく、例えば、像担持体11の表面に、半導体レーザー(LD)光、発光ダイオード(LED)光、液晶シャッタ(LCS)光等の光源、又はこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器等を用いることができる。前記転写手段17は、現像された静電潜像を像担持体11から被転写体16例えば転写紙上に転写することができればよく、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器、コロトロン転写帯電器等を用いることができる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。また、転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。前記クリーニング手段19としては、像担持体11上の現像剤14及び/又はゴミ等を除去することができればよく、公知のクリーニング装置、クリーニングローラ等を用いることができる。
【0045】
前記定着手段18は、被転写体16に転写された現像剤14(静電潜像)を定着させることができればよく、例えば、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等を用いることができる。これらの定着装置は無端ベルトを備えた定着装置であってもよい。図2において、無端ベルトを備えた定着手段18はこの発明に係る定着装置の一例である。この定着装置18は、図2にその断面が示されるように、被転写体16を通過させる開口20を有する筐体21内に、定着ローラ22と、定着ローラ22の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ23と、定着ローラ22及び無端ベルト支持ローラ23に巻き掛けられた無端ベルト25と、定着ローラ22と対向配置された加圧ローラ24とを備え、無端ベルト25を介して定着ローラ22と加圧ローラ24とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ23は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。無端ベルト25は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段18に適合するように調整することができる。定着ローラ22、無端ベルト支持ローラ23及び加圧ローラ24はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ24はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、無端ベルト25を介して定着ローラ22に圧接している。無端ベルト25と加圧ローラ24との圧接された間を被転写体16が通過することにより、加圧と同時に加熱され、被転写体16に転写された現像剤14(静電潜像)を定着させることができる。
【0046】
画像形成装置10は、像担持体11の表面に残留している静電潜像を除去する除電手段(図示しない。)を、クリーニング手段19と帯電手段12との間又は転写手段17とクリーニング手段19との間に、備えていてもよい。除電手段は、例えば、タングステンランプ、LED等を用いることができ、光除電手段に用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられ、照射光強度としては、通常、像担持体11の半減露光感度を示す光量の数倍〜30倍程度になるように出力が設定される。
【0047】
画像形成装置10における現像手段15は、従来の画像形成装置に備えられた現像手段と基本的に同様に形成され、同様に配置されている。例えば、現像手段15は、図2に示されるように、像担持体11に対向する位置に開口部を有し、現像剤14を収納する現像剤収納部26と、現像剤収納部26の開口部に、像担持体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11に現像剤14を一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体27と、現像剤担持体27に当接して設けられ、現像剤担持体27に現像剤14を供給する回転可能な現像剤供給手段28と、現像剤担持体27の上方に設けられ、現像剤担持体27に当接して現像剤14の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤14を帯電させる現像剤規制部材29とを備えている。
【0048】
前記現像剤収納部26に収納される現像剤14としては、摩擦により帯電可能で、被転写体16に定着可能な一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。一成分系の現像剤は、一般に、樹脂と色剤とその他添加剤とを含み、樹脂は、定着方式に応じて選択される。熱定着方式の場合には、樹脂として、例えば、スチレン/アクリル系共重合体、スチレン/ブタジエン系共重合体が、圧力定着方式の場合には、例えば、ワックス類、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/ブタジエンラバー混合ワックス状樹脂等が選択される。色剤としては、例えば、カーボンブラック、マグネタイト、各種染顔料等が用いられ、その他添加剤としては、例えば、帯電制御剤、導電制御剤、補強剤、離型剤等が用いられる。磁性現像剤の場合には、さらに、フェライト等の磁性粉を現像剤14の合計質量に対して数十質量%含有する。一成分系の現像剤は、通常、2〜8μC/g程度の帯電特性を有している。
【0049】
現像手段15における現像剤供給手段28は、現像剤担持体27と接触して、現像剤14を現像剤担持体27に供給することができるように構成されていればよく、例えば、導電性を有する弾性層を備えた現像ローラ等が挙げられる。なお、現像剤担持体27に供給される現像剤14を均一に混合する攪拌機が現像剤収納部26内に設けられてもよい。
【0050】
現像手段15における現像剤担持体27は、現像剤規制部材29と接触して、現像剤14を帯電させる。したがって、現像剤担持体27は、現像剤規制部材29と接触して、現像剤14を帯電させることができるように構成されていればよく、例えば、導電性を有する弾性層を備えた現像ローラ等が挙げられる。例えば、このような現像剤担持体27、特に現像ローラとして、この発明に係る弾性ローラ1を使用することができる。
【0051】
現像剤規制部材29は、図2に示されるように、所定の圧力で現像剤担持体27の表面に当接するように、現像手段15の開口部に、配置されている。この現像剤規制部材29は、現像剤担持体27に接触して、現像剤担持体27に付着した現像剤14を一定の層厚に調整すると共に、現像剤14を帯電させることができればよく、例えば、支持体と、支持体に装着され、現像剤担持体27に当接するブレードとから成っていてもよい。この支持体は、弾性を有する材料、例えば、ステンレス鋼等によって形成されて成り、ブレードを支持し、現像剤担持体27にブレードを適切な圧力で当接させる。ブレードは、弾性を有する材料、例えば、ステンレス鋼等又は弾性を有する薄板状等に形成されて成り、現像剤担持体27に当接し、現像剤14の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤14を帯電させる。ブレードは、その表面に、現像剤14を帯電させる表面層(図示しない。)を有していてもよい。
【0052】
この発明に係る画像形成装置10は、帯電手段12の帯電ローラ、現像手段15の現像ローラ、転写手段17の転写ローラ、定着手段18の定着ローラ、加圧ローラ又は無端ベルト支持ローラ、クリーニング手段のクリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラを備え、これら各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラ1が使用されている。好ましくは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ及び加圧ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラ1が使用されている。
【0053】
この発明に係る画像形成装置10は、次のように作用する。まず、画像形成装置10において、像担持体11が、図2の矢印に示されるように、時計方向に回転しつつ、クリーニング手段19により、その表面の現像剤14及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段12により、一様に帯電される。次いで、露光手段13により画像が露光され、像担持体11の表面に静電潜像が形成される。
【0054】
一方、現像手段15において、現像剤14が現像剤供給手段28によって現像剤担持体27に供給され、現像剤担持体27が図2に示される矢印方向に回転することにより、現像剤担持体27の表面に付着した現像剤14が、現像剤担持体27と現像剤担持体27に当接した現像剤規制部材29との間を通過する。このとき、現像剤14は、所望の層厚に規制されると共に、現像剤14を所望のように帯電させることができる。つまり、現像剤14が、現像剤担持体27と現像剤規制部材29との間を通過することによって、現像剤担持体27の表面上における現像剤14の層厚が規制されると共に、現像剤規制部材29と現像剤担持体27及び/又は現像剤14との摩擦帯電等により、現像剤担持体27上の現像剤14が所望のように帯電される。
【0055】
次いで、このようにして現像手段15から所望の層厚及び帯電量を有する現像剤14が像担持体11に供給され、像担持体11に形成された静電潜像が現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。このようにして、現像手段15は、像担持体11に所望の層厚及び帯電量を有する現像剤14を供給し、静電潜像を現像することができる。次いで、像担持体11上に現像された現像剤像は、搬送手段により、像担持体11と転写手段17との間に搬送される被転写体16上に、像担持体11及び/又は転写手段17によって転写される。次いで、現像剤像が転写された被転写体紙36は、搬送手段により定着手段18に搬送され、定着手段18により加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像が永久画像として被転写体16に定着される。このようにして、被転写体16に画像を形成することができる。
【0056】
この発明に係る画像形成装置10は、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、無端ベルト支持ローラ、クリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラ1が使用されているので、この発明に係る弾性ローラ1が使用されたローラは、被当接体に対して、その軸方向にわたって均一に作用することができ、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。例えば、像担持体11に当接するように配設された現像ローラ44として、この発明の係る弾性ローラ1が使用される場合には、所定の圧力でかつ現像ローラ44の軸方向にわたって均一に像担持体11に当接し、現像剤14を均一な厚さで精度よく、像担持体11に付着させることができるから、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。
【0057】
この発明に係る画像形成装置10において、像担持体11、帯電手段12、露光手段13、転写手段17、定着手段18及びクリーニング手段19は、図2に示される配置の他に、従来の画像形成装置に備えられる像担持体、帯電手段、露光手段、転写手段、定着手段及びクリーニング手段とそれぞれ同様に形成され、同様に配置されてもよい。
【0058】
また、画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置10は、現像手段15に単色の現像剤14のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置10は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置とされる。
【0059】
また、画像形成装置10において、現像剤14は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。二成分系の現像剤は、通常、10〜25μC/g程度の帯電特性を有している。
【0060】
この画像形成装置においてはこの発明の方法により製造される弾性ローラが定着ローラとして使用されているので、搬送される記録体が定着ローラと加圧ローラとの間を通過するときに、紙詰まりを起こすことがなく、また、大量の記録体を定着ローラと加圧ローラとの間を通過させても、定着ローラにおける弾性層の変形を生じにくいので、紙詰まり及び記録体の搬送ずれを生じにくく、したがって、高い画像品質を有する画像を長期間にわたって形成することができる。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
シリコーンゴムコンパウンド「KE−904FU」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部に対して、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部、発泡剤「KEP−13」(信越化学工業株式会社製:商品名)3.0質量部、他に白金触媒、架橋補助剤を適量加え2本ロールにてシリコーンゴム組成物を調製した。また金属製軸体(φ12×300mm、SUM22,無電解ニッケルメッキ)をトルエン洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製、商品名)を塗布した。
【0062】
プライマー処理した金属製軸体を、ギアーオーブン中、180℃の温度にて30分焼成処理し、常温にて30分以上冷却し、プライマー処理した金属製軸体とシリコーンゴム組成物とを、押出成形機にて一体分出し、それをIR炉にて250℃で10分間一次加熱処理し、金属製軸体とその外周に形成された発泡体からなる粗弾性層(軸線方向長さ:250mm)とを有する成形体を形成した。その成形体をギアーオーブンにて200℃の温度にて7時間二次加熱処理して、常温にて1時間放置し、次いで、粗弾性層の両端部を切り落とし、粗弾性層の軸線方向長さを240mmにし、さらに円筒研削盤にて弾性層を直径29mmの円筒形に研削、研磨する整形加工をして整形弾性層を得た。この整形弾性層をエアーブローしてから、加熱器に入れて200℃で1.5時間三次加熱処理し、冷却後にエアーブローにより清掃して弾性ローラ1Aを得た。
【0063】
(実施例2)
三次加熱処理条件を180℃で4時間行った以外は実施例1と同様にし、弾性ローラ1Bを得た。
【0064】
(実施例3)
三次加熱処理条件を225℃で0.5時間行った以外は実施例1と同様にし、弾性ローラ1Cを得た。
【0065】
(実施例4)
三次加熱処理条件を150℃で24時間行った以外は実施例1と同様にし、弾性ローラ1Dを得た。
【0066】
(実施例5)
三次加熱処理条件を300℃で0.2時間行った以外は実施例1と同様にし、弾性ローラ1Eを得た。
【0067】
(実施例6)
三次加熱処理条件を320℃で0.15時間行った以外は実施例1と同様にし、弾性ローラ1Fを得た。
【0068】
(比較例1)
実施例1における三次加熱処理をしない他は実施例1と同様にし、弾性ローラ1Gを得た。
【0069】
(比較例2)
実施例1における成形体をギアーオーブンにて200℃の温度にて10時間二次加熱処理し、常温にて1時間放置して、軸体の外周に発泡体から成る粗弾性層を得ること、及び三次加熱処理をしなかった以外は、実施例1と同様にし、弾性ローラ1Hを得た。
【0070】
(圧縮永久歪、低分子シロキサン含有量、アスカーC硬度の評価)
実施例1〜6、比較例1〜2で作製した弾性ローラ1A〜1Hを各4本用意し、圧縮永久歪、低分子シロキサン含有量、アスカーC硬度を前述した方法により測定した。測定結果を表1に示した。
【0071】
(外径変化率の評価)
実施例1〜6及び比較例1〜2で作製した弾性ローラ1A〜1Hを各4本用意し、外径変化率を、前述した方法により測定した。測定結果を表1に示した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1に示されるように、この発明に係る実施例1〜6の弾性ローラは、その弾性層を三次加熱処理することにより、圧縮永久歪が向上し、また外径変化率が小さい為、試験後に、弾性層の軸方向にわたって、変形ムラがなく、また、弾性層の偏摩耗等は確認できなかった。この弾性ローラを例えば画像形成装置における定着ローラに使用した場合には、長期間にわたって画像形成装置を稼働しても、定着ローラの弾性層における収縮が小さくて、搬送される記録体例えば印刷用紙の紙詰まりを生じることが極めて少なくなり、また大量の記録体に画像を形成する場合、すなわち画像が形成される記録体の日々の数が少ない場合には長期間にわたって大量の記録体に画像を形成する場合及び短期間ではあるが一時に大量の記録体に画像を形成する場合の両方の場合においても、紙詰まりを生じることなく、また搬送途中の紙のずれを生じることなく高品質の画像を記録体に形成することができる。一方、比較例1、2で作製した弾性ローラは、試験後に、弾性層の変形ムラ及び/又は偏摩耗等が確認できた。したがって、比較例1、2で作製した弾性ローラは、画像形成装置に配設された場合には、画像の高品質化及び画像形成装置の耐久性向上に十分に貢献することができないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は本発明の弾性ローラの斜視図である。
【図2】図2は本発明の弾性ローラを定着ローラとして装備する画像形成装置の一例を示す説明図である。
【図3】図3は、弾性ローラの圧縮永久歪を測定するために、弾性ローラを圧縮治具で締め付けた状態を示す説明図である。
【図4】図4は、弾性ローラの径を示す説明図であり、図4(A)は圧縮治具で締め付ける以前の弾性ローラにおける径(D)を示す説明図であり、図4(B)は歪を有する弾性ローラにおける径(Dx)を示す説明図である。
【図5】図5は、耐久性試験装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0075】
1:弾性ローラ
2:軸体
3:弾性層
10:画像形成装置
11:像担持体
12:帯電手段
13:露光手段
14:現像剤
15:現像手段
16:被転写体
17:転写手段
18:定着手段
19:クリーニング手段
20:開口
21:筐体
22:定着ローラ
23:無端ベルト支持ローラ
24:加圧ローラ
25:無端ベルト
26:現像剤収納部
27:現像剤担持体
28:現像剤供給手段
29:現像剤規制部材
30:圧縮板
31:圧縮治具
32:スペーサ
70:耐久性試験装置
71:加熱ローラ
72:内部ヒータ
73:外部ヒータ
74:試験ローラ装着部
75:押圧力調整手段
76:弾性ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムコンパウンドを一次加熱処理することにより発泡体からなる粗弾性層を軸体外周に形成する工程、前記粗弾性層を二次加熱処理した後に、整形加工して整形弾性層とする工程、及び前記整形弾性層を三次加熱処理して弾性層を形成する工程を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記三次加熱処理が、前記整形弾性層を150〜300℃で10分〜24時間加熱処理することである前記請求項1に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の弾性ローラの製造方法により製造された弾性ローラであって、前記弾性層は180℃、5時間の加熱後における圧縮永久歪が10%以下であることを特徴とする弾性ローラ。
【請求項4】
前記請求項1又は2に記載の弾性ローラの製造方法により製造された弾性ローラであって、前記弾性層は、その外径変化率が0.9%以下であることを特徴とする弾性ローラ。
【請求項5】
前記弾性層が、シリコーンゴムを有して成る請求項3または4に記載の弾性ローラ。
【請求項6】
前記弾性層は、その低分子シロキサン含有量が8000ppm以下である前記請求項5に記載の弾性ローラ。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項に記載の弾性ローラを備えて成ることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−70574(P2008−70574A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248906(P2006−248906)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】